説明

光ディスク装置

【課題】基板厚が規格を逸脱している場合であってもコリメータレンズの初期位置の不適に起因するディスク立ち上げエラーを回避することが可能な光ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明の光ディスク装置は、光ピックアップと、光電変換により得られた電気信号から検出信号を生成する信号生成部と、検出信号に基づいて光ピックアップのサーボ制御を行うサーボ制御部を備える。また、サーボ制御部において所定期間に所定回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、収差補正部が収差補正を行うための補正基準値を所定値に変更するよう、収差補正部を制御する主制御部を備える。主制御部は、所定回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、収差補正部に含まれるコリメータレンズを駆動させるための駆動基準位置を、所定位置に変更するようレンズ駆動部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置に関するものであり、特にコリメータレンズの駆動機構を備えた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)といった光ディスクが普及し、一般的に用いられるようになっている。そして光ディスクに記録された情報、例えば音声情報や画像情報を読み出して記録/再生するための装置として、光ディスク装置が存在する。広く知られている光ディスク装置としては、例えばCDプレイヤ、DVDプレイヤ、或いはパソコンに接続されるCD−ROMドライブ等があげられる。
【0003】
光ディスク装置は、光ディスクに対して光ビームを照射して情報の読み取りを行うための光ピックアップを備えている。光ピックアップは、ターンテーブル上に固定されて回転している光ディスクの情報記録面に対して光ビームを照射する。
【0004】
そして情報記録面からの反射光を光ピックアップ内に設けられた光検出器、例えばフォトダイオードによって受光する。そして光検出器により光を電気信号に変換し、得られた電気信号に基づいて光ディスクに記録されている情報を出力する。
【0005】
光ディスクを再生可能状態とするための立ち上げ処理においては、まずフォーカスサーチによるフォーカス引き込み位置の取得、フォーカス引き込み、及びフォーカスサーボのオン(以下、前記処理を合わせて「フォーカスオン」という)を行う必要がある。これをなすために光ピックアップ内には、対物レンズを光軸方向に駆動させるためのアクチュエータと、アクチュエータの制御を行うフォーカスサーボとが備えられている。
【0006】
さらに近年の光ピックアップは、光ディスクの基板厚に起因する収差を補正するため、コリメータレンズの駆動機構を備えたものが実用化されている。光ディスクの基板厚は規格で定められており、例えばCDであれば、基板厚が1.2mmと定められている。このためCDの立ち上げ(=スピンアップ)時は、前もって基板厚1.2mmを想定した位置へコリメータレンズを移動させておく。
【0007】
上記の技術に関連して特許文献1には、目的の信号層よりも対物レンズに近い側に隣接している信号層から対物レンズに最も近い信号層の方向へ順番に、各信号層での球面収差を補正するための最適な位置へコリメータレンズを移動制御させる光ディスク装置が開示されている。
【0008】
また特許文献2には、収差エラー信号に基づいて光学要素を変化させる光ピックアップ制御装置が開示されている。この光ピックアップ制御装置は、光学要素、つまりコリメータレンズの位置を変化させている途中でフォーカス手段の制御を開始することで、球面収差の補正とフォーカスの引込みとが完了するまでの期間を短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−41186号公報
【特許文献2】特開2007−257803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1及び特許文献2に開示されている各装置はいずれも、まず光ディスクの種別を判別した後、その種別に対応する基準位置を用いてコリメータレンズの駆動制御を行っている。しかし実際には、CD/DVD Dualのように、基板厚を逸脱した光ディスクも存在する。
【0011】
通常の規格ではCDの基板厚は1.2mmであるが、CD/DVD DualはCD面の基板厚が0.9mmとなっている。このように基板厚が規格外である光ディスクが装着された場合、光ディスクからの反射信号が最適でない状態から、光ディスクの立ち上げが開始される。この結果、RF信号やサーボ信号が最適でないため、光ディスクの立ち上げに失敗するという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、光ディスクの基板厚が規格を逸脱している場合であっても、コリメータレンズの初期位置の不適に起因するディスク立ち上げエラーを回避することが可能な光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置は、光ディスクの記録面に光ビームを照射させる光源、前記記録面からの反射光を光電変換する光検出器、及び前記光ディスクに発生する収差を補正する収差補正部とを備えた光ピックアップと、前記光電変換により得られた電気信号から検出信号を生成する信号生成部と、前記検出信号に基づいて前記光ピックアップのサーボ制御を行うサーボ制御部とを備えた光ディスク装置において、前記サーボ制御部において予め定められた期間に予め定められた回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、前記収差補正部が収差補正を行うための補正基準値を、予め定められた値に変更するよう前記収差補正部を制御する主制御部を備えることを特徴としている。
【0014】
この構成によると、本発明の光ディスク装置は、光ディスクの記録面に光ビームを照射させる光源と、反射光を光電変換する光検出器と、収差を補正する収差補正部とを備えた光ピックアップを備える。また、光電変換により得られた電気信号から検出信号を生成する信号生成部を備える。また、検出信号に基づいて光ピックアップのサーボ制御を行うサーボ制御部を備える。また、サーボ制御部において所定期間に所定回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、収差補正部が収差補正を行うための補正基準値を所定値に変更するよう、収差補正部を制御する主制御部を備える。
【0015】
また上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置が備える前記主制御部は、前記光ディスク装置に装着された光ディスクの立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に、前記補正基準値を予め定められた値に変更するよう前記収差補正部を制御し、前記変更が完了した後に、前記立ち上げ処理を再試行するよう前記サーボ制御部を制御する。
【0016】
この構成によると、主制御部は、光ディスクの立ち上げ処理時に所定回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、補正基準値を所定値に変更するよう、収差補正部を制御する。そして変更が完了した後に、立ち上げ処理を再試行するよう、サーボ制御部を制御する。
【0017】
また上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置が備える前記主制御部は、前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超えるフォーカスエラー、トラッキングエラー、またはジッターエラーが検知された場合に、前記補正基準値を予め定められた値に変更するよう前記収差補正部を制御し、前記変更が完了した後に、前記立ち上げ処理を再試行するよう前記サーボ制御部を制御する。
【0018】
この構成によると、主制御部は、立ち上げ処理時に所定回数を超えるフォーカスエラー、トラッキングエラー、またはジッターエラーが検知された場合に、補正基準値を所定値に変更するよう収差補正部を制御する。そして変更が完了した後に立ち上げ処理を再試行するよう、サーボ制御部を制御する。
【0019】
また上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置が備える前記収差補正部は、コリメータレンズと前記コリメータレンズの駆動を行うレンズ駆動部とを含み、前記主制御部は、前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に、前記コリメータレンズを駆動させるための駆動基準位置を、予め定められた位置に変更するよう前記レンズ駆動部を制御する。
【0020】
この構成によると、収差補正部は、コリメータレンズと、このコリメータレンズの駆動を行うレンズ駆動部とを含む。主制御部は、立ち上げ処理時に所定回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、コリメータレンズを駆動させるための駆動基準位置を所定位置に変更するよう、レンズ駆動部を制御する。
【0021】
また上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置は、前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に前記コリメータレンズを移動させる距離及び方向を示した調整情報を記録する記録部を備え、前記主制御部は、前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に、前記調整情報を前記記録部より読み出し、前記調整情報に基づいて前記レンズ駆動部を制御する。
【0022】
この構成によると、光ディスク装置は記録部を備えている。記録部には、立ち上げ処理時に所定回数を超えるサーボエラーが検知された場合にコリメータレンズを移動させる距離及び方向を示した調整情報が記録される。主制御部は、立ち上げ処理時に所定回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、調整情報を記録部より読み出し、調整情報に基づいて前記レンズ駆動部を制御する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光ディスクの立ち上げ処理時に所定のエラーが頻発した場合に、収差補正部の補正基準値の変更、例えばコリメータレンズの駆動基準位置の変更、を行い、立ち上げ処理を再試行する。これにより、収差補正部の補正エラーに起因する立ち上げ失敗を回避し、光ディスクに対して好適な収差補正を行いつつ、再生を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ピックアップの光学系を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る立ち上げ処理の処理フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
〈1.内部構成について〉
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るディスクプレイヤ100(=光ディスク装置)を示す構成図である。ディスクプレイヤ100は、光ピックアップ1、信号生成回路21(=信号生成部)、DSP(Digital Signal Processor)31(=サーボ制御部)、再生処理回路32、出力回路33、システムコントローラ41(=主制御部)、ドライバ42、表示部43、操作部44、記録部45、送りモータ51、及びスピンドルモータ52を備えている。
【0027】
光ピックアップ1は、光ディスク2に光ビームを照射して、光ディスク2に記録された音声情報、画像情報等の各種情報の読み取りを行う。この光ピックアップ1には、CD用光ビーム、DVD用光ビーム、BD(Blu-ray Disc、登録商標) 用光ビームが設けられている。なお、光ピックアップ1内部の詳細については後述する。
【0028】
信号生成回路21は、光ピックアップ1が含む光検出器19(図2)により得られた信号をもとに演算処理を行い、RF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びAS信号等の各種検出信号を生成する。そして生成した各種検出信号を、DSP31へ出力する。
【0029】
DSP31は、信号生成回路21より入力したRF信号をもとに画像処理を行うことにより画像信号を生成し、再生処理回路32へ与える。再生処理回路は、画像信号を不図示のモニタへ出力するためにD/A変換処理を行う。変換処理により得られた信号は、出力回路33により外部装置へ出力される。
【0030】
またDSP31は、信号生成回路21より入力したフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号に基づいてサーボ信号を生成する。例えばトラッキングサーボを行うためのトラッキングサーボ信号や、フォーカスサーボを行うためのフォーカスサーボ信号を生成する。生成されたサーボ信号はドライバ42へ与えられる。これにより例えば、光ピックアップ1が含むコリメータレンズ13(図2)や対物レンズ17等の制御が実施される。
【0031】
システムコントローラ41は、DSP31を介して、光ピックアップ1、送りモータ51、及びスピンドルモータ52等の動作を制御する。なおシステムコントローラ41は、例えば複数のマイクロプロセッサ等の演算処理装置上で所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0032】
またシステムコントローラ41は、操作部44からの情報を受け付けてDSP31に伝送すると共に、DSP31から受けた情報を表示部43に伝送する。システムコントローラ41は、各種演算に用いる情報を、半導体記録媒体等からなる記録部45に記録する。
【0033】
ドライバ42は、DSP31から与えられるサーボ信号等に基づいて、光ピックアップ1、送りモータ51、及びスピンドルモータ52の駆動を制御する。送りモータ51は、光ピックアップ1を光ディスク2の径方向に駆動する。スピンドルモータ52は、光ディスク2を回転方向に駆動する。
〈2.光ピックアップの構成について〉
【0034】
図2は、本発明の一実施形態に係る光ピックアップ1の光学系を示す概略図である。光ピックアップ1は、光ディスク2に対して、光ビームを照射して反射光を受光する。これにより、光ディスク2の記録面に記録されている情報を読み取る。
【0035】
光ピックアップ1は、第一光源11a(=光源)と、第二光源11b(=光源)と、ダイクロプリズム12と、コリメータレンズ13(=収差補正部)と、ビームスプリッタ14と、立ち上げミラー15と、液晶素子16と、対物レンズ17と、検出レンズ18と、光検出器19と、アクチュエータ20とを備えている。なお、アクチュエータ20は、コリメータレンズ13を駆動するアクチュエータ20a(=レンズ駆動部)と、対物レンズ17を駆動するアクチュエータ20bとを含む。
【0036】
第一光源11aは、DVDに対応する650nm帯の光ビームと、CDに対応する780nm帯の光ビームとを出射できるレーザダイオードである。第二光源11bは、BDに対応する405nm帯の光ビームを出射できるレーザダイオードである。
【0037】
なお、本実施形態では、第一光源11aとして、2種類の波長の光ビームを出射できる二つの発光点を有する2波長一体型のレーザダイオードを用いているが、これに限られる趣旨ではなく、例えば単一の波長の光ビームのみを出射するレーザダイオードを用いても構わない。
【0038】
ダイクロプリズム12は、DVD用の光ビームを出射する第一光源11aから出射される光ビームを透過し、BD用の光ビームを出射する第二光源11bから出射される光ビームを反射する。そして、第一光源11a及び第二光源11bから出射される光ビームの光軸を一致させる。ダイクロプリズム12において、透過又は反射された光ビームは、コリメータレンズ13に送られる。
【0039】
コリメータレンズ13は、ダイクロプリズム12を透過した光ビームを平行光に変換する。ここで、平行光とは、第一光源11a及び第二光源11bから出射された光ビームの全ての光路が光軸とほぼ平行である光をいう。コリメータレンズ13で平行光とされた光ビームは、ビームスプリッタ14に送られる。
【0040】
ビームスプリッタ14は、入射する光ビームを分離する光分離素子として機能し、コリメータレンズ13から送られてきた光ビームを透過して、光ディスク2側へと導くとともに、光ディスク2で反射された反射光を反射して光検出器19側へと導く。ビームスプリッタ14を透過した光ビームは、立ち上げミラー15に送られる。
【0041】
立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14を透過してきた光ビームを反射して光ディスク2へと導く。立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14からの光ビームの光軸に対して45°傾いた状態となっており、立ち上げミラー15で反射された光ビームの光軸は、光ディスク2の記録面と略直交する。立ち上げミラー15で反射された光ビームは、液晶素子16に送られる。
【0042】
液晶素子16は、透明電極に挟まれた液晶(いずれも図示せず)に電圧を印加することで、液晶分子がその配向方向を変える性質を利用して、屈折率の変化を制御し、液晶素子6を透過する光ビームの位相の制御を可能とする素子である。
【0043】
この液晶素子16を配置することによって、光ディスク2の記録面を保護する樹脂層の厚みの違い等によって生じる球面収差の補正が可能となる。液晶素子16を通過した光ビームは対物レンズ17へと送られる。
【0044】
対物レンズ17は、液晶素子16を透過した光ビームを光ディスク2の記録面上に集光させる。また、対物レンズ17は後述するアクチュエータ20bによって、例えば、図2の上下方向及び左右方向に移動可能とされており、フォーカスサーボ信号及びトラッキングサーボ信号に基づいてその位置が制御される。
【0045】
光ディスク2で反射された反射光は、対物レンズ17、液晶素子16の順に通過し、立ち上げミラー15で反射された後、さらにビームスプリッタ14で反射されて、検出レンズ18によって光検出器19上に設けられる受光素子へと集光される。
【0046】
光検出器19は、フォトダイオード等の受光素子を用いて受光した光を、電気信号に変換して信号生成回路21へ出力する。光検出器19は例えば四分割された受光領域を備えており、領域毎に個別に光電変換を行って電気信号を出力することが可能である。
【0047】
アクチュエータ20aは、ドライバ42で生成され出力されたコリメータレンズ駆動信号に従って、コリメータレンズ13を光軸方向に移動させる。アクチュエータ20bは、ドライバ42で生成され出力された対物レンズ駆動信号に従って、対物レンズ17を光ディスク2の径方向に移動させる。
【0048】
なおアクチュエータ20bは、対物レンズ17を光ディスク2の記録面に沿う方向に移動させるトラッキング動作の他に、対物レンズ17より照射される光ビームの光軸が揺動するように対物レンズ17を傾動させるチルト動作や、対物レンズ17を光ディスク2に対して接近離反するように移動させるフォーカス動作も行うことができる。
【0049】
アクチュエータ20はそれには限定されないが、ここでは、永久磁石(不図示)によって形成される磁界内にコイル(不図示)に駆動電流を流し、ローレンツ力にて各レンズを駆動することができるものであってもよい。
〈3.立ち上げ処理について〉
【0050】
次に、本発明の一実施形態に係る光ディスクの立ち上げ処理を、図3のフロー図を用いながら説明する。図3に示す本処理は、ディスクプレイヤ100に対する光ディスク2の装着がシステムコントローラ41により検知され、且つ立ち上げ処理の実行指示が検知された場合に開始される。
【0051】
上記の指示を検知したシステムコントローラ41はステップS110において、光ピックアップ1により光ディスク2の所定領域に光ビームを照射し、その反射光から得られる各種信号に基づいて光ディスク2の種別を判別するよう、DSP31へ指示する。
【0052】
DSP31は、判別した光ディスク2の種別に対応する光源、例えばCDと判別された場合は第一光源11a、を用いて以降の処理を実施する。さらにDSP31は、判別した光ディスク2の種別に応じた初期位置へコリメータレンズ13を移動させるよう、ドライバ42を制御する。
【0053】
次にDSP31はステップS120において、フォーカスエラー信号(以下、「FE信号」という)の振幅調整を行う。
【0054】
次にDSP31はステップS130において、FE信号のバランス調整を行う。具体的には、フォーカスエラーバランスが最小となるよう、つまりFE信号の波形が上下均等となるよう、調整を行う。そして調整結果に基づいて対物レンズ17を移動させるよう、ドライバ42を制御する。
【0055】
次にDSP31はステップS140において、上記で実施した調整結果に基づいて、光ディスク2の記録面に対するフォーカスオンを行う。
【0056】
次にDSP31はステップS150において、光ディスク2の記録面に対するトラックオンを行う。トラックオンが完了すると、光ディスク2を再生可能状態にするための各種調整を実施する。各種調整の具体例としては例えば、フォーカスゲイン調整、トラックゲイン調整、フォーカスバランスの再調整、球面収差調整、RF振幅調整、チルト調整、RFイコライザ調整等が含まれる。
【0057】
次にシステムコントローラ41はステップS160において、フォーカスオン後の各種処理において、フォーカスサーボ系のエラーがDSP31により所定回数を超えて検知されたか否かを判定する。これは、コリメータレンズ13の位置が不正であることに起因する収差補正の失敗等を、想定したものである。エラーが所定回数を超えて検知されていない場合、調整処理の完了後、本処理を終了する。
【0058】
エラーが所定回数を超えて検知された場合、システムコントローラ41はステップS170において、コリメータレンズ13を所定の目標位置へ移動させるよう、DSP31に指示する。この指示を受けたDSP31は、アクチュエータ20aに対するコリメータレンズ駆動信号を生成するよう、ドライバ42を制御する。これにより、コリメータレンズ13が光軸方向へ移動され、目標位置へ到達する。
【0059】
なお、上記の目標位置を示す情報は、ディスクプレイヤ100の製造時等において実施される実験データ等に基づいて生成され、予め記録部45等へ記録されているものとする。
【0060】
具体的には、予め想定されうる規格外の光ディスク(例えばCD/DVD Dual)を立ち上げるのに好適なコリメータレンズ13の初期位置(=駆動基準位置、補正基準値)を、予め実験等により調査しておく。そしてこの初期位置を目標位置として、コリメータレンズ13を移動させるための駆動ステップ数を示す情報を、記録部45へ記録しておく。システムコントローラ41は、記録部45よりこの情報を読み出して、コリメータレンズ13の駆動制御を行う。
【0061】
ステップS170が完了すると、再びステップS110へ移行する。これにより、コリメータレンズ13の初期位置を変更した状態で、光ディスク2の立ち上げ処理を再試行する。
【0062】
以上に説明した本実施形態によれば、立ち上げ処理中にフォーカスサーボ系のエラーが多発した場合に、コリメータレンズ13の位置を変更して、再度光ディスク2を立ち上げ直すようにしている。このため、コリメータレンズ13の初期位置が好適でないことに起因して立ち上げが失敗することを回避できる。
[その他の実施の形態]
【0063】
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0064】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0065】
(A)上記実施形態では、本発明の立ち上げ処理に関わる各機能がマイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、これら各機能が複数の回路により実現される形態でもよい。
【0066】
(B)上記実施形態では、本発明の立ち上げ処理を行う光ディスク装置としてディスクプレイヤ100を例示したが、これ以外の光ディスク装置において本発明を実施する形態でもよい。例えば、光ディスクに対して記録を行うDVDレコーダにおいて実施する形態でもよい。
【0067】
(C)上記実施形態では、ステップS160において、フォーカスサーボ系のエラーの発生頻度に基づいて処理を分岐しているが、これ以外のエラーの発生頻度に基づいて処理の分岐を行う形態でもよい。例えば、トラッキングエラーまたはジッターエラーの発生が所定回数を超えて検知されたか否かを判定し、検知された場合にステップS170へ移行する形態でもよい。
【0068】
(D)上記実施形態では、収差補正部の一例としてコリメータレンズ13を例に説明を行っているが、これ以外の収差補正部を用いて本発明を実施する形態でもよい。例えば、液晶素子に電圧を印加することにより収差補正を行うビームエキスパンダを用いる形態でもよい。この形態の場合、ステップS170においてコリメータレンズ13を移動させる代わりに、ビームエキスパンダの収差補正を行う際の補正基準値を変更することにより、規格外の光ディスク2を立ち上げるのに好適と推定される調整を実施する。
【0069】
(E)上記実施形態では、ステップS170において、予め想定されうる規格外の光ディスクとしてCD/DVD Dualを例示しているが、規格外ディスクを複数種類想定し、各規格外ディスクを立ち上げるのに好適なコリメータレンズ13の初期位置を予め実験により調査しておく形態でもよい。この形態の場合、サーボ系エラーが複数回検知された時点で、第一候補の規格外ディスク用の初期位置へコリメータレンズ13を移動させ、ステップS110へ移行する。その後、再びサーボ系エラーが複数回検知されると、第二候補の規格外ディスク用の初期位置へコリメータレンズ13を移動さる。このように複数の候補を順に試行しながら立ち上げを行うことにより、立ち上げの成功率を高めることができる。
【0070】
(F)上記実施形態では、ステップS170の実施後にステップS110を再実施しているが、ステップS110の再実施時に、前回の処理履歴に基づいてその処理内容を一部変更する形態でもよい。例えば一回目のステップS110において光ディスクの種別がCDであると判定された場合、二回目のステップS110において、CDを除く光ディスク(例えばDVDやBD)のために行う処理を省略する形態でもよい。
【符号の説明】
【0071】
100 ディスクプレイヤ(光ディスク装置)
1 光ピックアップ
2 光ディスク
11a 第一光源(光源)
11b 第二光源(光源)
13 コリメータレンズ(収差補正部)
17 対物レンズ
19 光検出器
20a アクチュエータ(収差補正部、レンズ駆動部)
20b アクチュエータ
21 信号生成回路(信号生成部)
31 DSP(サーボ制御部)
41 システムコントローラ(主制御部)
45 記録部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録面に光ビームを照射させる光源、前記記録面からの反射光を光電変換する光検出器、及び前記光ディスクに発生する収差を補正する収差補正部とを備えた光ピックアップと、
前記光電変換により得られた電気信号から検出信号を生成する信号生成部と、
前記検出信号に基づいて前記光ピックアップのサーボ制御を行うサーボ制御部とを備えた光ディスク装置において、
前記サーボ制御部において予め定められた期間に予め定められた回数を超えるサーボエラーが検知された場合に、前記収差補正部が収差補正を行うための補正基準値を、予め定められた値に変更するよう前記収差補正部を制御する主制御部を備えること
を特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記主制御部は、前記光ディスク装置に装着された光ディスクの立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に、前記補正基準値を予め定められた値に変更するよう前記収差補正部を制御し、前記変更が完了した後に、前記立ち上げ処理を再試行するよう前記サーボ制御部を制御する、
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記主制御部は、前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超えるフォーカスエラー、トラッキングエラー、またはジッターエラーが検知された場合に、前記補正基準値を予め定められた値に変更するよう前記収差補正部を制御し、前記変更が完了した後に、前記立ち上げ処理を再試行するよう前記サーボ制御部を制御する、
請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記収差補正部は、コリメータレンズと前記コリメータレンズの駆動を行うレンズ駆動部とを含み、
前記主制御部は、前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に、前記コリメータレンズを駆動させるための駆動基準位置を、予め定められた位置に変更するよう前記レンズ駆動部を制御する、
請求項3に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に前記コリメータレンズを移動させる距離及び方向を示した調整情報を記録する記録部を、前記光ディスク装置が備え、
前記主制御部は、前記立ち上げ処理時に予め定められた回数を超える前記サーボエラーが検知された場合に、前記調整情報を前記記録部より読み出し、前記調整情報に基づいて前記レンズ駆動部を制御する、
請求項4に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169019(P2012−169019A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30071(P2011−30071)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】