説明

光ディスク装置

【課題】省スペース、低コストを維持しつつ、衝撃が作用した際の構成部材の変形を防止し、構成部材の脱落を防止でき、耐衝撃性能を向上する。
【解決手段】光ディスク装置は、メインフレームと、媒体駆動部と、媒体駆動部を昇降自在に支持した昇降保持部材24と、昇降保持部材と係合したカムを有し、移動に応じて昇降保持部材を昇降させる摺動部材と、を有している。昇降保持部材は、一対のアーム部24a、24bと、アーム部の一端部間を延びているとともに前壁と対向した連結部24cと、アームの他端部に設けられ側壁に支持された支点部23a、23bと、連結部から前壁側に突出しカムと係合した係合ピン26aと、係合ピンに形成され昇降保持部材が上昇位置に移動した際、摺動部材と係合して係合ピンと摺動部材とを係合状態に維持するフック27と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスク状の記録媒体に対して情報処理を行う光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスク状の記録媒体として、DVD−ROMに代表される再生専用タイプ、DVD−Rに代表される1回記録タイプ、ならびにコンピュータの外付けメモリや録再ビデオに利用可能なDVD−RAMおよびDVD−RWに代表される書き換え可能タイプ等の光ディスクが広く普及している。
【0003】
光ディスクに情報を記録し、または光ディスクから情報を再生する光ディスク装置は、ディスク挿入口を有した筐体と、光ディスクを支持し、筐体に対して光ディスクを装填および排出するディスクトレイと、を備えている。ディスクトレイは、光ディスクを装填および取出し可能な引出し位置と、筐体内に引き込まれ光ディスクを駆動可能な駆動位置との間を移動可能に設けられている。
【0004】
筐体内には、装填された光ディスクを支持および回転させるモータ、および光ディスクに対して情報を読み出し、書き込みを行う光ピックアップ等が配設されている。モータおよびピックアップは、トラバースシャーシ上に設けられている。トラバースシャーシの一端部には枢軸として機能するボスが設けられ、このボスにより筐体内に回動自在に支持されている。また、トラバースシャーシの他端部にはカムピンが立設されている。このカムピンは、筐体に摺動自在に設けられたカム部材のカム溝に係合している。そして、カム部材を往復移動させることにより、トラバースシャーシはボスの周りで、下降位置と上昇位置との間を回動される(例えば、特許文献1参照)
ディスクトレイが移動する間、トラバースシャーシは下降位置に退避され、光ディスクが所定の駆動位置に引き込まれると、トラバースシャーシが上方に回動される。これにより、モータが上昇してディスクをクランプするとともに、光ピックアップが光ディスクの記録面と対向する。
【0005】
上記のような光ディスク装置において、落下時のような大きな衝撃が作用し、例えば、トラバースシャーシが変形した場合、各部材と筐体との係合あるいは他の部材同士の係合が外れ、動作不良を生じる可能性がある。そのため、衝撃を受けた場合でも、部材の位置ずれ、外れ、損傷等を防止し、信頼性の向上を図る必要がある。
そこで、上記光ディスク装置では、トラバースシャーシのボスの先端近傍に突起を形成し、筐体からのボスの脱落を防止している。
【特許文献1】特開2004−164721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、衝撃あるいは負荷を受けてトラバースシャーシが変形した場合、トラバースシャーシのカムピンがカム部材から脱落し、トラバースシャーシの昇降動作ができなくなるおそれがある。また、カムピンがカム部材から脱落する際、カム部材あるいはカムピンが損傷する。このようなトラバースシャーシの変形を防止するため、部材の厚み等を大きくするなどして補強する、またカムピンとカム部材との係合長を長くするなどが考えられるが、これは部品の大型化となり、装置の大型化、製造コストの増加を招く要因となる。
【0007】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、省スペース、低コストを維持しつつ、衝撃が作用した際の構成部材の変形を防止し、構成部材の脱落を防止でき、耐衝撃性能が向上した光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の態様に係る光ディスク装置は、対向した一対の側壁と、前記側壁間を延びた前壁とを有するメインフレームと、ディスク状の記録媒体を支持および回転するモータと、記録媒体に対して情報処理を行うヘッド部とを有し、前記記録媒体を駆動する駆動位置と、前記記録媒体の装填および取出しを許容する退避位置と、の間を昇降可能に設けられた媒体駆動部と、前記媒体駆動部を支持しているとともに、前記駆動位置に対応する上昇位置と前記退避位置に対応する下降位置との間を昇降可能に前記メインフレームに支持された昇降保持部材と、前記前壁に移動自在に設けられているとともに前記昇降保持部材と係合したカムを有し、移動に応じて前記昇降保持部材を昇降させる摺動部材と、を備え、
前記昇降保持部材は、それぞれ前記側壁と対向して延びた一対のアーム部と、アーム部の一端部間を延びているとともに前記前壁と対向した連結部と、前記アームの他端部に設けられ前記側壁に支持された支点部と、前記連結部から前記前壁側に突出し前記カムと係合した係合ピンと、前記係合ピンに形成され前記昇降保持部材が前記上昇位置に移動した際、前記摺動部材と係合して前記係合ピンと摺動部材とを係合状態に維持するフックと、を有している。
【発明の効果】
【0009】
この発明の態様によれば、省スペース、低コストを維持しつつ、衝撃が作用した際の構成部材の変形を防止し、構成部材の脱落を防止でき、耐衝撃性能が向上した光ディスク装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る光ディスク装置について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る光ディスク装置のトップカバーを取り外して光ディスク装置の外観構造を示し、図2は、後述するディスクトレイを省略して光ディスク装置の内部構造を示している。図3は、光ディスク装置のメインフレームを示している。
【0011】
図1および図2に示すように、光ディスク装置は、筐体を構成する上面が開口した矩形箱状のメインフレーム11を備えている。メインフレーム11内には、記録媒体としての光ディスク8を保持し搬送するディスクトレイ20、光ディスクを支持および回転する昇降自在なディスク駆動部22、およびディスクトレイおよびディスク駆動部を移動させる移動機構50が設けられている。メインフレーム11の底面には、制御部を構成する図示しない回路基板が実装されている。
【0012】
図2および図3に示すように、メインフレーム11は、間隔をおいて互いに平行に対向した一対の側壁11a、11b、これらの側壁間を延びた後壁11cおよび前壁部11dを一体に備え、ABS等の合成樹脂により形成されている。一対の側壁11a、11bの各内面側には、後述するシャーシマウント24の支点部を回動自在に支持する係合凹所15a、15bが形成されている。メインフレーム11の後壁11cの内側に位置した2つの角部には、ディスク駆動部22を支持する一対の支持ポスト12が設けられている。
【0013】
前壁部11dは、側壁11a、11bの前端部間を延び、後壁11cとほぼ平行に対向している。前壁部11dには、矩形状の開口からなるディスク挿入口14が形成されている。また、前壁部11は、移動機構50を取り付ける取り付け部を構成している。すなわち、前壁部11dには、ギア支点ボス13a、プーリーギア支点ボス13b、モータ取り付け部13c、および後述するカムスライダを移動自在に支持するスライド溝13dが形成されている。
【0014】
図4は、記録媒体保持体として機能するディスクトレイ20の裏面側および移動機構50とディスクトレイとの係合状態を示している。図5(a)は、ディスクトレイが動作位置に引き込まれた状態を示す光ディスク装置の断面図、図5(b)は、ディスクトレイが装填取出し位置に移動した状態を示す光ディスク装置の断面図である。
【0015】
図1および図4に示すように、ディスクトレイ20はほぼ矩形板状に形成され、その一部には、光ディスク8に対するディスク駆動部22のアクセスを許容する窓部21が形成されている。ディスクトレイ20は、側壁11a、11b間に配置され、側壁と平行な方向に沿って、つまり、メインフレーム11の長手方向(移動方向A)に沿って移動可能に支持されている。ディスクトレイ20の裏面には、ラック23が形成されディスクトレイの長手方向のほぼ全長に渡って延びている。このラック23は、後述する移動機構50のトレイギア56aと歯合している。
【0016】
ディスクトレイ20は、メインフレーム11内の所定位置に引き込まれた図5(a)および図1に実線で示す作動位置と、ディスク挿入口14を通して筐体10の外部に突出する図5(b)および図1に2点鎖線で示す装填取出し位置との間を直線的に移動可能に支持され、移動機構50により、これら作動位置と装填取出し位置との間を移動される。作動位置において、ディスクトレイ20はディスク駆動部22の上方に重なって位置し、ディスクトレイ20に保持された光ディスク8はディスク駆動部22によって駆動可能となる。装填取出し位置において、ディスクトレイ20に対して光ディスク8の装填および取出しが可能となる。
【0017】
図6は、光ディスク装置のディスク駆動部22、移動機構50、およびシャーシマウント24を示す分解斜視図であり、図7および図8はシャーシマウントをそれぞれ示している。
【0018】
図2、図3、図6および図7に示すように、メインフレーム11には、ディスク駆動部22を昇降自在に支持するシャーシマウント24が設けられている。シャーシマウント24は、ほぼU字形状に形成され、メインフレーム11に回動自在に取り付けられている。昇降保持部材として機能するシャーシマウント24は、間隔をおいて互いに平行に対向した一対のアーム部24a、24bと、アーム部と直交してアーム部の一端部間を延びているとともにアーム部の先端同士を連結した連結部24cとを有している。
【0019】
アーム部24a、24bの後端部には、それぞれ回動支点部となる枢軸23a、23bが形成され、アーム部から外側に突出している。シャーシマウント24の各角部の内側には、ディスク駆動部22を支持する一対の支持ポスト25が設けられている。シャーシマウント24は、移動機構50の後述するスライドカムと係合する一対の係合ピン26a、26bを有している。これらの係合ピン26a、26bは、連結部24cの中央部から前方に突出しているとともに、連結部の延出方向に沿って互いに離間して位置している。
【0020】
図7および図8に示すように、一対の係合ピン26a、26bの内、少なくとも一方の係合ピン、ここでは、係合ピン26aには、フック27が一体に形成されている。このフック27は、係合ピン26aの延出端から径方向外方に向かって延出している。また、フック27は、後述するカムスライダの傾斜カム部(傾斜溝部)に対応する角度に傾斜して設けられている。
【0021】
シャーシマウント24は、連結部24cに形成されたガイドボス29および押圧突起30を一体に有している。ガイドボス29および押圧突起30は、シャーシマウント24が後述する上昇位置に移動された際、メインフレーム側に設けられたガイド溝およびガイドリブとそれぞれ係合し、シャーシマウントのガタツキ、振動を防止する。ガイドボス29は、落下衝撃荷重を受けても破損しない充分な強度を有している。
【0022】
係合ピン26a、26b、ガイドボス29、および押圧突起30を含むシャーシマウント24は、例えば、メインフレーム11よりも硬い樹脂により一体に成形されている。
【0023】
図2に示すように、シャーシマウント24は、メインフレーム11の側壁11a、11bに設けられた係合凹所15a、15bに、枢軸23a、23bがそれぞれ回動自在に係合した状態で、メインフレームに取り付けられている。一対のアーム部24a、24bはそれぞれ側壁11a、11bと平行に延びている。連結部24cは、枢軸23a、23bに対してディスク挿入口14側に位置し、側壁11a、11b間をこれら側壁と直交する方向に延びているとともにメインフレーム11の前壁部11dと隙間を置いて対向している。そして、シャーシマウント24は枢軸23a、23bの回りで、上昇位置と下降位置との間を回動可能に支持され、連結部24cは、シャーシマウント24の上昇位置と下降位置との間の回動に伴い、昇降する。
【0024】
図2および図6に示すように、ディスク駆動部22は金属板で形成された矩形枠状のシャーシ28を有している。シャーシ28において長手方向の前端部には、駆動源としてのスピンドルモータ32が取り付けられ、このスピンドルモータの回転軸には、光ディスク8を支持および所定の速度で回転するターンテーブル33が固定されている。シャーシ28には、互いに平行に延びた一対のガイドレール34が取り付けられている。ガイドレール34はメインフレーム11の側壁11a、11bに対し僅かに傾斜して延びている。
【0025】
ディスク駆動部22は、光ディスク8に対して情報の書き込み、読み出しを行う光ピックアップ36、および光ピックアップを移動させるピックアップ駆動機構37を備えている。光ピックアップ36は一対のガイドレール34によりこれらのガイドレールに沿って往復移動可能に支持されている。ピックアップ駆動機構37は、シャーシ28上に取り付けられた送りモータ38、および送りモータの回転軸に連結されたリードスクリュー39を有している。リードスクリュー39は、ガイドレール34と平行に延びているとともに光ピックアップ36と係合している。
【0026】
ヘッド部として機能する光ピックアップ36は、光ディスク8からの情報の読み出しおよび情報の書き込み時、ターンテーブル33上に支持された光ディスク8の情報記録面と対向して位置し、ピックアップ駆動機構37により、ガイドレール34に沿って光ディスクの径方向に移動される。
【0027】
シャーシ28は、その長手方向一端側(後端側)の2つの角部が一対の第1ダンパ30aによりメインフレーム11の後壁11cの支持ポスト12に弾性的に支持され、長手方向他端側(前端側)が一対の第2ダンパ30bによりシャーシマウント24の支持ポスト25に支持されている。これにより、シャーシ28は、4つのダンパ30a、30bによって弾性的に支持されている。
【0028】
ディスク駆動部22は、一対の第1ダンパ30aを支点として、図5(a)に示す上昇位置(駆動位置)と図5(b)に示す下降位置(退避位置)との間をシャーシマウント24と共に回動可能に、つまり、昇降可能に支持されている。シャーシ28は、駆動位置において、ディスクトレイ20とほぼ平行に位置し、退避位置において、第2ダンパ30b側の端部がディスクトレイ20から下方に離間して位置する。
【0029】
図2、図4、図6、および図9に示すように、ディスクトレイ20およびディスク駆動部22を移動させる移動機構50は、メインフレーム11の前壁部11dに設けられディスクトレイ20の下方に位置している。移動機構50は、前壁部11dのモータ取り付け部13cに取り付けられた駆動源としてのローディングモータ51、ローディングモータの回転軸に圧入されたプーリー52、前壁部のプーリーギア支点ボス13bに回転自在に取り付けられたプーリーギア54、プーリー52とプーリーギア54に掛け渡された駆動ベルト53、前壁部のギア支点ボス13aに回転自在に取り付けられプーリーギア54と歯合した駆動ギア56、およびカムスライダ58を備えている。
【0030】
駆動ギア56の一方の表面上には、ディスクトレイ20のラック23と歯合するトレイギア56aが同軸的に形成され、他方の表面上には、カムスライダ58のラックと歯合するカムギア56bが同軸的に形成されている。ローディングモータ51の回転軸、プーリー52、プーリーギア54、駆動ギア56のそれぞれの回転軸は、ディスクトレイ20の表面と直交する方向に延びている。
【0031】
図6、図9、図10に示すように、摺動部材として機能するカムスライダ58は、ディスクトレイ20の移動方向Aと直行する方向Bに延びた細長い板状のカム板58aと、カム板から前方へ延出したガイド板58bとを有し、合成樹脂等により一体に成形されている。カムスライダ58は、カム板58aの下端部が前壁部11dのスライド溝13d(図3参照)に係合した状態でメインフレーム11に支持され、ディスクトレイ20の移動方向Aと直行する方向Bに沿って摺動可能に支持されている。カム板58aは、シャーシマウント24の連結部24cと対向して位置している。
【0032】
ガイド板58bの一端部には、カムギア56bと歯合可能なラック60が形成されている。そして、カムスライダ58は、カムギア56bにより駆動され、ディスクトレイ20の移動に連動して移動方向Bに往復移動される。カム板58aには、カムとして機能する一対のカム溝64、65が形成されている。一対のカム溝64、65は互いに平行に形成されている。
【0033】
各カム溝64、65は、移動方向Bに沿って水平に延びた第1溝部64a、65aと、第1溝部から斜めに上方に向かって延びた傾斜溝部64b、65bと、傾斜溝部の上端から移動方向Bに沿って水平に延びた第2溝部64c、65cと、を有している。一方のカム溝64の内、第1溝部64aおよび傾斜溝部64bの第1溝部64a側端部は、カム板58aを貫通し、カム板の両面に開口している。カム溝64の他の部分およびカム溝65は、カム板58aにより前面側が覆われ、底有の溝として形成されている。
【0034】
カム板58aの一対のカム溝64、65には、シャーシマウント24の連結部24cに突設された一対の係合ピン26a、26bがそれぞれ摺動自在に係合している。そして、カムスライダ58の移動に伴い、係合ピン26がカム溝64、65内を移動し、その結果、シャーシマウント24が昇降される。
【0035】
移動機構50のローディングモータ51が駆動されると、プーリー52から駆動ベルト53を介してプーリーギア54、駆動ギア56へと動力が伝達され、カムスライダ58が移動方向Bに移動される。カムスライダ58の移動に伴ない、カム溝64、65に沿ってシャーシマウント24の係合ピン26が移動する。そして、シャーシマウント24は、カムスライダ58の移動に連動して、枢軸23a、23bを支点に回動し、昇降動作を行なう。これにより、ディスク駆動部22は第1ダンパ30aを支点に回動し、シャーシマウント24と共に昇降動作を行なう。
【0036】
ディスクトレイ20はトレイギア56aによって駆動され移動方向Aに沿って移動される。ディスクトレイ20が移動する間、ディスク駆動部22はディスクトレイの移動を妨げないように、下降位置(退避位置)に移動される。
【0037】
光ディスク駆動装置の動作状態あるいはローディング状態において、図5(a)、図11、図12、図13に示すように、カムスライダ58は第1位置に位置し、シャーシマウント24の係合ピン26a、26bはカム溝64、65の第2溝部64c、65c内に位置している。これにより、シャーシマウント24は上昇位置に保持され、ディスク駆動部22は駆動位置(上昇位置)に保持されている。
【0038】
シャーシマウント24が上昇位置にある際、係合ピン26aは第2溝部64cに係合しているとともに第2溝部を貫通し、係合ピン26aの先端部に突設されたフック27は、第2溝部の近傍でカムスライダ58の前面と隣接対向している。これにより、カムスライダ58と係合ピン26a、26bとの係合を外す方向(後述するG方向)に、シャーシマウント24の連結部24cに後述する変形力が加わった場合でも、フック27がカムスライダ58に引っ掛かり、連結部24cの変形が抑制されるとともにカム溝64、65からの係合ピン26a、26bの脱落が防止される。
【0039】
また、係合ピン26a、26bの円柱部分は、カムスライダ58の第2溝部64c、65c内にあり、シャーシマウント24の枢軸23a、23bと協働し、シャーシマウントおよびディスク駆動部22のローディング状態を維持する。
【0040】
光ディスク装置に対して光ディスク8を装填あるいは取出しする場合、メインフレーム11の前面に設けられた図示しないイジェクトボタンを押下すると、あるいは、光ディスク取出しの外部命令により、ローディングモータ51が駆動され、カムスライダ58が図11に示す第1位置から図14に示す第2位置に向かってB方向に移動される。カムスライダ58の移動に連動して、シャーシマウント24の係合ピン26a、26bがカム溝64、65内を第2溝部64c、65cから傾斜溝部64b、65bを通り第1溝部64a、65aまで移動する。
【0041】
図15、図16、図17に示すように、係合ピン26aのフック27は、傾斜溝部64bに対応する角度に傾斜して設けられている。そのため、シャーシマウント24の係合ピン26a、26bが傾斜溝部64b、65b内を移動する間、係合ピン26aに設けられたフック27は、カムスライダ58の表面と対向することなく、カム溝64内に位置している。従って、この間、フック27は、フックとしての機能を持たず、係合ピンがカム溝のどの位置にあったとしても、カムスライダ58と接するのは円柱状のピン部分であり、係合ピンの本来の機能を損ねることはない。
【0042】
傾斜溝部64b、65bは、イジェクト動作移行あるいはローディング動作移行に関して、シャーシマウント24を、所定のタイミングで昇降、下降動作させ、例えば、光ディスクのクランプ、クランプ解除による光ディスクの損傷を防止し、その動作に必要な動作負荷が過負荷にならないようコントロールする。
【0043】
シャーシマウント24の係合ピン26a、26bが第2溝部64a、65aまで移動すると、シャーシマウント24は上昇位置から図5(b)、図18に示す下降位置に移動され、下降位置に保持される。これに伴い、ディスク駆動部22が駆動位置から退避位置に下降され、退避位置に保持される。
【0044】
イジェクト状態、すなわち、ディスク駆動部22が退避位置に移動した状態において、シャーシマウント24の係合ピン26aに設けられたフック27は、カムスライダの第1カム溝64aの中に配置される。フック27を設けることによる装置全体に対するスペースの増加は、シャーシマウント24の回動動作によって吸収することにより、フックを持たない場合と大差ないものに抑えることができる。
【0045】
ディスク駆動部22が退避位置に移動した後、ローディングモータ51によりディスクトレイ20が図1に示す実線で示す動作位置から図5(b)および図1に2点鎖線で示す装填取出し位置に移動され、メインフレーム11から外方に延出する。この状態で、ディスクトレイ20に対して光ディスク8の装填あるいは取出しが可能となる。
【0046】
ディスクトレイ20に対して光ディスク8を装填した後、図示しないローディングスイッチが押されると、あるいは、光ディスク装填の外部命令が入力されると、ローディングモータ51が反転駆動され、ディスクトレイ20が移動機構50により装填取出し位置から動作位置に移動される。これにより、光ディスク8はディスクトレイ20と共にメインフレーム11内に引き込まれ、所定位置に保持される。
【0047】
ディスクトレイ20が動作位置に移動した状態で、カムスライダ58が第2位置から第1位置に向かって移動される。カムスライダ58の移動に連動して、シャーシマウント24の係合ピン26a、26bがカム溝64、65内を第1溝部64a、65aから傾斜溝部64b、65bを通って第2溝部64c、65cまで移動する。これにより、シャーシマウント24は下降位置から図16、図17に示す上昇位置に移動し、これに伴い、ディスク駆動部22が退避位置から駆動位置に上昇し、駆動位置に保持される。
【0048】
これにより、ディスクトレイ20に載置されていた光ディスク8は、ディスク駆動部22のターンテーブル33と、図示しないトップカバーの内面に設けられたディスククランプ部材とによって挟まれ、回転自在に保持される。また、光ピックアップ36は光ディスク8の情報記録面と対向して位置する。この状態で、スピンドルモータ32によってターンテーブル33および光ディスク8を所定の速度で回転し、光ピックアップ36により光ディスク8に対して情報の書き込みあるいは読み出しを行う。
【0049】
本発明者は、上記のように構成された光ディスク装置の衝撃試験を行った。衝撃試験は、ディスクトレイ、図示しない筐体等を具備した光ディスク装置の完成品で実施した。衝撃方向は図2における矢印D方向であり、ディスク駆動部22の加速度測定点に加速度計を設置して測定した。
【0050】
図19は、衝撃値の測定データを示している。衝撃試験機に6ms、100Gの正弦半波の衝撃値を設定し衝撃試験を実施すると、ディスク駆動部22には、その3.4倍の340Gの衝撃値が発生した。ディスク駆動部22の重量を2Nとすると、ディスク駆動部に作用する荷重は、340Gでは680Nとなる。
【0051】
ディスク駆動部22は、シャーシマウント24の2箇所と、メインフレーム11の2箇所との合計4箇所で支持される。そのため、シャーシマウント24の2箇所の支持点にはそれぞれ170Nもの荷重が発生することになる。衝撃値がさらに増加し6ms、150Gになると、シャーシマウント24の2箇所の支持点での荷重は比例して増加し、230N程度になることが確認された。
【0052】
図20は、上述した衝撃試験による衝撃値の測定データからシャーシマウント24の変形を解析した結果を示す図である。6ms、150Gの衝撃時、シャーシマウント24の2箇所の支持点には各230Nの荷重が加わり、その場合の連結部24cのG方向に沿った変形量は2.2mmという解析結果となった。
【0053】
実試験において、本実施形態を採用していない光ディスク駆動装置では、6ms、150Gの衝撃値を受けると、シャーシマウント24の係合ピンがカムスライダの昇降用カムから脱落し、動作不能となったが、本実施形態に係る光ディスク装置では、係合ピンがシャーシマウントのカムから脱落せず、機能を維持することができた。
【0054】
以上のように構成された光ディスク装置によれば、シャーシマウントの係合ピンにフックを設けることにより、装置に落下衝撃等の大きな衝撃が作用し、シャーシマウントに変形力が発生した場合でも、フックによりカムスライダからの係合ピンの脱落を防止し、同時に、シャーシマウントの変形を抑制することができる。これにより、耐落下衝撃性能が向上し、シャーシマウント、カムスライダ等の構成部材の円滑な動作を維持することができ、信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0055】
また、シャーシマウントの各部が変形しないよう部材の厚み等を大きくして補強する、あるいは、係合ピンのカムとの係合長を長くするなど対策が必要なく、装置の大型化、製造コスト増加を生じることなく耐落下衝撃性能を上げることができる。
【0056】
シャーシマウントのフックは、カムスライダの傾斜カム部(傾斜溝部)に対応する角度に傾斜して設けられている。そのため、前述のように、フックは、カムスライダの昇降用のカムと接することがなく、カム形状を特別な形状にすることなく係合ピンおよびフックを設計、配置することができる。従って、動作タイミングにも問題を発生することはない。更に、フックは係合ピンの先端部から径方向に突出した形状であり、組立時、従来と同様に、係合ピンをカムスライダのカム溝に容易に係合させることができる。
【0057】
以上のことから、省スペース、低コストを維持しつつ、衝撃が作用した際の構成部材の変形を防止し、構成部材の脱落を防止でき、耐衝撃性能が向上した光ディスク装置が得られる。
【0058】
上述した実施形態において、シャーシマウントの一方の係合ピンにフックを設けた構成としたが、これに限定されることはない。
図21および図22に示すように、この発明の他の実施形態に係る光ディスク装置によれば、シャーシマウント24は、連結部24cの中央部から前方に延出した2つの係合ピン26a、26bを有している。係合ピン26a、26bの延出端には、それぞれフック27a、27bが一体に形成されている。これらのフック27a、27bは、係合ピン26a、26bから径方向に突出しているとともに、カムスライダ58に設けられたカム、例えば、カム溝64、65の傾斜溝部の傾斜方向に合わせて形成されている。なお、フック27a、27bの傾斜方向は、傾斜溝部内に収まる範囲に設定されていればよい。
【0059】
一対の係合ピン26a、26bは、カムスライダ58のカム溝64、65内にそれぞれ係合されている。シャーシマウント24が上昇位置にある際、係合ピン26aはカム溝64の第2溝部に係合しているとともに第2溝部を貫通し、係合ピン26aの先端部に突設されたフック27aは、第2溝部の近傍でカムスライダ58の前面と隣接対向している。同様に、係合ピン26bはカム溝65の第2溝部に係合しているとともに第2溝部を貫通し、係合ピン26bの先端部に突設されたフック27bは、第2溝部の近傍でカムスライダ58の前面と隣接対向している。
【0060】
これにより、カムスライダ58と係合ピン26a、26bとの係合を外す方向に、シャーシマウント24の連結部24cに変形力が加わった場合でも、フック27a、27bがカムスライダ58に引っ掛かり、連結部24cの変形が抑制されるとともにカム溝64、65からの係合ピン26a、26bの脱落が防止される。
【0061】
他の実施形態において、他の構成は前述した実施形態と同一であり、同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。そして、他の実施形態においても、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。更に、他の実施形態によれば、2つのフックを設けることより、シャーシマウントの変形および係合ピンの脱落をより確実に防止することができ、耐落下衝撃性を一層向上することが可能となる。
【0062】
なお、本発明は実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
各構成部材の形成材料、形状等は、上述した実施形態に限定されることなく、必要に応じて変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、この発明の実施形態に係る光ディスク装置をそのトップカバーを取り外して示す斜視図。
【図2】図2は、ディスクトレイを取り外した状態における前記光ディスク装置の内部構造を示す斜視図。
【図3】図3は、前記光ディスク装置のメインフレームを示す斜視図。
【図4】図4は、前記光ディスク装置のディスクトレイの裏面側およびシャーシマウントを示す斜視図。
【図5】図5は、ディスクトレイが動作位置に引き込まれた状態およびディスクトレイが装填取出し位置に引き出された状態をそれぞれ示す上記光ディスク装置の断面図。
【図6】図6は、ディスク駆動部、移動機構、シャーシマウントを示す分解斜視図。
【図7】図7は、前記光ディスク装置のシャーシマウントを示す斜視図。
【図8】図8は、前記シャーシマウントを示す正面図。
【図9】図9は、前記光ディスク装置のシャーシマウントおよびカムスライダを示す斜視図。
【図10】図10は、前記カムスライダを示す正面図。
【図11】図11は、第1位置および上昇位置におけるカムスライダおよびシャーシマウントを示す斜視図。
【図12】図12は、図11の係合ピン部分を拡大して示す斜視図。
【図13】図13は、第1位置および上昇位置におけるカムスライダおよびシャーシマウントを示す断面図。
【図14】図14は、第2位置および下降位置におけるカムスライダおよびシャーシマウントを示す斜視図。
【図15】図15は、係合ピンがカム溝の傾斜溝部内に位置した状態を示すカムスライダおよびシャーシマウントの正面図。
【図16】図16は、図15における係合ピンおよびカム溝の部分を拡大して示す正面図。
【図17】図17は、係合ピンがカム溝の傾斜溝部内に位置した状態を示すカムスライダおよびシャーシマウントを示す断面図。
【図18】図18は、第2位置および下降位置におけるカムスライダおよびシャーシマウントを示す断面図。
【図19】図19は、衝撃試験における測定結果を示す図。
【図20】図20は、前記衝撃試験による衝撃値の測定データからシャーシマウントの変形を解析した結果を示す図である。
【図21】図21は、この発明の他の実施形態に係る光ディスク装置のシャーシマウントを示す斜視図。
【図22】図22は、前記他の実施形態に係る光ディスク装置のシャーシマウントおよびカムスライダを示す斜視図。
【符号の説明】
【0064】
8…光ディスク、11…メインフレーム、11a、11b…側壁、11d…前壁部、
20…ディスクトレイ、22…ディスク駆動部、24…シャーシマウント、
24a、24b…アーム部、24c…連結部、26a、26b…係合ピン、
27、27a、27b…フック、32…スピンドルモータ、36…光ピックアップ、
50…移動機構、51…ローディングモータ、58…カムスライダ、
64、65…カム溝、64a、65a…第1溝部、64b、65b…傾斜溝部、
64c、65c…第2溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向した一対の側壁と、前記側壁間を延びた前壁とを有するメインフレームと、
ディスク状の記録媒体を支持および回転するモータと、前記記録媒体に対して情報処理を行うヘッド部とを有し、前記記録媒体を駆動する駆動位置と、前記記録媒体の装填および取出しを許容する退避位置と、の間を昇降可能に設けられた媒体駆動部と、
前記媒体駆動部を支持するとともに、前記駆動位置に対応する上昇位置と前記退避位置に対応する下降位置との間を昇降可能に前記メインフレームに支持された昇降保持部材と、
前記前壁に移動自在に設けられているとともに前記昇降保持部材と係合したカムを有し、移動に応じて前記昇降保持部材を昇降させる摺動部材と、を備え、
前記昇降保持部材は、それぞれ前記側壁と対向して延びた一対のアーム部と、アーム部の一端部間を延びているとともに前記前壁と対向した連結部と、前記アーム部の他端部に設けられ前記側壁に支持された支点部と、前記連結部から前記前壁側に突出し前記カムと係合した係合ピンと、前記係合ピンに形成され前記昇降保持部材が前記上昇位置に移動した際、前記摺動部材と係合して前記係合ピンと摺動部材とを係合状態に維持するフックと、を有している光ディスク装置。
【請求項2】
前記摺動部材のカムは、前記摺動部材に形成されたカム溝を有し、前記カム溝は、摺動部材の移動方向に沿って延びた第1溝部と、第1溝部から斜めに延出した傾斜溝部と、傾斜溝部から前記摺動部材の移動方向に沿って延びた第2溝部と、を有し、
前記昇降保持部材の係合ピンは、前記昇降部材が下降位置にある際、前記カム溝の第1溝部に係合し、前記昇降部材が上昇位置にある際、前記カム溝の第2溝部に係合するとともに第2溝部を貫通し、前記フックは、前記係合ピンの延出端から突出し、前記昇降部材が上昇位置にある際、前記第2溝部の近傍で前記摺動部材に対向している請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記フックは、前記係合ピンが前記傾斜溝部内を移動する際、この傾斜溝部内に位置する向きに形成されている請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記摺動部材は、前記カムと平行に形成された他のカムを有し、前記昇降部材は、前記連結部から前記連結部から前記前壁側に突出し前記他のカムと係合する他の係合ピンを有し、前記係合ピンおよび他の係合ピンは前記連結部の延出方向に沿って互いに並んで設けられている請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記昇降保持部材は、前記他の係合ピンに形成され前記昇降保持部材が前記上昇位置に移動した際、前記摺動部材と係合して前記他の係合ピンと摺動部材とを係合状態に維持するフックを備えている請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記記録媒体を保持し、前記メインフレームの外部に突出する装填取出し位置と、前記メインフレーム内の所定位置で前記記録媒体を駆動可能な動作位置との間を移動可能に前記メインフレームに設けられた記録媒体保持体と、
前記記録媒体保持体が移動する間、前記昇降保持部材を退避位置に移動させ、前記記録媒体保持体が動作位置に移動した際、前記昇降保持部材および媒体駆動部を駆動位置に移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記前壁部に前記側壁と交差する方向に沿って移動可能に設けられた前記摺動部材と、摺動部材を移動させる駆動源と、を有している請求項1に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−87392(P2009−87392A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251699(P2007−251699)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】