説明

光ディスク装置及びその制御方法

【課題】ノイズ等による同期信号の非検出が発生した場合でも同期を早期に確立し、ウォブル信号検出の信頼性を向上させることができる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る光ディスク装置は、同期信号と後続するデータとからなる所定長のデータ系列がウォブルとして記録されている光ディスクを再生し、或いは記録及び再生する光ディスク装置において、光ディスクのウォブルを読み取りウォブル信号を再生するウォブル再生部と、ウォブル信号に含まれる同期信号を検出する同期検出部と、同期信号の検出の有無に基づいて、同期信号の到来予測位置に同期信号の保護窓を生成する保護窓生成部と、データの誤り検出を行う誤り判定部と、を備え、保護窓生成部は、ウォブル同期検出部から出力される同期検出の有無に関する情報と、誤り判定部から出力されるデータの誤り検出情報に基づいて前記保護窓を生成する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及びその制御方法に係り、特に、ウォブルによってアドレスが記録されている光ディスクを再生する光ディスク及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HD DVD−RやHD DVD−RW等の記録型の光ディスクには、トラックにウォブルと呼ばれるうねりのついた溝が設けられており、うねりを位相変調することによって光ディスクの物理アドレスを記録している。光ディスクに記録・再生を行うときには、このウォブルからウォブル信号を読み出し、その中に変調されている物理アドレスを復調して記録・再生位置を確定している。
【0003】
ウォブル信号には、物理アドレス等のデータ列に先立って同期信号が設けられている。光ディスクから再生されたウォブル信号の中からこの同期信号を検出し、検出した同期信号のタイミングから同期信号に続く物理アドレス等のデータを抽出する仕組みとなっている。同期信号を誤検出すると後続する物理アドレス等のデータを正しく抽出することが出来なくなり、結果的に光ディスクに対する記録・再生が正常に出来なくなる。従って、ウォブル信号の同期信号の誤検出防止は非常に重要な技術課題であり、従来から種々の誤検出防止対策が検討されてきている。
【0004】
例えば、特許文献1等が開示するように、同期信号の発生予測位置に保護窓を設ける技術も同期信号の誤検出防止に関する技術の1つである。
【特許文献1】特開2003−123257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HD DVD−RやHD DVD−RW等のウォブル信号は、WAP(Wobble Address in Periodic Position)と呼ばれる記録長単位に、同期信号とこれに続く物理アドレス等のデータが記録されている。総てのWAPは同じ記録長であり、WAPはこの記録長の周期で連続して記録されている。従って、同期信号の保護窓はWAPの周期性を利用して生成することが出来る。
【0006】
即ち、一旦同期信号が正しく検出されると、検出された同期信号の位置からWAPの周期に相当する遅延時間だけ後の位置に保護窓を設けることができる。
【0007】
しかしながら、光ディスクを光ディスク装置に挿入した直後や、トラックジャンプ動作を行ったとき等、最初に同期信号を検出する場合には当然のことながら保護窓を設けることができない。つまり、最初の同期検出では保護窓はなく、2回目の同期検出から保護窓を設けることができる。
【0008】
最初の同期検出は保護窓が無い状態での同期検出であるため、誤検出(同期信号ではないデータ列を同期信号のデータ列であると誤判定する検出)の可能性が比較的高い。従って、最初の同期検出によって生成された最初の保護窓(2回目の同期検出に利用される保護窓)の信頼性は必ずしも高くない。このため、従来は、2回目の同期検出が出来なかった場合は、最初の同期検出によって生成された最初の保護窓は正しい保護窓(本来の同期信号が到来すべき位置に生成される保護窓)ではなかったと判断し、一旦この保護窓を解除する処理を行っていた。
【0009】
しかしながら、2回目の同期検出が出来なくなる理由としては、(1)上記のように最初の保護窓が正しい保護窓ではなかった場合のほか、(2)正しい保護窓でありその保護窓の中に本来の同期信号が到来したにもかかわらず同期信号が検出できなかった(これを以下、同期信号の非検出という)場合がある。例えば、同期信号のビットパターンの一部がノイズ等の影響を受けて歪んだ場合には非検出となり得る。
【0010】
後者の(2)の場合、本来の正しい同期信号が到来したにも関わらず一旦同期窓を解除することになるので同期処理に時間を要することになる。また、一旦同期窓を解除すると次の同期検出は保護窓の無い状態での同期検出となるため、同期信号の誤検出の可能性も高くなってしまう。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ノイズ等による同期信号の非検出が発生した場合でも同期を早期に確立し、ウォブル信号検出の信頼性を向上させることができる光ディスク装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置は、請求項1に記載したように、同期信号と後続するデータとからなる所定長のデータ系列がウォブルとして記録されている光ディスクを再生し、或いは記録及び再生する光ディスク装置において、前記光ディスクのウォブルを読み取りウォブル信号を再生するウォブル再生部と、前記ウォブル信号に含まれる同期信号を検出する同期検出部と、前記同期信号の検出の有無に基づいて、同期信号の到来予測位置に同期信号の保護窓を生成する保護窓生成部と、前記データの誤り検出を行う誤り判定部と、を備え、前記保護窓生成部は、前記ウォブル同期検出部から出力される同期検出の有無に関する情報と、前記誤り判定部から出力される前記データの誤り検出情報に基づいて前記保護窓を生成する、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る光ディスク装置の制御方法は、請求項5に記載したように、同期信号と後続するデータとからなる所定長のデータ系列がウォブルとして記録されている光ディスクを再生し、或いは記録及び再生する光ディスク装置の制御方法において、(a)前記光ディスクのウォブルを読み取りウォブル信号を再生し、(b)前記ウォブル信号に含まれる同期信号を検出し、(c)前記同期信号の検出の有無に基づいて、同期信号の到来予測位置に同期信号の保護窓を生成し、(d)前記データの誤り検出を行う、ステップを備え、ステップ(c)では、同期検出の有無に関する情報と、データの誤り検出情報に基づいて前記保護窓を生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る光ディスク装置及びその制御方法によれば、ノイズ等による同期信号の非検出が発生した場合でも同期を早期に確立し、ウォブル信号検出の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る光ディスク装置及びその制御方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
(1)光ディスク装置
図1は、本発明の実施形態に係る光ディスク装置1の構成例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示す光ディスク10は、例えば、HD DVD−RやHD DVD−RWのような、追記型或いは書き換え型の光ディスクである。このタイプの光ディスク10では、ウォブルと呼ばれる正弦波状のうねりを持ったトラックが形成されている。
【0018】
光ディスクにデータを記録・再生する際には、ウォブルの形状に対応した略正弦波状のウォブル信号を光ディスクから抽出し、このウォブル信号に変調されている物理アドレス等のデータを復調し、データ記録・再生時のアドレス確認等に用いている。HD DVD−RやHD DVD−RWの場合、ウォブル信号は、物理アドレス等のデータによって2値位相変調が施されている。
【0019】
光ディスク装置1は、図1に示したように、光ディスク10を回転させるディスクモータ11、光ディスク10に照射するレーザ光を発生させるレーザダイオード13、レーザ光を光ディスク10上に集光させる対物レンズ12、光ディスク10からの反射光を光電変換するフォトディテクタ14、およびフォトディテクタ14の出力信号を増幅するプリアンプ15を備えている。
【0020】
ウォブル再生部16は、フォトディテクタ14で検出されるラジアル方向の半面ずつの光量から、その差信号(プッシュプル信号と呼ばれる)を生成する。このプッシュプル信号は、トラックに施されているウォブル波形に対応したウォブル信号となる。なお、プッシュプル信号によって、トラックのラジアル方向の移動量を検出することができるため、トラッキングサーボ系(図示せず)ではトラッキングエラー信号として用いられる。
【0021】
フォトディテクタ14の全分割面の出力を加算した信号は、RF信号となって再生処理部17へ入力される。
【0022】
再生処理部17では、波形等化処理、再生信号処理、誤り訂正処理、データ変換処理等が行われる。これらの処理によって再生データが得られ、再生データはインターフェース部19を介して外部のホスト機器100、例えばパーソナルコンピュータへ送られる。
【0023】
波形等化処理は、入力されるRF信号に対して、記録波長の短い周波数の減衰を補償するために周波数依存振幅特性を与え、記録波長による振幅の違いを緩和する。
【0024】
再生信号処理は、波形等化された信号から、ビタビ復号等の波形判別手法を用いて元のデジタル変調データを再生し、さらに、ETM(Eight to Twelve Modulation)変調を復調する。
【0025】
誤り訂正処理は、復調データに対して誤り訂正処理を行う。さらに、誤り訂正されたデータは、ホスト機器100との間のデータフォーマットに適合したデータ変換処理が行われる。
【0026】
他方、光ディスク装置1は、ホスト機器からインターフェース部19を介して入力される記録データを処理する記録処理部18を有している。記録処理部18では、記録信号処理や記録補償処理等が行われる。
【0027】
記録信号処理は、ホスト機器から入力される記録データを光ディスク10の物理的記録に適した順序に並び替えるものである。また、記録データに誤り訂正のための符号を付加し、さらにETM変調規則に従って変調している。
【0028】
記録補償処理は、光ディスク10の物理的特性に合わせて、記録による歪が最も少なくなるようなレーザ強度波形を生成するものである。
【0029】
一方、ウォブル再生部16から出力されるウォブル信号は、ウォブル検出部20に入力される。ウォブル検出部20では、入力されたウォブル信号に対して、PLL等を用いた位相検波を行って、2値位相変調波を復調している。復調された位相検波信号からシンクパターン(同期信号を構成する所定のデータパターン)を検出すると共にこのシンクパターンの検出タイミングに基づいて位相検波信号から物理アドレス情報等を抽出している。
【0030】
抽出された物理アドレス情報等は、記録処理部18や再生処理部17へ供給され、光ディスク10への記録アドレスや読み出しアドレスの確定に用いられている。
【0031】
ウォブル信号から物理アドレス情報等を抽出するときには、総て同期信号の検出タイミングを基準としており信頼性の高い同期信号検出が必要となる。このため、本実施形態に係る光ディスク装置1では、保護窓を用いた同期信号検出方式を採用しており、保護窓によって同期信号の誤検出を低減し、信頼性を向上させている。
【0032】
保護窓の生成や保護窓を利用した同期信号等はウォブル検出部20で行っている。以下、ウォブル検出部20の細部構成及びその動作について説明する。
【0033】
(2)ウォブル検出部
ウォブル検出部20の構成及び動作の説明に先立ち、HD DVD−R、およびHD DVD−RWのデータフォーマットについて概略説明しておく。
【0034】
図2は、HD DVD−R、およびHD DVD−RWに規定されているウォブル変調規則を示す図である。このウォブル変調規則では、図2(a)に示す無変調のウォブルをNPW(ビット情報“0”)、図2(b)に示す変調させたウォブルをIPW(ビット情報“1”)とし、これらを組み合わせることでシンクやアドレス変調符号を表している。
【0035】
図3は、WAP(Wobble Address in Periodic Position)という記録長単位毎に1つずつ埋め込まれている物理アドレス情報のデータフォーマットを例示する図である。HD DVD−R、およびHD DVD−RWでは、図3に示したWAPがウォブル波形として埋め込まれている。WAPは物理セグメントと呼ばれる分割単位毎に設けられている。
【0036】
WAPは、図3に示したように、WDU(Wobble Data Unit)という17組のユニットに分割された構造となっている。先頭のWDUが同期情報を持つ「Sync field」であり、続いて11組のWDUがアドレス変調符号情報を持つ「Address field」となる。残りの5組のWDUはウォブル無変調区間の「Unity field」である。
【0037】
各WDUは夫々ウォブル84波(84wobble)から構成されており、WAP全体としては1428波(84wobble×17WDU=1428wobble)のウォブルから構成されている。
【0038】
図4(a)は、「Sync field」のWDUの内部構成を示す図である。「Sync field」のWDUでは、先頭からウォブル6波がIPWであり、その位相検波値は負(「−」)となる。続く4波はNPWでありその位相検波値は正(「+」)となる。さらに次の6波はIPWであり負(「−」)となる。「Sync field」のWDUを構成するウォブル84波のうち、残りの68波は総てNPW(「+」)であり、図示を省略している。
【0039】
なお、図4(a)は、位相検波値を2の補数で表わしたときの符号ビットを表現している。つまり、位相検波値が負(「−」)のときの符号ビット“1”をHighレベルで表現し、位相検波値が正(「+」)のときの符号ビット“0”をLowレベルで表現している(図4(b)も同様である)。
【0040】
一方、図4(b)は、「Address field」の各WDUの内部構成を示す図である。「Address field」の各WDUでは、先頭からウォブル4波がIPWであり、その位相検波値は負(「−」)となる。これに続く12波は、4波ずつでbit2、bit1、bit0の3ビットのデータを夫々4波のIPW又はNPWの何れかで表現する構成となっている。残りの68波は総てNPW(「+」)であり、図4(b)と同様に図示を省略している。
【0041】
「Address field」の各WDUは、上記のように夫々3ビットのデータを表現することが可能であり、「Address field」の11組のWDUによって33ビットのデータを表わすことができる。
【0042】
図5は、この33ビットのデータの内訳を示す図である。左端がMSB、右端がLSBとなっている。MSB側から、「Segment Infomation」が2ビット、「PS Block address」が19ビット、「Physical segment order」が3ビット、及び「CRC」が9ビットの合計33ビットが配列されている。
【0043】
「Segment Infomation」の2ビットは、セグメントのタイプを示す1ビットと予備1ビットで構成されている。「PS Block address」の19ビットと、「Physical segment order」の3ビットとで光ディスク10上の物理アドレスを表わしている。「Physical segment order」は物理アドレスの下位アドレスに相当するもので、物理セグメントが1つ変わる毎に0から7までの値が繰り返しカウントアップされる。
【0044】
「CRC」は9ビットのCRC(Cyclic Redundancy Check)コードであり、このCRCコードに基づいてデータ誤りの有無を検出することができる。
【0045】
ウォブル1428波で構成される1つのWAPの先頭には、ウォブル16波で表現されたシンクパターン(6T(IPW)−4T(NPW)−6T(IPW)、即ち、「−−−−−−++++−−−−−−」)が必ず設けられており、これが同期信号である。このシンクパターンをパターンマッチング等によって検出することによって同期検出が行われる。
【0046】
次に、本実施形態に係るウォブル検出部20の構成、動作との比較のため、従来のウォブル検出部200の構成と動作について概略説明する。
【0047】
図6は、従来のウォブル検出部200の構成例を示すブロック図である。このウォブル検出部200は、位相検波部21、シンクパターン検出部(同期検出部)22、シンク連続検出カウンタ23、シンク連続未検出カウンタ24、同期窓生成部25、AND回路26、フライホイールカウンタ27、ウォブルPLL部28、及び物理アドレス抽出部29を備えて構成されれいる。
【0048】
ウォブル検出部200に入力されたウォブル信号は、位相検波部21にて位相検波される。位相検波された信号はシンクパターン検出部22に入力され、ここで予め保持されているシンクパターン列と入力されたシンクパターン列のマッチングが行われる。両者が一致した場合には、仮の同期検出信号がAND回路26に出力される。
【0049】
図7(a)、(b)、(c)は、シンクパターン検出部22に入力される位相検波信号を例示した図であり、各WAPの先頭には、6T(IPW)−4T(NPW)−6T(IPW)のシンクパターンが存在する。このシンクパターンが検出されると、所定の処理遅延時間経過後の位置(この位置を検出判定位置と呼ぶ)に1Tの長さの仮の同期検出フラグが立てられる。ここでTは1ウォブルの長さを示す。
【0050】
一方、保護窓生成部25では、図7(d)に示したように、検出判定位置を中心として例えば3Tの幅の保護窓が生成される。この保護窓はAND回路26へ出力される。仮の同期検出フラグが保護窓の中にあれば、真に同期が検出されたと判断され、フライホイールカウンタ27に真の同期検出フラグとして入力される。
【0051】
フライホイールカウンタ27には、ウォブルPLL部28にて生成されたウォブルクロック(1ウォブルの長さを単位長とするクロック)が入力されており、フライホイールカウンタ27では、真の同期検出フラグを基準としたデータ抽出タイミングがウォブルクロックのカウントアップによって生成される。データ抽出タイミングは、物理アドレス抽出部29に入力され、シンクパターンに後続する物理アドレスデータが位相検波信号から抽出される。
【0052】
保護窓は、シンクパターンの誤検出を防止するために生成されるものである。図8は、従来から行っている保護窓の生成、維持、及び解除の方法について説明する図である。
【0053】
図8(a)は、シンクパターンがWAP毎に繰り返し入力される様子を示している。図8(b)は、シンクパターン検出部22の出力信号を示している。「検出」は上記の仮の同期検出フラグが出力されたことを示しており、「未検出」は上記の仮の同期検出フラグが出力されなかったことを示している。
【0054】
図8(b)の左端の「検出」は、光ディスク10を挿入した直後やトラックジャンプが発生した場合等における、最初のシンクパターン検出に対応するものである。最初のシンクパターン検出では、未だ保護窓は生成されていないため、図8(c)に示したように保護窓有効フラグは「無効」となっている。また、図8(d)に示したように、最初のシンクパターン検出前では、同期処理許可範囲はWAP全体の範囲を許可としている。即ち保護窓が生成されいない状態を示している。
【0055】
一方、最初のシンクパターンが検出された後は、この最初のシンクパターンの検出に基づいて最初の保護窓が生成される。しかしながら、最初の保護窓の中に到来すべき2回目のシンクパターンが検出されなかったときは、生成された最初の保護窓を直ちに解除するようにしている。この様子を図8(d)の○で囲んだ領域に示している。この理由は、最初のシンクパターンの検出は保護窓が無い状態での検出であるため、誤検出(シンクパターンではないデータ列をシンクパターンのデータ列であると誤判定する検出)の可能性が比較的高く、従って、最初のシンクパターンの検出によって生成された最初の保護窓(2回目のシンクパターン検出に利用される保護窓)の信頼性は必ずしも高くないことによる。そこで、従来は、2回目のシンクパターン検出が出来なかった場合は、最初の保護窓は正しい保護窓(本来のシンクパターンが到来すべき位置に生成される保護窓)ではなかったと判断し、一旦この保護窓を解除する処理を行っていた。
【0056】
他方、シンクパターン検出が複数回、例えば2回以上連続した場合には、これらによって生成される保護窓の信頼性は十分高いと考えることができる。そこで、この場合、図8に示したように、3回目、4回目と連続して「検出」されその後5回目が「未検出」であったとしても保護窓を解除せず入力維持するようにしている。
【0057】
この場合、5回目の「未検出」は、本来のシンクパターンが保護窓の中に到来したにもかかわらず、シンクパターンの一部がノイズ等の影響を受けて歪んだ結果たまたま検出できなかった(前述した「非検出」のケース)と考え、次の6回目にはシンクパターン検出がされる可能性が高いという判断に基づくものである。つまり、保護窓を解除して誤検出の可能性を高めるよりも今の保護窓を維持した方がより信頼性の高いシンクパターン検出が可能である、との考え方に基づくものである。
【0058】
しかしながら、この場合であっても、「未検出」が複数回連続した場合、例えば図8に例示したように3回以上「未検出」が連続した場合には、ウォブル信号の読み取り位置の大きなスリップや、トラックジャンプ等が発生したことが考えられるため、一旦保護窓を解除するものとしている。
【0059】
次に、本実施形態に係るウォブル検出部20の構成と動作について説明する。図9は、本実施形態に係るウォブル検出部20の細部構成例を示すブロック図である。従来のウォブル検出部200との相違点は、新たに誤り判定部30を設けている点にある。
【0060】
誤り判定部30では、シンクパターンに続く物理アドレスデータの誤り検出をCRCコード(図5に示した9ビットのCRCコード)に基づいて判定している。保護窓生成部25では、この誤り検出の結果を加味して、最初の保護窓の維持と解除を判断している。
【0061】
具体的な保護窓生成部25の動作を、図10及び図11を用いて説明する。図10及び図11は、いずれも最初にシンクパターンが検出されたにもかかわらず2回目にシンクパターンが検出されなかった場合の動作である。
【0062】
前述したように、従来は、最初にシンクパターンが検出されてその後保護窓を生成した後、この最初の保護窓の範囲内でシンクパターンが未検出の場合は、同期処理の信頼性が低いため、保護窓をすぐに解除するものとしていた。しかしながら、この方式では、実際には正しい位置にシンクパターンが到来していたにも関わらずシンクパターン信号の歪み等によってシンクパターン検出ができなかった場合でも、保護窓が解除されてしまうことになる。これでは同期処理に無駄な時間が掛かってしまうことになるし、またシンクパターン検出が保護窓の無い全範囲での検出に戻ってしまうことになるため、誤検出の可能性も高めてしまうことになる。そこで、本実施形態では、正しく同期が取れているかどうかを、シンクパターン検出以外でも判定し、正しい場合は たとえシンクパターンが未検出であっても保護窓を解除しないようにしている。
【0063】
前述したように、シンクパターンと物理アドレスデータは、ディスク上の固定された相対位置に一定間隔で埋め込まれている。シンクパターンにより正しく同期が検出されない場合は、物理アドレスも正しく読み取れない。裏を返せば、正しく物理アドレスが読み取れた場合は、正しい同期が取れていると考えられる。
【0064】
つまり、CRCコードによる誤り検出の結果、誤りが検出されなかった場合は、そのWAPは正しく同期が取れていた、と判断することが出来る。この考え方を利用して、最初のWAPのシンクパターン検出によって次のWAPの保護窓が生成され、かつ最初のWAPのCRCコードによって誤りが検出されなかった場合(図10(c)における誤り検出結果「OK」の場合)は、同期も正しく取れていると判断でき、たとえ次のWAPの保護窓の中でシンクパターンが未検出であったとしても、たまたまシンクパターンが検出されなかっただけで同期自体は正しく取れていると判定し、図10(e)に示したように、保護窓は維持するものとする。そして、複数回(例えば3回)連続して保護窓の位置でシンクパターンが未検出の場合に限って保護窓を解除するようにする。
【0065】
他方、最初のWAPのシンクパターン検出によって次のWAPの保護窓が生成され、次のWAPの保護窓の中でシンクパターンが未検出であり、かつ最初のWAPのCRCコードによって誤りが検出された場合(図11(c)における誤り検出結果「NG」の場合)は、同期が正しいとはもはや判断できず、図11(e)に示したように、保護窓を直ちに解除するものとしている。
【0066】
上記の説明では、シンクパターン検出以外の同期判定方法としてCRCコードに基づく誤り検出を例として説明したが、他の誤り検出方法を用いてもよい。
【0067】
例えば、物理アドレス抽出部29で抽出される物理アドレスを利用して誤り検出する方法でもよい。前述したように、連続してWAPを再生している場合、物理アドレスは物理セグメント単位で1つずつカウントアップされている。従って、新たに入力されるWAPに含まれる物理アドレスを推定することができる。既に抽出した物理アドレスから推定した物理アドレスと新たに入力された物理アドレスを比較することにより、新たに入力された物理アドレスの誤りの有無を判定することができる。物理アドレスに誤りが無かった場合は同期もただしく取れていると判断できる一方、物理アドレスに誤りがあった場合は同期も正しく取れていないと判断できる。この判断を上述したCRCによる誤り検出に換えて保護窓の維持及び解除処理に利用することができる。
【0068】
以上説明してきたように、本実施形態に係る光ディスク装置1及びその制御方法によれば、ノイズ等による同期信号の非検出が発生した場合でも同期を早期に確立し、ウォブル信号検出の信頼性を向上させることができる。
【0069】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成例を示すブロック図。
【図2】HD DVD−R、およびHD DVD−RWに規定されているウォブル変調規則を示す図。
【図3】HD DVD−R、およびHD DVD−RWに規定されているWAPのレイアウトを示す図。
【図4】HD DVD−R、およびHD DVD−RWに規定されているシンクパターンとアドレスデータパターンを示す図。
【図5】HD DVD−R、およびHD DVD−RWに規定されているアドレスフィールドのレイアウト示す図。
【図6】従来のウォブル検出部の構成例を示すブロック図。
【図7】シンクパターンの保護窓生成概念を示す説明図。
【図8】従来のウォブル検出部における保護窓の生成、解除、維持の動作説明図。
【図9】本実施形態に係るウォブル検出部の構成例を示すブロック図。
【図10】本実施形態に係るウォブル検出部における保護窓の生成、解除、維持の第1の動作説明図。
【図11】本実施形態に係るウォブル検出部における保護窓の生成、解除、維持の第2の動作説明図。
【符号の説明】
【0071】
1 光ディスク装置
16 ウォブル再生部
17 再生処理部
18 記録処理部
20 ウォブル検出部
21 位相検波部
22 シンクパターン検出部(同期検出部)
25 保護窓生成部
27 フライホイールカウンタ
28 ウォブルPLL部
29 物理アドレス抽出部
30 誤り判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期信号と後続するデータとからなる所定長のデータ系列がウォブルとして記録されている光ディスクを再生し、或いは記録及び再生する光ディスク装置において、
前記光ディスクのウォブルを読み取りウォブル信号を再生するウォブル再生部と、
前記ウォブル信号に含まれる同期信号を検出する同期検出部と、
前記同期信号の検出の有無に基づいて、同期信号の到来予測位置に同期信号の保護窓を生成する保護窓生成部と、
前記データの誤り検出を行う誤り判定部と、
を備え、
前記保護窓生成部は、
前記同期検出部から出力される同期検出の有無に関する情報と、前記誤り判定部から出力される前記データの誤り検出情報に基づいて前記保護窓を生成する、
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記保護窓生成部は、
最初の同期信号が検出された後、次の同期信号の到来予測位置に最初の保護窓を生成しようとする場合において、
前記次の同期信号が検出されず、かつ、前記最初の同期信号に続くデータに誤りが検出された場合には、前記最初の保護窓を解除する一方、
前記次の同期信号が検出されず、かつ、前記最初の同期信号に続くデータに誤りが検出されなかった場合には、前記最初の保護窓を解除せずに維持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記保護窓生成部は、
複数回の連続した同期信号の検出によって保護窓が生成されている場合は、
所定の回数連続して同期信号が検出されなかった場合に、前記生成されている同期窓を解除する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記誤り判定部で行う誤り検出は、前記データに含まれるCRCコードを用いて行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
同期信号と後続するデータとからなる所定長のデータ系列がウォブルとして記録されている光ディスクを再生し、或いは記録及び再生する光ディスク装置の制御方法において、
(a)前記光ディスクのウォブルを読み取りウォブル信号を再生し、
(b)前記ウォブル信号に含まれる同期信号を検出し、
(c)前記同期信号の検出の有無に基づいて、同期信号の到来予測位置に同期信号の保護窓を生成し、
(d)データの誤り検出を行う、
ステップを備え、
ステップ(c)では、
同期検出の有無に関する情報と、前記データの誤り検出情報に基づいて前記保護窓を生成する、
ことを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項6】
ステップ(c)では、
最初の同期信号が検出された後、次の同期信号の到来予測位置に最初の保護窓を生成しようとする場合において、
前記次の同期信号が検出されず、かつ、前記最初の同期信号に続くデータに誤りが検出された場合には、前記最初の保護窓を解除する一方、
前記次の同期信号が検出されず、かつ、前記最初の同期信号に続くデータに誤りが検出されなかった場合には、前記最初の保護窓を解除せずに維持する、
ことを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項7】
ステップ(c)では、
複数回の連続した同期信号の検出によって保護窓が生成されている場合は、
所定の回数連続して同期信号が検出されなかった場合に、前記生成されている同期窓を解除する、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項8】
ステップ(d)では、前記データに含まれるCRCコードを用いて誤り検出を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−9661(P2009−9661A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171796(P2007−171796)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】