説明

先進的プロセス制御(advancedprocesscontrol)と実時間最適化(real−timeoptimization)との経済性に基づく協調

先進的プロセス制御と製造プロセスの実時間最適化とを協調させるためのシステムおよび方法が、提供される。システムおよび方法は、制御され最適化されるべき製造プロセスに対応するプロセスデータおよび経済的データを受け取る。プロセスデータ、経済的データおよびプロセスの非線形定常状態モデルに基づいて、経済的目的関数が、実時間最適化モジュールによって計算される。その後、引き下げられた次数の、経済的目的関数の非線形近似が、実時間最適化モジュールによって計算され、先進的プロセス制御モジュールに送られる。先進的プロセス制御モジュールは、制約された経済最適に向けて製造プロセスを制御するために、引き下げられた次数の、経済的目的関数の非線形近似を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
経済的目的関数(economic objective function)を使用する製造プロセスの制御。
【背景技術】
【0002】
製造プロセスの1つの目的は、気温、水温など、絶えず変化する外的影響や、製品仕様、業務上の制約、安全および環境の規制など要件の存在下で、原材料を所望の製品に変換することである。先進的プロセス制御(APC)および実時間最適化(RTO)を使用することに対する第一義的な動機となる事項は、システム動作を、制約の存在下で利益を最大化する領域に導く(steer)ことにある。
【0003】
現在の慣例では、この動機となる事項は、RTOモジュールとAPCモジュールとの間で通信を介して設定点/目標をリモートで送達する構成(remote set-point/target passing framework)を使用して追求される。このRTOモジュールとAPCモジュールとの間で通信を介して設定点をリモートで送達する方策は、本質的には、主たる経済的目的をプロセス制御の目的に転換することである。例えば、従来のプロセス自動化計画(automation scheme)では、RTOモジュールは、プロセス制御変数の集合(set)(例えば、全プロセス制御変数またはプロセス制御変数の部分集合)に対して目標を伝達することによって、APCモジュールを最も経済的な動作点に押しやるように試みる。具体的には、RTOモジュールは、一般に、制御されるべきプロセスの経済性および制約の、厳正な、非線形の定常状態モデルを含む。プロセスが定常状態(すなわち、定義された変数の集合が、ばらつきの所定の許容誤差の範囲内にある状態)にあるとき、RTOモジュールは、特定のプロセス制御変数に対する目標の形でAPCモジュールに伝達される、経済的に最適な動作点を計算するために、このモデルを使用する。RTOモジュールよりずっと高い頻度で実行するAPCモジュールは、プロセス変数を、すべての制約を守りながら、それら個別の目標に向けて動的に押しやろうと試みる。APCモジュールは、新しい目標がRTOシステムから受け取られるまで、プロセス変数をそれら個別の目標に向けて押しやることを継続する。
【0004】
上述のように、RTOモジュールとAPCモジュールとの間の動作を協調させるための従来の手法では、RTOモジュールによってAPCモジュールに送達された目標は、RTOモジュールがプロセスデータ、制約データおよび経済データを引き出した(pulled)時点の制約された経済最適度(economic optimum)を表す。この制約された経済最適度は、オペレータ、技術者、または他の人々によってプロセス内の種々の先進的プロセス制御変数に適用された制約による最適度を表す。しかし、APCモジュールは、制約を考慮しない最適度を表す、制約されない経済最適度の知識を持たない。
【0005】
図1aは、製造プロセスに関連するプロセス制御変数TG1およびTG2の制約されたグラフ100における、制約されない経済最適度102および制約された経済最適度104の位置を例示する。輪郭線(contour)103における各円は、RTOモジュールで使用される経済的目的関数の一定値を表す。輪郭線105は、制約された経済最適104からの距離を最小化するAPC目的関数を表し、ここで、距離は、変数値とそれらの目標との差の二乗の加重和として測定される。例えば、TG1は、石油化学プラントで使用されうる生産プロセスにおけるプロセスの流れの流量に関連し、TG2は、流れの温度に関連しうる。グラフ100に表される製造プロセスは、すべての制約を守る経済最適に向けて製造プロセスを押しやるように共に働くRTOモジュールおよびAPCモジュールを含む、従来技術のプロセス制御および最適化システム(optimization system)によって制御される。
【0006】
制約106は、プロセス制御変数TG1に対して、実現可能な値を制限する。制約106を固守しながら、RTOモジュールは、TG1およびTG2のそれぞれに対する特定の値からなる製造プロセスに対する制約された経済最適104を決定する。例えば、TG1が製造プロセスを実施する反応器(reactor vessel)の入口における物質の供給流量を表す上述の状況において、制約106が、製造プロセスのオペレータによって、毎秒10立方メートルの最大値に設定されてもよい。したがって、制約106に基づいて、RTOモジュールは、毎秒10立方メートル以下である、TG1に対する目標を、TG2に対する目標と共にAPCモジュールに送る。例えば、RTOモジュールは、毎秒10立方メートルのTG1の目標および120℃のTG2の目標を、APCモジュールに送ってもよい。これらの目標は、製造プロセスが、すべての制約(すなわち、制約106)を固守しながら最も有利である、制約された経済最適度104を表す。APCモジュールは、同様に、供給流量TG1を毎秒10立方メートルに向けて、かつ温度TG2を120℃に向けて押しやる。製造プロセスに対してより大きな利益をもたらす、TG1およびTG2に対する値(例えば、制約されない経済最適度102)が存在するけれども、TG1およびTG2に対するこれらの値は、制約106を守らない。したがって、制約106がグラフ100において依然として同じ位置にある間は、制約された経済最適度104に向けて製造プロセスを導くことが理想的である。
【0007】
制約された経済最適度104を移動させる外乱(disturbance)が発生すると、RTOモジュールによってTG1およびTG2に対して設定された目標は、もはや最適ではない。例えば、より大きい「余地(room)」がTG1にもたらされるように制約106を変化させる外乱が発生する可能性がある。例えば、オペレータが毎秒12立方メートルに制約106を変化させる可能性がある。
【0008】
図1bは、上述の外乱が発生するときのグラフ100を例示する。制約されない経済最適度102は、前と同じ位置に留まっている一方、新しい制約された経済最適度108は外乱に基づいて作成されている。制約106における変化が、新しい制約された経済最適度108がTG1に対するより大きな余地を活用することを可能にするため、新しい制約された経済最適度108は、制約された経済最適度104よりも制約されない経済最適度102に近い。従来の設定点プロセス制御システムの下では、APCモジュールは、RTOが、新しい制約された経済最適度108に対応する新しい設定点目標を提示するまで、新しい制約された経済最適度108に気付かないであろう。
【0009】
あるいは、あまり「余地」をTG1に与えないように制約106を変化させ、RTOモジュールによってTG1およびTG2に対して設定された目標をもはや実現可能でないものにする外乱が、発生する可能性がある。例えば、オペレータが、制約106を毎秒8立方メートルに変える可能性がある。
【0010】
図1cは、上述の外乱が発生するときのグラフ100を例示する。制約されない経済最適102は前と同じ位置に留まる一方で、新しい制約された経済最適度110が外乱に基づいて作成されている。制約106における変化が、制約された最適度104を実現不可能にするので、新しい制約された経済最適度110は、制約されない経済最適102から、制約された経済最適度104より遠くにある。従来の設定点プロセス制御システムの下では、APCモジュールは、その非経済的(non-economic)目的関数に基づいて、制約された経済最適104からの距離を最小化する、実現可能な点を見出すように試みるであろう。この例では、その点は、新しい制約された経済最適度110とは異なるAPC目標112である。
【0011】
しかし、RTOモジュールは、従来、APCモジュールに比べて少ない頻度で作動する(run)ので、APCモジュールは、長時間にわたって、古い設定点目標(すなわち、制約された経済最適104)に向けて押しやり、一方、制約106に対する変化の結果からもたらされる、動作のためのより大きい余地を活用するか、または実現可能領域の縮小に合わせて経済的に調節する、設定点目標の新しい集合(すなわち、新しい制約された経済最適108)を待つ。潜在的に、制約106が変更される時点と、APCモジュールが設定点目標の新しい集合を受け取る時点との間に、多額の利益が失われる。
【0012】
したがって、外乱(例えば、周囲温度の変動、オペレータによる制限の変更など)がプロセスに入るときに、上述のように、RTOモジュールとAPCモジュールとの間の動作を協調させるための従来の手法によって、APCモジュールは、プロセスを、RTOモジュールによって当初に設定された目標値に維持するように試みることを継続する。これらの外乱は、効力のある制約を緩和するか、または目標を実行不可能にするかのいずれかによって、目標に対する制約を変える可能性がある。第1の場合では、APCモジュールは、効力のある制約の緩和によって急に引き起こされた余分な「余地」に気付かないため、実行可能領域内の余分な「余地」を活用することはない。第2の場合では、APCモジュールは、非経済的基準(non-economic criteria)を使用して可能な限り目標に至り、おそらくは非最適経済点(non-optimum economic point)に到達する。いずれの場合でも、従来のAPCモジュールの方策は、利益を最適化するように探索するものではない。
【0013】
さらに、上述のように、RTOモジュールは、従来、APCモジュールに対して比較的少ない頻度で作動する。一例は、APCモジュールが1分毎に作動するのに比べて、RTOモジュールは1時間毎に作動するものである。RTOの解は、RTOモジュールが少ない頻度で動作するために、プロセス内の変化に後れを取る。外乱がプロセスに入る時点と、外乱を考慮に入れるRTOモジュールからの新しい目標がAPCモジュールに送達される時点との間の時間が、失われた機会を表す。RTOモジュールは、新しい目標を計算するために、プロセスが定常状態である必要とするので、外乱が(大きさおよび持続時間において)著しいほど、RTOモジュールから受ける更新された目標の間の時間が長くなる可能性が高くなる。
【0014】
APCモジュールとRTOモジュールとを連動させるために、現在利用可能な技術は、通信を介して設定点を送達する方策を使用する。この方式における目的の転換は、APCモジュールは、当初のプロセスの経済性についての情報を持たず、プロセスへの外乱または動作上の制約の変化に対して脆弱であるので、経済性の情報の喪失を結果としてもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、製造プロセスの最適な経済的動作に、より近づくために、RTOモジュールの実行をAPCモジュールと協調させるためのシステムおよび方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態が、限定するものではなく例として、同様の符号が同様の要素を表示する添付の図面の図中に例示される。本開示において本発明の「一(an)」または「一(one)」実施形態と言及することは、必ずしも、同じ実施形態に対するものではなく、少なくとも1つであることを意味することに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】製造プロセスに対するプロセス制御変数TG1およびTG2のグラフである。
【図1b】外乱を受けた後の、製造プロセスに対するプロセス制御変数TG1およびTG2のグラフである。
【図1c】外乱を受けた後の、製造プロセスに対するプロセス制御変数TG1およびTG2のグラフである。
【図2】本発明の一実施形態による製造プロセスを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による、プロセス制御および最適化システムのシステム図である。
【図4】本発明の一実施形態による、製造プロセスを制御するための製造プロセス制御方法のデータの流れを示す図である。
【図5a】製造プロセスに対するプロセス制御変数QおよびTのグラフである。
【図5b】外乱を受けた後の、製造プロセスに対するプロセス制御変数QおよびTのグラフである。
【図5c】外乱を受けた後の、製造プロセスに対するプロセス制御変数QおよびTのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明のいくつかの実施形態が、添付の図面を参照して説明される。多くの詳細が説明されるが、本発明のいくつかの実施形態は、これらの詳細なしに実施されてもよいことが理解されよう。他の例では、この説明の理解を不明瞭にしないように、よく知られている構造および技術は、詳細には示されていない。
【0019】
図2は、製造プロセス200を例示する。製造プロセス200は、反応器202を使用して、物質Aを物質Bに転化させる。製造プロセス200は、供給濃度(feed concentration)CAf、供給流量Q、および供給温度Tにて、物質AおよびBを含有する液体を反応器202の中に放出する(release)入口弁204を含む。反応器202は、物質Aを物質Bに転化する。反応器202の温度は、冷媒温度Tの冷媒によって調節される。出口弁206において、物質AおよびBの組合せが現れる。物質Aは、濃度C、温度Tr、および流量Qで出口弁206から放出され、一方、物質Bは、濃度C、温度Tr、および流量Qで出口弁206から放出される。製造プロセス200を制御するためのシステムおよび方法が、図3〜図5に関連して以下に説明される。
【0020】
図3は、一実施形態によるプロセス制御および最適化システム300を例示する。プロセス制御および最適化システム300は、製造プロセス200が経済的に最適な方式で動作するように、実時間最適化(RTO)モジュール302および先進的プロセス制御(APC)モジュール304の使用を介して製造プロセス200を押しやる。
【0021】
RTOモジュール302は、製造プロセス200が設定されたゴールを達成できるように、製造プロセス200に対する現在の動作点周りの経済面(economic surface)を説明する関数を構築することによって、製造プロセス200のオペレータとして働く。APCモジュール304は、RTOモジュール302から経済関数(economic function)を受け取り、設定されたゴールを達成するために、経済関数に基づいて経路または計画を構築する、製造プロセス200の制御器として働く。
【0022】
一実施形態では、設定されたゴール(すなわち、経済的目的)は、製造プロセス200に対する経済的目的関数の最適な結果(optimum)を達成することである。製造プロセス200に対する経済最適度は、経済的利益が最大化される製造プロセス200の状態に対応する。本明細書で使用される経済最適は、利益を最大化する観点から説明されるが、あるいは、経済最適が、製造プロセス200のエネルギー消費の最小化、製造プロセス200の生産高(throughput)の最大化、または経済的影響(impact)、安全上の影響、環境的影響、もしくは信頼性の影響を有する、製造プロセス200の任意の他の特徴(aspect)に焦点を向けてもよい。
【0023】
一実施形態では、経済関数は、RTOモジュール302によって構築される、非線形定常状態の経済的目的関数によって定義される。経済的目的関数は、製造プロセス200をモデル化し、設定されたゴールの達成を目指して製造プロセス200の動作を制御するために、APCモジュール304によって使用されてもよい。しかし、経済的目的関数をAPCモジュール304に伝達する代わりに、RTOモジュール302は、経済的目的関数の局所的二次近似(local quadratic approximation of economic objective function)306を導出し、その近似値をAPCモジュール304に伝達する。
【0024】
経済的目的関数の局所的二次近似306は、プロセス制御変数の観点における経済最適の位置の代表的評価を依然としてもたらしながら、経済的目的関数の複雑さを取り除く(abstract)。したがって、局所的二次近似306は、経済的目的関数に比べて簡素化されるので、APCモジュール304は、RTOモジュール302より高い頻度で、制約された経済最適の位置を分析することができる。いくつかの実施形態では、プロセス制御変数の全集合または部分集合が、先進的プロセス制御変数であってもよい。
【0025】
一実施形態では、RTOモジュール302は、逐次二次計画法(SQP)の解法を使用して、経済的目的関数の局所的二次近似306を導出する。SQP解法は、その解の反復のそれぞれにおいて、局所的二次近似を構築する。解の最後の反復からの局所的二次近似が、経済的目的関数の局所的二次近似306に相当する。
【0026】
一実施形態では、RTOモジュール302およびAPCモジュール304は、経済的目的関数の局所的二次近似を計算し、局所的二次近似に基づいて製造プロセスを制御することができる、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータ、メインフレームコンピュータ、または任意の他の同様の計算プラットフォーム上で動作することができる。一実施形態では、RTOモジュール302およびAPCモジュール304は、個別のコンピュータ上で動作し、広域ネットワーク、ローカルエリアネットワーク、セルラーネットワーク、二地点間ネットワークなど、ネットワークを介して伝達することができる。
【0027】
別の実施形態では、RTOモジュール302およびAPCモジュール304は、それぞれ、並列に作動する同じコンピュータ上で動作する。
次に、経済的目的関数の局所的二次近似306に基づいて製造プロセス200を制御するためのシステムおよび方法が、より詳細に説明される。
【0028】
図4は、一実施形態による、製造プロセス200を制御するための製造プロセス制御方法400を例示する。図4の製造プロセス制御方法400は、RTOモジュール302およびAPCモジュール304の両方によって部分的に実施されるように、プロセス制御および最適化システム300によって実施されてもよい。したがって、図4の製造プロセス制御方法400は、RTOモジュール302によって実施される動作およびAPCモジュール304によって実施される動作を明示する。
【0029】
製造プロセス制御方法400は、ブロック402で、プロセスデータ、制約データおよび経済的データをユーザから受け取ることに続いて、動作を開始する。ユーザは、プロセスデータおよび経済的データを製造プロセス制御方法400に伝送する、操作員、機械、または組合せであってもよい。一実施形態では、プロセスデータ、制約データおよび経済的データは、プッシュプルデータ検索方式(push or pull data retrieval scheme)を介して、RTOモジュール302によって受け取られる。
【0030】
プロセスデータは、製造プロセス200の構成要素または動作に対応する、測定された数字および/または条件の値を含む。例えば、プロセスデータは、流れの流量、反応器内の圧力、流れの温度、熱交換器の稼働中の状況などを含むことができる。制約データは、プロセス変数の下限および上限を含む。経済的データは、製造プロセス200に投入される原材料に関する経済的値、製造プロセス200によって生産される製品に関する経済的データ、または製造プロセス200内で実施する動作に関する経済的値を含む。例えば、経済的データは、電気などの公共施設の価格、原材料の価格などから構成されてもよい。一実施形態では、ブロック404で、製造プロセス200の非線形定常状態の数学的モデルが、製造プロセス制御方法400によって使用される。
【0031】
具体的には、非線形定常状態の数学的モデルは、RTOモジュール302によって使用されてもよい。一実施形態では、数学的モデルに対するプロセスデータ、制約データおよび経済的データの伝達は、ネットワーク媒体の使用を介して実施され、一方、別の実施形態では、プロセスデータ、制約データおよび経済的データは、共有メモリの使用を介して数学的モデルに伝達される。非線形定常状態の数学的モデルは、製造プロセス200の物理的構成要素の間の関係を成立させる(establish)、1つまたは複数の方程式からなる。数学的モデルを構成する方程式は、製造プロセス200の入力および出力を含む、製造プロセス200のプロセス変数間の関係を定義する。例えば、製造プロセス200では、プロセス変数は、入口におけるAの供給濃度(CAf)、入口における供給流量(Q)、入口における供給温度(T)、冷媒温度(T)、出口におけるAの濃度(C)、反応器温度(T)、出口におけるBの濃度(C)、および出口における製品流量(Q)を含むことができる。
【0032】
一実施形態では、プロセス制御変数は、プロセス変数の全集合またはプロセス変数の部分集合のいずれかの、プロセス変数の集合であり、プロセス変数は、被操作変数(manipulated variable)、制御変数、または被操作変数および制御変数の組合せであってもよい。被操作変数は、条件または量が変更(操作)されたときに、制御変数の条件または量における変化を調節または開始する変数に相当する。例えば、製造プロセス200では、入口における供給流量(Q)および冷媒温度(T)は、これらの変数が、製造プロセス200のオペレータによって直接調節されうるので、被操作変数でありうる。さらに、出口におけるAの濃度(C)、反応器温度(T)、出口におけるBの濃度(C)、および出口における製品流量(Q)は、上述の被操作変数の変更がこれらの変数に変化をもたらすので、制御変数とみなされてもよい。
【0033】
プロセスデータおよび経済的データを受け取ったことに続いて、プロセス制御方法400は、ブロック404で、受け取られたプロセスデータおよび経済的データの観点から、経済的目的関数を計算する。一実施形態では、数学的モデルにおけるパラメータが、モデルとプロセスデータとの差を最小化するように調整される。
【0034】
その後、経済的目的関数が、モデルおよび経済的データの中で表されるプロセス変数の観点から表現される。したがって、プロセスデータおよび経済的データと数学的モデルとの組合せに基づいて、導出された経済的目的関数は、製造プロセスの構成要素および動作を現在の経済的要因と関連づける。
【0035】
計算された経済的目的関数は、製造プロセス制御方法400によって制御される製造プロセス200の動作の経済性(operating economics)を表す。
制約された経済最適は、経済的目的関数から導出されてもよいが、典型的な製造プロセスの複雑さは、それらを表すために、数学的に複雑な経済的目的関数を必要とする。したがって、製造プロセス200に対する制約された経済最適を導出するために経済的目的関数を処理することは、時間および処理能力の観点から高価である。
【0036】
外乱は、プロセスデータ、経済的データまたは制約データを含む、プロセス制御方法400に入力される値のうちのいずれかに対する変化として定義される。一般に、外乱は、製造プロセス200の性能に影響する任意の出来事(occurrence)である。例えば、外乱は、自然現象(例えば、外部温度に対する変動)または経済性に対する変化(例えば、原材料の価格における変動)によって引き起こされる可能性がある、プロセスに対する変化に関連する可能性がある。あるいは、外乱は、例えば、前に設定された制約における変化(例えば、変数に置かれた制約を制御器によって調整すること)または新しい変数に対する制限の導入によって引き起こされうる制約の変化に関連する可能性がある。外乱は、製造プロセス200の環境に入るので、製造プロセス200を動作させるための経済最適度はシフトする。したがって、製造プロセス制御方法400は、製造プロセス200が、外乱によって急に引き起こされた新しい経済最適度に焦点を合わされるように外乱に対処するために、製造プロセス200の動作をシフトさせる。外乱の影響の一例が、外乱が制約106の位置を移動させ、新しい制約された経済最適度108および制約された経済最適度110を作成した図1a、図1bおよび図1cに、例示される。
【0037】
製造プロセス200の経済最適度を決定するコストを低減するために、プロセス制御方法400は、ブロック406で、プロセス制御変数の観点から、経済的目的関数の局所的二次近似306を導出する。経済的目的関数の局所的二次近似306は、製造プロセス200の現在の動作点付近の経済面の代表的評価を依然としてもたらしながら、経済的目的関数の複雑さを取り除く。
【0038】
低減された局所的二次近似306の複雑さに基づいて、制約された経済最適度の代表的近似が、APCモジュール302のコンピュータシステムなどのコンピュータシステム上で、低減された処理負荷によってより短い時間内に導出されうる。したがって、近似された制約された経済最適度を、経済的目的関数の局所的二次近似306に基づいて導出することによって、プロセス制御および最適化システム300は、経済的目的関数を使用することに比べてより高い頻度で、近似された制約された経済最適度を計算することができる。
【0039】
一実施形態では、経済的目的関数の局所的二次近似306は、経済的目的関数の逐次近似を介して導出される。一実施形態では、経済的目的関数の局所的二次近似306は、非線形の二次成分および線形の一次成分からなる。この実施形態では、非線形の二次成分はヘッシアン行列であってもよく、線形の一次成分は勾配ベクトルであってもよい。集合的に、ヘッシアン行列および勾配ベクトルは、プロセス制御変数の全集合または部分集合の観点から、経済面を表す。一実施形態では、プロセス制御変数の部分集合は、APCモジュールにおける被操作変数に相当してもよい。一実施形態では、経済的目的関数の局所的二次近似306は、RTOモジュール302の一部であってもよい、SimSci−EsscorによるRigorous On−line Modeling with equation−based optimization(ROMeo(登録商標))のソフトウェアパッケージにおけるOPERA解法によって構築される。一実施形態では、局所的二次近似は、解法が、制約データの影響を受ける経済的目的関数を最適化するために使用されるときに導出される。
【0040】
導出された後、経済的目的関数の局所的二次近似306は、プロセス制御方法400のブロック408で、RTOモジュール302からAPCモジュール304に送られる。一実施形態では、経済的目的関数の局所的二次近似306の、RTOモジュール302からAPCモジュール304への伝達が、ネットワークまたはバス媒体の使用を介して実施され、別の実施形態では、経済的目的関数の局所的二次近似306が、共有メモリの使用を介して伝達される。一実施形態では、APCモジュール304は、製造プロセス200のプロセス制御変数に関連する制約データを、製造プロセス200の操作員など、プロセス制御および最適化システム300の外部の送信元から受け取る。
【0041】
経済的目的関数の局所的二次近似306を受け取ると、APCモジュール304は、製造プロセス200を、プロセス制御変数に置かれた制約の影響を受ける経済的目的関数の局所的二次近似306に基づいて制御する。RTOモジュール302によって設定される設定点目標の代わりに、経済的目的関数の局所的二次近似306を使用することによって、APCモジュール304は、動作のすべての時点で、製造プロセス200の経済性への動作条件における変化の影響に気付く。経済的目的関数の輪郭線についての知識を維持することによって、APCモジュール304は、製造プロセス200への外乱によって急に引き起こされた、新しい制約された経済最適度に、適切に焦点をシフトさせることができる。
【0042】
例えば、図5aは、製造プロセス200に対する変数QおよびTのグラフ500を例示する。製造プロセス200のオペレータは、Qが毎秒10立方メートルを超えて上昇しないように、制約502をQに適用してもよい。したがって、APCモジュール304は、Qに置かれた制約502(すなわち、Q≦毎秒10立方メートル)を守る経済的目的関数の局所的二次近似306を使用して、QおよびTの両方に対する定常状態目標を計算する。QおよびTに対する定常状態目標は、製造プロセス200に対する制約された経済最適度504に関連する。また、APCモジュール304は、制約されない経済最適度506周りの経済的目的関数507の輪郭線にも気付く。制約されない経済最適度506は、制約された経済最適度504に比べて、製造プロセス200に対してより大きな利益をもたらすQおよびTの値を表すが、APCモジュール304は、制約502が守られる必要があるので、製造プロセス200を制約された経済最適度504に向けて押しやる。
【0043】
図5bおよび図5cは、外乱が発生した後のQ対Tのグラフを例示する。図5bでは、例えば、制約502をQ≦毎秒10立方メートルからQ≦毎秒12立方メートルに変えることによって、より多くの「余地」がQにもたらされるように、外乱が制約502を変える。図5cでは、外乱は、例えば、制約502をQ≦毎秒10立方メートルからQ≦毎秒8立方メートルまで変えることによって、より少ない「余地」がQにもたらされるように、外乱が制約502を変える。いずれの場合でも、新しい制約された経済最適度508が作成される。その結果、APCモジュール304は、以下に説明されるように、新しい制約された経済最適度508に向けてプロセスを導く。簡潔にするために、図5bの外乱を考慮して新しい制約された経済最適度508に向けてプロセスを導くための手順のみが論じられる。しかし、同様の手順が、図5cの外乱を考慮して新しい制約された経済最適度508に向けてプロセスを導くために使用されてもよい。
【0044】
経済的目的関数の局所的二次近似306に基づいて、APCモジュール304は、図5bの外乱による制約502の移動によって引き起こされた、Qの移動に対する増加された余地を活用して、制約されない経済最適度506により近い、新しい制約された経済最適度508に向けてプロセスを導くことができる。従来の設定点プロセス制御システムにおいて実行されるように、RTOモジュール302からの指示を待つのではなく、APCモジュールは、製造プロセス200を、QおよびTの新しい定常状態目標に向けてシフトさせる。したがって、RTOモジュール302が新しい設定点目標をもたらすのを待つ間に古い目標を固守するのではなく、その代わりに、経済的目的関数の局所的二次近似306に基づいて、変数QおよびTに対する新しい経済的に最適な定常状態目標を導出することによって、潜在的に、相当量の利益が実現される。外乱に直面して、APCモジュール304が、製造プロセス200の焦点を、制約された経済最適度504から新しい制約された経済最適度508にシフトさせる方法が、以下に説明される。
【0045】
プロセス制御方法400に対して前に論じたように、RTOモジュール304の実行毎に、製造の経済的目的関数の近似が、APCモジュール306に伝達される。ブロック409は、プロセスデータおよびAPCモデルに基づいて、外乱の推定値を計算する。APCモジュール306のブロック410は、APCモジュールに対して経済的に最適な定常状態目標の集合を決定するために、被操作変数と被制御変数(controlled variable)との空間にわたって、APCモデル、最新の外乱の推定値およびプロセスの制約の影響の下に、この近似された経済的目的関数を最適化する。一実施形態では、QPSOL/IPOPTなどの標準的二次計画の解法が、経済的目的関数を最適化するために使用される。線形動的モデルが、製造プロセス200の被操作変数と被制御変数との間の関係を表すためにAPCモジュール306の中で使用される。制約された経済最適度を計算するために、線形動的モデルの定常状態表現が使用される。外乱の推定値がAPCモデルの重要な要素であり、測定されない外乱に対する状態推定器(state estimator)および測定された外乱に対する実時間測定値を使用することによって得られる。プロセス制約が、最適化問題における不等式制約(inequality constraint)として表される。別の実施形態では、ヘッシアン行列および勾配ベクトルの要素が、RTOモジュール304の実行毎に、横河電機株式会社によるExasmoc(登録商標)APC制御器に伝達される。Exasmoc制御器は、線形プロセスモデル、制約および外乱の推定値の影響の下に、この経済的目的を最適化する。APCモジュール306の実行毎の、この最適化問題の解が、APCモジュールがプロセスを導くためにねらいとする定常状態目標を生じる。
【0046】
RTOモジュール304が実行する期間において、制約された経済最適度504は、すべての制約を依然として守りながら経済的利益が最大化される、製造プロセス200の定常状態(したがって、実現可能な、経済的に最適な定常状態)を表す。一実施形態では、制約された経済最適度504は、製造プロセス200の一部である、1つまたは複数のプロセス制御変数に対する定常状態目標として表現される。例えば、上で論じられたように、制約された経済最適度504は、入口における供給流量(Q)および冷媒温度(T)に対する定常状態目標として表されてもよい。
【0047】
RTOを実行する間の期間中に、製造プロセス200の動作条件に対する変化が発生する可能性がある。これらの変化は、製造プロセス200に対する制約の変化または新しいプロセスの外乱の形であってもよい。一実施形態では、新しい外乱の推定値が、APCモジュール306の実行毎に計算される。経済的目的関数の局所的二次近似306に基づく経済的最適化問題が、新しいプロセスおよび/または制約の条件の下で経済的に最適な定常状態目標を計算するために、APCモジュール306の実行毎に解かれる。
【0048】
プロセス制御方法400のブロック412で、プロセス制御変数が、制約およびプロセスの条件の最新の集合の下でブロック410で導出された、計算された経済的に最適な定常状態目標508に到達するように、経路が、プロセス制御変数に対して決定される。一実施形態では、経路は、経済的に最適な定常状態目標を達成するようにプロセス制御変数が導かれるように、被操作変数の移動を予測することを含む。別の実施形態では、製造プロセス200の制約された経済最適508に到達する前に、中間目標が生成される。例えば、毎秒11立方メートルの最終的な目標を有する、入口における供給流量(Q)に対して、中間目標の集合が、毎秒2立方メートル、毎秒4立方メートル、毎秒6立方メートル、毎秒8立方メートル、および毎秒10立方メートルを含むことができる。経路は、制約された経済最適508に相当する毎秒11立方メートルの目標に到達するときに終了する。
【0049】
一実施形態では、計算された経路は、制約された経済最適度508への最速ルートでありうる。一実施形態では、より高く階級付けまたは重み付けされたプロセス制御変数に関する目標が、より低く階級付けまたはより少なく重み付けされたプロセス制御変数より、プロセス制御方法400によってより重要であるものとみなされるように、階級(rank)および/または重みが、1つまたは複数のプロセス制御変数に適用される。したがって、より高く重み付けされたプロセス制御変数が、より低く重み付けされたプロセス制御変数より重要であるものとみなされる。例えば、入口弁における供給流量(Q)は、冷媒温度(T)より重要であるものとみなされてもよい。したがって、Qは、APCモジュール304が、Qに対する目標を、Tに対する目標より一層の緊急性をもって取り扱うような重みに関連する。別の実施形態では、計算された経路は、経済的目的関数の局所的二次近似306に基づく経済的に最適な定常状態達成への、経済的に最適な軌道である。
【0050】
一実施形態では、計算された経路は予測である。APCモジュール306の実行毎に、経済的に最適な定常状態508を達成するために生成された経路における、各被操作変数に対する第1の移動だけが、プロセスに適用される。次のAPC実行サイクルにおいて新しい予測が生成され、再び各被操作変数に対する第1の移動だけが適用される。
【0051】
一実施形態では、プロセス制御モジュールの実行毎に、システム状態および測定されない外乱が、線形動的モデルが入力および/または出力の外乱モデルで増強されるカルマンフィルタを使用して推定される。経済的に最適な定常状態目標を計算する間、被操作変数および被制御変数への現在の制限が使用される。プロセス制御方法400が実行する頻度は、プロセス制御方法400の開始時にユーザによって予備設定されてもよい。例えば、APCモジュール304は、説明されたように、1分毎に実行することができる。
【0052】
その後、プロセス制御方法400は、プロセスが新しい制約された経済最適度508に向けて導かれるように、前に説明されたような動作を継続する。具体的には、製造プロセス200に関連するプロセス制御変数が、新しい制約された経済最適度508に向かって経路を横断するように操作される。その結果、プロセス制御方法400は、外乱を把握する(account for)ことを継続し、必要に応じて新しい制約された経済最適度508を調整する。
【0053】
製造プロセス200が定常状態にあるならば、ブロック418で決定されるように、プロセス制御方法400は、新しい経済的目的関数の局所的二次近似が、製造プロセス200の現在の状態に基づいて導出されるように、ブロック402に逆戻りする。一実施形態では、新たなプロセスデータおよび経済的データが、現在感知された値に基づいてプロセス制御方法400に読み込まれる。上述のように、新しい経済的目的関数の局所的二次近似がRTOモジュール302によって計算され、APCモジュール304に送られる。最後の局所的二次近似が導出されたので、この新しい経済的目的関数の局所的二次近似は、経済的データにおける変化またはプロセス用機器の状態における変化を考慮に入れる。また、この新しい経済的目的関数の局所的二次近似は、動作点が変わることによってもたらされる、経済的目的関数の局所的二次近似の中ではとらえられない、非線形経済的目的関数の形状における変化をも考慮に入れる。この新しく導出された経済的目的関数の局所的二次近似に基づいて、プロセス制御方法400は、制御変数を新しい制約された経済最適度に導く。その結果、プロセス制御方法400は、外乱に対して監視の役を果たすことを継続し、必要に応じてプロセス制御変数に対する目標を調整する。
【0054】
結論として、RTOモジュールからAPCモジュールに送達される経済的目的関数の局所的二次近似を使用することによって、製造プロセスを制約された経済最適度に押しやるためのシステムおよび方法の種々の特徴が、説明された。上述のように、本発明の1実施形態は、上述の動作のいくつかを実施するために、1つまたは複数のデータ処理構成要素(一般に本明細書では「プロセッサ」と呼ばれる)をプログラムする命令を記憶した、1つまたは複数のソリッドステートメモリデバイスなど、機械可読媒体であってもよい。他の実施形態では、これらの動作のいくつかは、配線論理(hardwired logic)を含む特定のハードウェア構成要素によって実施されてもよい。あるいは、それらの動作は、プログラムされたデータ処理構成要素と固定式ハードウェア回路構成要素との任意の組合せによって実施されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態が説明され、添付の図面に示されたが、そのような実施形態は、広範な本発明を制限するものではなく単に例示的なものであり、本発明は、種々の他の改変形態が当業者に想到しうるため、示され説明された特定の構成および配列に制限されるものではないことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先進的プロセス制御とプロセスの実時間最適化とを協調させるための方法であって、
制御されるべきプロセスに対応するプロセスデータおよび経済的データを受け取るステップと、
経済的目的関数を、前記プロセスデータ、前記経済的データおよび前記プロセスの非線形定常状態モデルに基づいて、実時間最適化モジュールによって計算するステップと、
前記プロセスに関連するプロセス制御変数の集合の観点から、前記実時間最適化モジュールによって前記経済的目的関数の非線形近似を導出するステップと、
前記非線形近似を先進的プロセス制御モジュールに送るステップと、
前記プロセスを前記先進的プロセス制御モジュールによって前記経済的目的に向けて押しやるように、前記非線形近似によって制約内で前記プロセスを制御するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記非線形近似によって前記プロセスを制御するステップが、
前記先進的プロセス制御モジュール内で前記非線形近似を使用し、プロセス制御変数に対する定常状態目標を計算するステップを含み、前記定常状態目標が、前記制約内で前記経済的目的に対して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非線形近似によって前記プロセスを制御するステップが、
前記先進的プロセス制御モジュール内で前記非線形近似を使用し、前記定常状態目標に動的に到達するための経路を計算するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非線形近似によって前記プロセスを制御するステップが、
前記先進的プロセス制御モジュール内で前記非線形近似を使用し、前記制約内で前記経済的目的に対する動的経路を計算するステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項5】
前記実時間最適化モジュールによる、前記経済的目的関数の前記計算および前記経済的目的関数の前記非線形近似の前記導出が、前記先進的プロセス制御モジュールによる前記非線形近似によって前記プロセスを制御するステップより低い頻度で実施される、請求項1から4のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項6】
前記経済的目的関数の前記計算、前記経済的目的関数の前記非線形近似の前記導出、および前記非線形近似の前記送ることが、前記プロセスが定常状態にあるときに開始される、請求項1から5のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項7】
前記先進的プロセス制御モジュールによって前記経済的目的に向けて前記プロセスを押しやるための、前記非線形近似による前記制約内の前記プロセスの制御が、前記プロセスが定常状態にあることとは独立に実施される、請求項1から6のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項8】
前記非線形近似が、前記プロセスのプロセス制御変数の前記集合の観点から経済面を表す、ヘッシアン行列および勾配ベクトルからなる、請求項1から7のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項9】
前記経済的目的関数の前記非線形近似が、前記経済的目的関数の局所的二次近似である、請求項1から8のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項10】
先進的プロセス制御とプロセスの実時間最適化とを協調させるためのシステムであって、
プロセスデータ、経済的データおよび前記プロセスの非線形定常状態モデルに基づいて経済的目的関数を計算し、前記プロセスのプロセス制御変数の集合の観点から、前記経済的目的関数の非線形近似を導出するための実時間最適化(RTO)モジュールと、
前記経済的目的に向けて前記プロセスを押しやるように、前記非線形近似によって制約内で前記プロセスを制御するための先進的プロセス制御(APC)モジュールとを備える、システム。
【請求項11】
前記APCモジュールによる前記非線形近似によって前記プロセスを制御するステップが、
前記非線形近似を使用し、前記プロセス制御変数の1つに対して定常状態目標を計算するステップを含み、前記定常状態目標が、前記制約内で前記経済的目的に対して計算される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記APCモジュールによる前記非線形近似によって前記プロセスを制御するステップが、
前記非線形近似を使用し、前記定常状態目標に動的に到達するための経路を計算するステップをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記APCモジュールによる前記非線形近似によって前記プロセスを制御するステップが、
前記プロセスにおける変化または前記プロセスへの制約に対する制約の変化に応答して、前記非線形近似に基づいて、前記プロセス制御変数に対する前記定常状態目標を再計算するステップと、
前記非線形近似を用いて前記再計算された定常状態目標に基づいて前記経路を再計算するステップとをさらに含む、請求項10から12のいずれか一項または複数項に記載のシステム。
【請求項14】
前記RTOモジュールが、前記APCモジュールより低い頻度で動作する、請求項10から13のいずれか一項または複数項に記載のシステム。
【請求項15】
前記RTOモジュールが、前記プロセスが定常状態にあるときに動作する、請求項10から14のいずれか一項または複数項に記載のシステム。
【請求項16】
コンピュータシステムで実行されたとき、
制御されるべきプロセスに対応するプロセスデータおよび経済的データを受け取り、
前記プロセスデータ、前記経済的データおよび前記プロセスの非線形定常状態モデルに基づいて、実時間最適化モジュールによって経済的目的関数を計算し、
前記プロセスに関連するプロセス制御変数の集合の観点から、前記実時間最適化モジュールによって前記経済的目的関数の非線形近似を導出し、
前記非線形近似を先進的プロセス制御モジュールに送信し、
前記先進的プロセス制御モジュールによって前記経済的目的に向けて前記プロセスを押しやるように、前記非線形近似によって制約内で前記プロセスを制御する命令を記憶した機械可読媒体を備える製造品(article of manufacture)。
【請求項17】
前記機械可読媒体が、前記コンピュータシステムに、
前記先進的プロセス制御モジュール内で前記非線形近似を使用させ、プロセス制御変数に対する定常状態目標を計算させる命令を有し、前記定常状態目標が、前記制約内で前記経済的目的に対して計算される、請求項16に記載の製造品。
【請求項18】
前記機械可読媒体が、前記コンピュータシステムに、
前記先進的プロセス制御モジュール内で前記非線形近似を使用させ、前記定常状態目標に動的に到達するための経路を計算させる命令を有する、請求項17に記載の製造品。
【請求項19】
前記機械可読媒体が、前記コンピュータシステムに、
前記プロセスにおける変化または前記プロセスへの制約の変化に応答して、前記非線形近似に基づいて、前記プロセス制御変数に対する前記定常状態目標を再計算させ、
前記非線形近似を用いて、前記再計算された定常状態目標に基づいて前記経路を再計算させる命令を有する、請求項18に記載の製造品。
【請求項20】
前記経済的目的関数の前記非線形近似が、前記経済的目的関数の局所的二次近似である、請求項16から19のいずれか一項または複数項に記載の製造品。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2013−513166(P2013−513166A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542132(P2012−542132)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/058390
【国際公開番号】WO2011/068794
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】