説明

光ディスク装置

【課題】DVD−R/RWの光ディスクに記録された情報を再生する際に、LPPの影響に起因するエラーの発生を軽減する。
【解決手段】LPP検出部114はウォブル信号に対してLPPを検出する。補正部140は、極性が同一であるLPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部間で信号レベルの差分を算出する処理を行って差分セットを得、該差分セットを用いて、LPPが検出されたタイミングのRF信号に対して補正を行う。LPP有同期パターン部は、RF信号のシンクフレームの先頭に位置する同期パターン部のタイミングでLPPが検出された場合の同期パターン部である。LPP無同期パターン部は、シンクフレームの同期パターン部のタイミングでLPPが検出されなかった場合の同期パターン部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク、具体的にはDVD−RやDVD−RW規格に準拠した光ディスクに記録された情報の再生技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図16は、DVD−RおよびDVD−RW(以下合わせてDVD−R/RWと記載する)規格の光ディスクの平面図の一部を示す。図示のように、ユーザー情報が記録されるグルーブ領域が形成されており、隣接するグルーブ間の領域はランドと呼ばれる。なお、グルーブは蛇行しているが、図示の便宜のため、グルーブとランドを長方形で表している。
【0003】
ランドには、物理アドレスなどの補助情報がLPP(ランドプリピット)として形成されている。光ディスクに再生対象となる情報(以下再生情報という)を記録する際に、集光したレーザ光をディスク面に照射し、その反射光から得られるウォブル信号と呼ばれる信号からLPPを検出しディスクの物理的な位置情報を取得する。これにより任意の位置のグルーブ領域にユーザー情報を情報マークとして記録することができる。また、グループの蛇行はウォブル信号から検出できるが、この信号より記録クロックが生成される。この記録クロックに同期して情報マークを記録することで、書き継ぎあるいは上書き時にも、不整合を起こすことなく記録ができる。また、記録の際には、レーザパワーを上げ集光領域の温度制御によって物理特性を変化させ、情報マークを形成する。
【0004】
グルーブ領域に情報マークが記録された光ディスクの再生に際して、グルーブにレーザ光を照射し、反射光から再生情報と同期情報を含む読取信号を得る。ただし、再生時には情報マークが消去されないように記録時よりも小さなパワーでレーザを発振させる。
【0005】
なお、再生時に得られる読取信号は、通常、ウォブル信号より高い周波数を有し、RF信号と呼ばれる。
【0006】
図17は、特許文献1における図11に対応し、光ディスクの再生装置の一例を示す。この再生装置は、A/D変換器11、オフセット補正器12、アシンメトリ補正器13、PLL回路14、誤差算出器16、光ヘッド17、等化器19、タップ係数補正器20、ビタビ復号器21を備える。
【0007】
光ディスク18は、図示しないスピンドルモータによって等角速度回転或いは等線速度回転をする。光ヘッド17は、図示しないサーボ回路によってディスク面と対物レンズの距離、及び、光ディスク18のグルーブと集光スポットの半径位置が制御され、グルーブに集光スポットを照射する。ディスク面からの反射光は、情報マークの有無により反射率或いは偏光が変化し、これを図示しない検出器により検出することでアナログのRF信号S1が得られる。
【0008】
A/D変換器11は、アナログのRF信号S1をA/D変換して、デジタル化されたRF信号S2を得る。オフセット補正器12は、A/D変換器11の出力S2を、誤差算出器16の出力に基づいてオフセット補正する。アシンメトリ補正器13は、オフセット補正器12の出力S3を入力し、アシンメトリを検出して、これを補正する。PLL回路14は、アシンメトリ補正器13の出力S4と、A/D変換器11のサンプリングクロックとがRF信号S1に位相同期するように制御する。なお、アシンメトリ補正器13の出力S4をPLL回路14及び等化器19に入力する前に、図示しないAGCにより、信号振幅が一定となるようにゲイン制御を行う構成の再生装置もある。
【0009】
等化器19は、アシンメトリ補正器13の出力S4を、タップ係数補正器20によって制御されたタップ係数により、ビタビ復号器21が規定するPR特性となるように等化する。等化器19は、入力信号のSNR(Signal to Noise Ratio)およびチャネル特性がほぼ一定の場合には、タップ係数補正器20からのタップ係数を用いないで、固定の係数で等化を行ってもよい。
【0010】
ビタビ復号器21は、等化器19の出力S5を入力して最尤検出などを行って、チャネルビットデータ列となる検出データを得る。
【0011】
誤差算出器16は、等化器19の出力S5と、ビタビ復号器21が出力した検出データとを入力し、誤差情報を出力する。具体的には、まず、検出データを、それに対応するビタビ復号器21の入力として想定される信号(レプリカ信号)に変換する。次いで、等化器19の出力S5とレプリカ信号との差を算出し、その差を、レプリカ信号がビタビ復号器21の基準レベルの中央レベル近傍の場合にのみ出力する。この出力は、誤算情報となる。タップ係数補正器20は、等化器19の出力S5と誤差算出器16の出力の差が最小となるようにタップ係数を補正して等化器19に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−59018号公報
【特許文献2】特開2002−150564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、通常、再生装置の光ヘッド(図17に示す光ヘッド17)が出射する集光スポットの直径がグルーブの幅より大きいため、再生装置で得られるRF信号は、情報マークに応じたもののみならず、LPPに対応する信号も含まれる場合がある。図17に示す再生装置のようにLPPの影響を取り除く措置を施さない場合、A/D変換などの処理が施されたRF信号は、LPPの影響を含んだままビタビ復号器21に入力されるため、エラーの多発を引き起こす恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つの態様は、DVD−R/RW規格の光ディスクのグルーブに記録された再生情報を再生する光ディスク装置である。この光ディスク装置は、ウォブル信号を生成するウォブル信号生成部と、グルーブに対して読取りを行ってRF信号を生成するRF信号生成部と、ウォブル信号に対してLPPを検出するLPP検出部と、差分算出部と、補正実行部とを備える。
【0015】
差分算出部は、RF信号のシンクフレームの先頭に位置する同期パターン部のタイミングで、LPP検出部によりLPPが検出された場合と検出されなかった場合の同期パターン部を夫々LPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部として、差分セットを算出する。差分セットの算出は、極性が同一であるLPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部間で信号レベルの差分を演算する処理である。
【0016】
補正実行部は、差分算出部の算出結果を用いて、LPP検出部によりLPPが検出されたタイミングのRF信号に対して補正を行う。
【0017】
なお、上記態様の光ディスク装置をシステムや方法に置き換えて表現したもの、該光ディスク装置の一部の処理をコンピュータに実行せしめるプログラムも、本発明の態様としては有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる技術によれば、DVD−R/RWの光ディスクに記録された情報を再生する際に、LPPの影響に起因するエラーの発生を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】RF信号のフレーム構成を示す図である。
【図2】正極性の14T同期パターン部の波形を示す図である。
【図3】負極性の14T同期パターン部の波形を示す図である。
【図4】LPPセットのパターンを説明するための図である。
【図5】LPPセットの1ビット目による正極性の14T同期パターン部の波形への影響を示す図である。
【図6】LPPセットの1ビット目による負極性の14T同期パターン部の波形への影響を示す図である。
【図7】LPPが14T同期パターン部へ与える影響の規則性を示す図である。
【図8】LPPセットがRF信号のユーザデータへの影響を説明するための図である。
【図9】LPPによる影響がある場合と無い場合の14T同期パターン部の信号レベル間の差分を示す図である。
【図10】平均化した差分の例を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態にかかる光ディスク装置を示す図である。
【図12】図11に示す光ディスク装置における補正部を示す図である。
【図13】図12による補正の結果の例を示す図である。
【図14】図11に示す光ディスク装置と従来の光ディスク装置による再生時のエラー数を比較する図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態の光ディスク装置における補正部を示す図である。
【図16】DVD−R/RW規格の光ディスクを示す図である。
【図17】従来の光ディスク装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0021】
本発明の具体的な実施の形態の前に、まず、本発明に係る技術の原理を説明する。
図1は、DVD−R/RWの光ディスクを再生する際にグルーブに対して読取りを行って得たRF信号のフレーム構成を示す。RF信号の最小構成単位はシンクフレームである。シンクフレームの長さは1488T(T:記録クロックの周期)である。シンクフレームの先頭における、14Tを含んだ長さ32Tの期間の信号は、同期情報を表し、その14T部分を以下14T同期パターン部と記述する。同期情報の部分の後は、再生情報を表すユーザデータが続く。なお、連続した2つのシンクフレームは、172バイトのデータにつき10バイトのPIパリティが付加されており、以降PIフレームと記載する。PIフレームの前のシンクフレームをevenフレーム、後のシンクフレームをoddフレームと呼ぶこととする。
【0022】
図2と図3は、等化後のRF信号における14T同期パターン部の波形を示す。図2は正極性時のものであり、図3は負極性時のものである。なお、14T同期パターン部の波形の極性は、直前のユーザデータの値およびDSV(Digital Sum Value)制御に応じて決まる。また、図の信号レベルはマイナス側が情報マークが存在する方向であるが、長い情報マーク先頭部が細く記録されたため図3では波形が歪んでいる。このように実際の読み出し信号は、信号レベル零に対して対称とはならず情報マーク側で歪みが発生することが多い。
【0023】
PIフレーム毎に、該PIフレームのevenフレームとoddフレームのいずれか一方に対応した位置に、3ビットのLPPが形成されている。以下、この3ビットをLPPセットと記載する。記録時に、ウォブル信号に対してLPP検出を行い、LPPセットに対応するLPP検出信号を得ることにより、各LPPセットが表す情報を得る。図4は、LPPセットの4つのパターン、およびそれらに対応するLPP検出信号を示す。
【0024】
LPPセットが表す情報は、LPPの同期用の「111」と「110」、及びLPPのデータとしての「101」と「100」の4種類がある。図4において、Aパターンは、evenフレームに対応する位置に同期用のLPPセットが形成された場合のものであり、「111」を表す。Bパターンは、oddフレームに対応する位置に同期用のLPPセットが形成された場合のものであり、「110」を表す。Cパターンは「101」のデータを表し、Dパターンは「100」のデータを表す。なお、3ビットのLPPの各ビットの間隔は、1ウォブル周期(=186T)である。
【0025】
図4から分かるように、LPPセットのいずれのパターンも、その1ビット目は必ず「1」である。DVD−R/RWの光ディスクにおいて、この1ビット目が形成された部位と隣接するグルーブ領域では、再生情報のための同期情報が記録されている。そのため、再生の際に得られたRF信号には、PIフレーム毎に、該PIフレームの片方のシンクフレームの14T同期パターン部は、LPPセットの1ビット目の影響により歪みが生じてしまう。一方、他方のシンクフレームの14T同期パターン部は、LPPによる影響を受けない。以下、LPPセットの1ビット目の影響を受ける14T同期パターン部を「LPP有同期パターン部」、LPPセットの1ビット目の影響を受けない14T同期パターン部を「LPP無同期パターン部」と記載する。
【0026】
図5は、LPPセットの1ビット目が正極性の14T同期パターン部に与える影響を示す。図中実線は、図2が示す14T同期パターン部、すなわちLPP無同期パターン部である。図中点線は、LPPによる影響がある場合の波形すなわちLPP有同期パターン部を示す。図5から分かるように、LPP具体的には3ビットのLPPセットの1ビット目の影響により、14T同期パターン部の波形に、歪みが生じている。
【0027】
図6は、LPPセットの1ビット目が負極性の14T同期パターン部に与える影響を示す。図中実線は、図3が示す負極性のLPP無同期パターン部である。図中点線は、LPPによる影響がある場合の波形すなわちLPP有同期パターン部を示す。図6から分かるように、負極性の14T同期パターン部の場合にも、LPPセットの1ビット目の影響により、14T同期パターン部の波形に、歪みが生じている。
【0028】
本願発明者は、RF信号におけるLPPの影響を取り除くために、まず、RF信号のどの部位がLPPの影響を受けたかを特定する手法を想到した。この手法は、再生に際して、RF信号と共にウォブル信号を生成し、ウォブル信号に対してLPP検出を行ってLPP検出信号を得、LPP検出信号により、RF信号においてLPPの影響を受けた部分を特定する。ここでいうウォブル信号は、再生情報を光ディスクに記録する際に生成されるウォブル信号と同様のものである。
【0029】
図7は、RF信号と、RF信号に対して14T同期パターン部の検出を行って得たRFシンク検出信号と、ウォブル信号に対してLPP検出を行って得たLPP検出信号と、各14T同期パターンの波形との例を示す。
【0030】
RF信号は複数のシンクフレームにより構成され、図7において、時系列にシンクフレーム1〜11を示している。例として、シンクフレーム1、3、5、7、9、11は、evenフレームであり、シンクフレーム2、4、6、8、10は、oddフレームである。
【0031】
RFシンク検出信号から分かるように、各シンクフレームの先頭で14T同期パターン部が検出されている。
【0032】
LPP検出信号から分かるように、2つのシンクフレームすなわち1つのPIフレーム毎に、1つのLPPセットが検出されている。なお、図示の例では、各LPPセットは、PIフレームのevenフレームで検出されている。
【0033】
シンクフレーム1では、AパターンのLPPセット(111)が検出されており、シンクフレーム3、シンクフレーム5、シンクフレーム9では、DパターンのLPPセット(100)が検出されており、シンクフレーム7とシンクフレーム11では、CパターンのLPPセット(101)が検出されている。なお、AパターンのLPPセットが検出されたとは、LPPセットの3ビットとも検出されたことを意味し、BパターンのLPPセットが検出されたことは、LPPセットの1ビット目と2ビット目が検出され、3ビット目が検出されなかったことを意味する。同様に、CパターンのLPPセットが検出されたことは、LPPセットの1ビット目と3ビット目が検出され、2ビット目が検出されなかったことを意味し、DパターンのLPPセットが検出されたことは、LPPセットの1ビット目のみ検出され、2ビット目と3ビット目が検出されなかったことを意味する。
【0034】
図7の最上部は、シンクフレーム1〜11の14T同期パターン部の波形を示す。すべてのPIフレームにおいて、LPPセットが検出されたシンクフレーム(ここの例ではevenフレーム)の14T同期パターン部の波形は歪みが生じており、LPPセットが検出されなかったシンクフレーム(ここの例ではoddフレーム)の14T同期パターン部は歪みが生じてない。
【0035】
前述したように、14T同期パターン部の波形の歪みは、LPPセットの1ビット目の影響によるものである。ここでAパターンのLPPセットの2ビット目と3ビット目がRF信号への影響を考える。
【0036】
図8は、AパターンのLPPセット(111)の各ビットが検出されたタイミングを示す。この例のLPPセットがAパターンであるため、該LPPの1ビット目が検出されるタイミングは、evenフレームの14T同期パターン部の中央付近である。DVD−R/RW規格では、変調は16Tが1byteになるように定められているため、LPPセットの2ビット目と3ビット目は、該evenフレームの12byte目付近と24byte目付近になり、共にユーザデータの領域である。すなわち、AパターンのLPPセットの2ビット目と3ビットは、RF信号におけるユーザデータの部分に影響を与える。
【0037】
ユーザー情報の記録時に自動的に挿入された14T同期パターンはECC(Error Correction Code)デコード前に削除される。また、前述したように、LPPセットはPIフレーム毎に、いずれかのシンクフレームに対応する位置に形成されるため、図8に示す例の場合、該PIフレームのoddフレームは、14T同期パターン部とユーザデータ部分のいずれもLPPによる影響が無い。
【0038】
同様に、BパターンのLPPセット(110)の2ビット目、CパターンのLPPセット(101)の3ビット目も、RF信号のユーザデータ部分に影響を与える。
【0039】
RF信号のユーザデータ部分にLPPの影響により歪みが生じると、ビタビ復号器などによる2値化の際、エラーが多発し、再生品質の低下を引き起こすことになる。図8の下部に示すように、RF信号における、AパターンのLPPセットの2ビット目と3ビット目が検出されたタイミングの位置(12byte目付近、24Byte目付近)で、エラーが多く発生する。12byte目付近のエラー発生頻度が低いのはLPPセットの第2ビットが"1"になる確率が低いためである。
【0040】
上述した知見に基づき、本願発明者は、再生時において、RF信号からLPPの影響を取り除き、エラーを軽減する手法を確立した。この手法は、下記ステップを含む。
【0041】
<ステップ1>
DVD−R/RWの光ディスクに記録された再生情報の再生に際して、RF信号と共に、ウォブル信号を生成する。RF信号の生成は、従来の光ディスク装置による再生時の処理と同様であり、ウォブル信号の生成は、従来の光ディスク装置による記録時の処理と同様である。
【0042】
<ステップ2>
ウォブル信号に対してLPP検出を行う。LPP検出は、従来の光ディスク装置による記録時の処理と同様である。
【0043】
<ステップ3>
極性が同一であるLPP無同期パターン部とLPP有同期パターン部に対して信号レベルの差分を算出する処理を行って差分セットを得る。
LPP無同期パターン部は、前述したように、LPPセットの1ビット目による影響が無い14T同期パターン部であり、具体的には、14T同期パターン部のタイミングで、LPPが検出されていない場合の14T同期パターン部である。
LPP有同期パターン部は、LPPセットの1ビット目により影響されている14T同期パターン部であり、具体的には、14T同期パターン部のタイミングで、LPPが検出されている場合の14T同期パターン部である。
【0044】
なお、差分セットを算出する際に用いるLPP無同期パターン部とLPP有同期パターン部の極性は、同一であればよく、正極性と負極性のいずれでもよい。図9は、正極性のLPP無同期パターン部とLPP有同期パターン部間で算出した差分セットと、負極性のLPP無同期パターン部とLPP有同期パターン部間で算出した差分セットの例を夫々示す。
【0045】
<ステップ4>
ステップ3で算出した結果を用いて、LPPが検出されたタイミングのRF信号に対して補正する。具体的には、該当部分のRF信号の夫々のレベルから、差分セットに含まれる相対応の差分を減算する。
【0046】
また、正極性のLPP無同期パターン部とLPP有同期パターン部間で算出した差分セットと、負極性のLPP無同期パターン部とLPP有同期パターン部同士間で算出した差分セット間で平均をとって補正に用いてもよい。
【0047】
また、14T同期パターン部とLPP検出の進行に伴って算出した各々の差分セット間で平均化処理(すなわち時間方向において差分セット間で平均化処理)を行って得た差分セットでその後のRF信号の補正に用いることが望ましい。図10は、このような平均化処理がなされた差分セットの一例を示している。
【0048】
勿論、時間方向に、LPP有同期パターン部間、およびLPP無同期パターン部間で信号レベルの平均化処理を行ってから差分セットを算出するようにしてもよい。
【0049】
なお、時間方向に平均化処理を行う手法としては、例えばIIRフィルタを用いることが望ましい。
【0050】
以上に述べた原理を踏まえて、本発明にかかる実施の形態を説明する。
<第1の実施の形態>
図11は、本発明の第1の実施の形態による光ディスク装置100を示す。光ディスク装置100は、DVD−R/RW規格に準拠し、DVD−R/RWの光ディスクに対して再生情報の記録と再生を行うものであり、光ヘッド104と、記録部110、再生部120を有する。
【0051】
記録部110は、光ディスク102に対して同期情報と再生情報を記録するものであり、ウォブル信号生成部112、LPP検出部114、記録クロック生成回路115、エンコーダー116とレーザ制御部117を備える。ウォブル信号生成部112は、光ヘッド104が光ディスク102に照射したレーザ光の反射光の差動信号から、ノイズ除去を行うフィルタリングを施してウォブル信号WSを生成し、LPP検出部114は、ウォブル信号WSに対してLPPの検出を行ってLPP検出信号LCを得る。記録クロック生成回路115は、ウォブル信号WSから記録用クロックを生成し、図示しないホストコンピュータ等から入力された書込みデータを所定の方法でエンコードする。エンコーダー116から出力されたデータは、レーザ制御部117でライトストラテジと呼ばれるレーザのパワー制御がなされ、光ヘッド104を介して光ディスク102に記録される。記録部110は、LPP検出部114により得られたLPP検出信号LCが示す物理アドレス情報やその他記録に必要な情報とLPPの位置を基準に、再生情報と同期情報を情報マークとして記録する。
【0052】
本実施の形態において、記録部110のウォブル信号生成部112とLPP検出信号LCは、再生時にも動作する。この点を除き、ウォブル信号生成部112、LPP検出部114、記録クロック生成回路115、エンコーダー116、レーザ制御部117、及び記録部110の図示しない他の各構成要素は、従来の光ディスク装置のものと同様であり、これらについては詳細な説明を省略する。
【0053】
再生部120は、光ディスク102に対して再生処理を行うものであり、RF信号生成部122と、ADC124と、オフセット補正器126と、アシンメトリ補正器128と、等化器130と、PLL回路132と、誤差算出器134と、タップ係数補正器136と、補正部140と、2値化部138を備える。
【0054】
RF信号生成部122は、光ヘッド104により光ディスク102のグルーブに照射したレーザ光の反射光から再生情報と同期情報を含むアナログRF信号P1を得る。
【0055】
前述したように、本実施の形態において、ウォブル信号生成部112とLPP検出部114は、再生時にも動作する。再生時には、RF信号生成部122によるRF信号の生成と共に、ウォブル信号生成部112は、ウォブル信号WSを生成し、LPP検出部114はウォブル信号WSに対してLPP検出を行ってLPP検出信号LCを得る。再生時において、LPP検出信号LCは、補正部140に入力される。
【0056】
ADC124は、アナログRF信号P1に対してAD変換を行ってデジタルRF信号P2を得る。
【0057】
オフセット補正器126は、デジタルRF信号P2に対して例えばDC変動を吸収するオフセット補正を行う。
【0058】
アシンメトリ補正器128は、オフセット補正器126の出力P3を入力し、アシンメトリを検出して、これを補正する。
【0059】
PLL回路132は、アシンメトリ補正器128の出力P4と、ADC124のサンプリングクロックがアナログRF信号P1に位相同期するように制御する。
【0060】
等化器130は、アシンメトリ補正器128の出力P4を、タップ係数補正器136によって制御されたタップ係数により、2値化部138例えばビタビ復号器が規定するPR特性となるように等化して、等化されたデジタルRF信号P5を得る。
【0061】
補正部140は、等化されたデジタルRF信号P5に対して補正を行って、補正されたデジタルRF信号P6を2値化部138に出力する。補正部140の詳細については後述する。
【0062】
2値化部138は、例えばビタビ復号器で構成され、補正されたRF信号P6に対して最尤検出を行って復号し、チャネルビットデータ列となる2値化データP7を得て出力する。本実施の形態において、2値化部138は、さらに、RF信号の各シンクフレームについて、14T同期パターン部のタイミングを示す信号P8を補正部140に出力する。以下、信号P8を「シンク検出信号」という。
【0063】
誤差算出器134は、等化器130により等化されたRF信号P5と、2値化部138が得た2値化データP7とを入力し、誤差情報を出力する。タップ係数補正器136は、等化されたデジタルRF信号P5と、誤差算出器134の出力との差が最小となるようにタップ係数を補正して等化器130に出力する。
【0064】
図12は、補正部140を詳細に示す。補正部140は、RF信号、ここでは等化されたデジタルRF信号P5に対してLPPの影響を取り除く補正を行うものであり、第1の平均化部141、2つの減算器(162、164)、第2の平均化部170、補正実行部180、制御部190を備える。第1の平均化部141は、4つのフィルタ(142〜148)と、4つのFIFO(152〜158)を有する。減算器162と164、及び第2の平均化部170は、差分算出部を構成する。また、補正実行部180は、減算器182とセレクタ184を有する。
【0065】
制御部190は、アシンメトリ補正器128の出力P4、2値化部138が出力したシンク検出信号P8、LPP検出部114が出力したLPP検出信号LCに基づいて、他の各構成要素の動作タイミングや、処理対象を制御する。具体的には、シンク検出信号P8に基づいて、等化されたデジタルRF信号P5における14T同期パターン部のタイミングを知ると共に、アシンメトリ補正器128の出力P4を参照して、該14T同期パターン部の極性を検出する。さらに、LPP検出信号LCに基づいて、上記14T同期パターン部のタイミングでLPPの1ビット目が検出された否かを確認する。そして、2値化部138から14T同期パターン部のタイミングが通知される度に、該14T同期パターン部の極性と、LPPの1ビット目の検出の有無とに応じてフィルタ142〜148、FIFO152〜158を制御する。
【0066】
また、制御部190は、補正するか否かを示す制御信号ctrを補正実行部180に出力し、補正実行部180を制御する。具体的には、等化されたデジタルRF信号P5に対して、LPPが検出されたタイミングに対応する部分についてのみ補正し、他の部分については補正しないように制御する。
【0067】
ここで、図12に示された補正部140の動作について、より詳細に説明する。まず、本実施の形態は、DVD−R/RW規格に準拠した光ディスクに関するものである。このような光ディスクでは、情報を読み出すために図11にある光ディスク102にレーザ光を照射して情報を読み取るが、この際、レーザ光を照射して行う読取りは、読み取りたい情報が書き込まれている場所よりも前の場所から開始される。例えば読み取りたい情報が書き込まれている最初のアドレスが30000番地である場合には、29000番地からレーザ光を照射して読取りを開始する。
【0068】
図12の補正部140には、4つのFIFO152、154、156、158が設けられている。これらのFIFOのそれぞれは、図5および図6に示したようなRF信号を極性ごとに記憶する。例えばこれらのFIFOのそれぞれは、図5や図6のRF信号の0Tから20Tまでの情報を記憶する。具体的には、RF信号は1Tごとにサンプリングされており、0Tから20Tまでの各サンプリングポイントに対応する信号の値が、サンプリングされたRF信号の極性に対応する1つのFIFOに記憶される。
【0069】
ここで、光ディスクに書き込まれている情報の読取りを開始した時点では、これら4つのFIFOには何らの情報も記憶されていない。しかし、情報の読取りを開始する際には、読み取りたい情報が最初に書き込まれているアドレスよりも前のアドレスから読取りを開始するため、読取りの箇所が本来読み取りたい場所に到達する時点では、4つのFIFO152、154、156、158は信号の値が記憶されていることになる。
【0070】
したがって、本実施の形態では、読み取りたい情報が最初に読み取られる時点から、RF信号に対して必要な補正を行うことができる。
【0071】
以下、図12の補正部140の動作を説明するが、FIFO152、154、156、158のそれぞれにはRF信号のサンプリングされた20T分のデータが記憶されているものとする。まず、等化器130がアシンメトリ補正器128から、信号P4を受け取ると共に、制御部190も信号P4を受け取る。制御部190は、受け取った信号P4に基づいて、次に入力されるRF信号の極性が正極性であるか負極性であるかを知る。また、制御部190は、図11のLPP検出部114が出力する信号LCを受け取って、次に補正部140に入力されるRF信号がLPPの影響を受けているかどうか、すなわち補正部140においてRF信号に対して補正を行う必要があるかどうかを知る。そして制御部190は、次に補正部140に入力されるRF信号が補正を行う必要がある場合には、減算器182が接続された信号線をセレクタが選択するよう、制御信号ctrを出力する。一方、制御部190は、次に補正部140に入力されるRF信号が補正を行う必要がない場合には、減算器182が接続されていない信号線をセレクタ184が選択するよう、制御信号ctrを出力する。
【0072】
一方、等化器130は、デジタルのRF信号である信号P5を補正部140に出力する。なお、説明のため、信号P5は、補正部140による補正が必要なRF信号であることとする。この信号P5は、フィルタ142、144、146、148と、セレクタ184に入力されるが、前述した通り、制御部190が出力した制御信号ctrによって、係る信号P5は減算器182による補正が行われた後でセレクタ184から出力される。ここで、制御部190は、RF信号の補正が必要であることをLC信号が示していることに基づき、4つのFIFO152、154、156、158のそれぞれから、20T分のサンプリングデータが読み出されるよう、これら4つのFIFOを制御する。なお、4つのFIFOからは1Tごとのサンプリングデータがシリアルに出力される。そして、減算器は、正極性FIFO152から出力されたRF信号のサンプリングデータと、正極性FIFO154から出力されたRF信号のサンプリングデータを減算する。この減算もシリアルに行われる。また、減算器164は、負極性FIFO156から出力されたRF信号のサンプリングデータと、負極性FIFO158から出力されたRF信号のサンプリングデータを減算する。この減算もシリアルに行われる。
【0073】
減算器162と164のそれぞれからは、減算後のデータがシリアルに、順次出力され、当該出力されたデータは第2の平均化部170に入力される。第2の平均化部170は、入力されたデータD1とD2を平均して、減算器182に出力する。そして、減算器182は、等化器130が出力した信号P5から第2の平均化部170が出力する値を減算する。このようにして、RF信号の補正が行われる。
【0074】
さらに、セレクタ184から出力されたデジタルのRF信号は、信号P6として、2値化部で処理される。そして2値化部138は、処理結果に基づきシンク検出信号P8を制御部190に出力する。このシンク検出信号P8は、制御部190がどのタイミングでFIFO152、154、156、158を制御すればよいかの基準となる信号である。
【0075】
制御部190は、読み取りたい情報が最初に書き込まれている場所よりも前の情報に対する処理を行っている際に、過去のシンク検出信号を基準にして、同期パターン部がどのようなタイミングで第1の平均化部141に入力されるのかを推測する。すなわち、制御部190は、同期パターン推測部としても機能する。この推測は、同期パターン部が一定の間隔で設けられているという規格上の特性に基づくものである。そして、読み取りたい情報が最初に書き込まれている場所から後の読取りを行う場合においては、制御部190は、推測されたタイミング情報を用いて4つのFIFOを制御する。
【0076】
このようにすることで、過去のシンク検出信号を基準にして推測した任意のタイミングで4つのFIFOを制御できるため、第1の平均化部141および2値化部138の遅延量に応じた回路構成にすることができ、回路量が削減できる。
【0077】
あるいは、別の実施の形態としては、制御部190は、上述の過去のシンク検出信号を基準にして推測した信号を用いずに、2値化部138の同期パターン検出信号を基準にして4つのFIFOを制御する構成でも実現できる。この場合、2値化部138において2値化およびシンク検出の回路遅延が生じるため、フィルタ142、144、146、148の入力側に図示しない遅延バッファが設けられる。この遅延バッファは2値化部138からのシンク検出信号P8が示す情報に基づいて制御部190がFIFO152、154、156、158を制御し、所望の同期パターンを記憶できるようにするためである。
【0078】
制御部190の基準信号となるシンク検出信号P8は、光ディスク上の傷や欠陥に起因して検出出来ない可能性がある。この場合に対応して、シンククレームが一定の間隔で設けられている、すなわち同期パターンが一定の間隔で設けられているという規格上の特性に基づいて、過去のシンク検出信号から推測したシンク位置に生成する信号を用いるようにしてもよい。
【0079】
以上のように、制御信号190は、シンク検出信号P8に基づいて、補正部140に入力されたRF信号P5の極性に対応する1つのFIFOに、対応する1つのフィルタを介した信号が記憶されるように制御する。信号P5の極性に対応する極性の1つのFIFOに記憶されていたデータは、上書きされる。そして、次の補正すべきRF信号に対する補正の準備が整う。
【0080】
なお、フィルタ142の出力A1はFIFO152に入力され、FIFO152の出力をOA1、フィルタ内部のフィルタ係数をK(0<K<1)とすると、A1とOA1の関係は、下記の式(1)で表すことができる。
A1=OA1×(1−K)+P5×K (1)
【0081】
FIFO152のメモリ長を例えば20Tとし、信号P5がLPP有同期パターン部でかつ正極性である場合にのみ1T毎に20T分だけFIFO152を動作させると、メモリ内データが更新されて1次IIRフィルタ動作となる。従って、正極性LPP有同期パターンが来るたびにFIFO152内には平均化されたデータセットが保存されることになる。平均化の時定数はフィルタ係数Kによって決定されKが小さいほど時定数が大きくなる。
FIFO152の出力OA1を以下「正極性LPP有平均信号」とも記載する。
【0082】
同様に、フィルタ144とFIFO154により、正極性LPP無同期パターンが来るたびにFIFO154のメモリ内容が更新されて平均化処理がなされ、FIFO154からは「正極性LPP無平均信号OA2」が出力される。
【0083】
また、フィルタ146とFIFO156により、負極性LPP有同期パターンが来るたびにFIFO156のメモリ内容が更新されて平均化処理がなされ、FIFO156からは「負極性LPP有平均信号OB1」が出力される。
【0084】
また、フィルタ148とFIFO158により、負極性LPP無同期パターンが来るたびにFIFO158のメモリ内容が更新されて平均化処理がなされ、FIFO158からは「負極性LPP無平均信号OB2」が出力される。
【0085】
減算器162は、正極性FIFO152が出力した正極性LPP有平均信号OA1と、正極性FIFO154が出力した正極性LPP無平均信号OA2の差分D1を算出して第2の平均化部170に出力する。この差分D1を以下正極性差分とする。
【0086】
減算器164は、負極性FIFO156が出力した負極性LPP有平均信号OB1と、負極性FIFO158が出力した負極性LPP無平均信号OB2の差分D2を算出して第2の平均化部170に出力する。この差分D2を以下負極性差分とする。
【0087】
第2の平均化部170は、減算器162からの正極性差分D1と、減算器164からの負極性差分D2の平均をとって平均差分Dを得て、補正実行部180の減算器182に出力する。
【0088】
補正実行部180の減算器182は、等化されたデジタルRF信号P5に対して、信号レベルから平均差分Dを減算してセレクタ184に出力する。
【0089】
セレクタ184は、制御信号ctrに従って、等化されたデジタルRF信号P5を出力するか、減算器182からの信号を出力する。具体的には、制御信号ctrが、LPPが検出されていないことに対応する「補正しない」を示すときには等化されたデジタルRF信号P5を出力する。一方、制御信号ctrが、LPPが検出されたことに対応する「補正する」を示すときには、減算器182からの信号を出力する。
【0090】
すなわち、補正実行部180は、LPP検出部114によりLPPが検出されたタイミングのRF信号に対して、LPPの影響を取り除く補正をしている。
【0091】
図13は、本実施の形態の光ディスク装置100による再生時に、LPPにより影響された、RF信号におけるユーザデータ領域の部分に対して補正を行った結果の例を示す。点線は、LPPの第2あるいは第3ビットの影響で振幅が低下してしまったユーザー情報を含む波形の一部である。本来、PR(1,2,2,1)等化により、ビタビ復号器への入力が0、±2/3、±1の5等化レベル近傍にあるはずが大きくずれてしまっている。これが、補正により、本来の等化レベルへ回復している。
【0092】
図14は、本実施の形態の光ディスク装置100により再生する際の2値化時のエラー数と、LPPの影響を補正しない従来の光ディスク装置により再生する際の2値化時のエラー数を比較する図である。図示のように、本実施の形態の光ディスク装置100により、2値化時のエラー数が減少されている。
【0093】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態も、DVD−R/RW規格に準拠した光ディスク装置である。この光ディスク装置は、図11に示す第1の実施の形態の光ディスク装置100に対して、補正部140の代わりに図15に示す補正部200を設けたものである。ここで補正部200についてのみ説明する。なお、図15においては、図12に示す補正部140と同様のものについては同じ符号を付与しており、それらの詳細な説明を省略する。
【0094】
補正部200は、RF信号、ここでは等化されたデジタルRF信号P5に対してLPPの影響を取り除く補正を行うものであり、2つのFIFO(212、214)、減算器230、第1の平均化部231、補正実行部180、制御部290を備える。第1の平均化部231は、フィルタ232と差分FIFO234を有する。
【0095】
正極性FIFO212は、制御部290の制御に従って、等化されたデジタルRF信号P5における正極性のLPP無同期パターン部を取り込んで保持する。また、RF信号P5がLPP有同期パターンの場合、保持中の正極性のLPP無同期パターン部をセレクタ220に出力する。
【0096】
負極性FIFO214は、制御部290の制御に従って、等化されたデジタルRF信号P5における負極性のLPP無同期パターン部を取り込んで保持する。また、RF信号P5がLPP有同期パターンの場合、保持中の負極性のLPP無同期パターン部をセレクタ220に出力する。
【0097】
セレクタ220は、制御部290からの制御信号ctr1に応じて、正極性FIFO212の出力(正極性のLPP無同期パターン部)、または負極性FIFO214の出力(負極性のLPP無同期パターン部)を減算器230に出力する。
【0098】
制御部290の制御により、正極性FIFO212が出力した正極性のLPP無同期パターン部と、正極性FIFO212が取り込んだ正極性のLPP無同期パターン部の直後の正極性のLPP有同期パターン部とは、同じタイミングで減算器230に入力されるようになっている。
【0099】
同様に、制御部290の制御により、負極性FIFO214が出力した負極性のLPP無同期パターン部と、負極性FIFO214が取り込んだ負極性のLPP無同期パターン部の直後の負極性のLPP有同期パターン部とは、同じタイミングで減算器230に入力されるようになっている。
【0100】
そのため、減算器230より、正極性のLPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部の信号レベルの差分と、負極性のLPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部の信号レベルの差分が順次得られて、フィルタ232に入力される。
【0101】
フィルタ232と差分FIFO234により構成された第1の平均化部231は、1次IIRフィルタとして機能する。第1の平均化部231により、制御部290からの制御信号ctr2に従いLPP有同期パターンが来るたびに差分FIFO234のメモリ内容が更新されて平均化処理が行われ、差分FIFO234から平均差分Dが出力される。
【0102】
補正実行部180の減算器182は、等化されたデジタルRF信号P5に対して、信号レベルから平均差分Dを減算してセレクタ184に出力する。
【0103】
セレクタ184は、制御部290からの制御信号ctr3に従って、等化されたデジタルRF信号P5を出力するか、減算器182からの信号を出力する。具体的には、制御信号ctr3が、LPPが検出されていないことに対応する「補正しない」を示すときには等化されたデジタルRF信号P5を出力する。一方、制御信号ctr3が、LPPが検出されたことに対応する「補正する」を示すときには、減算器182からの信号を出力する。
【0104】
すなわち、補正実行部180は、LPPが検出されたタイミングのRF信号に対して、LPPの影響を取り除く補正をしている。
【0105】
なお、制御部290は、2値化部138からのシンク検出信号P8に基づいて上記各々の制御を行う。
【0106】
本第2の実施の形態の光ディスク装置も、RF信号に対してLPPの影響を取り除くように補正し、光ディスク装置100と同様に、2値化時のエラーの発生を抑制することができる。
【0107】
また、図15に示すように、本第2の実施の形態の光ディスク装置における補正部200は、図12に示す補正部140より、フィルタとFIFOの数を減らすことができ、回路規模を小さくすることができる。
【0108】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、上述した各実施の形態に対してさまざまな変更、増減、組合せを行ってもよい。これらの変更、増減、組合せが行われた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0109】
例えば、上述した2つの実施の形態において、補正部は、RF信号に対して2値化処理を行う2値化部の直前に設けられている。こうすることにより、補正に用いる差分を算出する時間分RF信号を遅延させる回路を設ける必要が無いため、回路規模を抑制できる。RF信号に対して補正を行うタイミングすなわち補正部の位置は、2値化部の前のいずれの段階であってもよい。
【0110】
また、例えば、第1の実施の形態の光ディスク装置100において、正極性の14T同期パターン部で得られた差分セットと、負極性の14T同期パターン部で得られた差分セット間で平均をとって補正値として用いている。正極性と負極性のいずれか一方の14T同期パターン部のみで差分セットを算出して極性別に補正に用いるようにしてもよい。
第2の実施の形態の光ディスク装置についても同様である。
【0111】
また、第1の実施の形態の光ディスク装置100において、IIRフィルタにより時間方向にて平均化された14T同期パターン部を用いて差分セットを算出するようにしている。第2の実施の形態の光ディスク装置のように、14T同期パターン部を用いて算出した差分セットに対して時間方向にて平均化するようにしてもよい。
【0112】
また、第2の実施の形態の光ディスク装置において、図15に示すように正極性FIFO212および負極性FIFO214にLPP無同期パターン部のデータを格納しているが、LPP有同期パターン部のデータを格納し、LPP無同期パターン部が来るたびにフィルタ232とFIFO234によって平均化処理を行う構成にしてもよい。
【0113】
また、上述した2つの実施の形態の光ディスク装置において、LPPが検出される度にRF信号に対して補正を行っているため、RF信号における、LPPセットの1ビット目が検出されたタイミングの14T同期パターン部も補正している。14T同期パターン部はユーザデータに比べ、LPPの影響を受けても、2値化の際にエラーを引き起こす可能性が少ないので、RF信号におけるユーザデータ部分に対してのみ、つまり第2、第3番目のLPPビット検出のみに応じた補正をするようにしてもよい。
【0114】
また、上述した2つの実施の形態の光ディスク装置において、定量化した歪量が予め設定してある閾値を越えた場合のみ補正を行うようにしてもよい。
【0115】
また、上述した2つの実施の形態の光ディスク装置において、制御部190と290の基準信号となるシンク検出信号P8は、シンク同期状態が確立されていない状態では誤検出等により誤った位置で動作する可能性があるので、補正実行部は、シンク同期状態が確立されている状態でのみ動作するようにして、安定度を向上させてもよい。
【0116】
また、上述した2つの実施の形態の光ディスク装置において、等化処理前のRF信号を用いて14T同期パターン部の極性を判定しているが、等化処理後のRF信号を用いて14T同期パターン部の極性を判定するようにしてもよい。
【0117】
また、上述した2つの実施の形態の光ディスク装置の第1の平均化部141と231において、回路規模の抑制と、タイミング制御の簡単化を図るために、FIFOとフィルタによりIIRフィルタを構成しているが、一般的なIIRフィルタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0118】
11 A/D変換器 12 オフセット補正器
13 アシンメトリ補正器 14 PLL回路
16 誤差算出器 17 光ヘッド
18 光ディスク 19 等化器
20 タップ係数補正器 21 ビタビ復号器
100 光ディスク装置 102 光ディスク
104 光ヘッド 110 記録部
112 ウォブル信号生成部 114 LPP検出部
115 記録クロック生成回路 116 エンコーダ
117 レーザ制御部 120 再生部
122 RF信号生成部 124 ADC
126 オフセット補正器 128 アシンメトリ補正器
130 等化器 132 PLL回路
134 誤差算出器 136 タップ係数補正器
138 2値化部 140 補正部
141 第1の平均化部 142 フィルタ
144 フィルタ 146 フィルタ
148 フィルタ 152 正極性FIFO
154 正極性FIFO 156 負極性FIFO
158 負極性FIFO 162 減算器
164 減算器 170 第2の平均化部
180 補正実行部 182 減算器
184 セレクタ 190 制御部
200 補正部 212 正極性FIFO
214 負極性FIFO 220 セレクタ
230 減算器 231 第1の平均化部
232 フィルタ 234 差分FIFO
290 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DVD−R/RW規格の光ディスクのグルーブに記録された再生情報を再生する光ディスク装置であって、
グルーブに対して読取りを行ってRF信号を生成するRF信号生成部と、
ウォブル信号に対してLPPを検出するLPP検出部と、
前記RF信号のシンクフレームの先頭に位置する同期パターン部のタイミングで、前記LPP検出部によりLPPが検出された場合と検出されなかった場合の前記同期パターン部を夫々LPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部として、極性が同一であるLPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部間で信号レベルの差分を算出する処理を行って差分セットを得る差分算出部と、
前記差分算出部の算出結果を用いて、前記LPP検出部によりLPPが検出されたタイミングの前記RF信号に対して補正を行う補正実行部とを備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
RF信号に対して2値化処理を行う2値化部をさらに備え、
前記補正実行部は、前記2値化部の直前に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
同一の極性を有するLPP有同期パターン部同士間、及びこれらのLPP有同期パターン部と同一の極性を有するLPP無同期パターン部同士間で信号レベルを平均化する第1の平均化部をさらに備え、
前記差分算出部は、前記第1の平均化部によりLPP有同期パターン部とLPP無同期パターン部について夫々平均化した後の信号レベルを用いて前記差分セットを求めることを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記差分算出部により得られた差分セット間で時間方向における平均化を行う第1の平均化部をさらに備え、
前記補正実行部は、前記第1の平均化部により平均化された前記差分セットを用いて前記補正を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記第1の平均化部は、フィルタとFIFOで構成されたIIRフィルタであることを特徴とする請求項3または4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記差分算出部は、極性毎に前記差分セットを算出すると共に、各極性について算出した差分セット間で平均化を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
再生情報を記録する記録部をさらに備え、
前記LPP検出部は、前記記録部による記録時のLPPの検出も行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記補正実行部は、前記差分算出部の算出結果を定量化して得た値が所定の閾値以上であることを条件に前記補正を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
過去において前記RF信号に対して検出した同期パターン部のタイミングに基づいて、今後の同期パターン部のタイミングを推測して前記差分算出部に供する同期パターンタイミング推測部をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
前記補正実行部は、前記RF信号の同期が確立してから前記補正を実行することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
前記補正実行部は、前記RF信号のユーザデータ部分に対してのみ前記補正を実行することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−48890(P2011−48890A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198525(P2009−198525)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】