説明

光の照射位置の補正方法およびパターン描画装置

【課題】他装置を使用することなく、迅速かつ低コストで光の照射位置を補正することができるパターン描画装置およびパターン描画装置における光の照射位置の補正方法を提供する。
【解決手段】レジスト膜が形成されていない試験用基板91をステージ10上に載置し、光学ヘッド32a,32d,32gからパルス光PLを照射するとともに、その投影像SPIを照射位置計測カメラ51,52,53により撮影する。また、撮影により取得された画像に基づいて、試験用基板91上の枠パターンに対する投影像SPIの相対位置のずれを計測し、そのずれを補正する。これにより、他装置を使用することなく、パターン描画装置単独で、基板に対するパルス光PLの照射位置を迅速に補正することができる。また、1枚の試験用基板91を繰り返し使用することができるため、調整作業に掛かるコストを低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用ガラス基板、フラットパネルディスプレイ(液晶表示装置,プラズマ表示装置等)用ガラス基板、半導体基板、プリント基板等の基板上に所定のパターンを描画するパターン描画装置およびパターン描画装置における光の照射位置の補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のカラーフィルタを製造する工程では、カラーフィルタ用の基板に対して光を照射することにより、基板上の感光材料に所定のパターンを描画するパターン描画装置が使用されている。従来のパターン描画装置は、例えば特許文献1に開示されているように、基板を水平姿勢に保持しつつ移動させるステージと、マスクを介して基板の上面に光を照射する複数の光学ヘッドとを備えている。パターン描画装置は、ステージとともに基板を移動させつつ、複数の光学ヘッドから断続的に光を照射することにより、液晶表示装置の画素に対応した規則性パターンを基板の上面に描画する。
【0003】
【特許文献1】特開2006−145745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなパターン描画装置を工場内において立ち上げるときや、あるいは、パターン描画装置のメンテナンスを行ったときには、ステージ上の基板に対する光の照射位置のずれを補正するための調整作業が行われる。従来、このような調整作業を行うときには、感光材料が上面に形成された基板に対して実際に描画処理を行い、描画処理後の基板を現像した後、基板の上面に形成されたパターンの位置ずれを所定の計測装置において計測していた。そして、計測装置の計測結果に基づいてパターン描画装置のパラメータを補正することにより、基板に対する光の照射位置を補正していた。
【0005】
しかしながら、このような従来の調整方法では、基板に対して、洗浄、感光材料塗布、減圧乾燥、プリベーク等の前処理や、現像、ポストベーク等の後処理を行う必要があった。このため、パターン描画装置の調整作業を行うために、多くの他装置を使用しなければならず、他装置の製品稼働率を低下させてしまうという問題があった。また、他装置の使用状況によってパターン描画装置の調整作業が停滞してしまう場合もあるため、パターン描画装置の調整作業を迅速に完了させることができないという問題もあった。
【0006】
また、パターン描画装置のパラメータを最適値に追い込むために、繰り返し上記の調整作業を行おうとすると、高価な基板を何枚も使用しなければならず、調整作業に掛かるコストが大きいという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、他装置を使用することなく、迅速かつ低コストで光の照射位置を補正することができるパターン描画装置およびパターン描画装置における光の照射位置の補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、基板の表面に形成された感光性材料の層に光を照射することにより、基板上に予め存在する第1パターンに対する所定の相対位置に第2パターンを形成するパターン描画装置における光の照射位置の補正方法であって、前記第1パターンを有するとともに前記感光性材料の層を有さない試験用基板を、前記パターン描画装置に搬入する搬入工程と、前記搬入工程により搬入された前記試験用基板に対して、前記第2パターンの少なくとも一部に対応する光を照射する光照射工程と、前記光照射工程により前記試験用基板上に形成された前記第2パターンの少なくとも一部の投影像と、前記投影像に対応する前記第1パターンの少なくとも一部とを同時に撮影する撮影工程と、前記撮影工程により取得された画像に基づいて、前記第1パターンに対する前記投影像の相対位置のずれを算出する算出工程と、前記算出工程により算出された相対位置のずれに基づいて、光の照射位置を補正する第1補正工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光の照射位置の補正方法であって、前記光照射工程では、前記第2パターンの一部に対応する光を通過させ、前記第2パターンの他の部分に対応する光を遮断しつつ、試験用基板に対する光の照射を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の光の照射位置の補正方法であって、前記光照射工程では、前記第2パターンの少なくとも一部に対応するパルス光を照射し、前記撮影工程では、前記光照射工程によるパルス光の照射と連動して撮影動作を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の光の照射位置の補正方法であって、前記光照射工程では、試験用基板を所定の走査方向に移動させつつ光の照射を行い、前記撮影工程では、移動中の基板に対して撮影動作を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の光の照射位置の補正方法であって、前記光照射工程では、試験用基板上の複数箇所に光を照射し、前記撮影工程では、前記試験用基板上の前記複数箇所において撮影動作を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の光の照射位置の補正方法であって、前記パターン描画装置は、光を照射する複数の光学ヘッドを有し、前記複数の光学ヘッドから照射される複数本の光の相互の位置関係を補正する第2補正工程を更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、基板の表面に形成された感光性材料の層に光を照射することにより、基板上に予め存在する第1パターンに対する所定の相対位置に第2パターンを形成するパターン描画装置であって、基板を保持する保持手段と、前記保持手段に保持された基板に対して、前記第2パターンに対応する光を照射する光照射手段と、前記光照射手段により基板上に形成された前記第2パターンの少なくとも一部の投影像と、前記投影像に対応する前記第1パターンの少なくとも一部とを同時に撮影する撮影手段と、前記撮影手段により取得された画像に基づいて、前記第1パターンに対する前記投影像の相対位置のずれを算出する算出手段と、前記算出手段により算出された相対位置のずれに基づいて、前記保持手段に保持された基板に対する前記光照射手段からの光の照射位置を補正する第1補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載のパターン描画装置であって、前記光照射手段は、前記第2パターンの一部に対応する光を通過させ、前記第2パターンの他の部分に対応する光を遮断する遮光手段を有することを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項7または請求項8に記載のパターン描画装置であって、前記光照射手段は、前記第2パターンに対応するパルス光を照射し、前記撮影手段は、前記光照射手段によるパルス光の照射と連動して撮影動作を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項7から請求項9までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、前記光照射手段は、基板を所定の走査方向に移動させつつ光の照射を行い、前記撮影手段は、移動中の基板に対して撮影動作を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項7から請求項10までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、前記撮影手段は、基板上の複数箇所において撮影動作を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項12に係る発明は、請求項7から請求項11までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、前記光照射手段は、光を照射する複数の光学ヘッドを有し、前記複数の光学ヘッドから照射される複数本の光の相互の位置関係を補正する第2補正手段を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1〜6に記載の発明によれば、第1パターンを有するとともに感光性材料の層を有さない試験用基板に対して、第2パターンの少なくとも一部に対応する光を照射するとともに、試験用基板上に形成された投影像と第1パターンの少なくとも一部とを同時に撮影し、取得された画像に基づいて算出された相対位置のずれに基づいて光の照射位置を補正する。このため、他装置を使用することなく、パターン描画装置単独で、基板に対する光の照射位置を迅速に補正することができる。また、試験用基板を現像する必要はなく、1枚の試験用基板を繰り返し使用することができるため、調整作業に掛かるコストを低減させることができる。
【0021】
特に、請求項2に記載の発明によれば、第2パターンの一部に対応する光を通過させ、第2パターンの他の部分に対応する光を遮断しつつ、試験用基板に対する光の照射を行う。このため、撮影工程において取得された画像中において、測定対象となる投影像を容易に特定することができる。
【0022】
特に、請求項3に記載の発明によれば、パルス光の照射と連動して撮影動作を行う。このため、パルス光により試験用基板の上面に瞬間的に形成される投影像を、良好に撮影することができる。
【0023】
特に、請求項4に記載の発明によれば、光照射工程では、試験用基板を所定の走査方向に移動させつつ光の照射を行い、撮影工程では、移動中の基板に対して撮影動作を行う。このため、通常の描画処理の動作により近い状態で、基板に対する光の照射位置を補正することができる。
【0024】
特に、請求項5に記載の発明によれば、光照射工程では、試験用基板上の複数箇所に光を照射し、撮影工程では、試験用基板上の複数箇所において撮影動作を行う。このため、複数箇所において取得された画像を解析することにより、基板の伸縮についての情報を得ることができ、当該情報に基づいて基板に対する光の照射位置をより精密に補正することができる。
【0025】
特に、請求項6に記載の発明によれば、複数の光学ヘッドから照射される複数本の光の相互の位置関係を補正する。このため、一部の光学ヘッドについて光照射工程や撮影工程を実行して光の照射位置を補正すれば、全ての光学ヘッドについて光の照射位置が補正される。
【0026】
また、請求項7〜12に記載の発明によれば、パターン描画装置は、保持手段に保持された基板に対して、第2パターンに対応する光を照射する光照射手段と、光照射手段により基板上に形成された第2パターンの少なくとも一部の投影像と、投影像に対応する第1パターンの少なくとも一部とを同時に撮影する撮影手段と、撮影手段により取得された画像に基づいて、第1パターンに対する投影像の相対位置のずれを算出する算出手段と、算出手段により算出された相対位置のずれに基づいて、保持手段に保持された基板に対する光照射手段からの光の照射位置を補正する第1補正手段と、を備える。このため、他装置を使用することなく、パターン描画装置単独で、基板に対する光の照射位置を迅速に補正することができる。また、試験用基板を現像する必要はなく、1枚の試験用基板を繰り返し使用することができるため、調整作業に掛かるコストを低減させることができる。
【0027】
特に、請求項8に記載の発明によれば、光照射手段は、第2パターンの一部に対応する光を通過させ、第2パターンの他の部分に対応する光を遮断する遮光手段を有する。このため、撮影手段により取得された画像中において、測定対象となる投影像を容易に特定することができる。
【0028】
特に、請求項9に記載の発明によれば、撮影手段は、光照射手段によるパルス光の照射と連動して撮影動作を行う。このため、パルス光により試験用基板の上面に瞬間的に形成される投影像を、良好に撮影することができる。
【0029】
特に、請求項10に記載の発明によれば、光照射手段は、基板を所定の走査方向に移動させつつ光の照射を行い、撮影手段は、移動中の基板に対して撮影動作を行う。このため、通常の描画処理の動作により近い状態で、基板に対する光の照射位置を補正することができる。
【0030】
特に、請求項11に記載の発明によれば、撮影手段は、基板上の複数箇所において撮影動作を行う。このため、複数箇所において取得された画像を解析することにより、基板の伸縮についての情報を得ることができ、当該情報に基づいて基板に対する光の照射位置をより精密に補正することができる。
【0031】
特に、請求項12に記載の発明によれば、複数の光学ヘッドから照射される複数本の光の相互の位置関係を補正する第2補正手段を更に備える。このため、一部の光学ヘッドについて光照射工程や撮影工程を実行して光の照射位置を補正すれば、全ての光学ヘッドについて光の照射位置が補正される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照される図1〜図3,図7,図9,図10,図14,図16,図17には、パターン描画装置1の各部の位置関係や動作方向を明確化するために、共通のXYZ直交座標系が示されている。
【0033】
<1.パターン描画装置の構成>
図1および図2は、本発明の一実施形態に係るパターン描画装置1の構成を示した側面図および上面図である。このパターン描画装置1は、液晶表示装置の部品であるカラーフィルタの製造工程において、カラーフィルタ用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)9の上面に形成されたカラーレジストに、液晶表示装置の画素に応じた規則性パターンを描画するための装置である。図1および図2に示したように、パターン描画装置1は、主として、ステージ10と、ステージ移動機構20と、ヘッド部30と、ヘッドピッチ計測カメラ40と、3つの照射位置計測カメラ51〜53と、4つのアライメントカメラ61〜64と、制御部70とを備えている。
【0034】
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に基板9を水平姿勢に載置して保持するための保持部である。ステージ10は、例えば、アルミニウム等の金属材により構成される。ステージ10の上面には、真空源に接続された複数の吸引孔(図示省略)が形成されている。このため、ステージ10上に載置された基板9は、複数の吸引孔の吸引圧によりステージ10の上面に固定保持される。
【0035】
図3は、描画処理の対象となる基板9の上面図である。また、図4は、図3の基板9をA−A線で切断した縦断面図である。図3および図4に示したように、基板9の上面の四隅には、後述するアライメント処理において使用されるアライメントマークAM1〜AM4が形成されている。また、基板9の上面には、本装置1の描画処理により形成される規則性パターン(第2パターン)の下地となるブラックマトリクスBM(第1パターン)が形成されている。
【0036】
図5は、ブラックマトリクスBMの一部(図3中の領域B)を拡大して示した図である。ブラックマトリクスBMは、遮光性の薄膜Tにより構成され、図5に示したように、ブラックマトリクスBM中には、薄膜Tを貫通する複数の枠パターンFPが形成されている。複数の枠パターンFPは、ヘッド部30による光の照射位置に対応した位置に規則的に配列されている。また、図4に示したように、基板9の上面のブラックマトリクスBMよりも上層側には、感光性の材料であるカラーレジストの膜(レジスト膜)REが形成されている。
【0037】
図6は、後述する照射位置の補正処理において、ステージ10上に保持される試験用基板91の縦断面図である。試験用基板91は、上記の基板9と同一の外形寸法を有しており、その上面にアライメントマークAM1〜AM4とブラックマトリクスBMとが形成されている点は、上記の基板9と同一である。但し、試験用基板91は、その上面にレジスト膜REが形成されていない点において、上記の基板9と相違する。
【0038】
図1および図2に戻る。ステージ移動機構20は、本装置1の基台11に対してステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向)に移動させるための機構である。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23と、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25と、を有している。
【0039】
回転機構21は、ステージ10の−Y側の端辺に取り付けられた移動子と、支持プレート22の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ21aを有している。また、回転機構21は、ステージ10の下面中央部と支持プレート22との間に回転軸21bを有している。このため、リニアモータ21aを動作させると、固定子に沿って移動子が副走査方向に移動し、支持プレート22上の回転軸21bを中心としてステージ10が所定角度の範囲内で回転する。
【0040】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ23aを有している。また、副走査機構23は、支持プレート22とベースプレート24との間に、副走査方向にのびる一対のガイド部23bを有している。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイド部23bに沿って支持プレート22およびステージ10が副走査方向に移動する。
【0041】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と基台11上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ25aを有している。また、主走査機構25は、ベースプレート24と基台11との間に、主走査方向にのびる一対のガイド部25bを有している。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台11上のガイド部25bに沿ってベースプレート24、支持プレート22、およびステージ10が主走査方向に移動する。
【0042】
ヘッド部30は、ステージ10上に保持された基板9の上面に向けてパルス光を照射する光照射部である。ヘッド部30は、ステージ10およびステージ移動機構20を跨ぐようにして基台11上に架設されたフレーム31と、フレーム31上に副走査方向に沿って等間隔に取り付けられた7つの光学ヘッド32a〜32gとを有する。7つの光学ヘッド32a〜32gは、照明光学系33を介して1つのレーザ発振器34に接続されている。また、レーザ発振器34には、レーザ発振器34のオンオフ駆動を行うレーザ駆動部35が接続されている。レーザ駆動部35を動作させると、レーザ発振器34からパルス光が発振され、当該パルス光は照明光学系33を介して各光学ヘッド32a〜32gの内部に導入される。
【0043】
各光学ヘッド32a〜32gの内部には、照明光学系33から導入されたパルス光を下方へ向けて出射する出射部321と、パルス光を部分的に遮光するマスクユニット322と、マスクユニット322を通過した光束を基板9の上面に照射する投影光学系323とが設けられている。マスクユニット322には、所定の透遮光パターンを有するガラス板であるマスクMが搭載されている。出射部321から出射されたパルス光は、マスクユニット322を通過する際にマスクM上のパターンに応じて遮光され、所定のパターン形状に成形された光束として投影光学系323へ入射する。そして、投影光学系323を介してパルス光が基板9の上面に照射され、基板9上のレジスト膜REを露光することにより、基板9の上面にパターンが描画される。
【0044】
図7は、各光学ヘッド32a〜32gに搭載されるマスクユニット322の構成を模式的に示した図である。図7に示したように、マスクMの上面は遮光膜Fに被覆されており、その中に透光部となる複数本のスリットパターンSPが形成されている。マスクユニット322は、このようなマスクMを保持する保持機構324と、マスクMの上方位置に配置されたシャッタ機構325とを有している。保持機構324は、マスクMの端辺を支持し、複数本のスリットパターンSPの配列方向が副走査方向と一致するような姿勢でマスクMを保持する。また、図7中に概念的に示したように、保持機構324には、マスクMを主走査方向および副走査方向に移動させるためのマスク移動機構324aが接続されている。
【0045】
シャッタ機構325は、マスクMに照射されるパルス光PLを遮光するシャッタ板325aと、シャッタ板325aをスライド移動させるシャッタ移動機構325bとを有している。シャッタ板325aには、上方からのパルス光PLを遮光する遮光部P1と、上方からのパルス光PLを透過する透光部P2とが形成されている。シャッタ機構325は、シャッタ移動機構325bによりシャッタ板325aをスライド移動させることにより、マスクM上の全てのスリットパターンSPにパルス光PLを照射する状態(全開状態)と、マスクM上の一部の(例えば1本の)スリットパターンSPのみにパルス光PLを照射する状態(半開状態)と、マスクM上のいずれのスリットパターンSPにもパルス光PLを照射しない状態(全閉状態)とを、切り替えることができる。
【0046】
マスクM上のスリットパターンSPにパルス光PLが照射されると、パルス光PLは、スリットパターンSPの形状に応じて成形された1本または複数本のパルス光PLとなって、下方へ照射される。そして、スリットパターンSPを通過した1本または複数本のパルス光PLが、投影光学系323を介して基板9の上面に照射されることにより、スリットパターンSPの像が基板9の上面に投影される。このパターン描画装置1は、ステージ10の位置とレーザ発振器34の駆動のタイミングとを制御することにより、図8に示したように、ブラックマトリクスBM中の枠パターンFPに対する所定の位置(枠パターンFPに重なる位置)に、スリットパターンSPの像SPIを投影する。
【0047】
7つの光学ヘッド32a〜32gは、副走査方向に沿って等間隔に(例えば200mm間隔で)配列されている。ステージ10を主走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a〜32gからパルス光PLを断続的に照射すると、マスクM上の複数のスリットパターンSPが基板9の上面に繰り返し投影され、図9に示したように、所定の露光幅D(例えば、50mm幅)を有する複数本のパターン群が基板9の上面に描画される。パターン描画装置1は、1回の主走査方向への描画が完了すると、ステージ10を副走査方向に露光幅D分だけ移動させ、ステージ10を再び主走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a〜32gからパルス光PLを照射する。このように、パターン描画装置1は、光学ヘッド32a〜32gの露光幅分ずつ基板9を副走査方向にずらしながら、主走査方向へのパターンの描画を所定回数(例えば4回)繰り返すことにより、図10に示したように、基板9の描画領域全面にカラーフィルタ用の規則性パターンを形成する。
【0048】
図1および図2に戻る。ヘッドピッチ計測カメラ40は、各光学ヘッド32a〜32gから照射されるパルス光PLを撮影するためのカメラである。ヘッドピッチ計測カメラ40は、例えば、CCDカメラにより構成され、ベースプレート24の+Y側の端辺にガイドレール41を介して取り付けられている。また、図1中に概念的に示したように、ヘッドピッチ計測カメラ40には、ガイドレール41に沿ってヘッドピッチ計測カメラ40を副走査方向に移動させるためのカメラ移動機構42が接続されている。カメラ移動機構42は、例えば、リニアモータを利用して構成することができる。
【0049】
ヘッドピッチ計測カメラ40による撮影動作を行うときには、まず、ヘッドピッチ計測カメラ40がヘッド部30の下方に位置するように(図1および図2の状態となるように)、ベースプレート24を移動させる。そして、ガイドレール41に沿ってヘッドピッチ計測カメラ40を副走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a〜32gからパルス光PLを照射し、照射されたパルス光PLをヘッドピッチ計測カメラ40により撮影する。ヘッドピッチ計測カメラ40により撮影された画像は、電子データとして制御部70へ送信され、7つの光学ヘッド32a〜32gから照射される各パルス光PLの相互の位置関係のずれを計測するために使用される。
【0050】
照射位置計測カメラ51〜53は、後述する照射位置の補正処理において、試験用基板91の上面に投影されるスリットパターンSPの像SPI(図8参照)を撮影するためのカメラである。照射位置計測カメラ51〜53は、例えば、CCDカメラにより構成され、それぞれ所定の金具を介してヘッド部30のフレーム31に取り付けられている。照射位置計測カメラ51〜53は、最も+X側に配置された光学ヘッド32a、中央位置に配置された光学ヘッド32d、および最も−X側に配置された光学ヘッド32gの、それぞれの−Y側に隣接する位置に配置され、各照射位置計測カメラ51〜53の撮影方向は、各光学ヘッド32a,32d,32gによるパルス光PLの照射位置に向けられている。すなわち、3つの照射位置計測カメラ51〜53は、3つの光学ヘッド32a,32d,32gにそれぞれ対応している。
【0051】
照射位置計測カメラ51〜53は、試験用基板91の上面に投影されるスリットパターンSPの像SPIと、それに対応するブラックマトリクスBM中の枠パターンFPとを、同時に撮影する。照射位置計測カメラ51〜53により取得された画像は、電子データとして制御部70へ送信され、枠パターンFPに対する投影像SPIの相対位置のずれを計測するために使用される。
【0052】
4つのアライメントカメラ61〜64は、基板9または試験用基板91の上面に形成されたアライメントマークAM1〜AM4を撮影するためのカメラである。アライメントカメラ61〜64は、例えば、CCDカメラにより構成され、それぞれ所定の支持部(図示省略)を介して基台11に固定されている。4つのアライメントカメラ61〜64は、ステージ10が最も−Y側の位置(図1,図2の位置)に配置されているときにステージ10上に載置された基板9または試験用基板91の各アライメントマークAM1〜AM4のほぼ真上となる位置に配置されている。
【0053】
4つのアライメントカメラ61〜64によりアライメントマークAM1〜AM4を撮影するときには、まず、パターン描画装置1は、ステージ10を最も−Y側の位置(図1,図2の位置)に移動させる。そして、アライメントカメラ61〜64による撮影動作を実行させることにより、各アライメントマークAM1〜AM4の画像を取得する。アライメントカメラ61〜64により取得された画像は、電子データとして制御部70へ送信され、基板9または試験用基板91の位置(X軸方向の位置、Y軸方向の位置、およびZ軸周りの傾き)のずれを計測するために使用される。
【0054】
制御部70は、種々の演算処理を実行しつつ、パターン描画装置1内の各部の動作を制御するための情報処理部である。図11は、制御部70とパターン描画装置1の各部との間の接続構成を示したブロック図である。図11に示したように、制御部70は、上記のリニアモータ21a,23a,25a、照明光学系33、レーザ駆動部35、投影光学系323、マスク移動機構324a、シャッタ移動機構325b、ヘッドピッチ計測カメラ40、カメラ移動機構42、照射位置計測カメラ51〜53、およびアライメントカメラ61〜64と電気的に接続されている。制御部70は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより構成され、コンピュータにインストールされたプログラムに従ってコンピュータが動作することにより、上記各部の動作制御を行う。
【0055】
<2.パターン描画装置の基本動作>
次に、上記のパターン描画装置1において、基板9の上面に規則性パターンを描画するときの動作(基本動作)について、図12のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0056】
このパターン描画装置1において基板9の上面に規則性パターンを描画するときには、まず、作業者または所定の搬送機構により、描画処理の対象となる基板9が搬入され、ステージ10の上面に基板9が載置される(ステップS11)。基板9の上面には、図4に示したように、アライメントマークAM1〜AM4、ブラックマトリクスBM、およびレジスト膜REが予め形成されている。
【0057】
ステージ10の上面に基板9が載置されると、次に、パターン描画装置1は、基板9の位置(X軸方向の位置、Y軸方向の位置、およびZ軸周りの傾き)を補正するためのアライメント処理を行う(ステップS12)。ここでは、パターン描画装置1は、ステージ10を最も−Y側の位置(図1,図2の位置)へ移動させ、各アライメントカメラ61〜64により、基板9上のアライメントマークAM1〜AM4をそれぞれ撮影する。また、パターン描画装置1の制御部70は、アライメントカメラ61〜64により取得された各アライメントマークAM1〜AM4の画像に基づいて基板9の位置ずれ量を算出し、算出された位置ずれ量を低減させる方向にステージ移動機構20を動作させることにより、基板9の位置を補正する。
【0058】
基板9のアライメント処理が完了すると、パターン描画装置1は、アライメント処理後の基板9に対して描画処理を行う(ステップS13)。すなわち、パターン描画装置1は、ステージ10を主走査方向および副走査方向に移動させながら、ヘッド部30の複数の光学ヘッド32a〜32gからパルス光を断続的に照射することにより、図9および図10に示したように、基板9上の描画領域全体に所定の規則性パターン(規則的に配列されたスリットパターン群)を描画する。規則性パターンは、個々のスリットパターンが、基板9上に予め存在するブラックマトリクスBMの複数の枠パターンFPにそれぞれ重なるような位置に形成される。
【0059】
その後、作業者または所定の搬送機構により、ステージ10の上面から基板9が搬出され、1枚の基板9に対する処理が終了する(ステップS14)。
【0060】
<3.光の照射位置の補正処理>
続いて、上記のパターン描画装置1において、基板に対するパルス光PLの照射位置を補正するときの動作について、図13のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図13に示した一連の動作は、図12に示した上記の基本動作を開始する前にパターン描画装置1の調整作業として実施される動作であり、例えば、カラーフィルタを製造する工場内においてパターン描画装置1を立ち上げるときや、パターン描画装置1のメンテナンスを行った後や、あるいは、描画処理の条件が変更されたときなどに、必要に応じて実施される動作である。
【0061】
パルス光PLの照射位置を補正するときには、まず、7つの光学ヘッド32a〜32gから照射される各パルス光PLの相互の位置関係を補正する処理を行う(ステップS21)。具体的には、まず、ヘッドピッチ計測カメラ40がヘッド部30の下方に位置するように(図1および図2の状態となるように)、ベースプレート24を移動させる。そして、ガイドレール41に沿ってヘッドピッチ計測カメラ40を副走査方向に移動させつつ、各光学ヘッド32a〜32gからパルス光PLを照射し、照射されたパルス光PLをヘッドピッチ計測カメラ40により撮影する。
【0062】
ヘッドピッチ計測カメラ40により取得された画像は、電子データとして制御部70へ送信される。制御部70は、受信した画像を解析することにより、7つの光学ヘッド32a〜32gから照射される各パルス光PLの相互の位置関係のずれを算出する。また、制御部70は、算出された各パルス光PLの相互の位置関係のずれを低減させるように、投影光学系323およびマスク移動機構324aを動作させる。これにより、7つの光学ヘッド32a〜32gから照射される各パルス光PLの相互の位置関係が補正される。
【0063】
なお、このステップS21では、各光学ヘッド32a〜32gのシャッタ機構325を全開状態とし、マスクM上の全てのスリットパターンSPを介してパルス光PLを照射することが望ましい。このようにすれば、光学ヘッド同士のパルス光の位置関係だけではなく、各光学ヘッド内における複数のパルス光PLの相互の位置関係も計測することができ、それを補正することができる。
【0064】
次に、作業者または所定の搬送機構により試験用基板91が搬入され、ステージ10の上面に試験用基板91が載置される(ステップS22)。試験用基板91の上面には、図6に示したように、アライメントマークAM1〜AM4およびブラックマトリクスBMが予め形成されており、レジスト膜REは形成されていない。
【0065】
ステージ10の上面に試験用基板91が載置されると、次に、パターン描画装置1は、試験用基板91の位置(X軸方向の位置、Y軸方向の位置、およびZ軸周りの傾き)を補正するためのアライメント処理を行う(ステップS23)。ここでは、パターン描画装置1は、ステージ10を最も−Y側の位置(図1,図2の位置)へ移動させ、各アライメントカメラ61〜64により、試験用基板91上のアライメントマークAM1〜AM4をそれぞれ撮影する。また、パターン描画装置1の制御部70は、アライメントカメラ61〜64により取得された各アライメントマークAM1〜AM4の画像に基づいて試験用基板91の位置ずれ量を算出し、算出された位置ずれ量を低減させる方向にステージ移動機構20を動作させることにより、試験用基板91の位置を補正する。
【0066】
試験用基板91のアライメント処理が完了すると、続いて、パターン描画装置1は、試験用基板91上の特定の位置に対するパルス光PLの照射と、その照射により形成された投影像SPIの撮影とを行う(ステップS24)。ここでは、まず、3つの光学ヘッド32a,32d,32gのシャッタ機構325を調節し、これらの光学ヘッド32a,32d,32gからそれぞれ1本のパルス光(1つのスリットパターンSPを介したパルス光)PLのみが照射される状態とする。また、他の光学ヘッド32b,32c,32e,32fのシャッタ機構325は、いずれも全閉状態としておく。
【0067】
その後、パターン描画装置1は、図14に示したように、試験用基板91を主走査方向に移動させつつ、所定のタイミングで3つの光学ヘッド32a,32d,32gからそれぞれ1本のパルス光PLを照射する。各光学ヘッド32a,32d,32gから照射されたパルス光PLは、それぞれ試験用基板91上の所定の位置に照射され、それぞれ投影像SPIを形成する。なお、このように試験用基板91上の所定の位置のみにパルス光PLを照射させる動作は、予め準備された描画データ(ジョブ)に基づいて制御部70がステージ移動機構20やレーザ駆動部35を動作制御することにより実現される。
【0068】
また、パターン描画装置1は、光学ヘッド32a,32d,32gによるパルス光PLの照射と同時に、照射位置計測カメラ51〜53による撮影動作を実行する。ここでは、3つの照射位置計測カメラ51〜53は、光学ヘッド32a,32d,32gにより形成される3つの投影像SPIを、それぞれ撮影する。照射位置計測カメラ51,52,53は、パルス光PLにより瞬間的に形成される投影像SPIを撮影する必要があるが、パターン描画装置1は、例えば、制御部70によりレーザ駆動部35と照射位置計測カメラ51,52,53とを連動制御(同期制御)することにより、そのような瞬間的な投影像SPIの撮影を実現する。
【0069】
各照射位置計測カメラ51,52,53により取得された画像は、電子データとして制御部70に送信される。
【0070】
図15は、照射位置計測カメラ51,52,53により取得された画像の例を示した図である。照射位置計測カメラ51,52,53は、試験用基板91を斜め方向から撮影するため、撮影により一次的に取得される画像は遠近関係により多少の歪みを有するものとなるが、所定の画像処理を行うことにより、図15のように上面視に近い画像を得ることが可能である。図15に示したように、照射位置計測カメラ51,52,53により取得された画像中には、スリットパターンSPの投影像SPIと、その投影像SPIに対応するブラックマトリクスBMの枠パターンFPとが含まれている。
【0071】
制御部70は、このような画像に基づいて、ブラックマトリクスBMの枠パターンFPに対する投影像SPIの相対位置のずれを算出する処理を行う(ステップS25)。例えば、制御部70は、画像中の枠パターンFPの端点G1に対する投影像SPIの端点G2の相対座標を算出し、算出された相対座標の標準値からのずれを算出する。また、制御部70は、画像中の枠パターンFPと投影像SPIとの端辺同士の距離L1,L2や、枠パターンFPに対する投影像SPIの傾きを算出し、算出された距離L1,L2や傾きの標準値からのずれを算出してもよい。そして、制御部70は、算出されたずれの方向および大きさが、許容範囲内であるかどうかを判定する(ステップS26)。
【0072】
ステップS26の判定処理において、許容範囲外であった場合には、制御部70は、算出されたずれを低減させるように、ステージの位置(X軸方向の位置、Y軸方向の位置、およびZ軸周りの傾き)あるいはレーザ駆動部35の動作タイミングを補正する。具体的には、ステージ移動機構20またはレーザ駆動部35の制御に関するパラメータを書き換え、これにより、ステージ10上の試験用基板91に対するパルス光PLの照射位置を補正する(ステップS27)。
【0073】
その後、パターン描画装置1は、補正後のパラメータに従ってステップS24〜S26の処理を繰り返し、ブラックマトリクスBMの枠パターンFPに対する投影像SPIの相対位置のずれが、許容範囲内であるかどうかを再度判定する。そして、ステップS26の判定処理において、ずれの方向および大きさが許容範囲内であると判断された場合には、パターン描画装置1は、パルス光PLの照射位置の補正処理を終了する。
【0074】
このように、本実施形態のパターン描画装置1は、試験用基板91に対してパルス光PLを照射するとともにその投影像SPIを撮影し、ブラックマトリクスBMの枠パターンFPに対する投影像SPIの相対位置のずれを計測することにより、パルス光PLの照射位置を補正する。このため、他装置を使用することなく、パターン描画装置1単独で、基板に対するパルス光PLの照射位置を迅速に補正することができる。また、試験用基板91を現像する必要はなく、1枚の試験用基板91を繰り返し使用することができるため、調整作業に掛かるコストを低減させることができる。
【0075】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態のステップS24では、各光学ヘッド32a,32d,32gから1本のパルス光PLのみを照射するようにしていたが、各光学ヘッド32a,32d,32gから複数本のパルス光PLを照射するようにしてもよい。但し、各照射位置計測カメラ51〜53により取得される画像中の投影像SPIの数は少ない方が、測定対象となる投影像SPIを容易に特定できる点で望ましい。
【0076】
また、上記の実施形態では、パターン描画装置1に3つの照射位置計測カメラ51〜53が設けられていたが、照射位置計測カメラの数は1つや2つであってもよく、あるいは4つ以上であってもよい。特に、上記の実施形態のように、7つの光学ヘッド32a〜32gから照射されるパルス光の相互の位置関係を補正する処理(ステップS21の処理)を併せて実行する場合には、少なくとも1つの照射位置計測カメラを使用して1つの光学ヘッドについてパルス光PLの照射位置を補正すれば、全ての光学ヘッド32a〜32gについてパルス光PLの照射位置が補正される。
【0077】
但し、上記の実施形態のように、複数の照射位置計測カメラを設置して、複数の光学ヘッドについて投影像SPIの位置のずれを計測すれば、基板に対する副走査方向についての倍率のずれ(基板の副走査方向の伸縮)を知ることができる。このため、副走査方向についての倍率のずれをも制御パラメータに反映させて、パルス光PLの照射位置をより精密に補正できるという点で望ましい。
【0078】
また、上記の実施形態では、ステップS24において、試験用基板91を主走査方向に移動させつつパルス光PLの照射と投影像SPIの撮影とを行っていたが、これらの動作は、必ずしも試験用基板91を移動させつつ行うものでなくてもよい。例えば、試験用基板91を所定の位置に一旦静止させた状態で、パルス光PLの照射と投影像SPIの撮影とを行ってもよい。但し、ステップS24の動作は、試験用基板91を移動させつつ行う方が、通常の描画処理の動作により近い状態で基板に対する光の照射位置を補正することができるという点で望ましい。
【0079】
なお、上記のステップS24では、試験用基板91を主走査方向に移動させつつ、パルス光PLの照射と投影像SPIの撮影とを複数回実行してもよい。このようにすれば、基板に対する主走査方向についての倍率のずれ(基板の主走査方向の伸縮)を知ることができる。このため、主走査方向についての倍率のずれをも制御パラメータに反映させて、パルス光PLの照射位置をより精密に補正することができる。
【0080】
また、上記の実施形態では、アライメントカメラ61〜64と照射位置計測カメラ51〜53とが別個に設けられていたが、照射位置計測カメラ51,53にアライメントカメラ61〜64の機能をもたせるようにしてもよい。照射位置計測カメラ51,53によりアライメント処理(ステップS12,S23の処理)を行うときには、例えば、図16に示したように、+Y側の2つのアライメントマークAM2,AM4をそれぞれ照射位置計測カメラ51,53により撮影した後、図17に示したように、基板9(または試験用基板91)を+Y側に移動させ、−Y側の2つのアライメントマークAM1,AM3をそれぞれ照射位置計測カメラ51,53により撮影すればよい。このようにすれば、アライメントカメラ61〜64を排除することができるため、パターン描画装置1の製造コストを低減させることができる。また、アライメント処理(ステップS12,S23の処理)と投影像SPIの撮影処理(ステップS24の処理)とを同一のカメラで行うため、カメラ同士の座標のずれを補正する必要もない。
【0081】
また、上記の実施形態では、照射位置計測カメラ51〜53は、ヘッド部30の−Y側の位置に配置されていたが、照射位置計測カメラ51〜53は、他の位置に配置されていてもよい。例えば、照射位置計測カメラ51〜53は、ヘッド部30の+Y側の位置に配置されていてもよく、あるいは、各光学ヘッド32a,32d,32gの内部に組み込まれていてもよい。
【0082】
また、上記の実施形態のパターン描画装置1は、7つの光学ヘッド32a〜32gを備えていたが、光学ヘッドの数はこれに限定されるものではない。
【0083】
また、上記の実施形態のパターン描画装置1は、カラーフィルタ用の基板9に対して規則性パターンを描画するための装置であったが、本発明のパターン描画装置は、フラットパネルディスプレイ(液晶表示装置,プラズマ表示装置等)用ガラス基板、半導体基板、プリント基板等の他の基板に対してパターンを描画するための装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】パターン描画装置の側面図である。
【図2】パターン描画装置の上面図である。
【図3】基板の上面図である。
【図4】基板の縦断面図である。
【図5】ブラックマトリクスの一部を拡大して示した図である。
【図6】試験用基板の縦断面図である。
【図7】マスクユニットの構成を模式的に示した図である。
【図8】ブラックマトリクス中の枠パターン上に形成される投影像の様子を示した図である。
【図9】基板の上面において描画処理が進行する様子を示した図である。
【図10】基板の上面において描画処理が進行する様子を示した図である。
【図11】制御部と各部との間の接続構成を示したブロック図である。
【図12】パターン描画装置の基本動作の流れを示したフローチャートである。
【図13】パルス光の照射位置を補正するときの動作の流れを示したフローチャートである。
【図14】試験用基板に対するパルス光の照射および投影像の撮影の様子を示した図である。
【図15】照射位置計測カメラにより取得される画像の例を示した図である。
【図16】照射位置計測カメラを利用したアライメント処理の様子を示した図である。
【図17】照射位置計測カメラを利用したアライメント処理の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0085】
1 パターン描画装置
9 基板
10 ステージ
20 ステージ移動機構
30 ヘッド部
32a〜32g 光学ヘッド
322 マスクユニット
324 保持機構
325 シャッタ機構
40 ヘッドピッチ計測カメラ
51,52,53 照射位置計測カメラ
61〜64 アライメントカメラ
70 制御部
AM1〜AM4 アライメントマーク
BM ブラックマトリクス
FP 枠パターン
RE レジスト膜
M マスク
SP スリットパターン
PL パルス光
SPI 投影像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に形成された感光性材料の層に光を照射することにより、基板上に予め存在する第1パターンに対する所定の相対位置に第2パターンを形成するパターン描画装置における光の照射位置の補正方法であって、
前記第1パターンを有するとともに前記感光性材料の層を有さない試験用基板を、前記パターン描画装置に搬入する搬入工程と、
前記搬入工程により搬入された前記試験用基板に対して、前記第2パターンの少なくとも一部に対応する光を照射する光照射工程と、
前記光照射工程により前記試験用基板上に形成された前記第2パターンの少なくとも一部の投影像と、前記投影像に対応する前記第1パターンの少なくとも一部とを同時に撮影する撮影工程と、
前記撮影工程により取得された画像に基づいて、前記第1パターンに対する前記投影像の相対位置のずれを算出する算出工程と、
前記算出工程により算出された相対位置のずれに基づいて、光の照射位置を補正する第1補正工程と、
を備えることを特徴とする光の照射位置の補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光の照射位置の補正方法であって、
前記光照射工程では、前記第2パターンの一部に対応する光を通過させ、前記第2パターンの他の部分に対応する光を遮断しつつ、試験用基板に対する光の照射を行うことを特徴とする光の照射位置の補正方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光の照射位置の補正方法であって、
前記光照射工程では、前記第2パターンの少なくとも一部に対応するパルス光を照射し、
前記撮影工程では、前記光照射工程によるパルス光の照射と連動して撮影動作を行うことを特徴とする光の照射位置の補正方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の光の照射位置の補正方法であって、
前記光照射工程では、試験用基板を所定の走査方向に移動させつつ光の照射を行い、
前記撮影工程では、移動中の基板に対して撮影動作を行うことを特徴とする光の照射位置の補正方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の光の照射位置の補正方法であって、
前記光照射工程では、試験用基板上の複数箇所に光を照射し、
前記撮影工程では、前記試験用基板上の前記複数箇所において撮影動作を行うことを特徴とする光の照射位置の補正方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の光の照射位置の補正方法であって、
前記パターン描画装置は、光を照射する複数の光学ヘッドを有し、
前記複数の光学ヘッドから照射される複数本の光の相互の位置関係を補正する第2補正工程を更に備えることを特徴とする光の照射位置の補正方法。
【請求項7】
基板の表面に形成された感光性材料の層に光を照射することにより、基板上に予め存在する第1パターンに対する所定の相対位置に第2パターンを形成するパターン描画装置であって、
基板を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された基板に対して、前記第2パターンに対応する光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段により基板上に形成された前記第2パターンの少なくとも一部の投影像と、前記投影像に対応する前記第1パターンの少なくとも一部とを同時に撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により取得された画像に基づいて、前記第1パターンに対する前記投影像の相対位置のずれを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された相対位置のずれに基づいて、前記保持手段に保持された基板に対する前記光照射手段からの光の照射位置を補正する第1補正手段と、
を備えることを特徴とするパターン描画装置。
【請求項8】
請求項7に記載のパターン描画装置であって、
前記光照射手段は、前記第2パターンの一部に対応する光を通過させ、前記第2パターンの他の部分に対応する光を遮断する遮光手段を有することを特徴とするパターン描画装置。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のパターン描画装置であって、
前記光照射手段は、前記第2パターンに対応するパルス光を照射し、
前記撮影手段は、前記光照射手段によるパルス光の照射と連動して撮影動作を行うことを特徴とするパターン描画装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
前記光照射手段は、基板を所定の走査方向に移動させつつ光の照射を行い、
前記撮影手段は、移動中の基板に対して撮影動作を行うことを特徴とするパターン描画装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
前記撮影手段は、基板上の複数箇所において撮影動作を行うことを特徴とするパターン描画装置。
【請求項12】
請求項7から請求項11までのいずれかに記載のパターン描画装置であって、
前記光照射手段は、光を照射する複数の光学ヘッドを有し、
前記複数の光学ヘッドから照射される複数本の光の相互の位置関係を補正する第2補正手段を更に備えることを特徴とするパターン描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−198793(P2009−198793A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40058(P2008−40058)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】