説明

光ディスク装置及び光ピックアップのクリーニング方法

【課題】光ピックアップのチルト機構によりクリーニング用のブラシと対物レンズの接触角を制御し、クリーニング効果を向上した光ディスク装置を提供する。
【解決手段】対物レンズ31を含む光ピックアップと、ディスク媒体として通常のディスクが装填された第1のモード、及びクリーニング用のブラシ101を有するクリーニングティスク100が装填された第2のモードにおいてディスク媒体を回転制御する駆動部と、ディスク媒体に対する対物レンズ31の傾斜角度を制御可能なアクチュエータ20と、アクチュエータ20を制御し、第2のモードにおいてブラシ101が対物レンズ31の位置を通過する際に、対物レンズ31の曲面に対してブラシ101が直角に近い角度で接触するように対物レンズ31をチルトさせるチルト制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク媒体に記録された情報を再生する光ディスク装置に係り、特に光ピックアップのレンズクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置では、光ピックアップからディスク媒体(光ディスク)に対してレーザ光を照射し、ディスク媒体に情報を記録したり、ディスク媒体に記録された情報を読み取るようにしている。光ピックアップには、対物レンズと、フォーカス/トラッキング制御を行うアクチュエータが搭載されており、光ピックアップは、スレッドモータによって光ディスクの径方向に順次移動し、アクチュエータによりトラッキング方向及びフォーカス方向への移動制御が行われている。またディスク媒体の傾きに対して光スポットの出射光をチルト制御するチルト制御機構が設けられている。
【0003】
ところで、光ディスク装置では、対物レンズの表面に塵埃が付着すると信号の読み取りエラー等が発生する。このため、ディスク装置にクリーニングディスクを装着して対物レンズのクリーニングを行っている。クリーニングディスクには、清掃用のブラシが植設されており、クリーニングディスクを回転することによって対物レンズの表面をブラシで掃き、塵埃や汚れを取り除くようにしている。
【0004】
特許文献1には、対物レンズの表面をクリーニングするクリーニング部材を設けたディスク装置について記載されている。
【0005】
また特許文献2には、クリーニングディスクに植設したブラシで対物レンズをクリーニングする例、及びクリーニング時に光ピックアップを振動させる例が記載されている。
【0006】
図7は、クリーニングディスクを使用して対物レンズに付着した塵埃等を取り除くときの動作を示す説明図である。図7(a)において、100はディスクを示し、101はディスクの特定のアドレス位置に植設されたブラシを示す。ディスク100は、ターンテーブル(図示せず)に載置され、ターンテーブルを回転することでディスクが回転する
光ピックアップは、ディスクと対向しており、光ピックアップには対物レンズ300を設けている。200はアクチュエータである。一方、ディスク100の回転によりブラシ101も移動するため、ブラシ101が対物レンズ300上を通過する際に、対物レンズ300に付着した塵埃を取り除くことができる。図7(a),(b),(c)で示すように、ディスク100が矢印Z方向に回転すると、クリーニング用のブラシ101が対物レンズの表面を掃いて通過し、対物レンズ300の表面に付着した塵埃を除去する。
【0007】
従来のディスク装置では、対物レンズ300の表面は放物線状の凸面となっているため、レンズの中心部分は、図7(b)で示すようにブラシ101にほぼ垂直に接触して塵埃を除去できるが、レンズの外周では、図7(a),(c)で示すように、ブラシ101と接触する角度が鈍角になるため、ブラシ101との接触面積が低下し、汚れを掻き落とす力が低下する。このため、塵埃を十分に除去できず、何度もクリーニングする必要がある。
【特許文献1】特開2003−317289号公報
【特許文献2】特開平6−333245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、クリーニングディスクを用いて対物レンズをクリーニングする光ディスク装置では、対物レンズの表面が放物線状の凸面になっているため、レンズの中心部分はブラシに垂直に接触するが、レンズの外周部では、ブラシと接触する角度が鈍角になり、ブラシとの接触面積が低下する。このため、汚れを掻き落とす力が低下し、塵埃を十分に除去できないという不具合があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、光ピックアップのチルト機構を使用して、クリーニング用のブラシと対物レンズの接触角を制御し、クリーニング効果を向上した光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の本発明の光ディスク装置は、対物レンズを含みディスク媒体に記録された情報を読み取り可能な光ピックアップと、前記ディスク媒体として通常のディスクが装填された第1のモード、及びクリーニング用のブラシを有するクリーニングティスクが装填された第2のモードにおいて前記ディスク媒体を回転制御する駆動部と、前記ディスク媒体に対する前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータと、前記アクチュエータを制御し、前記第2のモードにおいて前記ブラシが前記対物レンズの位置を通過する際に、前記対物レンズの曲面に対して前記ブラシが直角に近い角度で接触するように前記対物レンズをチルトさせるチルト制御部と、を具備したことを特徴とする。
【0011】
また請求項7記載の本発明は、光ピックアップのクリーニング方法であって、前記光ピックアップは、ディスク媒体に対向して配置した対物レンズと、前記ディスク媒体に対する前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータとを含み、前記ディスク媒体としてクリーニング用のブラシを有するクリーニングティスクが装填されたとき、前記ディスク媒体を回転駆動し、前記ブラシが前記対物レンズの位置を通過する際に前記アクチュエータを制御して、前記対物レンズの曲面に対して前記ブラシが直角に近い角度で接触するように前記対物レンズをチルトさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光ディスク装置では、対物レンズの外周部及び中央部の曲面にブラシがほぼ直角に接触するため、接触面積が増加し塵埃を効率よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の光ディスク装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る光ディ再生装置の全体構成を示すブロック図である。
【0015】
図1において、1は光ディスク等のディスク媒体(以下、ディスク1と称す)であり、スピンドルモータ2によって回転する。ディスク1に対する情報の記録・再生は、光ピックアップ3によって行われる。光ピックアップ3は、スレッドモータ4によってディスク1の径方向に駆動され、スピンドルモータ2及びスレッドモータ4は、モータ制御回路5によりそれぞれ制御される。尚、スピンドルモータ2及びモータ制御回路5は、ディスク1を回転制御する駆動部を構成する。
【0016】
光ピックアップ3には、対物レンズ31を設けており、この対物レンズ31は、アクチュエータ20によってフォーカシング方向(レンズ31の光軸方向)への移動とトラッキング方向(レンズ31の光軸と直交する方向)への移動が制御される。またチルト制御が可能となっている。
【0017】
ディスク1への情報の書き込みは、半導体レーザ発振器32から発せられた光ビームを、コリメータレンズ33及びビームスプリッタ34を介してディスク1に照射して行う。またディスク1からの情報の読取り(リード)は、ディスク1からの反射光を、対物レンズ31、ビームスプリッタ34、集光レンズ35、及びシリンドリカルレンズ36を介して、光検出器37に導くことによって行う。
【0018】
半導体レーザ発振器32は、レーザ制御回路6によって駆動制御され、レーザ制御回路6は、半導体レーザ発振器32から発せられる光ビームを記録/再生に応じて制御する。
【0019】
光検出器37は、例えば4分割の光検出セルから成り、各光検出セルの出力信号は、電流/電圧変換用のアンプを介して信号処理回路38に供給される。信号処理回路38は、光検出器37の出力信号を基に、フォーカス制御用の信号、トラッキング制御用の信号、及びデータ再生用の信号を出力する。
【0020】
フォーカス制御用の信号は、フォーカシング制御回路7に供給され、フォーカシング制御回路7の出力信号は、アクチュエータ20に供給される。これにより、光ビームが、ディスク1上に常時ジャストフォーカスする。
【0021】
トラッキング制御用の信号はトラッキング制御回路8に供給され、トラッキング制御回路8は、トラック駆動信号を作成してアクチュエータ20に供給する。これにより、光ピックアップ3のトラッキング方向の移動が制御される。また、トラッキング制御回路8からのトラック駆動信号は、モータ制御回路5にも供給され、スレッドモータ4を制御する。トラッキング制御回路8によって対物レンズ31が移動しているとき、スレッドモータ4を制御することで、対物レンズ31が光ピックアップ3内の中心位置近傍に位置するよう光ピックアップ3が移動する。
【0022】
また、ディスク1の傾きに対して光ビームの出射光をチルト制御するため、チルト制御回路9を設けている。チルト制御回路9からは、ディスク1の傾きに応じたチルト制御信号が生成され、アクチュエータ20に供給される。また、アクチュエータ20には、クリーニングディスクを用いて対物レンズ31のクリーニングを行う際にもチルト制御信号が供給される。
【0023】
また、アクチュエータ20には、フォーカス制御、トラッキング制御及びチルト制御のための各コイルを設けているが、詳細は後述する。
【0024】
一方、信号処理回路38からのデータ再生用の信号は、RFアンプを介してデータ再生回路10に供給される。データ再生回路10は、RFアンプの出力をアナログ・デジタル変換回路によってデジタル化し、デジタル化された信号を、PLL回路11からの再生用クロックに基づいて再生する。
【0025】
モータ制御回路5、レーザ制御回路6、チルト制御回路9、データ再生回路10、PLL回路11は、バス12に接続され、バス12を介してコントローラ13によって制御される。コントローラ13は制御部を構成するものであり、CPU131を含み、このCPU131は、ROM14に記録されたプログラムに従って動作する。
【0026】
バス12には、RAM15、データプロセッサ16、インターフェース回路17が接続され、インターフェース回路17にはホスト18が接続されている。データプロセッサ16は、エラー訂正回路を含み、CPU131によって指定された領域の情報をディスク1から読み出し、エラー訂正してRAM15に書き込む。
【0027】
インターフェース回路17は、ホスト18からのコマンドを制御部13に送ったり、ディスク1のデータを、ホスト18を介して外部に出力する役割を有する。例えば、音楽、画像DVDを再生可能なディスク装置では、ホスト18からのデータリード要求(読取り指令)に応じて目標アドレスの情報を読取る。
【0028】
次に、図2、図3を参照して対物レンズ31の駆動装置であるアクチュエータ20の構成について説明する。尚、図2、図3において、矢印Xはトラッキング方向を示し、Yはフォーカシング方向を示す。また、Zはトラッキング方向X及びフォーカシング方向Yと直交するタンデンシャル方向を示している。
【0029】
図2はアクチュエータ20の一例を示す斜視図である。また図3はアクチュエータ20の要部の分解斜視図であり、主に磁石とコイルの配置を示す。図2において、対物レンズ31は、レンズホルダ21に保持されており、レンズホルダ21のタンジェンシャル方向Zの両側面には平面状の駆動コイル22a,22bを取り付けている。またレンズホルダ21のトラッキング方向の両側面には中継基板23を取り付けている。中継基板23には駆動コイル22a,22bの端子が接続されている。
【0030】
また、レンズホルダ21の下部には磁性体の板金を折り曲げて形成した金属ベース24を設けている。金属ベース24は直角に折り曲げられ、折り曲げ部241はヨークになっており、ヨーク241には駆動磁石25a,25bを取り付け、磁気回路を構成している。駆動磁石25a,25bの表面部は、駆動コイル22a,22bと所定の隙間を隔てて配置されている。
【0031】
金属ベース24の一端部には固定部材26を固定し、この固定部材26からタンジェンシャル方向にワイヤ27を配置している。ワイヤ27の一端は中継基板23のランド部に固定し、ワイヤ27の他端は固定部材26に固定している。
【0032】
ワイヤ27は導電性であり、固定部材26に設けた回路基板28から駆動コイル22a,22bに電流を供給することによって、レンズホルダ21を含む可動部を任意の方向に駆動することができる。ワイヤ27で支持されたレンズホルダ21及びそれに取り付けられた駆動コイル22a,22b等は、対物レンズ31とともに可動部を構成する。
【0033】
駆動コイル22a,22bは、図3に示すように、トラッキングコイル41とフォーカシングコイル42、及びチルトコイル43で構成され、トラッキングコイル41のトラッキング方向の両側にフォーカシングコイル42を配置している。またフォーカシングコイル42に重なるように、三角形状のチルトコイル43を配置している。
【0034】
また、駆動磁石25a,25b(図3では駆動磁石25bのみを示す)は、S極の磁石とN極の磁石(斜線を施して示す)で構成している。尚、駆動磁石25a,25bは、一つの磁石を多極に着磁しても良いし、幾つかの磁石を複数並べて構成してもよい。
【0035】
このようなアクチュエータ20は、トラッキングコイル41、フォーカシングコイル42、チルトコイル43に流れる電流を制御することで対物レンズ31を、トラッキング方向X、フォーカシング方向Yに移動することができる。また、タンジェンシャル方向Zに対してラジアルチルト方向R及びタンジェンシャルチルト方向Tに傾斜させることができる。尚、チルトコイル43と駆動磁石25a,25bはタンジェンシャルチルト機構を構成する。
【0036】
このような光ディスク装置では、対物レンズに塵埃等が付着して汚れた場合にクリーニングディスクを使用してブラシでクリーニングを行う。しかしながら、図7でも説明したように、対物レンズの外周部ではブラシとの接触角度が鈍角になるため、対物レンズの表面を単純にブラシで拭き取るという方法では、付着した塵埃を十分に除去するこができない。
【0037】
そこで本発明では、クリーニングディスクを用いて対物レンズをクリーニングする際に、チルト機構によって対物レンズをチルトし、ブラシを対物レンズの全面に対してほぼ直角(垂直)に接触させる点に特徴がある。
【0038】
図4は、本発明の光ディスク装置における対物レンズ31の駆動回路を示すブロック図であり、チルト制御回路9を中心に示した図である。図4において、ディスク1は、スピンドルモータ2によって回転され、ディスク1に対向してアクチュエータ20を設けている。アクチュエータ20には、対物レンズ31を取り付けており、対物レンズ31は、トラッキング方向、フォーカシング方向に移動制御される。尚、対物レンズ31からディスク1への光路を31aで示す。
【0039】
またディスク1の下部には、ディスク1の傾きを検出する第1のチルトセンサ51を配置し、アクチュエータ20の下部には対物レンズ31の傾斜を検出する第2のチルトセンサ52を配置している。第1、第2のチルトセンサ51,52は、ディスク1及び対物レンズ31の傾斜を検出して電気信号に変換し、この電気信号をチルト制御回路9に供給する。
【0040】
チルト制御回路9は、第1、第2のチルトセンサ51,52の出力信号の差をもとに第1のチルト制御信号を生成し、出力端子53から第1のチルト制御信号を出力し、アクチュエータ20のチルトコイル43に供給する。第1のチルト制御信号を使用したチルト制御は、通常のディスク1を再生するとき(第1のモード)の制御である。
【0041】
また、チルト制御回路9にはコントローラ13を接続している。コントローラ13は、対物レンズ31をクリーニングする場合に、クリーニングディスク100が装填されたことを判断してチルト制御回路9を制御する。
【0042】
クリーニングディスク100が装填されたクリーニングモード(第2のモード)では、チルト制御回路9はコントローラ13の制御のもとに出力端子53に第2のチルト制御信号を出力する。第2のチルト制御信号は、対物レンズ31をチルト制御してクリーニングディスク100に植設したブラシと対物レンズ31とがほぼ直角に接触するように制御する。
【0043】
即ち、光ピックアップ3をクリーニングする際に、光ディスク装置にはクリーニングディスク100が装填され、クリーニングディスク100に植設したブラシ101によって対物レンズ31のクリーニングを行う。
【0044】
クリーニングディスク100には、音声や映像の情報のほかにクリーニングディスクであることを表す情報が記録されている。またブラシ101はディスク100の予め決められた複数箇所(アドレス)に植設されおり、ディスク100の回転によって複数回、対物レンズ31をクリーニングすることができる。つまり、クリーニングディスク100を1回再生することで、対物レンズ31は複数のブラシ101でクリーニングされる。尚、ブラシ101が植設された位置はアドレス情報を読み取ることで知ることができる。
【0045】
また、アクチュエータ20には、端子54,55からトラッキング制御信号とフォーカシング制御信号がそれぞれ供給され、トラッキングコイル41及びフォーカシングコイル42にそれぞれトラッキング制御用の信号と、フォーカシング制御用の電流を供給するようにしている。
【0046】
図5は、本発明による対物レンズ31のクリーニング動作を説明する図である。
【0047】
図5(a)において、100はクリーニングディスクを示し、101はディスクの特定のアドレス位置に植設されたブラシを示す。ディスク100は、ターンテーブル(図示せず)に載置され、ターンテーブルを回転することでディスク100が回転する。尚、クリーニングディスク100に植設されたブラシ101の幅はΦ0,6mm程度であり、対物レンズ31の幅はΦ3.80mm程度である。
【0048】
光ピックアップ3(対物レンズ31及びアクチャエータ20のみを図示)は、ディスク100と対向しており、ディスク100の回転によりブラシ101が対物レンズ31に接触して表面を拭きとる。
【0049】
尚、ブラシ101は決められたアドレスに植設されているので、再生中のアドレス情報を取得することで、ブラシ101が光ピックアップ3の位置に進入したタイミングや通過したタイミングを把握することができる。このため、クリーニング時にもディスク100のアドレス情報を読み取るようにしている。また、フォーカス制御も行われ、ブラシ101によって対物レンズ31をクリーニングするときは、対物レンズ31とディスク面との間隔がブラシ101の長さで規定される間隔となるようにフォーカス制御される。
【0050】
図5では、ディスク100の回転方向を矢印Zで示す。ディスク100が回転し、図5(a)で示すように、ブラシ101が対物レンズ31の光路に進入すると、チルト制御回路9はアクチャエータ20のタンジェンシャルチルト機構を制御して、対物レンズ31をディスク100の回転方向Zに対して角度αだけ傾斜させる。角度αのタンジェンシャルチルトにより、対物レンズ31の外周部はブラシ101と直角に近い角度で接触する。
【0051】
ディスク100が回転して、図5(b)で示すように、ブラシ101が対物レンズ31の光路の中央部に対向すると、チルト制御回路9はアクチャエータ20を制御して対物レンズ31を正規の姿勢に戻す。正規の姿勢では、対物レンズ31とディスク100がほぼ平行になり、ブラシ101が対物レンズ31の中央部にほぼ直角に接触する角度になる。
【0052】
ディスク100がさらに回転し、図5(c)で示すように、ブラシ101が対物レンズ31の光路を通過する手前の位置にくると、チルト制御回路9はアクチャエータ20を制御して対物レンズ31を回転方向Zと逆方向に角度αだけ傾斜させる。角度αの逆タンジェンシャルチルトにより、対物レンズ31の外周部はブラシ101とほぼ直角に接触する。
【0053】
したがって、図5(a),(b),(c)で示すように、ディスクが矢印Z方向に回転すると、クリーニング用のブラシ101は、対物レンズ31の曲面にほぼ直角に接触しながら通過するため、対物レンズ31の表面に付着した塵埃を確実に除去することができる。またブラシ101は複数の位置に植設しているため、複数回クリーニングすることができる。またそれぞれのブラシ101が対物レンズ31と対峙する毎に図5で示したチルト制御を行うことで、より確実に塵埃を除去することができる。
【0054】
またブラシ101が対物レンズ31の光路を通過すると、タンジェンシャルチルトが解除され正規の姿勢に復帰し、対物レンズ31からの光ビームはディスク100に対してほぼ直交するように照射される。
【0055】
図6は、レンズクリーニング時の動作を説明するフローチャートである。クリーニングディスク100の再生動作はコントローラ13の制御のもとに行われる。図6のステップS1は、光ディスク装置にクリーニングディスク100が装填されたクリーニング開始ステップを示している。
【0056】
クリーニングディスク100を装填すると、クリーニングディスク100にはクリーニングディスクであることを示す情報が記録されているため、コントローラ13は、チルト制御回路9をクリーニングモードで制御し、第2のチルト制御信号を生成してアクチュエータ20を制御する。
【0057】
ディスク100が回転して、ステップS2でブラシ101が対物レンズ31の光路に進入したと判断すると、ステップS3では、対物レンズ31をディスク100の回転方向Zに所定の角度αだけタンジェンシャルチルトする。図5(a)参照。
【0058】
所定時間の経過後、ステップS4では、対物レンズ31を正規の姿勢に戻し、ブラシ101が対物レンズ31の中央部に直角に接触するように制御する。図5(b)参照。さらに所定時間の経過後、ステップS5では、対物レンズ31をディスク100の回転方向Zと逆方向に角度αだけタンジェンシャルチルトする。図5(c)参照。
【0059】
そしてステップS6で、ブラシ101が対物レンズ31の光路を通過したことを判断すると、ステップS7では対物レンズ31を正規の姿勢に戻して再生を行う。ステップS8では次のブラシ101が存在するか否かを判断し、次のブラシ101がある場合は、ステップS2に戻って同じクリーニング動作を繰り返す。次のブラシ101がない場合は、ステップS9でクリーニング動作を終了する。
【0060】
即ち、クリーニングディスク100には、どの位置(アドレス)にブラシ101が存在するかの情報が記録されているため、コントローラ13は、それぞれのブラシ101の位置を検出してブラシ101が対物レンズ31の位置に進入したこと及び通過したことを判断できる。またブラシ101の個数を判断することができる。
【0061】
またコントローラ13は、ディスク100の回転速度をもとに、ブラシ101が対物レンズ31の光路に進入して通過するまでの時間を算出することができる。したがって、ブラシ101が対物レンズ31の光路に進入したことをトリガーにして、タンジェンシャルチルトの開始(ステップS3)と、正規姿勢への復帰(ステップS4)、及び逆タンジェンシャルチルトの開始(ステップS5)のタイミングを測ることができる。
【0062】
以上述べたように、本発明の光ディスク装置では、装填されたディスクがクリーニングディスクであると判断した場合、光ピックアップ3をクリーニング用のブラシ101のあるアドレスまで移動させ、対物レンズ31に対するブラシ101の接触角度を制御することにより、対物レンズ31の全表面においてブラシを直角に近い角度で接触させることができる。したがって対物レンズに付着した塵埃等を効率よく除去することができる。
【0063】
尚、タンジェンシャルチルト機構を含むアクチュエータ20の構成は、図2、図3の例に限らず他の機構を用いることもできる。
【0064】
また、以上の説明に限定されることなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図。
【図2】一実施形態に係るアクチュエータの一例を示す斜視図。
【図3】一実施形態に係るアクチュエータの要部の構成を示す分解斜視図。
【図4】一実施形態に係るチルト制御回路を示すブロック図。
【図5】一実施形態に係る対物レンズのクリーニング動作を説明する動作説明図。
【図6】一実施形態に係る対物レンズのクリーニング動作を示すフローチャート。
【図7】従来の光ディスク装置における対物レンズのクリーニング動作を説明する動作説明図。
【符号の説明】
【0066】
1…ディスク媒体
2…スピンドルモータ
3…光ピックアップ
4…スレッドモータ
5…モータ制御回路
6…レーザ制御回路
7…フォーカシング制御回路
8…トラッキング制御回路
9…チルト制御回路
10…データ再生回路
11…PLL回路
12…バスライン
13…コントローラ(制御部)
14…ROM
15…RAM
16…データプロセッサ
17…インターフェース回路
18…ホスト
20…アクチュエータ
31…対物レンズ
41…トラッキングコイル
42…フォーカシングコイル
43…チルトコイル
51,52…チルトセンサ
100…クリーニングディスク
101…ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを含みディスク媒体に記録された情報を読み取り可能な光ピックアップと、
前記ディスク媒体として通常のディスクが装填された第1のモード、及びクリーニング用のブラシを有するクリーニングティスクが装填された第2のモードにおいて前記ディスク媒体を回転制御する駆動部と、
前記ディスク媒体に対する前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御し、前記第2のモードにおいて前記ブラシが前記対物レンズの位置を通過する際に、前記対物レンズの曲面に対して前記ブラシが直角に近い角度で接触するように前記対物レンズをチルトさせるチルト制御部と、
を具備した光ディスク装置。
【請求項2】
前記チルト制御部は、前記第2のモードにおいて、前記クリーニングティスクから読み取ったアドレス情報をもとに前記ブラシの位置を判別し、前記ブラシが前記対物レンズの光路に進入したときに前記対物レンズを前記クリーニングディスクの回転方向にチルトし、前記ブラシが前記対物レンズの中央部に位置するときに前記対物レンズを正規の姿勢に戻し、前記ブラシが前記対物レンズの光路を通過する手前で前記対物レンズを前記クリーニングディスクの回転方向と逆方向にチルトさせることを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記チルト制御部は、前記ブラシが前記対物レンズの位置を通過したあとは前記対物レンズを正規の姿勢に戻すように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
さらにフォーカス制御回路を有し、
前記フォーカス制御回路は、前記第2のモードにおいて前記対物レンズと前記クリーニングディスク面との間隔が前記ブラシの長さで規定される間隔になるように前記対物レンズのフォーカス制御を行うことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記クリーニングティスクは、複数個所に前記ブラシを植設し、
前記チルト制御部は、前記複数のブラシが前記対物レンズの表面に対峙する毎に前記対物レンズをチルト制御し、前記対物レンズの曲面に対して前記複数のブラシが直角に近い角度で接触するようにしたことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記チルト制御部は、前記第1のモードでは、前記ディスク媒体の傾きに応じて前記対物レンズの傾きを補正することを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項7】
光ピックアップのクリーニング方法であって、
前記光ピックアップは、ディスク媒体に対向して配置した対物レンズと、前記ディスク媒体に対する前記対物レンズの傾斜角度を制御可能なアクチュエータとを含み、
前記ディスク媒体としてクリーニング用のブラシを有するクリーニングティスクが装填されたとき、前記ディスク媒体を回転駆動し、
前記ブラシが前記対物レンズの位置を通過する際に前記アクチュエータを制御して、前記対物レンズの曲面に対して前記ブラシが直角に近い角度で接触するように前記対物レンズをチルトさせることを特徴とする光ピックアップのクリーニング方法。
【請求項8】
前記クリーニングティスクが装填されたとき、前記クリーニングティスクから読み取ったアドレス情報をもとに前記ブラシの位置を判別し、
前記ブラシが前記対物レンズの光路に進入したときに前記対物レンズを前記クリーニングディスクの回転方向にチルトし、
前記ブラシが前記対物レンズの中央部に位置するときに前記対物レンズを正規の姿勢に戻し、
前記ブラシが前記対物レンズの光路を通過する手前で前記対物レンズを前記クリーニングディスクの回転方向と逆方向にチルトさせることを特徴とする請求項7記載の光ピックアップのクリーニング方法。
【請求項9】
前記ブラシが前記対物レンズの位置を通過したあとは、前記対物レンズを正規の姿勢に戻すように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項7記載の光ピックアップのクリーニング方法。
【請求項10】
前記対物レンズと前記クリーニングディスク面との間隔が前記ブラシの長さで規定される間隔になるように前記対物レンズのフォーカス制御を行うことを特徴とする請求項7記載の光ピックアップのクリーニング方法。
【請求項11】
前記クリーニングティスクは、複数個所に前記ブラシを植設し、
前記複数のブラシが前記対物レンズの表面に対峙する毎に前記対物レンズをチルト制御し、前記対物レンズの曲面に対して前記複数のブラシが直角に近い角度で接触するようにしたことを特徴とする請求項7記載の光ピックアップのクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−157293(P2010−157293A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335433(P2008−335433)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(504113008)東芝アルパイン・オートモティブテクノロジー株式会社 (110)
【Fターム(参考)】