説明

光ディスク装置

【課題】光ディスクの搬入時のディスクトレイとシャーシとの接触音の発生を抑制できるとともに、ディスクトレイの入出用開口から塵、埃等の異物が浸入するのを抑制する。
【解決手段】カムスライダ4に固定された固定ボス411と、固定ボス411の後側に配置され、ディスクトレイ2の摺動方向に変位可能であり、ディスクトレイ2がローダシャーシの内部に移動したときガイド溝22の直交部223に押されて変位する可動ボス412とを備え、可動ボス412が直交部223を押し返すことでディスクトレイ2がローダシャーシの内部側に押され、蓋状部が開口の周囲に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクトレイを用いて記録媒体である光ディスクを搬入/搬出す光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、映像や音楽等を記録、再生する機器として、光ディスク装置が広く用いられている。前記光ディスク装置には、前記光ディスクの搬入/搬出にディスクトレイを用いるものがある。この光ディスク装置の場合、前記光ディスクが載置されたディスクトレイを摺動させて、前記光ディスクを前記光ディスク装置の内部に搬入又は外部に搬出する。
【0003】
従来の光ディスク装置について図面を参照して説明する。図10は従来の光ディスク装置の概略平面図である。図10に示すように、光ディスク装置は、ローダシャーシ91と、ローダシャーシ91に摺動可能に支持されており、光ディスクをローダシャーシ91の内部に搬入/外部に搬出するディスクトレイ92と、ローダシャーシ91の内部に配置されディスクトレイ92と連動するカムスライダ93とを備えている。
【0004】
ローダシャーシ91は内部に光ピックアップ、ターンテーブル、駆動機構等も備えている。ディスクトレイ92はローダシャーシ91に形成されている開口911からローダシャーシ91の内外に摺動することができるようにローダシャーシ91に取り付けられている。
【0005】
ディスクトレイ92は光ディスクを載置した状態で摺動することができる形状になっている。ディスクトレイ92の光ディスクが載置される面と反対側の面には、ガイド溝921が形成されており、ガイド溝921にはカムスライダ93に突出形成されたスライダボス931が嵌入されている。ガイド溝921は途中で屈曲している。ディスクトレイ92が摺動するとき、スライダボス931はガイド溝921の内部を相対的に摺動し、スライダボス931がガイド溝921の屈曲部分に到達すると、スライダボス931がガイド溝921に押され、カムスライダ93は摺動する。
【0006】
ガイド溝921は途中からディスクトレイ92の摺動方向と直交する方向に形成されている。スライダボス931が前記直交する部分に到達したとき、ガイド溝921のディスクトレイの摺動方向と直交する部分と当たることで、ディスクトレイ92の入出方向の摺動が規制される。
【0007】
前記光ディスク装置では、光ピックアップに配置された対物レンズで光ディスクの記録面にレーザ光を集光させて、情報の再生又は記録を行っている。このため、前記光ディスク本体や前記対物レンズに塵、埃等の異物が付着すると、レーザ光が前記光ディスクに正確に照射されなくなり、情報の再生、記録の精度が低下する懸念がある。また、ローダシャーシ91の内部には光ピックアップ以外にも電子部品や駆動機構等、異物を嫌う部材が配置されている。
【0008】
そのため、ディスクトレイ92の端部は、ローダシャーシ91の開口911よりも大きな外形の蓋状部920を備えた構成となっている。ディスクトレイ92がローダシャーシ91内部に納まったとき、蓋状部920が開口911を塞ぎ、開口911からローダシャーシ91の内部に異物が入るのを抑制している。
【0009】
しかしながら、一般的にローダシャーシ91、ディスクトレイ92、カムスライダ93は樹脂の一体成型品であり、製造時に誤差が発生してしまう。ディスクトレイ92のガイド溝921とカムスライダ93のスライダボス931の位置に誤差が生じている場合、ディスクトレイ92が、設計時に設定されている位置とずれる。このあたりによって、ローダシャーシ91とディスクトレイ92の蓋状部920が強くあたって接触音が発生したり、大きな応力が作用し破損してしまったりする場合がある。それとは逆に、蓋状部920とローダシャーシ91との間に隙間ができ、開口911からローダシャーシ91の内部に異物が入りやすくなる。
【0010】
そこで、予めローダシャーシ91の前面と蓋状部920との間に隙間ができるように光ディスク装置を構成しておき、図10に示すように、その隙間にクッション性を有する隙間部材94を配置するものが提案されている。このように隙間部材94を配置することでローダシャーシ91の前面と蓋状部920との隙間を塞ぎ、ローダシャーシ91と蓋状部920との接触による破損や異音の発生、或いは、隙間(開口911)から異物が入るのを抑制する。
【0011】
また、図11に示すような、蓋体95をディスクトレイ92の端部に取り付けるものも提案されている。図11はディスクトレイの前面側端部の底面図である。図11に示すように、蓋体95はディスクトレイ92を貫通する貫通軸951を備えており、貫通軸951にばねを取り付けて、蓋体95をディスクトレイ92に押し付けている。この構成によると、ディスクトレイ92がローダシャーシ91に進入し、蓋体95がローダシャーシ91と接触したとき、ばねの力で蓋体95とローダシャーシ91の接触による衝撃を緩和する。また、ディスクトレイ92がローダシャーシ91の内部に配置されたとき、蓋体95がばねの力でローダシャーシ91の正面側に押し当てられる。これにより、接触による破損や異音を抑制することができるとともに、ローダシャーシ91の内部に異物が入るのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−234148号公報
【特許文献2】特開平10−106231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上に示したように、開口911からの異物の挿入を確実に行うためには、隙間部材94を取り付けたり、蓋体95を取り付けたりすることが必要で、そのために構成部材が増加し、組立の手間と時間が多くなり、重量、コストが増加する。
【0014】
また、クッション性を有する隙間部材94は樹脂で形成されていることがほとんどであり、多くの場合、経年変化や光ディスク装置からの熱により硬化する。隙間部材94が経年変化により硬化すると、隙間部材94で隙間を十分に塞ぐことができなくなったり、接触時に異音が発生してしまったりする。
【0015】
そこで本発明は、専用の部材を用いることなく、光ディスクの搬入時のディスクトレイとシャーシとの接触音の発生を抑制できるとともに、前記ディスクトレイの入出用開口から塵、埃等の異物が浸入するのを抑制することが可能な光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、前面に開口を有する箱形状のローダシャーシと、前面に前記開口よりも大きな蓋状部を有し、前記ローダシャーシに前記開口から出入可能な状態で支持されているディスクトレイと、前記ローダシャーシの内部に配置され、前記ディスクトレイと直交する方向に摺動するカムスライダとを備え、前記ディスクトレイの光ディスクを載置する面の反対側は、摺動方向に延びる直線部と、前記直線部より前面側に形成され前記摺動方向と直交する方向に延びる直交部と、前記直線部及び前記直交部とを接続し、前記摺動方向に対して傾いて形成された斜行部とを含むガイド溝を備え、前記カムスライダは前記ガイド溝と係合するスライダボスを備えており、前記光ディスクに光を照射して情報の記録/再生を行う光ディスク装置であって、前記スライダボスは前記カムスライダに固定された固定ボスと、前記固定ボスの後側に配置され、前記ディスクトレイの摺動方向に変位可能であり、前記ディスクトレイが前記ローダシャーシの内部に移動したとき前記ガイド溝の前記直交部に押されて変位する可動ボスとを備え、前記可動ボスが前記直交部を押し返す力で、前記ディスクトレイが前記ローダシャーシの内部側に押され、前記蓋状部が前記開口の周囲に接触することを特徴とする。
【0017】
この構成によると、前記可動ボスが前記直交部に押されて変形することで、前記可動ボスの弾性力で前記直交部が押し返される。この可動ボスの弾性力によって前記ディスクトレイは前記ローダシャーシの内部に押され、前記ディスクトレイは前記ローダシャーシの開口の周囲に接触している。
【0018】
これにより、前記開口は前記蓋状部で閉じられるので、外部の塵や埃等の異物がローダシャーシ内部に前記開口を通って入るのを抑制することができる。このことによって、異物が光ディスク、光ピックアップの光学系に付着し、前記光ディスクへの情報の記録/再生のための光の照射精度が低下するのを抑制することが可能である。また、前記異物がモータ、ギヤ等の駆動部に堆積して、駆動機構の動作が悪くなるのも抑制することができる。さらに、内部の光が前記開口を通じて外部に漏れるのを抑制することができる。
【0019】
以上のことより、異物が装置内部に入ること、装置内部の光が漏れることを抑制することで光ディスク装置を高品位に保つことができる。
【0020】
上記構成において、前記カムスライダには前記固定ボスと前記可動ボスとの両方を含むスライダボスが少なくとも1つ備えられているものを挙げることができる。前記可動ボスとして、前記カムスライダに形成された貫通孔の内部に前記ディスクトレイの摺動方向に張り出した弾性変形部の先端より突出形成されているものであってもよく、それ自体が弾性変形可能なものであってもよい。
【0021】
上記構成において、前記ガイド溝の前記直交部は、前記ディスクトレイが前記ローダシャーシの内部に移動したとき、前記可動ボスを前記ディスクトレイ摺動方向奥側の内壁面で押す位置に形成されているものを挙げることができる。この構成によると、前記直交部による前記可動ボスの変形量が多くなるので、前記蓋状部を前記開口の周囲に押し当てることができ、それだけ、前記開口と前記蓋状部との隙間を減らすことが可能である。
【0022】
上記構成において、前記ガイド溝の前記直交部は、前記斜行部との連結部と近接している部分の前記ディスクトレイの摺動方向奥側の壁が、前記ディスクトレイの摺動方向奥側にずれて形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、専用の部材を用いることなく、光ディスクの搬入時のディスクトレイとシャーシとの接触音の発生を抑制できるとともに、前記ディスクトレイの入出用開口から塵、埃等の異物が浸入するのを抑制することが可能な光ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる光ディスク装置の上部から見た概略配置図である。
【図2】は図1に示す光ディスク装置の内部構造の概略配置図である。
【図3】本発明にかかる光ディスク装置の前面側から見た概略配置図である。
【図4】カムスライダのスライダボスとガイド溝を拡大した平面図である。
【図5】図4をV−V線で切断したときの拡大断面図である。
【図6】図6(A)はディスクトレイがディスク交換位置にあるときの図であり、図6(B)はディスクトレイがローダシャーシの内部の途中まで進入した状態の図であり、図6(C)はディスクトレイが停止する直前の状態の図であり、図6(D)はディスクトレイが記録/再生位置にあるときの図である。
【図7】本発明にかかる光ディスク装置に用いられるカムスライダの他の例の平面図である。
【図8】本発明にかかる光ディスク装置に用いられるカムスライダのさらに他の例の平面図である。
【図9】本発明にかかる光ディスク装置のガイド溝とカムスライダとを主に示した配置図である。
【図10】従来の光ディスク装置の概略平面図である。
【図11】ディスクトレイの前面側端部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる光ディスク装置の上部から見た概略配置図であり、図2は図1に示す光ディスク装置の内部構造の概略配置図である。なお、図2では、説明の便宜上、ディスクトレイ及びトラバースシャーシを省略している。
【0026】
光ディスク装置Aは、ローダシャーシ1と、光ディスクDsをローダシャーシ1の内部に搬入する又は外部に搬出するディスクトレイ2と、ローダシャーシ1に旋回可能に支持されたトラバースシャーシ3と、ローダシャーシ1の内部に配置され、ローダシャーシ1の摺動方向と直交する方向に摺動可能なカムスライダ4とを備えている。また、トラバースシャーシ3は、光ディスクを保持し回転駆動するディスク駆動部5と、光ディスクに光を照射する光ピックアップ6とを備えている。
【0027】
なお、以下の説明において、ディスクトレイ2がローダシャーシ1より進出する方向を前面側(図中F)、ディスクトレイ2がローダシャーシ1の内部に進入する方向を後側(図中B)とする。
【0028】
図1に示すように、ローダシャーシ1は長方形状の底面11と、底面11の端縁から突設する壁部12とを備えた有底函体である。壁部12の前面側にはディスクトレイ2が進入/進出する開口13が形成されている。また、光ディスク装置Aはローダシャーシ1の上部を覆うカバーシャーシを備えており(不図示)、カバーシャーシを取り付けることでローダシャーシ1は密閉される。ローダシャーシ1の底面11及び壁部12は樹脂の一体成型体である。
【0029】
また、ローダシャーシ1には底面11に回転可能に支持されたトレイギヤ14と、トレイギヤ14と噛合するように配置された伝達ギヤ15とを備えている。トレイギヤ14及び伝達ギヤ15は底面11に直交して配置された回転軸周りに回転する歯車である。また、ローダシャーシ1には、モータ16が配置されている。なお、図1に示す光ディスク装置では、モータ16とトレイギヤ14とが伝達ギヤ15で連結されているが、それに限定されるものではなく、複数の歯車群を用いて連結されるものであってもよい。モータ16の駆動力がトレイギヤ14に伝達されることで、トレイギヤ14は回転する。
【0030】
図1に示すように、ローダシャーシ1の底面11の後側には、上側に向かって突出したボス10が備えられている。ボス10にはフローティングゴム(ダンパー)100が外嵌されている。そして、フローティングゴム100が外嵌されたボス10はトラバースシャーシ3の後側に形成されたボス孔30を貫通している。ボス10の外径はボス孔30の内径よりも小さく、その隙間があることでトラバースシャーシ3は旋回可能となっている。また、ボス10とボス孔30の隙間に、フローティングゴム100が配置されていることで、トラバースシャーシ3の旋回時のがたつきが抑制される。
【0031】
ディスクトレイ2は樹脂の一体成型体である。ローダシャーシ1の開口13から進出した光ディスクを交換するためのディスク交換位置と、ローダシャーシ1の内部に収納された光ディスクの記録/再生を行うための記録/再生位置との間を摺動するように、ローダシャーシ1に支持されている。
【0032】
ディスクトレイ2は、光ディスクを載置する面(ディスク載置面)に形成された光ディスクを配置する凹部20と、ディスクトレイ2のディスク載置面と反対側の面に形成され、ディスクトレイ2の摺動方向に延びるラックギヤであるトレイラック21と、トレイラック21と同じ面に形成されたガイド溝22とを備えている。凹部20は小径(直径8cm)の光ディスクを載置できる小径用凹部と、大径(直径12cm)の光ディスクを載置できる大径用凹部とを備えている。
【0033】
また、ディスクトレイ2の前面側の端部は、ローダシャーシ1の開口13よりも大きく形成された蓋状部23を備えている。ディスクトレイ2がローダシャーシ1の内部に進入し、記録/再生位置に到達したとき(図1の状態のとき)、蓋状部23はローダシャーシ1の開口13の周囲部分と接触する。
【0034】
ディスクトレイ2には、開口窓24が形成されている。この開口窓24はディスク駆動部5が貫通する貫通孔であり、ディスク駆動部5に備えられたターンテーブル51は開口窓24を貫通し、凹部20に配置された光ディスクの中央部を記録面側から押す。そして、ターンテーブル51はカバーシャーシに備えられたクランパ(不図示)とで光ディスクを挟持する。なお、ディスク駆動部5の詳細は後述する。
【0035】
図2に示すように、トレイラック21はディスクトレイ2の位置(開口13に対する位置)によって、トレイギヤ14と歯合する。トレイラック21とトレイギヤ14とが歯合しているとき、トレイギヤ14の回転がトレイラック21に伝達され、ディスクトレイ2は前後に摺動する。
【0036】
ガイド溝22はディスクトレイ2の摺動方向に沿って延びる直線部221と、直線部221に対して所定の角度だけ屈曲した斜行部222と、直線部221に対して直交する直交部223とを備えている。そして、ガイド溝22において、直線部221、斜行部222、直交部223とは連結され、一本の繋がった凹溝が形成されている。なお、本実施形態にかかるディスクトレイ2では、2本のガイド溝が形成されているが、図2中右側は開口窓24が形成されている関係上、直線部221は省略され、斜行部222と直交部223のみを備えた構成となっている。
【0037】
次にトラバースシャーシ3について説明する。図2に示すようにトラバースシャーシ3の前面には樹脂で形成されたトラバースカバー33が配置されており、トラバースカバー33から前面側に突出した昇降ボス31を備えている。昇降ボス31はカムスライダ4に形成されている後述のカム溝42に係合されている。カムスライダ4が摺動することで昇降ボス31がカム溝42に押され、トラバースシャーシ3は旋回する。
【0038】
トラバースシャーシ3はディスク駆動部5がクランパ(不図示)とで光ディスクを保持するクランプ位置と、ディスク駆動部5がディスクトレイ2の摺動を妨げない退避位置との間を旋回する。
【0039】
トラバースシャーシ3に配置されたディスク駆動部5は、光ディスクの中央に形成された孔を貫通して支持するターンテーブル51と、ターンテーブル51を回転駆動するモータ52とを備えている。また、光ピックアップ6は光ディスクに光を照射するための光学系(レンズ、光源等を含む)を備えており、トラバースシャーシ3に形成された開口32に配置されている。
【0040】
光ピックアップ6はトラバースシャーシ3に配置されたガイドレール60に摺動可能に支持されている。光ピックアップ6はトラバースシャーシ3に備えられている、リードスクリューと駆動モータを有する駆動機構の駆動力を受けて摺動する。
【0041】
トラバースシャーシ3はディスクトレイ2が予め決められている位置まで進入してきたとき、ディスクトレイ2に向かって旋回する。また、光ディスクの記録又は再生が終了したとき、トラバースシャーシ3が退避位置まで旋回した後、ディスクトレイ2の進出が開始される。この、ディスクトレイ2とトラバースシャーシ3の動作のタイミングの調整はカムスライダ4によって行われている。
【0042】
本発明にかかる光ディスク装置に用いられるカムスライダの詳細について図面を参照して説明する。図3は本発明にかかる光ディスク装置の前面側から見た概略配置図であり、図4はカムスライダのスライダボスとガイド溝を拡大した平面図であり、図5は図4をV−V線で切断したときの拡大断面図である。
【0043】
図3に示すように、カムスライダ4は上面からディスクトレイ2に向かって突出したスライダボス41と、前面側に形成されたクランク形状のカム溝42と、長手方向端部より突出し、前面側にラックギヤが形成されたスライダラック43とを備えている。
【0044】
カム溝42は、左側から、上溝421、斜溝422及び下溝423を備えた貫通孔である。上溝421及び下溝423はディスクトレイ2の下面に対して平行に形成されており、斜溝422は上溝421と下溝423を連結している。カム溝42にはトラバースシャーシ3の昇降ボス31が係合されている。
【0045】
昇降ボス31はカムスライダ4の位置によってカム溝42の異なる部分(上溝421、斜溝422、下溝423)と係合する。すなわち、図3において、カムスライダ4が最も左にあるとき、昇降ボス31は下溝423と係合し、カムスライダ4が右に摺動するにしたがって、斜溝422、上溝421に移動する。なお、昇降ボス31が下溝423と係合しているとき、トラバースシャーシ3はディスクトレイ2から最も遠い位置(退避位置)にある。また、昇降ボス31が上溝421と係合しているとき、トラバースシャーシ3はクランプ位置にある(図3の状態)。
【0046】
図4に示すように、スライダボス41はディスクトレイ2に向かって突出した固定ボス411と、固定ボス411の後側に固定ボス411と並んで配置された可動ボス412とを備えている。固定ボス411と可動ボス412との間には間隙がある。固定ボス411はカムスライダ4の表面と一体的に形成されている。可動ボス412はカムスライダ41に形成された貫通孔410の内部に後面から前面に向かって張り出している板ばね状の弾性変形部413の先端に配置されている。
【0047】
なお、固定ボス411は力が作用する方向に関わらず変形しない或いは変形しにくい。一方、図5に示すように、可動ボス412にディスクトレイ2の摺動方向の力が作用すると、弾性変形部413が変形する(たわむ)。すなわち、可動ボス412に力が作用しているとき、可動ボス412は弾性変形部413の変形によって無荷重状態に対して変位している。
【0048】
図4に示しているように、固定ボス411及び可動ボス412とは、ともに、ガイド溝22に係合されている。ディスクトレイ2の摺動によってスライダボス41はガイド溝22の内部を摺動する。すなわち、ディスクトレイ2の進入量によって、スライダボス41は直線部221、斜行部222及び直交部223とそれぞれ係合する。
【0049】
ディスクトレイ2とカムスライダ4とは連動する構成となっている。以下に、ディスクトレイ2が摺動するときのガイド溝22とスライダボス41の位置関係について図面を参照して説明する。図6はディスクトレイがディスク交換位置から記録/再生位置に摺動する間のガイド溝とスライダボスの位置を示す図である。図6(A)はディスクトレイがディスク交換位置にあるときの図であり、図6(B)はディスクトレイがローダシャーシの内部の途中まで進入した状態の図であり、図6(C)はディスクトレイが停止する直前の状態の図であり、図6(D)はディスクトレイが記録/再生位置にあるときの図である。なお、図6の各図において、ガイド溝22は直線部が省略されていない方のガイド溝を例に説明するが、直線部が省略されているガイド溝の方も、直線部以外では、同じ動きとなる。
【0050】
まず、ディスクトレイ2がディスク交換位置からローダシャーシ1の内部に進入するときの動作(ローディング)について説明する。ディスクトレイ2の凹部20に光ディスクが載置され、スイッチ入力、リモコン入力等の搬入動作開始の入力を受けると、図示を省略した制御部の指示で駆動モータ16が始動される。駆動モータ16の駆動によってトレイギヤ14が回転され、トレイギヤ14と噛合しているトレイラック21に駆動力が伝達される。
【0051】
トレイラック21に伝達された駆動力によって、ディスクトレイ2はディスク交換位置からローダシャーシ1の内部に移動する。このとき、図6(A)に示すように、カムスライダ4のスライダボス41はガイド溝22の直線部221と係合している。直線部221はディスクトレイ2の摺動方向に沿って形成されており、スライダボス41の摺動方向と直交する方向の移動が直線部221によって規制されている。
【0052】
これにより、ディスクトレイ2がディスク交換位置から予め決められた位置(スライダボス41が直線部221から斜行部222に到達する位置)に移動する間は、スライダボス41は直線部221によって移動が規制されている。これにより、カムスライダ4はディスクトレイ2の摺動方向と直交する方向に動かないようにロックされている。また、カムスライダ4のスライダラック43はトレイギヤ14と噛合していない。
【0053】
次に、図6(B)に示すように、ディスクトレイ2の移動によって、スライダボス41がガイド溝22の直線部221から斜行部222に移動する。このとき、スライダボス41の固定ボス411が斜行部222の前面側の内壁と接触する。ディスクトレイ2の更なる摺動によって、固定ボス411が斜行部222からディスクトレイ2の摺動方向と直交する方向(図2中左側)に押される。これにより、カムスライダ4はディスクトレイ2の摺動方向と直交する方向に移動される。このとき、可動ボス412はガイド溝41と接触しておらず、弾性変形部413も変形していない。
【0054】
カムスライダ4の摺動距離が一定距離に達すると、スライダラック43がトレイギヤ14と噛合する。ここで、カムスライダ4の駆動は、ガイド溝22がスライダボス41を押す力から、トレイギヤ14からスライダラック43に伝達される力に切り替わる。
【0055】
ディスクトレイ2及びカムスライダ4が摺動し、スライダボス41がガイド溝22の斜行部222から直交部223に到達すると、トレイギヤ14とトレイラック21との噛合ははずれ、ディスクトレイ2の摺動が停止する。一方で、スライダラック43はトレイギヤ14と噛合しており、トレイギヤ14からスライダラック43に駆動力が伝達されることでカムスライダ4は摺動を続ける(図6(C)参照)。
【0056】
ディスクトレイ2のトレイラック21とトレイギヤ14との噛合が外れたとき、スライダボス41は斜行部222から直交部223に完全に移動していない。すなわち、後側の可動ボス412の一部が直交部223と重なった状態になっている。この状態で、カムスライダ4が摺動すると、可動ボス412がガイド溝22の直交部223の内壁で押され、弾性変形部413が変形する(図4、5、6(C)等参照)。
【0057】
スライダボス41が直交部223と係合しているとき、弾性変形部413が変形しており、弾性変形部413は元に戻る方向に弾性力を発揮している。この弾性変形部413が元に戻ろうとする弾性力(復元力)によって、可動ボス412がガイド溝22の直交部223の後側の内面を押している。
【0058】
可動ボス412がガイド溝22の直交部223の後側の内面を押すことで、ディスクトレイ2が後側に押され、ディスクトレイ2は後側に摺動する。ディスクトレイ2の後側への摺動によって、ディスクトレイ2の蓋状部23が確実にローダシャーシ1の開口13の周囲に押し当てられる。これにより、開口13を密閉することができ開口13から異物がローダシャーシ1の内部に入るのを抑制することができる。なお、また、可動ボス412のガイド溝22を押す力は弾性変形部413の弾性力によるものでありモータ16の力に比べて非常に小さい。このことにより、可動ボス412がガイド溝22を押すことによるディスクトレイ2の移動は、速度が遅く、蓋状部23がローダシャーシ1と接触したときの衝撃音の発生も抑制される。
【0059】
また、可動ボス412は固定ボス411との間の隙間を変位するので、ガイド溝22に押されることによる変位量を変化させることが可能である。これにより、ガイド溝22の位置が前方に、ディスクトレイ2の蓋状部23が閉じなくなったり、後方にずれて、強くローダシャーシ1に押し当てられたりするのを抑制することができる。
【0060】
スライダボス41が直交部223の奥まで移動したとき(図6(D)の状態)、不図示の検知部(位置センサ等)が端部までカムスライダ4が到達したことを検知し、その検知に基づいて制御部がモータ16を停止する。なお、モータ16の停止は、検知部によるカムスライダ4の検知に限定されるものではなく、カムスライダ4が停止することによるトルクの変動を検知して停止するもの等、カムスライダ4が終端に到達したときに、モータ16を確実に停止することができる方法を広く採用することができる。
【0061】
なお、カムスライダ4が摺動するときに、トラバースシャーシ3の昇降ボス31はカム溝42の下溝423から斜溝422を経て上溝421に移動する。これにより、トラバースシャーシ3は後側を中心に旋回し、ディスクトレイ2に接近する。このとき、ターンテーブル51が開口24を通過し、光ディスクをディスクトレイ2の凹部20から押し出し、クランパとで挟持する。その後ターンテーブル51を回転しつつ、光ピックアップ6からレーザ光を照射することで、情報の再生又は記録を行う。
【0062】
次に、光ディスクに対する情報の記録又は再生が終了し、光ディスクをローダシャーシ1の外部に搬出するときの動作(アンローディング)について説明する。光ディスクに対する情報の記録又は再生が終了したとき、ディスクトレイ2は記録/再生位置にある。また、カムスライダ4は最も右に寄った状態であり、スライダボス41はガイド溝22の直交部223の斜行部222と反対側の端部に位置している。
【0063】
光ディスクに対する情報の記録又は再生が終了すると、制御部(不図示)はモータ16をローディングのときと反対方向に回転させる。モータ16の回転は伝達ギヤ15を介しトレイギヤ14に伝達される。トレイギヤ14の回転がスライダラック43に伝達され、カムスライダ4が(左側に)摺動する。カムスライダ4が摺動することで、スライダボス41が直交部223内を斜行部222の方に向かって移動する。
【0064】
このとき、トラバースシャーシ3の昇降ボス31は、カム溝42の上溝421から斜溝422を通って下溝423に移動する。昇降ボス31の移動によって、トラバースシャーシ3はディスクトレイ2から離間し、退避位置まで旋回する。この旋回によって、ターンテーブル51とクランパ(不図示)とで挟持されていた光ディスクが、ディスクトレイ2の凹部20に戻る。また、トラバースシャーシ3が退避位置に移動したことで、ディスクトレイ2はターンテーブル51と干渉することなく摺動することが可能な状態になる。
【0065】
カムスライダ4が摺動して、スライダボス41が直交部223から斜行部222に到達すると、直交部223に押されていた可動ボス412が元の位置に戻る。これにより、可動ボス412から直交部223に作用していた力が解除される。また、スライダボス41が斜行部222に到達しているので、斜行部222の内壁が固定ボス411に押される。これにより、斜行部222の前側の内壁側が固定ボス411に前方向に押され、ディスクトレイ2には、前側に向かう方向に力が作用する。スライダボス41が斜行部222の予め決められた位置まで移動すると、ディスクトレイ2の摺動によって、トレイラック21がトレイギヤ14と噛合する。これにより、トレイギヤ14の回転がトレイラック21に伝達され、ディスクトレイ2は開口13から前面に進出する。
【0066】
カムスライダ4が一定距離移動すると、スライダラック43とトレイギヤ14との噛合が外れる。このとき、トレイラック21がトレイギヤ14と噛合していると共に、ディスクトレイ2はトレイギヤ14の駆動力がトレイラック21に伝達されて前面側に摺動している。このとき、スライダボス41は斜行部222に位置している。
【0067】
カムスライダ4はディスクトレイ2が前面側に摺動するときに、可動ボス412が斜行部の内壁に押され、ディスクトレイ2と直交する方向(左方向)に摺動する。可動ボス412は弾性変形部413の変形によって変位するが、可動ボス412は固定ボス411接触した後、可動ボス412の変位が規制され、斜行部222の内壁に押され、カムスライダ4は摺動する。
【0068】
スライダボス41が直線部221に到達すると、直線部221がディスクトレイ2の摺動方向に沿って形成された溝であることより、スライダボス41に対して力を付与しない。また、カムスライダ4にはモータ16からの駆動力も付与されていないのでカムスライダ4は停止する。なお、スライダボス41がカムスライダ4の摺動方向に直線部221の内壁に係合されているとき、カムスライダ4の移動は規制される。
【0069】
ディスクトレイ2にはモータ16によって回動されているトレイギヤ14の回転力がトレイラック21に伝達されており、ディスクトレイ2は前面側に移動する。そして、ディスクトレイ2がディスク交換位置まで移動したとき、制御部(不図示)はモータ16を停止し、ディスクトレイ2の移動が終了する。なお、モータ16の停止のタイミングの決定は、ディスクトレイ2の位置を検出するためのセンサ等を用いてディスクトレイ2がディスク交換位置に到達したことを検出したことで、モータ16を停止させるものを挙げることができる。
【0070】
しかしながら、モータ16の停止の方法はそれに限定するものではなく、ディスクトレイ2がディスク交換位置に到達したとき、ストッパ等で移動を強制的に停止するように形成しておき、ディスクトレイ2が強制的に停止されたときのモータ16の負荷の変化によって停止するものとしてもよい。また、モータ16の始動からの時間で停止のタイミングを決定するものであってもよい。モータ16の停止の方法としては、ディスクトレイ2を円滑且つ正確にディスク交換位置に摺動し停止することができる方法を広く採用することができる。
【0071】
なお、本実施形態の光ディスク装置において、ガイド溝22の直交部223と可動ボス412は、スライダボス41が斜行部222から直交部223に到達したとき、可動ボス412の一部が直交部223の後側の壁体とディスクトレイ2の摺動方向に重なるように形成されている。直交部223と可動ボス412をこのように形成することで、スライダボス41が斜行部222から直交部223に到達したとき、可動ボス412は直交部223によって押され変位する。それとは反対に、弾性変形部413の弾性力でディスクトレイ2が後側に押され、蓋状部20がローダシャーシ1と接触し、開口13が確実に覆われる。
【0072】
これにより、ローダシャーシ1の外部から開口13を介して塵、埃等の異物が入ったり、内部の光が開口13から外部に漏れたりするのを抑制することができる。また、可動ボス412が直交部223を押すことによる、蓋状部20とローダシャーシ1との接触は、弾性変形部413の弾性力によってディスクトレイ2が動かされるものである。この力はモータ16による力に比べて小さく、接触速度が低く、大きな衝撃音が発生しにくい。これにより、光ディスク装置の動作品質を高めることが可能である。
【0073】
本発明にかかる光ディスク装置に用いられるカムスライダの他の例について図面を参照して説明する。図7は本発明にかかる光ディスク装置に用いられるカムスライダの他の例の平面図である。図7に示すカムスライダ4Bは、スライダボス41bの形状が異なる以外は、図2等に図示しているカムスライダ4と同じ構成を有している。なお、実質上同じ部分には同じ符号が付してあると共に、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0074】
カムスライダ4Bのスライダボス41bは、カムスライダ4Bに一体成形された固定ボス411と、固定ボス411の後側に固定ボス411と並んで突設された可動ボス412bとを備えている。可動ボス412bはカムスライダ4の可動ボス412とは異なり、固定ボス411と同様、カムスライダ4Bから突設されている。
【0075】
可動ボス412bは、ディスクトレイ2の摺動方向に力を受けると、可動ボス412bそれ自体が弾性変形するように形成されている。例えば、断面積が固定ボス411に比べて小さくなるように形成されており、力が作用することで変形しやすい構成となっている。
【0076】
ディスクトレイ2がローダシャーシ1の内部に進入し、記録/再生位置まで到達したとき、カムスライダ4Bの移動によって、可動ボス412bが直交部223の内壁に押され変形する。可動ボス412bの変形による弾性力が直交部223に付勢され、ディスクトレイ2が後側に付勢される。ディスクトレイ2の蓋状部23がローダシャーシ1と接触していない場合、可動ボス412bの変形による弾性力でディスクトレイ2は後側に押され、蓋状部23がローダシャーシ1と接触し、開口10がふさがれる。
【0077】
また、可動ボス412bが変形したとき、蓋状部23がローダシャーシ1と接触している場合、ディスクトレイ2はそれ以上摺動しないが、後側に押されているので蓋状部23がローダシャーシ1に押し当てられて密着し、開口13から塵、埃等の異物が入ったり、内部の光が外部に漏れたりするのを抑制することができる。これにより、光ディスク装置の記録又は再生を精度よく行うと共に、品位が低下するのを抑制することが可能である。
【0078】
本発明にかかる光ディスク装置に用いられるカムスライダのさらに他の例について図面を参照して説明する。図8は本発明にかかる光ディスク装置に用いられるカムスライダのさらに他の例の平面図である。図8に示すカムスライダ4Cは、スライダボス41cの形状が異なる以外は、図2等に図示しているカムスライダ4と同じ構成を有している。なお、実質上同じ部分には同じ符号が付してあると共に、同じ部分の詳細な説明は省略する。
【0079】
図8に示すように、カムスライダ4Cは、スライダラック43に近いスライダボス411cは全体が固定された従来からある構成のものであり、スライダラック43から遠いスライダボス41cは、前面側が固定ボス411、後側が可動ボス412bを備える構成である。なお、可動ボス412bはカムスライダ4Bに備えられている可動ボス412bと同じ構成のものである。
【0080】
一つの可動ボス412bの弾性力でディスクトレイ2を摺動させたり、押えたりできる場合、上述のように片側のスライダボス41cにだけ、可動ボス412bが形成されていても、開口13からの異物の挿入を抑制し、内部の光が外部に漏れるのを抑制することができる。なお、本実施例において、スライダボス41cとして、可動ボス412bを備えたスライダボス41cを挙げているが、それに限定されるものではなく、可動ボス412と弾性変形部413を備えたスライダボス41と同じ構成のものであってもよい。また、可動ボス412bを備えたスライダボス41cを図中左側に形成する例を挙げているが、右側のスライダボス(すなわち、トレイラックに近い方)のボスを可動ボスを備えた構成としてもよい。
【0081】
本発明のかかる光ディスク装置の他の例について図面を参照して説明する。図9は本発明にかかる光ディスク装置のガイド溝とカムスライダとを主に示した配置図である。図9に示す光ディスク装置では、カムスライダ4Bが備えられている。なお、図9に示す光ディスク装置は、ディスクトレイ2のガイド溝の形状が異なる以外、図2等に示す光ディスク装置と同じ構成を有している。実質上同じ部分には同じ符号を付し、同じ部分についての詳細な説明は省略する。
【0082】
図9に示すように、光ディスク装置のディスクトレイ2にはガイド溝22dが備えられている。ガイド溝22dにおいて、直線部及び斜行部は図2に示す光ディスク装置の直線部221及び斜行部222と同じ形状のものを備えている。
【0083】
ガイド溝22dは、斜行部222と直交部223dとの間に広幅部224dを備えている。広幅部224dは、後側の壁体が直交部223dよりも、さらに後側にずれることで、溝の幅を確保している。広幅部224dは、直交部223dと隣接している部分において、後側の壁体が直交部223dの後側の壁体に向かって傾斜した構成となっている。傾斜した構成を備えていることで広幅部224dと直交部223dとの後側の壁体は滑らかな壁面を形成している。
【0084】
ディスクトレイ2の摺動時のガイド溝22dとスライダボス41bの位置関係について説明する。なお、スライダボス41bの直線部221から斜状部222への移動に関しては、上述と同じであり詳細は省略する。ディスクトレイ2がローダシャーシ1の内部に摺動すると、スライダボス41bがガイド溝22dの直線部221を移動し、斜行部222に到達する。スライダボス41bの固定部411が斜行部222に押され、カムスライダ4Bはディスクトレイ2と直交する方向に摺動する。
【0085】
スライダボス41bが斜行部222から広幅部224dに移動するとき、スライダボス41bのスライダラック43がトレイギヤ14と噛合し、カムスライダ4Bにはディスクトレイ2から押される力よりも大きな力が作用し、その力によって摺動されている。広幅部224dの後側の壁体が後側にずれて形成されており、スライダボス41bが広幅部224dに移動しても、可動ボス422bは壁体から押えられない。すなわち、可動ボス422bが変形していない。
【0086】
ディスクトレイ2が停止し、カムスライダ4Bが摺動すると、スライダボス41bは広幅部224d内を移動する。スライダボス41bが直交部223dに接近すると、可動ボス412bが広幅部224dの傾斜に押されて変形し、直交部223dに移動したとき、最も大きく変形している。可動ボス412bは弾性変形する部材であり、すなわち、変形による弾性力は変形量が大きくなるほど大きくなる。カムスライダ4Bの摺動によって傾斜に押され、変形量が大きくなる。
【0087】
カムスライダ4Bに作用する摺動力は、ガイド溝22dの斜行部222から押されている状態から、トレイギヤ14から伝達される駆動力に切り替わるとき、大きくなる。ガイド溝22dにおいて、斜行部222と隣接して広幅部224dが備えられていることで、可動ボス412bが直交部の壁体にカムスライダ4Bの摺動方向に強く押されない。また、傾斜に押されることで、可動ボス412bに作用するカムスライダ4Bの摺動方向の力を抑えつつ、ディスクトレイ2の摺動方向に力を作用させている。これにより、可動ボス412bには、変形しにくい方向(カムスライダ4Bが摺動する方向)に作用する力を抑えることができ、可動ボス412bの変形、破損等を抑制することができる。
【0088】
ディスクトレイ2が停止したとき、蓋状部23がローダシャーシ1と接触していない場合、可動ボス412bの弾性力がディスクトレイ2を動かすことができる力よりも大きくなったときにディスクトレイ2は可動ボス412bの弾性力で後側に押される。これにより、蓋状部23がローダシャーシ1と完全に接触し、押し当てられて密封されるる。これにより、開口13から塵、埃等の異物のローダシャーシ1への浸入や、ローダシャーシ1内部の光が外部に漏れるのを抑制することができる。
【0089】
このことにより、異物が対物レンズ等の光学素子、或いは、光ディスクに付着して情報の記録又は再生の精度が低下するのを抑制することが可能である。また、ローダシャーシ1の内部の光が外部に漏れにくいので、光ディスク装置の前面側から光が漏れることで、品位が低下するのを抑制することが可能である。
【0090】
以上示したように、本願発明の光ディスク装置を用いることで、蓋状部とディスクトレイが出入りする開口との隙間をうめるためのスポンジ状の部材や、蓋状部をさらにカバーしばね等による弾性力で開口を覆うカバー部材を用いることなく、ディスクトレイが出入りする開口から塵、埃等の異物が浸入するのを抑制し、ローダシャーシ内部の光が外部に漏れるのを抑制することが可能である。また、蓋状部がローダシャーシに接触するときの接触音を低減することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、記録媒体である光ディスクを搬送するためにディスクトレイを用いる光ディスク装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 ローダシャーシ
11 底面
12 壁部
13 開口
14 トレイギヤ
15 伝達ギヤ
16 モータ
2 ディスクトレイ
20 凹部
21 トレイラック
22 ガイド溝
221 直線部
222 斜行部
223 直交部
23 蓋状部
24 開口窓
3 トラバースシャーシ
31 昇降ボス
4 カムスライダ
41 スライダボス
410 貫通孔
411 固定ボス
412 可動ボス
413 弾性変形部
42 カム溝
421 上溝
422 斜溝
423 下溝
43 スライダラック
5 ディスク駆動部
51 ターンテーブル
52 モータ
6 光ピックアップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口を有する箱形状のローダシャーシと、
前面に前記開口よりも大きな蓋状部を有し、前記ローダシャーシに前記開口から出入可能な状態で支持されているディスクトレイと、
前記ローダシャーシの内部に配置され、前記ディスクトレイと直交する方向に摺動するカムスライダとを備え、
前記ディスクトレイの光ディスクを載置する面の反対側は、摺動方向に延びる直線部と、前記直線部より前面側に形成され前記摺動方向と直交する方向に延びる直交部と、前記直線部及び前記直交部とを接続し、前記摺動方向に対して傾いて形成された斜行部とを含むガイド溝を備え、
前記カムスライダが前記ガイド溝と係合するスライダボスを備えた光ディスク装置であって、
前記スライダボスが前記カムスライダに固定された固定ボスと、前記固定ボスの後側に配置され、前記ディスクトレイの摺動方向に変位可能であり、前記ディスクトレイが前記ローダシャーシの内部に移動したとき前記ガイド溝の前記直交部に押されて変位する可動ボスとを備えていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記カムスライダには前記固定ボスと前記可動ボスとの両方を含むスライダボスが少なくとも1つ備えられている請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記可動ボスは前記カムスライダに形成された貫通孔の内部に前記ディスクトレイの摺動方向に張り出した弾性変形部の先端より突出形成されている請求項1又は請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記可動ボスはそれ自体が弾性変形可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記ガイド溝の前記直交部は、前記ディスクトレイが前記ローダシャーシの内部に移動したとき、前記可動ボスを前記ディスクトレイ摺動方向奥側の内壁面で押す位置に形成されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記ガイド溝の前記直交部は、前記斜行部との連結部と近接している部分の前記ディスクトレイの摺動方向奥側の壁が、前記ディスクトレイの摺動方向奥側にずれて形成されている請求項5に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−233185(P2011−233185A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99970(P2010−99970)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】