説明

光ディスクドライブ装置、スライドサーボ制御方法

【課題】スライドサーボの安定化を図り、記録/再生動作の安定性向上を図る。
【解決手段】1ヘッド複数チャンネルの構成において各チャンネルのスライド誤差信号を平均した信号によってスライドサーボ制御を行う手法を採る場合において、トラッキングサーボがオフとされたchがあるとスライドサーボループ系に本来与えられるべきゲインを乗じることができずスライドサーボ追従性が低下したり、また外乱の影響やトラッキングサーボの引き込み時におけるトラッキングサーボ信号の乱れに起因してスライドサーボの安定性が損なわれる場合があった。そこで、各chのトラッキングサーボの制御状態に応じて各chのスライド誤差信号に乗じるゲインを切り替える。これにより、1ヘッド複数チャンネルの構成を採る場合のスライドサーボ安定性の向上が図られ、記録/再生動作の安定性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により信号の記録/再生が行われる光ディスク記録媒体について記録/再生を行う光ディスクドライブ装置として、特に1ヘッド複数チャンネルによる記録/再生を行う光ディスクドライブ装置に関する。またそのような光ディスクドライブ装置におけるスライドサーボ制御方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2006−107638号公報
【背景技術】
【0003】
例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)など、光の照射により信号の記録/再生が行われる光ディスク記録媒体が広く普及している。
近年、特に映像データの高画素化などに伴い、これら光ディスク記録媒体にで扱うデータの容量としても増大化する傾向となっている。そしてこれに伴い、光ディスク記録媒体に対する記録速度/再生速度の高速化も進んでいる。
【0004】
記録/再生速度の高速化を図るための手法としては、従来より、ディスクの回転速度を上げるということが行われているが、ディスクの回転速度には限界があり、また記録データ/再生データを扱う信号処理部の処理能力にも限界がある。
【0005】
そこで、上記特許文献1に開示されるようにして、光学ヘッドを複数設けそれぞれの光学ヘッドによって並行して(同時に)データの記録又は再生を行うことで、記録速度/再生速度の向上を図るという手法が提案されている。
【0006】
しかしながら、このように複数の光学ヘッドを設けて記録速度/再生速度の向上を図る手法では、それぞれ光学ヘッドをディスク半径方向にスライド移動させるためのスライド機構を光学ヘッドごとに設けなければならないこととなり、その分、部品点数の増大化や装置の大型化などの問題を招く。特に、このような複数ヘッドを用いる手法は可搬性を有する記録/再生装置(例えばビデオカメラ装置など)への適用にあたって非常に不利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ディスクの回転速度を上げず、また装置の大型化も招かずに記録速度/再生速度の向上を図るための1つの手法としては、1つの光学ヘッドに複数系統(チャンネル)の光学系を搭載し、それらの光学系を用いて記録又は再生を並行して(同時に)行うということが考えられる。
具体的に、このように1ヘッドで複数チャンネルの同時記録/再生を行うとした場合は、光学ヘッド内において上記複数の光学系が備えるそれぞれの対物レンズ・2軸アクチュエータの組を周方向(半径方向に直交する方向)にずらして配置することになる。そして、各対物レンズの半径方向における位置関係を、既に記録/再生済みとなった部分が重複して記録/再生されないように適宜変更しながら記録/再生を行う。
これにより、複数の光学ヘッド(スライド機構)を設けずとも記録速度/再生速度の向上を図ることができ、また、記録速度/再生速度の向上を図るにあたりディスクの回転速度を上げる必要もないものとできる。
【0008】
但し、このような1ヘッド複数チャンネルの構成を採る場合に問題となるのは、複数の光学系(対物レンズ)を備える光学ヘッドについてのスライドサーボを、どのようにして行うかという点である。
例えば仮に、1ヘッド2チャンネルであると仮定して、一方のチャンネルで得られるスライド制御信号に基づくスライドサーボを行ったとすると、他方のチャンネルの対物レンズの光学視野内の位置が常に基準位置(センター位置)からずれた状態となってしまい、当該他方のチャンネル側で常時、記録/再生性能が低下した状態となってしまう。
【0009】
このような1ヘッド複数チャンネルの構成に特有の問題を解決するための手法として、先に本出願人は、特願2008−164445により、次のような手法を提案している。
すなわち、それぞれのチャンネルで得られたスライド誤差信号の平均値に基づき、光学ヘッドのスライドサーボ制御を行うというものである。
このような手法によれば、スライドサーボの基準とされたチャンネル以外のチャンネルで記録/再生性能が著しく低下してしまうとった事態の発生を防止することができ、結果としてより安定な記録/再生動作を実現できる。
【0010】
ここで、上記のように各チャンネルで得られたスライド誤差信号の平均値を演算するための構成としては、後に詳述(図3を参照)するように、各チャンネルのスライド誤差信号(トラッキングサーボ信号TSの低域成分)にそれぞれ所定のゲインを与えた上で、それらを加算するということで実現される。
このとき、それぞれのチャンネルのスライド誤差信号に与えるゲインは、全チャンネルでトラッキングサーボがオンの状態において、適切なスライドサーボ追従性が得られるようにして設定されることになる。
【0011】
しかしながら、上記のような構成によると、仮に或るチャンネルでトラッキングサーボループがオフとされた場合に、スライドサーボループ系に対して本来与えられるべきゲインが得られなくなってしまうという問題が生じる。
例えば、光学ヘッドが有するチャンネル数がAチャンネルとBチャンネルの2チャンネルであるとした場合において、仮に一方のBチャンネル側でトラッキングサーボがオフとされた場合は、Bチャンネル側においてサーボフィルタからの出力が行われなくなることに起因して、当該Bチャンネル側におけるゲインBが等価的にゼロとなってしまう。つまりこの場合は、スライドサーボループ系に対して与えられるゲインが、Aチャンネル側におけるゲインAのみとなってしまい、従って本来必要とされる適切なゲイン(=ゲインA+ゲインB)が与えられなくなってしまう。
【0012】
また、上記のようにスライド誤差信号の平均をとるとしたときには、各チャンネルのスライド誤差信号を加算することになるが、このように各チャンネルのスライド誤差信号を加算する構成とされていることで、例えば或るチャンネルのトラッキングサーボ信号に外乱等に伴う乱れやトラッキングサーボの引き込み時における乱れ(過渡応答)が生じた場合に、その影響が加算後のスライド誤差信号に対しても与えられてしまい、それによってスライドサーボの安定性が損なわれるという問題も生じることとなる。
【0013】
本発明はかかる問題に鑑み為されたものであり、上記のような1ヘッド複数チャンネルの構成を採る場合において、光学ヘッドについてのスライドサーボのさらなる安定性の向上、ひいては記録/再生動作の安定性向上が図られるようにすることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題の解決のため、本発明では光ディスクドライブ装置として以下のように構成することとした。
すなわち、光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光を照射し、上記光ディスク記録媒体からの反射光を上記対物レンズを介して受光するための光学系であって、上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に変位させる対物レンズ駆動部と上記反射光を受光する受光部とを備えた光学系が、複数搭載された光学ヘッド部を備える。
また、上記光学ヘッド部を上記半径方向にスライド駆動するスライド駆動部を備える。
また、複数の上記光学系に備えられる上記受光部による受光信号に基づいて、上記光学系ごとのトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部を備える。
また、上記トラッキングサーボ信号生成部により生成された上記光学系ごとのトラッキングサーボ信号に応じて複数の上記光学系に備えられた上記対物レンズ駆動部をそれぞれ駆動制御することで、上記光学系ごとのトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ制御部を備える。
また、上記トラッキングサーボ信号生成部により生成された上記トラッキングサーボ信号に基づいて、上記光学系ごとに上記光学ヘッドのスライド誤差を表す上記光学系ごとのスライド誤差信号を生成するスライド誤差信号生成部を備える。
また、上記スライド誤差信号生成部により生成された上記光学系ごとのスライド誤差信号に対してそれぞれゲインを乗じる乗算部を備える。
そして、上記トラッキングサーボ制御部による上記光学系ごとのトラッキングサーボの制御状態に応じて、上記乗算部が上記スライド誤差信号に乗じるゲインの切り替え制御を行うゲイン切替制御部を備える。
さらに、上記乗算部により上記ゲインが乗じられたそれぞれの上記スライド誤差信号を加算すると共に、その加算結果に基づいて生成したスライドサーボ信号に応じて上記スライド駆動部を駆動制御することで、上記光学ヘッドのスライドサーボを行うスライドサーボ制御部を備えるものとした。
【0015】
このようにして光学系ごと(チャンネルごと)のトラッキングサーボの制御状態に応じて上記スライド誤差信号に乗じられるゲインの切り替え制御を行うものとすれば、先に本出願人が提案した手法、すなわち1ヘッド複数チャンネルの構成において全チャンネルのスライド誤差信号を平均した信号に基づきスライドサーボ制御を行うという手法を採る場合において、トラッキングサーボループがオフとされた場合にスライドサーボループ系に生じるゲイン不足の問題や、トラッキングサーボループがオンの状態において外乱等によるトラッキングサーボ信号の乱れやトラッキングサーボ引き込み時の過渡応答期間におけるトラッキングサーボ信号の乱れに起因したスライドサーボ安定性の低下の問題の発生を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のようにして本発明によれば、1ヘッド複数チャンネルの構成において各チャンネルのスライド誤差信号を平均した信号によってスライドサーボ制御を行うという手法を採る場合において、トラッキングサーボループがオフとされた場合にスライドサーボループ系に生じるゲイン不足の問題や、トラッキングサーボループがオンの状態における外乱によるトラッキングサーボ信号の乱れやトラッキングサーボ引き込み時の過渡応答期間におけるトラッキングサーボ信号の乱れに起因したスライドサーボ安定性の低下の問題の発生を効果的に防止することができる。
すなわち、このような本発明によれば、全チャンネルのスライド誤差信号を平均した信号に基づいてスライドサーボ制御を行うことによる記録/再生動作の安定性向上と共に、上記のようなトラッキングサーボがオフとされた場合のスライドサーボループ系のゲイン不足の問題解消と外乱等によるトラッキングサーボ信号乱れやトラッキングサーボ引き込み時の過渡応答信号がスライドサーボループ系に与える影響の排除とによる記録/再生動作の安定性向上が図れられるようにすることができ、1ヘッド複数チャンネルの構成を採る場合の記録/再生動作の安定性を格段に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1ヘッド複数チャンネルドライブ装置の内部構成を示した図である。
【図2】1ヘッド2チャンネルで同時記録又は再生を行うための具体的な手法について説明するための図である。
【図3】先に本出願人が提案したスライドサーボの安定性向上手法を実現するための構成を例示した図である。
【図4】実施の形態としてのゲイン切り替え制御手法を実現するための具体的な構成について説明するための図である。
【図5】実施の形態としてのゲイン切り替え制御手法の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.1ヘッド複数チャンネルドライブ装置の全体構成>
<2.先に本出願人が提案した先行例としての構成>
<3.本実施の形態としての光ディスクドライブ装置>
<4.変形例>
【0019】
<1.1ヘッド複数チャンネルドライブ装置の全体構成>

図1は、1つの光学ヘッドにより複数チャンネルの記録又は再生を同時に行うように構成された、1ヘッド複数チャンネルドライブ装置の内部構成を示している。
ここで、本実施の形態において、1ヘッドに搭載される光学系の数(チャンネル数)は、AチャンネルとBチャンネルの2つであるとする。この点より以下、本実施の形態としての1ヘッド複数チャンネルドライブ装置(光ディスクドライブ装置)については、1ヘッド2チャンネルドライブ装置1と称する。
なお、以下において「チャンネル」は「ch」とも表記する。
【0020】
図1において、光ディスクDは、例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)などの、光の照射により信号の記録/再生が行われる光ディスク記録媒体である。
この光ディスクDは、1ヘッド2chドライブ装置1内に装填されると図示されないターンテーブル上にセットされ、同じく図示しないスピンドルモータによって回転駆動される。
【0021】
1ヘッド2chドライブ装置1には、このように回転駆動される光ディスクDに対して記録/再生を行うためのレーザ光を照射するための構成として、2ch光学ヘッド2が設けられている。
後述もするように2ch光学ヘッド2内には、2つの光学系(8−A,8−B)が独立して設けられている。図中では、これらの光学系が備えるそれぞれの対物レンズOL−A,OL−Bが示されているが、図示するようにこれら対物レンズOL−A,OL−Bは、光ディスクDの周方向(ディスク面内において半径方向と直交する方向)にずれた位置に配置されている。
【0022】
また、後述もするが、2ch光学ヘッド2内に設けられたそれぞれの光学系には、対物レンズOLをトラッキング方向(光ディスクDの半径方向)及びフォーカス方向(光ディスクDに接離する方向)に変位させる2軸アクチュエータ(AC−A,AC−B)と、光ディスクDから得られた反射光を受光するフォトディテクタ(PD−A,PD−B)が設けられている。
図中では、このように2ch光学ヘッド2内のそれぞれの光学系に設けられたフォトディテクタPD−A、PD−Bにより得られた受光信号を、それぞれ受光信号DT−A、DT−Bと示している。
【0023】
また、この図に示す1ヘッド2chドライブ装置1において、2ch光学ヘッド2全体は、図示するスライド移送部7により光ディスクDの半径方向にスライド移送が可能に保持されている。
スライド移送部7には、2ch光学ヘッド2を光ディスクDの半径方向にスライドさせるための駆動力源となるスライドモータが備えられている。図中のスライドドライバ6が出力するスライドドライブ信号SDにより上記スライドモータが駆動制御されることで、2ch光学ヘッド2が光ディスクDの半径方向における任意位置にスライドされる。
【0024】
上記2ch光学ヘッド2より出力されたAch側の受光信号DT−AはAchマトリクス回路3−Aに、またBch側の受光信号DT−BはBchマトリクス回路3−Bに対してそれぞれ供給される。
【0025】
これらマトリクス回路3−A,3−Bは、入力された受光信号DTに基づき、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
具体的には、光ディスクDに記録された信号(記録変調符号列)についての再生信号に相当する高周波信号(RF信号:図示は省略)、フォーカスサーボ制御のためのフォーカスエラー信号(図示は省略)、及びトラッキングサーボ制御のためのトラッキングエラー信号TEを生成する。ここで、Ach側の受光信号DT−Aに基づきAchマトリクス回路3−Aが生成したトラッキングエラー信号TEはTE−Aと表記する。また、Bch側の受光信号DT−Bに基づきBchマトリクス回路3−Bが生成したトラッキングエラー信号TEはTE−Bと表記する。
図示するようにAchマトリクス回路3−Aにより生成されたトラッキングエラー信号TE−AはAchサーボ回路4−Aに、またBchマトリクス回路3−Bにより生成されたトラッキングエラー信号TE−BはBchマトリクス回路3−Bに対してそれぞれ供給される。
【0026】
ここで、本願発明は、主に、トラッキングサーボ制御とスライドサーボ制御とに係るものであり、この点より図1においては、フォーカスサーボ制御に係る構成や光ディスクDに対する情報の記録/再生系の構成、及び2チャンネル同時記録又は再生を行うための制御系の構成等についてはその図示を省略している。
なお、本実施の形態において前提とする2チャンネル同時記録/再生の具体的な手法については後述する。
【0027】
サーボ回路4−A,4−Bは、それぞれAchマトリクス回路3−Aからのトラッキングエラー信号TE−A、Bchマトリクス回路3−Bからのトラッキングエラー信号TE−Bから、サーボ演算によりトラッキングサーボ信号TSを生成する。図示するようにAchサーボ回路4−Aが生成するトラッキングサーボ信号TSはTS−A、Bchサーボ回路4−Bが生成するトラッキングサーボ信号TSはTS−Bと表記する。
またこの場合、Achサーボ回路4−Bは、Bchサーボ回路4−Bにより生成されたトラッキングサーボ信号TS−Bを入力し、当該Bch側のトラッキングサーボ信号TS−Bと自らが生成したAch側のトラッキングサーボ信号TS−Aとに基づき、スライドサーボ信号SSを生成する。
なお、サーボ回路4−A,4−Bの内部構成については後述する。
【0028】
図示するようにAch側のトラッキングサーボ信号TS−AはAch2軸ドライバ5−Aに供給され、Bch側のトラッキングサーボ信号TS−BはBch2軸ドライバ5−Bに対して供給される。
Ach2軸ドライバ5−Aは、上記トラッキングサーボ信号TS−Aに基づいて生成したトラッキングドライブ信号TD−Aに応じて、2ch光学ヘッド2内の上述したAch側の2軸アクチュエータ(AC−A)を駆動制御する。
またBch2軸ドライバ5−Bは、上記トラッキングサーボ信号TS−Bに基づいて生成したトラッキングドライブ信号TD−Bに応じて、2ch光学ヘッド2内のBch側の2軸アクチュエータ(AC−B)を駆動制御する。
これにより、Ach側、Bch側においてそれぞれ独立したトラッキングサーボループ系が形成されることになる。
【0029】
また、Achサーボ回路4−Aにより生成されたスライドサーボ信号SSは、スライドドライバ6に対して供給される。
スライドドライバ6は、上記スライドサーボ信号SSに基づいて生成したスライドドライブ信号SDに応じて、上述したスライド移送部7(スライドモータ)を駆動制御する。これによりスライドサーボループ系が形成される。
【0030】
ここで、図2を参照して、図1に示したような1ヘッド2chの構成を採る場合における同時記録又は再生の具体的な手法について説明しておく。
この図2において、図2(a)〜図2(d)の各図では、光ディスクDにおいてスパイラル状に形成されたトラックが半径方向において複数本配列されている様子を模式的に示している。ここでは図示の都合上、このように半径方向に配列される複数本のトラックとして、トラック1〜トラック12の12本のみを抽出して示している。
また図2(a)〜図2(b)の各図では、光ディスクD上に形成されるAch側のビームスポット(対物レンズOL−Aを介して照射されるレーザ光のビームスポット)とBch側のビームスポット(対物レンズOL−Bを介して照射されるレーザ光のビームスポット)も示している。
これらAch側のビームスポットとBch側のビームスポットは、光ディスクDの回転駆動に伴い図中の周方向に移動すると共に、トラッキングサーボ制御が行われることによってその位置がトラック上にあるようにされることで、内周側から外周側へと順次移動していくことになる。図2(a)〜図2(d)では、このように時間経過と共に順次外周側へ移動する各ビームスポットによって光ディスクDに対する情報の記録又は再生が行われる様子を模式的に示している。
なおこの図2には反映されていないが、先に述べたように対物レンズOL−AとOL−Bは周方向にずれて配置されるので、Ach側のビームスポットの位置とBch側のビームスポットの位置は図中の周方向においてずれていることになる。
【0031】
先ず図2(a)では、記録又は再生の開始時点でのAch側,Bch側のビームスポットの配置関係を示している。図示するように記録又は再生の開始時点においては、Ach側のビームスポットが内周側、Bch側のビームスポットが外周側に配置されているとする。また、ここでは図示の都合から、Ach側とBch側のビームスポット間の離間距離が2トラック分であるものとしている。
【0032】
この前提によると、図2(b)に示すように、2トラック分の記録又は再生が行われた時点において、Ach側のビームスポットが、Bch側のビームスポットにより既に記録又は再生済みとなったトラックに到達することになる(図中ではトラック3が該当)。
そこで、この図2(b)に示されるようにして、Ach側のビームスポット位置を、Bch側のビームスポットにより記録又は再生されるであろう領域を考慮して先回りさせるようにして外周側に移動させる(追い越し移動)。ここではAch側とBch側の間隔は2トラック分としているので、図のようにAch側のビームスポット位置を、その時点でBch側のビームスポットが位置しているトラック5からトラック2本分離間したトラック7に移動させることになる。
【0033】
また、このように追い越しが完了した状態からさらに2トラック分の記録又は再生が行われたときには、図2(c)に示すようにして、逆にBch側のビームスポット位置が、Ach側のビームスポットにより既に記録又は再生済みとなったトラック(トラック7)に達することとなる。
従って同じ要領で、Bch側のビームスポット位置を、Ach側のビームスポット位置がこれから記録又は再生する領域を見越した外周側の位置に追い越し移動させる。具体的にこの場合は、図のようにBch側のビームスポット位置を、その時点でAch側のビームスポットが位置しているトラック9からトラック2本分離間したトラック11に移動させることになる。
【0034】
図2(d)には、これらAch側・Bch側の交互の追い越しが行われることに伴ってAch側、Bch側がそれぞれ記録又は再生した領域の別が示されている。
【0035】
図1に示した1ヘッド2chドライブ装置1に対しては、実際には、このような2ch同時記録又は再生を実現するための構成が備えられることになる。
具体的には、チャンネルごとに記録すべきデータを割り当てたりチャンネルごとのアクセス制御等を行う制御部や、上記割り当てられた記録データに基づき記録信号を生成して該記録信号に基づき各チャンネルの光源を発光駆動する記録処理部、さらにはマトリクス回路3−A,3−Bにて生成されるAchの再生信号、Bchの再生信号に基づき記録データの再生を行う再生処理部などが備えられるものである。
【0036】
<2.先に本出願人が提案した先行例としての構成>

ここで、上記により説明したような1ヘッド複数chの構成を採った場合には、複数ch同時記録又は再生を行うにあたり光学ヘッドを1つのみ備えればよいものとでき、光学ヘッドをスライド移動させるためのスライド駆動部(スライド移送部7)としても1つのみを備えればよいもとできる。すなわちこれにより、複数ch同時記録/再生を実現するにあたり従来のように複数の光学ヘッドを備える手法と比較して、部品点数の削減や装置の小型化が図られる。
【0037】
但し、先にも述べたように、図1に示すような1ヘッド複数chの構成を採る場合には、共通の1つの光学ヘッドに設けられたそれぞれのchの受光信号を用いて、どのように上記共通の光学ヘッドについてのスレッドサーボ制御を行うかが問題となる。この点に鑑み、先に本出願人は、次の図3に示すような構成により1ヘッド複数chのスレッドサーボを実現する手法を提案した。
【0038】
図3は、先に本出願人が特願2008−164445により提案したスライドサーボ制御の手法を実現するための具体的な構成例を示している。
ここで、図3において、既に先の図1にて説明した部分と同様となる部分については同一符号を付して説明を省略する。
図3においては、図1に示した構成のうち、主に2ch光学ヘッド2の内部構成とAchサーボ回路4−A及びBchサーボ回路4−Bの内部構成を示している。
【0039】
先ず、2ch光学ヘッド2内には、先に述べたようにしてAch側の光学系としてのAch光学系8−Aと、Bch側の光学系としてのBch光学系8−Bとが備えられている。
Ach光学系8−A内には、対物レンズOL−Aと、当該対物レンズOL−Aを光ディスクDの半径方向及びフォーカス方向に変位可能に保持する2軸アクチュエータAC−Aと、さらに上記対物レンズOL−Aを介して得られる光ディスクDからの反射光を受光するフォトディテクタPD−Aとが備えられている。なお図示は省略しているが、Ach光学系8−A内には、レーザ光の光源であるレーザダイオードや当該レーザダイオードから出射されたレーザ光を上記対物レンズOL−Aに導くと共に上記対物レンズOL−Aを介して得られる反射光を上記フォトディテクタPD−Aに対して導く各種のレンズや光学素子なども備えられることは言うまでもない。
同様にして、Bch光学系8−B内には、対物レンズOL−Bと、当該対物レンズOL−Bを光ディスクDの半径方向及びフォーカス方向に変位可能に保持する2軸アクチュエータAC−Bと、さらに上記対物レンズOL−Bを介して得られる光ディスクDからの反射光を受光するフォトディテクタPD−Bとが備えられている。このBch光学系8−Bについても、その内部には図示しないレーザ光の光源であるレーザダイオードや当該レーザダイオードから出射されたレーザ光を上記対物レンズOL−Bに導くと共に上記対物レンズOL−Bを介して得られる反射光を上記フォトディテクタPD−Bに対して導く各種のレンズや光学素子などが備えられる。
【0040】
Achサーボ回路4−Aには、トラッキングエラー信号TE−Aに基づきトラッキングサーボ信号TS−Aを生成するための構成として、A/D変換器10−A、トラッキングサーボフィルタ11−A、及びD/A変換器12−Aが設けられる。
また、Bchサーボ回路4−Bに対しては、トラッキングエラー信号TE−Bに基づきトラッキングサーボ信号TS−Bを生成するための構成としてA/D変換器10−B、トラッキングサーボフィルタ11−B、及びD/A変換器12−Bが設けられる。
Achサーボ回路4−Aにおいて、Achマトリクス回路3−Aから入力されたトラッキングエラー信号TE−Aは、上記A/D変換器10−Aによりデジタル信号に変換された後、上記トラッキングサーボフィルタ11−Aにより予め定められた帯域特性により増幅され、D/A変換器12−Aにてアナログ信号に変換されてトラッキングサーボ信号TS−AとしてAch2軸ドライバ5−Aに出力される。
また同様に、Bchサーボ回路4−Bにおいて、Bchマトリクス回路3−Bから入力されたトラッキングエラー信号TE−BはA/D変換器10−Bによりデジタル信号に変換された後、上記トラッキングサーボフィルタ11−Bにより予め定められた帯域特性により増幅され、D/A変換器12−Bにてアナログ信号に変換されてトラッキングサーボ信号TS−BとしてAch2軸ドライバ5−Bに出力される。
【0041】
また、Achサーボ回路4−A、Bchサーボ回路4−Bには、それぞれトラッキング制御部21−A、トラッキング制御部21−Bが設けられる。
これらトラッキング制御部21は、例えば1ヘッド2chドライブ装置1の全体制御を行うコントローラからの指示に基づき、対物レンズOLのトラッキング動作についての制御を行う。
具体的には、例えば上記コントローラからのトラックジャンプ指令に応じて、トラッキングサーボループをオフとし2軸ドライバ5に対してジャンプパルス信号が与えられるように制御を行ったり、トラッキングサーボの引き込みのためにトラッキングサーボループをオンとするように制御を行うなど、トラッキング動作についての各種制御を行う。
【0042】
また、Achサーボ回路4−Aには、自らが生成したAch側のトラッキングサーボ信号TS−Aと、図のようにBchサーボ回路4−Bから出力されるBch側のトラッキングサーボ信号TS−Bとに基づき、スライドサーボ信号SSを生成するための構成が設けられる。具体的には、ローパスフィルタ(LPF)13、乗算部14、加算部15、スライドサーボフィルタ16、D/A変換器17、A/D変換器18、ローパスフィルタ19、乗算部20である。
【0043】
ここで、一般にスライド誤差信号は、トラッキングサーボ信号TSの低域成分を抽出することで生成される。本例においても、Ach側を基準としたときの(つまり対物レンズOL−Aの位置を基準としたときの)スライド誤差信号は、トラッキングサーボ信号TS−Aをローパスフィルタ13を通過させることで生成し、またBch側を基準としたときのスライド誤差信号は、図のようにBchサーボ回路4−Bから上記A/D変換器18を介して入力したトラッキングサーボ信号TS−Bを、ローパスフィルタ19を通過させて生成するようにされている。
【0044】
その上で、このように生成したAch側のスライド誤差信号には乗算部14によりゲインAを与え、Bch側のスライド誤差信号には乗算部20によりゲインBを与えるものとしている。さらに、これら乗算部14,20を介したそれぞれのスライド誤差信号を加算部15により加算する。
そして、このように加算されたスライド誤差信号を、スライドサーボフィルタ16により所定の帯域特性により増幅し、D/A変換器17を介してスライドサーボ信号SSとしてスライドドライバ6に対して出力する。
【0045】
このような構成により、この場合のスライドサーボは、Ach側、Bch側のそれぞれについて生成されたスライド誤差信号を平均化した信号に基づいて行われることになる。
【0046】
このとき、上記ゲインA、ゲインBの値は、Ach側とBch側で共にトラッキングサーボがオンの状態において、適正なスライドサーボ追従性が得られるようにして予め設定されることになる。
ここで、このようにしてトラッキングサーボがオンの状態を前提として適正なスライドサーボ追従性が得られるように予め設定されたゲインのことを、以下では標準ゲインと称する。
【0047】
このようにしてAch側とBch側のスライド誤差信号を平均した信号に基づきスライドサーボが行われるようにすることで、例えば1つのchについて生成したスライド誤差信号のみに基づいてスライドサーボを行うとした場合と比較して、より安定的な記録/再生動作を実現できる。
【0048】
<3.本実施の形態としての光ディスクドライブ装置>

しかしながら、上記のように全chのスライド誤差信号の平均をとる構成とした場合には、或るチャンネルでトラッキングサーボループがオフとされたときに、スライドサーボループ系に対して本来与えられるべきゲインを乗じることができなくなってしまうという問題が生じる。
すなわち、図3に示した構成において、例えば仮に一方のBチャンネル側でトラッキングサーボがオフとされた場合は、Bチャンネル側においてトラッキングサーボフィルタ11−Bからの出力が行われなくなることに起因して、当該Bチャンネル側におけるゲインBが等価的にゼロとなってしまう。つまりこの場合は、スライドサーボループ系に対して与えられるゲインは、Aチャンネル側におけるゲインAのみとなってしまい、従って本来必要とされる適切なゲイン(=ゲインA+ゲインB)が得られなくなってしまう。
【0049】
また、上記のように全chのスライド誤差信号の平均をとるとしたときには、各chのスライド誤差信号を加算することになるが、このように各chのスライド誤差信号を加算する構成とされていることで、例えば一方のchのトラッキングサーボ信号TSに外乱等の影響による乱れやトラッキングサーボの引き込み時における乱れ(過渡応答)が生じた場合に、その影響が加算後のスライド誤差信号に対しても与えられてしまい、それによってスライドサーボの安定性が損なわれるという問題も生じることとなる。
【0050】
そこで本実施の形態では、これらの問題点の解決を図るべく、各chにおけるトラッキングサーボの制御状態に応じて、スライド誤差信号に与えられるゲインを切り替えるようにする。
具体的に本例では、Ach・Bchの各chにおけるトラッキングサーボ信号TSに基づき、chごとにトラッキングサーボがロック状態にあるか否かを判別し、その判別結果に基づいて乗算部14に設定されるゲインA、乗算部20に設定されるゲインBの切り替えを行う。
【0051】
図4は、このようにchごとにトラッキングサーボがロック状態にあるか否かを判別した結果に基づきゲイン切り替えを行う本実施の形態としてのスライドサーボ制御手法を実現するための構成を示した図である。
この図4においては、先の図3と同様に、図1に示した1ヘッド2chドライブ装置1における主にトラッキングサーボ・スライドサーボに係る構成のみを抽出して示しており、他の部分については図示を省略している。
なお図4において、既に図1や図3において説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
この図4と先の図3とを対比して分かるように、本実施の形態の1ヘッド2chドライブ装置1においては、先の図3に示した構成に対して、Achサーボ回路4−A内にゲイン切替部22と判別・制御部23とが追加されたものとなっている。
【0053】
上記ゲイン切替部22は、判別・制御部23からの指示に基づき、乗算部14に設定されるゲインAの値、及び乗算部20に設定されるゲインBの値を切り替える。
【0054】
上記判別・制御部23には、トラッキングサーボフィルタ11−Aから出力されるAch側のトラッキングサーボ信号TS−A(デジタル信号)と、A/D変換器18から出力されるBch側のトラッキングサーボ信号TS−B(デジタル信号)とが入力される。また、Achトラッキング制御部21−Aより、Ach側のトラッキングサーボループのオン/オフ切替状態を示すAch側サーボオン/オフ情報信号と、Bchトラッキング制御部21−BよりBch側のトラッキングサーボループのオン/オフ状態を表すBch側サーボオン/オフ情報信号とが入力される。
判別・制御部23は、これらAch側のトラッキングサーボ信号TS−A、Bch側のトラッキングサーボ信号TS−B、及びAch側サーボオン/オフ情報信号、Bch側サーボオン/オフ情報信号に基づき、Ach、Bchの各chについて、トラッキングサーボがロック状態にあるか否かをそれぞれ判別する。
【0055】
ここで、本明細書において言うトラッキングサーボのロック状態とは、トラッキングサーボループがオン状態にあり、且つ安定したトラッキングサーボが行われている状態を指す。つまり換言すれば、ロック状態にない(以下「アンロック状態」とも称する)とは、トラッキングサーボループがオフの状態にあるか、或いはトラッキングサーボループがオンの状態であっても例えば外乱の発生やトラッキングサーボの引き込み時における過渡応答などに起因して安定したトラッキングサーボが行われていない状態を指す。
本例において、トラッキングサーボがロック状態にあるか否かの判別は、上記サーボオン/オフ情報信号が、トラッキングサーボループがオン状態にある旨を示すものであり、且つトラッキングサーボ信号TSの波形状態がサーボの安定時における波形状態とは異なる状態にあるという条件が満たされるか否かを判別することで行う。
【0056】
判別・制御部23は、例えばこのような手法により各chについてトラッキングサーボがロック状態にあるか否かを判別した上で、その判別結果に基づき、ゲインA、ゲインBの切替制御を行う。
【0057】
図5は、上記のようなロック/アンロック状態の判別も含めて判別・制御部23が行う処理の内容(本実施の形態としてのゲイン切り換え制御処理)について示したフローチャートである。
図5において、先ず、ステップS101においては、Ach/Bchの各chについて、トラッキングサーボ制御状態の確認処理を行う。具体的には、各chごとに、上述したサーボオン/オフ情報信号に基づくトラッキングサーボのオン/オフ状態の別の確認、及びトラッキングサーボ信号TSの波形状態が安定時における波形状態にあるか否かについての確認を行う。
【0058】
その上で、続くステップS102以降の処理により、各chのロック/アンロック状態の別に応じたゲイン切り替え制御処理を行う。
すなわち、先ずステップS102においては、Ach・Bch共にロック状態であるか否かを判別する。
当該ステップS102において、Ach・Bch共にトラッキングサーボがロック状態にあるとして肯定結果が得られた場合には、ステップS105に進んでゲインA・ゲインB共に標準ゲインを指示する。すなわち、乗算部14に設定されるゲインA、乗算部20に設定されるゲインBの値として、先に説明したようにして予め設定された標準ゲインとしての値が設定されるようにゲイン切替部22に対する指示を行う。
【0059】
また、上記ステップS102において、Ach・Bch共にトラッキングサーボがロック状態にあるという状態ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS103において、Achのみがロック状態にあるか否かを判別する。
ステップS103において、Achのみトラッキングサーボがロック状態にあるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS106に進み、ゲインAとして標準ゲインの2倍の値を、またゲインBとしては0(ゼロ)を指示する。すなわち、このようにして或るchにてトラッキングサーボがアンロック状態になったとされた場合には、当該アンロック状態となったchのゲインが、ロック状態にある他のchに対して与えられるようにして、当該他のchのゲインを増大させるものである。
【0060】
また上記ステップS103において、Achのみトラッキングサーボがロック状態にあるという状態ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS104において、Bchのみロック状態にあるか否かを判別する。
ステップS104において、Bchのみトラッキングサーボがロック状態にあるとして肯定結果が得られた場合は、ステップS107に進み、ゲインBとして標準ゲインの2倍の値を、またゲインAとしては0(ゼロ)を指示する。
【0061】
一方、上記ステップS104において、Bchのみトラッキングサーボがロック状態にあるという状態ではないとして否定結果が得られた場合は、ステップS108に進み、ゲインA・ゲインB共に0を指示する。
【0062】
上記ステップS108、又は上述したステップS105、S106、S107の何れかの処理を実行した後は、図示するように「RETURN」となり、再度、ステップS101以降の処理が実行されることになる。
【0063】
上記のようにして本実施の形態の1ヘッド2chドライブ装置1においては、chごとのトラッキングサーボの制御状態に応じて、スライド誤差信号に乗じるゲインの切り替えを行うものとしている。具体的には、各chごとに、トラッキングサーボがロック状態にあるか否かを判別し、その判別結果に基づき、スライド誤差信号に乗じるゲインの切り替えを行うものとしている。
これにより、1ヘッド複数チャンネルの構成において全チャンネルのスライド誤差信号を平均した信号に基づきスライドサーボ制御を行うという手法を採る場合において、トラッキングサーボループがオフとされた場合にスライドサーボループ系に生じるゲイン不足の問題や、トラッキングサーボループがオンの状態において外乱等によるトラッキングサーボ信号TSの乱れやトラッキングサーボ引き込み時の過渡応答期間におけるトラッキングサーボ信号TSの乱れに起因して生じるスライドサーボ安定性の低下の問題の発生を、効果的に防止することができる。
すなわち、このような本実施の形態によれば、全チャンネルのスライド誤差信号を平均した信号に基づいてスライドサーボ制御を行うことによる記録/再生動作の安定性向上と共に、上記のようなトラッキングサーボがオフとされた場合のスライドサーボループ系のゲイン不足の問題解消と外乱等によるトラッキングサーボ信号TSの乱れやトラッキングサーボ引き込み時の過渡応答信号がスライドサーボループ系に与える影響の排除とによる記録/再生動作の安定性向上が図れられるようにすることができ、1ヘッド複数チャンネルの構成を採る場合の記録/再生動作の安定性を格段に向上することができる。
【0064】
<4.変形例>

以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、各chごとにトラッキングサーボがロック状態にあるか否かを判別した結果に基づき、各chのスライド誤差信号に与えられるゲインの値を切り替えるものとしたが、単にトラッキングサーボのオン/オフの別に応じてゲイン切り替えを行うようにすることもできる。
このようにトラッキングサーボのオン/オフのみについての判別結果に基づきゲイン切り換えを行うとした場合には、或るchにてトラッキングサーボループがオフとされた場合に生じるスライドサーボループ系のゲイン不足の問題を解消することができる。
【0065】
また、これまでの説明では、記録又は再生速度の向上を図ることを前提とし、1つの光学ヘッドに搭載された複数の光学系(ch)が同時に記録又は再生の何れか一方のみを行うものとしたので、各チャンネルの対物レンズOLの動きとしては、先の図2に示したような追い越し移動を行う場合を例示したが、例えば或るチャンネルが記録した部分を他のチャンネルでリアルタイムに再生する用途を想定した場合などには、図2に示したような追い越し動作は介在しない場合もある。
但し、そのような場合にも、本発明のスライドサーボ制御手法は好適に適用することができる。すなわち、本発明は、先に本出願人が提案したような1ヘッド複数チャンネルの構成において全チャンネルのスライド誤差信号を平均した信号に基づきスライドサーボ制御を行うという手法を採る場合に適用されることで、トラッキングサーボループがオフとされた場合にスライドサーボループ系に生じるゲイン不足の問題や、トラッキングサーボループがオンの状態において外乱等によるトラッキングサーボ信号の乱れやトラッキングサーボ引き込み時の過渡応答期間におけるトラッキングサーボ信号の乱れに起因して生じるスライドサーボ安定性の低下の問題の発生を効果的に防止することができる。
【0066】
また、これまでの説明では、本発明が、光ディスク記録媒体に対する記録と再生の双方が可能な記録再生装置に適用される場合を例示したが、本発明は光ディスク記録媒体に対する記録のみが可能に構成された記録装置、或いは再生のみが可能とされた再生装置に対しても好適に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 1ヘッド2chドライブ装置、2 2ch光学ヘッド、3−A Achマトリクス回路、3−B Bchマトリクス回路、4−A Achサーボ回路、4−B Bchマトリクス回路、5−A Ach2軸ドライバ、5−B Bch2軸ドライバ、6 スライドドライバ、7 スライド移送部、D 光ディスク、8−A Ach光学系、8−B Bch光学系、OL−A,OL−B 対物レンズ、AC−A,AC−B 2軸アクチュエータ、PD−A,PD−B フォトディテクタ、10−A,10−B,18 A/D変換器、11−A,11−B トラッキングサーボフィルタ、12−A,12−B,17 D/A変換器、13,19 ローパスフィルタ、14,20 乗算部、15 加算部、16 スライドサーボフィルタ、21−A Achトラッキング制御部、21−B Bchトラッキング制御部、22 ゲイン切替部、23 判別・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光を照射し、上記光ディスク記録媒体からの反射光を上記対物レンズを介して受光するための光学系であって、上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に変位させる対物レンズ駆動部と上記反射光を受光する受光部とを備えた光学系が、複数搭載された光学ヘッド部と、
上記光学ヘッド部を上記半径方向にスライド駆動するスライド駆動部と、
複数の上記光学系に備えられる上記受光部による受光信号に基づいて、上記光学系ごとのトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成部と、
上記トラッキングサーボ信号生成部により生成された上記光学系ごとのトラッキングサーボ信号に応じて複数の上記光学系に備えられた上記対物レンズ駆動部をそれぞれ駆動制御することで、上記光学系ごとのトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ制御部と、
上記トラッキングサーボ信号生成部により生成された上記トラッキングサーボ信号に基づいて、上記光学系ごとに上記光学ヘッドのスライド誤差を表す上記光学系ごとのスライド誤差信号を生成するスライド誤差信号生成部と、
上記スライド誤差信号生成部により生成された上記光学系ごとのスライド誤差信号に対してそれぞれゲインを乗じる乗算部と、
上記トラッキングサーボ制御部による上記光学系ごとのトラッキングサーボの制御状態に応じて、上記乗算部が上記スライド誤差信号に乗じるゲインの切り替え制御を行うゲイン切替制御部と、
上記乗算部により上記ゲインが乗じられたそれぞれの上記スライド誤差信号を加算すると共に、その加算結果に基づいて生成したスライドサーボ信号に応じて上記スライド駆動部を駆動制御することで、上記光学ヘッドのスライドサーボを行うスライドサーボ制御部と
を備える光ディスクドライブ装置。
【請求項2】
上記ゲイン切替制御部は、
上記トラッキングサーボ制御部による上記光学系ごとのトラッキングサーボがロック状態にあるか否かを判別し、その判別結果に基づき、上記乗算部が上記スライド誤差信号に乗じるゲインの切り替え制御を行う
請求項1に記載の光ディスクドライブ装置。
【請求項3】
上記ゲイン切替制御部は、
トラッキングサーボがロック状態でないと判別した光学系のスライド誤差信号に乗じられるゲインをゼロとし、それ以外の光学系のスライド誤差信号に乗じられるゲインを増大させるように上記乗算部のゲイン切り替え制御を行う
請求項2に記載の光ディスクドライブ装置。
【請求項4】
上記ゲイン切替制御部は、
上記トラッキングサーボがロック状態でないと判別した光学系のスライド誤差信号に乗じられるべきであったゲインが他の光学系のスライド誤差信号に対して与えられるように上記乗算部のゲイン切り替え制御を行う
請求項3に記載の光ディスクドライブ装置。
【請求項5】
上記ゲイン切替制御部は、
上記トラッキングサーボ制御部による上記光学系ごとのトラッキングサーボのオン/オフ状態のみについての判別を行い、その判別結果に基づき、上記乗算部が上記スライド誤差信号に乗じるゲインの切り替え制御を行う
請求項1に記載の光ディスクドライブ装置。
【請求項6】
上記スライド誤差信号生成部は、
上記トラッキングサーボ信号生成部により生成された上記光学系ごとのトラッキングサーボ信号の低域成分をそれぞれ抽出して上記光学系ことのスライド誤差信号を生成する
請求項1に記載の光ディスクドライブ装置。
【請求項7】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光を照射し、上記光ディスク記録媒体からの反射光を上記対物レンズを介して受光するための光学系であって、上記対物レンズを上記光ディスク記録媒体の半径方向に変位させる対物レンズ駆動部と上記反射光を受光する受光部とを備えた光学系が、複数搭載された光学ヘッド部と、上記光学ヘッド部を上記半径方向にスライド駆動するスライド駆動部とが備えられた光ディスクドライブ装置における上記光学ヘッドのスライドサーボ制御方法であって、
複数の上記光学系に備えられる上記受光部による受光信号に基づいて、上記光学系ごとのトラッキングサーボ信号を生成するトラッキングサーボ信号生成手順と、
上記トラッキングサーボ信号生成手順により生成した上記光学系ごとのトラッキングサーボ信号に応じて複数の上記光学系に備えられた上記対物レンズ駆動部をそれぞれ駆動制御することで、上記光学系ごとのトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ制御手順と、
上記トラッキングサーボ信号生成手順により生成した上記トラッキングサーボ信号に基づいて、上記光学系ごとに上記光学ヘッドのスライド誤差を表す上記光学系ごとのスライド誤差信号を生成するスライド誤差信号生成手順と、
上記トラッキングサーボ制御手順による上記光学系ごとのトラッキングサーボの制御状態に応じて、上記スライド誤差信号生成手順により生成した上記光学系ごとのスライド誤差信号に対してそれぞれ乗じるゲインの切り替え制御を行うゲイン切替制御手順と、
上記ゲインが乗じられたそれぞれの上記スライド誤差信号を加算すると共に、その加算結果に基づいて生成したスライドサーボ信号に応じて上記スライド駆動部を駆動制御することで、上記光学ヘッドのスライドサーボを行うスライドサーボ制御手順と
を有するスライドサーボ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−108309(P2011−108309A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261091(P2009−261091)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】