説明

光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造

【課題】難燃性を備えかつ充分なコンパクト化が図られる分岐部構造を得る。
【解決手段】光ファイバ心線4は光ファイバ素線8に難燃性樹脂からなる被覆9を施した単心光ファイバ心線であり、一端に単心の光コネクタが取り付けられている。複数本の光ファイバ心線4についてそれぞれ被覆9を除去して光ファイバ素線8を露出させ、その複数本の光ファイバ素線8の束に難燃性チューブ11を被せ、被覆端近傍9aにおける難燃性チューブ11及び被覆部9に難燃性の熱収縮チューブ12を被せる。多心光ファイバ3の部分が充分細径になり、同時に、分岐部に熱収縮チューブ12を被せただけの分岐部構造2が充分にコンパクトなものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数本の光コネクタ付き単心光ファイバ心線に分岐された光コネクタ付き多心光ファイバにおける分岐部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多心光ファイバコードを単心の光ファイバ心線に分岐させ、分岐した各光ファイバ心線に光コネクタを取り付けた光コネクタ付き多心光ファイバ、いわゆる光コネクタ付きファンアウトコード(FOコード)は一般に普及している。
この種の光コネクタ付き多心光ファイバにおいて、多心光ファイバを単心の光ファイバ心線に分岐させる分岐部の構造には種々のものがある。
【0003】
例えば、特許文献1における分岐部の構造は、テープ心線から分岐させた単心線に補強チューブ(補強パイプ)を被せ、分岐部に補強体と熱可塑性接着剤の入った熱収縮チューブを被せ、加熱して接着剤を溶融させ、分岐部近傍全体を熱硬化させて接着する構造である。
特許文献2における分岐部の構造は、分岐部を保護ケース内に収め、柔らかい樹脂で光ファイバを固定し、この柔らかい樹脂の外部を硬い樹脂で固定する構造である。
特許文献3における分岐部の構造は、分岐部全体を熱収縮チューブで覆う構造である。
特許文献4における分岐部の構造は、分岐部を上下2枚の軟質シートで保護し、シート全体を熱収縮チューブで覆う構造である。
特許文献5における分岐部の構造は、分岐部に補強板をあてがいホットヘルメット接着剤を塗布してその上に熱収縮チューブを被せ、熱収縮させて分岐部を保護する構造である。
【特許文献1】特開平9−203831の請求項1、図1等
【特許文献2】特許3349643号の段落番号[0006]、図1等
【特許文献3】実用新案登録第3093329号の請求項1、図1等
【特許文献4】特開2005−292551 請求項1、図1、図2等
【特許文献5】特開平8−327857の請求項1、図2等
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光コネクタ付き多心光ファイバは、主としてルータ機器等の光機器内配線に用いられているが、光機器内で用いる場合には、特に難燃性が要求され、さらに、内部スペースを極力占めないようにすることが要求される。
しかし、上記従来の各分岐部構造は必ずしもコンパクトなものとなっていない。
【0005】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、光コネクタ付き多心光ファイバを光機器内で用いる場合に好適なものとして、難燃性と柔軟性を備え、かつ充分なコンパクト化を実現できる光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造は、光ファイバ素線に難燃性樹脂からなる被覆を施した複数本の光コネクタ付き単心光ファイバ心線における前記光コネクタと反対側で被覆をそれぞれ除去して光ファイバ素線を露出させ、前記複数本の光ファイバ素線の束に難燃性チューブを被せ、被覆端近傍における難燃性チューブ及び被覆部に熱収縮チューブを被せたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1の分岐部構造において、難燃性チューブの先端を切り裂き、その切り裂き先端部を被覆端近傍の被覆部に被せたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1又は2の分岐部構造において、難燃性チューブの先端近傍の内側に接着剤を充填したことを特徴とする。
ここで、難燃性チューブの先端を切り裂いた場合にはその切り裂き先端部の内側に、切り裂いていない場合は筒状の先端近傍の内側に充填する。
【0009】
請求項4は、請求項1〜3の分岐部構造において、複数本の光ファイバ素線が1個の多心光コネクタに取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造における多心光ファイバ部分は、各光ファイバ心線の被覆をそれぞれ除去して露出させた複数本の光ファイバ素線の束に難燃性チューブを被せた部分である。このように被覆を除去した光ファイバ素線の束に難燃性チューブを被せた構造としたことで、多心光ファイバ部分が充分細径になり、同時に、分岐部に熱収縮チューブを被せただけの分岐部構造が充分にコンパクトで柔軟性に富んだものとなる。
【0011】
請求項2のように、難燃性チューブの先端を切り裂き、その切り裂き先端部を被覆端近傍の被覆部に被せることで、分岐部の強度がさらに向上する。
【0012】
請求項3のように、難燃性チューブの先端近傍の内側に接着剤を充填すると、分岐部の強度と柔軟性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施した光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の一実施例の分岐部構造2を備えた光コネクタ付き多心光ファイバ1の全体構成説明図、図2は上記光コネクタ付き多心光ファイバ1における分岐部構造2を拡大して示した断面図である。実施例の光コネクタ付き多心光ファイバ1は、16心の多心光ファイバ3から分岐部構造2において16本の単心の光ファイバ心線4に分岐している。各光ファイバ心線4にはそれぞれ単心の光コネクタ5が取り付けられ、16心の多心光ファイバ3には16心の多心光コネクタ6が取り付けられている。光コネクタ5を取り付けた光ファイバ心線4を光コネクタ付き単心光ファイバ心線7と呼ぶ。
【0015】
実施例の単心光ファイバ心線4は、図3に断面図を示すように、裸ファイバ8aに紫外線硬化型樹脂の1次被覆8bを施した外径0.25mmの光ファイバ素線(一般には、UV心線、あるいはUV素線という場合がある)8に、難燃性樹脂からなる被覆9を施した構造で、外径が0.5mmである。
被覆9の難燃性樹脂としては、例えばポリイミドやポリエステル等の樹脂が用いられる。なお、本発明では、UL規格94V−0、あるいはUL規格94VW−1の認定相当品を難燃性が有ると定義する。
【0016】
実施例の単心光コネクタ5は、外径1.25mmのジルコニア又はガラス製のフェルールを備え、アダプタに差し込んだ時に爪が係合して止まるラッチ付きのハウジングを持つプッシュ・プル着脱構造のもので、一般にLC光コネクタと呼ばれているものである。
実施例の多心光コネクタ6は、JIS C 5982に規定されるF13形多心光ファイバコネクタに概ね相当し、一般にMPO光コネクタと呼ばれているものに概ね相当する。
また、この多心光コネクタ6は、図5に示すように、16本の光ファイバ(裸ファイバ8a)が、フェルール6aに形成した8つずつ2段配列の各光ファイバ穴6bにそれぞれ挿入固定されている。
【0017】
前記分岐部構造2の詳細を図4(イ)、(ロ)の断面図も参照して説明すると、16本の単心光ファイバ心線4について、光コネクタ5と反対側でそれぞれの難燃性の被覆9を除去し、16本の光ファイバ素線8を露出する。
ただし、16本の光ファイバ心線4の難燃性樹脂で被覆された先端部分(被覆端という場合もある)は、作業しやすいように一定の長さを接着剤で固定して一纏めにしておく。
まず、前記16本の光ファイバ素線8を断面を丸型の束にして、難燃性チューブ11に挿通した後に、難燃性チューブ11を単心分岐側(単心光コネクタ側)に移動させて光ファイバ心線の先端部部分に被せる。
難燃性チューブ11は分岐部構造2から多心光コネクタ6までの光ファイバ素線8の束を収納する。
次いで、難燃性チューブ11の先端と被覆端の近傍を覆うように、被覆部9の先端全体に難燃性の熱収縮チューブ12を被せ加熱してそれらの部分を固定している。
つまり、光ファイバ素線の束に難燃性チューブを被せ、被覆端近傍における難燃性チューブ及び被覆部に熱収縮チューブを被せた構造となる。
熱収縮チューブ12を加熱すると、冷却過程で収縮して図示のように内側部分に密着した固定状態となる。熱収縮チューブ12として種々のものを使用できるが、シリコーン系、ビニル系、EPゴム系、ポリオレフィン系(特に、架橋済みの樹脂)、その他の熱収縮チューブを用いることができる。
ここで再度説明すると、被覆端とは、光ファイバ心線4の被覆9を除去して光ファイバ素線8を露出させた時の残された被覆9の端部(光ファイバ心線4の先端)であり、符号9aで示す。
この実施例では、難燃性チューブ11の先端を切り裂き、その切り裂いた先端部11aを被覆端近傍の被覆部9に被せている。
その際、切り裂いた先端部11a内側には、難燃性チューブ11を被せる前に、シリコン系の柔らかな接着剤(例えば、セメンダインスーパーX(セメダイン株式会社の商品名))10を充填しておく。
この接着剤により、難燃性チューブ11を光ファイバ心線4の先端部(被覆端9a近傍部分)及び光ファイバ素線8に接着固定する。
なお、この接着剤は、硬化した状態で難燃性チューブ11、硬化後の熱収縮チューブ12、および難燃性樹脂よりなる被覆9よりも柔らかな接着剤である。
このように、他の難燃性樹脂組成物よりも柔らかな接着剤を用いることにより、分岐部構造2の強度が向上したにも拘わらず、分岐部構造全体2が柔軟性を維持できるので、屈曲した際に光ファイバ素線に過度の折れ曲がりが生ずることを防止することができる。
【0018】
本発明において、多心光ファイバ3の部分は、各光ファイバ心線4の被覆9をそれぞれ除去して露出させた複数本の光ファイバ素線8の束に難燃性チューブ11を被せた部分であるが、このように被覆9を除去した光ファイバ素線8の束に難燃性チューブ11を被せた構造としたことで、多心光ファイバ3の部分が充分細径になり、同時に、分岐部に熱収縮チューブ12を被せただけの分岐部構造2が充分にコンパクトなものとなる。
また、この実施例では、熱収縮チューブ12が、難燃性チューブ11の切り裂き先端部11aの上から光ファイバ心線4の被覆部9の束を締め付け固定しているので、かつ、それらの部分を接着剤で固定しているので、分岐部の強度が一層高いものとなっている。
上記により、難燃性を備えかつ充分コンパクト化され、しかも柔軟性に富んだ強度の高い分岐部構造2が得られ、光機器内で用いる場合に好適な光コネクタ付き多心光ファイバ1が得られる。
【実施例2】
【0019】
上記の実施例では難燃性チューブ11の先端を切り裂いて光ファイバ心線4の被覆部9に被せているが、難燃性チューブ11の先端を切り裂くことはせずに、図6に示すように、難燃性チューブ11の先端を拡張して、光ファイバ素線8の束の部分だけに被せる構造としてもよい。この場合、難燃性チューブ11の切り裂いていない筒状の先端部の内側に接着剤を充填して光ファイバ心線8の束に接着固定してもよい。他の部分は前述の実施例と概ね同様であり、詳細説明は省略する。
さらに、光コネクタ樹脂自体も含めて全体を難燃性とすることにより、全長に渉り柔軟性に富んだ難燃性の光コネクタ付き多心光ファイバを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例の分岐部構造を備えた光コネクタ付き多心光ファイバの全体構成説明図である。
【図2】上記光コネクタ付き多心光ファイバにおける分岐部構造を拡大して示した縦断面図である。
【図3】図1、図2における光ファイバ心線の断面図である。
【図4】(イ)は図2のA−A断面図、(ロ)は図2のB−B断面図である。
【図5】図1における多心光コネクタの端面図である。
【図6】本発明の他の実施例の分岐部構造の縦断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 光コネクタ付き多心光ファイバ
2 分岐部構造
3 多心光ファイバ
4 単心の光ファイバ心線
5 単心の光コネクタ
6 多心光コネクタ
6a フェルール
6b 光ファイバ穴
7 光コネクタ付き単心光ファイバ心線
8 光ファイバ素線
8a 裸ファイバ
8b 1次被覆
9 (光ファイバ心線の)被覆
9a 被覆端(光ファイバ心線の先端)
11 難燃性チューブ
12 熱収縮チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ素線に難燃性樹脂からなる被覆を施した複数本の光コネクタ付き単心光ファイバ心線における前記光コネクタと反対側で被覆をそれぞれ除去して光ファイバ素線を露出させ、前記複数本の光ファイバ素線の束に難燃性チューブを被せ、被覆端近傍における難燃性チューブ及び被覆部に熱収縮チューブを被せたことを特徴とする光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造。
【請求項2】
前記難燃性チューブの先端を切り裂き、その切り裂き先端部を被覆端近傍の被覆部に被せたことを特徴とする請求項1記載の光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造。
【請求項3】
前記難燃性チューブの先端近傍の内側に接着剤を充填したことを特徴とする請求項1又は2記載の光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造。
【請求項4】
前記複数本の光ファイバ素線が1個の多心光コネクタに取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3記載の光コネクタ付き多心光ファイバの分岐部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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