説明

光ディスク用紫外線硬化型組成物および光ディスク

【課題】蛍光灯暴露下においても良好な耐光性を有し、かつ好適な光硬化性を有する光ディスクを形成可能な紫外線硬化型組成物、及び光ディスクを提供する。
【解決手段】光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマー、重合開始剤及び紫外線吸収剤を含有し、紫外線吸収剤が、式(1)


で表わされ、重合開始剤が、400nm以上に吸収域を有する重合開始剤である組成物により、硬化性の低下による生産性の低下なく、蛍光灯下で良好な耐光性の光ディスクを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク、特に370nm〜430nmの範囲内に発振波長を有するブルーレーザーにより情報の記録又は再生を行う光ディスクの光透過層に使用する光ディスク用紫外線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度記録可能な光ディスクとして主流となっているDVD(Digital Versatile Disc)は厚さ0.6mmの2枚の基板を接着剤で貼り合わせた構造を有している。DVDにおいては高密度化を達成するため、CD(Compact Disc)に比べ短波長の650nmのレーザーを用い、光学系も高開口数化している。
【0003】
しかし、HDTV(high definition television)に対応した高画質の映像等を記録または再生する為には更なる高密度化が必要となる。DVDの次世代に位置する更なる高密度記録の方法及びその光ディスクの検討が行われており、DVDよりも更に短波長のブルーレーザー及び高開口数の光学系を用いる新しい光ディスク構造による高密度記録方式が提案されている。
【0004】
当該光ディスクはポリカーボネート等のプラスチックで形成される透明又は不透明の基板上に記録層を形成し、次いで記録層上に約100μmの光透過層を積層してなり、該光透過層を通して記録光又は再生光が、あるいはその両方が入射する構造の光ディスクである。この光ディスクの光透過層には、生産性の観点から、紫外線硬化型組成物を使用することがもっぱら研究されている。
【0005】
これら光ディスクは長期に渡って安定した記録再生特性を保持する必要があり、高温高湿環境下や、外光に暴露された環境下においても安定な電気特性を保持することが求められる。外光への耐性を付与するに際しては、紫外線吸収剤の添加が一般に行われており、各種の紫外線吸収剤を添加した紫外線硬化型組成物が開示されている(例えば、特許文献1〜2参照)。しかし、これら紫外線硬化型組成物は、実際の蛍光灯暴露下では、十分な耐光性が得られない場合があり、更なる耐光性の向上が求められていた。また、紫外線吸収剤の添加は、紫外線硬化型組成物の光硬化性の低下により、生産性を低下させ、生産コストの上昇を招く場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−256503
【特許文献2】特開2008−192217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、蛍光灯暴露下においても良好な耐光性を有し、かつ好適な光硬化性を有する光ディスクを形成可能な紫外線硬化型組成物、及び光ディスクを提供することにある。
【0008】
更には、上記特性に加え、高温高湿環境下でも反りの上昇や信号特性の劣化が少ない光ディスクを形成可能な紫外線硬化型組成物及び光ディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の紫外線硬化型組成物は、特定構造の紫外線吸収剤と、400nm以上の吸収波長を有する重合開始剤とを併用することにより、硬化性の低下による生産性の低下を生じることなく、蛍光灯下での耐光性を格段に向上させることができる。また、オリゴマー成分やモノマー成分に、剛直な骨格を有しつつ硬化膜に一定の柔軟性を付与できる変性アクリレートを使用することにより、これら効果を特に好適に実現でき、高温高湿環境下での耐久性を向上させることができる。
【0010】
すなわち本発明は、基板上に少なくとも光反射層と紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる光透過層とが積層され、光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う光ディスクであって、蛍光灯下での耐光性に優れる光ディスク用紫外線硬化型組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物を使用することで、長期間にわたる蛍光灯暴露においても信号劣化、特に反射率の低下が少ない光ディスクを硬化性良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図2】本発明の単層型光ディスクの一例を示す図である。
【図3】本発明の二層型光ディスクの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーを含有し、紫外線吸収剤として、式(1)
【0014】
【化1】

(式(1)中、R及びRは、各々独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコシキシ基または炭素数1〜12のアルキルエステルを表わし、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコシキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
で表わされる紫外線吸収剤、重合開始剤として400nm以上に吸収域を有する重合開始剤を含有する組成物である。
【0015】
[紫外線吸収剤]
本発明で用いる紫外線吸収剤は、上記式(1)で表わされる紫外線吸収剤であり、当該紫外線吸収剤を含有することにより、低い波長領域の光を広域で吸収でき、蛍光灯暴露下での光ディスクの信号特性の劣化を好適に低減できる。
【0016】
上記式(1)で表わされる紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール、および、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応物等を例示できる。なかでも、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールが、蛍光灯暴露下での耐光性に優れるため好ましい。
【0017】
これら紫外線吸収剤は、チヌビンP、チヌビン326、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン571、チヌビン213(チバ・ジャパン株式会社製)として入手可能である。
【0018】
上記式(1)で表わされる紫外線吸収剤の含有量としては、紫外線硬化型組成物中の0.01〜1質量%含有することが好ましく、0.02〜0.5質量%であることがより好ましい。含有量を当該範囲とすることで、極端な紫外線硬化性の低下を生じず好適な耐光性を付与しやすくなる。
【0019】
本発明の紫外線硬化型組成物においては、上記式(1)で表わされる紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤や光安定剤を併用しても良いが、紫外線により発生したラジカルをトラップするタイプのヒンダードアミン系光安定剤を併用すると、その種類によっては湿熱環境下での反射膜の劣化や反射率の低下を生じる場合があるため、光を吸収するタイプの紫外線吸収剤を使用することが好ましく、特に上記式(1)で表わされるベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤のみを使用することがより好ましい。
【0020】
[重合開始剤]
本発明の紫外線硬化型組成物は、重合開始剤として400nm以上に吸収域を有する重合開始剤を含有する。本発明においては、当該重合開始剤を上記紫外線吸収剤と併用することで、耐光性と硬化性とを好適に両立できる。
【0021】
400nm以上に吸収域を有する重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド等を好ましく使用できる。
【0022】
これら重合開始剤は、Irgacure 819(チバ・ジャパン株式会社製)、Lucirin TPO(BASF社製)、Lucirin TPO−L(BASF社製)、Lucirin LR8953(BASF社製)等として入手可能である。
【0023】
400nm以上に吸収域を有する重合開始剤の含有量としては、好適に紫外線硬化型組成物を硬化できる範囲であれば特に制限されないが、0.01〜3質量%含有することが好ましく、0.02〜1質量%であることがより好ましい。
【0024】
本発明においては、より硬化性を向上させるために、上記400nm以上に吸収域を有する重合開始剤と、他の重合開始剤を併用することも好ましい。他の重合開始剤としては、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[(4−メチルチオフェニル)]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、等の水素引き抜き型の光重合開始剤等がある。なかでも、比較的黄変の少ない1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンを好ましく使用できる。
【0025】
[(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明の紫外線硬化型組成物に使用する(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、光ディスクの光透過層に用いられるエポキシ(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレート等を使用できる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物及び二塩基酸無水物から得られるハーフエステル化合物と、エポキシ樹脂とを反応させて得られる変性エポキシアクリレートを特に好ましく使用できる。当該変性エポキシアクリレートは、硬化膜の弾性率を低く抑えることができ、硬化時に生じた硬化膜内の歪みを緩和することができるため、反りの小さい光ディスクを得やすくなる。また、上記エポキシアクリレート樹脂が、剛直な環状構造を有し、且つ耐熱性の高いエステル構造から構成されることから、銀又は銀合金反射膜の光ディスクにおいて、湿熱環境下での優れた耐久性や耐光性を得やすくなる。
【0026】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにラクトンを開環付加して得られる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ラクトンとしては、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0027】
なかでも、1モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートに2〜10モルのε−カプロラクトンが付加した化合物が好ましく、1モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートに2〜5モルのε−カプロラクトンが付加した化合物が特に好ましい。
【0028】
二塩基酸無水物としては、フタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、2,3,4,5−テトラヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、ヘキサヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、琥珀酸無水物及びその誘導体、モノアルキル琥珀酸無水物及びその誘導体、ジアルキル琥珀酸無水物及びその誘導体、マレイン酸無水物及びその誘導体、モノアルキルマレイン酸無水物及びその誘導体、並びにジアルキルマレイン酸無水物及びその誘導体が挙げられる。中でもフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、又はヘキサヒドロフタル酸無水物を用いることが好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂としては、特に構造が限定されるものではないが、例えば、ビスフェノ−ル型エポキシ樹脂類、ノボラック型エポキシ樹脂類、脂環式エポキシ樹脂類、グリシジルエステル類、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、複素環式エポキシ樹脂類、及び臭素化エポキシ樹脂類などが挙げられる。
【0030】
上記のビスフェノ−ル型エポキシ樹脂類としては、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂の2級水酸基にε−カプロラクトン付加したラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルF型エポキシ樹脂、及びビスフェノ−ルS型エポキシ樹脂等;上記のノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノ−ルノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノ−ルAノボラック型エポキシ樹脂、及びジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等;上記脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレ−ト、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレ−ト、及び1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等;前記グリシジルエステル類としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマ−酸グリシジルエステル等;前記グリシジルアミン類としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP−アミノフェノ−ル、及びN,N−ジグリシジルアニリン等;並びに、前記複素環式エポキシ樹脂としては、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、及びトリグリシジルイソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0031】
中でも、ビスフェノ−ル型エポキシ樹脂がコストパーフォマンスに優れ、取りわけビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂が、湿熱環境下での耐久性等の性能とコストに優れ、好ましい。
【0032】
上記変性エポキシアクリレートは、下記の反応工程で製造することが好ましい。
第一段の反応として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物の水酸基と、二塩基酸無水物とを、水酸基と二塩基酸無水物のモル比が0.9〜1.1、好ましくは等モルにて反応させてハーフエステル化合物を得る。第二段の反応として、得られたハーフエステル化合物とエポキシ樹脂とを、ハーフエステル化合物のカルボキシル基とエポキシ樹脂のグリシジル基とを、モル比が0.9〜1.1、好ましくは等モルにて反応させる。
【0033】
この第1段反応は禁止剤の存在下、反応温度60〜120℃、好ましくは70〜100℃で反応する事が望ましい。60℃以下では反応時間が長くなり、120℃以上ではヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物の不飽和二重結合の重合が起きやすくなる。第2段の反応は、60℃以下では反応時間が長くなり、120℃以上ではヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのラクトン付加物の不飽和二重結合の重合が起きやすくなるため、禁止剤の存在下、反応温度60〜120℃、好ましくは70〜100℃で反応する事が望ましい。グリシジル基の開環触媒として公知任意の触媒を用いる事が出来る。トリエチレンジアミン、又はトリnブチルアミン等の三級アミン類、及び、トリフェニルフォスファイト、亜燐酸エステル、又はトリフェニルホスフィン等のホスフィン類などがその代表例として挙げる事が出来る。
【0034】
上記変性エポキシアクリレートのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)は900〜8000であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)は、1.3〜2.8であることが好ましく、1.4〜2.0であることがより好ましい。
【0035】
上記ラクトン変性エポキシアクリレート以外では、同一分子内に2個のカルボキシル基を有する化合物と、エポキシ樹脂とアクリル酸とを反応させて得られる変性エポキシアクリレートを好ましく使用できる。当該エポキシアクリレートは同一分子内に2個のカルボキシル基を有する化合物の骨格や分子量を変えることで硬化膜の弾性率を任意に調整できる。特に柔軟構造を与えるポリエステルジカルボン酸を使用することで、硬化膜の弾性率を低く抑えることができるため、反りの小さい光ディスクを得ることができる。また、上記エポキシアクリレートが耐熱性の高いエステル構造を有するため、銀又は銀合金反射膜の光ディスクにおいて、湿熱環境下での優れた耐久性や太陽光・蛍光灯暴露下での優れた耐光性を得やすくなる。
【0036】
同一分子内に2個のカルボキシル基を有する化合物(A)としては、例えば、
(a)ジオールと2塩基酸とを反応させて得られる分子鎖の両末端にカルボキシル基を有するポリエステルジカルボン酸
(b)或いは、長鎖アルキルジオール又はポリエーテルジオールに酸無水物を分子末端の水酸基に反応させたジカルボン酸
(c)二塩基酸にラクトン化合物を反応したジカルボン酸などの分子末端がカルボキシル基のジカルボン酸
等がある。中でも柔軟性の理由から(a)で示したポリエステルジカルボン酸が好ましい。
【0037】
具体的には、上記(a)のポリエステルジカルボン酸は、ジオールより過剰な二塩基酸のモル比の割合においてその比を調製することにより(二塩基酸/ジオール=2〜1モルの範囲)任意の分子量のジカルボン酸が得られる。そのジオールとしては具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、オクタエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、オクタプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリテトラメチレングリコール、テトラテトラメチレングリコール、オクタテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキシルジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ひまし油変性ジオール等のジオール類を挙げることが出来る。
【0038】
ジオールと反応させる二塩基酸としては、水素原子が炭素数1〜6のアルキル基により置換されていても良い2価の芳香族炭化水素基又は分岐鎖を有していても良い炭素数2〜10の2価の脂肪族炭化水素基を有する二塩基酸を使用でき、例えば、琥珀酸、無水琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の脂肪族二塩基酸、乃至は無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族多塩基酸、テトラヒドロ酸無水物及びその誘導体、乃至はヘキサヒドロフタル酸無水物及びその誘導体、ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸等が挙げられる。
【0039】
前記ポリエステルジカルボン酸の中でも、耐久性と柔軟性を両立できる理由からアジピン酸とエチレングリコールとを反応させて得られるポリエステルジカルボン酸が好ましい。
【0040】
前記ポリエステルジカルボン酸の数平均分子量を、250〜10000とすることで、得られる硬化物に適度な柔軟性を付与することができる。
【0041】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂が好ましく使用することができる。中でも、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂が銀合金等の光反射膜に対する接着力と、耐久性に優れる硬化物が得られ、また、本発明で用いる紫外線硬化型組成物のコストダウン化にも有効なことから好ましい。
【0042】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、塗布性に優れることから150〜1000が好ましく、150〜700がより好ましい。
【0043】
上記変性エポキシアクリレートは、下記の反応工程で製造することが好ましい。まず同一分子内に2個のカルボキシル基を有する化合物(A)とエポキシ樹脂とを反応させた後、次いでアクリル酸とを反応させる2段階合成方法、または該化合物(A)、エポキシ樹脂およびアクリル酸を同時に仕込み反応させる1段階合成方法などが挙げられる。
【0044】
上記の変性エポキシ(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、光ディスクの光透過層用紫外線硬化型組成物として使用される各種のオリゴマーを、本発明の効果を好適に発現できる範囲で適宜使用してもよい。
【0045】
本発明の紫外線硬化型組成物における(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、30〜90質量%であることが好ましく、40質量%〜70質量%とすることが更に好ましい。また(メタ)アクリレートオリゴマーとして、上記の変性エポキシアクリレートを紫外線硬化型組成物中の10〜60質量%含有することが好ましい。
【0046】
[(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の紫外線硬化型組成物においては、(メタ)アクリレートモノマーとして、一分子中にアクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレート、アクリロイル基を2つ有する二官能(メタ)アクリレート、アクリロイル基を3つ以上有する多官能(メタ)アクリレート等を好適に使用できる。
【0047】
単官能(メタ)アクリレートの例としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、等の脂肪族(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の芳香族(メタ)アクリレートが挙げられる。また、脂環式のモノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチルビシクロヘプタンアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等も使用できる。また、アクリロイルモルフォリン、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキル化リン酸(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルエーテルモノマー等も使用できる。
【0048】
なかでもテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレートが希釈性能に優れ、環境試験時の反り変化量が少なくなるため好ましい。
【0049】
2官能(メタ)アクリレートの例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、脂環式の2官能(メタ)アクリレートとして、ノルボルナンジメタノールジアクリレート、ノルボルナンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジエタノールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド2モル付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート又はプロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等を使用できる。なかでも、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が好ましく、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が特に好ましい。
【0050】
これら二官能(メタ)アクリレートのなかでも、式(i)及び(ii)で表わされる二官能(メタ)アクリレートを、紫外線硬化型組成物中の5〜30質量%含有することが好ましい。使用することが硬化性や耐湿性の向上に貢献できるため好ましい。
【0051】
【化2】

(式(i)中、R11は水素原子またはメチル基を表す。kは4〜16の整数を表す。)
または
【0052】
【化3】

(式(ii)中、R12及びR13は、各々独立して水素原子またはメチル基を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。m及びnは、各々独立して1以上の整数を表わし、m+n=2〜20である。)
【0053】
特に、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートは、希釈性・硬化性に優れると共に、その硬化物の表面硬度、耐湿性が良好となる。また、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートは、剛直な環状構造を有することから、耐湿性・耐熱性の向上に貢献できる。
【0054】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシプロピルイソシアヌレート、ビス(2−メタクリロイルオキシブチル)ヒドロキシブチルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロイルオキシブチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たテトラオールのテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等を使用できる。
【0055】
これら3官能以上の(メタ)アクリレートのなかでも、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0056】
本発明における紫外線硬化型組成物に含まれる紫外線硬化性化合物全量中の単官能(メタ)アクリレートの含有量としては、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることが好ましい。2官能(メタ)アクリレートの含有量としては、5〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることが更に好ましい。また、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量は、30質量%以下であることが好ましく、5〜20質量%であることが好ましい。1〜3官能の(メタ)アクリレートの比率は、使用する(メタ)アクリレートの種類に応じて適宜調整すればよく、上記範囲内にて調整することで、塗付時の粘度や、硬化後の架橋密度を好適な範囲とすることができ、硬化物に優れた耐久性や耐光性を付与できると共に硬化物の反りを低減できる。
【0057】
[添加剤]
また、紫外線硬化型樹脂組成物に添加する任意成分としては、次のようなものが有り、本発明の効果を損わない範囲内で使用可能である。例えば、光重合開始剤に対する増感剤として、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等があり、更に前述光重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。これらは、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れ、かつ紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0058】
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、光ディスクを高温高湿環境下により長時間放置した場合に、反射膜の腐食、反射率の低下、或いはエラーの増加を防止するために、没食子酸を用いることも好ましい。
【0059】
[光ディスク用紫外線硬化型組成物]
本発明の光ディスク用紫外線硬化型組成物は、上記紫外線吸収剤、重合開始剤を含有し、上記例示した(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリレートモノマーを含有する紫外線硬化型組成物である。
【0060】
本発明の紫外線硬化型組成物においては、その設計(メタ)アクリロイル基濃度を4.0mmol/g以下とすることが好ましく、3.8mmol/g以下とすることが更に好ましい。設計(メタ)アクリロイル基濃度を当該範囲とすることで、紫外線照射時の硬化収縮を低減し、湿熱環境変化時における反り変化の少ない硬化膜を形成できるため、光ディスクに適用した際に様々な使用環境下での反り変化を低減できる。
【0061】
紫外線硬化型組成物中の(メタ)アクリロイル基濃度とは、紫外線硬化型組成物1g中に含まれる(メタ)アクリロイル基の濃度(mmol)をいう。詳細には、(メタ)アクリレート成分を任意の複数成分含んでいる紫外線硬化型組成物においては、下式により算出される濃度である。
【0062】
[紫外線硬化型組成物の(メタ)アクリロイル基濃度]=[Σm/Σm](mmol/g)
:紫外線硬化型組成物に含まれる成分iの配合量(g)
:成分iの(メタ)アクリロイル基濃度(mmol/g)
【0063】
また、個々の(メタ)アクリレート成分であるi成分の(メタ)アクリロイル基濃度は、下式により算出される。
【0064】
[成分iの(メタ)アクリロイル基濃度]=[F×10/M](mmol/g)
F:成分iの1分子あたりの(メタ)アクリロイル基数
M:成分iの1分子あたりの分子量(g/mol)
【0065】
なお、上記算出に際し、組成物中の添加剤等の質量は計算の際に考慮しないものとする。
【0066】
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線を照射した後の硬化膜は、周波数3.5Hzで測定される動的粘弾性スペクトルにおける25℃の貯蔵弾性率(E’)が1000MPa(25℃)以下であることが好ましい。中でも100〜800MPaとなる組成であることがより好ましい。また、当該硬化膜の周波数3.5Hzで測定される動的粘弾性スペクトルにおけるガラス転移温度が50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることが更に好ましい。弾性率やガラス転移温度がこの範囲となる組成であると、外部からの荷重によって変形した際にも、好適にエラーの回復が可能な光ディスクを得ることができる。
【0067】
本発明の紫外線硬化型組成物において、(メタ)アクリロイル基濃度を下げつつ弾性率を上げるに際しては、一定の架橋点間距離を確保すると共に、架橋密度を高くする組成物設計が有効である。また、架橋点間距離を確保する際には、モノマー成分の高分子量化よりも、高分子量の(メタ)アクリレートオリゴマーにより調整することが好ましい。また架橋密度の向上においては、(メタ)アクリレートオリゴマー成分の多官能化や、(メタ)アクリレートモノマーの多官能化により向上させることができる。
【0068】
本発明の紫外線硬化型組成物は、上記紫外線硬化性化合物を調整し、粘度を1000〜4000mPa・s、好ましくは1200〜2500mPa・sとすることで、厚膜の光透過層を好適に形成できる。
【0069】
[光ディスク]
本発明の光ディスクは、基板上に、少なくとも光反射層と光透過層とが形成され、光透過層を通してレーザー光により記録又は再生を行う光ディスクであって、光透過層が、上記の紫外線硬化型組成物の硬化物からなるものである。本発明の光ディスクは、光透過層として、上記した紫外線硬化型組成物を使用することにより、銀又は銀合金を反射膜として使用した場合に長期間にわたる蛍光灯暴露においても信号劣化、特に反射率の低下が少なく耐光性に優れ、さらに高温高湿下でも、銀又は銀合金反射膜の劣化が少なく耐久性に優れるため、良好に情報の記録・再生を行うことができる。
【0070】
本発明の光ディスクにおける光透過層は、レーザー光の発振波長が370〜430nmであるブルーレーザーを効率良く透過することが好ましく、100μmの厚さにおいて405nmの光の透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0071】
本発明の光ディスクにおける光透過層の厚みは70〜110μmであることが好ましい。光透過層の厚みは、通常、約100μmに設定されるが、厚みは光透過率や信号の読み取り及び記録に大きく影響を及ぼすため、十分な管理が必要である。光透過層は、当該厚さの硬化層単層で形成されていても、複数層が積層されていてもよい。
【0072】
光反射層としては、レーザー光を反射し、記録・再生が可能な光ディスクを形成できるものであればよく、例えば、金、銅、アルミニウムなどの金属又はその合金、シリコンなどの無機化合物を使用できる。なかでも、400nm近傍の光の反射率が高いことから銀又は銀を主成分とする合金を使用することが好ましい。光反射層の厚さは、10〜60nm程度の厚さとすることが好ましい。
【0073】
基板としては、ディスク形状の円形樹脂基板を使用でき、当該樹脂としてはポリカーボネートを好ましく使用できる。光ディスクが再生専用の場合には、基板上に情報記録を担うピットが光反射層と積層される表面に形成される。
【0074】
また、書込可能な光ディスクの場合には、光反射層と光透過層との間に情報記録層が設けられる。情報記録層としては、情報の記録・再生が可能であればよく、相変化型記録層、光磁気記録層、あるいは有機色素型記録層のいずれであってもよい。
【0075】
情報記録層が相変化型記録層である場合には、当該情報記録層は通常、誘電体層と相変化膜から構成される。誘電体層は、相変化層に発生する熱を緩衝する機能、ディスクの反射率を調整する機能を求められ、ZnSとSiOの混合組成が用いられる。相変化膜は、膜の相変化により非晶状態と結晶状態で反射率差を生じるものであり、Ge−Sb−Te系、Sb−Te系、Ag−In−Sb−Te系合金を用いることができる。
【0076】
本願発明の光ディスクは、情報記録部位が二つ以上形成されていても良い。例えば、再生専用光ディスクの場合には、ピットを有する基板上に、第一の光反射層、第一の光透過層が積層され、当該第一の光透過層上又は他の層を積層し、当該層上に第二の光反射層、第二の光透過層を形成してもよい。この場合には第一の光透過層やこれに積層する他の層上にピットが形成される。また、記録・再生可能な光ディスクの場合は、基板上に、情報記録層、光反射層及び光透過層が積層された構成を有するものであるが、当該光透過層上に更に、第二の光反射層、第二の情報記録層、第二の光透過層を形成して二層の情報記録層を有する構成、あるいは、同様に層を積層して三層以上の情報記録層を有する構成としてもよい。複数層を積層する場合には、各層の層厚さの和が上記の厚さになるように適宜調整すればよい。
【0077】
また、本発明の光ディスクにおいては、光透過層が最表面の層であってもよいが、その表層にハードコート層を設けることができる。ハードコート層は光ディスクにおいて記録又は再生時にエラーが発生する原因となる光透過層の表面への傷付を防止し、さらに必要に応じて防汚性や帯電防止性を付与する目的で設けられる。ハードコート層の膜厚は、耐擦傷性、防汚性、帯電防止性等の機能を満足できる膜厚であれば特に限定されるものではないが、クラックや反り発生を抑制するため5μm以下であることが好ましい。
【0078】
本発明の光ディスクは、100μm厚の光透過層を有する光ディスクを、25℃95%RHから25℃45%RHに変化させた際の試験前後のラジアルチルト(Radial Tilt)が、いずれも±1°以内であることが好ましく、ブルーレイディスクの規格である±0.8°以内であることが更に好ましい。
【0079】
また、テーバー摩耗試験器ロータリアブレッサー((株)東洋精機製)にて摩耗輪CS−10Fを用い加重250gにて50回転摩耗した際の405nmにおける拡散透過率(JIS K−7105)変化が10%以下であることが好ましい。
【0080】
本発明の光ディスクには、再生専用のディスクと、記録・再生可能なディスクがある。再生専用のディスクは、1枚の円形樹脂基板を射出成形する際に、情報記録層であるピットを設け、次いで該情報記録層上に光反射層を形成し、更に、該光反射層上に紫外線硬化型組成物をスピンコート法等により塗布した後、紫外線照射により硬化させて光透過層を形成することにより製造することができる。また、記録・再生可能なディスクは、1枚の円形樹脂基板上に光反射層を形成し、次いで相変化膜、又は光磁気記録膜等の情報記録層を設け、更に、該光反射層上に紫外線硬化型組成物をスピンコート法等により塗布した後、紫外線照射により硬化させて光透過層を形成することにより製造することができる。
【0081】
光反射層上に塗布した紫外線硬化型組成物を紫外線照射することにより硬化させる場合、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀灯などを用いた連続光照射方式で行うこともできるし、USP5904795記載の閃光照射方式で行うこともできる。効率よく硬化出来る点で閃光照射方式がより好ましい。
【0082】
紫外線を照射する場合、積算光量は0.05〜1J/cmとなるようにコントロールするのが好ましい。積算光量は0.05〜0.8J/cmであることがより好ましく、0.05〜0.6J/cmであることが特に好ましい。本発明の光ディスクに使用する紫外線硬化型組成物は、積算光量が少量であっても、十分に硬化し、光ディスク端面や表面のタックが発生せず、更に光ディスクの反りや歪みが発生しない。
【0083】
[実施態様]
以下、本発明の光ディスクの具体例として、単層型光ディスク及び二層型光ディスクの具体的構成の一例を以下に示す。
【0084】
本発明の光ディスクのうち、単層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図1に示したように、基板1上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う構成が例示できる。図中の凹凸は、記録トラック(グルーブ)を模式的に表したものである。光透過層3は、本発明の紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、その厚さは100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0085】
図2は図1に示した構成の最表層にハードコート層4を設けた構成である。ハードコート層は、高硬度で、耐摩耗性に優れる層であることが好ましい。ハードコート層の厚さは、1〜10μmであることが好ましく、3〜5μmであることがより好ましい
多層型光ディスクの好ましい実施態様としては、例えば、図3に示したように、基板1上に、光反射層5と、光透過層6とが積層され、さらにその上に、光反射層2と、光透過層3とが積層され、光透過層3側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う二層型光ディスクの構成が例示できる。光透過層3及び光透過層6は、紫外線硬化型組成物の硬化物からなる層であり、少なくともいずれかの層が本発明の紫外線硬化型組成物からなる層である。層の厚さとしては、光透過層3の厚さと光透過層6の厚さの和が100±10μmの範囲である。基板1の厚さは1.1mm程度、光反射膜は銀等の薄膜である。
【0086】
当該構成の二層型光ディスクにおいては、記録トラック(グルーブ)が、光透過層6の表面にも形成されるため、光透過層6は、接着性に優れる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層の上に、記録トラックを好適に形成できる紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる層を積層した複層で形成されていてもよい。また当該構成においても最表層にハードコート層が設けられていてもよい。
【0087】
図1に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形することによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜する。この上に本発明の紫外線硬化型組成物を塗布し、ディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させ、光透過層3を形成し、図1の光ディスクを作製する。図2の光ディスクの場合には、この上に更にスピンコート等によりハードコート層4を形成する。
【0088】
図3に示す光ディスクの製造方法を以下に説明する。
まず、ポリカーボネート樹脂を射出成形にすることによって、記録トラック(グルーブ)と呼ばれるレーザー光をトラッキングするための案内溝を有する基板1を作製する。次に、基板1の記録トラック側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層6を成膜する。
【0089】
この上に、本発明の紫外線硬化型組成物又は任意の紫外線硬化型組成物の光透過層5を形成するが、その際に型を用いて表面に記録トラック(グルーブ)を転写する。記録トラック(グルーブ)を転写する工程は次の通りである。基板1に形成された光反射層6上に紫外線硬化型組成物を塗布し、その上に記録トラック(グルーブ)を形成するための型と貼り合わせ、この貼り合わせたディスクの片面または両面から紫外線を照射して、紫外線硬化型組成物を硬化させる。その後、型を剥離して、光透過層5の記録トラック(グルーブ)を有する側の表面に、銀合金などをスパッタまたは蒸着することにより光反射層2を成膜し、この上に、紫外線硬化型組成物を塗付した後、紫外線照射により硬化させ、光透過層3を形成することで、図3の光ディスクを作製できる。また、光反射層に相変化型記録層を用いる場合でも上記と同様の方法により光ディスクを作成することができる。
【実施例】
【0090】
次に、合成例及び実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下実施例中の「部」は「質量部」を表す。
【0091】
<合成例1>
温度計、攪拌機および環流冷却器を備えたフラスコに、カプロラクトン変性β−ヒドロキシエチルアクリレート(水酸基価=244KOHmg/g,ダイセル化学工業株式会社製 プラクセルFA1−DDM)を230g、無水フタル酸を148g、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1g仕込んだ後、攪拌を行いながら2時間で120℃まで昇温した。120℃で10時間保持し、酸価が148KOHmg/gになった事を確認した後、80℃まで降温してビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)189g、トリフェニルホスフィン2.85gを添加した。再び120℃まで昇温後、4時間保持してエポキシアクリレート樹脂(EA1)を得た。
アクリロイル基濃度:1.78(mmol/g)
【0092】
<合成例2>
合成例1と同様の装置を用い、カプロラクトン変性β−ヒドロキシエチルアクリレート(水酸基価=163KOHmg/g,ダイセル化学工業株式会社製 プラクセルFA2−D)を344g、無水フタル酸を148g、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1g仕込んだ後、攪拌を行いながら2時間で120℃まで昇温した。120℃で10時間保持し、酸価が114KOHmg/gになった事を確認した後、80℃まで降温してビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量189g/当量;大日本インキ化学工業株式会社製EPICLON850)189g、トリフェニルホスフィン2.85gを添加した。再び120℃まで昇温後、4時間保持してエポキシアクリレート樹脂(EA2)を得た。
アクリロイル基濃度:1.46(mmol/g)
【0093】
<合成例3>
精溜塔、水分離器、コンデンサー、温度計及び窒素導入管を備えた攪拌機付き反応器にエチレングリコールを91部、アジピン酸を318部加えて攪拌しながら140℃まで1時間で昇温した。更に3時間で230℃迄昇温、230℃で3時間反応。酸価221KOHmg/gで冷却した。100℃迄冷却したらエピクロン850(大日本インキ化学工業(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/当量)を529部、トリフェニルホスフィン0.2部を加えて120℃で4時間反応した。酸価7.5KOHmg/gであった。窒素導入管を空気吹き込みに換えて、アクリル酸(98%)99部、メトキノン0.5部、トリフェニルホスフィン1部を加えて110℃12時間反応した。フェノキシエチルアクリレート258部を加えて変性エポキシアクリレート樹脂(EA3)を得た。
アクリロイル基濃度:2.07(mmol/g)
*フェノキシエチルアクリレートを含む
【0094】
下記表1に示した組成(表中の組成の数値は質量部を表す)により配合した各組成物を60℃で3時間加熱溶解した後、ろ過精度1μmのフィルターでろ過し実施例1〜7及び比較例1〜5の紫外線硬化型組成物を調製した。得られた組成物について、下記の評価を行い、得られた結果を表1に示す。
【0095】
<粘度の測定方法>
紫外線硬化型組成物について、25℃における粘度をB型粘度計((株)東京計器製、BM型)を用いて測定した。
【0096】
<弾性率・ガラス転移温度・信号評価用光ディスクの作製条件>
直径120mm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板を準備し、銀合金ターゲット(Ag−Pd−Cu合金)を20〜40nmの膜厚でスパッタした後、反対面側に窒化シリコン(SiNx)を5〜10nmの膜厚でスパッタした。得られた基板の銀合金反射膜上に、表1の各組成物をオリジン電気(株)製の塗布実験機を使用し膜厚が硬化後に100±5μmとなるように塗布した。さらに、ハードコートを硬化後の膜厚が3±1μmとなるように塗布した。なお、ハードコートはDIC(株)製のダイキュアクリアHC−1を用いた。ウシオ電機(株)製クセノンフラッシュ照射装置(型式:FUV−201WJ02)を使用し、仮硬化(充電電圧3420V)の後、本硬化20ショット(充電電圧3420V)、ハードコート硬化10ショット(充電電圧3420V)の条件で紫外線を照射、硬化させ試験用サンプルディスクを得た。
【0097】
<弾性率の測定方法>
各サンプルディスクについて400番の耐水研磨紙(三共理化学(株)製)を用いて光透過層表面のハードコートを削った後、硬化物層から試験片を切り出した。自動動的粘弾性測定装置RSA−2(ティー・エイ・インストルメント(株)製)を用いて、測定周波数3.5Hzにて測定し貯蔵弾性率(E’)を弾性率とした。
【0098】
<ガラス転移温度の測定方法>
各サンプルディスクについて400番の耐水研磨紙(三共理化学(株)製)を用いて光透過層表面のハードコートを削った後、硬化物層から試験片を切り出した。自動動的粘弾性測定装置RSA−2(ティー・エイ・インストルメント(株)製)を用いて測定周波数3.5Hzにて損失正接(tanδ)を測定し、そのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0099】
<光ディスクの蛍光灯試験>
各サンプルディスクについて、蛍光灯(東芝 メロウライン FHF32EX−N−H)2本を蛍光灯の中心間距離が10cmになるように同一平面上に並列させ、中央の蛍光灯から45cmの位置に光ディスクの光透過層が蛍光灯に対向するように配置して、240時間蛍光灯の曝露を行った。その後、23℃50%RHの環境下に24時間放置した後、各サンプルディスクの反射率(R8H)をパルステック工業(株)製「BD MASTER」を用いて測定した。蛍光灯試験前後の反射率変化を下記基準に基づき評価した。
◎:5%以内
○:5%を越え6%以内
×:6%を越える
【0100】
<光ディスクの加速試験>
各サンプルディスクについて環境試験器「PR−2PK」(エスペック(株)製)を使用して、80℃85%RHの湿熱環境下で240時間曝露を行った。その後、23℃50%RHの環境下に24時間放置した後、各サンプルディスクのエラーレートRandom SERをパルステック工業(株)製「BD MASTER」を用いて測定した。加速試験後のRandom SERの平均値を下記基準に基づき評価した。
◎:2×10−4以下
○:2×10−4を越え5×10−3以下
×:5×10−3を越える
【0101】
<紫外線硬化型組成物の硬化性>
サンプルディスクの膜厚調整に必要とした仮硬化時のショット数で評価した。ショット数が多いほどディスク端面に硬化物が付着しやすくなり収率の悪化をもたらし、またランプ寿命を早めるといった理由から好ましくない。
◎:仮硬化1ショット
○:仮硬化2〜3ショット
×:仮硬化4ショット以上
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
表1中の記号は以下の通りである。
EA1:合成例1に記載のエポキシアクリレート
EA2:合成例2に記載のエポキシアクリレート
EA3:合成例3に記載のエポキシアクリレート
TMP−3EO−TA:トリメチロールプロパン1モルに3モルのエチレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリアクリレート
HDDA:1,6−へキサンジオールジアクリレート
BisA−4EO−DA:エチレンオキサイド変性(4モル)ビスフェノールAジアクリレート
BisA−10EO−DA:エチレンオキサイド変性(10モル)ビスフェノールAジアクリレート
PEA:フェノキシエチルアクリレート
EOEOEA:エトキシエトキシエチルアクリレート
PM−2:エチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート(日本化薬(株)製)
没食子酸:3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(大日本住友製薬(株)製)
ベンゾトリアゾール:(精工化学(株)製)
TINUVIN P:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(チバ・ジャパン(株)製)
TINUVIN 765:ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・ジャパン(株)製)
Irgacure 184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製)
Lucirin TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製)
【0105】
表1に示すように、本発明の組成物を使用した実施例1〜7の光ディスクは蛍光灯試験での反射率変化が6%以下に収まり優れた耐光性を示し、良好な硬化性を有していた。特に式(1)で表される紫外線吸収剤を0.2部使用した実施例2、3、5、6、7は反射率変化が2%以下に収まり特に優れた耐光性を示した。一方、比較例1、3、4、6、8の光ディスクは蛍光灯試験での反射率変化が6%を越え耐光性に劣るものであった。また、比較例2、5、7、9の光ディスクは反射率変化が6%以下に収まるものの硬化性に劣る結果となった。
【符号の説明】
【0106】
1 基板
2 光反射層
3 光透過層
4 ハードコート層
5 光反射層
6 中間光透過層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、少なくとも光反射層と、光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う光ディスクの光透過層に使用する紫外線硬化型組成物であって、
(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマー、重合開始剤及び紫外線吸収剤を含有し、
前記紫外線吸収剤が、式(1)
【化1】

(式(1)中、R及びRは、各々独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコシキシ基または炭素数1〜12のアルキルエステルを表わし、Xは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜6のアルコシキシ基、シアノ基またはニトロ基を表す。)
で表わされる紫外線吸収剤であり、
前記重合開始剤が、400nm以上に吸収域を有する重合開始剤であることを特徴とする光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項2】
前記重合開始剤が、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドである請求項1に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレートモノマーとして、
【化2】

(式(i)中、R11は水素原子またはメチル基を表す。kは4〜16の整数を表す。)
または
【化3】

(式(ii)中、R12及びR13は、各々独立して水素原子またはメチル基を表す。R14は炭素数1〜12のアルキル基を表す。m及びnは、各々独立して1以上の整数を表わし、m+n=2〜20である。)
を含有し、その含有量が光ディスク用紫外線硬化型組成物中の5〜30質量%である請求項1〜2に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートオリゴマーとしてエポキシ(メタ)アクリレートを含有し、その含有量が光ディスク用紫外線硬化型組成物中の10〜60質量%である請求項1〜3に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤の含有量が、光ディスク用紫外線硬化型組成物中の0.01〜1質量%である請求項1〜4に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項6】
紫外線硬化型組成物の硬化膜の周波数3.5Hzで測定される動的粘弾性スペクトルにおける25℃の貯蔵弾性率(E’)が1000MPa以下である請求項1〜5に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項7】
紫外線硬化型組成物の25℃における粘度が1000〜4000mPa・sである請求項1〜6に記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項8】
紫外線硬化型組成物の(メタ)アクリロイル基濃度が3.8mmol/g以下である請求項1〜7のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物。
【請求項9】
基板上に、少なくとも光反射層と、紫外線硬化型組成物の硬化膜からなる光透過層とが積層され、前記光透過層側からブルーレーザーを入射して情報の記録又は再生を行う光ディスクであって、
前記紫外線硬化型組成物が、請求項1〜8のいずれかに記載の光ディスク用紫外線硬化型組成物であることを特徴とする光ディスク。
【請求項10】
前記光透過層の厚さが70〜110μmの範囲にある請求項9に記載の光ディスク。
【請求項11】
前記紫外線硬化型組成物の硬化膜の周波数3.5Hzで測定される動的粘弾性スペクトルにおけるガラス転移温度が50℃以下である請求項9又は10に記載の光ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−165238(P2011−165238A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24088(P2010−24088)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】