説明

光ディスク装置

【課題】トラッククロス信号の調整精度を上げるとともに、トラック流れの誤検出を防止することが可能な光ディスク装置を提供する。
【解決手段】本発明の光ディスク装置は、光ディスクからの反射光を光電変換する光検出器とを備えた光ピックアップを備える。また、光電変換により得られた電気信号から、トラッキングエラー信号及びトラッククロス信号を生成する信号生成部を備える。また、光ピックアップの制御を行うサーボ制御部を備える。また、光ディスクの内周部及び外周部においてトラッククロス信号の振幅調整を行うようサーボ制御部を制御し、内周部での振幅調整結果と外周部での振幅調整結果との差分を算出する主制御部を備える。主制御部は、算出された差分が所定の閾値を超える場合に、光ディスクの径方向位置に応じた振幅調整値を用いてトラッククロス信号の振幅調整を行うよう、サーボ制御部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの再生又は記録を行う光ディスク装置に関するものであり、特にトラック流れの誤検出を抑制することが可能な光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)といった光ディスクが普及し、一般的に用いられるようになっている。そして光ディスクに記録された情報、例えば音声情報や画像情報を読み出して記録/再生するための装置として、光ディスク装置が存在する。広く知られている光ディスク装置としては、例えばCDプレイヤ、DVDプレイヤ、或いはパソコンに接続されるCD−ROMドライブ等があげられる。
【0003】
光ディスク装置は、光ディスクに対して光ビームを照射して情報の読み取りを行うための光ピックアップを備えている。光ピックアップは、ターンテーブル上に固定されて回転している光ディスクの情報記録面に対して光ビームを照射する。
【0004】
そして情報記録面からの反射光を光ピックアップ内に設けられた光検出器、例えばフォトダイオードによって受光する。そして光検出器により光を電気信号に変換し、得られた電気信号に基づいて光ディスクに記録されている情報を出力する。
【0005】
光ディスクから正確に情報を読み取るためには、光ビームの光軸を光ディスク上に形成されたピット列の中心に追随させる処理(=トラッキング処理)を行う必要である。これをなすために光ピックアップ装置内には、対物レンズを光ディスクの径方向に駆動させるためのアクチュエータと、アクチュエータの制御を行うトラッキングサーボとが備えられている。
【0006】
上記に関連して、2値化後のトラッククロス信号を用いてトラック流れを検出する装置であって、起動時間の短縮、または起動制御の安定性向上を目的とした装置が開示・提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−116171号公報
【特許文献2】特開2008−192252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記で開示されているような従来の技術では、トラッククロス信号の振幅調整を行うと、それ以降は振幅調整値が固定値となる。このため、光ディスクの物理特性等によりトラッククロス信号が立ち上がりやすい箇所では、トラック流れを誤検出する可能性があった。この結果、サーボ外れが多発し、マウント失敗や再生中の画止まりが発生するという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、再生または記録が可能な光ディスク装置において、トラッククロス信号の調整精度を上げるとともに、トラック流れの誤検出を防止することが可能な光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置は、光ディスクの記録面に光ビームを照射させる光源、及び前記記録面からの反射光を光電変換する光検出器を備えた光ピックアップと、前記光電変換により得られた電気信号から、トラッキングエラー信号及びトラッククロス信号を生成する信号生成部と、トラッキングエラー信号及びトラッククロス信号に基づいて前記光ピックアップの制御を行うサーボ制御部とを備えた光ディスク装置において、光ディスクの内周部及び外周部においてトラッククロス信号の振幅調整を行うよう前記サーボ制御部を制御し、内周部での振幅調整結果と外周部での振幅調整結果との差分を算出し、前記差分が予め定められた閾値を超える場合に、光ディスクの径方向位置に応じた振幅調整値を用いてトラッククロス信号の振幅調整を行うよう前記サーボ制御部を制御する主制御部を備えることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、本発明の光ディスク装置は、光ディスクの記録面に光ビームを照射させる光源と記録面からの反射光を光電変換する光検出器とを備えた光ピックアップを備える。また、光電変換により得られた電気信号から、トラッキングエラー信号及びトラッククロス信号を生成する信号生成部を備える。また、トラッキングエラー信号及びトラッククロス信号に基づいて光ピックアップの制御を行うサーボ制御部を備える。また、光ディスクの内周部及び外周部においてトラッククロス信号の振幅調整を行うようサーボ制御部を制御し、内周部での振幅調整結果と外周部での振幅調整結果との差分を算出する主制御部を備える。主制御部は、算出された差分が所定の閾値を超える場合に、光ディスクの径方向位置に応じた振幅調整値を用いてトラッククロス信号の振幅調整を行うよう、サーボ制御部を制御する。
【0012】
また上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置が備える前記光ディスク装置は、光ディスクの径方向位置と前記径方向位置に応じた前記振幅調整値とを関連付けた情報である調整用情報を記録した記録部を備え、前記主制御部は、前記差分が前記閾値を超える場合に、前記記録部より前記調整用情報を読み出して参照することにより、トラッククロス信号の振幅調整に用いる前記振幅調整値を前記径方向位置に基づいて決定することを特徴としている。
【0013】
この構成によると、光ディスク装置は、光ディスクの径方向位置と、径方向位置に応じた前記振幅調整値と、を関連付けた情報である調整用情報を記録した記録部を備えている。主制御部は、内外周での振幅調整結果の差分が閾値を超える場合に、記録部より調整用情報を読み出して参照することにより、トラッククロス信号の振幅調整に用いる振幅調整値を、径方向位置に応じて決定する。
【0014】
また上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置が備える前記主制御部は、前記光ディスク装置に装着された光ディスクのスピンアップ時、または前記光ディスク装置に装着された複数層光ディスクの層間ジャンプ時に、前記差分を算出し、前記差分が前記閾値を超えるか否かの判定を行うことを特徴としている。
【0015】
この構成によると、主制御部は、光ディスク装置に装着された光ディスクの立ち上げ時、または光ディスク装置に装着された複数層構造の光ディスクの層間ジャンプ時に、内周部及び外周部においてトラッククロス信号の振幅調整を行うようサーボ制御部を制御し、内外周における振幅調整結果の差分を算出し、差分が閾値を超えるか否かの判定を行う。
【0016】
また上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置が備える前記記録部は、トラッククロス信号を2値化するための第2閾値を、光ディスクの径方向位置に応じて複数示した情報である第2調整用情報を記録し、前記主制御部は、前記第2閾値を用いて前記トラッククロス信号を2値化し、前記記録面に設けられたトラックに対するトレース状態を2値化後のトラッククロス信号を用いて判別するとともに、前記差分が前記閾値を超える場合に、前記記録部より前記第2調整用情報を読み出して参照することにより、トラッククロス信号の2値化に用いる前記第2閾値を前記径方向位置に基づいて決定することを特徴としている。
【0017】
この構成によると、記録部は、トラッククロス信号を2値化するための閾値である第2閾値を記録している。また、光ディスクの径方向位置と、光ディスクの径方向位置に応じた第2閾値とを関連付けた情報である第2調整用情報を記録している。主制御部は、第2閾値を用いてトラッククロス信号を2値化する。そして2値化後のトラッククロス信号を用いて、トラックのトレース状態を判別する。また主制御部は、内外周における振幅調整結果の差分が閾値を超える場合に、記録部より第2調整用情報を読み出して参照することにより、トラッククロス信号の2値化に用いる第2閾値を、径方向位置に応じて決定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内外周でのトラッククロス信号の振幅調整結果が閾値を超える場合に、トラッククロス信号の振幅調整値を、径方向位置に応じて可変にする。これにより、2値後のトラッククロス信号が立ち上がりやすい外周部等において、トラック流れの誤検出を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ピックアップの光学系を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る振幅調整処理を示すフロー図である。
【図4】トラック流れの検出条件を示す表である。
【図5】トラッククロス信号を示す模式図である。
【図6】分割された受光領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
〈1.内部構成について〉
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るディスクプレイヤ100(=光ディスク装置)を示す構成図である。ディスクプレイヤ100は、光ピックアップ1、信号生成回路21(=信号生成部)、DSP(Digital Signal Processor)31(=サーボ制御部)、再生処理回路32、出力回路33、システムコントローラ41(=主制御部)、ドライバ42、表示部43、操作部44、記録部45、送りモータ51、及びスピンドルモータ52を備えている。
【0022】
光ピックアップ1は、光ディスク2に光ビームを照射して、光ディスク2に記録された音声情報、画像情報等の各種情報の読み取りを行う。この光ピックアップ1には、CD用光ビーム、DVD用光ビーム、BD(Blu-ray Disc、登録商標) 用光ビームが設けられている。なお、光ピックアップ1内部の詳細については後述する。
【0023】
信号生成回路21は、光ピックアップ1が含む光検出器19(図2)により得られた信号をもとに演算処理を行い、RF信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、及びトラッククロス信号等の各種信号を生成する。そして生成した各種信号を、DSP31へ出力する。
【0024】
DSP31は、信号生成回路21より入力したRF信号をもとに画像処理を行うことにより画像信号を生成し、再生処理回路32へ与える。再生処理回路は、画像信号を不図示のモニタへ出力するためにD/A変換処理を行う。変換処理により得られた信号は、出力回路33により外部装置へ出力される。
【0025】
またDSP31は、信号生成回路21より入力したFE信号やトラッキングエラー信号に基づいてサーボ信号を生成する。例えばトラッキングサーボを行うためのトラッキングサーボ信号や、フォーカスサーボを行うためのフォーカスサーボ信号を生成する。生成されたサーボ信号はドライバ42へ与えられる。これにより例えば、光ピックアップ1が含む対物レンズ17(図2)のトラッキング制御やフォーカス制御等が実施される。
【0026】
システムコントローラ41は、DSP31を介して、光ピックアップ1、送りモータ51、及びスピンドルモータ52等の動作を制御する。なおシステムコントローラ41は、例えば複数のマイクロプロセッサ等の演算処理装置上で所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0027】
システムコントローラ41は、操作部44からの情報を受け付けてDSP31に伝送すると共に、DSP31から受けた情報を表示部43に伝送する。またシステムコントローラ41は、各種演算に用いる情報を、半導体記憶素子等からなる記録部45に記録する。
【0028】
ドライバ42は、DSP31から与えられるサーボ信号等に基づいて、光ピックアップ1、送りモータ51、及びスピンドルモータ52の駆動を制御する。送りモータ51は、光ピックアップ1を光ディスク2の径方向に駆動する。スピンドルモータ52は、光ディスク2を回転方向に駆動する。
〈2.光ピックアップの構成について〉
【0029】
図2は、本発明の一実施形態に係る光ピックアップ1の光学系を示す概略図である。光ピックアップ1は、光ディスク2に対して、光ビームを照射して反射光を受光する。これにより、光ディスク2の記録面に記録されている情報を読み取る。
【0030】
光ピックアップ1は、第一光源11aと、第二光源11bと、ダイクロプリズム12と、コリメートレンズ13と、ビームスプリッタ14と、立ち上げミラー15と、液晶素子16と、対物レンズ17と、検出レンズ18と、光検出器19と、アクチュエータ20とを備えている。
【0031】
第一光源11aは、DVDに対応する650nm帯の光ビームと、CDに対応する780nm帯の光ビームとを出射できるレーザダイオードである。第二光源11bは、BDに対応する405nm帯の光ビームを出射できるレーザダイオードである。
【0032】
なお、本実施形態では、第一光源11aとして、2種類の波長の光ビームを出射できる二つの発光点を有する2波長一体型のレーザダイオードを用いているが、これに限られる趣旨ではなく、例えば単一の波長の光ビームのみを出射するレーザダイオードを用いても構わない。
【0033】
ダイクロプリズム12は、DVD用の光ビームを出射する第一光源11aから出射される光ビームを透過し、BD用の光ビームを出射する第二光源11bから出射される光ビームを反射する。そして、第一光源11a及び第二光源11bから出射される光ビームの光軸を一致させる。ダイクロプリズム12において、透過又は反射された光ビームは、コリメートレンズ13に送られる。
【0034】
コリメートレンズ13は、ダイクロプリズム12を透過した光ビームを平行光に変換する。ここで、平行光とは、第一光源11a及び第二光源11bから出射された光ビームの全ての光路が光軸とほぼ平行である光をいう。コリメートレンズ13で平行光とされた光ビームは、ビームスプリッタ14に送られる。
【0035】
ビームスプリッタ14は、入射する光ビームを分離する光分離素子として機能し、コリメートレンズ13から送られてきた光ビームを透過して、光ディスク2側へと導くとともに、光ディスク2で反射された反射光を反射して光検出器19側へと導く。ビームスプリッタ14を透過した光ビームは、立ち上げミラー15に送られる。
【0036】
立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14を透過してきた光ビームを反射して光ディスク2へと導く。立ち上げミラー15は、ビームスプリッタ14からの光ビームの光軸に対して45°傾いた状態となっており、立ち上げミラー15で反射された光ビームの光軸は、光ディスク2の記録面と略直交する。立ち上げミラー15で反射された光ビームは、液晶素子16に送られる。
【0037】
液晶素子16は、透明電極に挟まれた液晶(いずれも図示せず)に電圧を印加することで、液晶分子がその配向方向を変える性質を利用して、屈折率の変化を制御し、液晶素子6を透過する光ビームの位相の制御を可能とする素子である。
【0038】
この液晶素子16を配置することによって、光ディスク2の記録面を保護する樹脂層の厚みの違い等によって生じる球面収差の補正が可能となる。液晶素子16を通過した光ビームは対物レンズ17へと送られる。
【0039】
対物レンズ17は、液晶素子16を透過した光ビームを光ディスク2の記録面上に集光させる。また、対物レンズ17は後述するアクチュエータ20によって、例えば、図2の上下方向及び左右方向に移動可能とされており、フォーカスサーボ信号及びトラッキングサーボ信号に基づいてその位置が制御される。
【0040】
光ディスク2で反射された反射光は、対物レンズ17、液晶素子16の順に通過し、立ち上げミラー15で反射された後、さらにビームスプリッタ14で反射されて、検出レンズ18によって光検出器19上に設けられる受光素子へと集光される。
【0041】
光検出器19は、フォトダイオード等の受光素子を用いて受光した光を、電気信号に変換して信号生成回路21へ出力する。光検出器19は例えば四分割された受光領域を備えており、領域毎に個別に光電変換を行って電気信号を出力することが可能である。
【0042】
アクチュエータ20は、ドライバ42で生成され出力された対物レンズ駆動信号に従って、対物レンズ17を光ディスク2の径方向に移動させる。アクチュエータ20はそれには限定されないが、ここでは、永久磁石(不図示)によって形成される磁界内にコイル(不図示)に駆動電流を流し、ローレンツ力にて対物レンズ17を駆動することができるものであってもよい。
【0043】
またアクチュエータ20は、対物レンズ17を光ディスク2の記録面に沿う方向に移動させるトラッキング動作の他に、対物レンズ17より照射される光ビームの光軸が揺動するように対物レンズ17を傾動させるチルト動作や、対物レンズ17を光ディスク2に対して接近離反するように移動させるフォーカス動作も行うことができる。
〈3.振幅調整処理について〉
【0044】
次に、本発明の一実施形態に係るTEC信号(トラッククロス信号)の振幅調整処理を、図3のフロー図を用いながら説明する。図3に示す処理フローは例えば、光ディスク2の装着が検知される等により、光ディスク2のスピンアップ処理の開始命令が発行された時点で開始される。
【0045】
従来の振幅調整処理では、例えば図4に示す条件でトラック流れ(トラックのトレース不可)の検出を行っていた。図4に示す例では、2値化後のTEC信号(トラッククロス信号)が3ms(ミリ秒)内に10回立った時点で、トラック流れが発生しているとみなし、トラッキングサーボをOFFにしていた。
【0046】
なお、2値化後のTEC信号がHighとなるのは、2値化前のTEC信号の振幅とヒステリシス幅(=第2閾値)の設定に依存する。図5(a)は、2値化前のTEC信号の振幅とヒステリシス幅(図中のTECHYS)を示した模式図である。また図5(b)は、2値化後のTEC信号を示した模式図である。図5に示すように、2値化前のTEC信号がヒステリシス幅を超えるタイミングで、2値化後のTEC信号のHigh/Lowが変化する。
【0047】
2値化前のTEC信号は、光検出器19に含まれる受光素子の、四分割された受光領域で光電変換された電気信号に基づいて生成される。受光素子は、図6に示すように、A、B、C、Dの4つの領域に分割されている。TEC信号は、これらの各領域で生成される電気信号に基づいて生成される。
【0048】
図6の左右方向は、光ディスク2の半径方向を示している。また図6の上下方向は、光ディスク2の記録面に存在するピット列(=トラック)との接線方向を示している。2値化前のTEC信号は、領域Aで生成した信号と領域Bで生成した信号との差分に、領域Cで生成した信号と領域Dで生成した信号との差分を加算したものとなる。数式で示せば、以下のようになる。
(B−A)+(C−D)
【0049】
しかしながら光ディスク2の物理特性等によっては、外周部に行くほど2値化前のTEC信号の振幅が大きくなり、2値化後のTEC信号が立ち上がりやすくなる場合があった。この結果、外周部にいくほど、トラック流れを誤検出してしまう可能性が高かった。そこで以下に説明する処理フローでは、TEC信号の振幅調整値を径方向位置に応じて可変とすることにより、トラック流れの誤検出を低減する。
【0050】
まずシステムコントローラ41はステップS110において、光ディスク2の内周部におけるTEC信号の振幅調整、例えばゲイン調整等を行う。
【0051】
次にシステムコントローラ41はステップS120において、光ディスク2の外周部へのシークを行い、外周部で外周論理情報を取得する。なお外周論理情報とは、例えばリードアウト領域に記録されているデータ訂正情報等がこれに該当する。
【0052】
次にシステムコントローラ41はステップS130において、外周論理情報を取得した位置の近傍、つまり外周部において、TEC信号の振幅調整を行う。
【0053】
次にシステムコントローラ41はステップS140において、内周部でのTEC信号の振幅調整の結果得られた振幅調整値と、外周部でのTEC信号の振幅調整の結果得られた振幅調整値とを比較し、両値の差が所定の閾値、例えば3dBを超えるか否かの判定を行う。
【0054】
3dBを超える場合、システムコントローラ41はステップS150において、径方向位置に応じた振幅調整値を用いて振幅調整を行うよう、設定を変更する。これにより以降は、ピックアップ1の径方向移動が行われる度に、DSP31はTEC信号の振幅調整値を変更する。
【0055】
なお、径方向位置に応じた振幅調整値を示すテーブル(=調整用情報)が、予め作成されて記録部45に記録されており、DSP31はこのテーブルを参照することにより、振幅調整値を決定する。或いは、半径位置から振幅調整値を求めるための所定の数式を作成しておき、DSP31またはシステムコントローラ41が実行するプログラム等に予め記録しておく形態でもよい。
【0056】
3dBを超えない場合、システムコントローラ41はステップS151において、内周部における振幅調整の結果得られた振幅調整値を用いて振幅調整を行うよう、設定を変更する。これにより以降は、振幅調整値が固定値となる。
【0057】
次にシステムコントローラ41はステップS160において、光ディスク2の内周部へのシークを行う。そしてステップS170において、BCA(Burst Cutting Area)のリードを行う。リードが完了すると、スピンアップ処理が完了したとみなし、本処理を終了する。
【0058】
以上に説明した本実施形態によれば、内外周でのTEC信号の振幅調整結果が閾値を超える場合に、以降に用いる振幅調整値を、径方向位置に応じて可変にする。これにより、2値後のTEC信号が立ち上がりやすい外周部等において、トラック流れを誤検出する可能性を低減することができる。
[その他の実施の形態]
【0059】
以上、好ましい実施の形態及び実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0060】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
【0061】
(A)上記実施形態では、本発明の振幅調整処理に関わる各機能がマイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、これら各機能が複数の回路により実現される形態でもよい。
【0062】
(B)上記実施形態では、本発明の振幅調整処理を行う光ディスク装置としてディスクプレイヤ100を例示したが、これ以外の光ディスク装置において本発明を実施する形態でもよい。例えば、光ディスクに対して記録を行うDVDレコーダにおいて実施する形態でもよい。
【0063】
(C)上記実施形態では、TEC信号の振幅調整値を可変にしているが、振幅調整値は固定のままで、2値化のためのヒステリシス幅を可変にする形態でもよい。より具体的には、ステップS140において両値の差が3dBを超えると判定された場合に、ステップS150において、TECHYSの変更を行う。なおこの実施形態の場合、径方向位置に応じたTECHYSを示すテーブル(=第2調整用情報)が、予め作成されて記録部45に記録されているものとする。或いは、径方向位置からTECHYSを求めるための所定の数式を作成しておき、システムコントローラ41が実行するプログラム等に予め記録しておく形態でもよい。
【0064】
(D)上記実施形態では、TEC信号の振幅調整処理を行うタイミングとしてスピンアップ処理を例に説明を行っているが、これ以外のタイミングで、図3に示す処理フローを実施する形態でもよい。例えば光ディスク2が複数層ディスクであることが検知された場合に、層間ジャンプ時に、ジャンプ後のレイヤーを対象として本発明の振幅調整処理を実施する形態でもよい。
【0065】
(E)上記に関連して、光ディスク2が複数層ディスクである場合、スピンアップ時に、各レイヤーを対象として個別に本発明の振幅調整処理を実施する形態でもよい。この場合、レイヤー毎の振幅調整結果を記録部45に記録し、層間ジャンプが実施される度に、振幅調整結果を参照して内外周での振幅調整値の比較を行うことにより、振幅調整値を可変値にするか、或いは固定値にするかを決定する。
【符号の説明】
【0066】
100 ディスクプレイヤ(光ディスク装置)
1 光ピックアップ
2 光ディスク
11a 第一光源(光源)
11b 第二光源(光源)
17 対物レンズ
19 光検出器
20 アクチュエータ
21 信号生成回路(信号生成部)
31 DSP(サーボ制御部)
41 システムコントローラ(主制御部)
45 記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録面に光ビームを照射させる光源、及び前記記録面からの反射光を光電変換する光検出器を備えた光ピックアップと、
前記光電変換により得られた電気信号から、トラッキングエラー信号及びトラッククロス信号を生成する信号生成部と、
トラッキングエラー信号及びトラッククロス信号に基づいて前記光ピックアップの制御を行うサーボ制御部とを備えた光ディスク装置において、
光ディスクの内周部及び外周部においてトラッククロス信号の振幅調整を行うよう前記サーボ制御部を制御し、内周部での振幅調整結果と外周部での振幅調整結果との差分を算出し、前記差分が予め定められた閾値を超える場合に、光ディスクの径方向位置に応じた振幅調整値を用いてトラッククロス信号の振幅調整を行うよう前記サーボ制御部を制御する主制御部を備えること
を特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記光ディスク装置は、光ディスクの径方向位置と前記径方向位置に応じた前記振幅調整値とを関連付けた情報である調整用情報を記録した記録部を備え、
前記主制御部は、前記差分が前記閾値を超える場合に、前記記録部より前記調整用情報を読み出して参照することにより、トラッククロス信号の振幅調整に用いる前記振幅調整値を前記径方向位置に基づいて決定すること
を特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記主制御部は、前記光ディスク装置に装着された光ディスクのスピンアップ時、または前記光ディスク装置に装着された複数層光ディスクの層間ジャンプ時に、前記差分を算出し、前記差分が前記閾値を超えるか否かの判定を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記記録部は、トラッククロス信号を2値化するための第2閾値を、光ディスクの径方向位置に応じて複数示した情報である第2調整用情報を記録し、
前記主制御部は、前記第2閾値を用いて前記トラッククロス信号を2値化し、前記記録面に設けられたトラックに対するトレース状態を2値化後のトラッククロス信号を用いて判別するとともに、前記差分が前記閾値を超える場合に、前記記録部より前記第2調整用情報を読み出して参照することにより、トラッククロス信号の2値化に用いる前記第2閾値を前記径方向位置に基づいて決定すること
を特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−248264(P2012−248264A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121919(P2011−121919)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】