説明

光ディスク装置

【課題】ランド部の不良による、信号的にはLPP状のノイズのある粗悪な光ディスクにおいても、LPPの検出に支障のないようなノイズ耐性を高くし、LPPの検出精度を上げる。
【解決手段】光ディスク装置のランドプリピット検出回路において、プッシュプル信号を入力し、第一のピーク電圧を出力する第一のピークホールド回路と、LPFを介してプッシュプル信号を入力し、第二のピーク電圧を出力する第二のピークホールド回路と、第一のピーク電圧を入力して、ボトム電圧を出力するボトムホールド回路と、ボトム電圧と第二のピーク電圧との差分を分圧して、ランドプリピットを検出するためのスライスレベルを生成するスライスレベル生成回路と、プッシュプル信号とスライスレベル生成回路により生成されたスライスレベルとを比較することにより、ランドプリピットを検出するコンパレータとを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係り、光ディスクのランド部分に、アドレス情報を記録するためのランドプリピットを設けたDVD−R/DVD−RWフォーマットの光ディスクであって、特に、ランド部の不良により発生する、信号的には、ランドプリピットと区別ができない様な大きなノイズに強く、ランドプリピットの検出精度に優れる光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DVDディスクは、動画、音声などのマルチメディアデータを格納するための記録媒体として、広く普及してきており、様々なフォーマットが提案されている。
【0003】
特に、記録型のDVDディスクの物理フォーマットとしては、ディスク表面をグルーブと呼ばれる溝の部分と、ランドと呼ばれるグルーブ間に設けられる台地形状の部分により構成し、グルーブの蛇行(ウォブル)により、アドレッシングをおこなう方法が一般的になっている。
【0004】
記録型のDVDディスクのフォーマットの一種であるDVD−R/DVD−RWでは、ウォブルに加えて、ランド部分にランドプリピット(LPP)と呼ばれるアドレスのためのピットを設けて、光ディスク上のアドレス情報を記録している。
【0005】
特許文献1には、フォトディタクタより得られるプッシュプル信号により、LPPを検出する技術が開示されている。この特許文献1のLPPの検出方法によれば、グルーブの蛇行及びノイズの影響による振幅変動成分を、ピークS1として保持し、これにオフセット成分S2を加えて、比較基準電圧Vthを生成して、この比較基準電圧Vthとプッシュプル信号を比較することにより、LPPの検出をおこなう。特許文献1では、このような方法により、ノイズや記録マークによる振幅変動に影響されることなく、安定的にLPPの検出をおこなえるものとしている。
【0006】
また、特許文献2には、プリピット検出回路のピーク値と、ウォブル信号成分のピーク値との差を分圧して、その分圧レベルをスライスレベルとして、コンパレータにより、LPPの検出をおこなう技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−134002号公報
【特許文献2】特開2005−166211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下、図7および図8を用いて従来技術に係るLPP検出回路の問題点について説明する。
図7は、従来技術に係るLPP検出回路を示す回路図である。
図8は、従来技術に係るLPP検出に関する波形図である。
【0009】
この図5に示す回路は、特許文献2と同様の発想であり、二つのピークホールド回路の示す電圧値を、分圧して、LPP検出のためのスライスレベル(閾値)を求めようとするものである。
【0010】
LPP検出回路0は、フォトディテクタ(図示せず)の出力が増幅されたプッシュプル信号を入力し、LPPを検出する信号を出力する回路である。
【0011】
ここで説明する従来技術に係る光ディスク装置のLPP検出回路0は、図7に示されるように、ピークホールド回路1:10、LPF(Low Pass Filter)20、ピークホールド回路2:30、スライスレベル生成回路40、コンパレータ50を有する。
【0012】
LPP検出回路0に入力されたプッシュプル信号は、ピークホールド回路1:10と、LPF20、ピークホールド回路2:30とに入力される。
【0013】
ピークホールド回路1:10では、入力された電圧のピーク電圧P1を出力する。一方、LPF20では、入力された信号を減衰させ、それをピークホールド回路2:30に入力し、ピークホールド回路2:30より、ピーク電圧P2が出力される。そして、ピークホールド回路1:10からのピーク電圧P1とピークホールド回路2:30からのピーク電圧P2が、スライスレベル生成回路40に入力されて、ピーク電圧P1とピーク電圧P2の電圧差に、一定の割合で分圧したものを、スライスレベルVSLとする。
【0014】
すなわち、以下の(式1)が成立する。
【0015】
SL=r(P1−P2) …(式1)
ここで、rは、LPPを検出するための適当な分圧比であり、例えば、1/2=50%である。
【0016】
そして、スライスレベル生成回路40により、生成されたスライスレベルVSLと、プッシュプル信号が、コンパレータ50により比較され、プッシュプル信号がVSLより大きくなったときに、LPPが検出されたものとする。
【0017】
図8(a)の(A)のときには、LPPのある場所で出力されるプッシュプル信号が、間歇的に示されており、それがスライスレベルVSLより大きくなり、それに対応して、図8(b)に示されるように、LPPが検出される。
【0018】
ところが、ノイズnがランド部の不良により発生し、極端に高いスパイク状のピーク電圧P1が発生したときには、VSLが大きくなる。したがって、スライスレベルVSLが減衰して、図8(a)の(C)のレベルに落ちるまでは、LPPがあるにも関わらず、図8(a)の(B)に示されるように、LPPが検出されない事態が発生する。
【0019】
このように、粗悪なディスクでノイズが検出されるようなときには、ノイズが発生した後に、ある程度の期間、LPPが検出されないという問題点がある。
【0020】
この原因は、ノイズレベルによって、ピークホールド回路1:10の出力のピーク電圧P1が、押し上げられ、これによって、スライスレベルVSLも、その直後に極端に大きくなるからである。ピークホールド回路1:10の電圧上昇は短時間で変化し、電圧降下は長時間で変化する特徴を備えているので、ピーク電圧P1は、ノイズ経過後はゆっくりと電圧降下する。したがって、スライスレベルVSLが、図8(a)の(C)のレベルにダウンするまで、LPPを検出することができない。
【0021】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、LPPを設けた光ディスクの記録と再生をおこなうための光ディスク装置において、ノイズのある粗悪なディスクにおいても、LPPの検出に支障のないようなノイズ耐性が高い、LPPの検出精度に優れる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の光ディスクの構成では、記録媒体となる光ディスクのランド部分に設けられたランドプリピットにより、光ディスク上のアドレス情報を読み取るDVD−R/DVD−RWの物理フォーマットを有する光ディスク装置において、プッシュプル信号を入力して、ランドプリピットを検出するランドプリピット検出回路を以下のように構成する。
【0023】
すなわち、プッシュプル信号を、第一のピークホールド回路に入力させ、また、LPFを介して、第二のピークホールド回路に入力させる。
【0024】
そして、第一のピークホールド回路から出力される第一のピーク電圧を入力して、ボトム電圧を生成するボトムホールド回路を設ける。このボトムホールド回路から出力させるボトム電圧は、第一のピーク電圧よりも小さく、かつ、ランド部不良によるノイズなどがある場合で、プッシュプル信号が大きくなる場合であっても、急激に変化しない。
【0025】
そして、スライスレベル生成回路では、ボトムホールド回路から出力されるボトム電圧と第二のピークホールド回路から出力される第二のピーク電圧との差分を分圧して、ランドプリピットを検出するためのスライスレベルを生成し、コンパレータにより、入力されるプッシュプル信号とスライスレベル生成回路により生成されたスライスレベルとを比較することにより、ランドプリピットを検出する。
【0026】
また、プッシュプル信号が逆向きの電圧を有する信号の場合は、上記の構成と「ピーク回路」と「ボトム回路」を逆にした構成にする。
【0027】
すなわち、プッシュプル信号を、第一のボトムホールド回路に入力させ、また、LPFを介して、第二のボトムホールド回路に入力させる。
【0028】
そして、第一のボトムホールド回路から出力される第一のボトム電圧を入力して、ピーク電圧を生成するピークホールド回路を設ける。
【0029】
スライスレベル生成回路では、ピークホールド回路から出力されるピーク電圧と第二のボトムホールド回路から出力される第二のボトム電圧との差分を分圧して、ランドプリピットを検出するためのスライスレベルを生成し、コンパレータにより、入力されるプッシュプル信号とスライスレベル生成回路により生成されたスライスレベルとを比較することにより、ランドプリピットを検出する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、LPPを設けた光ディスクの記録と再生をおこなうための光ディスク装置において、ランド部不良によるLPP状のノイズのある粗悪なディスクにおいても、LPPの検出に支障のないようなノイズ耐性が高い、LPPの検出精度に優れる光ディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る各実施形態を、図1ないし図6を用いて説明する。
【0032】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る第一の実施形態を、図1ないし図4を用いて説明する。
先ず、本発明の第一の実施形態に係る光ディスク装置の構造について説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る光ディスク装置の構造を示す図である。
【0033】
図1に示されるように、本発明の第一の実施形態に係る光ディスク装置は、光ディスク100に対して記録再生をおこなうための装置であり、光ディスクのランド部分に、アドレス情報を記録するためのランドプリピットを設けた、物理フォーマットがいわゆるウォブルグループ方式のDVD−R/DVD−RWフォーマットの光ディスクを対象とする。
【0034】
本発明の第一の実施形態に係る光ディスク装置は、図1に示されるように、光ディスク100、モータ101、光ピックアップ102、サーボ回路103、マトリクス回路110、ウォブル検出回路111、LPP検出回路0、アドレスデコーダ112、再生回路121、デコーダ122、クロック生成回路120、コントローラ130、エンコーダ131、レーザ制御回路132を備えている。
【0035】
コントローラ130は、中央処理装置(CPU)とROMやRAM等のメモリからなり、光ディスク装置の各部を制御し、必要な指示を与える。
【0036】
光ピックアップ102は、半導体レーザ等のレーザ光源と、そのレーザ光源が発するレーザ光を集光して光ディスク100にスポット光を照射する。この光ピックアップ102は、光ディスクからの反射光を分離するための、コリメータレンズと集光レンズおよびビームスプリッタ等からなる光学系と、その反射光を受光して電気信号(再生信号)に変換する受光手段であるフォトディテクタ等からなる。
【0037】
この光ディスク装置により、情報を記録するときには、記録すべき情報が外部のホスト装置(図示せず)からコントローラ130を介してエンコーダ131に送られる。エンコーダ131では、データフォーマットを変換する。そして、レーザ制御回路132が情報ビットに応じてピックアップ102に搭載されたレーザ光源の発光制御をおこなうことによって、記録用のスポット光による光ディスク100に対しての記録動作をおこなう。
【0038】
一方、光ディスク100に記録された情報を再生するときには、光ピックアップ102は、光ディスク100上にレーザ光による再生用のスポット光を照射し、その反射光をフォトディテクタで検出し、再生回路121がその検出された再生信号に対してフィルタリングとデジタル化をおこなう。そして、デコーダ122がこの再生回路121で生成されたデータのフォーマットを変換し、コントローラ130が、その再生情報を外部のホスト装置へ送る。
【0039】
光ピックアップ102に設けられたフォトディテクタは、光ディスク100のトラックの幅方向に2分割された構成となっており、そのフォトディテクタの2つの受光領域によってそれぞれ検出される2つの信号から、再生回路121によってサーボ信号を生成する。サーボ回路103は、その生成されたサーボ信号に従って、トラッキング用モータを駆動制御して、光ピックアップ102のトラッキング位置の制御をおこなう。また、サーボ回路103は、クロック生成回路120から出力されるクロック信号に基づいて、光ディスク100を回転させるモータ15の回転制御もおこなう。
【0040】
また、フォトディテクタの2つの受光領域によってそれぞれ検出される各信号は、マトリクス回路110によって、必要なプッシュプル信号に変換されて、ウォブル検出回路111とLPP検出回路0に送られる。そして、ウォブル検出回路111によって検出されたウォブルクロックに基づいて、クロック生成回路120が光ディスク100の回転に追従した正確なクロック信号を生成する。
【0041】
また、LPP検出回路0は、プッシュプル信号から物理アドレス情報を含むLPP信号を検出し、アドレスデコーダ112がそれをアドレス情報に変換し、そのときの光ピックアップ102による光ディスク100のアクセス位置のアドレス情報を得る。
【0042】
次に、図2を用いて光ディスクの物理フォーマットについて説明する。
図2は、光ディスクの表面の構造を示した鳥瞰図である。
【0043】
DVD−R/DVD−RWは、図2に示されるような表面構造を有している。すなわち、グルーブGと呼ばれる溝の部分と、ランドLと呼ばれる台形地上の部分が交互に設けられ、グルーブGは、蛇行(ウォブル)している。データの記録は、グルーブGに明けられる記録ピットPによりおこなわれる。
【0044】
ランドLには、ランドプリピットLPPと呼ばれる途切れた部分があり、このランドプリピットLPPがアドレス情報を表しており、これにより、データのアドレッシングをおこなう。
【0045】
本発明は、このランドプリピットLPPを検出する回路に関するものである。
【0046】
次に、図3および図4を用いて本発明の第一の実施形態に係るLPP検出処理について説明する。
図3は、本発明の第一の実施形態に係るLPP検出処理に関連する回路の回路図である。
図4は、本発明の第一の実施形態に係るLPP検出に関する波形図である。
【0047】
図3には、LPP検出処理に関連する回路として、フォトディテクタ、マトリクス回路110の一部、LPP検出回路0が示されている。
【0048】
フォトディテクタは、4分割された受光部A,B,C,Dを有しており、それらが、加算器110bで、A+Cの出力が作られ、加算器110aで、B+Dの出力が作られて、それらが差動アンプ110cに入力されて、マトリクス回路110から、(B+D)−(A+C)の出力が増幅されて、プッシュプル信号として出力される。なお、この図で、マトリクス回路110は、プッシュプル信号の生成のために必要なもののみを示している。
【0049】
LPP検出回路0は、図3に示されるように、ピークホールド回路1:10、LPF(Low Pass Filter)20、ピークホールド回路2:30、スライスレベル生成回路40、コンパレータ50、ボトムホールド回路60を有する。
【0050】
従来技術を示した図7の回路に加えて、ボトムホールド回路60が付け加わっている。
【0051】
マトリクス回路110から出力されたプッシュプル信号は、ピークホールド回路1:10と、LPF20、コンパレータ50とに入力される。
【0052】
ピークホールド回路1:10では、入力された電圧のピーク電圧P1を出力する。ピークホールド回路1:10は、図に示されるように、ダイオード10a、コンデンサ10b、抵抗10cを備えている。ピークホールド回路1:10に入力された電圧は、コンデンサ10bに電荷としてチャージされ、抵抗10cを介して徐々に放電される。したがって、ピークホールド回路1:10から出力される電圧P1は、立ち上がりが急峻で、電圧降下の場合は、緩やかなものになる。
【0053】
ピークホールド回路1:10から出力される電圧P1は、ボトムホールド回路60に入力される。ボトムホールド回路60は、図に示されるように、ダイオード60a、コンデンサ60b、抵抗60cを備えており、外部より直流電源70に接続されている。
【0054】
ボトムホールド回路60に入力された電圧は、逆特性のダイオード60aが接続されているために、電圧の上昇は緩やかなものになる。また、抵抗60cに直流電源70が接続されているために、コンデンサ60bに常時電荷がチャージされることになる。
【0055】
したがって、ボトムホールド回路60から出力されるボトム電圧bは、立ち上がりが緩やかなものになり、電圧降下は、比較的短時間で変化するものになる。
【0056】
一方、LPF20では、入力された信号を減衰させ、それをピークホールド回路2:30に入力し、ピークホールド回路2:30より、ピーク電圧P2が出力される。
【0057】
ピークホールド回路2:30は、ピークホールド回路1:10と同様に、ダイオード30a、コンデンサ30b、抵抗30cを備えている。ピークホールド回路2:30の回路特性は、ピークホールド回路1:10と同じである。また、ピークホールド回路2:30から出力される電圧P2についても、その特性は、ピークホールド回路1:10から出力される電圧P1と同じであるが、LPF20を介して、ピークホールド回路2:30に電圧が入力されるため、ピークホールド回路2:30から出力される電圧P2は、ずっと小さいものになる。
【0058】
そして、ボトムホールド回路60から出力されるボトム電圧bとピークホールド回路2:30からのピーク電圧P2が、スライスレベル生成回路40に入力されて、ボトム電圧bとピーク電圧P2の電圧差に、一定の割合で分圧したものを、スライスレベルVSLとする。
【0059】
すなわち、以下の(式2)が成立する。
【0060】
SL=r(b−P2) …(式2)
この(式2)は、(式1)のP1がbに置き換わったものである。
【0061】
なお、ここでも、rは、LPPを検出するための適当な分圧比であり、例えば、1/2=50%である。
【0062】
そして、スライスレベル生成回路40により、生成されたスライスレベルVSLと、プッシュプル信号が、コンパレータ50により比較され、プッシュプル信号がVSLより大きくなったときに、LPPが検出されたものとする。この原理については、従来技術と同様である。
【0063】
図4(a)の(A)のときには、LPPのある場所で出力されるプッシュプル信号が、間歇的に示されており、それがスライスレベルVSLより大きくなり、それに対応して、図4(b)に示されるように、LPPが検出される。この動作は、従来技術の図8(a)の(A)のときと同様である。
【0064】
問題は、ノイズnがランド部の不良により発生した場合である。このときに、極端に高いスパイク状のピーク電圧P1が発生するが、本実施形態では、ピーク電圧P1がボトムホールド回路60に入力され、ボトム電圧bに変換されて、(式2)に従って、スライスレベルVSLが生成される。
【0065】
本実施形態では、図4(a)に示されるように、ノイズnが混入して、ピーク電圧P1が大きくなる場合であっても、ボトム電圧bは、急に大きくなることはなく、徐々に上昇するため、スライスレベルVSLは、それほど大きくなることはなく、図4(a)の(B)の区間であっても、図4(b)に示されるように、LPPが検出できる。そして、ある程度の時間が経つと、図4(a)の(D)地点で、ピーク電圧P1とボトム電圧bが重なり、その後は、ゆっくりと電圧が降下していく。本実施形態では、ボトムホールド回路60を設けて、ボトム電圧bによりスライスレベルVSLを生成するために、スライスレベルVSLの変動が小さくなる。したがって、図4(b)に示されているように、ノイズn発生前の図4(a)の(A)の区間、ノイズn発生後の図4(a)の(B)の区間、また、スライスレベルVSL図4が定常状態に移行していく図4(a)の(C)の区間のいずれにおいても、LPPの検出をおこなうことができる。
【0066】
〔実施形態2〕
次に、図5および図6を用いて本発明の第二の実施形態に係るLPP検出処理について説明する。
本実施形態のLPP検出処理は、第一の実施形態と同様の思想に立つものであり、図1に示した光ディスク装置の構造は同じであるが、プッシュプル信号が第一の実施形態の逆電圧になる場合の例を説明するものである。
本実施形態のLPP検出処理は、概略として、第一の実施形態の「ボトム回路」を「ピーク回路」、「ピーク回路」を「ボトム回路」に、「ボトム電圧」を「ピーク電圧」、「ピーク電圧」を「ボトム電圧」に置き換えればよい。
【0067】
図5は、本発明の第二の実施形態に係るLPP検出処理に関連する回路の回路図である。
図6は、本発明の第二の実施形態に係るLPP検出に関する波形図である。
【0068】
図6に示されるように、LPP検出処理に関連する回路として、フォトディテクタ、マトリクス回路110の一部、LPP検出回路0であることは第一の実施形態と同様である。
【0069】
フォトディテクタの構造も、第一の実施形態と同様である。異なっているところは、図6(a)に示されるように、プッシュプル信号が逆向きの電圧を持つ信号であることである。
【0070】
LPP検出回路0は、図5に示されるように、ボトムホールド回路1:10′、LPF(Low Pass Filter)20、ボトムホールド回路2:30′、スライスレベル生成回路40、コンパレータ50、ピークホールド回路60′を有する。
【0071】
マトリクス回路110から出力されたプッシュプル信号は、ボトムホールド回路1:10′と、LPF20、コンパレータ50とに入力される。
【0072】
ボトムホールド回路1:10′では、入力された電圧のピーク電圧B1を出力する。ボトムホールド回路1:10′は、図に示されるように、ダイオード10′a、コンデンサ10′b、抵抗10′cを備えており、外部より直流電源70に接続されている。したがって、ボトムホールド回路1:10′から出力される電圧B1は、立ち下りが急峻で、電圧上昇の場合は、緩やかなものになる。
【0073】
ボトムホールド回路1:10′から出力される電圧B1は、ピークホールド回路60′に入力される。ピークホールド回路60′は、図に示されるように、ダイオード60′a、コンデンサ60′b、抵抗60′cを備えている。
【0074】
ピークホールド回路60′に入力された電圧は、コンデンサ60′bに電荷としてチャージされ、抵抗60′cを介して徐々に放電される。したがって、電圧の降下は緩やかなものになる。
【0075】
したがって、ピークホールド回路60′から出力されるピーク電圧pは、立ち下がりが緩やかなものになり、電圧上昇は、比較的短時間で変化するものになる。
【0076】
一方、LPF20では、入力された信号を減衰させ、それをボトムホールド回路2:30′に入力し、ボトムホールド回路2:30′より、ボトム電圧B2が出力される。
【0077】
ボトムホールド回路2:30′は、ボトムホールド回路1:10′と同様にダイオード30′a、コンデンサ30′b、抵抗30′cを備えており、外部より直流電源70に接続されている。ボトムホールド回路2:30′の回路特性は、ボトムホールド回路1:10′と同じである。また、ボトムホールド回路2:30′から出力される電圧B2についても、その特性は、ボトムホールド回路1:10′から出力される電圧B1と同じであるが、LPF20を介して、ボトムホールド回路2:30′に電圧が入力されるため、ボトムホールド回路2:30′から出力される電圧B2は、ずっと大きいものになる。
【0078】
そして、ピークホールド回路60′から出力されるピーク電圧pとボトムホールド回路2:30′からのボトム電圧B2が、スライスレベル生成回路40に入力されて、ピーク電圧pとボトム電圧B2の電圧差に、一定の割合で分圧したものを、スライスレベルVSLとする。
【0079】
すなわち、以下の(式3)が成立する。
【0080】
SL=r(p−B2) …(式3)
この(式3)は、(式2)のbがpに、P2がB2に置き換わったものである。
【0081】
なお、ここでも、rは、LPPを検出するための適当な分圧比であり、例えば、1/2=50%である。
【0082】
そして、スライスレベル生成回路40により、生成されたスライスレベルVSLと、プッシュプル信号が、コンパレータ50により比較され、プッシュプル信号がVSLより小さくなったときに、LPPが検出されたものとする。この原理については、従来技術と同様である。
【0083】
図6(a)の(A)のときには、LPPのある場所で出力されるプッシュプル信号が、間歇的に示されており、それがスライスレベルVSLより小さくなり、それに対応して、図6(b)に示されるように、LPPが検出される。この動作は、従来技術の図8(a)の(A)のときと同様である。
【0084】
問題は、ノイズnがランド部の不良により発生した場合である。このときに、極端に低いスパイク状のボトム電圧B1が発生するが、本実施形態では、ボトム電圧B1がピークホールド回路60′に入力され、ピーク電圧pに変換されて、(式3)に従って、スライスレベルVSLが生成される。
【0085】
本実施形態では、図6(a)に示されるように、ノイズnが混入して、ボトム電圧B1が小さくなる場合であっても、ピーク電圧pは、急に小さくなることはなく、徐々に降下するため、スライスレベルVSLは、それほど小さくなることはなく、図6(a)の(B)の区間であっても、図6(b)に示されるように、LPPが検出できる。そして、ある程度の時間が経つと、図6(a)の(D)地点で、ボトム電圧B1とピーク電圧pが重なり、その後は、ゆっくりと電圧が上昇していく。本実施形態では、ピークホールド回路60′を設けて、ピーク電圧pによりスライスレベルVSLを生成するために、スライスレベルVSLの変動が小さくなる。したがって、図6(b)に示されているように、ノイズn発生前の図6(a)の(A)の区間、ノイズn発生後の図6(a)の(B)の区間、また、スライスレベルVSL図4が定常状態に移行していく図6(a)の(C)の区間のいずれにおいても、LPPの検出をおこなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構造を示す図である。
【図2】光ディスクの表面の構造を示した鳥瞰図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るLPP検出処理に関連する回路の回路図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るLPP検出に関する波形図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るLPP検出処理に関連する回路の回路図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係るLPP検出に関する波形図である。
【図7】従来技術に係るLPP検出回路を示す回路図である。
【図8】従来技術に係るLPP検出に関する波形図である。
【符号の説明】
【0087】
10…ピークホールド回路1、20…LPF、30…ピークホールド回路2、40…スライスレベル生成回路、50…コンパレータ、60…ボトムホールド回路、
10′…ボトムホールド回路1、30′…ボトムホールド回路2、60′…ピークホールド回路、
100…光ディスク、101…モータ、102…光ピックアップ、103…サーボ回路、110…マトリクス回路、111…ウォブル検出回路、0…LPP検出回路、112…アドレスデコーダ、121…再生回路、122…デコーダ、120…クロック生成回路、130…コントローラ、131…エンコーダ、132…レーザ制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体となる光ディスクのランド部分に設けられたランドプリピットにより、光ディスク上のアドレス情報を読み取る光ディスク装置において、
前記光ディスクからの反射光から生成したプッシュプル信号を入力する第一のピークホールド回路と、
前記プッシュプル信号を入力する第二のピークホールド回路と、
前記第一のピークホールド回路から出力される第一のピーク電圧を入力して、ボトム電圧を出力するボトムホールド回路と、
前記ボトムホールド回路から出力されるボトム電圧と前記第二のピークホールド回路から出力される第二のピーク電圧との差分を分圧して、ランドプリピットを検出するためのスライスレベルを生成するスライスレベル生成回路と、
前記プッシュプル信号と前記スライスレベル生成回路により生成されたスライスレベルとを比較することにより、前記ランドプリピットを検出するコンパレータとを有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記ボトムホールド回路により出力されるボトム電圧は、前記第一のピーク電圧と比較して、電圧の増える割合が小さいことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記ボトムホールド回路により出力されるボトム電圧は、前記第一のピーク電圧と比較して、常に電圧の大きさが大きくないことを特徴とする請求項1記載の光ディスク装置。
【請求項4】
記録媒体となる光ディスクのランド部分に設けられたランドプリピットにより、光ディスク上のアドレス情報を読み取る光ディスク装置において、
前記光ディスクからの反射光から生成したプッシュプル信号を入力する第一のボトムホールド回路と、
前記プッシュプル信号を入力する第二のボトムホールド回路と、
前記第一のボトムホールド回路から出力される第一のボトム電圧を入力して、ピーク電圧を出力するピークホールド回路と、
前記ピークホールド回路から出力されるピーク電圧と前記第二のボトムホールド回路から出力される第二のボトム電圧との差分を分圧して、ランドプリピットを検出するためのスライスレベルを生成するスライスレベル生成回路と、
前記プッシュプル信号と前記スライスレベル生成回路により生成されたスライスレベルとを比較することにより、前記ランドプリピットを検出するコンパレータとを有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
前記ピークホールド回路により出力されるピーク電圧は、前記第一のボトム電圧と比較して、電圧の減少する割合が小さいことを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記ピークホールド回路により出力されるピーク電圧は、前記第一のボトム電圧と比較して、常に電圧の大きさが大きいことを特徴とする請求項4記載の光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−70484(P2009−70484A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238043(P2007−238043)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】