説明

光コネクタおよび光コネクタ組立ツール

【課題】信頼性と組立作業性を向上させる光コネクタおよび光コネクタ組立ツールを提供する。
【解決手段】フェルール1と、フェルールを把持しフェルールに挿入される光ファイバの被覆が付いた部分が撓む空孔部8および光ファイバ撓み規制部9を有するフランジ2と、光ファイバを弾性保持する光ファイバ把持部3とを備え、空孔部は光ファイバが撓むことができるだけの内径を有し、光ファイバ撓み規制部は空孔部の中心位置よりフェルールに近い部位に位置し、フェルールの長軸方向の中心軸上に長軸を有する円柱であって、光ファイバの被覆が付いた部分の外径より僅かに大きい穴径を有し、光ファイバ把持部は、光ファイバの先端がフェルール端面から突き出た状態で光ファイバの被覆が付いた部分を弾性保持し、光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により光ファイバ端面同士を押圧して接続する光コネクタを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光コネクタおよび光コネクタの組立で使用する組立ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
簡便な操作で光ファイバ接続が可能な光ファイバ接続器としてメカニカルスプライスがある(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。メカニカルスプライスは、光ファイバを収容するV溝を有する基板と、蓋部材と、バネ部材とから構成される。被覆を除去した2本の光ファイバを、互いの端面が物理的に接触するようにV溝に収容し、光ファイバがV溝内に固定されるように基板と蓋部材を重ねてバネ部材で押圧することで、光ファイバ同士の接続部を形成する。
【0003】
特許文献1および特許文献2において提案されたメカニカルスプライスを、以下に述べる。光ファイバの被覆を除去してガラスを露出させガラスを劈開して端部としている。光ファイバ接続器のV溝を有する基板と蓋部材を重ね、端部の被覆を除去した光ファイバを、光ファイバ接続器の両端から、光ファイバ接続器のV溝の中へ挿入し、V溝方向における中心位置で両端から挿入した光ファイバのガラスの劈開面を物理的に接触させている。被覆を除去した光ファイバをメカニカルスプライスへ挿入する際、V溝を有する基板と蓋部材を重ねあわせて、V溝の方向と平行な方向の側面からクサビを挿入し、V溝を有する基板と蓋部材の隙間を広げておき、光ファイバを挿入する。その後、クサビを抜いて基板と蓋部材をバネ部材により押圧して光ファイバ接続器の状態を弾性保持する。
【0004】
上記の光ファイバ接続方法によれば、光ファイバの被覆除去、劈開などの簡易な光ファイバ先端処理作業、および光ファイバの挿入、蓋閉じなどの簡易な組立作業で光ファイバコネクタが完成する。しかし、光ファイバの劈開面には光軸方向に対する垂直面からの角度ずれが存在し、かつ、完全に平坦ではないので、光ファイバの端面同士が密着しないため、接続する光ファイバの端面間に光ファイバのコアと同等の屈折率を有する屈折率整合剤を使用することで、接続損失と反射損失の増大を抑制している。しかしながら、屈折率整合剤では、屈折率の値が温度に依存して変化するため、信頼性に対する課題があった。さらに、フェルールを用いない構造であり、従来の光ファイバコネクタと互換性がないという問題もあった。
【0005】
上記の、従来の光ファイバコネクタと互換性がないという問題を解決する手段として、簡単に光ファイバ同士を互いに着脱できる光ファイバ接続器として光コネクタがある。フェルールとメカニカルスプライスの構造をなす部材とを連結した光コネクタが提案されている(特許文献3)。フェルールの光ファイバ穴は、メカニカルスプライス部の基板のV溝と直線状に突き合わせられ、メカニカルスプライス部から挿入された光ファイバは曲げられることなくフェルールの光ファイバ穴に挿入される構造をなしている。フェルール内では光ファイバは被覆が除去された状態で接着剤により固定される。光コネクタを組み立てるときは、メカニカルスプライスと同様に、フェルール内へは光ファイバの被覆を除去してガラスを露出させガラスを劈開して端部とした状態にした光ファイバを挿入する。V溝を有する基板と蓋部材を重ね合わせ、V溝の方向と平行な方向の側面からクサビを挿入してV溝を有する基板と蓋部材の隙間を広げておき、光ファイバを挿入する。その後、クサビを抜いて基板と蓋部材をバネ部材により押圧して光コネクタの状態を弾性保持する。
【0006】
上記の光ファイバ接続方法によれば、従来の光ファイバコネクタと互換性があり、簡単に光ファイバ同士を互いに着脱できる。しかし、光ファイバの劈開面の軸方向に対する垂直面からの角度ずれ、および不完全な平坦性による、大きい接続損失、反射損失を抑制するために使用する屈折率整合剤に起因する温度変化に対する信頼性の問題は依然解決されていない。
【0007】
上記の、光ファイバの劈開面の軸方向に対する垂直面からの角度ずれ、および不完全な平坦性による、大きい接続損失、反射損失を抑制するために使用する屈折率整合剤に起因する温度変化に対する信頼性の問題を解決する光コネクタを、本出願人のもと提案した(特許文献4)。特許文献4による光コネクタを図1に示す。フェルール1と、フェルールを把持するフランジ2と、フランジに連結された光ファイバ把持部3と、ハウジング4と、クランパ5と、光ファイバ保持蓋6と、光ファイバ保持部ベース7で構成する。フランジは、光ファイバが撓むことができる大きさの光ファイバ撓み空孔部8を有している。フェルールの細径穴の中心軸の延長線上に、フランジ内部の光ファイバ撓み空孔部および光ファイバ把持部の光ファイバ穴の中心軸があるように、フランジおよび光ファイバ把持部は配置される。光ファイバは被覆を除去してガラスを劈開して端面とし、端面をテーパ加工された。この光ファイバの被覆を除去された先端を、光ファイバ把持部から挿入し、光ファイバは曲げられることなく、光ファイバ撓み空孔部を通り、フェルールの細径穴に挿入され、光ファイバ把持部で光ファイバを弾性保持する構造である。光ファイバ把持部において、光ファイバは光ファイバ保持部ベースの溝と光ファイバ保持部蓋の間に位置し、クランパにより弾性保持する構造である。クランパは、光コネクタの長手方向の前後に移動できる。光コネクタへ光ファイバを挿入するときは、クランパを後ろへ位置させて、光ファイバ把持部蓋に力を作用させずに、光ファイバをフェルール側へ挿入可能な状態とする。光ファイバの先端が所定位置に到達したとき、クランパを前に移動させて光ファイバ把持部蓋上へ搭載することで、光ファイバ保持部蓋を上から押圧して光ファイバを弾性保持する。このとき、光ファイバ先端をフェルール端面から100μm程度突き出した状態として保持することで、光コネクタ同士の接続時に光ファイバが光ファイバ撓み空孔部で撓む。撓みにより発生する弾性復元力で光ファイバ端面同士はPC(Physical Contact)接続される。つまり、テーパ加工により光ファイバの劈開によって生じた端面の周辺部のバリは除去されるとともに、光信号が通過するコア付近を残して端面の面積は小さくなっており、光ファイバ同士が密着したPC接続が実現され、低損失、低反射な光接続を実現でき、温度変化に対しても信頼性を確保することができる。しかし、依然として以下のような問題を抱えている。フェルール内に位置する光ファイバは被覆除去してガラスを露出させられており、フランジ内部の光ファイバ撓み空孔部に位置する光ファイバが撓む部位、および光ファイバ把持部に位置する光ファイバを弾性保持する部位では光ファイバは被覆が付いた状態である。光ファイバの被覆除去の長さは、フェルールの細径穴の長さとフェルール端面からの突き出し長さとの和と同程度とする。しかしながら、光ファイバの被覆除去の長さが所定より長くなったとき、ガラス部が撓んで、光ファイバが破断する可能性がある。また、上記光コネクタは、製造工場ではなく、工事現場で取り付けを行う。そのため、工事現場において、光ファイバの被覆を除去したときには、所定の被覆除去長より長くなる場合がある。さらには、工事現場において、顕微鏡などを用いることなく、確実に光ファイバ先端がフェルール端面から100μm程度突き出した状態で、光ファイバ把持部で光ファイバが保持されている必要がある。また、光ファイバ把持部においても問題を抱えている。クランパを前後に動かすことで光ファイバを把持する構造では、光ファイバ把持部が光ファイバを把持する力が不足し、光ファイバを引っ張ったとき、光ファイバの先端がフェルール内に後退することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−061655号公報
【特許文献2】特開2001−324638号公報
【特許文献3】特許3485465号公報
【特許文献4】特開2009−192908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、被覆を除去してガラスを露出させた光ファイバを光コネクタへ挿入し、光ファイバ先端をフェルール端面から僅かに突き出した状態で光ファイバを把持することで、接続時に光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により光ファイバ端面同士をPC接続する光コネクタおよび光コネクタ組立ツールに関して、信頼性と組立作業性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明である、下記の光コネクタを使用することを提案する。光コネクタであって、長軸方向の中心軸に沿って光ファイバの被覆を除去したガラス部が挿入される穴を有する、フェルールと、フェルールを把持し、フェルールに挿入される光ファイバの被覆が付いた部分が撓む空孔部および光ファイバ撓み規制部を有する、フランジと、光ファイバを弾性保持する光ファイバ把持部とを備え、空孔部は光ファイバが撓むことができるだけの内径を有し、光ファイバ撓み規制部は空孔部の中心位置よりフェルールに近い部位に位置し、フェルールの長軸方向の中心軸上に長軸を有する円柱であって、光ファイバの被覆が付いた部分の外径より僅かに大きい穴径を有し、光ファイバ把持部は、光ファイバの先端がフェルール端面から突き出た状態で光ファイバの被覆が付いた部分を弾性保持し、光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により光ファイバ端面同士を押圧して接続することを特徴とする。上記光コネクタを組み立てるために、本発明である、光コネクタキャップと、把持部押さえツールと、組立ツールとを用いる。
【発明の効果】
【0011】
被覆を除去して露出させたガラスを撓ませることなく、光ファイバの被覆付いた部位のみを撓ませることで信頼性を向上させる効果がある。工場出荷から工事現場における取り付けの終了の間、光コネクタに光コネクタキャップを装着した状態とすることで、フェルール端面にゴミを付着させることなく、フェルール端面からの光ファイバの必要な突き出し量を確実に作業性良く設定でき、さらに工事現場における取り付け直前までゴミの付着を防ぐことができる。把持部押さえツールを光コネクタへ装着することで、光ファイバ把持部を撓ませることなく、クサビをクサビ挿入穴へ確実に挿入できる。光コネクタキャップと把持部押さえツールを装着した光コネクタを光ファイバ挿入するツールに搭載することで、光ファイバを把持した光ファイバホルダを前進させるだけで、フェルール端面から所定量の光ファイバを確実に突き出した状態で、光ファイバを弾性保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の光コネクタの断面模式図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態にかかる光コネクタの断面模式図であり、(b)は溝の断面形状が半円である場合の、(a)中の矢印Aにおける光コネクタの光ファイバ把持部の断面模式図であり、(c)は溝の断面形状がV字形状である場合の、(a)中の矢印Aにおける光コネクタの光ファイバ把持部の断面模式図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態にかかる、光ファイバを取り付けた光コネクタの断面模式図であり、(b)は(a)の、光ファイバを取り付けた光コネクタの先端部を拡大した断面模式図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる、光コネクタ同士の接続時の光コネクタの断面模式図である。
【図5】本発明の実施形態にかかる光コネクタキャップの模式図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる、光コネクタキャップを装着した光コネクタの模式図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる光コネクタキャップの断面模式図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる光コネクタキャップの、光ファイバ先端が突き当たる壁を拡大した断面模式図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる把持部押さえツールの模式図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる把持部押さえツールを装着した光コネクタの模式図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる把持部押さえツールを装着した光コネクタの断面模式図である。
【図12】本発明の実施形態にかかる光ファイバ挿入ツールの模式図である。
【図13】(a)〜(d)は、それぞれ光ファイバ挿入ツールによる光コネクタへの光ファイバ挿入時の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2(a)に光コネクタの断面模式図を示す。光コネクタの長軸方向の中心軸に沿って光ファイバの被覆を除去したガラス部が挿入される穴を有するフェルール1と、フェルールを把持し、フェルールに挿入される光ファイバの被覆が付いた部分が撓む空孔部8および光ファイバ撓み規制部9を有するフランジ2と、フランジに連結され光ファイバを弾性保持する光ファイバ把持部3と、ハウジング4で構成する。空孔部8は光ファイバが撓むことができるだけの内径を有している。光ファイバ撓み規制部は空孔部の中心位置よりフェルールに近い部位に位置し、フェルールの長軸方向の中心軸上に長軸を有する円柱であって、光ファイバの被覆が付いた部分の外径より僅かに大きい穴径を有している。光ファイバ把持部は、光ファイバの先端がフェルール端面から突き出た状態で光ファイバの被覆が付いた部分を弾性保持し、光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により前記光ファイバ端面同士を押圧して接続する。光ファイバ把持部は溝付き基板10と蓋6とクランパ5とを備え、基板10の溝と蓋6との間の隙間を光ファイバが通過する。断面がコの字形状であるクランパにより溝付き基板と蓋とを重ねた状態で保持している。フェルールの細径穴11は、フランジ内部の光ファイバ撓み空孔部および光ファイバ把持部の光ファイバが通過する穴と直線状に突き合わされる。図2(a)に示されているフェルールの細径穴の入口にはテーパ加工が施されているが、本発明の光コネクタは光ファイバ撓み規制部を有しているため、テーパ加工の形状は問われず、さらにテーパ加工は施されていなくてもよい。被覆を除去してガラスを劈開して端面とし、端面をテーパ加工した光ファイバを光ファイバ把持部から挿入し、光ファイバ把持部で光ファイバを弾性保持する構造である。図2(b)および図2(c)に、光ファイバ把持部の、図2(a)中の矢印Aにおける光コネクタの長手方向に垂直な方向の断面図を示す。図2(b)が基板の溝の断面形状が半円である場合であり、図2(c)が溝の断面形状がV字形状である場合である。図2(b)、図2(c)のそれぞれに、以下に述べる、光ファイバ把持部に光ファイバを挿入する過程を矢印によって示してある。基板と蓋にはクランパにより覆われていない面にクサビ挿入穴12がある。クサビ13がクザビ挿入穴に挿入されていない場合、基板10の溝と蓋6との間の隙間は、光ファイバが通過できない程度に小さい。クサビ13をクサビ挿入穴へ挿入することで、溝付き基板と蓋との隙間を広げることができ、光ファイバ把持部からフェルール側へ向けて光ファイバを挿通することができる。従来の光コネクタ、たとえば特許文献4に記載の光コネクタでは、光ファイバを挿通し保持するために、クランパを光コネクタの長手方向と平行に前後に動かす必要があった。このため、クランパのクランプ力を、クランパを前後に動かせる大きさより大きくすることができなかった。これに対し、本発明では、クランパはクサビの抜き差しによって開閉する構造であり、前後に動かす必要がないため、本発明のクランパは従来のクランパよりクランプ力を大きくすることができる。図1に示すようにクランパを光コネクタの長手方向と平行に前後に動かす構造である場合、弾性保持された光ファイバへ2N程度の引張力が作用するだけで、光ファイバが後退することがあった。本発明における光コネクタのように、クランパを光コネクタの長手方向と平行に前後に動かさない構造とした場合、5N程度の引張力が光ファイバへ作用した場合においても、光ファイバが後退することがなかった。5N程度の引張力に耐えることができる溝の具体的な形状を示す。溝の形状が半円形状、V字形状ともに、溝の断面の形状は、溝へ光ファイバを設置した場合、光ファイバの軸に垂直な断面が半分程度溝に埋まる形状とし、溝の光コネクタの長手方向の長さは5mmから10mm程度であった。
【0014】
図3(a)に、フェルール端面からの光ファイバの突き出し長14を所定の長さとし光ファイバ把持部からフェルール側へ向けて光ファイバ15を挿通した後で、光ファイバを把持した状態の光コネクタの断面模式図を示す。光ファイバ先端をフェルール端面から100μm程度突き出した状態として保持している。図3(b)は図3(a)の光コネクタの先端部を拡大した断面模式図である。フェルールの細径穴内は被覆を除去した光ファイバが位置し、フランジ部と光ファイバ把持部では被覆が付いた状態の光ファイバが位置する。
【0015】
図4に光コネクタ同士を接続したときの光コネクタの断面模式図を示す。フェルール端面から光ファイバ先端を突き出した状態として保持することで、光コネクタ接続時に光ファイバがフランジ内部の光ファイバ撓み空孔部8で撓む。光ファイバの撓みにより発生する光ファイバの弾性復元力で光ファイバ端面同士はPC(Physical Contact)接続される。ここで、光ファイバ撓み規制部9の穴径は、光ファイバが撓んだ状態であっても、光ファイバ撓み規制部では被覆付き光ファイバが直進した状態となるように保持するように、被覆付き光ファイバの外径より僅かに大きい。被覆を除去したガラス部の長さは、フェルールの細径穴の長さとフェルール端面からの突き出しとの和と同程度にする設計としている。しかし、被覆を除去したときに被覆除去長が所定長より長くなる可能性がある。被覆除去長が長過ぎて光ファイバのガラス部が撓んだ場合、ガラスが損傷する可能性がある。光ファイバ撓み規制部によって、光ファイバが撓んでも、光ファイバはフェルールの細径穴へ直進した状態で挿入されるため、ガラス部の損傷を防止することができる。
【0016】
図5、図6それぞれに光コネクタキャップ16、光コネクタキャップ16を装着した光コネクタ18の模式図を、図7に光コネクタキャップ16の断面模式図を示す。光コネクタキャップは、フェルール端面から光ファイバ先端を所定の長さだけ突き出すために使用する。光コネクタキャップは図2に示した光コネクタのフェルール1を覆うように装着させる。光コネクタキャップは内部に1対の係止片17を有し、光コネクタのハウジング4の係止突起と嵌合する。光コネクタキャップと光コネクタは、ハウジングを操作することにより互いに着脱可能である。光コネクタキャップは内部にフェルールが挿入されるフェルール挿入筒19を有し、その奥にはフェルール端面が突き当たる壁がある。
【0017】
図8にフェルール挿入筒19に挿入したフェルール端面とフェルール1の細径穴11に挿入した光ファイバ先端部を示す。フェルールが突き当たる壁20の中心には直径約1mmの窪んだ穴がある。光コネクタキャップを光コネクタへ装着した状態で、光コネクタの光ファイバ把持部3から光ファイバを挿入したとき、光ファイバの端面はこの窪んだ穴の底21に突き当たる。フェルール端面が突き当たる位置から奥の位置に光ファイバが突き当たる壁21を設置することで、フェルール端面から光ファイバの先端を突き出す構造である。窪んだ穴の深さを、フェルール端面から突き出させたい光ファイバの長さと等しくすることで、所望の光ファイバの先端の突き出し長を設定することができる。フェルール端面にゴミが付着した状態で、光コネクタキャップを光コネクタに装着して光ファイバを挿入した場合、フェルール端面からの光ファイバの突き出し長が所定の長さ以上となる。突き出し長が大きくなると、フランジ内部での光ファイバの撓みが大きくなるため、光ファイバの曲げ損失が発生する。光コネクタを工場から出荷する時点で、光コネクタキャップを光コネクタへ装着した状態とすれば、フェルール端面にゴミを付着させることがなく、よって常に正確な所定の突き出し長とすることができる効果がある。さらに工事現場における取り付け直前まで、フェルール端面へのゴミの付着を防ぐことができる。
【0018】
図9、図10それぞれに把持部押さえツール22、把持部押さえツールを装着した光コネクタの模式図を、図11に把持部押さえツールを装着した光コネクタの断面模式図を示す。把持部押さえツールは、光コネクタの光ファイバ把持部3のクサビ挿入穴12がある面とは反対側の面に装着する。把持部押さえツール装着時には、把持部押さえツールの一部をハウジング4内部に挿入する。図2に示したように、光コネクタの光ファイバ把持部3はハウジング4外に位置した状態でフランジ2と連結している。そのため、クサビをクサビ挿入穴12へ挿入するときに、光ファイバ把持部はクサビの圧力に対して変形しないだけの十分な力で支えられておらず、光ファイバ把持部が傾き、クサビを挿入できないことがある。図11に示したように、把持部押さえツールの一部をハウジングと光ファイバ把持部の隙間へ挿入させることで、クサビをクサビ挿入穴へ挿入するときに、光ファイバ把持部が傾くことなく、確実にクサビを所定位置まで挿入できる。
【0019】
図12に光ファイバ挿入ツール22と、光コネクタキャップ16と把持部押さえツール23を装着した光コネクタ18の模式図を示す。光ファイバ挿入ツールは、あらかじめ光コネクタキャップと把持部押さえツールを装着した光コネクタに、光ファイバを挿入し、光ファイバ把持部3にて光ファイバが弾性保持された状態にするために使用する。光ファイバ挿入ツールは、クサビ13と、クサビ操作レバー(図示せず)と、光コネクタキャップ設置部24と、光ファイバホルダガイド部25と、光ファイバガイド部26と、光ファイバホルダとで構成される。クサビはクサビ操作レバーにより、光ファイバ挿入ツールに対して上下に可動させることができる。図13(a)、(b)、(c)、(d)に光ファイバ挿入ツールを用いて光コネクタへ光ファイバを挿入し、光ファイバ把持部によって光ファイバが把持されるときの断面模式図を示す。
【0020】
図13(a)に示すように、光ファイバ挿入ツールへ光コネクタを搭載するときは、クサビは上に突き出た状態としておく。光コネクタキャップ設置部とクサビの位置は、光コネクタに装着した光コネクタキャップと光ファイバ把持部のクサビ挿入穴と一致しているため、光コネクタに装着した光コネクタキャップを光コネクタキャップ設置部へ嵌めると、光コネクタのクサビ挿入穴はクサビの上に配置される。次に、光コネクタを上部から押して、光コネクタに装着した光コネクタキャップを光コネクタキャップ設置部の底面まで挿入すると、同時にクサビ挿入穴へクサビが挿入される。
【0021】
図13(b)にクサビ挿入穴へクサビが挿入された状態を示す。このとき、把持部押さえツールを装着していることで、光ファイバ把持部が撓むことなく、クサビは確実に所定位置まで挿入されている。クサビがクサビ挿入穴に挿入されることで、光ファイバ把持部における溝付き基板と蓋の隙間が広がり、光ファイバを光コネクタ内へ挿入できる状態にすることができる。次に、光ファイバを光コネクタ内へ挿入する。
【0022】
図13(c)に光ファイバホルダ27で保持した光ファイバの先端が光コネクタキャップ内の壁へ突き当たったときの模式図を示す。光ファイバホルダは、光ファイバ挿入ツールに取り付けられた光コネクタに、確実に、かつ容易に光ファイバを挿入するために使用される。光ファイバホルダの光ファイバを保持する位置は、光ファイバホルダガイド部へ取り付けた際に、光ファイバが光ファイバガイド部の上を通り、光コネクタの後端部から光コネクタ内に挿入されるように設計されている。光ファイバを保持した光ファイバホルダを光ファイバホルダガイド部へ取り付け、光コネクタの方向へ前進させる。光ファイバホルダで保持した光ファイバは、光ファイバガイド部によって、正確に光コネクタへ挿入される。ここで、光コネクタに挿入された光ファイバの先端は、光コネクタキャップ16内の光ファイバ先端が突き当たる壁21に突き当たり、確実にフェルール端面から光ファイバを所定量の長さだけ突き出した状態となる必要がある。そのため、ファイバ挿入ツールは、光コネクタ内の光ファイバ撓み空孔部8の長さより、光コネクタの光ファイバを挿入する面と光ファイバホルダの光ファイバ保持部との間の距離が長い位置で光ファイバホルダが停止するように設計されている。この設計により、光ファイバ先端が光コネクタキャップ16内の光ファイバ先端が突き当たる壁21に突き当たったときに、光ファイバは光コネクタの撓み空間で撓まず、光コネクタの光ファイバを挿入する面と光ファイバホルダの間で撓み、光ファイバ先端が突き当たったことを確認できる。逆に、光コネクタ内の光ファイバ撓み空孔部の長さより、光コネクタの光ファイバを挿入する面と光ファイバホルダの光ファイバ保持部の距離が短い場合、光ファイバ先端が光コネクタキャップ内で突き当たったとき、光ファイバは光コネクタの光ファイバ撓み空孔部で撓んだ状態となる。この状態でクサビを抜き取って光ファイバ保持部で光ファイバを把持し、光コネクタキャップをはずした場合、光コネクタ内の光ファイバ撓み空孔部で撓んでいた光ファイバは、その撓みが開放されて、フェルール端面からの突き出し長は所定の値より大きくなる。所定長以上の突き出し長の増加は、接続時に撓む光ファイバの曲げ損失となるため、抑制する必要がある。光コネクタ内の光ファイバ撓み空孔部の長さより、光コネクタの光ファイバを挿入する面と光ファイバホルダの光ファイバ保持部の距離が長くなる位置で光ファイバホルダを停止させることで、光ファイバは光コネクタの撓み空間で撓まず、所定長の光ファイバがフェルール端面から突き出たことを光ファイバの撓みとして目視により確認できる効果がある。光コネクタへ挿入した光ファイバの先端が光コネクタキャップ内で突き当たったことを確認した後、図13(d)に示すように、クサビを下げてクサビ挿入穴から抜き取り、光ファイバを光ファイバ把持部にて弾性保持し、光ファイバから光ファイバホルダを取り外す。光ファイバ把持部にて光ファイバを弾性保持した後、光ファイバ挿入ツールから光コネクタを取り外し、光コネクタキャップと把持部押さえツールを取り外すことで、光コネクタの組立が完了する。
【符号の説明】
【0023】
1 フェルール
2 フランジ
3 光ファイバ把持部
4 ハウジング
5 クランパ
6 蓋
7 光ファイバ保持部ベース
8 光ファイバ撓み空孔部
9 光ファイバ撓み規制部
10 溝付き基板
11 細径穴
12 クサビ挿入穴
13 クサビ
14 フェルール端面からの光ファイバの突き出し長
15 光ファイバ
16 光コネクタキャップ
17 係止片
18 光コネクタ
19 フェルール挿入筒
20 フェルールが突き当たる壁
21 光ファイバが突き当たる壁
22 把持部押さえツール
23 光ファイバ挿入ツール
24 光コネクタキャップ設置部
25 光ファイバホルダガイド部
26 光ファイバガイド部
27 光ファイバホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コネクタであって、
長軸方向の中心軸に沿って光ファイバの被覆を除去したガラス部が挿入される穴を有する、フェルールと、
前記フェルールを把持し、前記フェルールに挿入される前記光ファイバの被覆が付いた部分が撓む空孔部および光ファイバ撓み規制部を有する、フランジと、
前記光ファイバを弾性保持する光ファイバ把持部と
を備え、前記空孔部は前記光ファイバが撓むことができるだけの内径を有し、
前記光ファイバ撓み規制部は前記空孔部の中心位置より前記フェルールに近い部位に位置し、前記フェルールの長軸方向の中心軸上に長軸を有する円柱であって、前記光ファイバの被覆が付いた部分の外径より僅かに大きい穴径を有し、
前記光ファイバ把持部は、前記光ファイバの先端が前記フェルール端面から突き出た状態で前記光ファイバの被覆が付いた部分を弾性保持し、前記光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により前記光ファイバ端面同士を押圧して接続することを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記光ファイバの被覆を除去したガラス部の先端は、テーパ加工されていることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記光ファイバ把持部は溝付き基板と、蓋と、断面がコの字形状であるクランパと、前記クランパに覆われていない面にクサビが挿入されるクサビ挿入穴とを備え、前記クランパは前記溝付き基板と前記蓋を重ねた状態で保持し、前記光ファイバを挿入する際は前記クサビ挿入穴に前記クサビを挿入し前記溝付き基板の溝と前記蓋との間の隙間に前記光ファイバが挿入されることを特徴とする請求項1または2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により前記光ファイバ端面同士を押圧して接続する光コネクタの組立で使用する光コネクタキャップであって、
係止片と、
光コネクタ端面が突き当たる壁と、
前記光コネクタ端面が突き当たる壁の中心に、窪んだ状態の、前記光ファイバ端面が突き当たる壁と
を備え、はめ込まれる光コネクタは、フェルールと、ハウジングと、ハウジング上に係止用突起とを備え、前記光コネクタキャップは、前記係止片が光コネクタの前記フェルール側を覆い、光コネクタの前記ハウジングと着脱可能に嵌合し、光コネクタの前記ハウジングの前記係止用突起によって光コネクタに固定され、前記フェルールの端面は前記光コネクタ端面が突き当たる壁に突き当たり、光コネクタに前記光ファイバを挿入すると、前記光ファイバの端面は前記光ファイバ端面が突き当たる壁に突き当たり、前記光ファイバの先端が前記フェルールの端面から所定長突き出るようにすることを特徴とする光コネクタキャップ。
【請求項5】
光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により前記光ファイバ端面同士を押圧して接続する光コネクタの組立で使用する把持部押さえツールであって、
組み立てる光コネクタは、前記光ファイバを把持する光ファイバ把持部と、ハウジングとを有し、
前記光ファイバ把持部は溝付き基板と、蓋と、断面がコの字形状であるクランパと、前記クランパに覆われていない面にクサビが挿入されるクサビ挿入穴とを備え、前記クランパは前記溝付き基板と前記蓋を重ねた状態で保持し、前記把持部押さえツールは前記クランパと前記ハウジングとの間に挿入される構造をなし、前記光ファイバを挿入する際は、前もって前記クランパと前記ハウジングとの間に前記把持部押さえツールを挿入しておくことで、前記クサビ挿入穴に前記クサビを挿入した際に前記光ファイバ把持部が曲がることなく、前記溝付き基板の溝と前記蓋との間の隙間に前記光ファイバを挿入することができることを特徴とする把持部押さえツール。
【請求項6】
光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により前記光ファイバ端面同士を押圧して接続する光コネクタの組立で使用する光ファイバ挿入ツールであって、
クサビと、
クサビ操作レバーと、
光コネクタキャップ設置部と、
光ファイバホルダガイド部と、
光ファイバガイド部と
を備え、組み立てる光コネクタは、光ファイバ撓み空孔部と、溝付き基板と、蓋と、断面がコの字形状であるクランパと、前記クランパに覆われていない面にクサビが挿入されるクサビ挿入穴とを備え、前記クランパは前記溝付き基板と前記蓋を重ねた状態で保持し、前記クサビ挿入穴に前記クサビを挿入すると、前記溝付き基板の溝と前記蓋との間の隙間が広がり、光コネクタに前記光ファイバを挿入することができるようになる光コネクタであって、
前記クサビと前記光コネクタキャップ設置部とは、光コネクタの端面から前記光ファイバの先端が所定長突き出るようにするために使用される光コネクタキャップを装着した光コネクタを光コネクタキャップ設置部に嵌めると、クサビがクサビ挿入穴へ挿入されるようにそれぞれ配置され、
前記クサビ操作レバーは、操作されることによって前記クサビを上がった状態および下がった状態に固定でき、
前記光ファイバホルダは前記光ファイバを保持するために使用され、前記光ファイバを保持する位置は、前記光ファイバホルダガイド部へ取り付けた際に、前記光ファイバが前記光ファイバガイドの上を通り、光コネクタの内部に挿入されるように設計され、前記光ファイバホルダを光コネクタ側へ前進させたときの前記光ファイバホルダの停止位置が、光コネクタ後端部と前記光ファイバホルダ端部間の距離が光ファイバ撓み空孔部の長さより長くすることを特徴とする光ファイバ挿入ツール。
【請求項7】
組立ツールおよび光コネクタキャップを使用した、光ファイバの撓みにより発生する弾性復元力により前記光ファイバ端面同士を押圧して接続する光コネクタの組立方法であって、
前記光コネクタキャップを光コネクタに取り付けるステップと、
前記組立ツールのクサビ操作レバーを操作して、前記組立ツールに取り付けられたクサビを上げた状態に固定するステップと、
前記光コネクタキャップを取り付けた光コネクタを前記組立ツールの光コネクタキャップ設置部に嵌め、前記前記光コネクタキャップを取り付けた光コネクタを前記組立ツールの前記光コネクタキャップ設置部に嵌めると同時に前記クサビが光コネクタのクサビ挿入穴に挿入されることによって、光コネクタの前記光ファイバを把持する光ファイバ把持部の前記光ファイバを挿入する穴を広げるステップと、
前記組立ツールの光ファイバホルダに前記光ファイバを保持させるステップと、
前記光ファイバを保持した前記光ファイバホルダを前記組立ツールの光ファイバホルダガイドに沿って前進させて、前記光ファイバを前記光ファイバガイド上部と接触させながら光コネクタ内へ挿入させるステップと、
光コネクタ後端部と前記光ファイバホルダ間の距離が前記光ファイバ撓み空孔部より長くなる位置で前記光ファイバホルダを停止させるステップと、
前記光ファイバガイド部で前記光ファイバが撓んだ後で、前記クサビ操作レバーを操作して、クサビを下げてクサビ挿入穴から抜き取り、前記光ファイバ把持部が前記光ファイバを把持するステップと
を含むことを特徴とする組立方法。
【請求項8】
光コネクタのクサビ挿入穴に前記クサビを挿入する前に、光コネクタのクランパとハウジングとの間の隙間に把持部押さえツールを取り付けるステップをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−37624(P2012−37624A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175669(P2010−175669)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】