説明

光コネクタ、取り外し治具、及び光コネクタの取り外し構造

【課題】所定の操作によらないと光アダプタから取り外すことができないようにすることで、セキュリティを高める。
【解決手段】光コネクタ1に、ハウジング20の後方端部の全周を囲む保持部41と、係止レバー30の後方端部32の上方を覆うカバー部42と、保持部41とカバー部42との間に設けられ、光軸方向に貫通した治具挿入穴43とを有するカバー部材40を設ける。この光コネクタ1を光アダプタ2から取り外すための取り外し治具60に操作レバー62を設け、操作レバー62を治具挿入穴43に後方から挿入した状態で、操作レバー62の前方端部63を係止レバー30の後方端部32の上方に配すると共に、操作レバー62の後方端部を治具挿入穴43よりも後方に突出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタと、光コネクタを光アダプタから取り外すための取り外し治具と、これらを用いた光コネクタの取り外し構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタは、光ファイバケーブルの先端に取り付けられ、光アダプタ(あるいは光レセプタクル、以下同様)に装着することにより、当該光ファイバケーブルを他の光ファイバケーブルや光通信モジュールと光通信可能に接続するためのものである。
【0003】
例えば特許文献1には、光アダプタからの抜け止めを行う係止レバーを有する光コネクタが示されている。この光コネクタは、係止レバーと光アダプタとを係合させることで、光アダプタからの抜け止めを行っている。係止レバーを上方から押さえて弾性変形させることにより、係止レバーと光アダプタとの係合が解除され、光コネクタを光アダプタから取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−109978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような光コネクタは、係止レバーを押し下げることにより誰にでも光アダプタから取り外すことができる。しかし、例えばサーバに接続される光コネクタの場合、誰でも光コネクタを取り外すことができると、セキュリティ上問題となる場合がある。
【0006】
本発明の解決すべき課題は、所定の操作によらないと光コネクタを光アダプタから取り外すことができないようにすることで、セキュリティを高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、光ファイバの先端に取り付けられるフェルールと、フェルールを保持するハウジングと、光アダプタと係合する係止部を有し、前方端部がハウジングの上面に固定され、後方端部が弾性的に上下動可能な係止レバーと、ハウジングの外周全周を保持する保持部、係止レバーの後方端部の上方を覆うカバー部、及び、保持部とカバー部との間に設けられ、光軸方向に貫通した治具挿入穴を有するカバー部材と、を備えた光コネクタを提供する。
【0008】
ここで、「光軸方向」とは光ファイバの延在方向(図2の左右方向)のことであり、光軸方向で光ファイバの先端側(図2の右側)を「前方」、その反対側(図2の左側)を「後方」と言う。また、光軸方向と直交する一方向を上下方向として説明するが、これは各構成の相対的な位置関係を説明するために便宜上設定するものであり、光コネクタの使用態様を限定する趣旨ではない。
【0009】
このように、係止レバーの後方端部の上方がカバー部で覆われているため、係止レバーを上方から押さえることができなくなる。これにより、光コネクタを光アダプタからの取り外しが規制され、光コネクタが接続される機器(サーバ等)のセキュリティを高めることができる。光コネクタの光アダプタからの取り外しは、カバー部材の治具挿入穴に後方から取り外し治具を挿入し、カバー部の下方に配されている係止レバーの後方端部を押し下げることにより行われる。
【0010】
上記のような光コネクタにおいて、カバー部が容易に変形してしまうと、カバー部を上方から押さえて変形させ、この変形したカバー部により係止レバーが押し下げられ、光コネクタが光アダプタから取り外される恐れがある。そこで、光コネクタを光アダプタに装着した状態で、カバー部が光アダプタの上面の一部を覆う位置まで延びていると、カバー部を上方から押さえても、光アダプタの上面と当接してカバー部の変形を規制することができるため、係止レバーが押し下げられる事態を確実に防止できる。
【0011】
また、光アダプタには、光コネクタの係止レバーと係合させるための係合穴が上面に開口している場合がある。この係合穴から係止レバーを操作されると、光コネクタが光アダプタから取り外される恐れがある。そこで、光アダプタに装着した状態で、カバー部が光アダプタの係合穴を覆うようにすれば、係合穴から係止レバーが操作される事態を防止できる。
【0012】
上記の光コネクタでは、カバー部材に設けられた保持部でハウジングの外周全周を保持するため、保持部は筒状を成している。従って、カバー部材とハウジングとの組み付けは、例えば、ハウジングの後方から保持部を外挿することにより行われる。このとき、ハウジングにフェルール及び光ファイバケーブルが組みつけられていると、光ファイバケーブルが邪魔になってカバー部材をハウジングの後方から組み付けることができない。そこで、カバー部材の保持部を、ハウジングの上面を保持する上側保持部品と、ハウジングの下面を保持する下側保持部品とで構成すれば、ハウジングに予めフェルール及び光ファイバケーブルが組み付けられている場合でも、光ファイバケーブルを上下から挟むように上側保持部品と下側保持部品とを組み立て、保持部の内周に光ファイバケーブルを収容した後、カバー部材をハウジングの後方から組み付けることができる。
【0013】
上記の光コネクタは、前方端部を弾性的に上下動可能な操作レバーを有し、操作レバーを治具挿入穴に後方から挿入した状態で、操作レバーの前方端部が係止レバーの後方端部の上方に配されると共に、操作レバーの後方端部がカバー部材の治具挿入穴よりも後方に突出する取り外し治具を用いて、光アダプタから取り外すことができる。具体的には、取り外し治具の操作レバーを治具挿入穴に後方から挿入した状態で、治具挿入穴から後方に突出した操作レバーの後方端部を上方から押さえることにより、操作レバーの前方端部を下方に押し下げ、係止レバーの後方端部を下方に押し下げることができる。これにより、光コネクタの係止レバーと光アダプタとの係合が解除され、光コネクタを光アダプタから取り外すことができる。
【0014】
例えば、一種類の取り外し治具で全ての光コネクタを取り外し可能とすると、当該取り外し治具さえ手に入ればあらゆる光コネクタを取り外すことができるため、セキュリティが十分であるとは言えない場合がある。そこで、本発明の光コネクタの取り外し構造は、操作レバーの上面に凹部又は凸部を設けると共に、光コネクタのカバー部材の治具挿入穴に凸部又は凹部を設けたものである。操作レバーの凹部又は凸部が治具挿入穴の凸部又は凹部と嵌合する場合は、治具挿入穴に挿入された操作レバーの前方端部が係止レバーの後方端部の上方に配されるようになっている。この場合、操作レバーを押し下げて係止レバーを押し下げることで、光コネクタを光アダプタから取り外すことができる。一方、操作レバーの凹部又は凸部が治具挿入穴の凸部又は凹部と嵌合しない場合は、治具挿入穴に挿入された操作レバーが、治具挿入穴又は操作レバーの凸部で押し下げられ、操作レバーの前方端部が係止レバーの後方端部の上方に配することができないようになっている。この場合、操作レバーを押し下げても係止レバーは押し下げられないため、光コネクタを光アダプタから取り外すことができない。従って、上記の光コネクタの取り外し構造によれば、当該光コネクタに適合した特定の取り外し治具を用いないと光コネクタを光アダプタから取り外すことができないため、セキュリティがより一層高められる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、光コネクタを光アダプタから取り外すためには、カバー部材の治具挿入穴に取り外し治具を挿入して係止レバーを押し下げる操作を要するため、部外者による光コネクタの取り外しを防止し、セキュリティを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光コネクタの斜視図である。
【図2】上記光コネクタの側面図である。
【図3】上記光コネクタの正面図である。
【図4】上記光コネクタの部分断面図である。
【図5】上記光コネクタのカバー部材の斜視図である。
【図6】上記カバー部材の正面図である。
【図7a】光コネクタのカバー部材の組付手順を示す斜視図である。
【図7b】光コネクタのカバー部材の組付手順を示す斜視図である。
【図8】上記光コネクタに対応した取り外し治具の斜視図である。
【図9】上記取り外し治具を用いて上記光コネクタを光アダプタから取り外す手順を示す部分断面図である。
【図10】上記取り外し治具を用いて上記光コネクタを光アダプタから取り外す手順を示す部分断面図である。
【図11】上記取り外し治具を用いて上記光コネクタを光アダプタから取り外す手順を示す部分断面図である。
【図12】上記取り外し治具を用いて上記光コネクタを光アダプタから取り外す手順を示す部分断面図である。
【図13】他の光コネクタに対応した取り外し治具の斜視図である。
【図14】図1の光コネクタに図13の取り外し治具を装着した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜3に、本発明の一実施形態に係る光コネクタ1を示す。この光コネクタ1はLC型光コネクタであり、光ファイバ(図示省略)を内部に有する光ファイバケーブル3の先端に取り付けられる。光コネクタ1は、光ファイバの先端に取り付けられたフェルール10と、フェルール10を保持するハウジング20と、ハウジング20の上面に設けられた係止レバー30と、ハウジング20の後方端部に取り付けられたカバー部材40と、ハウジング20から後方に延びた光ファイバケーブル3を保護するブーツ50とを主に備える。本実施形態の光コネクタ1は、一対のハウジング20がカバー部材40で一体化された、いわゆる2芯型の光コネクタである。尚、以下の説明では、図2の上下方向を「上下方向」と言い、光軸方向及び上下方向の双方と直交する方向(図3の左右方向)を「幅方向」と言う。
【0019】
フェルール10は、光軸方向に貫通する挿通孔を有し(図示省略)、この挿通孔に光ファイバが挿通される。光コネクタ1を光アダプタ2(図2に鎖線で示す)に装着し、フェルール10の先端部を相手方の光コネクタのフェルールの先端部と当接させることにより、光ファイバが相手方の光ファイバと光通信可能に接続される。
【0020】
ハウジング20は、例えば樹脂で略直方体に形成され、光アダプタ2の装着穴に適合した形状を成している。ハウジング20は内周にフェルール10を保持し、フェルール10の先端部はハウジング20から前方に突出している。ハウジング20の内部にはスプリング(図示省略)が設けられ、このスプリングでフェルール10が前方に付勢された状態で保持されている。
【0021】
係止レバー30は、前方端部がハウジング20の上面に接続されると共に、後方端部がハウジング20の上面から離反している。これにより、係止レバー30の後方端部32(図2参照)を弾性的に上下動させることができる。本実施形態では、係止レバー30がハウジング20の上面から後方に向けて斜め上方に延び、係止レバー30とハウジング20とが樹脂で一体成形される。係止レバー30の中間部の幅方向両側には係止部31が設けられる。図4に示すように、係止レバー30の係止部31と、光アダプタ2に設けられた係合穴2aとが光軸方向で係合することにより、光コネクタ1の光アダプタ2からの抜け止めが行なわれる。係止レバー30の後方端部32を弾性的に押し下げると、係止レバー30の係止部31と光アダプタ2の係合穴2aとの係合が解除される。
【0022】
カバー部材40は、図5及び図6に示すように、ハウジング20の外周全周を保持する保持部41と、係止レバー30の上方を覆うカバー部42と、保持部41とカバー部42との間に設けられ、光軸方向に貫通した治具挿入穴43とを備える。
【0023】
保持部41は、光軸方向に貫通した一対の保持穴41aを有する。この保持穴41aにハウジング20の後方端部を挿入することにより、ハウジング20の後方端部の外周全周が保持部41で保持される。保持穴41aの内周面には係合突起41bが形成され、具体的には、一対の保持穴41aの幅方向両側の内壁にそれぞれ係合突起41bが形成される。一方、ハウジング20の後方端部の幅方向両側面にはそれぞれ凹部21が設けられる(図7(a)参照)。保持部41の保持穴41aにハウジング20を挿入すると、保持部41の係合突起41bとハウジング20の凹部とが嵌合し、これらが光軸方向で係合することにより、保持部41に対するハウジング20の抜け止めが行われる。
【0024】
保持部41は、図6に示すように、上側保持部品44と下側保持部品45とで構成される。上側保持部品44は、ハウジング20の上面を保持する上壁部44aと、ハウジング20の幅方向外側の側面を保持する一対の外側壁部44bと、ハウジング20の幅方向中央側の側面を保持する中央側壁部44cとを有する。下側保持部品45は、ハウジング20の下面を保持する下壁部45aと、ハウジング20の幅方向中央側の側壁を保持する中央側壁部45bとを有する。下側保持部品45の中央側壁部45bに設けられた係止爪45cが、上側保持部品44の中央側壁部44cに設けられた係止溝44dと係合することで、両者が一体化される。
【0025】
カバー部42は、保持部41の上面の幅方向両端から上方に立ち上がったカバー側壁部46を介して、保持部41の上方に設けられる。本実施形態では、カバー部42、カバー側壁部46、及び上側保持部品44が樹脂で一体成形される。カバー部42は、カバー側壁部46の上端部同士を連結し、前方に延びて係止レバー30の後方端部32の上方を覆う(図2参照)。カバー部42の下面には凸部47が設けられる。凸部47の場所や形状は光コネクタ1ごとに異なっており、図示例では、カバー部42の幅方向中央部に、光軸方向に延びる凸部47が形成される。凸部47の後方端部には、後方に向けて斜め上方に傾斜した傾斜面が設けられる。
【0026】
治具挿入穴43は、図6に示すように、カバー部42、カバー側壁部46、及び、上側保持部品44の上壁部44aで囲まれた空間により構成される。本実施形態では、図3に示す正面視で、治具挿入穴43の内周に一対の係止レバー30の後方端部32が配されている。
【0027】
カバー部材40のハウジング20への組付は、例えば以下の手順で行われる。まず、図7(a)に示すように、上側保持部品44と下側保持部品45とを光ファイバケーブル3を上下から挟むようにして組み付け、保持穴41aの内周に光ファイバケーブル3を配する。その後、図7(b)に示すように、カバー部材40を前方に移動させ、ハウジング20の後方端部をカバー部材40の保持部41の保持穴41aに前方から挿入する。そして、保持穴41aの内周面に形成された係合突起41b(図6参照)とハウジング20の凹部21(図7(a))とを係合させ、カバー部材40とハウジング20とを固定する。
【0028】
図2に示すように、光アダプタ2から後方に突出した係止レバー30の後方端部32が、カバー部材40のカバー部42で上方から覆われているため、係止レバー30を上方から押さえることができない。これにより、光コネクタ1の光アダプタ2からの取り外しを規制することができる。特に、カバー部42の前方端部が光アダプタ2の上面の一部を覆う位置まで延びているため、カバー部42を上方から押さえても、カバー部42が光アダプタ2の上面と当接し、カバー部42が下方に変形して係止レバー30が押し下げられる事態を確実に防止できる。
【0029】
また、光アダプタ2には、図4に示すように、係止レバー30の係止部31と係合する係合穴2aが形成されている。係合穴2aは、成形の都合上、光アダプタ2の上面に開口して形成される。この係合穴2aに細長い針状の治具等を差し込んで係止レバー30を押し下げると、係止部31と係合穴2aとの係合が解除され、光コネクタ1が光アダプタ2から取り外される恐れがある。そこで、図4に示すように、カバー部42を、光アダプタ2の係合穴2aを覆う位置まで延ばすことにより、係合穴2aを利用して光コネクタ1が取り外される事態を防止できる。
【0030】
図8に、光コネクタ1を光アダプタ2から取り外すための取り外し治具60を示す。取り外し治具60は、基部61と、基部61の上面から前方に延びた操作レバー62とを有する。基部61は、ブーツ50の外周面と嵌合する嵌合部61aを有する。嵌合部61aは、幅方向外側を開口した部分円筒面であり、ブーツ50の外周面の円周方向半分以上の領域を覆う。嵌合部61aとブーツ50の外周面とが嵌合することにより、取り外し治具60が光コネクタ1に対して光軸方向と直交する方向で位置決めされる。特に、本実施形態の光コネクタ1は2芯タイプであり、2本のブーツ50にそれぞれ嵌合部61aを嵌合させることで、取り外し治具60がブーツ50周りに回転することを規制できる。
【0031】
操作レバー62は、後方端部が基部61に接続され、前方端部63が弾性的に上下動可能となっている。具体的に操作レバー62は、基部61の上面から前方に向けて斜め上方に延びた傾斜部62aと、傾斜部62aの先端から前方に水平に延びた水平部62bと、補強部62cとを有し、水平部62bの前方端部63が弾性的に上下動可能となっている。本実施形態では、操作レバー62が樹脂で一体成形される。水平部62bには、カバー部42の下面に設けられた凸部47と嵌合する凹部が設けられる。図示例では、凹部として、水平部62bを上下に貫通する貫通穴62dが設けられる。貫通穴62dは、水平部62bの幅方向中央部に設けられ、光軸方向に延びた長方形を成している。補強部62cは、水平部62bと略平行に設けられ、補強部62cの後方端部は傾斜部62aの中間部に接続され、補強部62cの前方端部は水平部62bの前方端部63付近に接続される。このように、操作レバー62に補強部62cを設けることにより、強度が高められると共に、操作レバー62を押し下げたときの弾性復元力が高められる。
【0032】
以下、光アダプタ2に装着された光コネクタ1を、取り外し治具60を用いて取り外す手順を説明する。
【0033】
まず、取り外し治具60の基部61の嵌合部61aに2本の光ファイバケーブル3を嵌め込んだ後、図9に示すように取り外し治具60を前方に移動させ、操作レバー62の前方端部63をカバー部材40の治具挿入穴43の後方開口部に配する。このとき、取り外し治具60の基部61が2本の光ファイバケーブル3と嵌合しているため、取り外し治具60の光軸方向と直交する方向の移動が規制される。この状態で取り外し治具60を前方に移動させたときに、操作レバー62が治具挿入穴43の所定の位置(上端部付近)に挿入されるように、取り外し治具60の形状が定められる。
【0034】
さらに取り外し治具60を前方に押し進めると、図10に示すように、操作レバー62の前方端部63がカバー部42の凸部47で弾性的に押し下げられる。このとき、凸部47の後方端部に設けられた傾斜面にガイドされることで、操作レバー62の前方端部63がスムーズに押し下げられる。
【0035】
さらに取り外し治具60を前方に押し進めると、図11に示すように、操作レバー62の水平部62bに設けられた貫通穴62dに、カバー部42の凸部47が嵌り込む。これと同時に、凸部47で押し下げられていた操作レバー62が弾性的に復元し、操作レバー62の水平部62bがカバー部42の下面に当接し、あるいは非常に近接した状態となる。そして、取り外し治具60の基部61がカバー部材40の保持部41と当接することにより、取り外し治具60の光コネクタ1への装着が完了する。このとき、操作レバー62の前方端部63は係止レバー30の後方端部32の上方に配される。また、操作レバー62の後方端部は、カバー部材40の治具挿入穴43から後方に突出しており、図示例では、操作レバー62の半分以上が外部に露出している。
【0036】
そして、図12に矢印で示すように、取り外し治具60の操作レバー62の外部に露出した部分を上方から押し下げる。すると、操作レバー62が弾性変形して前方端部63が押し下げられ、この操作レバー62の前方端部63で係止レバー30の後方端部32が押し下げられる。これにより、係止レバー30の係止部31と光アダプタ2の係合穴2a(図4参照)との係合が解除される。この状態で、取り外し治具60及び光コネクタ1を後方に引っ張ることにより、光アダプタ2から光コネクタ1が取り外される。
【0037】
上記の光コネクタ1及び取り外し治具60は、カバー部42に設けられた凸部47と、操作レバー62に設けられた凹部(貫通穴62d)とが嵌合することで、操作レバー62の前方端部63を係止レバー30の後方端部32の上方に配することができる(図11参照)。これに対し、カバー部42の凸部47と操作レバー62の貫通穴62dとが嵌合しなければ、操作レバー62の前方端部63を係止レバー30の後方端部32の上方に配することができない。以下、この機構について詳しく説明する。
【0038】
例えば、図13に示す取り外し治具60は、操作レバー62の水平部62bの幅方向に離隔した2箇所に貫通穴62dが形成されている。この取り外し治具60を上記の光コネクタ1に装着すると、凸部47と貫通穴62dとの幅方向位置が合っていないため、凸部47と貫通穴62dとが嵌合しない。従って、図14に示すように、操作レバー62は凸部47で押し下げられた状態のまま前方に進むため、操作レバー62の前方端部63を係止レバー30の後方端部32の上方に配することができない。図示例では、操作レバー62の前方端部63が係止レバー30の後方端部32に後方から当接する。この状態で、操作レバー62を押し下げても、係止レバー30の後方端部32を押し下げることはできない。
【0039】
このように、カバー部42の凸部47と操作レバー62の貫通穴62dとの位置及び大きさが合っていないと、取り外し治具60で光コネクタ1を光アダプタ2から取り外すことができない。換言すれば、サーバ等に設けられた多数の光接続端子(光アダプタ)に光コネクタ1が取り付けられる場合、光コネクタ1ごとにカバー部42の凸部47の位置及び大きさを異ならせておけば、この光コネクタ1を取り外す際には、当該光コネクタの凸部47と嵌合可能な凹部(貫通穴62d)を有する取り外し治具60を用いる必要がある。このように、取り外し治具60が、各光コネクタ1に適合した「鍵」のような役割を果たすことにより、部外者による光コネクタ1の取り外しをより確実に防止し、セキュリティがさらに高められる。
【0040】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、カバー部42に凸部47を設け、操作レバー62に凹部(貫通穴62d)を設けているが、これとは逆に、カバー部42に凹部を設けると共に、操作レバー62に凸部を設けても良い。
【0041】
また、上記の実施形態では、2芯タイプの光コネクタ1に本発明を適用した場合を示したが、これに限らず、例えば単芯タイプの光コネクタに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 光コネクタ
2 光アダプタ
2a 係合穴
3 光ファイバケーブル
10 フェルール
20 ハウジング
30 係止レバー
31 係止部
40 カバー部材
41 保持部
42 カバー部
43 治具挿入穴
44 上側保持部品
45 下側保持部品
50 ブーツ
60 取り外し治具
61 基部
62 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの先端に取り付けられるフェルールと、
フェルールを保持するハウジングと、
光アダプタと係合する係止部を有し、前方端部がハウジングの上面に接続され、後方端部が弾性的に上下動可能な係止レバーと、
ハウジングの外周全周を保持する保持部と、前記係止レバーの後方端部の上方を覆うカバー部と、保持部とカバー部との間に設けられ、光軸方向に貫通した治具挿入穴とを有するカバー部材と、
を備えた光コネクタ。
【請求項2】
光アダプタに装着した状態で、カバー部が、光アダプタの上面の一部を覆う位置まで延びている請求項1記載の光コネクタ。
【請求項3】
光アダプタに装着した状態で、カバー部が、光アダプタの上面に設けられた係合穴を覆う位置まで延びている請求項2記載の光コネクタ。
【請求項4】
カバー部材の保持部が、ハウジングの上面を保持する上側保持部品と、ハウジングの下面を保持する下側保持部品とからなる請求項1〜3の何れかに記載の光コネクタ。
【請求項5】
請求項1記載の光コネクタを光アダプタから取り外すための取り外し治具であって、
前方端部を弾性的に上下動可能な操作レバーを有し、操作レバーを治具挿入穴に後方から挿入した状態で、操作レバーの前方端部が係止レバーの後方端部の上方に配されると共に、操作レバーの後方端部がカバー部材の治具挿入穴から後方に突出した取り外し治具。
【請求項6】
請求項1記載の光コネクタと、光コネクタが装着される光アダプタと、光アダプタから光コネクタを取り外すための取り外し治具とを用いた光コネクタの取り外し構造において、
取り外し治具が前方端部を弾性的に上下動可能な操作レバーを有し、
操作レバーの上面に凹部又は凸部を設けると共に、光コネクタのカバー部材の治具挿入穴に凸部又は凹部を設け、
操作レバーの凹部又は凸部が治具挿入穴の凸部又は凹部と嵌合する場合は、治具挿入穴に挿入された操作レバーの前方端部が係止レバーの後方端部の上方に配され、
操作レバーの凹部又は凸部が治具挿入穴の凸部又は凹部と嵌合しない場合は、治具挿入穴に挿入された操作レバーが、治具挿入穴又は操作レバーの凸部で押し下げられ、操作レバーの前方端部を係止レバーの後方端部の上方に配することができないようにした光コネクタの取り外し構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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