説明

光コネクタ

【課題】大型化を招くことなく、また、大きな配線スペースを確保することなく、曲げによる不具合を確実に抑制することが可能な光コネクタを提供する。
【解決手段】被接続部である機器12に着脱されるハウジング31と、ハウジング31に挿入されて保持された光ファイバ心線を有する光ファイバケーブル11と、ハウジング31における機器12からの取り外し時に把持される操作部40と、操作部40に設けられ、機器12からの取り外し方向である軸方向と垂直方向の回転軸Xで回転可能な回転部材45と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の機器等に挿抜される光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファクトリーオートメーション(FA)システムに用いるシーケンサ等の各種機器の配線にも、光ファイバを有する光ファイバケーブルが使用されつつある。このように配線される光ファイバケーブルは、配管内に通されて保護されるが、機器との接続箇所近傍では外部に露出されている。このため、システムのメンテナンス等の際に、光ファイバケーブルの光コネクタが機器に対して抜き差しされると、光ファイバケーブルが露出部分において急峻に曲げられることがあり、断線に至ることがある。
【0003】
このような不具合を抑制するために、径方向に対して弾性係数が大きい曲げ抑制弾性筒体と、その外周に装着された可撓性を有する補強筒体とで構成された光ファイバ保護体を光ファイバコードの引出し部分に装着して保護することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、光コネクタに固定するカシメリング近傍を被覆する光コネクタブーツの外面に周回する溝を有し、光ファイバケーブルに曲げ荷重が加えられた場合、光ファイバケーブルの曲がった方向の溝が挟まることで光ファイバケーブルの曲げ半径を規制するものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−45537号公報
【特許文献2】特開2007−65569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、十分な効果を得るために、光コネクタと保護体を合わせた構造部分が大型化してしまい、大きな配線スペースを要する。また、特許文献2に記載の技術によれば、光ファイバコードの90度以下までの曲げに対しては効果が期待できるが、実際の使用状況で生じる90度を超える急峻な曲げに対しては十分な効果が得られなかった。
【0007】
本発明の目的は、大型化を招くことなく、また、大きな配線スペースを確保することなく、曲げによる不具合を確実に抑制することが可能な光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明の光コネクタは、被接続部に着脱されるハウジングにおける前記被接続部からの取り外し時に把持される操作部と、
前記操作部に設けられ、前記被接続部からの取り外し方向である軸方向と垂直方向の回転軸で回転可能な回転部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の光コネクタにおいて、前記回転部材は、前記ハウジングにおける前記回転軸方向の両側に設けられていることが好ましい。
【0010】
本発明の光コネクタにおいて、前記回転部材は、前記ハウジングに設けられたロック解除レバーに設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明の光コネクタにおいて、少なくともコアがガラスである光ファイバ心線が前記ハウジングに挿入されて保持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバ心線に装着された光コネクタが被接続部から取り外す際に、光ファイバ心線が引っ張られると、光ファイバ心線から受ける張力によって回転部材に対してハウジングが回転する。したがって、回転部材に対してハウジングが回転することで、光ファイバ心線の曲げを解消し、曲げによる負荷を除去することができる。これにより、大型化を招いたり、大きな配線スペースを確保することなく、曲げによる不具合を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る光コネクタが接続された機器の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る光コネクタが接続された機器の側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る光コネクタに接続された光ファイバケーブルの断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光コネクタを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る光コネクタ及び被接続部の機器の接続部の一部を断面視した平面図である。
【図6】ハウジングと回転部材との連結構造を示す光コネクタの操作部の断面図である。
【図7】機器から取り外される光コネクタの動きを示す図であって、(a)から(c)はそれぞれ側面図である。
【図8】光コネクタの機器への他の接続形態を示す機器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る光コネクタの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、光コネクタ10は、光ファイバケーブル11の端部に設けられている。この光コネクタ10は、機器(被接続部)12に対して着脱可能とされており、この光コネクタ13を機器12の接続部12aに挿し込むことにより、光ファイバケーブル11が機器12に接続される。
【0015】
この光コネクタ10が装着された光ファイバケーブル11は、例えば、ファクトリーオートメーション(FA)システムに用いるシーケンサ等の機器12と工作機器(図示省略)との配線として用いられる。光ファイバケーブル11は、機器12との接続箇所の近傍を除く部分が配管14に通されている。配管14内では、光ファイバケーブル11の周囲に抗張力線が添わされてさらにその周囲に被覆層が設けられた大径の光ファイバケーブルとなっていてもよい。
【0016】
図3に示すように、光ファイバケーブル11は、2本の光ファイバ心線21を有する2心ケーブルである。光ファイバ心線21は、プラスチッククラッドファイバ(PCF)22の周囲をテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等の熱可塑性樹脂からなる被覆層23で覆ったものである。プラスチッククラッドファイバ22は、コア22aが石英ガラスから形成されクラッド22bがプラスチックから形成されたものであり、好ましくは、クラッド22bが高硬度プラスチックから形成されたハードプラスチッククラッドファイバ(H−PCF)である。PCF、H−PCFの何れも、折れ曲がり(キンク)に強く断線しにくい光ファイバ心線21の寸法の一例として、コア22aの外径が0.2mm、ガラスファイバ22の外径が0.23mm、被覆層23の外径が0.5mmである。このように、光ファイバケーブル11に用いられる光ファイバ心線21としては、コア22aの外径が0.2mm以上である大口径のものが用いられる。
【0017】
光ファイバ心線21の外周側には、補強材25が設けられ、さらに、その外周側には、外被26が設けられている。補強材25としては、例えば、アラミド繊維などを用いるのが好ましい。外被26は、例えば、難燃ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂から形成されている。
【0018】
図4(a),(b)に示すように、光コネクタ10は、合成樹脂製のハウジング31を有している。このハウジング31には、その後端にブーツ32が形成されており、ハウジング31の近傍における光ファイバケーブル11が、ブーツ32によって覆われて保護されている。ブーツ32には、光ファイバケーブル11の軸方向に間隔をあけて複数の溝部33が形成されている。
【0019】
ハウジング31には、その先端に、機器12の接続部12aに対して挿抜されるプラグ部35が設けられている。ハウジング31には、光ファイバケーブル11の光ファイバ心線21がそれぞれ接続されたフェルール37が収容されており、これらのフェルール37が、ハウジング31のプラグ部35の先端から突出されている。
【0020】
ハウジング31の両側部には、操作部40が設けられている。これらの操作部40は、ハウジング31の両側部に設けられたロック解除レバー41を備えている。これらのロック解除レバー41は、後端がハウジング31に連結され、先端が機器12の接続部12aへの挿し込み側へ突出されている。つまり、ロック解除レバー41は、ハウジング31との連結箇所を基端として弾性変形可能な片持ち梁状に形成されている。これらのロック解除レバー41には、係止孔43が形成されている。この係止孔43は、機器12の接続部12aへの挿し込み側へ突出されたロック解除レバー41の先端部分に形成されている。
【0021】
図5に示すように、機器12の接続部12aは、ソケット部51を有しており、このソケット部51に、ハウジング31のプラグ部35が嵌合される。ソケット部51には、アダプタ52が設けられている。これらのアダプタ52には、接続される光コネクタ10側のフェルール37の先端が挿し込まれて機器12側のフェルール(図示略)の端面が当接され、よって、光コネクタ10と機器12との光通信が可能となる。
【0022】
また、接続部12aには、ソケット部51の両側に、係止壁55が設けられている。これらの係止壁55には、ソケット部51側へ向かって突出する係止爪56が形成されており、これらの係止爪56は、接続部12aへ挿し込まれた光コネクタ10のロック解除レバー41の係止孔43に係合可能とされている。そして、これらの係止爪56がロック解除レバー41の係止孔43へ係合することにより、機器12の接続部12aに挿し込まれた光コネクタ10が抜け止めされる。
【0023】
光コネクタ10のハウジング31における操作部40には、回転部材45が設けられている。この回転部材45は、円板状に形成された押圧板部46と、この押圧板部46のハウジング31側の面における中心に形成された軸受部47とを有している。
【0024】
図6に示すように、軸受部47には、その中心に、嵌合穴48が形成されている。この嵌合穴48は、底部側に、大径部49が形成されている。また、ロック解除レバー41には、ハウジング31の外側へ向かって突出する係合軸61が形成されており、この係合軸61が、回転部材45の軸受部47に形成された嵌合穴48に嵌合されている。係合軸61の先端には、外周側へ張り出す係合部62が形成されており、嵌合穴48に嵌合された係合軸61の係合部62が、嵌合穴48の大径部49に入り込むことにより、係合軸61に回転部材45が係合されている。これにより、ロック解除レバー41の係合軸61に係合された回転部材45は、機器12からの取り外し方向である光コネクタ10の軸方向と垂直方向の回転軸Xで回転可能とされている。この回転軸Xは、軸受部47及び係合軸61の中心軸である。
【0025】
次に、上記の光コネクタ10を機器12の接続部12aに対して挿抜させる場合について説明する。
(接続時)
光コネクタ10を、例えば、ハウジング31の上下から把持し、この光コネクタ10を機器12の接続部12aに挿し込む。すると、ロック解除レバー41が係止壁55の係止爪56に当接し、この係止爪56によってロック解除レバー41の先端側がプラグ部35側へ弾性変形する。さらに、接続部12aへ光コネクタ10を挿し込むことにより、ロック解除レバー41の係止孔43が係止壁55の係止爪56に達すると、弾性変形していたロック解除レバー41が復元し、係止爪56が係止孔43に入り込む。これにより、係止爪56によってロック解除レバー41が係止され、機器12の接続部12aに挿し込まれた光コネクタ10が抜け止めされた状態に接続される。そして、このように機器12の接続部12aへ光コネクタ10を接続すると、ソケット部51にプラグ部35が嵌合されてフェルール37の先端部がアダプタ52に挿し込まれてフェルール37の端面が機器12側のフェルールの端面に当接され、光コネクタ10と機器12との光通信が可能となる。
【0026】
(接続解除時)
まず、光コネクタ10の両側から操作部40を構成する回転部材45の押圧板部46を把持し、これらの押圧板部46をハウジング31側へ押し込む。
すると、ロック解除レバー41がプラグ部35側へ弾性変形され、これにより、ロック解除レバー41の係止孔43から係止壁55の係止爪56が抜け出す。
この状態で、図7(a)に示すように、機器12に対して離間する方向(図7(a)中矢印A方向)へ光コネクタ10を引くと、接続部12aのソケット部51からハウジング31のプラグ部35が引き抜かれて接続が解除され、機器12から光コネクタ10が取り外される。
【0027】
このとき、光コネクタ10の近傍における光ファイバケーブル11が曲げられていると、図7(b)に示すように、光ファイバケーブル11に付与されている張力によって、左右から把持している回転部材45に対してハウジング31が光ファイバケーブル11の曲げ方向(図7(b)中矢印B方向)へ回転する。これにより、光ファイバケーブル11は、回転部材45に対してハウジング31が回転することで、曲げが解消され、図7(c)に示すように、真っ直ぐな状態とされ、曲げによる負荷が除去される。
【0028】
このように、本実施形態に係る光コネクタ10によれば、被接続部である機器12から取り外す際に、光ファイバケーブル11が引っ張られると、光ファイバケーブル11から受ける張力によって回転部材45に対してハウジング31が回転する。したがって、回転部材45に対してハウジング31が回転することで、光ファイバケーブル11の曲げを解消し、曲げによる負荷を除去することができる。これにより、大型化を招いたり、大きな配線スペースを確保することなく、曲げによる不具合を確実に抑制することができる。
【0029】
また、ハウジング31の後端に形成されたブーツ32には、光ファイバケーブル11の軸方向に間隔をあけて複数の溝部33が形成されているので、光ファイバケーブル11に曲げ荷重が加わった際に、光ファイバケーブル11の曲げ方向側で溝部33が狭まる。これにより、ハウジング31の近傍部分における光ファイバケーブル11は、曲げ荷重が加わった際に、所定の曲げ半径で規制された状態で緩やかに曲げられ、曲げ応力が緩和される。
【0030】
特に、大口径となるコア22aを有するプラスチッククラッドタイプの光ファイバ心線21を備えた構造であっても、高価な補強部材を用いることなく、曲げによる光ファイバ心線21の断線等の不具合を防止することができる。つまり、コストを極力抑えつつ良好な曲げ対策が施された光コネクタ10とすることができる。
【0031】
これにより、FAシステムのメンテナンス等のために光コネクタ10が機器12に対して挿抜されても、光ファイバ心線21の断線等の不具合をなくすことができるので、システムを円滑に運営することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、光コネクタ10を、その幅方向を横方向に配置した状態で機器12に対して挿抜させる場合について説明したが、図8に示すように、光コネクタ10の幅方向を縦方向に配置した状態で機器12に対して挿抜させる構造であっても良い。この場合、光コネクタ10の操作部40の回転部材45の押圧板部46を、上下から把持して機器12の接続部12aから引き抜くことにより、機器12から光コネクタ10を取り外すことができる。そして、このときに、機器12の側方に延在された光ファイバケーブル11における光コネクタ10の近傍部分が曲げられても、光ファイバケーブル11に付与されている張力によって、上下から把持している回転部材45に対してハウジング31が回転する。これにより、光ファイバケーブル11は、回転部材45に対してハウジング31が回転することで、曲げが解消されて真っ直ぐな状態とされ、曲げによる負荷が除去される。
【0033】
また、上記回転部材は、ロック解除レバーがハウジングの片側しかない光コネクタにも適用可能である。その場合、ハウジングの一方側ではロック解除レバーに回転部材が設けられ、他方側ではハウジングの壁に回転部材が設けられる。
【符号の説明】
【0034】
10:光コネクタ、12:機器(被接続部)、21:光ファイバ心線、22a:コア、31:ハウジング、40:操作部、41:ロック解除レバー、45:回転部材、X:回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接続部に着脱されるハウジングにおける前記被接続部からの取り外し時に把持される操作部と、
前記操作部に設けられ、前記被接続部からの取り外し方向である軸方向と垂直方向の回転軸で回転可能な回転部材と、を有することを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の光コネクタであって、
前記回転部材は、前記ハウジングにおける前記回転軸方向の両側に設けられていることを特徴とする光コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光コネクタであって、
前記回転部材は、前記ハウジングに設けられたロック解除レバーに設けられていることを特徴とする光コネクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光コネクタであって、
少なくともコアがガラスである光ファイバ心線が前記ハウジングに挿入されて保持されていることを特徴とする光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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