説明

光ディスク装置

【課題】最適なディスク回転速度をより適切に制御する。
【解決手段】スピンドルモータおよび光ピックアップは、ピックアップベースに配置され、ピックアップユニットとしてユニット化されている。このピックアップユニットは、ダンパを介して固定部材であるシャシーに固定されている。ディスク回転速度を制御する際は、ピックアップユニットに生じる振動量だけでなく、温度変化に伴うダンパの振動減衰能力の変化も考慮して行う。具体的には、速度を高速から低速に切り替えるピックアップユニットの振動量の閾値Atを、ピックアップユニット周辺の温度に応じて可変としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともスピンドルモータと光ピックアップを含むピックアップユニットが弾性体を介して固定部材に固定された光ディスク装置における光ディスクの回転速度の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置において、光ディスクの回転速度は、光ディスクや光ディスク装置の振動量、データの記録・再生品質、発生熱量などに大きな影響を与えるため、適切に制御されることが望ましい。そこで、従来から、光ディスクの振動量や光ディスク装置内部の温度変化を考慮して光ディスクの回転速度を制御する技術が多数提案されている。例えば、特許文献1には、レーザ発光部(光ピックアップ)周辺の温度に基づいて記録速度を決定し、決定された記録速度以下でデータ記録されるようにモータの回転速度を制御することが開示されている。これは、ドライブの許容定格温度を超えないように決定されたレーザパワーで好適なデータ記録を行うためである。また、特許文献2には、回転中のディスクの振動に起因してトラッキング/フォーカスアクチュエータの温度上昇、ひいては、焼損を防止するために、ディスクの偏重心量および面振れ量に基づいて回転速度を決定する技術が開示されている。さらに、デジタル記録信号のエラー訂正やエラー検出の有無に応じてディスクの駆動速度を可変する技術(特許文献3)や、データを消去するときにスピンドルモータの回転数を下げる技術(特許文献4)なども開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−78777号公報
【特許文献2】特開平10−83615号公報
【特許文献3】特開平9−204741号公報
【特許文献4】特開平5−28621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまでの従来技術の中には、光ディスクの回転速度の制御において、ディスク回転時に生じる光ディスク装置の振動と、光ディスク装置内部の温度変化の双方を考慮しているものは少ない。特に、光ディスクの偏重心に起因する振動と光ディスクの記録再生動作に起因する温度変化とを関連付けて、光ディスクの回転速度を制御しているものはない。
【0005】
光ディスクの回転速度の制御において、光ディスク(光ディスク装置)の振動量に基づく回転速度と光ディスク装置内部の温度変化に基づく回転速度制御との間には、ある部分において相関関係が存在する。光ディスク(光ディスク装置)の振動は、光ディスクの偏重心の大きさに比例しており、光ディスクの偏重心が大きくなるほど、また、光ディスクの回転速度が高速になるほど、光ディスク(光ディスク装置)に発生する振動量は大きくなる。逆に言えば、偏重心が小さい光ディスクほど、光ディスク装置に発生する振動量が小さくなるため、光ディスクを高速で回転することが可能となる。ところが、光ディスクを高速で回転させ、光ディスクに対する情報の記録再生動作を高速にすると、スピンドルモータや光ピックアップ、信号処理回路などの発熱量が大きくなり、光ディスク装置内部の温度が上昇するため、熱による部品の損傷や情報の記録再生特性(信号品質)の低下を招くことがある。また、光ディスク装置内部の温度変化に伴い、スピンドルモータや光ピックアップが配置されるピックアップユニットの振動を吸収するための弾性体であるダンパの振動減衰特性が変化する。その結果、光ディスク装置内部の温度が上昇すると、偏重心が小さい光ディスクであっても、高速回転時に振動が発生しやすくなるという問題がある。そのため、光ディスク装置内部の温度上昇を防止し、光ディスク装置の動作を安定化させようとすると、光ディスクの回転速度を高速に出来ないということになる。
【0006】
このように、光ディスク(光ディスク装置)の振動量に基づいて光ディスクの回転速度を制御する方法では、偏重心が小さい光ディスクほど高速に回転させることができ、光ディスク装置の性能をフルに発揮することができるが、光ディスク装置内部の温度上昇により、思わぬアクシデントが発生する恐れがあるといった問題があった。
【0007】
一方、光ディスク装置内部の温度変化に基づいて光ディスクの回転速度を制御する方法では、光ディスク装置内部の温度上昇を抑制することができ、熱の影響によるアクシデントの発生を防止することができるが、光ディスクの高速回転が平均して抑制されてしまうため、光ディスク装置の性能を発揮しきれないといった問題があった。
【0008】
そこで、本発明では、ディスクの回転速度をより適切に制御でき得る光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光ディスク装置は、少なくともスピンドルモータと光ピックアップを含むピックアップユニットが弾性体を介して固定部材に固定される光ディスク装置であって、スピンドルモータによる光ディスクの回転に伴って生じるピックアップユニットの振動量を測定する振動測定手段と、ピックアップユニット周辺の温度を測定する温度測定手段と、測定された温度および振動量に基づいて、光ディスクの回転速度を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、制御手段は、測定された温度に基づいて回転速度を変更する振動量の閾値を決定し、当該決定された閾値と測定された振動量との比較結果に基づいて回転速度を決定する。この場合、温度によって可変の振動量の閾値を閾値情報として記憶する記憶手段を備えることが望ましい。
【0011】
他の好適な態様では、制御手段は、一定時間ごとに光ディスクの回転速度の制御動作を行う。他の好適な態様では、制御手段は、所定の基準以上の温度変化があった場合に回転速度の制御動作を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピックアップユニットの振動量と、ピックアップユニット周辺の温度と、に基づいてディスク回転速度を制御している。ピックアップユニット周辺の温度を考慮することにより、ピックアップユニットと固定部材の間に配された弾性体の振動減衰能力を考慮することができ、より適切にディスク回転速度を制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である光ディスク装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0014】
光ディスク100はスピンドルモータ12により回転駆動される。この光ディスク100の回転速度は、後述するようにコントローラ34により決定される。光ピックアップ(PU)14は光ディスク100に対向配置され、光ディスク100の記録面にレーザ光を照射するレーザダイオード(LD)及びフォトディテクタを含んで構成される。レーザダイオードは、レーザダイオード駆動回路(LDD)22により駆動され、データを再生する際には再生パワーのレーザ光を照射し、記録する際には記録パワーのレーザ光を照射する。レーザダイオードから照射された光は、対物レンズ等の光学系により集光され、光ディスク100の記録面で合焦する。記録面で反射された反射光の光量は、フォトディテクタにより検出される。フォトディテクタは、受光した反射光の光量に応じた検出信号を信号処理部26に出力する。
【0015】
光PU14の近傍には、温度を測定する温度センサ16が設けられている。光PU14は、光ディスク装置10を構成する部品の中で最大の熱源となる。したがって、従来から、この熱源である光PU14の近傍に温度センサ16を設け、各種パラメータの値制御に利用している。さらに、本実施形態では、この温度センサ16での検出結果を、後述するディスク回転速度の決定にも利用している。
【0016】
このスピンドルモータ12、光PU14および温度センサ16はピックアップベース(図1では図示せず)に配置されており、ピックアップ(PU)ユニットとしてユニット化されている。そして、このPUユニットは、光ディスク装置10のシャシーに固定配置される。このとき、PUユニットからシャシーへ伝達される振動を緩和するために、PUユニットとシャシーの間には、弾性体(例えば防振ゴムなど)からなるダンパが配される。
【0017】
信号処理部26は、光PU14からの信号に基づいて再生RF信号や、トラッキングエラー信号、フォーカスエラー信号等を生成する。生成された再生RF信号はデコーダ32に、トラッキングエラー信号はトラッキング制御部28に、フォーカスエラー信号はフォーカス制御部30にそれぞれ出力される。
【0018】
トラッキング制御部28は、トラッキングエラー信号に基づき光PUを光ディスクのトラック幅方向に駆動してオントラック状態に維持する。また、フォーカス制御部30はフォーカスエラー信号に基づき光ピックアップをフォーカス方向に駆動してオンフォーカス状態に維持する。通常、このトラッキング制御部28およびフォーカス制御部30は、トラッキングサーボおよびフォーカスサーボが常時オンになるべく光PU14の駆動系を制御する。しかし、後述する光PU14の振動量測定の際には、フォーカスサーボのみがオンで、トラッキングサーボはオフとする特殊な駆動態様をとる。
【0019】
デコーダ32は、再生RF信号を所定の閾値で二値化し、二値化信号を復調してコントローラ34に出力する。復調は、図示しないPLL回路で同期クロック信号を生成して信号を抽出することにより実行される。エンコーダ24は、コントローラ34から入力された信号を符号化し、LDD22に出力する。LDD22は、符号化された信号に応じてレーザ光を照射させるべく光PU14のレーザダイオードを駆動する。
【0020】
メモリ36は、各種駆動プログラムを記憶する記憶手段である。また、このメモリ36は、ディスク回転速度を切り替える振動量の閾値、すなわち、速度変更閾値も記憶している。速度変更閾値は、後に詳説するが、光PU14周辺の温度により可変する閾値である。この速度変更閾値の具体的な値は、予め、実験等により取得され、出荷前にメモリ36に記憶される。コントローラは、ディスク回転速度を制御する際には、このメモリ36に記憶されている速度変更閾値を参照する。
【0021】
コントローラ34は、上位装置からの指示にしたがって、光ディスク装置10の各部を制御する。具体的には、所定のシーケンスに従って各部に駆動信号や停止信号を出力する他、好適なデータ記録・再生に必要な各種パラメータ、例えば、レーザ光強度などを算出する。この一連の制御の詳細は、従来の公知技術と同様であるため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0022】
さらに、コントローラ34は、ディスク回転速度も算出する。本実施形態において、コントローラ34は、PUユニット周辺の温度およびPUユニットの振動量に基づいてディスク回転速度を決定する。ここで、PUユニット周辺の温度は、既述の温度センサ16により測定される。また、本実施形態では、光ピックアップ14を支持するサスペンションに生じる共振量をPUユニットの振動量として利用している。サスペンションの共振量は、トラッキングサーボをオフにした状態で、ディスクが一回転する間にレーザスポット光がトラックを横断する回数に基づいて算出されている。したがって、本実施形態では、光PU14や、信号処理部26、デコーダ32、コントローラ34、トラッキング制御部28、フォーカス制御部30等によって振動量測定手段が構成されることになる。
【0023】
なお、本実施形態では、温度センサ16での測定結果を、ディスク回転速度の算出以外にも利用しているため、当該温度センサ16を光PU14の近傍に設けている。しかし、当然ながら、これ以外の場所、例えば、後述するダンパ近傍に温度センサ16を設けるようにしてもよい。また、上記説明以外の方法でPUユニットの振動量を測定してもよい。例えば、PUユニットのピックアップベースに振動センサ等を配置し、PUユニットの振動量を直接測定するようにしてもよい。
【0024】
次に、この光ディスク装置10の物理的な構成について簡単に説明する。図2は、光ディスク装置10の物理的構成を概略的に示す図である。
【0025】
既述したとおり、スピンドルモータ12および光PU14は、ピックアップベース18に配置され、PUユニット20としてユニット化されている。このPUユニット20は、防振ゴムなどの弾性体からなるダンパ40を介してシャシー42に固定される。
【0026】
スピンドルモータ12で光ディスク100を回転駆動させると、当該光ディスク100の偏重心に起因して振動が発生する。この振動は、PUユニット20全体に伝達され、光PU14を支持するサスペンションワイヤ(図示せず)に共振が発生することになる。この共振量、ひいては、PUユニット20の振動量は、当然ながら、光ディスク100の偏重心が大きいほど、また、ディスク回転速度が速いほど増加する。
【0027】
光ディスク100の回転に伴いPUユニット20に生じた振動は、ダンパ40により吸収、緩和される。しかし、PUユニット20で生じた振動が過大、あるいは、ダンパ40の振動減衰能力(ダンパ係数)が低いと、ダンパ40で振動緩和できず、シャシー42に大きな振動が伝達されてしまう。その結果、光ディスク装置全体が大きく振動してしまい、騒音発生や寿命低下といった問題を招く。
【0028】
かかる光ディスク装置全体としての振動を低減するには、ディスク回転速度を低減し、
PUユニット20の振動量を低減することが有効である。しかしながら、ディスク回転速度を必要以上に低減した場合、情報の記録再生速度の低下を招き、光ディスク装置全体としての効率を低下させてしまう。そこで、PUユニット20の振動量を測定し、当該振動量が一定基準以上になった場合にのみ、ディスク回転数を下げてPUユニット20の振動量を低減させることが考えられる。かかる技術によれば、大幅な効率低下を招くことなく、光ディスク装置全体としての振動量を低減できる。
【0029】
しかしながら、PUユニット20の振動量と光ディスク装置全体の振動量(シャシーに伝達される振動量)は、必ずしも、比例関係ではなく、両者の関係はダンパ40の振動減衰特性によって大きく変化する。そして、ダンパ40の振動減衰特性は、一定ではなく、その周辺温度によって大きく変化する。ここでダンパ40が設けられているPUユニット20の周辺は、熱源となる光PU14やモータの近傍であるため温度変化が大きく、ダンパ40の振動減衰特性は大きく変動するといえる。このような状況下において、PUユニット20の振動量にのみ基づいてディスク回転速度を制御したとしても、光ディスク装置全体の振動量を一定基準以下に抑えることは困難であった。
【0030】
そこで、本実施形態では、PUユニット20の振動量だけでなく、ダンパ40の振動減衰特性の変化も考慮してディスク回転速度を決定するようにしている。以下、このディスク回転速度の決定について説明する。
【0031】
本実施形態では、PUユニット20の振動量に応じて、ディスク回転速度を高速から低速、または、低速から高速に切り替えている。このディスク回転速度の切り替えを行う振動量の閾値を、本実施形態では、温度によって可変としている。
【0032】
これは、温度変化に伴うダンパ40の振動減衰特性の変動を反映させるためである。すなわち、通常、防振ゴムなどからなるダンパ40は、温度が低くなるにつれ、振動減衰特性が低下することが知られている。そして、ダンパ40の振動減衰特性が低下した場合、PUユニット20の振動量が一定であっても、シャシー42に伝達される振動量は増加することになり、結果として、光ディスク装置全体として振動量が増加する。
【0033】
そこで、本実施形態では、ディスク回転速度の切り替えを行う振動量の閾値を温度によって可変としている。図3は、温度により可変の速度変更閾値Atの一例を示すグラフである。図3において、横軸は、PUユニット周辺の温度を、縦軸は、PUユニット20の振動量をそれぞれ示している。各温度のもとで測定されたPUユニット20の振動量(測定振動量Ar)が、当該温度下における速度変更閾値Atより上回った場合、コントローラは、ディスク回転速度を低速に設定する。逆に、測定振動量Arが、速度変更閾値Atより小さい場合には、ディスク回転速度を高速に設定する。
【0034】
この図3から明らかなように、本実施形態では、温度が高くなるにつれ、換言すれば、ダンパ40の振動減衰能力が増加するにつれ、速度変更閾値At、すなわち、PUユニット20の振動量の許容範囲を増加させている。逆に、温度が低くダンパ40の振動減衰能力が低下している場合には、PUユニット20の振動量が比較的小さくても、低速回転に切り替わるように、速度変更閾値Atを低くしている。
【0035】
このように温度変化、ひいては、ダンパ40の振動減衰特性変化に応じて、速度変更閾値Atを変化させることにより、ディスク回転速度の過度な低下を極力抑えつつ、光ディスク装置全体としての振動量を一定基準以下に抑えることができる。その結果、騒音発生や寿命低下などの問題を防止しつつ、効率的な情報の記録再生が可能となる。
【0036】
なお、当然ながら、図3に図示した速度変更閾値Atは、一例であり、異なる態様の速度変更閾値Atを採用してもよい。例えば、図3に図示した速度変更閾値Atは、温度20度までは変動せず、20度以降では比例的に増加する、いわば、直線的な変動態様であった。しかし、図4に図示するように、図3に図示した直線的な速度変更閾値を、二次式等で近似した曲線的な速度変更閾値Atを用いてもよい。また、本実施形態では、高速と低速の二段階にのみ速度切替を行っているが、当然、より多段階に速度切替を行うようにしてもよい。例えば、図5に図示するように、高速、中速、低速の三段階の速度を設定しておき、それぞれの速度ごとに、温度によって可変の速度変更閾値At1,At2を設定するようにしておいてもよい。
【0037】
また、上述の例では、いずれも、高温になればなるほど、高速でのディスク回転を許容するPUユニット20の振動量を大きくしている。これは、高温領域ではダンパの振動減衰能力が向上しており、PUユニット20の振動量がある程度大きくても、ダンパで吸収することができるからである。しかしながら、例え、ダンパの振動減衰能力が高くても、PUユニットの振動量が過度に大きい場合には記録再生品質の低下や、スピンドルモータ等の各種部品の発熱量の増加などの種々の問題を引き起こす。そこで、図6に図示するように、PUユニットの振動量が、記録再生品質などの観点から設定された振動限界値Kを超えた場合には、必ず、低速のディスク回転速度に変更される速度変更閾値Atを用いてもよい。すなわち、図3などに図示したようなダンパ40の温度変化に伴う振動減衰特性変化に基づいて設定された速度変更閾値を、PUユニット20の振動限界値Kでクリッピングした速度変更閾値Atを用いてもよい。
【0038】
次に、具体的に、本実施形態におけるディスク回転速度の決定の流れについて説明する。図7は、ディスク回転速度決定の流れを示すフローチャートである。
【0039】
本実施形態の光ディスク装置10は、予め、温度により可変の速度変更閾値Atに関する情報を閾値情報としてメモリ36に記憶している。なお、この閾値情報は、温度Tと速度変更閾値Atとを項目とするテーブルであってもよいし、温度Tを変数とする速度変更閾値Atの関数(Ar=f(T))などであってもよい。
【0040】
この光ディスク装置10に光ディスク100が装填されると、光ディスク100はスピンドルモータ12により回転駆動される(S10)。通常、この時点での回転速度は、効率的な情報の記録・再生が可能な高速である。また、光PU14は、光ディスク100の記録面に対してレーザ光の照射を開始する。このレーザ光の照射や、各種モータの駆動によって、PUユニット20周辺の温度は徐々に上昇することになる。また、光ディスク100の回転により、PUユニット20には、当該光ディスク100の偏重心に起因する振動が発生する。
【0041】
このときのPUユニット20周辺における温度は、温度センサ16により測定される(S12)。温度センサ16は、測定された温度Tnをコントローラ34に出力する。コントローラ34は、温度センサ16から入力された測定温度Tnと、メモリ36に記憶されている閾値情報と、に基づいて速度変更閾値Atを算出する(S14)。ここで算出された速度変更閾値Atは、温度変動に伴うダンパ40の振動減衰能力の変動を反映した閾値であり、シャシー42に伝達される振動量が一定基準以下となり得る値である。コントローラ34は、この算出された速度変更閾値Atをメモリ36に一時記憶する。
【0042】
続いて、PUユニット20の振動量Arを測定する(S16)。具体的には、一時的に、トラッキングサーボをオフにするとともに、その状態で光ディスクの記録面にレーザ光を照射する。そして、その際、光PU14から得られる信号に基づいて、光ディスクが1回転する間に、レーザスポットが光ディスク100のトラックを横断する回数をカウントする。PUユニット20の振動量Arが大きいほどトラック横断回数は多くなるため、コントローラ34は、トラック横断回数のカウント結果に基づいてPUユニット20の振動量Arを算出する。
【0043】
PUユニットの振動量Arが測定できれば、コントローラ34は、当該振動量Arと先に算出した速度変更閾値Atを比較する(S18)。比較の結果、測定振動量Arが速度変更閾値Atを上回っている場合には、シャシー42に伝達される振動量が過大であると判断し、ディスク回転速度を低速に切り替える(S20)。逆に、測定振動量Arが速度変更閾値At以下の場合には、シャシー42に伝達される振動量は所定の基準値未満と判断し、高速でのディスク回転を維持する(S22)。
【0044】
ディスク回転速度が決定すれば、その後、一定時間は、当該決定されたディスク回転速度で駆動する(S24,S26)。そして、一定時間が経過すれば、再び、ステップS12からステップS22の処理を繰り返す。このように、一定時間ごとにディスク回転速度の見直しを行うことにより、経時的に変動する温度、換言すればダンパ40の振動減衰能力にも追従でき、常に高効率かつ低振動での駆動が可能となる。
【0045】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、PUユニット20周辺の温度、換言すれば、ダンパ40の振動減衰能力と、PUユニット20の振動量Arに基づいて、ディスク回転速度を決定している。そのため、光ディスク装置全体としての振動を一定基準以下に抑えつつも、過度なディスク回転速度の低下を防止できる。その結果、高効率かつ低振動の光ディスク装置が実現できる。
【0046】
なお、本実施形態では、周期的にディスク回転速度の決定動作(図7ステップS12からステップS22)を行っているが、当然、これ以外のタイミングでディスク回転速度の決定動作を行ってもよい。例えば、PUユニット20周辺の温度測定を定期的に行い、前回のディスク回転速度決定動作時の測定温度Tnからみて、一定以上の温度変化が生じた場合にディスク回転速度の決定動作を実行するようにしてもよい。
【0047】
図8は、この場合のディスク回転速度決定の流れを示すフローチャートである。なお、図8において、ステップS14〜S22の詳細な内容は、図7と同じであるため、図8では、詳細の図示は省略している。
【0048】
この場合においても、光ディスク100が光ディスク装置10に装填され、情報の記録再生がユーザから指示されると、高速での光ディスクの回転が開始される(S10)。このとき、コントローラ34は、PUユニット20周辺の温度TnおよびPUユニット20の振動量Arに基づいてディスク回転速度を決定、制御する(S12〜S22)。具体的には、図7を用いて説明した場合と同様に、まず、PUユニット20の周辺温度Tnを温度センサ16により測定する(S12)。続いて、測定された周辺温度Tnに基づいて速度変更閾値Atを決定する(S14)。速度変更閾値Atが決定すれば、光PU14から照射されるレーザスポットのトラック横断回数に基づいて、PUユニット20の振動量Arを測定し(S16)、当該測定振動量Arと速度変更閾値Atとを比較する(S18)。比較の結果、測定振動量Arが速度変更閾値Atを上回っている場合にはディスク回転速度を低速に変更し(S20)、測定振動量Arが速度変更閾値At以下の場合にはディスク回転速度を高速のまま維持する(S22)。
【0049】
最初のディスク回転速度が決定すれば、以降は、PUユニット周辺の温度変化を監視する。すなわち、周期的に、PUユニット20の周辺温度Tmを測定する(S32)。このときの周辺温度Tmの測定間隔(S30で設定)は、比較的短い時間に設定されることが望ましい。これは、PUユニット20周辺の温度が急激に変化した場合でも、これを検知できるようにするためである。
【0050】
また、ここで測定された周辺温度Tmは、ディスク回転速度の決定に用いられた周辺温度Tnとは別個の値として一時記憶される。周辺温度Tmが測定されれば、続いて、前回のディスク回転速度決定時からの温度変化量ΔT(ΔT=|Tn−Tm|)を算出する(S34)。そして、算出された温度変化量ΔTと予め設定されている基準値とを比較する(S36)。比較の結果、周辺温度変化量ΔTが基準値を上回っている場合には、ダンパ40の振動減衰特性が変化し、発生振動量も大きく変化していることが予想されるため、改めて、ディスク回転速度を決定しなおす(S38、S14〜S22)。すなわち、Tn=Tmとして速度変更閾値Atを算出するとともに、PUユニット20周辺の測定振動量Arと算出された速度変更閾値Atとを比較して、ディスク回転速度の見直しを図る。
【0051】
一方、周辺温度変化量ΔTが基準値以下の場合には、ディスク回転速度の見直しを行うことなく、ステップS40へと進む。すなわち、情報の記録再生処理を終了させるべきか否かを判断し、終了すべき場合はそのまま全体の処理を終了させる。情報の記録再生処理を続行させる場合には、ステップS30〜S40を繰り返す。なお、周辺温度Tmの測定は、常に行うようにしてもよく(S32〜S40を常に実行)、この場合は、ステップS30が省略される。
【0052】
このように、定期的あるいは常に温度変化量ΔTを検知し、一定以上の温度変化があった場合にディスク回転速度の決定動作を行うことにより、不必要なディスク回転速度の決定動作、すなわち、ダンパの振動減衰特性、ひいては、発生振動量に大きな変化が生じていないのに行われるディスク回転速度の決定動作を防止でき、効率的なディスク回転速度の制御が可能となる。また、比較的、短い周期(常時含む)で周辺温度Tmを測定し続けることで、短時間のうちに生じた大きな温度変化も迅速に検知することができ、ひいては、ディスク回転速度の見直しを適切なタイミングで行うことができる。つまり、一定以上の温度変化があった場合にディスク回転速度の決定動作を行うことにより、常に、効率的かつ適切なディスク回転速度の制御が可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、段階的に速度を切り替えるようにしているが、PUユニット周辺の温度とPUユニットの振動量の両方を反映できるのであれば連続的に速度を変更するようにしてもよい。例えば、ディスク回転速度Wを、PUユニット周辺の温度TおよびPUユニットの振動量Arの関数として定義しておき(W=f(T,Ar))、定期的に、当該関数に測定温度T、測定振動量Arを代入して最適ディスク回転速度Wを求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態である光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】光ディスク装置の物理的構成の概略図である。
【図3】速度変更閾値の一例を示す図である。
【図4】速度変更閾値の他の例を示す図である。
【図5】速度変更閾値の他の例を示す図である。
【図6】速度変更閾値の他の例を示す図である。
【図7】ディスク回転速度の制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】ディスク回転速度の制御の流れの他の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
10 光ディスク装置、12 スピンドルモータ、14 光ピックアップ、16 温度センサ、18 ピックアップベース、20 ユニット、24 エンコーダ、26 信号処理部、28 トラッキング制御部、30 フォーカス制御部、32 デコーダ、34 コントローラ、36 メモリ、40 ダンパ、42 シャシー、100 光ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスピンドルモータと光ピックアップを含むピックアップユニットが弾性体を介して固定部材に固定される光ディスク装置であって、
スピンドルモータによる光ディスクの回転に伴って生じるピックアップユニットの振動量を測定する振動測定手段と、
ピックアップユニット周辺の温度を測定する温度測定手段と、
測定された温度および振動量に基づいて、光ディスクの回転速度を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
制御手段は、測定された温度に基づいて回転速度を変更する振動量の閾値を決定し、当該決定された閾値と測定された振動量との比較結果に基づいて回転速度を決定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ディスク装置であって、
温度によって可変の振動量の閾値を閾値情報として記憶する記憶手段を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ディスク装置であって、
制御手段は、一定時間ごとに光ディスクの回転速度の制御動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ディスク装置であって、
制御手段は、所定の基準以上の温度変化があった場合に回転速度の制御動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−334931(P2007−334931A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162068(P2006−162068)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】