説明

光ディスク装置、及び光ディスク装置におけるディスク面の判別方法

【課題】光ディスク装置において、DVDディスクのレーベルフラッシュ面が光ピックアップと対向するよう挿入されたことを判定する方法を容易化したい。
【解決手段】レーベルフラッシュ面のドローイングエリアにおける描画可能領域の内周側付近から、インフォメーションエリアにかけて光ピックアップを移動させながら、光ピックアップが再生するDPP信号とDPD信号の振幅を検出する。DPP信号、DPD信号とも、ドローイングエリアよりもインフォメーションエリアで検出される振幅が大きい場合、即ち、双方において所定値以上の振幅変化が検出された場合には、レーベルフラッシュ面が光ピックアップと対向するよう挿入されたと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置、及び光ディスク装置におけるディスク面の判別方法に係り、特にディスク面の判別を容易にした光ディスク装置、及び光ディスク装置におけるディスク面の判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc)をはじめとする光ディスクを記録媒体とする光ディスク装置においては、ユーザが挿入した光ディスクが、例えば前記した種類のうちの何れであるかを判別するための、ディスク判別部が必要である。また、例えば光ディスクの種類がDVDであった場合には、前記ディスク判別部は、前記光ディスクが、DVD−Rのような一回のみ記録が可能な追記型、DVD−RAMのような書換え型、DVD−ROMのような読取り専用型のうちの何れであるかを判別する必要がある。
【0003】
また、ユーザが光ディスクの表裏を誤って挿入することがある。このため前記ディスク判別部は、前記光ディスク装置の光ピックアップ(以下、OPU;Optical Pickup Unitと略記することがある)が対向する面が、光ディスクのデータ記録面であるかレーベル印刷面であるかを判別する必要がある。
特許文献1においては、情報記録層のデータパターンの配列方向から、光ディスク面のデータ記録面とレーベル印刷面を判別する技術が開示されている。
【0004】
さらに最近ではDVDディスクに関して、ユーザが前記光ディスク装置を用いて、記録したコンテンツやそのタイトルに係る好みのレーベルを、前記レーベル印刷面に印刷できるようにしたものが現れている。このDVDディスクのレーベル印刷面は、レーベルフラッシュ面と呼ばれる。このため、前記ディスク判別部は新たに、OPUがレーベルフラッシュ面に対向しているかを判別する必要がある。特許文献1に示したようなデータ記録面とレーベル印刷面の判別とは異なり、前記ディスク判別部は、レーベル印刷面がレーベルフラッシュ面であるか否かを判別する必要がある。
なお、レーベルフラッシュ面を有する光ディスクは、現在のところDVDディスクの一部だけであり、例えばCDやBDには存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−120541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーベルフラッシュ面の判別方法には、一例として、光ディスクの半径方向における所定位置でOPUから出力されるトラッキング制御用のDPD(Differential Phase Detecting)信号とDPP(Differential Push-Pull)信号の振幅が、ともに所定値よりも小さい場合に、OPUにはレーベルフラッシュ面が対向していると判別する方法がある。
【0007】
しかし、この方法ではDPD信号とDPP信号を検出する際の、OPUの光ディスクにおける半径方向の位置については所定の精度が必要である。後記するように、このOPUの位置精度は一般的には厳しいものである。このため、位置精度を緩和してディスク面の判別を容易にできる判別方法が望まれている。
本発明の目的は前記した課題に鑑み、ディスク面の判別を容易にした光ディスク装置、及び光ディスク装置におけるディスク面の判別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため本発明は、データを記録または再生するためのデータ記録面とレーベルを印刷するためのレーベルフラッシュ面が表裏一体である光ディスクに対してデータを記録または再生する光ディスク装置であって、
前記光ディスクにレーザ光を照射して前記データ記録面に対して前記データを記録または再生し前記レーベルフラッシュ面に対して前記レーベルを印刷する光ピックアップと、該光ピックアップが再生した信号に基づき前記光ピックアップに対しトラッキング制御をするのためのトラッキング制御信号を生成する信号処理部と、該信号処理部が生成した前記トラッキング制御信号に基づき前記光ピックアップの前記光ディスクに対するトラッキング位置を制御するサーボ部と、前記光ディスク装置の動作を制御する制御部を有し、
該制御部は、前記光ディスク装置に前記光ディスクが装着された際に、前記光ディスクのレーベルフラッシュ面のドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界に相当する前記光ディスクの半径方向位置を通過させるよう前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に所定距離だけ移動させて前記トラッキング制御信号を前記信号処理部から取得し、前記トラッキング制御信号に所定値以上の振幅変化が検出された場合には、前記レーベルフラッシュ面が前記光ピックアップに対向するよう前記光ディスクが前記光ディスク装置に装着されたと判定することを特徴としている。
【0009】
また本発明は、データを記録または再生するためのデータ記録面とレーベルを印刷するためのレーベルフラッシュ面が表裏一体である光ディスクに対してデータを記録または再生する光ディスク装置におけるディスク面の判別方法であって、
前記光ディスク装置に装着された前記光ディスクがBD、CD、DVDの何れであるかを判別する第1のディスク判別ステップと、該第1のディスク判別ステップでの判別の結果、前記光ディスクはDVDであると判別された場合には、DVDディスクのうちで何れの種類であるかを判別する第2のディスク判別ステップと、前記光ディスクは前記レーベルフラッシュ面にレーベルを印刷する方向で前記光ディスク装置に装着されたか否かを判別するレーベルフラッシュ面判別ステップを有し、
該レーベルフラッシュ面判別ステップは、前記光ディスク装置に前記光ディスクが装着された際に、前記光ディスクのレーベルフラッシュ面のドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界に相当する前記光ディスクの半径方向位置の周辺における、前記光ディスクからの再生信号に基づき生成されたトラッキング制御信号の振幅値を取得する信号取得ステップを有し、
該信号取得ステップで取得された前記トラッキング制御信号の振幅値に所定値以上の変化が検出された場合には、前記光ディスクは前記レーベルフラッシュ面にレーベルを印刷する方向で装着されたと判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ディスク面の判別を容易にした光ディスク装置、及び光ディスク装置におけるディスク面の判別方法を提供でき、光ディスク装置の設計や製造の容易化に寄与できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例における光ディスク装置のブロック図である。
【図2A】本発明の一実施例におけるDPD信号の生成部のブロック図である。
【図2B】本発明の一実施例におけるDPD信号の説明図である。
【図3A】本発明の一実施例におけるDPP信号の生成部のブロック図である。
【図3B】本発明の一実施例におけるDPP信号の説明図である。
【図4】本発明の一実施例における光ディスクのレーベルフラッシュ面のエリア配置とOPUの動作を示す図である。
【図5】レーベルフラッシュ面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図である。
【図6】DVD−Rのデータ記録面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図である。
【図7】DVD−RAMのデータ記録面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図である。
【図8】DVD−ROMのデータ記録面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図である。
【図9】本発明の一実施例における光ディスク判別方法の第1のフローチャートである。
【図10】本発明の一実施例における光ディスク判別方法の第2のフローチャートである。
【図11A】本発明の一実施例における光ディスク判別方法の第3のフローチャートである。
【図11B】図11Aにおける判定条件を示す図である。
【図12】本発明の一実施例におけるOPUの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例につき図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例における光ディスク装置のブロック図である。記録媒体である光ディスク101は、例えばDVDのディスクである。もちろん、DVD−Rのように一回のみ記録が可能な追記型、DVD−RAMのような書換え型、DVD−ROMのような読取り専用型のいずれであっても良い。 装着された光ディスク101は、ディスクモータ105により所定の回転速度(例えば、データを記録再生する位置において所定の線速度となる回転速度)で回転駆動される。そのためのディスクモータ制御信号115は、DSP(Digital Signal Processor)109が含むサーボ部113で生成され、増幅器108で電力増幅されたうえでディスクモータ105に供給される。なお、サーボ部113が前記ディスクモータ制御信号115を生成するために、回転数検出回路106が設けられており、回転数検出回路106が発生するディスクモータ105の回転数を示す信号がDSP109に供給されている。
【0013】
光ピックアップ102は対物レンズ104を介して、レーザ光束を光ディスク101の記録面に照射し、データを記録または再生する。
光ピックアップ102は、スレッド機構に搭載されており、スレッドモータ103の回転に伴い、光ディスク101上の半径方向に移動して所定のトラック位置においてデータの記録再生を行う。このためのスレッドモータ制御信号118はサーボ部113で生成され、増幅器108で電力増幅されてスレッドモータ103に供給される。
また、対物レンズ104は電磁力を用いたトラッキングアクチュエータ119とフォーカスアクチュエータ120(図1では煩雑化を避けるため、119と120は対物レンズ104を駆動する方向のみ示す)に搭載されている。
【0014】
トラッキングアクチュエータ119には、サーボ部113で生成され増幅器108で電力増幅されたトラッキングアクチュエータ制御信号116が供給され、これに基づき対物レンズ104は、レーザ光束が光ディスク101の所定の記録トラック上を正しくトレースするよう、光ディスク101に対する半径方向(トラッキング方向)の位置を微調整される。また、フォーカスアクチュエータ120には、サーボ部113で生成され増幅器108で電力増幅されたフォーカスアクチュエータ制御信号117が供給され、これに基づき対物レンズ104は、レーザ光束が光ディスク101の所定の記録トラック上に正しくフォーカスするよう、光ディスク101に対する垂直方向(フォーカス方向)の位置を微調整される。
【0015】
光ピックアップ102が含む光検出器121は、前記レーザ光束の光ディスク101からの反射光を検出し、光ディスク101に記録されていた情報信号を検出して電気信号に変換する。検出された情報信号は信号処理部107に供給される。信号処理部107は、AFE(Analog Front End)回路とも呼ばれ、ディジタル記録であっても本質的にはアナログ信号として扱うべき段階における前記情報信号の処理を行う。即ち信号処理部107は、前記情報信号を演算処理して、例えばトラッキング制御用のDPD信号とDPP信号、フォーカス制御用のDAD(Differential Astigmatism Detection)信号を生成し、DSP109が含むサーボ部113に供給する。サーボ部113は、供給されたDPD信号、DPP信号、DAD信号に基づきトラッキング用とフォーカス用のサーボ信号、即ち先のトラッキングアクチュエータ制御信号116とフォーカスアクチュエータ制御信号117を生成し、増幅器108を介して光ピックアップ102に供給し、前記したトラッキング動作とフォーカス動作を制御する。
【0016】
また信号処理部107は、光ディスク101に対してデータを記録再生した際の振幅や位相の周波数特性を等化したうえで、等化されたデータをDSP109が含むデコーダ部112に供給する。デコーダ部112は、光ディスク101に記録されていた情報信号の再生処理を行う。例えば、光ディスク101に記録する以前に情報信号に施されたデータ圧縮処理とは逆の伸張処理を行い、元の情報信号をデコードする。なお、先の信号処理部107は、DSP109と同じ半導体チップ上に集積されることがある。
【0017】
以上述べた光ディスク装置の動作は、マイコン(マイクロコンピュータ)111が生成する制御信号に基づいて行われる。なお、マイコン111もDSP109と同じ半導体チップ上に集積されることがある。以下では、マイコン111を制御部111と記述することがある。
また、例えばユーザからの動作指令などは、光ディスク装置の上位装置が有するホストコンピュータ114で生成される。ホストコンピュータ114で生成された指令信号は、DSP109が含むI/F(インタフェース)部110が上位装置と光ディスク装置の間の通信を仲介することで伝達される。
【0018】
次に図2A、図2B、図3Aと図3Bを用いて、信号処理部107におけるトラッキング制御用のDPD信号とDPP信号の生成方法について説明する。DPD信号とDPP信号は、図1の光ピックアップ102に供給されるトラッキングアクチュエータ制御信号116に相当する。まずDPD信号に関して述べる。
図2Aは、本発明の一実施例におけるDPD信号の生成部のブロック図である。
図2Bは、本発明の一実施例におけるDPD信号の説明図である。
【0019】
前記したとおり光ピックアップ102は、光ディスク101で反射されたレーザ光を検出するための光検出器121を有する。光検出器121は、後記するように主検出器と2つの副検出器を有することが多い。ここ述べるDPD信号は、主検出器で検出された信号に基づいて生成される。光ディスク101における記録トラックのトラックピッチをTrとすると、主検出器はトラックの中心に対してほぼ±Tr/2の範囲からの反射光を検出している。また主検出器は、4つの検出エリアを有している。このため、以下では主検出器を4分割光検出器と呼ぶ。信号処理部107は、これら4つの受光エリアにおいて受光されたレーザ光に基づいて得た電気信号を演算し、DPD信号を生成している。
【0020】
図2Aにおいては、上半分にはDPD信号の生成部の回路ブロック構成を、下半分には光ディスク101におけるレーザ光のレーザスポット210及び記録された情報に応じたピット211と、生成される信号の関係を示している。例えば4分割光検出器201におけるA、B、C、Dと記した4つの検出エリアにおいて検出されたレーザ光に基づく電気信号を、同じくA、B、C、Dと表す。
まず加算器202で演算して(A+C)を生成し、加算器203で演算して(B+D)を生成する。この段階ではアナログ信号であるが、次に各々を二値化回路204及び205で二値化された信号とする。(A+C)を二値化した信号をS1a、(B+D)を二値化した信号をS1bとする。
【0021】
図2Aの下半分の図においてレーザ光のレーザスポット210は、光ディスク上のピット211を左から右方向に照射しながら進行している。左側から順に説明する。
先ずレーザスポット210の中心が、ピット211(ピットでは他の部分よりも反射光が小さい)の中心に対して、一方向(図で下方向)にずれていた場合を考える。ピット211を通過する際に、A及びBの検出エリアは、C及びDの検出エリアよりも検出される光が小さくなる。しかもピットの開始部分ではBはAよりも先に小さくなり、ピット終了部分ではBはAよりも先に大きくなる。このため2値化されたS1aは、S1bに対してレーザスポット1個分に対応した時間だけ、High(検出光大)からLow(検出光小)、またLowからHighへ遷移するタイミングが遅れる。
【0022】
一方、レーザスポット210の中心が、ピット211の中心に対して、残る一方向(図で上方向)にずれていた場合を考える。C及びDの検出エリアは、A及びBの検出エリアよりも検出する光が小さくなる。しかもピットの開始部分ではCはDよりも先に小さくなり、ピット終了部分ではCはDよりも先に大きくなる。このため2値化されたS1aは、S1bに対してレーザスポット1個分に対応した時間だけ、High(検出光大)からLow(検出光小)、またLowからHighへ遷移するタイミングが進む。
【0023】
前記したS1aとS1bを位相比較器206に供給する。位相比較器206は、供給された二値信号S1aとS1bを演算して二値信号S2aとS2bを出力する。その際、S1aとS1bの位相を比較してS1bの方が進んでいる場合には、S1aとS1bの排他的論理和を求めてS2b側に出力する。S1aとS1bの位相を比較してS1aの方が進んでいる場合には、S1aとS1bの排他的論理和を求めてS2a側に出力する。即ち、S1aとS1bのいずれの位相が進んでいるかに応じて、S1aとS1bの位相差を表す双方の排他的論理和信号を、S2aかS2bのいずれかに出力し、各々LPF(Low Pass Filter)207と208に供給する。LPF207、208で必要な周波数帯域に帯域制限(即ち、時間軸方向に積分)されたS2aとS2bは、減算器209で互いに減算される。減算器209の出力に得る信号がDPD信号である。
【0024】
図2Bで示すように、S2aの積分値とS2bの積分値の大小関係に応じて、極性と絶対値が変わるDPD信号を得ることができる。図2BにおけるDPD信号の中心がトラッキング中心である。DPD信号は図1のトラッキングアクチュエータ信号116の一つであり、レーザスポット210が光ディスク上のピット211の中心をトラッキングするために機能している。
なお、図2Aの加算器203、204から減算器209の各構成要素は、図1の信号処理部107が有することが多い。
【0025】
次に、DPP信号に関して述べる。
図3Aは、本発明の一実施例におけるDPP信号の生成部のブロック図である。
図3Bは、本発明の一実施例におけるDPP信号の説明図である。
DPP信号の生成には、前記した主検出器と副検出器の双方が関係している。副検出器は、ここでは光ディスク101の記録トラックの線速度方向に2分割された検出エリアを有するものとする。図3Aにおいて、主検出器は4分割光検出器301(図2Aの4分割光検出器201と同様であって良い)、二つの副検出器は2分割光検出器302と303である。なお、副検出器の検出エリアも4分割であって良く、本発明は何れであっても適用できる。DPP信号は前記したDPD信号とは異なり、光ディスク101からの反射光が光検出器の線速度方向において、その中心に位置するように制御するための信号である。
【0026】
4分割光検出器301における各検出エリアA、B、C、Dでの検出信号より、加算器304で得た(A+D)と、加算器305で得た(B+C)を、減算器307で減算して得た信号がMPP(Main beam Push Pull)信号である。また、一方の2分割光検出器302における検出エリアEとFでの検出信号より減算器306で得た(E−F)と、残る一方の2分割光検出器303における検出エリアGとHでの検出信号より減算器308で減算して得た(G−H)を、が加算器309で加算し、増幅器(係数Kと乗算する係数器)310で増幅して得た信号がSPP(Sub beam Push Pull)信号である。前記MPP信号とSPP信号を減算器311で減算して得る信号がDPP信号である。
【0027】
図3Bで示すように、光ディスク101からの反射光が光検出器の線速度方向において、その中心が図面上で左側にずれていれば、A、D、E、G側での検出信号が大きくなり、反対に右側にずれていれば、B、C、F、H側での検出信号が大きくなる。
このため、光ディスク101からの反射光が照射する、光検出器の線速度方向における光検出器の中心に対する位置に応じて、極性と絶対値が変わるDPP信号を得ることができる。DPP信号は、先のDPD信号と同様に、図1のトラッキングアクチュエータ信号116の一つである。
【0028】
加算器304、305、309、減算器306、307、308、311、増幅器310は、図1の信号処理部107が有することが多い。
また、増幅器310の増幅度(減衰度)は、前記した線速度方向のずれに対するDPP信号の中心値の変動が最小となるよう、即ち、DPP信号の振幅が最小となるように定めると良い。
図2Aと図3Aで示したDPD信号、DPP信号、MPP信号、SPP信号を、以下ではトラッキング制御信号と総称することがある。
【0029】
次に、光ディスクのレーベルフラッシュ面とOPUの動作について説明する。
図4は、本発明の一実施例における光ディスクのレーベルフラッシュ面のエリア配置とOPUの動作を示す図であり、横方向は光ディスクの半径方向を示す。前記したように現在は、レーベルフラッシュ面を有する光ディスクはDVDディスクの一部である。DVDディスクのレーベルフラッシュ面においては、その中心からの半径方向位置で24.0mmから内側にはインフォメーションエリアが、24.0mmから約58mm(外周)にかけてはドローイングエリアがある。このうちインフォメーションエリアには、ユーザが初めて使う段階で既にデータが記録されているので、ピットが存在する。
【0030】
さらに、ドローイングエリアとは光ディスクのタイトルなどを印刷するためのエリアであるが、実際にユーザが描画する領域は25mmから外側である。なお図4においては、図示する関係上、ドローイングエリアの内周側からインフォメーションエリアにかけての大きさを、他の部分よりも拡大して示している。
【0031】
従来のディスク面の判別では例えば、図4の24〜25mmの位置にOPUを位置させて、OPUから出力されるDPD信号とDPP信号の振幅が、ともに所定値よりも小さい場合には、OPUにはレーベルフラッシュ面が対向していると判定していた。この場合、公差を考えれば半径方向のOPUの位置精度を、例えば0.5mm以内とする必要がある。これは、光ディスクや光ディスク装置における公差も含めて考えると厳しい値であり、位置精度を緩和できる判別方法が望まれていた。
【0032】
そこで本実施例においては、図4に記したように例えば25mmの位置をOPUの基準位置とすると、矢印で示すように基準位置からいくらか外周側へOPUを移動した後、逆に内周側に向けインフォメーションエリアに入るまで移動させる。その間にOPUから出力されるDPD信号とDPP信号の振幅に所定値以上の変化があるか否かで、ディスク面がレーベルフラッシュ面であるか否かを判定することを、本実施例の一つの特徴としている。これにより、ディスク面の判別をする際に、OPUの位置精度を前記したように高くする必要はなく、例えば4〜5mm程度移動させながら判別すれば良いので、ディスク面の判別を容易にすることができるという効果がある。
前記したOPUの移動とディスク面の判定は、図1のDSP109が含むサーボ部113がスレッドモータ103を制御して、光ピックアップ102の位置を光ディスクの半径方向に移動させることにより実施することができる。
【0033】
次に前記した方法における、DPP信号とDPD信号の振幅の変化について説明する。
図5は、レーベルフラッシュ面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図であり、OPUの位置をインフォメーションエリアからドローイングエリアの全体にわたり変化させた場合を示している。DPP信号とDPD信号とも二通りを示しているが、いずれも上半分がドローイングエリアの描画可能領域に何も描画されていない状態を、下半分が描画可能領域全体に文字や絵が描画された状態を示している。なお、レーベルフラッシュ面がOPUに対向するように光ディスクが光ディスク装置に挿入された場合においても、本実施例では、光ディスクがDVDディスクであることを前提にして、サーボ部113はフォーカスサーボをかけながら光ディスク装置を制御している。
【0034】
図5から分かるようにインフォメーションエリアにおいては、描画する前後のいずれでもDPP信号、DPD信号とも振幅が大きい。これは、インフォメーションエリアには前記したように予め信号が記録されているためである。ドローイングエリアにおいては、描画可能領域に描画された後は双方の振幅は大きいが、描画されないエリアでは双方の振幅は小さい。これは、描画可能領域に描画されたことによりノイズ状の信号が検出されるためである。なお、本実施例においては描画された後の描画可能領域における前記振幅が小さい場合でも、目的とするディスク面の判別には影響しない。したがい、先に図4で説明したようにOPUを移動させると、インフォメーションエリアとドローイングエリアの境界(24.0mm)付近では、
DPP信号振幅(Information Area) > DPP信号振幅(Drawing Area)
・・・・・・・・・(式1)
DPD信号振幅(Information Area) > DPD信号振幅(Drawing Area)
・・・・・・・・・(式2)
の双方が成り立つ。言い換えれば、OPUの移動中にDPP信号、DPD信号とも所定値以上の振幅変化が検出される。該振幅変化は、図1におけるサーボ部113が、信号処理部107の出力を受けて検出する。
【0035】
以上の事項は、OPUが対向する面がデータ記録面である場合には異なる結果となる。これを図6〜図8に基づいて説明する。
図6は、DVD−Rのデータ記録面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図である。DVD−R、DVD−RAM、DVD−ROMなどDVDにおいては、半径方向で24.0mmの位置を境界に、内周側にはディスクの属性や管理データを記録するリードインエリアが、外側にはユーザが使用するデータを記録する(DVD−ROMでは既にデータが記録された)データエリアがある。
【0036】
DVD−Rにおいては、リードインエリアではDPP信号、DPD信号ともユーザデータの記録の有無に関わらず振幅が至る所で大きい。これは、リードインエリアには予めデータが記録されているためである。一方、データエリアでは、DPP信号はユーザデータの記録の有無に関わらず振幅が至る所で大きいが、DPD信号の振幅はユーザデータの記録前では小さく、記録後では大きい。これは、DVD−Rのデータエリアではユーザデータを予め設けられたグルーブ(溝)に記録するためである。なお、ユーザデータはデータエリアの内側から順次記録されるので、追記を繰返すと次第にDPD信号の振幅が大きいエリアが外側へ広がっていく。図6は光ディスクの最外周までユーザデータが記録された状態を示している。
【0037】
したがい、DVD−Rのデータ記録面において、先に図4で示したようにOPUを移動させた場合には、リードインエリアとデータエリアの境界(24.0mm)付近で、少なくも前記した(式1)は成立しない。即ち、OPUの移動中に少なくもDPP信号には所定値以上の振幅変化が検出されることはない。よって、DVD−Rにおいてレーベルフラッシュ面とデータ記録面のいずれがOPUと対向しているかを判別することができる。
【0038】
図7は、DVD−RAMのデータ記録面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図である。
DVD−RAMにおいては、リードインエリアではユーザデータの記録の有無に関わらず、DPP信号の振幅が小さく、DPD信号の振幅が大きい。これは、DVD−RAMのリードインエリアにはランド(山)やグルーブ(溝)がないためである。一方、データエリアでは、DPP信号、DPD信号ともユーザデータの記録の有無に関わらず、振幅が大きい。これは、DPP信号においては、DVD−RAMのデータエリアにはデータ記録用に用いるランドとグルーブの双方があるためである。また、DPD信号においては、PID(Postscribed Identify)領域にピットが存在するためである。
【0039】
したがい、DVD−RAMのデータ記録面において、先に図4で示したようにOPUを移動させた場合には、前記した(式1)と(式2)は成立しない。即ち、OPUの移動中にDPP信号とDPD信号には所定値以上の振幅変化が検出されることはない。よって、DVD−RAMにおいてもレーベルフラッシュ面とデータ記録面のいずれがOPUと対向しているかを判別することができる。
【0040】
図8は、DVD−ROMのデータ記録面におけるDPP信号とDPD信号の振幅を示す図である。周知のとおりDVD−ROMはリードインエリアやデータエリアにデータが記録された状態で供給される。このため、DPP信号、DPD信号とも振幅はリードインエリア、データエリアとも大きい。
したがい、DVD−ROMのデータ記録面において、先に図4で示したようにOPUを移動させた場合には、前記した(式1)と(式2)は成立しない。また、OPUの移動中にDPP信号とDPD信号に所定値以上の振幅変化が検出されることはない。よって、DVD−ROMにおいてもレーベルフラッシュ面とデータ記録面のいずれがOPUと対向しているかを判別することができる。
なお、前記したDVDディスクのほかに書換え型のDVD−RWがあるが、DPPやDPDの振幅について基本的には図6のDVD−Rと同様である。
【0041】
以上述べたとおり、各種のDVDのデータ記録面において、(式1)と(式2)が同時に満たされることはなく、また、OPUの移動中にDPP信号とDPD信号の双方に、所定値以上の振幅変化が検出されることはない。従って本実施例によれば、光ディスク装置に光ディスクが挿入された際に、OPUを移動させDPP信号とDPD信号の双方に所定値以上の振幅変化を検出した場合に、光ディスクのレーベルフラッシュ面がOPUに対向するように挿入されたと判定できる。この判定動作のためにOPUの位置精度が高く要求されることはなく、ディスク面の判別を容易にすることができるという効果がある。
【0042】
次に、光ディスク装置における光ディスクの判別方法の全体を説明し、本実施例の全体の中での位置づけを明らかにする。図4から図8までの説明では、光ディスク装置に挿入された光ディスクがDVDディスクであることを前提として説明した。これは、レーベルフラッシュ面が存在するのが、一部のDVDディスクであることによる。以下では、まず挿入された光ディスクがBD、CD、DVDのいずれであるかを判別するという、ディスク判別の最初の段階から始まる全体のフローを説明する。
図9は、本発明の一実施例における光ディスク判別方法の第1のフローチャートである。
【0043】
ユーザが光ディスク装置に光ディスクを装着すると、サーボ部113は光ピックアップ102を光ディスク上の所定の初期位置に位置させ、記録トラックにフォーカスを結ぶよう対物レンズ104に対してフォーカス制御を行う(ステップS91、以下“ステップ”の表示を略す)。
次に制御部111は、S92と記した第1のディスク判別(図中のディスク判別(1))を行う。第1のディスク判別S92は、装着された光ディスクがBD、CD、DVDの何れであるかを判別するものであって、次のS921とS922を含んでいる。この光ディスクの種類を判別する方法にはいくつかの方法が考えられるが、ここでは一例としてBDであるか否かを先に判別する方法を示す。
【0044】
制御部111は、装着された光ディスクがBDであるか否か(BDのデータ記録面がOPTに向けられているか否か)を判別する(S921)。BDである場合には(図中のYes)、S95に到り、光ディスク装置やユーザが指示する動作をBDに対して行う。BDでない場合には(図中のNo)、S922に到る。
光ディスクがBDであるか否かの判別は、例えば次のようにする。制御部111は、光ピックアップ102にBD用の青色レーザ光を光ディスクに対して照射させ、光ディスク表面及びデータ記録面からの反射光の時間差を取得する。例えば図2Aの光ピックアップの検出エリアA、B、C、Dからの和信号において、前記時間差を検出すると良い。データ記録面の光ディスク表面からの距離(板厚)は、BD、DVD、CDの順で0.1mm、0.6mm、1.2mmであり、最も位置が近く時間差の小さいBDを正確に他のディスクと区別することができる。
【0045】
次にS921でBDではないと判別された場合には、制御部111は、装着された光ディスクがCDであるか否か(CDのデータ記録面がOPTに向けられているか否か)を判別する(S922)。CDである場合には(図中のYes)、S94に到り、光ディスク装置やユーザが指示する動作をCDに対して行う。CDでない場合には(図中のNo)、S93に到る。
光ディスクがCDであるか否かの判別は、例えば次のようにする。制御部111は、光ピックアップ102にCD用の近赤外レーザ光とDVD用の赤色レーザ光を順次光ディスクに対して照射させ、信号処理部107が生成したフォーカスエラー信号、例えばCAD(Conventional Astigmatism Detection)信号の振幅を取得する。光ディスクがCDである場合には、DVD用のレーザ光よりもCD用のレーザ光を照射した時の方が、フォーカスエラー信号の振幅は大きい。
【0046】
反対にDVDである場合には、CD用のレーザ光よりもDVD用のレーザ光を照射した時の方が、フォーカスエラー信号の振幅は大きい。このため、各レーザ光を照射した時のフォーカスエラー信号の振幅を取得することにより、制御部111は光ディスクがCDであるか否かを判別することができる。
なお、図9のフローでは装着した光ディスクが、前記した3種類のいずれかであることを前提としている。実際の光ディスク装置では、例えば3種類のいずれにも相当しない場合に、光ディスクを装置外に排出するようなステップも必要であるが、本発明とは直接関係がないために記載を省略する。また、S94とS95の処理については、やはり本発明とは直接関係しないために詳しい記載を省略する。以下では、本実施例の特徴の一つであるレーベルフラッシュ面の判別を含むS93に関して、説明を続ける。
【0047】
図10は、本発明の一実施例における光ディスク判別方法の第2のフローチャートであり、図9のDVD処理(S93)の内容を示している。
まずサーボ部113は、回転数検出回路106が生成する光ディスク101の回転速度に係る情報に基づき、光ディスク101が所定の速度で回転するようディスクモータ105を制御する(S101)。
【0048】
次に制御部111は、光ピックアップ102に指示してDVD用の赤色レーザ光を光ディスク101に照射させる(S102)。前記レーザ光の反射光を用いて信号処理部107が生成したフォーカスエラー信号に基づき、サーボ部113は対物レンズ104が光ディスク101の記録面に焦点を結ぶよう、光ピックアップ102を制御する(S103)。
次に制御部111は、S104と記した第2のディスク判別(図中のディスク判別(2))を行う。第2のディスク判別S104は、装着された光ディスクがDVDディスクのうち、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWのいずれかであるか否か(いずれかのデータ記録面がOPTに向けられているか否か)を判別するものであって、次のS1041、S1042、S1043とS1044を含んでいる。これらの光ディスクの種類を判別する方法、特に判定する順序にはいくつかの方法が考えられるが、ここでは一例を示す。
【0049】
まず、DVD−Rであるか否かを判別して(S1041)、DVD−Rである場合には(図中のYes)、S1046に到り、光ディスク装置やユーザが指示する動作をDVD−Rに対して行う。DVD−Rでない場合には(図中のNo)、S1042に到りDVD+Rであるか否かを判別する。
以下、S1044までは同様であるために詳しくは繰返さないが、S1042でDVD+R、S1043でDVD−RW、S1044でDVD+RWと判別された場合には各々S1045、S1048、S1047に到り、いずれにも該当しない場合にはS105に到る。なおS1045〜S1048の処理については、本発明とは直接関係しないために詳しい記載を省略する。
【0050】
以上S1041〜S1044における判別のフローについては、分かり易さを優先するためにシリーズのフローで示したが、実際には次のように記録トラックのウォブル周波数と、DPP信号の振幅を検出して行うフローであることが多い。
光ディスク上の記録トラックが有するうねりに応じて、光ピックアップが検出する再生信号は所定のウォブル周波数を有する。ウォブル周波数は、DVD−RとDVD−RWでは140.645kHz、DVD+RとDVD+RWでは817kHzである。このため、ウォブル周波数を知ることにより、制御部111は+型と−型のディスクを判別することができる。
【0051】
一方、DVD−RとDVD−RW、或いは、DVD+RとDVD+RWとでは、いずれも前者の方がデータ記録面でのレーザ光の反射率が大きい。このため、信号処理部107が生成する図3Aで示したDPP信号の振幅は、前者の方が大きい。このため、DPP信号の振幅を知ることにより、制御部111はR型とRW型のディスクを判別することができる。
以上のように、ウォブル周波数の判定とDPP信号の振幅の判定を組合せることにより、S1041〜S1044で示した例と等価なディスク判別をすることができる。
【0052】
次に制御部111は、S105と記したレーベルフラッシュ面の判別を行う。S105は、装着された光ディスクがDVDディスクのうち、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWのいずれでもないと判定された場合(これらの光ディスクが装着された場合でも、データ記録面が光ピックアップ102に向けられていない場合もこれに含む)に、光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面であるか否かを判別するものであって、次のS1051を含んでいる。
光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面であるか否かを判別して(S1051)、レーベルフラッシュ面である場合には(図中のYes)、S1052に到り、光ディスク装置やユーザが指示する動作をレーベルフラッシュ面に対して行う。例えばユーザが作成したレーベルを印刷する。レーベルフラッシュ面でない場合には(図中のNo)、S106に到る。ここで、S106以下のステップを説明する前に、図11A、図11Bと図12を用いて、S1051における光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面であるか否かを判定する方法の一例を説明する。
【0053】
図11Aは、本発明の一実施例における光ディスク判別方法の第3のフローチャートであり、図10のレーベルフラッシュ面の判別(S1051)の内容を示している。
図11Bは、図11Aにおける判定条件を示す図である。
図12は、本発明の一実施例におけるOPUの動作を示す図であり、先に図4で一例を示したOPUの動作を、3つの場合について示したものである。
【0054】
図11Aで、まずサーボ部113はスレッドモータ103に制御信号を送り、光ピックアップ102の光ディスク101における半径方向の位置を、基準位置より外周方向に移動させる(S1101)。図12では、光ピックアップ102の初期位置が半径方向で25.0mmの場合(図4と同じ)、24.0mmの場合(インフォメーションエリアとドローイングエリアの境界)、26.0mmの場合(ドローイングエリアの描画可能領域)にある場合につき、光ピックアップ102の移動方法の一例を示している。即ち、光ピックアップは先ず初期位置より所定量だけ外周方向に移動される。所定量とは、一例として0.7mm程度であれば良い。
【0055】
なお、図12において初期位置として3箇所を示した。その理由は次のとおりである。即ち、初期位置を25.0mmとして設計しても、機構系部品の寸法誤差やOPUの位置出し精度により、OPUは実際にはその前後にずれて位置してしまう。実際には±1mm程度のずれがあることを前提にして設計する必要がある。このため、24.0mmと26.0mmとなった場合での動作も、同じ図で示している。
【0056】
次いで制御部111は、内蔵する測定回数のカウンタの数値Nを0と初期化する(S1102)。図12では数値Nの値を光ピックアップ102の位置に応じて図示している。
制御部111は、前記カウンタの数値Nを0とした位置において、信号処理部107が生成するDPD信号の振幅を測定する(S1103)。制御部111は、測定したDPD信号の振幅をN番目の(例えば0番地の)DPD信号振幅測定値メモリに格納する(S1104)。該メモリは制御部111に外付けされていても良く、また内蔵されていても良い。
【0057】
さらに制御部111は、前記カウンタの数値Nを0とした位置において、信号処理部107が生成するDPP信号の振幅を測定する(S1105)。制御部111は、測定したDPD信号の振幅をN番目の(例えば0番地の)DPP信号振幅測定値メモリに格納する(S1106)。該メモリも制御部111に外付けされていても良く、また内蔵されていても良い。
N=0とした位置におけるDPD信号とDPP信号の測定が終わると、制御部111は、前記カウンタの数値に1を加算して新たな数値Nとする(S1107)。
【0058】
次いで、サーボ部113はスレッドモータ103に制御信号を送り、光ピックアップ102の光ディスク101における半径方向の位置を、内周方向に所定量だけ移動させる(S1108)。図12では、所定量として0.4mm程度である例を示している。
制御部111は、前記カウンタの数値Nの位置において、信号処理部107が生成するDPD信号の振幅を測定する(S1109)。制御部111は、測定したDPD信号の振幅をN番目の(例えば前記0番地以外の)DPD信号振幅測定値メモリに格納する(S1110)。
【0059】
さらに制御部111は、前記カウンタの数値Nの位置において、信号処理部107が生成するDPP信号の振幅を測定する(S1111)。制御部111は、測定したDPD信号の振幅をN番目の(例えば前記0番地以外の)DPP信号振幅測定値メモリに格納する(S1112)。
【0060】
次いで制御部111は、前記メモリに格納されたDPD信号とDPP信号の振幅測定値が、図11Bで示す条件(1)を満足するか否かを判定する(S1113)。S1113で前記振幅測定値が条件(1)を満足する場合には(図中のYes)、後に説明するように、制御部111は、光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面であると判定する(S1117)。S1113で前記振幅測定値が条件(1)を満足しない場合には(図中のNo)、S1114に到る。
【0061】
S1114において制御部111は、前記メモリに格納されたDPD信号とDPP信号の振幅測定値が、図11Bで示す条件(2)を満足するか否かを判定する。S1114で前記振幅測定値が条件(2)を満足する場合には(図中のYes)、後に説明するように、制御部111は、光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面であると判定する(S1117)。S1113で前記振幅測定値が条件(2)を満足しない場合には(図中のNo)、S1115に到る。
【0062】
S1115において制御部111は、前記DPD信号とDPP信号の測定が光ディスク上の異なる位置(図12では、ドローイングエリアからインフォメーションエリアにかけて、例えば0.4mmずつ半径方向に隔てた位置)に対して所定の回数だけ行われたか否かを判定する。即ち、現在のカウンタの数値Nが所定の数に達しているか否かを判定する。所定の回数とは、光ピックアップ102がドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界を、公差も含めて通過できる回数で定めれば良い。図12では、例えば9を所定の回数とすれば良い。
【0063】
S1115で、測定が所定の回数だけ行われたと判定された場合には(図中のYes)、制御部111は、光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面ではないと判定する(S1116)。また、測定がまだ所定の回数だけ行われていないと判定された場合には(図中のNo)、S1107に戻り、制御部111はさらに光ピックアップ102を所定量だけ内周側へ移動した位置における、DPD信号とDPP信号の測定を繰返す。
S1116またはS1117で、レーベルフラッシュ面の判別を終了した後は、光ピックアップ102の位置を初期位置に移動して(S1118)、先の図10のS106に到る。
【0064】
次に、図11Bを用いて、図11AのS1113における条件(1)と、S1114における条件(2)について詳しく説明する。
条件(1)では、まず前記カウンタの数値Nが3以上であることを条件とする。Nが3以上である場合に、以下のようにして、DPD信号とDPP信号を用いたディスク面の判別を行う。
現在の数値Nにおける前記メモリに格納されたDPD信号の振幅と、2回前である数値N−2における前記メモリに格納されたDPD信号の振幅との比を制御部111が求めてDPD比率(1)とする。また、1回前である数値N−1における前記メモリに格納されたDPD信号の振幅と、2回前である数値N−2における前記メモリに格納されたDPD信号の振幅との比を制御部111が求めて、DPD比率(2)とする。
DPP信号に関してもDPD信号と同様に、現在の数値Nにおける前記メモリに格納されたDPP信号の振幅と、2回前である数値N−2における前記メモリに格納されたDPP信号の振幅との比を制御部111が求めてDPP比率(1)とする。また、1回前である数値N−1における前記メモリに格納されたDPP信号の振幅と、2回前である数値N−2における前記メモリに格納されたDPP信号の振幅との比を制御部111が求めて、DPP比率(2)とする。
【0065】
前記したようにNが3以上であり、即ち測定した回数が前記した比を求めるうえで充分であり、しかも、DPD比率(1)とDPD比率(2)のいずれもが所定の閾値(図11Bに記載のDPD閾値であって、例えば2とすると良い)よりも大きく、しかも、DPP比率(1)とDPP比率(2)のいずれもが所定の閾値(図11Bに記載のDPP閾値であって、例えば2とすると良い)よりも大きい場合には、条件(1)を満たし、先のS1117で光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面であるとされる。
【0066】
例えば図12において、光ピックアップ102が24.0mmの位置を初期位置にした場合、まず24.7mmの位置から0.4mmおきで内周側に向けて移動しながら、制御部111はDPD信号とDPP信号を測定する。この時、数値Nが1と2の間でドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界を通過し、レーベルフラッシュ面であれば条件(1)を満足する。
【0067】
次に、光ピックアップ102の初期位置がドローイングエリアである場合、例えば図12で示した初期位置が25.0mmや26.0mmである場合には、前者では数値Nが4と5の間で、後者では6と7の間でドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界を通過し、レーベルフラッシュ面であれば条件(1)を満足する。
【0068】
条件(2)では、まず前記カウンタの数値Nが4以上であることを条件とする。Nが4以上である場合に、以下のようにして、DPD信号とDPP信号を用いたディスク面の判別を行う。
現在の数値Nにおける前記メモリに格納されたDPD信号の振幅と、3回前である数値N−3における前記メモリに格納されたDPD信号の振幅との比を制御部111が求めてDPD比率(3)とする。また、1回前である数値N−1における前記メモリに格納されたDPD信号の振幅と、3回前である数値N−3における前記メモリに格納されたDPD信号の振幅との比を制御部111が求めて、DPD比率(4)とする。
DPP信号に関してもDPD信号と同様に、現在の数値Nにおける前記メモリに格納されたDPP信号の振幅と、3回前である数値N−3における前記メモリに格納されたDPP信号の振幅との比を制御部111が求めてDPP比率(3)とする。また、1回前である数値N−1における前記メモリに格納されたDPP信号の振幅と、3回前である数値N−3における前記メモリに格納されたDPP信号の振幅との比を制御部111が求めて、DPP比率(4)とする。
【0069】
前記したようにNが4以上であり、即ち測定した回数が前記した比を求めるうえで充分であり、しかも、DPD比率(3)とDPD比率(4)のいずれもが所定の閾値(図11Bに記載のDPD閾値であって、例えば2とすると良い)よりも大きく、しかも、DPP比率(3)とDPP比率(4)のいずれもが所定の閾値(図11Bに記載のDPP閾値であって、例えば2とすると良い)よりも大きい場合には、条件(2)を満たし、先のS1117で光ピックアップ102に向けられた面がレーベルフラッシュ面であるとされる。
【0070】
例えば図12において、光ピックアップ102が25.0mmの位置を初期位置にした場合、まず25.7mmの位置から0.4mmおきで内周側に向けて移動しながら、制御部111はDPD信号とDPP信号を測定する。この時、数値Nが4と5の間でドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界を通過し、レーベルフラッシュ面であればNが6以上で条件(2)を満足する。同様に、光ピックアップ102が26.0mmの位置を初期位置にした場合、まず26.7mmの位置から0.4mmおきで内周側に向けて移動しながら、制御部111はDPD信号とDPP信号を測定する。この時、数値Nが6と7の間でドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界を通過し、レーベルフラッシュ面であればNが8以上で条件(2)を満足する。
【0071】
S1113の条件(1)と、S1114の条件(2)という二つのステップを設けている理由は次のとおりである。例えば条件(1)のN−2番目における測定が、偶々インフォメーションエリアとドローイングエリアの境界で行われた場合、正しい測定値を得られないことがある。この場合は条件(1)だけで判定すると、レーベルフラッシュ面であってもレーベルフラッシュ面ではないと誤った判定をする可能性がある。そこでS1113で条件(1)を満たさない(図中のNo)と判定された場合には、S1114で条件(2)により、さらに1回前のN−3番目における測定値(ドローイングエリアでの測定値)を用いた判定を行い、前記したような誤判定を防止するようにしている。
【0072】
また、条件(1)と条件(2)に共通して、N番目とN−1番目における測定値を双方とも使用している理由は次のとおりである。即ち、いずれかの測定値しか使わない場合、測定点がDVD−Rのリードインエリアに位置した際は、DVD−Rのデータ記録面をレーベルフラッシュ面と誤って判定することがある。これを避けるため、隣の測定点での値も用いている。リードインエリアは幅が狭いため、測定点の間隔が本実施例のように0.4mm開いていれば、隣り合う測定点の双方がリードインエリアに位置することはなく、前記した誤判定を避けることができる。
【0073】
以上述べたようにレーベルフラッシュ面の判別を終了すると、制御部111は、図10のS106と記した第3のディスク判別(図中のディスク判別(3))を行う。S106は、装着された光ディスクがDVDディスクのうち、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWのいずれでもなく、光ピックアップ102にレーベルフラッシュ面が向けられてはいないと判定された場合に、光ディスクがDVDディスクのうち、DVD−RAMであるか否か(DVD−RAMのデータ記録面がOPTに向けられているか否か)を判別するものであって、次のS1061を含んでいる。
【0074】
DVD−RAMであるか否かを判別して(S1061)、DVD−RAMである場合には(図中のYes)、S1063に到り、光ディスク装置やユーザが指示する動作をDVD−RAMに対して行う。DVD−RAMでない場合には(図中のNo)、残る可能性は光ディスクがDVD−ROMの場合であるので、S1062に到り、光ディスク装置やユーザが指示する動作をDVD−ROMに対して行う。
【0075】
光ディスクがDVD−RAMであるか否かの判別は、例えば次のようにする。制御部111は、信号処理部107が生成したDPD信号におけるTZC(Track Zero Cross)数をカウントする。DVD−RAMではディスクの内周部に存在するPID領域でDPD信号振幅が特に大きくなる。ディスク1周当たりPID領域は内周側で25箇所あるためにTZC数はほぼ25となる。しかし、PID領域以外ではDPD信号の振幅は比較的小さい。一方、DVD−ROMでは至る所の領域でDPD信号の振幅が大きいため、TZC数は極めて大きい値となる。以上のようにTZC数を制御部111がカウントすることにより、DVD−RAMであるか否か(否の場合はDVD−ROMである)を判定することができる。
【0076】
なお、前記したようなDVD−RAMの判定には、他の判定と比較して時間を要するため、ここでは他のディスク判別ステップやレーベルフラッシュ面の判別ステップを経た最後にDVD−RAMの判定ステップを置き、ディスク判別に要する時間を低減するようにしている。さらに、DVD−RAMやDVD−ROMの判別をレーベルフラッシュ面の判別の前に置くと、レーベルフラッシュ面をDVD−RAMのデータ記録面と誤って判定する問題がある。本実施例ではこの問題も考慮して判定の順番を決めている。
【0077】
また、レーベルフラッシュ面の判定を、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWの判定よりも後ろにする理由は、レーベルフラッシュ面の判定の方が多くの時間を要するからである。この点でも本実施例は、ディスク面の判別に要する時間を低減する考慮がなされている。
ここまで示した実施形態は一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、各種類の光ディスクにおいて、レーベルフラッシュ面の判定を前記した方法とは異なり、DPP信号かDPD信号のいずれか一方のみを用いる方法を用いても良い。双方を用いる方が、稀に起こる誤判定を少なくすることができる。しかし、いずれか一方であっても実用上問題ない場合もある。またDPP信号の代わりに、図3Aで示したMPP信号の振幅を検出する方法を用いる方法も考えられる。このように本発明の趣旨に基づきながら異なる実施形態を考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0078】
101:光ディスク、102:光ピックアップ、107:信号処理部、109:DSP、111:制御部(マイコン)、113:サーボ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記録または再生するためのデータ記録面とレーベルを印刷するためのレーベルフラッシュ面が表裏一体である光ディスクに対してデータを記録または再生する光ディスク装置であって、
前記光ディスクにレーザ光を照射して前記データ記録面に対して前記データを記録または再生し前記レーベルフラッシュ面に対して前記レーベルを印刷する光ピックアップと、
該光ピックアップが再生した信号に基づき前記光ピックアップに対しトラッキング制御をするのためのトラッキング制御信号を生成する信号処理部と、
該信号処理部が生成した前記トラッキング制御信号に基づき前記光ピックアップの前記光ディスクに対するトラッキング位置を制御するサーボ部と、
前記光ディスク装置の動作を制御する制御部を有し、
該制御部は、前記光ディスク装置に前記光ディスクが装着された際に、
前記光ディスクのレーベルフラッシュ面のドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界に相当する前記光ディスクの半径方向位置を通過させるよう前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に所定距離だけ移動させて前記トラッキング制御信号を前記信号処理部から取得し、前記トラッキング制御信号に所定値以上の振幅変化が検出された場合には、前記レーベルフラッシュ面が前記光ピックアップに対向するよう前記光ディスクが前記光ディスク装置に装着されたと判定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、前記制御部が前記判定に用いる前記トラッキング制御信号は、前記信号処理部で生成されるDPD信号/DPP信号/MPP信号のうちの一つ、または、DPD信号とDPP信号の双方、または、DPD信号とMPP信号の双方であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
データを記録または再生するためのデータ記録面とレーベルを印刷するためのレーベルフラッシュ面が表裏一体である光ディスクに対してデータを記録または再生する光ディスク装置におけるディスク面の判別方法であって、
前記光ディスク装置に装着された前記光ディスクがBD、CD、DVDの何れであるかを判別する第1のディスク判別ステップと、
該第1のディスク判別ステップでの判別の結果、前記光ディスクはDVDであると判別された場合には、DVDディスクのうちで何れの種類であるかを判別する第2のディスク判別ステップと、
前記光ディスクは前記レーベルフラッシュ面にレーベルを印刷する方向で前記光ディスク装置に装着されたか否かを判別するレーベルフラッシュ面判別ステップを有し、
該レーベルフラッシュ面判別ステップは、
前記光ディスク装置に前記光ディスクが装着された際に、前記光ディスクのレーベルフラッシュ面のドローイングエリアとインフォメーションエリアの境界に相当する前記光ディスクの半径方向位置の周辺における、前記光ディスクからの再生信号に基づき生成されたトラッキング制御信号の振幅値を取得する信号取得ステップを有し、
該信号取得ステップで取得された前記トラッキング制御信号の振幅値に所定値以上の変化が検出された場合には、前記光ディスクは前記レーベルフラッシュ面にレーベルを印刷する方向で装着されたと判定することを特徴とする光ディスク装置におけるディスク面の判別方法。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスク装置におけるディスク面の判別方法において、
前記第2のディスク判別ステップは、
前記光ディスクがDVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RWのうちの何れかの光ディスクであるか否かの判別を前記レーベルフラッシュ面判別ステップにおけるレーベルフラッシュ面の判別の前に行い、
前記光ディスクがDVD−RAM、DVD−ROMのうちの何れかの光ディスクであるか否かの判別を前記レーベルフラッシュ面判別ステップにおけるレーベルフラッシュ面の判別の後に行うことを特徴とする光ディスク装置におけるディスク面の判別方法。
【請求項5】
請求項3に記載の光ディスク装置におけるディスク面の判別方法において、
前記第2のディスク判別ステップは、
前記信号取得ステップで取得された前記トラッキング制御信号の振幅値の変化を検出する際に、前記光ディスクの半径方向における3箇所以上の振幅値を比較して検出することを特徴とする光ディスク装置におけるディスク面の判別方法。
【請求項6】
請求項3に記載の光ディスク装置におけるディスク面の判別方法において、前記信号取得ステップで振幅値を取得されるトラッキング制御信号は、DPD信号/DPP信号/MPP信号のうちの一つ、または、DPD信号とDPP信号の双方、または、DPD信号とMPP信号の双方であることを特徴とする光ディスク装置におけるディスク面の判別方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−253601(P2011−253601A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128794(P2010−128794)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】