説明

光センサー、それを用いた火災報知機及び光センサーの製造方法

【課題】光センサーの受光面積の割合を大きくし、感度を向上させる。
【解決手段】第一電極11Aと、第一電極11Aの表面に成膜され、所定の波長の光を吸収することにより導電性が変化する光導電性膜12Aと、光導電性膜12Aの表面に成膜され、所定の波長の光を透過する第二電極13Aとを備える光センサー1Aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサー、それを用いた火災報知機及び光センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火炎の紫外線を検出する光センサーとして、平板状の光導電体の両面に電極を設け、光導電体が紫外線を吸収することにより電極間の導電性の変化を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−280945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、引用文献1に記載の光センサーでは、光導電体の表面に設けた電極が光を透過しないため、受光面積の割合が小さくなり、感度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、光センサーの受光面積の割合を大きくし、感度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の態様によれば、第一電極と、前記第一電極の表面に成膜され、所定の波長の光を吸収することにより導電性が変化する光導電性膜と、前記光導電性膜の表面に成膜され、前記所定の波長の光を透過する第二電極とを備えることを特徴とする光センサーが提供される。
【0007】
前記光導電性膜は、MgZn1−xO(0<x<1)、ZnO、ダイヤモンド、Ga、AlGa1―xN(0<x<1)、β−Gaのいずれかからなることが好ましい。
前記光導電性膜は、非結晶であることが好ましい。
前記第二電極は、Pt,Al、Au、導電性ポリマーのいずれかからなることが好ましい。
前記第二電極の表面を被覆し、前記所定の波長の光を透過する絶縁性保護膜をさらに備えることが好ましい。
前記絶縁性保護膜はSiNであることが好ましい。
前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が球面であってもよい。
あるいは、前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が平面であってもよい。
前記第一電極に接続された第一の引き出し線と、前記第二電極に接続された第二の引き出し線と、を備えることが好ましい。
前記第一電極と前記第二電極との間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器をさらに備えることが好ましい。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、上記の光センサーと、前記光センサーのインピーダンス測定器により計測されるインピーダンスの変化から火災か否かを判定する火災検知判定回路と、前記火災検知判定回路が火災と判定した場合に警報を出力する警報回路と、を備え、前記火災検知判定回路は、前記光センサーのインピーダンスが不規則に変化する場合に火災と判定することを特徴とする火災報知機が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、第一電極の表面に、所定の波長の光を吸収することにより導電性が変化する光導電性膜を成膜し、次に、前記光導電性膜の表面に、前記所定の波長の光を透過する第二電極を成膜することを特徴とする光センサーの製造方法が提供される。
【0010】
前記光導電性膜を非結晶となるように成膜することが好ましい。
スプレー法、スパッタ法、ミストCVD法、減圧CVD法、常圧CVD法、ゾルゲル法、MOVPE法、HVPE法、MBE法及びマイクロ波プラズマCVD法のうち何れかにより前記光導電性膜の成膜を行うことが好ましい。
前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が球面であってもよい。
あるいは、前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が平面であってもよい。
前記第二電極の成膜後、前記第一電極の一部を露出させる第一コンタクトホールをエッチングにより形成することが好ましい。
前記第一コンタクトホールの形成後、
前記所定の波長の光を透過する絶縁性保護膜を、前記第二電極と、前記光導電性膜、前記第一電極及び前記第二電極の前記第一コンタクトホールによって露出された領域とを被覆するように成膜し、
次に、前記第一コンタクトホール内において前記第一電極を露出させる第二コンタクトホールと、前記第一コンタクトホール外において前記第二電極を露出させる第三コンタクトホールとを、前記絶縁性保護膜をエッチングすることで形成することが好ましい。
前記第二コンタクトホール及び前記第三コンタクトホールを同時に形成することが好ましい。
前記第二コンタクトホールを介して前記第一電極に第一の引き出し線を接続するとともに、前記第三コンタクトホールを介して前記第二電極に第二の引き出し線を接続することが好ましい。
前記第一コンタクトホールを介して前記第一電極に第一の引き出し線を接続することが好ましい。
前記第一電極と前記第二電極の間のインピーダンスを計測するインピーダンス測定器を接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光センサーの受光面積の割合を大きくし、感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる光センサー1Aの模式的な断面図である。
【図2】光センサー1Aの製造方法を説明するための断面図である。
【図3】光センサー1Aの製造方法を説明するための断面図である。
【図4】光センサー1Aの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】光センサー1Aの製造方法を説明するための断面図である。
【図6】光センサー1Aの製造方法を説明するための断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる光センサー1Bの模式的な断面図である。
【図8】光センサー1Bの製造方法を説明するための断面図である。
【図9】光センサー1Bの製造方法を説明するための断面図である。
【図10】光センサー1Bの製造方法を説明するための断面図である。
【図11】光センサー1Bの製造方法を説明するための断面図である。
【図12】光センサー1Bの製造方法を説明するための断面図である。
【図13】光センサー1Bを用いた火災報知機100を示す概略図である。
【図14】火災報知機100の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第3の実施形態にかかる光検出部10Cの断面図である。
【図16】本発明の第4の実施形態にかかる光検出部10Dの断面図である。
【図17】光センサー1Aの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1の実施形態にかかる光センサー1Aの模式的な断面図である。光センサー1Aは、光検出部10Aと、インピーダンス測定器20Aと、を備える。
【0014】
光検出部10Aは、電極板11Aと、光導電性膜12Aと、透明電極膜13Aと、透明絶縁性保護膜14Aと、引き出し線15A、16Aと、を備える。
電極板11Aは、引き出し線15Aと導通しており、光検出部10Aの一方の電極となる。電極板11Aには、例えば金属板や導電性の半導体基板を用いることができる。
【0015】
光導電性膜12Aは、電極板11Aの表面に形成されている。また、光導電性膜12Aには、電極板11Aの引き出し線15Aとの接続部を露出させるコンタクトホール12aが設けられている。
光導電性膜12Aは光が当たらない状態では絶縁性であるが、光が当たると所定の波長領域の光を吸収し内部光電効果により導電性が増す。このような性質の光導電性膜12Aとして、例えば、ZnO、MgZn1−xO(0<x<1)、TiO、Al、Ga、MgO、CdS、CdO、CuO、In、Ga、β−Ga、(Ga1−xIn(0<x<1)、AlN、AlGa1―xN(0<x<1)、GaN、C(ダイヤモンド)等からなる非結晶性の薄膜を用いることができる。光導電性膜12Aの材料は、検出する光の波長によって適宜選択することができる。例として記載すると、可視光領域を検出するためには例えば、CdSを用いればよく、紫外領域を検出するためには例えば、ZnOを用いればよく、深紫外領域を検出するためには例えば、GaやAlGa1−xN(0<x<1)等を用いればよい。
【0016】
非結晶性の薄膜の成膜方法としては、例えば、スプレー法(Ga)、スパッタ法(ZnO、MgZn1−xO(0<x<1)、TiO、Al)、ミストCVD(Chemical vapor deposition)法(ZnO、Ga、MgZn1−xO(0<x<1)、MgO、CdO、CuO、TiO、Al)、減圧CVD法(ZnO)、常圧CVD法(ZnO)、ゾルゲル法(Ga、(Ga1−xIn(0<x<1)、ZnO)、MOVPE(Metalorganic vapor phase epitaxy;有機金属化学気相エピタキシー)法(AlGa1−xN(0<x<1)、AlN、GaN、ZnO)、HVPE法(Hydride vapar phase epitaxy:ハイドライド気相エピタキシー)法(AlGa1−xN(0<x<1)、AlN、GaN、ZnO)、MBE法(Molecular beam epitaxy;分子線エピタキシー)法(AlGa1−xN(0<x<1)、AlN、GaN、ZnO)、マイクロ波プラズマCVD法(C;ダイヤモンド)等の低温堆積法を適用することができる。さらに、必要に応じて熱処理することで焼結体としてもよい。また、上述の各材料を非結晶性の薄膜に形成することができる場合は、上述した成膜方法以外の成膜方法を当該材料に適用してもよい。
【0017】
例えば、ZnOを成膜する場合には、酢酸亜鉛を酸化雰囲気で分解して成膜する。同様に、GaやMgZn1−xO(0<x<1)を成膜する場合には、それぞれの金属の硝酸化合物、酢酸化合物等を水に溶解させて原料として、ミストCVD法等で生成することができる。
【0018】
透明電極膜13Aは、光導電性膜12Aの表面に形成されており、透明電極膜13Aは引き出し線16Aと導通している。また、透明電極膜13Aには、コンタクトホール12aと同じ位置に電極板11Aの引き出し線15Aとの接続部を露出させるコンタクトホール13aが設けられている。
【0019】
透明電極膜13Aは光導電性膜12Aの導電性を変化させる波長の光を透過させる。透明電極膜13Aとして、例えばPt、Al、Au等の金属薄膜を用いることができる。金属薄膜の厚さが充分に薄ければ、光センサー1Aを所望の感度に維持できる程度に上記の波長の光を透過させることができ、これによって、上記の波長の光に対する透明電極膜13Aの透明性を確保することができる。金属薄膜は、例えば光導電性膜12Aが形成された電極板11Aを自転または公転させながらスパッタリングすることで形成することができる。
【0020】
あるいは、PEDOT−PSS等の導電性ポリマーからなる薄膜を透明電極膜13Aとしてもよい。
あるいは、光導電性膜12Aの表面に不純物を導入することで、光導電性膜12Aの表面を透明電極膜13Aにしてもよい。あるいは、GaまたはMgZn1−xO(0<x<1)等からなる非結晶性の薄膜を減圧CVD法やミストCVD法により形成して透明電極膜13Aとしてもよい。
【0021】
光導電性膜12Aと透明電極膜13Aの材料の組み合わせにより、所望の波長に対する感度を得ることができる。ここで、光導電性膜12Aと透明電極膜13Aの材料の組み合わせと、検出されるピーク波長について例示する。
光導電性膜12AにMg0.35Zn0.65O、透明電極膜13AにPtを用いた場合の検出ピーク波長は、250nmである。
光導電性膜12AにZnO、透明電極膜13AにPtを用いた場合の検出ピーク波長は、380nmである。
光導電性膜12AにC(ダイヤモンド)、透明電極膜13AにPtまたはAlを用いた場合の検出ピーク波長は、190nmである。
光導電性膜12AにGa、透明電極膜13AにPEDOT−PSSを用いた場合の検出ピーク波長は、250nmである。
光導電性膜12AにAl0.43Ga0.57N、透明電極膜13AにPt、Auを用いた場合の検出ピーク波長は、270nmである。
光導電性膜12Aにβ−Ga、透明電極膜13AにAuを用いた場合の検出ピーク波長は、210〜250nmである。
【0022】
透明絶縁性保護膜14Aは、電極板11Aの光導電性膜12A及び透明電極膜13Aが形成された面全体を被覆するように形成されている。透明絶縁性保護膜14Aは光以外の原因により光導電性膜12Aの導電性が変化することを防止する。
なお、透明絶縁性保護膜14Aには、コンタクトホール12a、13aと同じ位置に、電極板11Aの引き出し線15Aとの接続部を露出させるコンタクトホール14aが形成されている。コンタクトホール14aはコンタクトホール12a、13aよりも小さい。このため、光導電性膜12A及び透明電極膜13Aはコンタクトホール14aにおいて露出せず、透明絶縁性保護膜14Aにより被覆されている。
また、透明絶縁性保護膜14Aには、透明電極膜13Aの引き出し線16Aとの接続部を露出させるコンタクトホール14bが形成されている。
【0023】
透明絶縁性保護膜14Aには、例えば窒化珪素(SiN)を用いることができ、例えば減圧CVD法により成膜することができる。
電極板11Aの上部において、光導電性膜12A、透明電極膜13A、透明絶縁性保護膜14Aが積層された部分が、光検出部10Aの受光部となる。
【0024】
なお、透明電極膜13A及び透明絶縁性保護膜14Aは、検出波長の光を透過させる材料であればよく、すべての波長の光について透過性を示す必要はない。
【0025】
引き出し線15Aはコンタクトホール14aより電極板11Aと接続され、引き出し線16Aはコンタクトホール14bより透明電極膜13Aと接続されている。引き出し線15A、16Aは導体からなる。引き出し線15A、16Aは、例えば金属のろう材や銀ペースト等により電極板11Aや透明電極膜13Aと接続された状態で固定される。なお、電極板11Aと引き出し線15A、透明電極膜13Aと引き出し線16Aとの導通が取れるのであれば、単に接触させるだけでもよい。
この引き出し線15A、16Aを設けることで、配線の引き回しが容易になる。
【0026】
引き出し線15A及び引き出し線16Aは、インピーダンス測定器20Aと接続される。インピーダンス測定器20Aは引き出し線15Aと引き出し線16Aとの間のインピーダンスを測定する。
【0027】
次に、光センサー1Aの製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、電極板11Aの一方の面に、光導電性膜12Aをべた一面に形成する。
次に、図3に示すように、光導電性膜12Aの表面に透明電極膜13Aをべた一面に形成する。
次に、図4に示すように、光導電性膜12A及び透明電極膜13Aをエッチングし、コンタクトホール12a、13aを形成する。
【0028】
次に、図5に示すように、電極板11A、光導電性膜12A及び透明電極膜13Aを被覆する透明絶縁性保護膜14Aを形成する。
次に、図6に示すように、透明絶縁性保護膜14Aをエッチングし、コンタクトホール14a、コンタクトホール14bを形成する。
その後、コンタクトホール14aより引き出し線15Aを電極板11Aと接続し、コンタクトホール14bより引き出し線16Aを透明電極膜13Aと接続する。
その後、引き出し線15A、16Aにインピーダンス測定器20Aを接続する。以上により、図1に示す光センサー1Aが完成する。
【0029】
ここで、光センサー1Aにより光の照射を検出する方法について説明する。
引き出し線15A、16Aの間に交流電圧を印加する。この状態で受光部に光が入射すると、光導電性膜12Aの導電性が増すため、インピーダンス測定器20Aによりインピーダンスの変化が検出される。以上により光の照射を検出することができる。
【0030】
本実施の形態によれば、電極板11Aの上に光導電性膜12Aを形成し、さらに光導電性膜12Aの導電性を変化させる波長の光を透過させる透明電極膜13Aを光導電性膜12Aに積層しているため、電極板11Aと引き出し線15Aとの接続部、及び透明電極膜13Aと引き出し線16Aとの接続部を除き、ほぼ全面を光検出部10Aの受光部とすることができる。したがって、受光面積が大きくなり、感度を向上させることができる。
また、結晶性の光導電性膜が必要となるPN接合を用いた構造の光センサーと比較して、本実施の形態の光導電性膜12Aは非結晶性の光導電性膜であるから成膜プロセスを比較的低温にでき、製法も簡単であるため、製造コストを抑制することができる。
【0031】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については、説明を割愛する。
図7は本発明の第2の実施形態にかかる光センサー1Bの模式的な断面図である。光センサー1Bは、光検出部10Bと、インピーダンス測定器20Bと、を備える。なお、インピーダンス測定器20Bの構成は第1の実施形態にかかるインピーダンス測定器20Aと同様である。
【0032】
光検出部10Bは、電極球11Bと、光導電性膜12Bと、透明電極膜13Bと、透明絶縁性保護膜14Bと、引き出し線15B、16Bと、を備える。
電極球11Bは球状であり、引き出し線15Bと導通しており、光検出部10Bの一方の電極となる。電極球11Bには、例えば金属球や導電性の半導体球を用いることができる。
【0033】
光導電性膜12Bは、電極球11Bの表面に形成されている。また、光導電性膜12Bには、電極球11Bの引き出し線15Bとの接続部を露出させるコンタクトホール12aが設けられている。
光導電性膜12Bの性質、材料、成膜方法は、第1実施形態の光導電性膜12Aと同様である。
【0034】
透明電極膜13Bは、光導電性膜12Bの表面に形成されており、透明電極膜13Bは引き出し線16Bと導通している。また、透明電極膜13Bには、コンタクトホール12aと同じ位置に電極球11Bの引き出し線15Bとの接続部を露出させるコンタクトホール13aが設けられている。
【0035】
透明電極膜13Bの性質、材料、成膜方法は、第1実施形態の透明電極膜13Aと同様である。
【0036】
透明絶縁性保護膜14Bは、電極球11Bの光導電性膜12B及び透明電極膜13Bが形成された面全体を被覆するように形成されている。透明絶縁性保護膜14Bは光以外の原因により光導電性膜12Bの導電性が変化することを防止する。
なお、透明絶縁性保護膜14Bには、コンタクトホール12a、13aと同じ位置に、電極球11Bの引き出し線15Bとの接続部を露出させるコンタクトホール14aが形成されている。コンタクトホール14aはコンタクトホール12a、13aよりも小さい。このため、光導電性膜12B及び透明電極膜13Bはコンタクトホール14aにおいて露出せず、透明絶縁性保護膜14Bにより被覆されている。
また、透明絶縁性保護膜14Bには、透明電極膜13Bの引き出し線16Bとの接続部を露出させるコンタクトホール14bが形成されている。
【0037】
透明絶縁性保護膜14Bの性質、材料、成膜方法は、第1実施形態の透明絶縁性保護膜14Aと同様である。
電極球11Bの表面において、光導電性膜12B、透明電極膜13B、透明絶縁性保護膜14Bが積層された部分であって、引き出し線16Bが設けられた部分を除く部分が、光検出部10Bの受光部となる。
【0038】
引き出し線15Bはコンタクトホール14aより電極球11Bと接続され、引き出し線16Bはコンタクトホール14bより透明電極膜13Bと接続されている。引き出し線15B、16Bは、例えば金属のろう材や銀ペースト等により電極球11Bや透明電極膜13Bと接続された状態で固定される。なお、電極球11Bと引き出し線15B、透明電極膜13Bと引き出し線16Bとの導通が取れるのであれば、単に接触させるだけでもよい。
【0039】
引き出し線15B及び引き出し線16Bは、インピーダンス測定器20Bと接続される。インピーダンス測定器20Bは引き出し線15Bと引き出し線16Bとの間のインピーダンスを測定する。
【0040】
次に、光センサー1Bの製造方法について説明する。
まず、図8に示すように、電極球11Bの一方の面に、光導電性膜12Bをべた一面に形成する。
次に、図9に示すように、光導電性膜12Bの表面に透明電極膜13Bをべた一面に形成する。
次に、図10に示すように、光導電性膜12B及び透明電極膜13Bをエッチングし、コンタクトホール12a、13aを形成する。
【0041】
次に、図11に示すように、電極球11B、光導電性膜12B及び透明電極膜13Bを被覆する透明絶縁性保護膜14Bを形成する。
次に、図12に示すように、透明絶縁性保護膜14Bをエッチングし、コンタクトホール14a、コンタクトホール14bを形成する。
その後、コンタクトホール14aより引き出し線15Bを電極球11Bと接続し、コンタクトホール14bより引き出し線16Bを透明電極膜13Bと接続する。
その後、引き出し線15B、16Bにインピーダンス測定器20Bを接続する。以上により、光センサー1Aが完成する。
このような球状の光検出部10Bでは、受光部が球体であるため、指向性がなく、ほぼ全方向からの光を検出することができる。
【0042】
ここで、光センサー1Bにより光の照射を検出する方法について説明する。
引き出し線15B、16Bの間に交流電圧を印加する。この状態で受光部に光が入社すると、光導電性膜12Bの導電性が増すため、インピーダンス測定器20Bによりインピーダンスの変化が検出される。以上により光の照射を検出することができる。
【0043】
本実施の形態によれば、受光部が球体であり指向性がない光検出部10Bを用いるため、ほぼ全方向からの光を検出することができる。
【0044】
図13は光センサー1Bを用いた火災報知機100を示す概略図であり、図14は火災報知機100の構成を示すブロック図である。図3に示すように、火災報知機100は下部に光センサー1Bの光検出部10Bが設けられ、天井101に取り付けられている。なお、図13の矢印で示す範囲が光検出部10Bによる検出範囲である。
【0045】
火災報知機は、光検出部10B及びインピーダンス測定器20Bからなる光センサー1Bと、ADコンバータ30と、火災検知判定回路40と、警報回路50と、を備える。
ADコンバータ30は、インピーダンス測定器20Bの出力をAD変換し火災検知判定回路40へ出力する。火災検知判定回路40では、ADコンバータ30の出力信号から火災か否かを判定し、火災と判定した場合には警報回路50を駆動して警報を出力させる。
【0046】
火災時の炎より放出される光が光検出部10Bに入射したとき、光検出部10Bのインピーダンスは炎のゆらぎに合わせて不規則に変化する。このとき、インピーダンス測定器20Bの出力も不規則に変化する。このため、火災検知判定回路40は、ADコンバータ30の信号が規則的である場合には火災と判定せず、不規則である場合に火災と判定する。
警報回路50は火災検知判定回路40により火災と判定された場合に、光や音等の警報を出力する。
【0047】
このように、本発明にかかる光検出部10Bを火災報知機100に適用することができる。
【0048】
〔第3実施形態〕
図15は本発明の第3の実施形態にかかる光検出部10Cの断面図である。なお、第2実施形態と同様の構成については、説明を割愛する。
【0049】
本実施形態においては、電極球11Cが半球状である。また、光導電性膜12Cのコンタクトホール12a、透明電極膜13Cのコンタクトホール13a、透明絶縁性保護膜14Cのコンタクトホール14a、14bは、半球状の電極球11Cの平坦な面(裏面)に設けられている。電極球11Cは平坦な面において引き出し線15Cと接続されている。同様に、透明電極膜13Cは平坦な面において引き出し線16Cと接続されている。なお、球面部分のみを光検出部10Cの受光部として用い、平坦な面は受光部として用いなくてもよい。
【0050】
本実施の形態においても、引き出し線15C、16C間のインピーダンス変化を計測することで光センサーとして使用することができる。光検出部10Cの受光部が半球体であり指向性がないため、多くの方向からの光を検出することができる。また、平坦な面に引き出し線15C、16Cを設けているので、平坦な面を天井や壁等に向けた状態で安定して取り付け固定することができる。
本実施形態における光検出部10Cも、第2実施形態と同様に、火災報知機に用いることができる。
【0051】
〔第4実施形態〕
図16は本発明の第4の実施形態にかかる光検出部10Dの断面図である。なお、第2実施形態と同様の構成については、説明を割愛する。
【0052】
本実施形態においては、光導電性膜12Dの表面に設けられた透明電極膜13Dが分断されている。また、透明絶縁性保護膜14Dには、それぞれの透明電極膜13Dを露出させるコンタクトホール14bが設けられ、各コンタクトホール14bから各透明電極膜13Dにそれぞれ引き出し線16Dが接続されている。
【0053】
本実施の形態においては、電極球11Dに接続された引き出し線15Dと、それぞれの透明電極膜13Dに接続された引き出し線16Dとの間に交流電圧を印加し、インピーダンスの変化を検出することで、どの透明電極膜13Dがある領域に光が入射したかを判別することができ、光が入射した方向を判別することができる。
なお、透明電極膜13Dと同様に、光導電性膜12Dを分断するように形成してもよい。
【0054】
本実施形態における光検出部10Dも、第2実施形態と同様に、火災報知機に用いることができる。さらに、室内のどの方向から火炎が生じているかを判定することもできる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限らず適宜変更可能である。
例えば、上述の第1実施形態では、電極板11Aの透明絶縁性保護膜14Aが光導電性膜12A及び透明電極膜13Aが形成された面全体を被覆するように形成されているが、図17に示すように透明絶縁性保護膜14Aを形成せずに、引き出し線15Aを透明電極膜13A及び光導電性膜12Aに形成したコンタクトホール12a、13aより電極板11Aに接続させてもよい。尚その場合は、引き出し線15Aは透明電極膜13Aと接触しないように電極板11Aに接続させ、引き出し線15Aと透明電極膜13Aとにインピーダンス測定器20Aを接続する。尚ここでは金属板11Aを用いて説明したが、金属球を用いても良い。また、直接、透明電極膜13Aをインピーダンス測定器に接続させるのではなく、透明電極膜13Aに引き出し線を接続し、その引き出し線を介して接続しても良い。
【0056】
また、上述の各実施形態においては、インピーダンス測定器によりインピーダンスの変化を検出することで光の照射を検出したが、これに限らず、光導電性膜の受光部に光が入射した際に生じる導電性変化を検出することができれば、例えば、直流電圧を印加して抵抗値を測定することで導電性変化を検出する、またはパルス波(例えば矩形波、三角波など)を印加し、光が光導電性膜に入射して光導電性膜の導電性が変化した時のそのパルス波形変化を測定することにより導電性変化を検出する等、他の方法を用いても良い。
【0057】
また、上述の各実施形態においては、第一電極の光導電性膜が形成された面の一部または全部が球面であるとしたが、これに限らず、当該光導電性膜形成面は球面以外の曲面であっても良い。
【符号の説明】
【0058】
1A、1B 光センサー
10A、10B、10C、10D 光検出部
11A 電極板
11B、11C、11D 電極球
12A、12B、12C、12D 光導電性膜
12a、13a コンタクトホール(第一コンタクトホール)
14a コンタクトホール(第二コンタクトホール)
14b コンタクトホール(第三コンタクトホール)
13A、13B、13C、13D 透明電極膜
14A、14B、14C、14D 透明絶縁性保護膜
15A、15B、15C、15D 引き出し線(第一の引き出し線)
16A、16B、16C、16D 引き出し線(第二の引き出し線)
20A、20B インピーダンス測定器
30 コンバータ
40 火災検知判定回路
50 警報回路
100 火災報知機
101 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と、
前記第一電極の表面に成膜され、所定の波長の光を吸収することにより導電性が変化する光導電性膜と、
前記光導電性膜の表面に成膜され、前記所定の波長の光を透過する第二電極とを備えることを特徴とする光センサー。
【請求項2】
前記光導電性膜は、MgZn1−xO(0<x<1)、ZnO、ダイヤモンド、Ga、AlGa1―xN(0<x<1)、β−Gaのいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の光センサー。
【請求項3】
前記光導電性膜は、非結晶であることを特徴とする請求項1または2に記載の光センサー。
【請求項4】
前記第二電極は、Pt,Al、Au、導電性ポリマーのいずれかからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光センサー。
【請求項5】
前記第二電極の表面を被覆し、前記所定の波長の光を透過する絶縁性保護膜をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光センサー。
【請求項6】
前記絶縁性保護膜はSiNであることを特徴とする請求項5に記載の光センサー。
【請求項7】
前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が曲面であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光センサー。
【請求項8】
前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が平面であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光センサー。
【請求項9】
前記第一電極に接続された第一の引き出し線と、
前記第二電極に接続された第二の引き出し線と、を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光センサー。
【請求項10】
前記第一電極と前記第二電極との間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定器をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光センサー。
【請求項11】
請求項10に記載の光センサーと、
前記光センサーのインピーダンス測定器により計測されるインピーダンスの変化から火災か否かを判定する火災検知判定回路と、
前記火災検知判定回路が火災と判定した場合に警報を出力する警報回路と、を備え、
前記火災検知判定回路は、前記光センサーのインピーダンスが不規則に変化する場合に火災と判定することを特徴とする火災報知機。
【請求項12】
第一電極の表面に、所定の波長の光を吸収することにより導電性が変化する光導電性膜を成膜し、
次に、前記光導電性膜の表面に、前記所定の波長の光を透過する第二電極を成膜することを特徴とする光センサーの製造方法。
【請求項13】
前記光導電性膜を非結晶となるように成膜することを特徴とする請求項12に記載の光センサーの製造方法。
【請求項14】
スプレー法、スパッタ法、ミストCVD法、減圧CVD法、常圧CVD法、ゾルゲル法、MOVPE法、HVPE法、MBE法及びマイクロ波プラズマCVD法のうち何れかにより前記光導電性膜の成膜を行うことを特徴とする請求項12または13に記載の光センサーの製造方法。
【請求項15】
前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が曲面であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の光センサーの製造方法。
【請求項16】
前記第一電極の前記光導電性膜が形成された面の一部または全部が平面であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載の光センサーの製造方法。
【請求項17】
前記第二電極の成膜後、前記第一電極の一部を露出させる第一コンタクトホールをエッチングにより形成することを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載の光センサーの製造方法。
【請求項18】
前記第一コンタクトホールの形成後、
前記所定の波長の光を透過する絶縁性保護膜を、前記第二電極と、前記光導電性膜、前記第一電極及び前記第二電極の前記第一コンタクトホールによって露出された領域とを被覆するように成膜し、
次に、前記第一コンタクトホール内において前記第一電極を露出させる第二コンタクトホールと、前記第一コンタクトホール外において前記第二電極を露出させる第三コンタクトホールとを、前記絶縁性保護膜をエッチングすることで形成することを特徴とする請求項17に記載の光センサーの製造方法。
【請求項19】
前記第二コンタクトホール及び前記第三コンタクトホールを同時に形成することを特徴とする請求項18に記載の光センサーの製造方法。
【請求項20】
前記第二コンタクトホールを介して前記第一電極に第一の引き出し線を接続するとともに、前記第三コンタクトホールを介して前記第二電極に第二の引き出し線を接続することを特徴とする請求項18または19に記載の光センサーの製造方法。
【請求項21】
前記第一コンタクトホールを介して前記第一電極に第一の引き出し線を接続することを特徴とする請求項17に記載の光センサーの製造方法。
【請求項22】
前記第一電極と前記第二電極の間のインピーダンスを計測するインピーダンス測定器を接続することを特徴とする請求項12〜21のいずれか一項に記載の光センサーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−9690(P2012−9690A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145290(P2010−145290)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】