説明

光ディスク装置及び光ディスク装置の制御方法

【課題】偏心が大きなディスクにおける追従性を低下させることなく、スレッドモータの動作回数を極力抑えてスレッドサーボの消費電力を削減できるようにする。
【解決手段】ディスク状の記録媒体に記録されているトラックを検出する手段と、前記検出結果に従い、対物レンズを前記トラックの中心へ移動させるよう制御する手段と、前記制御に追従し、前記対物レンズが搭載された光ピックアップを前記ディスクの半径方向へ移動させるスレッドモータを制御する手段と、前記ディスクの偏心量を検出する手段と、前記スレッドモータを制御する頻度を決定する制御頻度決定手段とを備え、前記制御頻度決定手段は、前記ディスクの偏心量が予め設定されたしきい値よりも大きければ前記スレッドモータを頻繁に動作させるよう決定し、前記偏心量が前記しきい値よりも小さければ前記スレッドモータを動作させる頻度を低下させるよう決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置及び光ディスク装置の制御方法に関し、特に、トラッキング制御に追従し、対物レンズが搭載された光ピックアップをディスクの半径方向へ移動させるスレッドモータを制御するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近は、例えばパーソナルコンピュータなどに用いられる各種データやプログラムなどを記録する記録媒体として、CD−ROMなどのディスク状の記録媒体(以下、ディスクという)が知られている。
【0003】
このようなディスクは、ディスクドライブ装置に装着された後に所定の速度で回転しながら、信号記録面に記録されている各種データやプログラムなどを光学ピックアップによって読み出すように使用する。ディスクの種類によっては各種データやプログラムなどの記録を行なうことができる。
【0004】
ところで、前記CD−ROMに記録されているデータなどの読み出しを行なう場合に、読み出しの効率を向上することを目的として、ディスクを標準速度(1倍速)よりも高速で回転させることができるディスクドライブ装置が知られている。このようなディスクドライブ装置は、ディスクの回転速度を標準速度(200〜500rpm程度)に対して、例えば4倍速、6倍速、8倍速などといった高速回転とすることによって、読み出し効率の向上を図っている。
【0005】
このように、読み出し時、または記録時のディスクの回転数を高くすると読み出し効率を向上させることができるが、高速回転を行なう場合に、ディスクの偏芯や偏重心が問題となる場合がある。
【0006】
ここで、偏芯とは、物理的にディスクのセンターホール中心が重心位置と一致しているが、センターホール中心がトラック(放射状、又は同心円状)の中心と一致していないことを示す。また、偏重心とは、物理的にディスクのセンターホールがトラックの中心と一致しているが、センターホールの位置がディスクの重心位置と一致していないことを示す。なお、本明細書では前述の偏芯及び偏重心を一括して、偏心とする。
【0007】
偏心が発生する要因としては、例えばプレス加工などによって行なわれるディスクの製造時の精度や、ディスクをドライブ装置に装填する際のセンターホールに対するチャッキングの誤差などによって発生する場合がある。
【0008】
偏心した状態で、ディスクを高速回転させると不都合が発生する場合がある。例えば、ディスクの回転速度が3000rpm程度の高速になると、その回転速度に対応した周波数の自励振動が発生してくる。この自励振動は、偏心量とディスク回転数に比例しており、高速回転のディスクドライブ装置に対して、大きな影響を及ぼすことになる。
【0009】
まず、ディスクがディスクドライブ装置に装填されてチャッキングされると、その内周側のトラックに記録されているTOC(Table Of Contents )を読み出す。そのために、ディスクドライブ装置において、ディスクの種類毎に適合して設定されている回転速度(例えば4倍速、6倍速、8倍速など)で回転を開始するが、この時点で偏心が有ると振動が発生する。
【0010】
この振動がディスクドライブ装置の外部に伝達されると、ユーザに対して不快感を与えることになる。また、振動が大きい場合にはトラッキングサーボが追従できなくなる場合がある。このような場合には、ディスクからデータを読み出すことが困難となり、読み出しエラーが発生しやすくなってしまう。エラーが発生すると、エラー処理のリトライを頻繁に行わなければならないので、本来行うべき各種処理の効率が悪くなってしまう。
【0011】
さらに、偏心量が大きいために振動が大きい場合は、ドライブ装置やディスク自体が破損してしまう問題点があった。このような問題点を解決するために、例えば、特許文献1に提案されているディスク装置は、偏心量に応じて、スレッドサーボのゲインを可変するように構成している。
【0012】
【特許文献1】特開2004−171765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に提案されているディスク装置は、偏心の大きなディスクにおいて不要なトラッキングリトライ動作を抑えるために、偏心が大きなディスクにおいてスレッドサーボの帯域を下げて、不要なスレッド動作を抑えるように構成している。
【0014】
しかしながら、引用文献1のようにスレッドサーボの帯域を下げると、偏心が大きなディスクにおいては、対物レンズの位置をスレッドモータを使って追従しきれなくなる問題点があった。また、偏心の小さなディスクにおいてはスレッドサーボの帯域が高く、スレッドモータが頻繁にドライブされるため、スレッドサーボの消費電力が非常に高くなってしまう問題点があった。
【0015】
本発明は前述の問題点に鑑み、偏心が大きなディスクにおける追従性を低下させることなく、スレッドモータの動作回数を極力抑えてスレッドサーボの消費電力を削減できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の光ディスク装置は、多数のトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して光ビームを照射する照射手段と、前記ディスク状記録媒体からの光ビームの反射光をセンサで検出して前記トラックに対するトラッキングエラーを示すエラー信号を検出するトラッキングエラー検出手段と、前記トラッキングエラー検出手段の検出結果に従い、前記光ビームと前記トラックとのトラッキングを制御するトラッキング制御手段と、前記トラッキング制御手段により行われるトラッキング制御に追従し、前記照射手段が搭載された光ピックアップを前記ディスク状記録媒体の半径方向へ移動させるモータを駆動するモータ制御手段と、前記ディスク状記録媒体の偏心量を検出する偏心量検出手段と、前記モータ制御手段が前記モータを駆動する頻度を決定する制御頻度決定手段とを備え、前記制御頻度決定手段は、前記偏心量検出手段により検出された前記ディスクの偏心量が予め設定されたしきい値よりも大きければ前記モータ制御手段を頻繁に動作させるよう決定し、前記偏心量が前記しきい値よりも小さければ前記モータ制御手段を動作させる頻度を低下させるよう決定することを特徴とする。
【0017】
本発明の光ディスク装置の制御方法は、多数のトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して照射手段から光ビームを照射する照射工程と、前記ディスク状記録媒体からの光ビームの反射光をセンサで検出して前記トラックに対するトラッキングエラーを示すエラー信号を検出するトラッキングエラー検出工程と、前記トラッキングエラー検出工程の検出結果に従い、前記光ビームと前記トラックとのトラッキングを制御するトラッキング制御工程と、前記トラッキング制御工程において行われるトラッキング制御に追従し、前記照射手段が搭載された光ピックアップを前記ディスク状記録媒体の半径方向へ移動させるモータを駆動するモータ制御工程と、前記ディスク状記録媒体の偏心量を検出する偏心量検出工程と、前記モータ制御工程において前記モータを駆動する頻度を決定する制御頻度決定工程とを備え、前記制御頻度決定工程においては、前記偏心量検出工程において検出された前記ディスクの偏心量が予め設定されたしきい値よりも大きければ前記モータ制御工程を頻繁に動作させるよう決定し、前記偏心量が前記しきい値よりも小さければ前記モータ制御工程を動作させる頻度を低下させるよう決定することを特徴とする。
【0018】
本発明のプログラムは、多数のトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して照射手段から光ビームを照射する照射工程と、前記ディスク状記録媒体からの光ビームの反射光をセンサで検出して前記トラックに対するトラッキングエラーを示すエラー信号を検出するトラッキングエラー検出工程と、前記トラッキングエラー検出工程の検出結果に従い、前記光ビームと前記トラックとのトラッキングを制御するトラッキング制御工程と、前記トラッキング制御工程において行われるトラッキング制御に追従し、前記照射手段が搭載された光ピックアップを前記ディスク状記録媒体の半径方向へ移動させるモータを駆動するモータ制御工程と、前記ディスク状記録媒体の偏心量を検出する偏心量検出工程と、前記モータ制御工程において前記モータを駆動する頻度を決定する制御頻度決定工程とをコンピュータに実行させるプログラムであって、前記制御頻度決定工程においては、前記偏心量検出工程において検出された前記ディスクの偏心量が予め設定されたしきい値よりも大きければ前記モータ制御工程を頻繁に動作させるよう決定し、前記偏心量が前記しきい値よりも小さければ前記モータ制御工程を動作させる頻度を低下させるよう決定することをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ディスクの偏心量に応じてスレッドモータを制御する頻度を調整するようにしたので、偏心が大きなディスクにおける追従性を低下させることなく、スレッドモータの動作回数を極力抑えてスレッドサーボの消費電力を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の構成例を示すブロック図である。
図1において、263は光ピックアップ、265は光ピックアップの主軸、251は光ピックアップの副軸、201はシステムコントローラ、203はトラッキングアクチュエータドライバ、259はコイル、261はマグネットである。
【0021】
205はレーザーダイオードドライバ、255はレーザーダイオード、257は対物レンズ、253は四分割受光センサ、211はセンサーアンプ、209はトラッキングエラー演算部、207はトラッククロスカウンタである。また、271はフォーカスエラー演算部、213はスピンドルモータドライバ、269はスピンドルモータ、215はスレッドモータドライバ、267はスレッドモータ、273は偏心量表示部である。
【0022】
図5は、本実施形態の光ディスク装置101において、多数のトラックが形成されたディスク状の記録媒体102と光ピックアップ263との位置関係を説明する図である。図5に示したように、ディスク状の記録媒体102はスピンドルモータ269によって所定の速度で回転制御されている。また、光ピックアップ263は、システムコントローラ201によって制御され、記録媒体102に対して光ビームを照射し、その反射光を検出してディスク状の記録媒体102に記録されているトラックを検出するトラック検出を行う。システムコントローラ201は、トラック検出結果に応じて、後述するようにスレッドモータ、フォーカシングアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータ等の駆動制御を行う。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る光ディスク装置101において、スレッドモータを制御して行うモータ制御手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS301で処理が開始されると、ステップS302においてディスクがマウントされたか判断する。そして、ディスクがマウントされたのを検知するとステップS303に進み、システムコントローラ201はスレッドモータドライバ215を介して、スレッドモータ267を制御し、光ピックアップ263をホームポジションへ移動させる。さらに、システムコントローラ201は、スピンドルモータドライバ213を介して、スピンドルモータ269をホームポジションにおける規定の一定回転数で回転制御する。
【0024】
次に、ステップS304に進み、システムコントローラ201は、レーザーダイオードドライバ205を介してレーザーダイオード255を発光動作させ、レーザ光(光ビーム)を照射させる。レーザーダイオード255から照射されたレーザ光はディスクで反射され、反射光が四分割受光センサ253で検出される。そして、四分割受光センサ253において、四分割された各受光センサで光電変換されてアナログ信号が生成され、このアナログ信号がセンサーアンプ211に出力され、センサーアンプ211において増幅される。
【0025】
センサーアンプ211から出力される増幅信号は、フォーカスエラー演算部271において、四分割されたセンサ相互の増幅信号同士を演算することによりフォーカスエラー値を算出し、この算出したフォーカスエラー値をシステムコントローラ201に出力する。
【0026】
システムコントローラ201は、フォーカスエラー演算部271の演算値を参照して、不図示のフォーカスアクチュエータドライバを制御し、対物レンズのフォーカスを合焦させる。また、四分割受光センサ253へ入光されたディスク反射光は、四分割された各受光センサで光電変換される。そして、センサーアンプ211において増幅された増幅信号は、トラックに対するトラッキングエラーを示すエラー信号としてトラッキングエラー演算部209へ入力される。
【0027】
トラッキングエラー演算部209は、四分割されたセンサ相互の増幅信号同士を演算することにより、入力されたエラー信号からトラッキングエラー検出を行い、トラッキングエラー値を算出する。そして、このトラッキングエラー値をトラッククロスカウンタ207に出力する。トラッククロスカウンタ207は、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、スピンドルモータ269の1回転中のトラッククロス数を計数する(ステップS305)。
【0028】
このように、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、トラッククロス数を計数することにより、挿入されているディスクのホームポジションにおけるディスクの偏心量検出を行って数値化することができる。そして、数値化された偏心量=トラッククロス数をシステムコントローラ201に出力する。
【0029】
システムコントローラ201は、このトラッククロス数と、予め設定してあるしきい値との比較を行う(ステップS306)。システムコントローラ201は、ステップS306の比較の結果、トラッククロス数がしきい値以上である場合、つまり偏心量がしきい値よりも大きい場合はステップS307に進み、200Hz間隔でスレッドモータを制御する設定を行う。
【0030】
一方、ステップS306の比較の結果、トラッククロス数がしきい値より小さい場合、つまり偏心量小がしきい値よりも小さい場合はステップS308に進み、20Hz間隔でスレッドモータを制御する設定を行う。そして、このステップS307、またはステップS308で設定したスレッドモータ制御間隔は、次のディスク挿入の機会まで継続される。
このように、本実施形態では、ディスクの偏心量に応じてスレッドモータを駆動する間隔を設定しているので、搭載されたディスク自体とそのチャッキング状態に応じたスレッドモータの省電力制御を行うことができる。
【0031】
具体的には、偏心量がしきい値以上の場合にはスレッドモータの駆動間隔を1/200秒(第1の間隔)に設定する。また、偏心量がしきい値よりも小さい場合には、第1の間隔よりも長い1/20秒(第2の間隔)に設定している。このように設定することにより、偏心が大きいディスクにおいても対物レンズの位置をスレッドモータ267で追従させることができる。また、偏心の小さなディスクにおいてスレッドモータ267が不要な動作を行うことを抑えることができて、省電力化を図ることができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
前述した第1の実施形態では、ホームポジションのみの偏心量を元にスレッドモータを制御する制御頻度決定を行った。この第2の実施形態では、複数の代表点の偏心量を元にスレッドモータ制御頻度を決定する例について説明する。
【0033】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る光ディスク装置のスレッドモータの制御手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS401で処理が開始されると、光ディスク装置101はステップS402において、ディスクの挿入を検知する。
【0034】
そして、ステップS402において、ディスクの挿入が検知されるとステップS403に進み、システムコントローラ201はスレッドモータドライバ215を介してスレッドモータ267を制御する。そして、光ピックアップ263(OPU)をディスクの半径R1へ移動させる。
【0035】
次に、ステップS404に進み、システムコントローラ201はスピンドルモータドライバ213を介して、スピンドルモータ269(SPM)をディスクの半径R1における規定の一定回転数で回転制御する。
【0036】
次に、システムコントローラ201はレーザーダイオードドライバ205を介しレーザーダイオード255を発光動作させる。レーザーダイオード255から発光されたレーザ光はディスク(記録媒体102)で反射され、反射光が四分割受光センサ253へ入光される。そして、四分割受光センサ253によって四分割されるとともに、光電変換されたアナログ信号がセンサーアンプ211により増幅される。
【0037】
この増幅信号は、フォーカスエラー演算部271に出力される。そして、フォーカスエラー演算部271によって、四分割されたセンサ相互の増幅信号同士を演算することによりフォーカスエラー値を算出する。この算出したフォーカスエラー値をシステムコントローラ201へ出力する。
【0038】
システムコントローラ201は、入力されたフォーカスエラー値を参照して、不図示のフォーカスアクチュエータドライバを制御し、対物レンズのフォーカスを合焦させる(ステップS405)。
【0039】
また、センサーアンプ211において増幅された増幅信号は、トラッキングエラー演算部209にも出力される。トラッキングエラー演算部209は、四分割されたセンサ相互の増幅信号同士を演算することによりトラッキングエラー値を算出し、この算出したトラッキングエラー値をトラッククロスカウンタ207に出力する。
【0040】
トラッククロスカウンタ207は、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、スピンドルモータ269が1回転する間のトラッククロス数を計数する(ステップS406)。このように、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、トラッククロス数を計数することにより、挿入されているディスクの半径R1における偏心量を数値化することができる。そして、数値化された偏心量=トラッククロス数を、システムコントローラ201に出力する。
【0041】
システムコントローラ201は、入力されたトラッククロス数と、予め設定されているしきい値とを比較をする(ステップS407)。ステップS407の比較の結果、トラッククロス数がしきい値よりも大きい場合、つまり偏心量が大きい場合にはステップS408に進み、ディスクの半径R1付近においては200Hz間隔でスレッドモータ267を制御するように設定する。
【0042】
一方、システムコントローラ201は、ステップS407の比較の結果、トラッククロス数がしきい値より小さい場合、つまり偏心量が小さい場合にはステップS409に進む。そして、ディスクの半径R1付近においては20Hz間隔でスレッドモータ267を制御するように設定する。
【0043】
ステップS408またはステップS409における設定が終了したら、次に、システムコントローラ201は、処理をステップS410に進め、スレッドモータドライバ215を介し、スレッドモータ267を制御する。そして、光ピックアップ263をディスク径R2へ移動させる。
【0044】
次に、ステップS411に進み、システムコントローラ201はスピンドルモータドライバ213を介してスピンドルモータ269動作の制御を行い、ディスク径R2において規定されている一定回転数で回転制御する。
【0045】
次に、ステップS412に進み、システムコントローラ201はレーザーダイオードドライバ205を介してレーザーダイオード255を発光動作させる。レーザーダイオード255から発光されたレーザ光は記録媒体102で反射され、反射光が四分割受光センサ253へ入光される。そして、四分割された各受光センサで光電変換されてアナログ信号が生成され、このアナログ信号がセンサーアンプ211において増幅される。
【0046】
この増幅信号を、フォーカスエラー演算部271において、四分割されたセンサ相互の増幅信号同士を演算することによりフォーカスエラー値を算出し、算出したフォーカスエラー値をシステムコントローラ201に出力する。システムコントローラ201は、入力されたフォーカスエラー値を参照して、不図示のフォーカスアクチュエータドライバを制御し、対物レンズのフォーカスを合焦させる。
【0047】
また、センサーアンプ211において増幅された増幅信号は、トラッキングエラー演算部209へ入力される。トラッキングエラー演算部209は、四分割されたセンサ相互の増幅信号同士を演算することによりトラッキングエラー値を算出する。そして、このトラッキングエラー値をトラッククロスカウンタ207に出力する。トラッククロスカウンタ207は、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、スピンドルモータ269の1回転中のトラッククロス数を計数する(ステップS413)。
【0048】
このように、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、トラッククロス数を計数することにより、挿入されているディスクのディスク径R2での偏心量を数値化することができる。そして、数値化された偏心量=トラッククロス数をシステムコントローラ201に出力する。
【0049】
システムコントローラ201は、このトラッククロス数と、予め設定されているしきい値との比較をする(ステップS414)。システムコントローラ201は、ステップS414の比較の結果、トラッククロス数がしきい値より大きい場合、つまり偏心量が大きい場合にはステップS415に進み、ディスク径R2付近において200Hz間隔でスレッドモータを制御するように設定する。
【0050】
一方、ステップS414の比較の結果、トラッククロス数がしきい値より小さい場合、つまり偏心量が小さい場合にはステップS416に進み、ディスク径R2付近において20Hz間隔でスレッドモータを制御するように設定する。
【0051】
そして、前述したステップS408、ステップS409、ステップS415、ステップS416で説明したスレッドモータ制御間隔は、次のディスクが挿入されるまで継続される。
【0052】
トラックの偏心量はディスク上の半径位置により差異があるため、本実施形態では、ディスク上の2点における半径位置の偏心量を測定し、この測定結果に応じてスレッドモータ267を制御するようにした。これにより、搭載されたディスク自体の半径エリア特有の偏心形状に応じたスレッドモータの省電力制御を行うことができる。なお、偏心量を測定する半径位置は多いほど極め細かいスレッドモータ制御を行うことが可能になるので、ディスク最内周から最外周の間の複数の代表半径位置での偏心量を計測する。そして、計測されたディスクの最内周から最外周迄の間の複数の代表半径位置において、スレッドモータ267を制御する頻度を決定するようにしてもよい。
【0053】
(第3の実施形態)
前述した第1及び第2の実施形態では、ディスク挿入直後のみの偏心量を元にスレッドモータを制御する頻度を決定した。それに対して、この第3の実施形態では、ディスク挿入中は偏心量を定期的に検査し、スレッドモータを制御する頻度を決定するようにしている。
【0054】
図4は、第3の実施形態に係る光ディスク装置101のスレッドモータの制御手順の一例を示すフローチャートである。
ステップS501で処理が開始されると、システムコントローラ201は、ステップS502において、スピンドルモータドライバ213を介してスピンドルモータ269の動作制御を行い、現在の光ピックアップ位置における規定の一定回転数で回転制御する。
【0055】
次に、システムコントローラ201は、レーザーダイオードドライバ205を介してレーザーダイオード255を発光動作させる。レーザーダイオード255から発光されたレーザ光はディスクで反射され、反射光が四分割受光センサ253へ入光される。そして、四分割受光センサ253において四分割されるとともに、四分割受光センサ253を構成する各受光センサで光電変換されてアナログ信号が生成される。このアナログ信号がセンサーアンプ211によって増幅される。
【0056】
センサーアンプ211から出力される増幅信号は、フォーカスエラー演算部271において演算処理される。この演算処理により、四分割された各センサから出力される相互の増幅信号からフォーカスエラー値が算出される。そして、このフォーカスエラー値がシステムコントローラ201に入力される。
【0057】
システムコントローラ201は、入力されたフォーカスエラー値を参照して、不図示のフォーカスアクチュエータドライバを制御し、対物レンズのフォーカスを合焦させる(ステップS503)。
【0058】
また、四分割受光センサ253から出力されるアナログ信号を、センサーアンプ211によって増幅した増幅信号は、トラッキングエラー演算部209にも入力される。トラッキングエラー演算部209は、入力された増幅信号同士を演算することによりトラッキングエラー値を算出する。そして、この算出したトラッキングエラー値をトラッククロスカウンタ207に出力する。トラッククロスカウンタ207は、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、スピンドルモータ1回転中のトラッククロス数を計数する(ステップS504)。
【0059】
このように、トラッキングアクチュエータを駆動制御しない状態で、トラッククロス数を計数することにより、挿入されているディスクの現在の光ピックアップ位置での偏心量の数値化ができる。そして、数値化された偏心量=トラッククロス数をシステムコントローラ201に出力する。
【0060】
システムコントローラ201は、このトラッククロス数と、予め設定してあるしきい値との比較をする(ステップS505)。この比較の結果、トラッククロス数がしきい値より大きい場合、つまり偏心量が大きい場合にはステップS506に進み、現在の光ピックアップ位置において200Hz間隔でスレッドモータを制御するように設定する。
【0061】
次に、ステップS508に進み、システムコントローラ201は現在の光ピックアップ位置における偏心量がしきい値をオーバーしていることを表示する。本実施形態においては、偏心量表示部273のLEDを点灯させて、しきい値をオーバーしていることの表示を行う。
【0062】
一方、ステップS505の比較の結果、トラッククロス数がしきい値より小さい場合、つまり偏心量が小さい場合にはステップS507に進み、現在の光ピックアップ位置において20Hz間隔でスレッドモータを制御するように設定する。
【0063】
次に、ステップS509に進み、システムコントローラ201は現在の光ピックアップ位置における偏心量がしきい値よりも下回っていることを示すアンダー表示を行う。本実施形態においては、偏心量表示部273のLEDを消灯させて、アンダー表示であることを表示する。
【0064】
最後に、システムコントローラ201はステップS510において、規定時間が経過したか判断する。そして、規定時間が経過したらステップS502に戻り、前述した処理を繰り返し行い、前述したスレッドモータ制御を行う。ステップS510においては、規定時間=1秒としている。したがって、本実施形態においては、1秒間に1回の一定頻度で偏心量を計測することができる。
【0065】
トラックの偏心量はディスク上の半径位置により差異があるため、本実施形態ではアクセス中の半径位置の偏心量を測定し、この結果によりスレッドモータを制御する例を示した。このように制御することにより、前述した第1及び第2の実施形態の制御よりも搭載されたディスク自体のアクセス中半径エリア特有の偏心形状に応じたスレッドモータの省電力制御を極め細かく行うことができる。
なお、前述の各実施形態では、スレッドモータの駆動(ドライブ)間隔を、200Hzと20Hzの二つの間隔のうちの何れかに設定したが、三つ以上の間隔を用意しておき、これら複数の駆動間隔の中から選択する構成でもよい。また、ディスク状記録媒体の半径方向の複数の所定位置での偏心量を計測する。そして、計測した複数の所定位置での偏心量に応じて、複数の所定位置におけるモータを駆動する頻度を決定するようにしてもよい。
【0066】
(本発明に係る他の実施の形態)
前述した本発明の実施の形態における光ディスク装置を構成する各手段は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0067】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施の形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0068】
なお、本発明は、前述した光ディスク装置の制御方法における各工程を実行するソフトウェアのプログラム(実施の形態では図2、図3及び図4に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムあるいは装置に直接、あるいは遠隔から供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0069】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0070】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0071】
プログラムを供給するための記録媒体としては種々の記録媒体を使用することができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0072】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0073】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0074】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0075】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施の形態の機能が実現される他、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行うことによっても前述した実施の形態の機能が実現され得る。
【0076】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第1の実施形態に係る光ディスク装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る光ディスク装置のスレッドモータの制御方法を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態に係る光ディスク装置のスレッドモータの制御方法を示すフローチャートである。
【図4】第3の実施形態に係る光ディスク装置のスレッドモータの制御方法を示すフローチャートである。
【図5】ディスク状の記録媒体と光ピックアップとの位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
101 光ディスク装置
102 記録媒体
201 システムコントローラ
203 トラッキングアクチュエータドライバ
205 レーザーダイオードドライバ
207 トラッククロスカウンタ
209 トラッキングエラー演算部
211 センサーアンプ
213 スピンドルモータドライバ
215 スレッドモータドライバ
251 光ピックアップの副軸
253 四分割受光センサ
255 レーザーダイオード
257 対物レンズ
259 コイル
261 マグネット
263 光ピックアップ
265 光ピックアップの主軸
267 スレッドモータ
269 スピンドルモータ
271 フォーカスエラー演算部
273 偏心量表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して光ビームを照射する照射手段と、
前記ディスク状記録媒体からの光ビームの反射光をセンサで検出して前記トラックに対するトラッキングエラーを示すエラー信号を検出するトラッキングエラー検出手段と、
前記トラッキングエラー検出手段の検出結果に従い、前記光ビームと前記トラックとのトラッキングを制御するトラッキング制御手段と、
前記トラッキング制御手段により行われるトラッキング制御に追従し、前記照射手段が搭載された光ピックアップを前記ディスク状記録媒体の半径方向へ移動させるモータを駆動するモータ制御手段と、
前記ディスク状記録媒体の偏心量を検出する偏心量検出手段と、
前記モータ制御手段が前記モータを駆動する頻度を決定する制御頻度決定手段とを備え、
前記制御頻度決定手段は、前記偏心量検出手段により検出された前記ディスクの偏心量が予め設定されたしきい値よりも大きければ前記モータ制御手段を頻繁に動作させるよう決定し、前記偏心量が前記しきい値よりも小さければ前記モータ制御手段を動作させる頻度を低下させるよう決定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記制御頻度決定手段は、前記ディスク状記録媒体が装着されたことに応じて前記偏心量検出手段により計測された偏心量と予め設定されたしきい値とを比較して前記頻度を決定し、
前記モータ制御手段は、新たに前記ディスク状記録媒体が装着されるまでの間、前記制御頻度決定手段により決定された頻度で前記モータを駆動することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記偏心量検出手段は、前記ディスク状記録媒体の半径方向の複数の所定位置での偏心量を計測し、
前記制御頻度決定手段は、前記偏心量検出手段により計測された前記複数の所定位置での偏心量に応じて、前記複数の所定位置における前記モータを駆動する頻度を決定することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記偏心量検出手段は、一定頻度で偏心量を計測し、
前記制御頻度決定手段は、前記偏心量検出手段により偏心量が計測される度に前記頻度を決定することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
多数のトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して照射手段から光ビームを照射する照射工程と、
前記ディスク状記録媒体からの光ビームの反射光をセンサで検出して前記トラックに対するトラッキングエラーを示すエラー信号を検出するトラッキングエラー検出工程と、
前記トラッキングエラー検出工程の検出結果に従い、前記光ビームと前記トラックとのトラッキングを制御するトラッキング制御工程と、
前記トラッキング制御工程において行われるトラッキング制御に追従し、前記照射手段が搭載された光ピックアップを前記ディスク状記録媒体の半径方向へ移動させるモータを駆動するモータ制御工程と、
前記ディスク状記録媒体の偏心量を検出する偏心量検出工程と、
前記モータ制御工程において前記モータを駆動する頻度を決定する制御頻度決定工程とを備え、
前記制御頻度決定工程においては、前記偏心量検出工程において検出された前記ディスクの偏心量が予め設定されたしきい値よりも大きければ前記モータ制御工程を頻繁に動作させるよう決定し、前記偏心量が前記しきい値よりも小さければ前記モータ制御工程を動作させる頻度を低下させるよう決定することを特徴とする光ディスク装置の制御方法。
【請求項6】
前記制御頻度決定工程においては、前記ディスク状記録媒体が装着されたことに応じて前記偏心量検出工程において計測された偏心量と予め設定されたしきい値とを比較して前記頻度を決定し、
前記モータ制御工程においては、新たに前記ディスク状記録媒体が装着されるまでの間、前記制御頻度決定工程において決定された頻度で前記モータを駆動することを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項7】
前記偏心量検出工程においては、前記ディスク状記録媒体の半径方向の複数の所定位置での偏心量を計測し、
前記制御頻度決定工程においては、前記偏心量検出工程において計測された前記複数の所定位置での偏心量に応じて、前記複数の所定位置における前記モータを駆動する頻度を決定することを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項8】
前記偏心量検出工程においては、一定頻度で偏心量を計測し、
前記制御頻度決定工程においては、前記偏心量検出工程において偏心量が計測される度に前記頻度を決定することを特徴とする請求項5に記載の光ディスク装置の制御方法。
【請求項9】
多数のトラックが形成されたディスク状記録媒体に対して照射手段から光ビームを照射する照射工程と、
前記ディスク状記録媒体からの光ビームの反射光をセンサで検出して前記トラックに対するトラッキングエラーを示すエラー信号を検出するトラッキングエラー検出工程と、
前記トラッキングエラー検出工程の検出結果に従い、前記光ビームと前記トラックとのトラッキングを制御するトラッキング制御工程と、
前記トラッキング制御工程において行われるトラッキング制御に追従し、前記照射手段が搭載された光ピックアップを前記ディスク状記録媒体の半径方向へ移動させるモータを駆動するモータ制御工程と、
前記ディスク状記録媒体の偏心量を検出する偏心量検出工程と、
前記モータ制御工程において前記モータを駆動する頻度を決定する制御頻度決定工程とをコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記制御頻度決定工程においては、前記偏心量検出工程において検出された前記ディスクの偏心量が予め設定されたしきい値よりも大きければ前記モータ制御工程を頻繁に動作させるよう決定し、前記偏心量が前記しきい値よりも小さければ前記モータ制御工程を動作させる頻度を低下させるよう決定することをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記憶したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−158009(P2009−158009A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335087(P2007−335087)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】