説明

光センサシステム

【課題】本発明は、光センサシステムにおける予備センサの数を削減することによって運用コストを低くすることを目的とする。
【解決手段】本発明の光センサシステム10は、波長掃引レーザ11で発振されたパルス光が入力される全ての光センサ15−1〜15−mに、波長掃引レーザ11の波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有する導波路回折格子22を備え、波長掃引レーザ11からのパルス光を各光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22で反射させ、この反射パルス光をパルス受信器16で受信し、異常特定装置18−1で、その受信された反射パルス光の時間軸上での所定位置からのずれを検知して異常発生の光センサ15−3を特定可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを構造物の歪など各種の物理量を計測するために用いる光センサシステムであって、特に光ファイバ型のセンサに限定されず、平面型光導波路に形成された回折格子も含む導波路回折格子をセンサとして用いる光センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ型のセンサはセンサ部分に電源を必要とせず、電磁誘導による障害の影響も無く、光伝送媒体が細芯、可撓(柔軟)、耐腐食性を備えている等の特長があるため、土木設備や構造物の診断など広域センシングへの応用など様々な分野への応用に期待が高まっている。
【0003】
従来、このような光センサとしてFiber Bragg Grating(光ファイバ回折格子:以後「Fiber Bragg Grating」を「FBG」と略記する。)を用いた光センサシステムにおいては、光源として光波が全く干渉しないインコヒーレント光源が幅広く用いられてきた。グレーティング(屈折率周期構造)の周期に波長の合致するブラッグ波長が互いに異なる複数のFBGを直列に接続して配備することで、ブラッグ波長がセンサ位置を表すようになっている。
【0004】
また、FBGの反射する波長帯域はセンサ数に比例して広がるため、これらをカバーできる広帯域光源として、出力安定性が非常に優れると共に、広帯域でインコヒーレント光を発するASE(Amplified Spontaneous Emission)光源などが用いられてきた。
【0005】
この種の従来技術として、特許文献1に記載のFBGを用いた歪み計測システムがある。このシステムでは、広帯域パルス光源からの光信号が光ファイバを通ると、歪測定用FBGから反射した光信号が光サーキュレーターを通ってから1×2光コネクタを介して二つに分離されるので、一方の光信号はそのままフォトディテクタにて検出され、他方の光信号はチャープドFBGを通した後にフォトディテクタで検出されるようになっている。ここで、光信号はチャープドFBGに通ることにより、光強度が波長に応じて変化するので、上記の検出された二つの光信号の強度を比較することにより歪計測用FBGから反射した光信号の波長を計算により求め、構造物の歪を計測するといった構成となっている。
【特許文献1】特開2005−519784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来の光センサシステムにおいて、ブラッグ波長の異なるFBGを直列に配備してブラッグ波長がセンサ位置を表すようにしたシステムでは、ブラッグ波長が各々異なるので各センサの波長は重複が許されないことになる。この場合、FBGが破損した場合に備え、予備センサを全てのセンサに対して少なくとも1つずつ用意する必要があるので、FBG数が多いほどに運用コストが高くなるという課題があった。
【0007】
また、FBGの反射する波長帯域がセンサ数に比例して広がることをカバーするためにASE光源を用いた場合、スペクトル帯域当たりの電力密度が、レーザのようなコヒーレント光源に比べてはるかに低く、このためSNR(Signal to Noise Ratio)を高くすることができない。これを解決可能な光源として波長掃引レーザがあり、このレーザを使用すればSNRを向上させることが可能である。しかし、反射波長がセンサを同定する手段である点は従来と変わらず、予備センサを各波長のFBG毎に用意する必要があるので、上記課題と同様に運用コストが高くなってしまう。
【0008】
更に、上記特許文献1においても、同様に歪計測用のFBGが複数直列に接続された構成となっているので、予備センサを各々のセンサ毎に用意する必要があり、このため上記課題と同様に運用コストが高くなってしまう。
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、光センサシステムにおける予備センサの数を削減することによって運用コストを低くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、発明者らは、波長掃引レーザで発振されたパルス光が入力される全ての光センサとして、波長掃引レーザの波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有する導波路回折格子を備え、波長掃引レーザからのパルス光を各導波路回折格子で反射させ、これらの反射パルス光を受信し、この受信反射パルス光の時間軸上での所定位置からのずれを検知して異常が発生した導波路回折格子を特定可能とした。
【0011】
具体的には、波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、前記波長掃引レーザから出射されたパルス光を伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子と、前記導波路回折格子での反射パルス光を受信し、この反射パルス光の時間軸上での所定位置からのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段と、を備えたことを特徴とする光センサシステムである。
【0012】
この構成によれば、全ての光センサである導波路回折格子のブラッグ反射構造が同じなので、これと同じブラッグ反射構造の導波路回折格子を予備用として少数用意するだけで済む。従って、従来のように少なくとも全光センサに対応した予備の光センサを用意する場合と比較して、大幅に予備の光センサの数を減少させることができるので、運用コストを低くすることができる。
【0013】
また、具体的には、波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、前記波長掃引レーザから出射されたパルス光を伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子と、前記予め設定したブラッグ波長からずれた反射パルス光を受信し、この反射パルス光のスペクトルのピークと基準ピークの差と、予め定められた値とのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段を備えたことを特徴とする光センサシステムである。
【0014】
この構成によっても、前述の構成と同様に、同じブラッグ反射構造の導波路回折格子を予備用として少数用意するだけで済むので、大幅に予備の光センサの数を減少させることができ、運用コストを低くすることができる。
【0015】
更に、具体的には、波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、前記波長掃引レーザからの出射光を一定スペクトル幅で複数に分波して出力する光分波フィルタと、前記光分波フィルタで分波された複数のパルス光をそれぞれ伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子、及び、前記導波路回折格子での反射パルス光を受信し、この反射パルス光の時間軸上での所定位置からのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段を一組として成る光センサ経路構造とを有し、前記光センサ経路構造を前記光分波フィルタでの光の分波数に対応した数、備えたことを特徴とする光センサシステムである。
【0016】
この構成によれば、被測定物が大規模である場合などに、より多くの光センサを用いて光センサシステムを構成する場合でも、光分波フィルタに同じ構成の光センサ経路構造を複数接続すればよいので、容易に大規模な光センサシステムを構成することができる。更に、このように多くの光センサを用いる場合でも、前述の構成と同様に、同一経路における全光センサである導波路回折格子のブラッグ反射構造が同じなので、光センサを予備用として少数用意するだけで済み、従来構成と比較して運用コストを低くすることができる。
【0017】
更に、具体的には、波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、前記波長掃引レーザからの出射光を一定スペクトル幅で複数に分波して出力する光分波フィルタと、前記光分波フィルタで分波された複数のパルス光をそれぞれ伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子、及び、前記予め設定したブラッグ波長からずれた反射パルス光を受信し、この反射パルス光のスペクトルのピークと基準ピークの差と、予め定められた値とのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段を一組として成る光センサ経路構造とを有し、前記光センサ経路構造を前記光分波フィルタでの光の分波数に対応した数、備えたことを特徴とする光センサシステムとする。
【0018】
この構成によっても、前述の構成と同様に、容易に大規模な光センサシステムを構成することができ、更に、同一経路における全光センサである導波路回折格子のブラッグ反射構造が同じなので、光センサを予備用として少数用意するだけで済み、従来構成と比較して運用コストを低くすることができる。
【0019】
本発明の光センサシステムは、接続用光ファイバから分岐された後、導波路回折格子の前段に温度補償光ファイバを更に備え、前記温度補償光ファイバは、温度に起因する膨張収縮によるパルス光の遅延変動が、温度に起因する前記導波路回折格子のブラッグ波長偏移による反射パルス光の遅延変動を相殺する長さであることが望ましい。
【0020】
この構成によれば、導波路回折格子の温度に起因するブラッグ波長偏移による反射パルス光の遅延変動を、温度補償光ファイバの温度に起因する膨張収縮によるパルス光の遅延変動で相殺できるように、温度補償光ファイバの長さが定められているので、温度変化が起因する導波路回折格子のブラッグ波長偏移による反射パルス光の遅延時間変動を抑制することができる。
【0021】
本発明の光センサシステムは、波長掃引レーザから出射されたパルス光を検出し、この検出パルス光の波長掃引速度が一定となるように当該波長掃引レーザからのパルス光の波長を制御する制御手段を更に備えたことが望ましい。
【0022】
この構成によれば、波長掃引レーザの波長掃引速度が電源変動や経時劣化などによって変動しても、その波長掃引速度を一定に制御することができ、これによって、所定波長のパルス光を光センサである各導波路回折格子へ出射することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光センサシステムにおける予備センサの数を削減することによって運用コストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0025】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図、(b)は(a)に示すWBGセンサの構成図である。
【0026】
第1の実施形態の光センサシステム10は、波長掃引レーザ11と、光サーキュレータ12と、この光サーキュレータ12に各々が接続用光ファイバ13で直列に接続されると共にトンネル構造物等の被測定物14に配設されたm個の光センサ15−1,15−2,15−3,15−4,…,15−mと、パルス受信器16と、異常特定装置18−1とを備えて構成されている。なお、パルス受信器16と異常特定装置18−1の組合せによって受信特定手段が構成される。
【0027】
波長掃引レーザ11は、波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振するものである。
【0028】
光サーキュレータ12は、3つの光の入出力端子a,b,cを有し、これら光入出力端a,b,cにおいて入力光を内部の周回導波構成で周回させながら出力するものであり、ここでは、波長掃引レーザ11から出射されたパルス光を、光入出力端aから取り込んで、これを光入出力端bから接続用光ファイバ13へ出力し、また逆方向に接続用光ファイバ13からのパルス光を光入出力端bから取り込んで光入出力端cからパルス受信器16へ出力する。
【0029】
各光センサ15−1〜15−mは、図1(b)に示すように、1対2型の光分岐器21と、導波路回折格子22とを備えて構成されている。
光分岐器21は、接続用光ファイバ13からの入力パルス光を2つに分波し、この一方のパルス光を接続用光ファイバ13を介して導波路回折格子22へ出力し、他方のパルス光を接続用光ファイバ13を介して後段の光センサへ出力し、また、その逆方向に導波路回折格子22で反射された反射パルス光を前段の光センサへ出力するものである。
【0030】
但し、図1(b)では光センサ15−1〜15−mに対して前段の光センサ、後段の光センサと表したが、波長掃引レーザ11に最も近い最前段の第1の光センサ15−1は、光分岐器21の1つの光入出力端が光サーキュレータ12の光入出力端bに接続されており、最後段の第mの光センサ15−mは、光分岐器21の分岐側の光入出力端のうち導波路回折格子22への接続側でない光入出力端部において無反射終端処理が施されている。
【0031】
導波路回折格子22は、平面型光導波路に形成された回折格子又はFBG(光ファイバ回折格子)であって、波長掃引レーザ11の波長掃引の範囲内にある予め設定されたブラッグ波長を反射するブラッグ反射構造を有しており、光分岐器21で分波された一方のパルス光を反射し、この反射パルス光を光分岐器21へ出力する。導波路回折格子22は、全ての光センサ15−1〜15−mにおいて同一のブラッグ反射構造とされている。
【0032】
各光センサ15−1〜15−mは、全てが同じブラッグ反射構造の導波路回折格子22を有しており、各々の導波路回折格子22での反射パルス光は光分岐器21を通過して前段へ出力されるので、最終的に光サーキュレータ12の光入出力端bへ到達して入力されるようになっている。
【0033】
パルス受信器16は、光サーキュレータ12の光入出力端cから出力される反射パルス光を順次受信し、図2(a)のパルス波形図に示すように、その受信時刻t1〜tm毎に反射パルス光の電力値(又は、受信パルス電力値と称す)P1〜Pmを検出するものである。
【0034】
異常特定装置18−1は、パルス受信器16で検出された各反射パルス光の受信時刻t1〜tmと電力値P1〜Pmとの関係より反射パルス光の時間軸t上での所定時間位置からのずれを検知し、これによって異常が発生した光センサ15−1〜15−mを特定するものである。
【0035】
この特定方法について説明する。パルス受信器16で検出された受信パルス電力値P1〜Pmは、各光センサ15−1〜15−mからの反射距離が遠いほどに小さくなるので、波長掃引レーザ11と各々の光センサ15−1〜15−mとの間の距離が分かれば、各電力値P1〜Pmの反射パルス光がどの光センサ15−1〜15−mで反射されたものであるかが認識できる。
【0036】
従って、異常特定装置18−1には、予め各電力値P1〜Pmの反射パルス光がどの光センサ15−1〜15−mのものかが対応付けられており、所定時間位置t3からt3Δのようにずれた反射パルス光の電力値P3に対応付けられた光センサ15−3を特定可能となっている。なお、各光センサ15−1〜15−mは固有情報のセンサID等で認識できるようになっている。
【0037】
但し、本実施形態では、電力値P1の反射パルス光が第1の光センサ15−1からのものであり、電力値P2の反射パルス光が第2の光センサ15−2、電力値P3の反射パルス光が第3の光センサ15−3、電力値P4の反射パルス光が第4の光センサ15−4、電力値Pm−1の反射パルス光が図示せぬ第m−1の光センサ、電力値Pmの反射パルス光が第mの光センサ15−mからのものである。また、受信時刻t3Δに破線で示す電力値P3のパルス光の波形は、後述の理由によって受信時刻t3の電力値P3の反射パルス光がずれたものである。
【0038】
また、波長掃引レーザ11と各々の光センサ15−1〜15−mとの間の距離から各反射パルス光の受信間隔ttも把握可能であり、ここでは、各光センサ15−1〜15−m間の距離が一定であるとして、受信間隔ttも一定であるとした。
【0039】
更に、図2(b)に、波長掃引レーザ11の波長掃引特性を斜線で示し、波長掃引されながら出射されるパルス光(出射パルス光)を楕円で示し、更に、それら出射パルス光に対応する(a)の各電力値P1〜Pmの反射パルス光を対応付けて示した。
【0040】
更に、反射パルス光の所定時間位置からのずれ検知によって異常が発生した光センサを特定する処理について説明する。波長掃引レーザ11は図3に斜線の太線部分31で示す波長掃引特性を有するが、この特性に応じた波長掃引による出射パルス光のスペクトル波形を同図右側に符号32で示す。また、その出射パルス光が各光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22で反射された際の反射パルス光のスペクトル波形を符号33で示し、この反射パルス光がパルス受信器16で受信された際のスペクトル波形を符号34で示す。また、符号35で示す波形は、出射パルス光のスペクトル波形32を時間軸t上に表したものである。
【0041】
これらスペクトル波形32,33,34,35の関係から分かるように、出射パルス光が導波路回折格子22で反射されたスペクトル波形33で示す反射パルス光と、これがパルス受信器16で受信されたスペクトル波形34で示すパルス光とは一致している。しかし、温度や歪の影響により導波路回折格子22のブラッグ反射波長がずれると、符号33Δで示すように反射パルス光がずれるので、パルス受信器16で受信される反射パルス光も符号34Δで示すように時間軸t上で所定位置からずれる。
【0042】
つまり、図2(a)に示したように、時刻t3で受信されるべき電力値P3の反射パルス光が、それよりも遅れた時刻t3Δで受信されることになる。この反射パルス光は電力値P3が予め該当する第3の光センサ15−3に対応付けられているので、この対応関係から第3の光センサ15−3に異常が発生したことを、異常特定装置18−1で特定することが可能となっている。
【0043】
ここで、本実施形態の波長掃引レーザ11を用いた光ファイバ歪み検出に関する定量的な評価について説明する。
【0044】
波長掃引レーザ11は、図4に示すように、斜線で示す特性の波長掃引速度νλを有し、時間Δtの間に波長が一様にΔλで掃引されるレーザであるとする。この掃引による出射パルス光が導波路回折格子22で反射された反射パルス光を符号41で示し、この反射パルス光波形41がパルス受信器16で受信されたパルス光を符号42で示す。また、波長掃引レーザ11の波長掃引速度νλは、次式(1)で定義されるものとする。
【数1】

なお、図4では右上がりの直線で示す波長掃引速度νλが正、即ち時間tと共に長波長側へシフトしていくパルス光を想定しているが、その逆特性、即ち図示はしないが波長掃引速度νλが左下がりの直線となる負で、時間tと共に短波長側にシフトしていくパルス光も利用可能である。
【0045】
ここで、ΔTなる温度変化による反射波長の変化を考えることにして、これを図示のようにΔλTとし、これによる波長掃引レーザ光の反射時間位置変化を図示のようにΔtTとする。これら変化に応じてずれたパルス光を41Δ及び42Δで示す。
【0046】
通常、OTDR(以後「OTDR」を「Optical Time Domain Reflectometer:光学式時間領域反射率計」と略記する。)測定では、反射時間位置は光ファイバ反射位置として測定器からの距離に換算されるから、この変化分をΔlTとすると、下式(2)の関係となる。但し、光ファイバ中でのパルス光の速度をΔνとする。ここでnは実効屈折率の意味であり、真空での光速cとはν=c/nの関係がある。
【数2】

【0047】
この式(2)の関係を逆にして、OTDR装置で観測される反射位置の温度変化率ΔlT /ΔTは次式(3)のようになる。
【数3】

波長掃引レーザ11の波長掃引速度νλは、その掃引原理に依存して様々であることから、4通りの波長掃引速度νλを仮定して、図5に示す波長掃引速度νλとOTDR上でのパルス光位置変化温度依存の関係によって、上式(3)を評価する。
【0048】
図5の関係から分かることは、波長掃引速度νλが小さすぎるとΔl/ΔT[m/deg.]で示すように温度変化に対して反射位置が大きく変化しすぎ、光センサであるFBG(導波路回折格子22)の反射点のみかけの順序が入れ替わってしまう事態が起こりうる。これは光センサの管理運用を煩雑にする意味で欠点となる。これを具体的に算定すると以下のようになる。
【0049】
図1に示すように、各光センサ15−1〜15−mの間隔l[m]が一定であり、温度検出範囲をT[℃]とすると、最大温度変化Tでも反射点は隣の光センサ位置lに達しない条件として、次式(4)の不等式が成立せねばならない。
【数4】

波長掃引速度νλに対する下限としては、次式(5)のようになる。
【数5】

一方、波長掃引速度νλが大きすぎると、温度変化に対して反射位置変化が鈍感になり、温度変化を検出しにくくなるということがある。運用状態でのOTDRの空間分解能をδ[m]とすると、次式(6)となる。
【数6】

この式(6)が成立しなければならないから上限の波長掃引速度νλとしては次式(7)のようになる。
【数7】

【0050】
よって、光センサシステム10に用いる波長掃引レーザ11の波長掃引速度に関する下限は式(5)で、上限は式(7)で与えられることになる。なお、光センサシステム10の主な設計仕様の一例を図6に示す。
【0051】
次に、このような光センサシステム10において異常が発生した光センサを特定する際の動作を説明する。
【0052】
波長掃引レーザ11での波長掃引によって発振されたパルス光が接続用光ファイバ13を介して光サーキュレータ12の光入出力端aから入力され、光入出力端bから出力されて接続用光ファイバ13を介して第1の光センサ15−1へ入力される。この入力されたパルス光は、第1の光センサ15−1の光分岐器21で分波され、一方は導波路回折格子22へ出力され、他方は後段の第2の光センサ15−2へ出力され、以降同様に後段の各光センサ15−3〜15−mへ最終段まで伝送される。
【0053】
導波路回折格子22へ出力されたパルス光は、ここで反射され、光分岐器21を逆方向に通過して前段の各光センサ15−2〜15−m−1(図示せず)へ出力され、最前段の光センサ15−1から光サーキュレータ12の光入出力端bへ伝送されて入力される。この入力された反射パルス光は、光サーキュレータ12の光入出力端cからパルス受信器16へ出力され、ここで順次受信される。これらの受信された反射パルス光は、図2(a)に示すように、受信時刻t1〜tm毎に反射パルス光の電力値P1〜Pmが検出され、異常特定装置18−1へ出力される。
【0054】
この異常特定装置18−1では、その検出された各反射パルス光の受信時刻t1〜tmと電力値P1〜Pmとの関係より、反射パルス光の時間軸t上での所定時間位置からのずれが検知され、この結果から異常が発生した光センサ15−1〜15−mが特定される。
ここで、図2(a)に時刻t1,t2,t3,t4,…,tm−1,tmで示すように、ずれが検知されなければ異常無しと判断される。一方、時刻t3Δで示すように、時刻t3からのずれが検知された場合、その所定時間位置からずれた反射パルス光の電力値P3が認識され、この電力値P3の反射パルス光に予め対応付けられた第3の光センサ15−3が特定される。この後は、特定した第3の光センサ15−3に異常が発生したことを、ランプ点灯点滅やディスプレイ表示、或いは警報音など管理者に認識可能なように警報通知される。
【0055】
このような第1の実施形態による光センサシステム10によれば、波長掃引レーザ11で発振されたパルス光が入力される全ての光センサ15−1〜15−mに、波長掃引レーザ11の波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有する導波路回折格子22を備え、波長掃引レーザ11からのパルス光を各光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22で反射させ、この反射パルス光をパルス受信器16で受信し、異常特定装置18−1で、その受信された反射パルス光の時間軸上での所定位置からのずれを検知して異常発生の光センサ15−3を特定可能とした。
【0056】
この構成の場合、全光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22のブラッグ反射構造が同じなので、これと同じブラッグ反射構造の導波路回折格子22を有する光センサを予備用として少数用意するだけで済む。従って、従来のように少なくとも全光センサに対応した予備の光センサを用意する場合と比較して、大幅に予備の光センサの数を減少させることができるので、運用コストを低くすることができる。
【0057】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図である。
第2の実施形態の光センサシステム50が第1の実施形態の光センサシステム10と異なる点は、光サーキュレータ12に分光受信器17を接続し、この分光受信器17の出力側に異常特定装置18−2を接続したことにある。なお、分光受信器17と異常特定装置18−2の組合せによって受信特定手段が構成される。
【0058】
分光受信器17は、光サーキュレータ12の光入出力端cから出力される反射パルス光のうち、図8に示すように、予め設定したブラッグ波長λaからずれた波長λbの反射パルス光を受信し、この反射パルス光のスペクトルの電力値Paと基準電力値Pbとの差(電力差)Dabを検知する。
【0059】
異常特定装置18−2は、図9に示すように、各光センサ15−1〜15−mの固有情報であるセンサIDに、各光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22での反射パルス光の電力値P1〜Pmと基準電力値Pbの電力差Rとが予め対応付けられたテーブルを有しており、分光受信器17で波長λbのずれた反射パルス光の電力差Pabが検知された場合、テーブルから電力差Pabに等しい電力差Rを検索し、この電力差Rに対応付けられたセンサID(例えば「3」)から該当の光センサ15−3を特定する。
【0060】
但し、テーブルの各センサIDにおける電力差Rは、基準電力値Pbを第1の光センサ15−1からの反射パルス光の電力値P1として求めた。また、ブラッグ波長λaからずれた波長λbの反射パルス光スペクトルの電力値Paは、次のように求める。
【0061】
例えば、光分岐器21の分岐比がすべて50%:50%、つまり3dBカプラを使用しており、導波路回折格子22の反射率が100%であるとすると、m番目の導波路回折格子22からの反射は基準電力値Pbである主スペクトルピークに対してR=3m+10log(1−2−m)[dB]だけ低いピークとなる。なお、パテーブルに示した15段の光センサ15−1〜15−mの電力差Rは具体的な数値を引用してあるが、光ファイバ損失は無視している。
【0062】
このような第2の実施形態による光センサシステム50によれば、波長掃引レーザ11で発振されたパルス光が入力される全ての光センサ15−1〜15−mに、波長掃引レーザ11の波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有する導波路回折格子22を備え、波長掃引レーザ11からのパルス光を各光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22で反射させ、分光受信器17で、予め設定したブラッグ波長λaからずれた波長λbの反射パルス光を受信し、この反射パルス光のスペクトルの電力値Paと基準電力値Pbとの差(電力差)Pabを検知する。異常特定装置18−2で、パテーブルからその検知された電力差Pabに等しい電力差Rを検索し、この電力差Rに対応付けられたセンサID(例えば「3」)から該当の光センサ15−3を特定可能とした。
【0063】
この第2の実施形態の場合も、第1の実施形態と同様に全光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22のブラッグ反射構造が同じなので、光センサを予備用として少数用意するだけで済み、従来構成と比較して運用コストを低くすることができる。
【0064】
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図である。
第3の実施形態の光センサシステム60は、上記の波長掃引レーザ11に比べて波長掃引帯域の広い広帯域波長掃引レーザ61を用い、この広帯域波長掃引レーザ61に光分波フィルタ62を介して接続用光ファイバ13で第1〜第pの光センサ経路構造63−1〜63−pを接続した点にある。
【0065】
各光センサ経路構造63−1〜63−pは、各々同構成であり、第1の実施形態で説明した波長掃引レーザ11を除く全ての構成要素を有して成る。即ち、光サーキュレータ12と、この光サーキュレータ12に各々が接続用光ファイバ13で直列に接続されると共に被測定物14に配設されたm個の光センサ15−1,15−2,15−3,15−4,…,15−mと、パルス受信器16と、異常特定装置18−1とを有して成る。但し、このように複数の光センサ経路構造63−1〜63−pを備える光センサシステム60の場合、被測定物14は第1の実施形態の場合よりもより大規模なものを想定する。
【0066】
このような構成において、広帯域波長掃引レーザ61からの広帯域なスペクトルの出射光を、光分波フィルタ62で複数の光センサ経路構造63−1〜63−pの数だけ一定スペクトル幅のパルス光に分波し、この分波により得られる各パルス光を各光センサ経路構造63−1〜63−pに接続用光ファイバ13を介して入力する。この入力後の動作は第1の実施形態で説明した光センサシステム10と同様である。
【0067】
このような第3の実施形態による光センサシステム60によれば、被測定物14が大規模である場合などに、より多くの光センサ15−1〜15−mを用いて光センサシステムを構成する場合でも、光分波フィルタ62に同じ構成の光センサ経路構造63−1〜63−pを複数接続すればよいので、容易に大規模な光センサシステムを構成することができる。更に、このように多くの光センサ15−1〜15−mを用いる場合でも、第1の実施形態と同様に、全光センサ15−1〜15−mの導波路回折格子22のブラッグ反射構造が同じなので、光センサを予備用として少数用意するだけで済み、従来構成と比較して運用コストを低くすることができる。
【0068】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図である。
第4の実施形態の光センサシステム70が、第3の実施形態の光センサシステム60と異なる点は、パルス受信器16及び異常特定装置18−1に代え、分光受信器17及び異常特定装置18−2を用いた光センサ経路構造73−1〜73−pを光分波フィルタ62に接続用光ファイバ13で接続した点にある。
【0069】
従って、各光センサ経路構造73−1〜73−pは、各々同構成であり、第1の実施形態で説明した波長掃引レーザ11を除く全ての構成要素を有して成り、広帯域波長掃引レーザ61からの広帯域なスペクトルの出射光が、光分波フィルタ62で複数の光センサ経路構造73−1〜73−pの数だけ一定スペクトル幅のパルス光に分波され、この分波により得られる各パルス光が各光センサ経路構造73−1〜73−pに接続用光ファイバ13を介して入力された後は、第1の実施形態で説明した光センサシステム10と同様の動作となる。
【0070】
このような第4の実施形態による光センサシステム70においても、第3の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0071】
(第5の実施形態)
図12は、本発明の第5の実施形態に係る光センサシステムにおける光センサの構成を示す図である。
第5の実施形態の特徴は、図12に示すように、光分岐器21と導波路回折格子22とを温度補償光ファイバ81で接続して光センサ82を構成し、この光センサ82を第1の実施形態の光センサシステム10の各光センサ15−1〜15−m又は第3の実施形態の光センサシステム60の各光センサ15−1〜15−mに代えて用いた点にある。
【0072】
温度補償光ファイバ81は、温度に起因する膨張収縮によるパルス光の遅延変動が、温度に起因する導波路回折格子22のブラッグ波長偏移による反射パルス光の遅延変動を相殺する長さとしたものである。この相殺可能な長さを例えば図示のようにコイル状に巻いて実現する。
【0073】
導波路回折格子22は、温度上昇による屈折率変化と熱膨張によってその反射波長が変化する。例えば石英系ファイバをベースとしたFBGの場合、反射波長は通常0.01nm/℃程度である。例えば、防災を目的とした光センサシステムを想定すると、熱(温度)の影響と、純粋な応力によるFBGの伸び縮みとによる反射波長の変動に分離される。
【0074】
つまり、温度に起因する膨張収縮によるブラッグ反射構造の変動に応じたパルス光の遅延変動を、光センサ82のように温度補償光ファイバ81の膨張収縮が打ち消す構成をとることで、温度変化による影響を相殺するものである。この構成の光センサ82の適用は時間情報が保存されるパルス受信器16を用いた場合に限られる。つまり、第1又は第3の実施形態の構成の場合に限られる。
【0075】
ここで、一般的に、光ファイバケーブルの線膨張率αがその被覆のナイロンで決定されるとすると、それはα=5×10−5程度である。そこで、光センサ間の長さlSの接続用接続用光ファイバ13の膨張収縮による反射遅延時間の温度係数Δt/ΔTは、次式(8)で求められる。
【数8】

【0076】
これを、光分岐器21と導波路回折格子22との間に接続した温度補償光ファイバ81で調整している。一方、FBGの熱膨張によるブラッグ反射構造の変動に応じた反射パルス光の遅延時間の温度係数Δt/ΔTは、ブラッグ波長λの温度係数(〜0.01nm/℃)、波長掃引速度νλ [nm/s]と次式(9)のような関係がある。
【数9】

【0077】
ブラッグ波長λの温度係数は、温度補償対策を講じることで一桁程度下げることができる。具体的には負の線膨張係数を持つ材料によるパッケージングや異なる線膨張係数の材料を組み合わせるパッケージングが報告されている。一方、波長掃引速度νλ に関しては、例えばνλ =2.86×10nm/sの波長掃引レーザが知られている。これらを勘案して、図13に、ブラッグ波長λの温度係数として10−2〜10−4nm/℃、波長掃引速度νλ として10〜10nm/sの場合に上式(8)と上式(9)の絶対値が等しくなる光センサ間の温度補償可能な光ファイバの長さを示す。
【0078】
上記のことから、接続用光ファイバ13のナイロン被覆の線膨張率による上式(8)の符号は正であるので、上式(9)は波長掃引速度 とブラッグ波長温度係数の積が負になる組合せをとれば、温度変化による反射遅延時間の変動を抑圧することが可能となる。
【0079】
このような第5の実施形態による光センサ82を用いた光センサシステムによれば、光分岐器21と導波路回折格子22との間に温度補償光ファイバ81を接続して、導波路回折格子22の温度に起因するブラッグ波長偏移による反射パルス光の遅延変動を、温度補償光ファイバ81の温度に起因する膨張収縮によるパルス光の遅延変動で相殺できるように、温度補償光ファイバ81の長さを定めた。従って、温度変化が起因する導波路回折格子22のブラッグ波長偏移による反射パルス光の遅延時間変動を抑制することができる。
【0080】
(第6の実施形態)
図14は、本発明の第6の実施形態に係る光センサシステムの構成を示す図である。
第6の実施形態の特徴は、第1の実施形態の光センサシステム10の構成要素に更に、光分岐器91と、波長掃引モニタ92と、レーザ制御装置93とを備えて構成した点にある。
【0081】
光分岐器91は、光サーキュレータ12と第1の光センサ15−1との間に接続されており、波長掃引レーザ11からのパルス光を分岐して波長掃引モニタ92へ出力するものである。
【0082】
波長掃引モニタ92は、光分岐器91からのパルス光の波長掃引速度を検出してレーザ制御装置93へ出力するものである。更に詳細に説明すると、波長掃引モニタ92は、図15(a)に示す波長掃引レーザ11の波長掃引で出射されるパルス光のうち互いに異なる波長λr1とλr2との2つのパルス光を、(b)に受信パルス電力値で示すように各々通過させる2つの狭帯域通過フィルタを備え、これら狭帯域通過フィルタを通過したパルス光の時間間隔Tnsを計測し、この計測結果データをレーザ制御装置93へ出力する。
【0083】
この他の構成として、波長掃引モニタ92は、図15(c)に示す波長掃引レーザ11の波長掃引で出射されるパルス光のうち異なる2つの波長λr1とλr2との間の帯域のパルス光を、(d)に受信パルス電力値で示すように通過させる広帯域通過フィルタを備え、この広帯域通過フィルタを通過したパルス光の時間間隔Tnsを計測し、この計測結果データをレーザ制御装置93へ出力する。
【0084】
レーザ制御装置93は、波長掃引モニタ92からの計測結果データに示される時間間隔Tnsが一定となるように、波長掃引レーザ11からのパルス光の波長を制御する。言い換えれば波長掃引レーザ11の波長掃引速度が一定となるように、波長掃引レーザ11からのパルス光の波長を制御する。
【0085】
つまり、この構成によれば、波長掃引レーザ11から出射されたパルス光が光分岐器91で分岐され、この分岐されたパルス光の時間間隔Tnsが波長掃引モニタ92で検出され、この検出されたパルス光の波長掃引速度が一定となるようにレーザ制御装置93で波長掃引レーザ11からのパルス光の波長が制御される。
【0086】
このような第6の実施形態の光センサシステム90によれば、波長掃引レーザ11の波長掃引速度が電源変動や経時劣化などによって変動しても、その波長掃引速度を一定に制御することができ、これによって、所定波長のパルス光を各光センサ15−1〜15−mへ出射することができる。
【0087】
また、上記の第6の実施形態の光センサシステム90は、第1の実施形態の光センサシステム10に、更に光分岐器91と、波長掃引モニタ92と、レーザ制御装置93とを備えた構成にしたが、これと同様に、第2〜第5の実施形態の何れかの光センサシステムに、更に光分岐器91と、波長掃引モニタ92と、レーザ制御装置93とを備えて構成しても同様の効果を得ることができる。
【0088】
但し、広帯域波長掃引レーザ61を用いた光センサシステムでは、複数の光分岐器91及び複数の波長掃引モニタ92が用いられるので、複数の波長掃引モニタ92からの計測結果データによる時間間隔Tnsの平均値が一定となるように制御する。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の光センサシステムは、土木設備や構造物の診断等広域センシングへの応用など様々な計測分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図、(b)は(a)に示すWBGセンサの構成図である。
【図2】(a)は受信時刻毎の反射パルス光の電力値(受信パルス電力値)のパルス光の波形図、(b)は波長掃引レーザの波長掃引特性を示す斜線と、波長掃引による出射パルス光を示す楕円を示した図である。
【図3】波長掃引レーザの波長掃引特性と、この波長掃引による出射パルス光、反射パルス光、受信パルス光の各スペクトル波形と、反射パルス光及び受信パルス光がずれた際のスペクトル波形とを示す図である。
【図4】波長掃引レーザの波長掃引特性と、反射パルス光及び受信パルス光の波形と、反射パルス光及び受信パルス光がずれた際の波形とを示す図である。
【図5】波長掃引速度とOTDR上でのパルス光位置変化温度依存の関係を示す表の図である。
【図6】第1の実施形態の光センサシステムの主な設計仕様値の一例を示す表の図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態の光センサシステムにおける分光受信器で受信される所定のブラッグ波長からずれた反射パルス光を示す電力スペクトル波形図である。
【図9】各光センサのIDと、反射パルス光の電力値及び基準電力値の電力差との対応付けテーブルの図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る光センサシステムの構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る光センサシステムにおける光センサの構成を示す図である。
【図13】光センサ間の温度補償可能な光ファイバの長さを示す表の図である。
【図14】本発明の第6の実施形態に係る光センサシステム構成を示すブロック図である。
【図15】(a)は波長掃引レーザの波長掃引による異なる2波長のパルス光の波形図、(b)は異なる2帯域の狭帯域通過フィルタの通過パルス光の時間間隔を示す波形図、(c)は波長掃引レーザの波長掃引による2波長間の帯域のパルス光の波形図、(d)は広帯域通過フィルタの通過パルス光の時間間隔を示す波形図である。
【符号の説明】
【0091】
10,50,60,70,90:光センサシステム
11:波長掃引レーザ
12:光サーキュレータ
13:接続用光ファイバ
14:被測定物
15−1,15−2,15−3,15−4,…,15−m,82:光センサ
16:パルス受信器
17:分光受信器
18−1,18−2:異常特定装置
21,91:光分岐器
22:導波路回折格子
31:波長掃引特性斜線
32:出射パルス光スペクトル波形
33:反射パルス光スペクトル波形
33Δ:時間軸上でずれた反射パルス光スペクトル波形
34:受信パルス光スペクトル波形
34Δ:時間軸上でずれた受信パルス光スペクトル波形
35:時間軸上の出射パルス光スペクトル波形
41:反射パルス光波形
41Δ:時間軸上でずれた反射パルス光波形
42:受信パルス光波形
42Δ:時間軸上でずれた受信パルス光波形
61:広帯域波長掃引レーザ
62:光分波フィルタ
63−1〜63−p,73−1〜73−p:光センサ経路構造
81:温度補償光ファイバ
92:波長掃引モニタ
93:レーザ制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、
前記波長掃引レーザから出射されたパルス光を伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子と、
前記導波路回折格子での反射パルス光を受信し、この反射パルス光の時間軸上での所定位置からのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段と、
を備えたことを特徴とする光センサシステム。
【請求項2】
波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、
前記波長掃引レーザから出射されたパルス光を伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子と、
前記予め設定したブラッグ波長からずれた反射パルス光を受信し、この反射パルス光のスペクトルのピークと基準ピークの差と、予め定められた値とのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段と、
を備えたことを特徴とする光センサシステム。
【請求項3】
波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、
前記波長掃引レーザからの出射光を一定スペクトル幅で複数に分波して出力する光分波フィルタと、
前記光分波フィルタで分波された複数のパルス光をそれぞれ伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子、及び、前記導波路回折格子での反射パルス光を受信し、この反射パルス光の時間軸上での所定位置からのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段を一組として成る光センサ経路構造と、
を有し、
前記光センサ経路構造を前記光分波フィルタでの光の分波数に対応した数、備えたことを特徴とする光センサシステム。
【請求項4】
波長を連続的に変化させる波長掃引を行いながら時間軸上でパルス波形となるパルス光を発振する波長掃引レーザと、
前記波長掃引レーザからの出射光を一定スペクトル幅で複数に分波して出力する光分波フィルタと、
前記光分波フィルタで分波された複数のパルス光をそれぞれ伝搬する接続用光ファイバから分岐接続され、前記波長掃引の範囲内にある予め設定した同一のブラッグ波長の反射構造を有して前記パルス光を反射する複数の導波路回折格子、及び、前記予め設定したブラッグ波長からずれた反射パルス光を受信し、この反射パルス光のスペクトルのピークと基準ピークの差と、予め定められた値とのずれを検知することにより、異常が発生した導波路回折格子を特定する受信特定手段を一組として成る光センサ経路構造と、
を有し、
前記光センサ経路構造を前記光分波フィルタでの光の分波数に対応した数、備えたことを特徴とする光センサシステム。
【請求項5】
前記接続用光ファイバから分岐された後、前記導波路回折格子の前段に温度補償光ファイバを更に備え、
前記温度補償光ファイバは、温度に起因する膨張収縮によるパルス光の遅延変動が、温度に起因する前記導波路回折格子のブラッグ波長偏移による反射パルス光の遅延変動を相殺する長さであることを特徴とする請求項1又は3に記載の光センサシステム。
【請求項6】
前記波長掃引レーザから出射されたパルス光を検出し、この検出パルス光の波長掃引速度が一定となるように当該波長掃引レーザからのパルス光の波長を制御する制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から5に記載のいずれかの光センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−229134(P2009−229134A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72157(P2008−72157)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(502191550)フォトニックサイエンステクノロジ株式会社 (24)
【出願人】(504243718)株式会社トリマティス (24)
【Fターム(参考)】