説明

光ディスク装置、その制御方法及び制御プログラム

【課題】所望の再生位置へ光ピックアップがアクセスできないときに、光ピックアップの駆動電圧を上げることにより、アクセスの可能性を高めることが可能な光ディスク装置、その制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】スレッド送り機構4のモータの作動を制御する駆動制御部5が、通常の駆動電圧によりモータを作動させることにより、光ピックアップDを移動させた後、光ピックアップDにより検出された信号に基づいて、光ピックアップDが所望のアドレスに到達したか否かを判定する判定部73、判定部73により当該アドレスに到達していないと判定された場合に、駆動制御部5に、所定の駆動電圧よりも高い駆動電圧により、モータを作動させることを指示する電圧制御部75を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップにより光ディスクの信号を読み取る光ディスク装置に係り、特に、光ピックアップを移動させるスレッド送り機構の動作に改良を施した光ディスク装置、その制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVD等の光学式のディスクを記録再生するディスクプレーヤにおいては、対物レンズを含む光ピックアップを介してレーザ光を記録面に照射し、その反射光を電気信号に変換することにより、ディスクに記録された信号を読み取っている。
【0003】
このような光ピックアップは、ディスクの径方向に移動させるスレッド送り機構によって、回転する記録面のピットに追従させていくが、選曲等の際には、所望のトラックまでジャンプさせる必要がある。このトラックジャンプは、スレッド送り機構を駆動するモータに、所定時間電圧をかけることにより、光ピックアップを所定量移動させることを繰り返し行い、所望の位置まで到達させるものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】登録実用新案第3012990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メカニズムのばらつきや温度の変化などの影響により、光ピックアップを駆動するためのスレッド送り機構が動作する最低電圧が高くなってしまい、所定の動作電圧では十分に動作しない場合が生じる。例えば、送りねじの切削加工の状態により接触部分の摩擦抵抗が高くなっている場合や、温度が高くなってモータの抵抗値が上がった場合には、スレッド送り機構が動作可能なモータの電圧は高くなる。
【0005】
しかし、かかる場合に、あらかじめ設定された所定の駆動電圧のままであると、所定時間の電圧の印加では、光ピックアップの移動量が不足する。このため、トラックジャンプを繰り返して選曲動作を行っても、アクセスが完了せず、選曲ができない場合がある。
【0006】
これに対処するため、一律に駆動電圧を高くすることが考えられる。しかし、この場合には、逆に、光ピックアップの移動量が大きすぎて、オーバーランが発生してしまい、結果的にアクセス時間が長くなってしまう可能性がある。また、駆動電圧を高くすると、スレッド送り機構の動作音が高くなるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、所望の再生位置へ光ピックアップがアクセスできないときに、光ピックアップの駆動電圧を上げることにより、アクセスの可能性を高めることができる光ディスク装置、その制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、光ディスクに記録された信号を検出する光ピックアップと、前記光ピックアップを光ディスクの径方向に移動させる駆動機構と、前記駆動機構の駆動源であり、所定の駆動電圧で作動するモータと、前記光ディスクにおける所望の再生位置に、前記光ピックアップが移動するように、前記モータの作動を制御する駆動制御部と、を有する光ディスク装置において、前記駆動制御部が、第1の駆動電圧により前記モータを作動させることにより前記光ピックアップを移動させた後、前記光ピックアップにより検出された信号に基づいて、前記光ピックアップが前記再生位置に到達したか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記再生位置に到達していないと判定された場合に、前記駆動制御部に、前記第1の駆動電圧よりも高い第2の駆動電圧により前記モータを作動させることを指示する電圧制御部と、を有することを特徴とする。なお、請求項4及び5の発明は、請求項1の発明を方法及びコンピュータプログラムの観点から捉えたものである。
【0009】
以上のような請求項1、4及び5の発明では、通常の第1の駆動電圧では所望の再生位置に到達できない場合に、より高い第2の駆動電圧でモータを駆動することにより、当該再生位置に到達できる可能性を高めることができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の光ディスク装置において、前記第2の駆動電圧により前記モータを作動させるまでに、前記判定部による判定を繰り返す回数を記憶する設定記憶部を有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1の光ディスク装置において、前記第2の駆動電圧により前記モータを作動させるまでに、前記判定部による判定を繰り返す時間を記憶する設定記憶部を有することを特徴とする。
【0011】
以上のような請求項2及び3の発明では、所定の回数若しくは時間、再生位置へのアクセスを繰り返してから、駆動電圧を上げることにより、誤動作を防止できる。
【発明の効果】
【0012】
以上のような本発明によれば、所望の再生位置へ光ピックアップがアクセスできないときに、光ピックアップの駆動電圧を上げることにより、アクセスの可能性を高めることが可能な光ディスク装置、その制御方法及び制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を適用した一実施形態(本実施形態)について、図面を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を、以下に述べる各部の機能を実現するためのプログラムに従って動作させることにより、モータ等を制御するものであり、ハードウェアやプログラムの実現態様は各種変更可能である。
【0014】
従って、以下の説明では、本発明の各機能を実現する仮想的回路ブロックを用いる。また、本実施形態に示す制御方法及びこれをコンピュータにより実現するためのプログラム、これを記録した記録媒体も、本発明の一態様である。
【0015】
[構成]
まず、本実施形態の構成を、図1を参照して説明する。なお、光ディスク装置に必要な一般的な機能部分については、公知のあらゆる技術を適用可能であるため、説明を省略する。
【0016】
すなわち、本実施形態は、図1に示すように、ターンテーブル1上に装着されたディスクDを、スピンドルモータ2によって回転させ、光ピックアップ3をスレッド送り機構(駆動機構)4によって径方向に走査しながら反射レーザ光を検出することにより、ディスクDの記録面への情報の記録及び再生を行うディスクプレーヤに適用されるものである。
【0017】
5は、スレッド送り機構4を駆動するモータ(図示せず)を制御する駆動制御部(ドライバ)である。6は、光ピックアップ3が検出した記録信号に基づいて、光ディスクDのサブコードの位置情報(アドレス)を読み取るアドレス読み取り部6である。
【0018】
さらに、7は光ディスク装置をコントロールする制御装置である。この制御装置7は、一般的な制御機能の他に、設定記憶部71、比較部72、判定部73、カウンタ74及び電圧制御部75を有している。
【0019】
設定記憶部71は、目的とするアドレス、スレッドモータの通常時の駆動電圧、変更後の高い駆動電圧、スレッドジャンプの回数等、種々の設定を記憶する手段である。比較部72は、アドレス読み取り部6によって読み取られたアドレスと、設定記憶部71に記憶された目的とするアドレスとを比較する手段である。
【0020】
判定部73は、読み取られたアドレスが、目的とするアドレスに到達したか(一致する若しくは超えているか否か)を判定する手段である。カウンタ74は、読み取られたアドレスが、目的とするアドレスに到達していない場合に、スレッドジャンプを繰り返す回数を表すカウンタ変数をインクリメント(カウント)する手段である。
【0021】
電圧制御部75は、カウンタ74のカウント回数が、設定記憶部71に記憶された所定の回数を超えた場合に、高い駆動電圧の印加を駆動制御部5に指示する手段である。なお、図示はしないが、ユーザは、フロントパネルやリモコンのスイッチ、タッチパネル等の入力手段から、所望の選曲入力を行うことができる。
【0022】
[作用]
以上のような本実施形態の作用を、図2のフローチャートを参照して説明する。まず、ユーザが選曲入力を行うと、選曲したトラックの曲頭のアドレスが設定記憶部71に記憶される。このアドレスに対して、光ピックアップ3を移動するため、スレッド送り機構4によるアクセスが開始し、移動を実行した回数を数えるカウンタ変数がクリアされる(ステップ201)。
【0023】
電圧制御部75は、駆動制御部5に対して、光ピックアップ3の駆動電圧として、通常時の初期電圧に設定する(ステップ202)。駆動制御部5は、設定された駆動電圧による光ピックアップ3の移動を、スレッド送り機構4に指示する。これにより、光ピックアップは、選曲したアドレスに向かって所定量の移動(トラックジャンプ)を行う(ステップ203)。
【0024】
上記の移動先で、光ピックアップ3からの信号に基づいて、アドレス読み取り部6は、光ディスクDに記録されたアドレスを読み取る(ステップ204)。比較部72は、読み取ったアドレスと、選曲されたアドレスとを比較する。そして、判定部73が、読み取ったアドレスが選曲されたアドレスに到達していないと判定した場合には、カウンタ74が、カウンタ変数をインクリメント(+1)する(ステップ206)。
【0025】
カウンタ変数の値が、所定回数を超えていないときは(ステップ207)、再度トラックジャンプを行う(ステップ203、204)。読み取ったアドレスが選曲されたアドレスに到達しておらず(ステップ205)、所定回数を超えたときには(ステップ207)、電圧制御部75が、駆動制御部5に対して、設定記憶部71に記憶された高い駆動電圧による駆動を指示する(ステップ208)。
【0026】
このように、駆動電圧を上げた状態で、上記のトラックジャンプを行う(ステップ203)。駆動電圧を上げることにより、光ピックアップ3の移動量が増す。そして、移動後に読み取ったアドレスが選曲されたアドレスに到達したか否かが判定される(ステップ204、205)。
【0027】
読み取ったアドレスが、選曲されたアドレスと一致するか若しくは超えていて、既に高い駆動電圧に変更していた場合には(ステップ209)、これを元の駆動電圧に戻す(ステップ210)。そして、カウンタ変数をクリアして、処理を終了する(ステップ210)。
【0028】
なお、上記の駆動電圧の変更をせずに、光ピックアップ3が選曲されたアドレスに到達した場合には(ステップ205、209)、駆動電圧を戻す必要はなく、カウンタ変数をクリアして、処理を終了する(ステップ210)。
【0029】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、通常の駆動電圧に設定して光ピックアップ3を移動させ、所望のアドレスへ光ピックアップ3が到達しなくなった場合には、駆動電圧を上げて移動量を確保することにより、光ピックアップ3が所望のアドレスへ到達できる可能性を高めることが可能となる。したがって、メカニズムのばらつき、温度の変化等により、最低動作電圧が高くなってしまっても、安定して選曲を行うことが可能となる。
【0030】
また、所定の回数のアクセスを繰り返して、それでも所望のアドレスへ到達できない場合に、駆動電圧を上げるので、頻繁に駆動電圧が上昇することによる誤動作を防止できる。
【0031】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記のような実施形態に限定されるものではない。例えば、通常の駆動電圧とそれよりも高い駆動電圧の値は、特定の値には限定されず、モータ及び装置等の条件に応じて自由に設定可能である。トラックジャンプを繰り返す回数の設定も、特定の値には限定されない。トラックジャンプの回数ではなく、所定の時間を設定することによって、トラックジャンプの繰り返しを制限してもよい。
【0032】
駆動電圧を一度上昇させても、光ピックアップがアクセスできない場合には、駆動電圧を複数回上昇させてもよい。この場合、上昇させる回数若しくは時間の上限を設定して、過度の上昇を制限してもよい。以上の各種設定は、設定をデフォルトとしてもよいが、ユーザーが入力手段を用いて、所望の設定に入力・変更できるようにしてもよい。
【0033】
また、ハードウェアの構成態様は、上記に例示した各機能を実現するいわゆるチップとその周辺回路によって実現したり、複数の機能を集約したシステムLSIやASICによって実現する等、種々考えられるものであり、特定の態様には限定されない。さらに、本発明の対象となるディスクは、各種CDやDVD(規格を問わない)のみには限定されず、あらゆるタイプの回転式記録媒体に適用できる。再生専用のものであっても、記録再生可能なものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の光ディスク装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】図1の実施形態における処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1…ターンテーブル
2…スピンドルモータ
3…光ピックアップ
4…スレッド送り機構
5…駆動制御部
6…アドレス読み取り部
7…制御装置
71…設定記憶部
72…比較部
73…判定部
74…カウンタ
75…電圧制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録された信号を検出する光ピックアップと、前記光ピックアップを光ディスクの径方向に移動させる駆動機構と、前記駆動機構の駆動源であり、所定の駆動電圧で作動するモータと、前記光ディスクにおける所望の再生位置に、前記光ピックアップが移動するように、前記モータの作動を制御する駆動制御部と、を有する光ディスク装置において、
前記駆動制御部が、第1の駆動電圧により前記モータを作動させることにより前記光ピックアップを移動させた後、前記光ピックアップにより検出された信号に基づいて、前記光ピックアップが前記再生位置に到達したか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記再生位置に到達していないと判定された場合に、前記駆動制御部に、前記第1の駆動電圧よりも高い第2の駆動電圧により前記モータを作動させることを指示する電圧制御部と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記第2の駆動電圧により前記モータを作動させるまでに、前記判定部による判定を繰り返す回数を記憶する設定記憶部を有することを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記第2の駆動電圧により前記モータを作動させるまでに、前記判定部による判定を繰り返す時間を記憶する設定記憶部を有することを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項4】
光ディスクに記録された信号を検出する光ピックアップと、前記光ピックアップを光ディスクの径方向に移動させる駆動機構と、前記駆動機構の駆動源であり、所定の駆動電圧で作動するモータと、前記光ディスクにおける所望の再生位置に、前記光ピックアップが移動するように、前記モータの作動を制御する駆動制御部と、を有する光ディスク装置を、コンピュータ又は電子回路により制御する光ディスク装置の制御方法において、
前記コンピュータ又は電子回路は、判定部及び電圧制御部を有し、
前記判定部は、前記駆動制御部が、第1の駆動電圧により前記モータを作動させることにより前記光ピックアップを移動させた後、前記光ピックアップにより検出された信号に基づいて、前記光ピックアップが前記再生位置に到達したか否かを判定し、
前記電圧制御部は、前記判定部により前記再生位置に到達していないと判定された場合に、前記駆動制御部に、前記第1の駆動電圧よりも高い第2の駆動電圧により前記モータを作動させることを指示することを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項5】
光ディスクに記録された信号を検出する光ピックアップと、前記光ピックアップを光ディスクの径方向に移動させる駆動機構と、前記駆動機構の駆動源であり、所定の駆動電圧で作動するモータと、前記光ディスクにおける所望の再生位置に、前記光ピックアップが移動するように、前記モータの作動を制御する駆動制御部と、を有する光ディスク装置を、コンピュータにより制御させる光ディスク装置の制御プログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記駆動制御部が、第1の駆動電圧により前記モータを作動させることにより前記光ピックアップを移動させた後、前記光ピックアップにより検出された信号に基づいて、前記光ピックアップが前記再生位置に到達したか否かを判定する処理と、
前記電圧制御部は、前記判定部により前記再生位置に到達していないと判定された場合に、前記駆動制御部に、前記第1の駆動電圧よりも高い第2の駆動電圧により前記モータを作動させることを指示する処理と、
を実行させることを特徴とする光ディスク装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−243297(P2008−243297A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82811(P2007−82811)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】