説明

光の外部結合を改善した電界発光ディスプレイ

フルカラー電界発光ディスプレイを開示し、そのディスプレイは、共通の基体及び共通の基体上に配置された電界発光デバイスの配列を含み、ここで前記電界発光デバイスの各々は、第一及び第二の電極の間に挟まれる電界発光層、電界発光層によって放出された光を、より長い波長を有する光に変化させることが可能である色変換材料、及び2n+1個の透明な誘電体の層のスタックを含み、ここでn=0,1,2,3,…であり、前記透明な誘電体の層は、交互に入れ替わる屈折率nを示す。電界発光ディスプレイは、改善された光の外部結合を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の基体及び共通の基体に配置される電界発光デバイスの配列を含む電界発光ディスプレイに関する。加えて、本発明は、電界発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(“OLED”)は、おおよそ20年間知られてきた。全てのOLEDは、同じ原理で作動する。半導体の有機材料の一つ以上の層が、二つの電極の間に挟まれる。負に帯電した電子が、陰極から単数又は複数の有機材料中へ移動することを引き起こす、電圧が、そのデバイスに印加される。典型的には正孔と呼ばれる、正の電荷は、陽極から入ってくる。正及び負の電荷は、中央の層(すなわち、半導体の有機材料)内で出会い、結合し、且つ光子を生じさせる。放出された光の波長、及びその結果として色は、光子を発生させる有機材料の電子の特性に依存する。有機材料は、有機電界発光高分子又は小さい電界発光分子を含んでもよい。また、有機電界発光高分子を含むOLEDは、高分子発光ダイオード(ポリLED又はPLED)とも呼ばれる。また、電界発光小分子を含むOLEDは、小分子有機発光ダイオード(SMOLED)とも呼ばれる。
【0003】
有機発光デバイスは、典型的には、ガラスのような基体上に形成された積層物である。電界発光層は、隣接する半導体層のみならず、陰極と陽極との間に挟まれる。半導体層は、正孔注入層及び電子注入層であってもよい。典型的なスタックは、非特許文献1に記載されている。
【0004】
典型的な電界発光ディスプレイにおいては、多数の電界発光デバイスが、単一の基体に形成されると共に、集団で規則的な格子パターンに配置される。個々の電界発光デバイスのアドレス指定を、受動的なモードで、又は、能動的なモードで行ってもよい。受動マトリックスの電界発光ディスプレイにおいては、格子の列を形成する数個の電界発光デバイスは、共通の陰極を共有してもよく、且つ、格子の行を形成する数個の電界発光デバイスは、共通の陽極を共有してもよい。与えられた集団における個々の電界発光デバイスは、それらの陰極及び陽極を、同時に活動させるとき、光を放出する。能動マトリックスの電界発光ディスプレイにおいては、個々の電界発光デバイスは、個々の陽極及び/又は陰極のパッドを含むと共に、個々にアドレス指定される。
【0005】
フルカラーの電界発光ディスプレイにおいては、各々の電界発光デバイスは、そのディスプレイのサブピクセルを形成する。緑色、赤色、及び青色の光を放出する三つの近隣のサブピクセルは、電界発光ディスプレイのピクセルを形成する。フルカラーの電界発光ディスプレイを得るための知られた方法は、例えば、青色の発光を変化させる色の方法を含む。このような電界発光ディスプレイにおいては、青色発光材料のみが、全ての電界発光デバイスの電界発光層内に使用される。赤色又は緑色のサブピクセルについては、青色の光が、蛍光材料のような効率的な色変換材料によって、それぞれ、赤色又は緑色の光に変換されるのに対して、青色のサブピクセルについては、光は、不変で、電界発光デバイスを通過する。
【0006】
能動マトリックスの電界発光ディスプレイが、透明な陰極を通じて、光を透過させるのに対して、受動マトリックスの電界発光ディスプレイは、通常、透明な基体を通じて、発生させた可視光を透過させる。
【0007】
効率の理由のために、金属のみが、陰極の材料に適切である。十分な高い伝導率を得るために、金属の層は、能動マトリックスの電界発光ディスプレイにおける発生した可視光の低い透過率をもたらす10nmから30nmまでの層の厚さを有することが必要である。
【非特許文献1】Philips Journal of Research,1998,51,467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、透明な陰極を通じた改善された光の外部結合を備えた電界発光デバイスの配列を含む電界発光ディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、共通の基体及び共通の基体に配置される電界発光デバイスの配列を含み、ここで、前記電界発光デバイスの各々は、第一の電極と第二の電極との間に挟まれる電界発光層、電界発光層によって放出される光を、より長い波長を有する光に変化させることが可能である色変換材料、及び2n+1個の透明な誘電体の層のスタックを含み、ここで、n=0,1,2,3,…であり、
前記透明な誘電体の層は、n>1.7の高い屈折率又はn≦1.7の低い屈折率を有し、
前記透明な誘電体の層は、前記透明な誘電体の層が、低い屈折率nを有することと交互に入れ替わる様式で配置される高い屈折率nを有し、
前記2n+1個の透明な誘電体の層のスタックは、電極の一つ及び前記電極に近接する高い屈折率nを有する誘電体の透明な層に隣接して配置される、
電界発光ディスプレイによって達成される。
【0010】
第二の電極に近接する誘電体の層が、高い屈折率nを有するので、第二の金属の電極における、電界発光層で発生させられる可視光の反射は、減少させられ、且つ、より多くの光が、第二の電極を通過する。透明な誘電体の層のスタックの助けで、ブラッグ様の光学フィルターが、得られる。電界発光デバイスの透過の特性を、この光学フィルターの助けで、調節することができる。特に、光の透過又は光の反射を、波長の選択的な様式で、調節することができる。
【0011】
請求項2及び3による好適な透明な材料は、可視光について高い透過率を示す。
【0012】
請求項4による透明な誘電体の材料を含む透明な誘電体の層のスタックは、光学フィルターとして機能する。それを、青色の光について高い透明度を及び赤色及び緑色の光について高い反射率を示すように、及び、このように、色変換材料からの前進の方向への放出を高めるように、設計することができる。
【0013】
請求項5による好適な実施形態は、大きいスクリーンの幅を含む大きい電界発光ディスプレイの製造を可能にする。
【0014】
請求項6による好適な実施形態で、色変換材料は、電界発光層の非常に近くに置かれるが、電界発光層と電気的接触して置かれない。その近接は、光学的なクロストークを小さく保つ。電界発光層は、半球の方式(フレネル分布)で光を放出する。なお、色変換材料を発光体の近くに置くことによって、半球の外縁におけるより多くの光線が、色変換材料によって、吸収され、且つ隣接するサブピクセルのユニットに到達しない。
【0015】
請求項7に記載の材料は、青色の光を、赤色、緑色、橙色、又は黄色のような、より長い波長を有する光に、効率的に変換する。
【0016】
また、本発明は、第一の電極と第二の電極との間に挟まれる電界発光層、電界発光層によって放出される光を、より長い波長を有する光に変化させることが可能である色変換材料、及び2n+1個の透明な誘電体の層のスタックを含み、ここでn=0,1,2,3,…であり、
前記透明な誘電体の層は、n>1.7の高い屈折率又はn≦1.7の低い屈折率を有し、
前記透明な誘電体の層は、前記透明な誘電体の層が、低い屈折率nを有することと交互に入れ替わる様式で配置される高い屈折率nを有し、
前記2n+1個の透明な誘電体の層のスタックは、電極の一つ及び前記電極に近接する高い屈折率nを有する誘電体の透明な層に隣接して配置される、
電界発光デバイスに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれる、添付する図面は、本発明の原理を説明することに役に立つ記述と一緒に、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明の好適な実施形態によるフルカラーの電界発光ディスプレイにおける数個のサブピクセルの断面の側面図を説明する。そのフルカラーの電界発光ディスプレイは、基板1を含む。電界発光ディスプレイが、上方に発光するデバイスであるので、基板1は、好ましくは、不透明な材料に由来するものである。最も好適な不透明な基板1は、ケイ素を含む。ピクセル化された電極を有する能動マトリックスのアドレス指定システムは、不透明な基板1内に形成される。能動マトリックスのアドレス指定システムのピクセル化された電極は、電界発光デバイスの第一の電極2を形成する。電界発光層3は、基板1及び第一の電極2上に形成される。電界発光層3は、好ましくは、青色の光を放出する。第二の透明な電極4は、電界発光層3上に形成される。2n+1個の、ここでn=0,1,2,3…であるが、透明な誘電体の層のスタック5は、第二の電極4の上部に形成される。透明な誘電体の層は、交互に入れ替わる屈折率を含む。第一の群の透明な誘電体の層9は、高い屈折率n>1.7を含むと共に、第二の群の透明な誘電体の層10は、低い屈折率n≦1.7を含む。第二の電極4に隣接する誘電体の層は、屈折率n>1.7を含む。第一の群の透明な誘電体の層9を、TiO、ZnS、及びSnOからなる群より選択される材料で構成してもよい。第二の群の透明な誘電体の層10を、SiO、MgF、及びアルミノケイ酸塩からなる群より選択される材料で構成してもよい。
【0019】
蓋の層6は、透明であると共に湿気及び/又は有機溶剤に不浸透性である透明な誘電体の層のスタック5の上部に形成される。蓋の層6を、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、シリコーン、エポキシ樹脂、又はテフロン(登録商標)のような高分子材料で構成してもよい。加えて、蓋の層6を、SiOのゾル−ゲルの層で構成してもよい。青色の光を緑色又は赤色の光に変換することが可能な色変換材料7は、ピクセルのパターンで蓋の層6内に埋め込まれる。ピクセルのパターンは、基板1における第一の電極2のピクセル化されたパターンと整列してある。青色発光のサブピクセルにおいては、蓋の層6は、色変換材料7を含有せずに、且つ、高分子材料又はSiOで構成されるのみである。
【0020】
色汚れを最小にするために、電界発光ディスプレイが、各々のサブピクセルの素子を側方に分離するための平行な壁8の配列を含むことが、好適である。平行な壁8を、ガラスで構成してもよい。平行な壁8が、黒鉛の粒子によって着色されることが、好適であることもある。
【0021】
図2は、色変換材料7が、ピクセル化された様式で蓋の層6上に配置される別の好適な実施形態を示す。重ねて、青色発光のサブピクセルは、色変換材料7を含有しない。この好適な実施形態においては、数個のサブピクセルが、共通の第二の電極4を共有する。
【0022】
別の好適な実施形態において、色変換材料7のセラミックの半透明の層が、赤色発光のピクセル又は緑色発光のピクセルに蓋の層6を形成する。青色発光のサブピクセルは、蓋の層6としてのガラス板を含有する。一般に、電界発光ディスプレイが、赤色、緑色、及び青色のサブピクセルを含むだけでなく、黄色又は橙色のサブピクセルもまた含むことは、可能である。
【0023】
色変換材料7は、350nmと500nmとの間の強い吸収を、及び、緑色についての520nmと550nmとの間の発光又は赤色についての600nmと650nmとの間の発光を、示す。加えて、色変換材料7は、高い(>90%)蛍光の量子効率を有する。適切な色変換材料7は、無機蛍光体を含んでもよい。無機蛍光体は、高い光束及び/又は比較的高い温度の環境に特に適切である。また、適切な色変換材料7は、有機蛍光材料を含んでもよい。有機蛍光材料は、比較的低い光束及び周囲温度の環境に特に適切である。加えて、CdS、CdSe、又はInPのような量子ドットを使用してもよい。量子ドットの発光スペクトルを、それらの大きさによって制御すると共に調節することができる。表1は、青色の光のダウンコンバージョンに適切な色変換材料7を列挙する。
【0024】
表1:青色の光のダウンコンバージョンに適切な色変換材料7
【表1】

【0025】
インクジェット印刷は、図2による電界発光ディスプレイにおいて、蓋の層6上における色変換材料7の適用をすることができる。この方法は、有機蛍光材料に、及び、粒度が十分に小さいとすれば無機蛍光体に、特に適切である。いくつかの無機蛍光体については、また、蒸着の工程が、適用可能である。一般に、マイクロステンシルによる印刷は、全ての材料についての選択肢である。
【0026】
色変換材料7が、蓋の層6の中に埋め込まれる場合には、蓋の層6に使用される材料の単量体の前駆体を、色変換材料7と混合する。塗布の後に、得られた混合物を、熱開始反応又は光化学開始反応によって重合させる。
【0027】
図3は、透明な層のスタック5の拡大図を示す。上述したように、第一の群の透明な誘電体の層9の層は、第二の群の透明な誘電体の層10の層と交互に入れ替わる。
【0028】
図4は、交互に入れ替わる様式でZnS及びMgFを含む十九個の層のスタック5によって被覆される15nmの銀の層の透過率曲線を示す。透明な誘電体の層のスタック5は、可視のスペクトルの青色の領域で高い透明度を、並びに、可視光の緑色及び赤色の領域で高い反射率を、示す。この方法は、色変換材料を含有する層からの前進の方向への光の放出を高める。透明な誘電体の層のスタック5の助けで、赤色及び緑色の光は、それが、さらにまたデバイスの中へ入り込まないように、直ちに反射される。一方、刺激する青色の光は、ほとんど損失無しに透明な誘電体の層のスタック5を通過する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態によるフルカラーの電界発光ディスプレイにおける数個のサブピクセルの断面の側面図を説明する。
【図2】本発明のさらなる実施形態によるフルカラーの電界発光ディスプレイにおける数個のサブピクセルの断面の側面図を説明する。
【図3】透明層のスタックの拡大図を示す。
【図4】交互に入れ替わる様式でZnS及びMgFを含む十九個の層のスタックによって被覆される15nmの銀の層の透過率曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の基体及び該共通の基体に配置される電界発光デバイスの配列を含む電界発光ディスプレイであって、
該電界発光デバイスの各々は、第一の電極と第二の電極との間に挟まれる電界発光層、該電界発光層によって放出される光を、より長い波長を有する光に変化させることが可能である色変換材料、及び2n+1個の透明な誘電体の層のスタックを含み、
n=0,1,2,3,…であり、
該透明な誘電体の層は、n>1.7の高い屈折率又はn≦1.7の低い屈折率を有し、
該透明な誘電体の層は、該透明な誘電体の層が低い屈折率nを有することと交互に入れ替わる様式で配置される高い屈折率nを有し、
該2n+1個の透明な誘電体の層のスタックは、該電極及び該電極に近接する高い屈折率nを有する誘電体の透明な層の一つに隣接して配置される、電界発光ディスプレイ。
【請求項2】
前記屈折率n>1.7を有する透明な誘電体の層は、TiO、ZnS、及びSnOからなる群より選択される、請求項1に記載の電界発光ディスプレイ。
【請求項3】
前記屈折率n≦1.7を有する透明な誘電体の層は、SiO、MgF、及びアルミノケイ酸塩からなる群より選択される、請求項1に記載の電界発光ディスプレイ。
【請求項4】
前記高い屈折率nを有する透明な誘電体の層は、ZnSであり、
前記低い屈折率nを有する透明な誘電体の層は、MgFである、請求項1に記載の電界発光ディスプレイ。
【請求項5】
前記電界発光デバイスは、ピクセル化された第一の電極を有する能動マトリックスのデバイスである、請求項1に記載の電界発光ディスプレイ。
【請求項6】
蓋の層は、前記第二の電極に隣接して置かれ、
前記色変換材料は、該蓋の層に埋め込まれるか、又は該蓋の層の上部に置かれる、請求項1に記載の電界発光ディスプレイ。
【請求項7】
前記色変換材料は、(Ba,Sr)SiO:Eu、SrGa:Eu、CaS:Ce、BaZnS:Ce,K、Lumogen(登録商標) yellow ED206、(Sr,Ca)SiO:Eu、(Y,Gd)(Al,Ga)12:Ce、YAl12:Ce、Lumogen(登録商標) F orange 240、SrGa:Pb、SrSi:Eu、SrS:Eu、Lumogen(登録商標) F red 300、BaSi:Eu、CaSi:Eu、CaSiN:Eu、及びCaS:Euからなる群より選択される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電界発光ディスプレイ。
【請求項8】
第一の電極と第二の電極との間に挟まれる電界発光層、該電界発光層によって放出される光を、より長い波長を有する光に変化させることが可能である色変換材料、及び2n+1個の透明な誘電体の層のスタックを含む電界発光デバイスであって、
n=0,1,2,3,…であり、
該透明な誘電体の層は、n>1.7の高い屈折率又はn≦1.7の低い屈折率を有し、
該透明な誘電体の層は、該透明な誘電体の層が低い屈折率nを有することと交互に入れ替わる様式で配置される高い屈折率nを有し、
該2n+1個の透明な誘電体の層のスタックは、該電極及び該電極に近接する高い屈折率nを有する誘電体の透明な層の一つに隣接して配置される、電界発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−501617(P2006−501617A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541046(P2004−541046)
【出願日】平成15年9月23日(2003.9.23)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004116
【国際公開番号】WO2004/032576
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】