光ディスク及びその製造方法
【課題】本発明は、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アルミニウム、及びアルミニウムと反応性を有する金属を少なくとも含む合金からなる反射膜を備える光ディスク、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、アルミニウム、及びアルミニウムと反応性を有する金属を少なくとも含む合金からなる反射膜を備える光ディスク、及びその製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法に関すものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合金系光ディスクが提案、開発されている。例えば、特許文献1では、クロスイレーズを解消し、反射率の違いを上げることを目的として、多層誘電体層及び反射層の構成を有し、該反射層としてアルミニウムとともに、チタニウム、銅、クロム等からなる合金を用いた光ディスク等が提案されている。
【0003】
ところで、昨今、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等を保護する要請が高く、それらのデータが格納されたディスクにおいても保護する必要がある。しかしながら、これまでに、それら著作物等を適切に保護し得る光ディスクは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−85875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を提供することにより、前記目的を達成したものである。
1.アルミニウム、及びアルミニウムと反応性を有する金属を少なくとも含む合金からなる反射膜を備える光ディスク。
【0007】
2.前記の反応性を有する金属が、アルカリ又はアルカリ土類金属である、前記1記載の光ディスク。
【0008】
3.前記の反応性を有する金属が、リチウムである、前記2記載の光ディスク。
【0009】
4.前記光ディスクが、CD、CD−ROM、CD−DA、DVDからなる群より選択された、前記1〜3の何れかに記載の光ディスク。
【0010】
5.前記1〜3の何れかに記載の光ディスクを製造する方法であって、
アルミニウムからなるターゲットに対して、スパッタガス圧を0.1〜0.8Paにて、アルミニウムと反応性を有する金属をスパッタリングすることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)及び(b)は、本実施例の光ディスクの製造直後と一定時間経過後の状態を示す概略図である。
【図2】本実施例における各組成のAl−Li合金と水の反応の時間を示したグラフである。
【図3】融点の大きく異なる金属を合金化するときに重要になってくる蒸気圧曲線を示すグラフである。
【図4】Alのターゲット上にLi片を乗せたターゲットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図5】Alのターゲット上に3mmの穴を開け、Li片を乗せたターゲットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図6】Al−Li合金の水への溶解を示した図である。
【図7】ハニカム作製用部品を示した図である。
【図8】Alチップタイプターゲットの概要を示す図であり、(a)はAlターゲットの平面図、(b)はAlターゲットの断面図、(c)はAlチップの平面図、(d)はAlチップの断面図を示す。
【図9】AlターゲットへのAlチップの取り付け構造を示す図である。
【図10】図9(a)を元に加工を行ったAlチップの3つの形状を示した概略図であり、(a)はねじ込み式1を示し、(b)はねじ込み式2を示し、(c)は冷やしばめを示す。
【図11】実施例9のAlチップタイプターゲットでのディスク作製に用いたAlチップの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好ましい実施例に基づいて詳述する。
【0014】
(実施例1)
〔Li分散範囲の測定〕
均一Li濃度のディスクの作製を目的として、まずターゲットからのリチウム(Li)の分散範囲の確認を行った。ターゲット材料におけるLiの分散範囲を変化させるには、ターゲット−基板間距離、スパッタ電力、スパッタリングガス圧等それぞれを変化させること等が考えられるが、ここでは、スパッタガス圧を変化させることによるLi分散範囲の変化を測定した。
【0015】
成膜方法としては、スパッタガス圧を0.3Pa、0.5Pa、1.0Paと変化させて成膜した。成膜後、作製したディスクに見られる黒色部を境界線とし、その内側をLi rich範囲と定めた。成膜後のディスクをトレーシングペーパーに模写し、Li rich範囲をAuto CADを用いて測定した。
各スパッタガス圧におけるLi分布範囲の結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1の結果から、特にスパッタガス圧0.3Paで、広範囲にLiが分散することが判る。また、特にスパッタガス圧0.3Paで行うことが組成制御しやすいことが判った。
また、スパッタリングガス圧0.3Paでは、Liを1点置きターゲットの使用でもLi分散範囲が広いことがわかった。スパッタリングガス圧0.5Paでは、0.3Pa時と比較してLiの分散範囲が大分小さくなったことがわかる。範囲が小さいことから、その中での組成の乱れが少ないと考えられる。
スパッタリングガス圧1.0Paでは、Liの分散範囲が0.5Paに比べて少し大きいが、全体的に膜厚が薄くなった。範囲、膜厚共に均一組成ディスク作製には適さない。
【0018】
(実施例2)
〔Al-Li合金を用いた光学ディスク用反射膜の作製〕
本実施例では、一定の期間が経過すると反射率が低下し、データが揮発する光ディスクメディア用の反射膜を作製することを目的とする。
【0019】
本実施例をイメージしたものが図1(a)及び(b)である。図1(a)に示すように、本発明に係る光ディスクを例えばプレス製造した直後ではデータが存在しているため、読み取りレーザー発生装置1からのレーザーによって読み取りが可能である。その後、図1(b)に示すように、一定期間経過すると、当該光ディスクが備える反射膜の反射率が低下することによって、データが揮発(破壊乃至消滅)して読み取りが不可能となる。
【0020】
ここでは、非常に活性であるAl−Li合金を使用し、時間経過により大気中の酸素や、ディスクの接着剤とLiを反応させ、反射率を低下させる実施例を示す。
【0021】
図2は、各組成のAl−Li合金と水の反応の時間を示したグラフである。
この図から、Al−Li合金は組成によって反応終了までの時間を操作できることがわかる。
【0022】
Al−Li溶融金属は電子線により発生する熱により常に対流している。また、沸点の差により蒸気圧の差が生じ加熱されている状態では組成が常に変化してしまい、一定の組成にすることは困難である。
【0023】
図3に、融点の大きく異なる金属を合金化するときに重要になってくる蒸気圧曲線を示す。図3における点線EはAlの融点でのLi蒸気圧を示す。この図からAlの融点付近ではLiは1(Pa)以上の蒸気圧があることがわかる。
このことから、電子線を用いてAlとLiを合金化することは非常に困難で成功しなかった。
【0024】
そこで、合金ターゲットを利用するのではなく、Alターゲット上にLiを設置してスパッタリングが行なえるターゲットの作製方法を考案した。こちらの手法の利点としては乗せるLiの量を変える事により容易に異なった組成の薄膜を一枚のターゲットで作製することが可能な点である。
【0025】
まず、図4(a)および(b)に示すように単純にAlターゲット11上にLi片12Aを乗せ、ターゲットとし、スパッタを行なった。図4(a)においてArは主にスパッタされる領域(エロージョン領域)を示している。しかし、Liが多すぎたため、装置から取り出してすぐ大気との反応により黒くなり、曇ったものとなってしまった。
このLiを減らしただけの、ターゲットでは、Liが非常に広範囲にわたって飛んでおり、あまり組成の傾斜が得られなかった。
【0026】
そこで、図5(a)および(b)に示すようにAlターゲット11の一部に直径3mmの先端が球形の穴を空け、そこにLi12を埋め込む事によりスパッタ時に溶融したLiが広範囲に広がる事を抑制し、成膜を行った。
【0027】
Li表面積を減少させたターゲットを用いた場合1枚のディスク上にLi rich部分と、Al rich部分が作製されることがわかった。
【0028】
(実施例3)
〔Li含有量の確認〕
金属面を出した状態でディスクの重量を測定した。図6に示すようにディスクの金属面を蒸留水につけ1晩(10時間)保持した。ディスクを蒸留水から取り出し乾燥させ再度重量を測定した。重量変化からディスクに含有されているLi量の測定を行った。
【0029】
図6は、Al−Li合金の水への溶解を示す概念図である。
図6に示すように、Al−Li合金は水につけることによってLiが溶解し、上下部の部品のみが残りリサイクル・部品の再利用が容易である。
【0030】
プラスチックは水につけておくと水分を吸収し重量が増加する。ポリカーボネイトは約0.2%の重量増加が発生する。プラスチックの表面は十分に乾燥していても内部に水分を含んでいる可能性がある。ディスクが水分を吸収し、重量増加が発生したのではないかと考えられる。
【0031】
(実施例4)
本実施例では、ディスクの加速試験及び新型ターゲットの作製を行った。
加速試験では、49℃、72℃で、50万秒間(約5日と19時間)加熱したが変化がなく、読み込みが可能だった。また、Li含有量が少なくデータの消失の可能性が低い。常温保持のディスクについても同様である。
【0032】
Li含有量の増加について調べる。ハニカム構造のAlチップに Li を埋め込む。
そして、下記の条件の下、ハニカムを作製した。
・Alターゲットに開けた直径20mm、深さ5mmの穴に固定できるサイズであること。
・Liが溶けても滴り落ちないこと。
・変形しないこと。
・作製が困難でないこと。ハニカム作製用部品を図7に示す。図7のAとBの切込みを入れたAl板をそれぞれ用意する。そして、図7の組み上げ方法のようにする。
【0033】
厚板に応じたハニカムの精度を以下に示す。
0.1mmの場合は、加工が容易、作製中に変形がしにくい、組み上げが容易である。
0.3mm厚板の場合は、加工が困難、作製中に変形がしやすい、組み上げが困難である。ハニカムの中心にAlネジを固定し、ターゲットに作製したネジ穴に固定、ターゲットへのハニカムの取り付けが可能であることを確認した
【0034】
(実施例5)
〔酸化防止試験〕
グローバック内の真空引きを行いArガスで満たした。この作業を2回行った。Li をAlに埋め込みビニールテープで密封した。フィルム(ジップロック)にいれ内部を真空引きした。フィルムごとグローバックから大気中に出し保持し経過を確認した。その結果、約2日で表面は酸化しきってしまった。
【0035】
次に、Liと接着剤の反応の有無を確認した。この試験は、Liを接着剤に浸し、反応の有無を確認することを目的とした。その結果、Liを接着剤の中へつけたところLiから気泡の発生が確認できた。1時間12分後のLiからはすでに気泡の発生はなくなっていた。Liは硬化前の接着剤と反応することがわかった。1時間12分後には反応が終わったことからLiのみをディスクにスパッタすると反応が早すぎることがわかった。
【0036】
(実施例6)
〔電子線照射による Al−Li合金の作製及び保存〕
本実施例は、Al−Li合金をディスクにスパッタする時、事前に組成比を合わせることのできるターゲットを作製することを目的として、Al−Li合金の作製を試みた。
AlとLiをCu製の坩堝に入れ、真空状態にし、電子線を当てることにより加熱・溶融させ合金化を行った。
Alの融点でのLiの蒸気圧は約63(Pa) と非常に高く、Al−Li合金の作製は非常に困難であった。
【0037】
次に、作製したAl−Li合金を次の条件にて保存した。作製直後、及び大気中保存2ヵ月後の結果を以下に示す。
作製直後:一部青みのかかった金属光沢のある合金が作製できた。
大気中保存2ヶ月:大気中に保存したため、酸化し金属光沢は失われていた。
【0038】
大気に触れさせないようにして接着剤を満遍なく付着させた合金を、接着剤を満遍なく付着させた金属用のこぎりを用いて切断した。これにより、酸化していない合金面を気体に触れさせることなく接着剤中に入れた。
接着剤中保存3日間:接着剤中の3日間はAl−Li合金からは少量の気泡が時間経過とともに増加した。
接着剤中保存2ヶ月:肉眼で確認できるほどの金属光沢の変化はなかった。
【0039】
(実施例7)
〔AlターゲットへのAl−Li合金スパッタ〕
本実施例は、基板を回転させることにより、Al−Li合金の組成の均質化、さらに、合金膜層だけでなく純Alや純Liの純金属膜層を作製することにより、2ヶ月でデータが読み込めなくなる合金組成を見出すことを目的とした。
【0040】
仕込みの時点で金属線を回転体に巻きつけ、スパッタ時に金属線を巻き取ることによって基板を回転させた。この方法によって作製されたAl−Li合金ディスクをESCAによって成分分析を行い、Li成分の存在を確認した(〔ESCA(XPS)による組成分析〕を参照)。
【0041】
〔Alチップタイプターゲットの作製及び通電性〕
Alチップタイプターゲットの作製及び通電性について検討した。図8(a)〜図8(d)は、Alチップタイプターゲットの概要を示す図であり、(a)はAlターゲットの平面図、(b)はAlターゲットの断面図、(c)はAlチップの平面図、(d)はAlチップの断面図を示す。
【0042】
図8に示すようにAlターゲット11の表面には、Alチップ11Aを取り付けるための取り付け孔11Bが形成されている。一方、Alチップ11Aには、Liを埋め込むための埋め込み孔11aが形成されている。
【0043】
Alターゲット11へAlチップ11Aの取り付け構造として、図9(a)および図9(b)に示す2つのタイプについて、加工性および通電性の観点から検討した。
加工1(図9(a)):ターゲットを貫通しないので通電性の確保は確実にできると考えられる。しかし、加工が難しくなる。
加工2(図9(b)):ターゲットを貫通するのでねじ部分と上部の円周部のみで通電が確保できる。加工が簡単で作製しやすい。
本検討から通電性の確保を優先し、図9(a)に示す構造が適当と選択した。
【0044】
(実施例8)
〔Alチップタイプターゲットでのディスク作製〕
図9(a)の構造を元に、図10(a)〜(c)に示す3つの形状にてAlチップでのスパッタリングを行った。そして、各Alチップを使用しディスクを作製したところ、「良好なディスクが作製できた」との回答が得られた。
また、図10(a)〜(c)に示す各チップの利点及び欠点を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
Alチップ設計条件は、以下の3つを満たすことが望ましい。
1.溶融した Liが滴り落ちないこと。
2.Liを埋め込みやすいこと。
3.埋め込み穴の距離をある程度開けること。
【0047】
図11に示すように、チップの埋め込み穴に横穴を開け、そこから減圧することにより溶融Li12aを埋め込む。溶融Liが穴に充填されたら温度が下がるのを待ち上面に酸化防止処理を行う。Ar 雰囲気中に保存した。Liの融点は183℃なので、はんだごてを用いて溶融させた (はんだの融点が約180℃)。
【0048】
Alチップ製作では、図10(a)で示す方式が製作に関して最も適当であった。Li埋め込み法に関しては、横穴を完全に封止出来ず、またターゲットが逆さに設置されているため、溶融Liが滴下してしまった。
【0049】
(実施例9)
〔ESCA(XPS)による組成分析〕
本実施例の目的は、Al−Li合金の組成分析をすることで、LiをESCA(XPS)によって検出できるかどうか、また成膜場所によって組成の傾斜が起きているか、について分析をすることにある。
【0050】
本実施例においては、ESCA、別名XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)とも呼ばれる電子分光法を利用した科学分析で、代表的な表面分析法の一つを採用した。
X線を物質に照射した時に放出される光電子の運動エネルギーを測定し、表面を構成する原子や分子、その化学結合状態に関する情報を得ることができる装置である。なお、組成分析において、±5%の誤差が生じる。表3に試料1の組成分析結果を示し、表4に試料2の組成分析結果を示す。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
試料1
Al Narrow 測定→70eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow 測定→55eV前後でLiのピークは検出されなかった。
O Narrow 測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
試料2
Al Narrow測定→70eV前後でAlのピークを検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出されなかった。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0054】
本実施例では、ESCAにてLiの測定が可能かどうかを再確認する。エロージョン領域中に置くLi量を多くして成膜を行った。成膜試料であるディスクの上にガラスを置いた。
【0055】
目視で白くなっている部分と茶色に着色されている部分の組成分析を行った。白くなっているところは、全体的にLiが濃くなっていることが分かった。
【0056】
試料番号1-1
Al Narrow測定→72.7eV前後でAlのピークが検出されなかった。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0057】
試料番号1-2
Al Narrow測定→72.7eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0058】
試料番号2-3
Al Narrow測定→72.7eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0059】
試料番号2-4
Al Narrow測定→73eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0060】
試料番号2-4スライドガラス
Si Narrow測定→102eV前後にてSiのピークが検出された。これはガラスの主成分であるSiが検出されたと推測した
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
(実施例10)
【0061】
基板を回転させ成膜したAl−Li合金のESCAによる組成分析
本実施例における組成分析は、基板を回転させることにより、Al−Li合金薄膜が均質化しているかを確認することを目的とする。また、予備実験として、Alターゲットにスパッタする前に同様の手法で、純Alにスパッタリングを行った。面の組成を均質にするために、回転数(平均回転数)2roll / hourで回転させながら、90分間(計3回転)の成膜を行った。
【0062】
(1)回転中心より外周側。
(2)内周側。
(3)(1)と(2の部分の中間。
薄膜の組成分析にはESCAを用いた。
【0063】
〔結果〕
成分分析結果1
最表面層にLiが多くスパッタされていることを確認した。また試料内部になるほど、Alの原子濃度が上昇していることを確認した。
成分分析結果2
最表面層にLiが多くスパッタされていることを確認した。また試料内部になるほど、Alの原子濃度が上昇していることを確認した。
成分分析結果3
最表面層にLiが多くスパッタされていることを確認した。また試料内部になるほど、Alの原子濃度が上昇していることを確認した。
【0064】
以上、ESCAの結果より、成膜箇所から試料表面層に近いほど、Liは濃度が高く、Alは深さ方向に試料内部に行くほど、原子濃度が上昇した。また、今回の成膜の狙いである表面の組成の均質化においては、完全な均質化することはできなかったが、大きなずれは見られなかった。
【0065】
以上の組成分析結果から以下の膜の層が2ヶ月でデータの読み込み不可となる組成が成膜されると考察した。
試料(1):ポイント1の第3〜5層
試料(2):ポイント1の第4層、ポイント3の第3層
試料(3):ポイント1の第3層、ポイント2の第4層
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法として、産業上利用可能性を有する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法に関すものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合金系光ディスクが提案、開発されている。例えば、特許文献1では、クロスイレーズを解消し、反射率の違いを上げることを目的として、多層誘電体層及び反射層の構成を有し、該反射層としてアルミニウムとともに、チタニウム、銅、クロム等からなる合金を用いた光ディスク等が提案されている。
【0003】
ところで、昨今、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等を保護する要請が高く、それらのデータが格納されたディスクにおいても保護する必要がある。しかしながら、これまでに、それら著作物等を適切に保護し得る光ディスクは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−85875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の発明を提供することにより、前記目的を達成したものである。
1.アルミニウム、及びアルミニウムと反応性を有する金属を少なくとも含む合金からなる反射膜を備える光ディスク。
【0007】
2.前記の反応性を有する金属が、アルカリ又はアルカリ土類金属である、前記1記載の光ディスク。
【0008】
3.前記の反応性を有する金属が、リチウムである、前記2記載の光ディスク。
【0009】
4.前記光ディスクが、CD、CD−ROM、CD−DA、DVDからなる群より選択された、前記1〜3の何れかに記載の光ディスク。
【0010】
5.前記1〜3の何れかに記載の光ディスクを製造する方法であって、
アルミニウムからなるターゲットに対して、スパッタガス圧を0.1〜0.8Paにて、アルミニウムと反応性を有する金属をスパッタリングすることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)及び(b)は、本実施例の光ディスクの製造直後と一定時間経過後の状態を示す概略図である。
【図2】本実施例における各組成のAl−Li合金と水の反応の時間を示したグラフである。
【図3】融点の大きく異なる金属を合金化するときに重要になってくる蒸気圧曲線を示すグラフである。
【図4】Alのターゲット上にLi片を乗せたターゲットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図5】Alのターゲット上に3mmの穴を開け、Li片を乗せたターゲットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図6】Al−Li合金の水への溶解を示した図である。
【図7】ハニカム作製用部品を示した図である。
【図8】Alチップタイプターゲットの概要を示す図であり、(a)はAlターゲットの平面図、(b)はAlターゲットの断面図、(c)はAlチップの平面図、(d)はAlチップの断面図を示す。
【図9】AlターゲットへのAlチップの取り付け構造を示す図である。
【図10】図9(a)を元に加工を行ったAlチップの3つの形状を示した概略図であり、(a)はねじ込み式1を示し、(b)はねじ込み式2を示し、(c)は冷やしばめを示す。
【図11】実施例9のAlチップタイプターゲットでのディスク作製に用いたAlチップの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好ましい実施例に基づいて詳述する。
【0014】
(実施例1)
〔Li分散範囲の測定〕
均一Li濃度のディスクの作製を目的として、まずターゲットからのリチウム(Li)の分散範囲の確認を行った。ターゲット材料におけるLiの分散範囲を変化させるには、ターゲット−基板間距離、スパッタ電力、スパッタリングガス圧等それぞれを変化させること等が考えられるが、ここでは、スパッタガス圧を変化させることによるLi分散範囲の変化を測定した。
【0015】
成膜方法としては、スパッタガス圧を0.3Pa、0.5Pa、1.0Paと変化させて成膜した。成膜後、作製したディスクに見られる黒色部を境界線とし、その内側をLi rich範囲と定めた。成膜後のディスクをトレーシングペーパーに模写し、Li rich範囲をAuto CADを用いて測定した。
各スパッタガス圧におけるLi分布範囲の結果を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1の結果から、特にスパッタガス圧0.3Paで、広範囲にLiが分散することが判る。また、特にスパッタガス圧0.3Paで行うことが組成制御しやすいことが判った。
また、スパッタリングガス圧0.3Paでは、Liを1点置きターゲットの使用でもLi分散範囲が広いことがわかった。スパッタリングガス圧0.5Paでは、0.3Pa時と比較してLiの分散範囲が大分小さくなったことがわかる。範囲が小さいことから、その中での組成の乱れが少ないと考えられる。
スパッタリングガス圧1.0Paでは、Liの分散範囲が0.5Paに比べて少し大きいが、全体的に膜厚が薄くなった。範囲、膜厚共に均一組成ディスク作製には適さない。
【0018】
(実施例2)
〔Al-Li合金を用いた光学ディスク用反射膜の作製〕
本実施例では、一定の期間が経過すると反射率が低下し、データが揮発する光ディスクメディア用の反射膜を作製することを目的とする。
【0019】
本実施例をイメージしたものが図1(a)及び(b)である。図1(a)に示すように、本発明に係る光ディスクを例えばプレス製造した直後ではデータが存在しているため、読み取りレーザー発生装置1からのレーザーによって読み取りが可能である。その後、図1(b)に示すように、一定期間経過すると、当該光ディスクが備える反射膜の反射率が低下することによって、データが揮発(破壊乃至消滅)して読み取りが不可能となる。
【0020】
ここでは、非常に活性であるAl−Li合金を使用し、時間経過により大気中の酸素や、ディスクの接着剤とLiを反応させ、反射率を低下させる実施例を示す。
【0021】
図2は、各組成のAl−Li合金と水の反応の時間を示したグラフである。
この図から、Al−Li合金は組成によって反応終了までの時間を操作できることがわかる。
【0022】
Al−Li溶融金属は電子線により発生する熱により常に対流している。また、沸点の差により蒸気圧の差が生じ加熱されている状態では組成が常に変化してしまい、一定の組成にすることは困難である。
【0023】
図3に、融点の大きく異なる金属を合金化するときに重要になってくる蒸気圧曲線を示す。図3における点線EはAlの融点でのLi蒸気圧を示す。この図からAlの融点付近ではLiは1(Pa)以上の蒸気圧があることがわかる。
このことから、電子線を用いてAlとLiを合金化することは非常に困難で成功しなかった。
【0024】
そこで、合金ターゲットを利用するのではなく、Alターゲット上にLiを設置してスパッタリングが行なえるターゲットの作製方法を考案した。こちらの手法の利点としては乗せるLiの量を変える事により容易に異なった組成の薄膜を一枚のターゲットで作製することが可能な点である。
【0025】
まず、図4(a)および(b)に示すように単純にAlターゲット11上にLi片12Aを乗せ、ターゲットとし、スパッタを行なった。図4(a)においてArは主にスパッタされる領域(エロージョン領域)を示している。しかし、Liが多すぎたため、装置から取り出してすぐ大気との反応により黒くなり、曇ったものとなってしまった。
このLiを減らしただけの、ターゲットでは、Liが非常に広範囲にわたって飛んでおり、あまり組成の傾斜が得られなかった。
【0026】
そこで、図5(a)および(b)に示すようにAlターゲット11の一部に直径3mmの先端が球形の穴を空け、そこにLi12を埋め込む事によりスパッタ時に溶融したLiが広範囲に広がる事を抑制し、成膜を行った。
【0027】
Li表面積を減少させたターゲットを用いた場合1枚のディスク上にLi rich部分と、Al rich部分が作製されることがわかった。
【0028】
(実施例3)
〔Li含有量の確認〕
金属面を出した状態でディスクの重量を測定した。図6に示すようにディスクの金属面を蒸留水につけ1晩(10時間)保持した。ディスクを蒸留水から取り出し乾燥させ再度重量を測定した。重量変化からディスクに含有されているLi量の測定を行った。
【0029】
図6は、Al−Li合金の水への溶解を示す概念図である。
図6に示すように、Al−Li合金は水につけることによってLiが溶解し、上下部の部品のみが残りリサイクル・部品の再利用が容易である。
【0030】
プラスチックは水につけておくと水分を吸収し重量が増加する。ポリカーボネイトは約0.2%の重量増加が発生する。プラスチックの表面は十分に乾燥していても内部に水分を含んでいる可能性がある。ディスクが水分を吸収し、重量増加が発生したのではないかと考えられる。
【0031】
(実施例4)
本実施例では、ディスクの加速試験及び新型ターゲットの作製を行った。
加速試験では、49℃、72℃で、50万秒間(約5日と19時間)加熱したが変化がなく、読み込みが可能だった。また、Li含有量が少なくデータの消失の可能性が低い。常温保持のディスクについても同様である。
【0032】
Li含有量の増加について調べる。ハニカム構造のAlチップに Li を埋め込む。
そして、下記の条件の下、ハニカムを作製した。
・Alターゲットに開けた直径20mm、深さ5mmの穴に固定できるサイズであること。
・Liが溶けても滴り落ちないこと。
・変形しないこと。
・作製が困難でないこと。ハニカム作製用部品を図7に示す。図7のAとBの切込みを入れたAl板をそれぞれ用意する。そして、図7の組み上げ方法のようにする。
【0033】
厚板に応じたハニカムの精度を以下に示す。
0.1mmの場合は、加工が容易、作製中に変形がしにくい、組み上げが容易である。
0.3mm厚板の場合は、加工が困難、作製中に変形がしやすい、組み上げが困難である。ハニカムの中心にAlネジを固定し、ターゲットに作製したネジ穴に固定、ターゲットへのハニカムの取り付けが可能であることを確認した
【0034】
(実施例5)
〔酸化防止試験〕
グローバック内の真空引きを行いArガスで満たした。この作業を2回行った。Li をAlに埋め込みビニールテープで密封した。フィルム(ジップロック)にいれ内部を真空引きした。フィルムごとグローバックから大気中に出し保持し経過を確認した。その結果、約2日で表面は酸化しきってしまった。
【0035】
次に、Liと接着剤の反応の有無を確認した。この試験は、Liを接着剤に浸し、反応の有無を確認することを目的とした。その結果、Liを接着剤の中へつけたところLiから気泡の発生が確認できた。1時間12分後のLiからはすでに気泡の発生はなくなっていた。Liは硬化前の接着剤と反応することがわかった。1時間12分後には反応が終わったことからLiのみをディスクにスパッタすると反応が早すぎることがわかった。
【0036】
(実施例6)
〔電子線照射による Al−Li合金の作製及び保存〕
本実施例は、Al−Li合金をディスクにスパッタする時、事前に組成比を合わせることのできるターゲットを作製することを目的として、Al−Li合金の作製を試みた。
AlとLiをCu製の坩堝に入れ、真空状態にし、電子線を当てることにより加熱・溶融させ合金化を行った。
Alの融点でのLiの蒸気圧は約63(Pa) と非常に高く、Al−Li合金の作製は非常に困難であった。
【0037】
次に、作製したAl−Li合金を次の条件にて保存した。作製直後、及び大気中保存2ヵ月後の結果を以下に示す。
作製直後:一部青みのかかった金属光沢のある合金が作製できた。
大気中保存2ヶ月:大気中に保存したため、酸化し金属光沢は失われていた。
【0038】
大気に触れさせないようにして接着剤を満遍なく付着させた合金を、接着剤を満遍なく付着させた金属用のこぎりを用いて切断した。これにより、酸化していない合金面を気体に触れさせることなく接着剤中に入れた。
接着剤中保存3日間:接着剤中の3日間はAl−Li合金からは少量の気泡が時間経過とともに増加した。
接着剤中保存2ヶ月:肉眼で確認できるほどの金属光沢の変化はなかった。
【0039】
(実施例7)
〔AlターゲットへのAl−Li合金スパッタ〕
本実施例は、基板を回転させることにより、Al−Li合金の組成の均質化、さらに、合金膜層だけでなく純Alや純Liの純金属膜層を作製することにより、2ヶ月でデータが読み込めなくなる合金組成を見出すことを目的とした。
【0040】
仕込みの時点で金属線を回転体に巻きつけ、スパッタ時に金属線を巻き取ることによって基板を回転させた。この方法によって作製されたAl−Li合金ディスクをESCAによって成分分析を行い、Li成分の存在を確認した(〔ESCA(XPS)による組成分析〕を参照)。
【0041】
〔Alチップタイプターゲットの作製及び通電性〕
Alチップタイプターゲットの作製及び通電性について検討した。図8(a)〜図8(d)は、Alチップタイプターゲットの概要を示す図であり、(a)はAlターゲットの平面図、(b)はAlターゲットの断面図、(c)はAlチップの平面図、(d)はAlチップの断面図を示す。
【0042】
図8に示すようにAlターゲット11の表面には、Alチップ11Aを取り付けるための取り付け孔11Bが形成されている。一方、Alチップ11Aには、Liを埋め込むための埋め込み孔11aが形成されている。
【0043】
Alターゲット11へAlチップ11Aの取り付け構造として、図9(a)および図9(b)に示す2つのタイプについて、加工性および通電性の観点から検討した。
加工1(図9(a)):ターゲットを貫通しないので通電性の確保は確実にできると考えられる。しかし、加工が難しくなる。
加工2(図9(b)):ターゲットを貫通するのでねじ部分と上部の円周部のみで通電が確保できる。加工が簡単で作製しやすい。
本検討から通電性の確保を優先し、図9(a)に示す構造が適当と選択した。
【0044】
(実施例8)
〔Alチップタイプターゲットでのディスク作製〕
図9(a)の構造を元に、図10(a)〜(c)に示す3つの形状にてAlチップでのスパッタリングを行った。そして、各Alチップを使用しディスクを作製したところ、「良好なディスクが作製できた」との回答が得られた。
また、図10(a)〜(c)に示す各チップの利点及び欠点を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
Alチップ設計条件は、以下の3つを満たすことが望ましい。
1.溶融した Liが滴り落ちないこと。
2.Liを埋め込みやすいこと。
3.埋め込み穴の距離をある程度開けること。
【0047】
図11に示すように、チップの埋め込み穴に横穴を開け、そこから減圧することにより溶融Li12aを埋め込む。溶融Liが穴に充填されたら温度が下がるのを待ち上面に酸化防止処理を行う。Ar 雰囲気中に保存した。Liの融点は183℃なので、はんだごてを用いて溶融させた (はんだの融点が約180℃)。
【0048】
Alチップ製作では、図10(a)で示す方式が製作に関して最も適当であった。Li埋め込み法に関しては、横穴を完全に封止出来ず、またターゲットが逆さに設置されているため、溶融Liが滴下してしまった。
【0049】
(実施例9)
〔ESCA(XPS)による組成分析〕
本実施例の目的は、Al−Li合金の組成分析をすることで、LiをESCA(XPS)によって検出できるかどうか、また成膜場所によって組成の傾斜が起きているか、について分析をすることにある。
【0050】
本実施例においては、ESCA、別名XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)とも呼ばれる電子分光法を利用した科学分析で、代表的な表面分析法の一つを採用した。
X線を物質に照射した時に放出される光電子の運動エネルギーを測定し、表面を構成する原子や分子、その化学結合状態に関する情報を得ることができる装置である。なお、組成分析において、±5%の誤差が生じる。表3に試料1の組成分析結果を示し、表4に試料2の組成分析結果を示す。
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
試料1
Al Narrow 測定→70eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow 測定→55eV前後でLiのピークは検出されなかった。
O Narrow 測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
試料2
Al Narrow測定→70eV前後でAlのピークを検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出されなかった。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0054】
本実施例では、ESCAにてLiの測定が可能かどうかを再確認する。エロージョン領域中に置くLi量を多くして成膜を行った。成膜試料であるディスクの上にガラスを置いた。
【0055】
目視で白くなっている部分と茶色に着色されている部分の組成分析を行った。白くなっているところは、全体的にLiが濃くなっていることが分かった。
【0056】
試料番号1-1
Al Narrow測定→72.7eV前後でAlのピークが検出されなかった。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0057】
試料番号1-2
Al Narrow測定→72.7eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0058】
試料番号2-3
Al Narrow測定→72.7eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0059】
試料番号2-4
Al Narrow測定→73eV前後でAlのピークが検出された。
Li Narrow測定→55eV前後でLiのピークが検出された。
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
【0060】
試料番号2-4スライドガラス
Si Narrow測定→102eV前後にてSiのピークが検出された。これはガラスの主成分であるSiが検出されたと推測した
O Narrow測定→530eV前後にてOのピークが検出された。
(実施例10)
【0061】
基板を回転させ成膜したAl−Li合金のESCAによる組成分析
本実施例における組成分析は、基板を回転させることにより、Al−Li合金薄膜が均質化しているかを確認することを目的とする。また、予備実験として、Alターゲットにスパッタする前に同様の手法で、純Alにスパッタリングを行った。面の組成を均質にするために、回転数(平均回転数)2roll / hourで回転させながら、90分間(計3回転)の成膜を行った。
【0062】
(1)回転中心より外周側。
(2)内周側。
(3)(1)と(2の部分の中間。
薄膜の組成分析にはESCAを用いた。
【0063】
〔結果〕
成分分析結果1
最表面層にLiが多くスパッタされていることを確認した。また試料内部になるほど、Alの原子濃度が上昇していることを確認した。
成分分析結果2
最表面層にLiが多くスパッタされていることを確認した。また試料内部になるほど、Alの原子濃度が上昇していることを確認した。
成分分析結果3
最表面層にLiが多くスパッタされていることを確認した。また試料内部になるほど、Alの原子濃度が上昇していることを確認した。
【0064】
以上、ESCAの結果より、成膜箇所から試料表面層に近いほど、Liは濃度が高く、Alは深さ方向に試料内部に行くほど、原子濃度が上昇した。また、今回の成膜の狙いである表面の組成の均質化においては、完全な均質化することはできなかったが、大きなずれは見られなかった。
【0065】
以上の組成分析結果から以下の膜の層が2ヶ月でデータの読み込み不可となる組成が成膜されると考察した。
試料(1):ポイント1の第3〜5層
試料(2):ポイント1の第4層、ポイント3の第3層
試料(3):ポイント1の第3層、ポイント2の第4層
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、音楽、映像等の著作物やコンテンツ等のデータが格納された状態から、一定期間経過するとデータが破壊乃至消失して当該著作物に係る権利を保護することのできる光ディスク及びその製造方法として、産業上利用可能性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、及びアルミニウムと反応性を有する金属を少なくとも含む合金からなる反射膜を備える光ディスク。
【請求項2】
前記の反応性を有する金属が、アルカリ又はアルカリ土類金属である、請求項1記載の光ディスク。
【請求項3】
前記の反応性を有する金属が、リチウムである、請求項2記載の光ディスク。
【請求項4】
前記光ディスクが、CD、CD−ROM、CD−DA、DVDからなる群より選択された、請求項1〜3の何れかに記載の光ディスク。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の光ディスクを製造する方法であって、
アルミニウムからなるターゲットに対して、スパッタガス圧を0.1〜0.8Paにて、アルミニウムと反応性を有する金属をスパッタリングすることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【請求項1】
アルミニウム、及びアルミニウムと反応性を有する金属を少なくとも含む合金からなる反射膜を備える光ディスク。
【請求項2】
前記の反応性を有する金属が、アルカリ又はアルカリ土類金属である、請求項1記載の光ディスク。
【請求項3】
前記の反応性を有する金属が、リチウムである、請求項2記載の光ディスク。
【請求項4】
前記光ディスクが、CD、CD−ROM、CD−DA、DVDからなる群より選択された、請求項1〜3の何れかに記載の光ディスク。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の光ディスクを製造する方法であって、
アルミニウムからなるターゲットに対して、スパッタガス圧を0.1〜0.8Paにて、アルミニウムと反応性を有する金属をスパッタリングすることを特徴とする光ディスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−277641(P2010−277641A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128923(P2009−128923)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(500540707)株式会社ディー・ティー・ジャパン (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(500540707)株式会社ディー・ティー・ジャパン (3)
【Fターム(参考)】
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