説明

光ディスク装置

【課題】複数の記録層をもつ多層光ディスクにおいて、従来よりも短時間で安定したトラッキング制御を行いながら再生信号品質が最良となるデフォーカス量および球面収差補正量の調整方法を提供すること。
【解決手段】3層以上の記録層を有する光ディスクを用いて、トラッキングがオフ状態にある間にフォーカス方向の深度のずれ量を変更し、かつ球面収差補正量を変更し、より大きなトラッキングエラー信号の振幅が得られる稜線の傾きの探索を各記録層で実行、得られた稜線の傾きを基に光学的基準点から記録層までの距離に対する所定の関数を作成、稜線の傾きの実測を行わない光ディスクについても、関数から稜線の傾きを導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の記録面を有する多層光ディスクについて光スポットの収束位置および球面収差を精度よく調整し、高密度の記録または再生を行うことを可能にする球面収差補正およびデフォーカス補正方法を制御する処理に係り、当該多層光ディスクに情報を記録または再生する光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの記録密度を高める手段として光ディスクの記録面に形成する光スポットの径を小さくする方法がある。光スポットの大きさは光束の波長に比例し、対物レンズのNA(開口数)に反比例する。そのため、光スポットの高記録密度の実現には対物レンズのNAを大きくする必要がある。
【0003】
しかし、一般に光束の波長を短くし、対物レンズのNAを大きくすると球面収差の影響が大きくなる。球面収差の影響をうけると、光束の内周部と外周部の焦点位置が離間し、光スポットが収束されるべきフォーカス方向の深度がずれた状態(デフォーカス状態)になる。このフォーカス方向の深度のずれをデフォーカス量という。球面収差量SAは次式で表される。
(式1) SA∝(ΔT×NA)/λ
ここで、ΔTは光ディスクの基板厚さの誤差(以下、基板厚誤差とする)、λは光束の波長をそれぞれ表す。上記の式から球面収差量は対物レンズのNAの4乗とディスクの基板厚誤差ΔTに比例し、光束の波長λに反比例することが分かる。光ディスクの製造上、基板厚にはばらつきが生じるため、球面収差が生じる。また、複数の記録層をもつ光ディスクにおいても記録層間の距離にばらつきをもつため、同様に球面収差が生じる。このため、複数の記録層をもつ光ディスクでは各記録層における球面収差を補正する必要がある。かかる球面収差を補正可能な光ピックアップとしては、光束の光路中に所定の球面収差を与えるビームエキスパンダを備える構成、所定の球面収差を与える液晶素子を備える構成、あるいは2枚組み合わせた対物レンズの間隔をフォーカシング方向に変化させることで、球面収差を与える構成とし、このようにして得られる球面収差でディスク基板厚の誤差や記録層の間隔によって生じる球面収差を相殺するようにした技術が特許文献1に記載されている。
【0004】
光スポットのデフォーカス量および球面収差補正量の調整方法として、特許文献2ではデフォーカス量と球面収差補正量を調整するために多次元の探索ルーチンを実行する。フォーカス外乱信号と並行して球面収差補正外乱信号を供給し、デフォーカス量および球面収差補正量を揺動する。この探索は多次元に行われ、RF信号のエンベロープ信号が増大する方向にデフォーカス量および球面収差補正量を調整していく。また、図16は特許文献3に記載のデフォーカス量および球面収差補正量の調整方法の手順を示す。ステップS1では光ディスクを回転させ、フォーカス制御が動作している状態にする。ステップS2ではトラッキング制御が動作していない状態でトラッキングエラー(TE)信号の振幅の稜線の傾きを探索する第1の探索を実行する。ここで、稜線の傾きとは稜線のデフォーカス軸変化量に対する球面収差補正量軸の変化量の比率を意味する。ステップS3ではトラッキング制御が動作している状態とし、記録部へ移動する。ステップS4では第1の探索で探索されたTE信号の振幅の稜線上で再生信号品質が最良になるデフォーカス量および球面収差補正量を決定する第2の探索を実行する。稜線上で第2の探索を行うことで、安定したトラッキング制御を行いながら再生信号を得ることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−11388号公報
【特許文献2】特開2002−342952号公報
【特許文献3】特開2005−196947号公報
【特許文献4】特開2006−139841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献3に記載の技術では、第1の探索で求めるTE信号振幅の稜線の傾きを、光ディスクの記録層で実際に測定することで求めている。稜線の傾きを求めるには、TE信号の振幅の最大値を知るための測定点を、デフォーカス量に対してa個、球面収差補正量に対してb個、それぞれ設けると二次元ではa×b個の測定点を必要とするため、TE信号振幅の稜線の傾きの導出には時間を要する。また、記録層が単一でなく複数の記録層を有する光ディスクにおいて、全記録層の数nの場合、TE信号振幅の稜線の傾きの導出に要する測定時間は単層ディスクのn倍になる。さらに、特許文献4における請求項7では、あらかじめ実施した探索結果を記憶して、他の調整手段による探索に使用する。この場合、単層ディスクからn層ディスクまでの全ディスクの稜線の傾きの測定を考えると、あらかじめ実施する測定時間は単層ディスクに要する測定時間のn×(n+1)/2倍になる。また、実際には作業者による各種ディスクの入れ替え時間も要する為、TE信号振幅の稜線の傾きの導出に大幅な遅延が生じる。本発明は、複数の記録層を有する光ディスクにおけるTE信号振幅の稜線の傾きの測定を短縮化し、従来よりも短時間で安定したトラッキング制御を行いながら再生信号品質が最良となるデフォーカス量および球面収差補正量を導出することが可能な調整を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光ディスク装置は、光スポットのデフォーカス量を変更するように動作可能なデフォーカス量変更手段と、前記光ディスク上の光スポットにおいて発生する球面収差補正量を変更するように動作可能な球面収差補正量変更手段と、前記光ディスクの反射光から記録層のトラックとのトラッキングエラー信号と記録層の再生信号を生成する手段と、前記トラッキングエラー信号に応じてトラッキング制御を実行するトラッキング制御手段と、前記光ディスクの記録層の再生信号の品質を示す再生信号品質指標を生成する再生信号品質指標生成手段と、前記デフォーカス量変更手段と前記球面収差補正量変更手段と前記トラッキング制御手段を備え、前記制御手段は前記トラッキング制御のオン/オフ状態を切り替えるように動作可能であり、前記制御手段は前記トラッキング制御がオフ状態にある場合に、前記トラッキングエラー信号の振幅がより大きくなる複数の組のデフォーカス量および球面収差補正量を探索する第1の探索手段と、前記制御手段は、前記トラッキング制御がオン状態にある場合に、前記デフォーカス量変更手段と前記球面収差補正量変更手段の少なくとも一方を制御して前記第1の探索により得られた複数の組を基に、所定の関係式に基づいて導出したデフォーカス量および球面収差補正量の中から前記再生信号品質指標が実質的に最良となる1組のデフォーカス量および球面収差補正量を選択する第2の探索を実施し、上記目的が達成される。
【0008】
本発明の光ディスク装置は、光スポットのデフォーカス量を変更するように動作可能なデフォーカス量変更手段と、前記光ディスク上の光スポットにおいて発生する球面収差補正量を変更するように動作可能な球面収差補正量変更手段と、前記光ディスクの反射光から記録層のトラックとのトラッキングエラー信号と記録層の再生信号を生成する手段と、前記トラッキングエラー信号に応じてトラッキング制御を実行するトラッキング制御手段と、前記光ディスクの記録層の再生信号の品質を示す再生信号品質指標を生成する再生信号品質指標生成手段と、前記デフォーカス量変更手段と前記球面収差補正量変更手段と前記トラッキング制御手段を制御する制御手段を備え、前記制御手段は前記トラッキング制御がオン状態である間に前記光スポットのデフォーカス量を固定に制御した状態で、前記球面収差量を変更するように前記球面収差補正量変更手段を制御することにより、前記再生信号品質指標が最良となる球面収差を決定し、上記目的が達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも3つ以上の記録層を有する多層光ディスクについて、トラッキング制御がオフ状態にある間にデフォーカス量と球面収差補正量の2次元での第1の探索を実行し、トラッキングエラー信号の振幅特性の稜線の傾きを、少なくとも3つ以上の各記録層それぞれにおいて探索し、その稜線の傾きの値を基に、第1の探索を実施しない他の記録層の稜線の傾きや、探索を実施した多層光ディスクとは別の光ディスクの各記録層における稜線の傾きを求めることが可能になる。これにより、第1の探索を行わない記録層や光ディスクについても、トラッキング制御がオン状態にある間に実施する、2次元での第2の探索を実行することができ、従来よりも短時間で、安定したトラッキング制御を行いながら再生信号品質が最良となる光スポットのデフォーカス量および球面収差補正量の調整を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態になる光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る光ディスク装置における再生信号の振幅を示した説明図である。
【図3】本発明にかかる光ディスクの構造を示した説明図である。
【図4】光スポットのデフォーカス量および球面収差補正量に対する再生信号振幅の特性を示した図である。
【図5】光スポットのデフォーカス量および球面収差補正量に対するTE信号振幅の特性を示した図である。
【図6】光スポットのデフォーカス量および球面収差補正量に対する再生信号振幅の特性を示した図である。
【図7】TE信号振幅の稜線を利用した信号品質の探査を実行する方法の手順を示したフローチャートである。
【図8】第1の探索を実行する方法の手順を示したフローチャートである。
【図9】第2の探索を実行する方法の手順を示したフローチャートである。
【図10】デフォーカス量に対するTE信号振幅の特性を示した図である。
【図11】A方向に対するTE信号振幅の特性を示した図である。
【図12】A方向に対する再生信号振幅の特性を示した図である。
【図13】光学基準点から記録層までの距離に対する3層ディスクの各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きの特性を示した図である。
【図14】3層ディスクの光学基準点から記録層までの距離に対する特性を示す二次関数を基に4層ディスクの各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きの特性を示した図である。
【図15】3層ディスクのTE信号振幅の稜線の傾きの実測からn層ディスクの各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きの導出を実行するための方法の手順を示したフローチャートである。
【図16】従来技術におけるデフォーカス量および球面収差補正量の調整方法の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明になる光ディスク装置およびその光ピックアップの構成を示すブロック図である。図において符号100は光ディスクを表す。光ディスク100はレーザ光の入射側表面が透明な保護層で覆われている。また、光ディスク200は少なくとも3つ以上の記録層を有する。この光ディスク装置において、101は光ピックアップ、102はレーザ光源、103はコリメートレンズ、104は偏光ビームスプリッタ、105は1/4波長板、106は球面収差補正素子、107は全反射ミラー、108は対物レンズ、109はアクチュエータ、110はシリンドリカルレンズ、111は集光レンズ、112は光検出器、113はスピンドルモータ、121はスピンドルモータ駆動回路、122はアクチュエータ駆動回路、123は球面収差補正素子駆動回路、124は信号品質評価回路、125は再生信号生成回路、126はWobble信号生成回路、127はサーボ信号生成回路、128はレーザ駆動回路、129はシステム制御回路をそれぞれ示している。
【0013】
上記光ピックアップ101の構成によれば、上記レーザ光源102から放射された光束は、コリメートレンズ103は平行光束に変換され、偏光ビームスプリッタ104を透過し、1/4波長板105で円偏光に変換される。この円偏光は球面収差補正素子106により、所定の球面収差が付加されたのち、全反射ミラー107上で反射され、対物レンズ108に導かれる。この対物レンズ108は入射した光束に対応して光ディスク100の記録層に光スポットを形成する。
【0014】
球面収差補正素子106は、例えば凹レンズと凸レンズとを含むビームエキスパンダによって構成され得る。ビームエキスパンダは凹レンズと凸レンズとの間隔を変化させることにより、対物レンズ108に対する光束の発散度合いを変化させる。これにより、光スポットにおける球面収差量を変化させる。なお、球面収差補正素子106の一例としてビームエキスパンダを挙げたが、球面収差補正素子106はビームエキスパンダのみに限定されない。球面収差を補正するという機能をもつ限り、任意の構成を有し得る。例えば、球面収差補正素子106は液晶素子による屈折率変化による光スポットの球面収差を補正する素子であってもよい。
【0015】
一方、光ディスク100からの反射光束は、対物レンズ108、全反射ミラー107、球面収差補正素子106、1/4波長板105を透過し、偏光ビームスプリッタ104において、反射される。そして、この反射光束がシリンドリカルレンズ110を透過し、集光レンズ111によって光検出器112に集光される。
【0016】
光検出器112から出力される電気信号は再生信号生成回路125、Wobble信号生成回路、サーボ信号生成回路127に供給される。再生信号生成回路125では、光ディスク100に記録された再生情報信号が得られ、Wobble信号生成回路226ではフォーカスエラー信号(以下、FE信号とする)やトラッキングエラー信号(以下TE信号とする)、ディスク100からの反射光量に対応したプルインエラー信号などの各種サーボ信号が生成され、システム制御回路129に出力される。ここで、トラッキングエラーは光スポットと光ディスク100の記録層上のトラックとの位置ずれを示すエラーを意味する。TE信号は、一般にプッシュプル法と呼ばれるトラッキングエラー検出方式によって生成する。再生信号生成回路125は光検出器112の出力により再生信号を生成する。再生信号は信号品質評価回路124とシステム制御回路に供給される。
【0017】
信号品質評価回路124は評価指標として、例えば再生信号から再生信号振幅を生成する。図2に再生信号におけるエンベロープを示す。ここで、再生信号振幅とは図2における再生信号のエンベロープであるEnvRFを表す。信号品質評価回路124により生成された再生信号振幅はシステム制御回路129に供給される。なお、信号品質評価回路124の生成する評価指標の一例として再生信号振幅を挙げたが、評価指標は再生信号振幅のみに限定されない。再生信号を評価可能という機能をもつ限り、任意の回路となし得る。例えば、信号品質評価回路124は再生信号からi−MLSE(Integrated Maximum Likelihood Sequence Error)やMLSE(Maximum Likelihood Sequence Error)を生成する回路であってもよい。信号品質評価回路124によって生成されたi−MLSEまたはMLSEはシステム制御回路129に供給される。
【0018】
システム制御回路129は、この光ディスク装置全体を制御する機能を備えている。すなわち、スピンドルモータ駆動回路121を介してスピンドルモータ113に装着された光ディスク100の回転制御を行い、アクチュエータ駆動回路122を介して対物レンズ108を搭載したアクチュエータ109を駆動することによりフォーカスやトラッキングなどのサーボ制御を行い、また信号品質評価回路124により生成された評価指標を基に球面収差補正素子駆動回路123を介して光ピックアップ101の球面収差量の検出及び補正を行う。
【0019】
システム制御回路129は、光ディスク100の記録層に集光する光スポットの光量が所定の光量になるようにレーザ駆動回路128を介してレーザ光源102を駆動する。
【0020】
システム制御回路129は対物レンズ108のディスク深度に対する焦点位置を変更するためのデフォーカス量を生成してアクチュエータ駆動回路109に送る。アクチュエータ駆動回路109はサーボ信号生成回路127からの出力信号であるフォーカスエラー信号にシステム制御回路129からのデフォーカス量を加算して、アクチュエータ駆動回路109に出力する。アクチュエータ駆動回路109はシステム制御回路129からの出力信号であるデフォーカス量補正後のフォーカスエラー信号に応じて対物レンズ108の焦点位置を変更する。
【0021】
システム制御回路129は球面収差量を変更する為の制御信号を生成して球面収差補正素子駆動回路123に送る。球面収差補正素子駆動回路123はシステム制御回路129からの制御信号に応じて球面収差補正素子106を駆動する。これにより、球面収差量が変更され、球面収差の補正が実行される。光スポットのデフォーカス量および球面収差量を調整する前は、球面収差補正素子106は、例えば光ディスク100の最も奥の記録層までの厚みに対して光スポットの球面収差が最小になるように設定されている。
【0022】
図3は光ディスク100の構造を示す。光ディスク100は少なくとも3層以上の記録層を有する多層光ディスクである。レーザ照射面を表面とした場合に、表面から最も遠い奥の層をL0層とし、全部でn層の記録層をもつ場合、最も表面の記録層はL(n−1)層となる。また、上記のように、レーザ入射側表面から保護層、情報層、基材層の順による積層が記録層の数だけ繰り返されている。
【0023】
次に、レーザのデフォーカス量と球面収差補正量とに対する再生信号の再生信号振幅とTE信号の振幅特性について説明する。
【0024】
図4は光スポットのデフォーカス量と球面収差補正量の2軸に対して、紙面垂直軸の調整指標として再生信号振幅を用いた際の特性を示す。同心円状の複数の楕円による等高線マップによって再生信号振幅の値が示されている。各楕円の線上において再生信号振幅の値は等しく、各楕円の中心点P1に近づくほど再生信号振幅の値は大きくなっていく。各楕円の中心点P1において再生信号振幅の値は略最大になる。すなわち、再生信号振幅が最大になるデフォーカス量D1と球面収差補正量S1において、最適に信号の再生を行うことができる。
【0025】
図5は光ピックアップ101のデフォーカス量と球面収差補正量の2軸に対して、紙面垂直軸の調整指標としてTE信号振幅を用いた際の特性を示す。同心円状の複数の楕円による等高線マップによってTE信号振幅の値が示されている。各楕円の線上においてTE信号振幅の値は等しく、各楕円の中心に近づくほどTE信号振幅の値は大きくなっていく。したがって、各楕円の中心においてTE信号振幅の値は略最大になる。
【0026】
再生信号振幅が最大となるように光スポットのデフォーカス量と球面収差補正量の2軸をそれぞれ独立に調整しようとした場合、調整の途中でトラッキング制御に対して十分なTE信号振幅が確保できず、トラッキング制御が不安定になる場合がある。この課題を解決するためには、TE信号の振幅が十分大きく、かつTE信号振幅の低下が緩やかな各軸の値の領域で再生信号振幅が最大となる点を探索する必要がある。
【0027】
図5に示すように、光スポットのデフォーカス量と球面収差補正量とにはTE信号振幅が十分大きく、かつTE信号振幅の低下が緩やかとなる2軸の関係が存在する。図5における、破線で示した直線500上はTE信号振幅が十分に大きく、かつTE信号振幅の低下が緩やかとなる2軸の値の組み合わせを示している。以降、TE信号振幅の稜線とは直線500を、TE信号振幅の稜線の傾きG1とは、直線500上における、
(式2) G1=(球面収差補正量の変化量)/(デフォーカス量の変化量)
を表す。
【0028】
図6に図4と同じく、光スポットのデフォーカス量と球面収差補正量の2軸に対して、紙面垂直軸の調整指標として再生信号振幅を用いた際の特性を示す。図6において、直線500は図5におけるTE信号振幅の稜線を表す。トラッキング制御をオフにした状態で、TE信号振幅の特性からTE信号振幅の稜線500およびその傾きG1を検出し、記憶する。その後、トラッキング制御をオンにした状態で図6に示したようにTE信号振幅の稜線500上で光スポットのデフォーカス量と球面収差補正量の2軸の値を同時に変え、再生信号振幅が最大となる点P2を探索する。
【0029】
図7は再生信号振幅の値が最大となる点P2を探索する方法の手順を示している。この方法は、例えばシステム制御回路129によって実行される。同図のステップ701では光ディスク100を回転させるようにスピンドルモータ113をスピンドルモータ駆動回路121が駆動信号を送る。ステップ702ではTE信号振幅の稜線を測定する記録層に対してフォーカス制御が動作している状態となるよう、アクチュエータ109をアクチュエータ駆動回路122が駆動信号を送信する。ステップ703ではトラッキング制御をオフにした状態でTE信号振幅の稜線を探索する第1の探索を実行する。ステップ704ではステップ703での第1の探索結果から算出したTE信号振幅の稜線の傾きG1を記憶する。ステップ705ではトラッキング制御をオンにした状態になるようにアクチュエータ109を制御した後、ステップ706では記録済み領域に移動する。また、ステップ707では第1の探索によって判明したTE信号振幅の稜線500の傾きG1を基に再生信号振幅が最大となる1組の光スポットのデフォーカス量および球面収差補正量を決定する第2の探索を実行する。
【0030】
以下、第1の探索である図7のステップ703について図5、図8および図10を用いて説明する。
図8はTE信号振幅の稜線を導出する第1の探索(図7のステップ703)の方法の手順について説明する。この方法はシステム制御回路129によって実行される。同図のステップ801では球面収差補正量が所定の初期値D2に、球面収差補正量が所定の初期値S2に設定される。ここで、球面収差補正量の初期値S2は標準的な光ディスク100における最適な所定値である。また、ステップ802ではデフォーカス量の初期値は後述する図10の二次近似の正確な実施に最適な所定値でもFE信号の最大値が得られる値としてもよい。なお、初期値D2およびS2は光ピックアップ101固有の特性でもあるので、光ピックアップ101ごとに異なる最適値を所定値としてもよい。以降、ステップ805でYESが選択されるまで球面収差補正量は固定したままTE振幅最大のデフォーカス量を探索する。ステップ803では現在の球面収差補正量およびデフォーカス量に固定した状態でTE信号振幅を取得する。TE信号振幅取得時のデフォーカス量およびTE信号振幅は、メモリに記憶される。メモリは例えばシステム制御回路129に内蔵されている。ステップ804ではデフォーカス量の値を現在値からデフォーカス量に対する測定時のステップ量Dwだけ変化させた値(現在値がD2であった場合はD2’)に変更する。ここで、ステップ量Dwは後述する図10の二次近似の正確な実施に最適な所定値である。また、Dwは光ピックアップ101固有の値であるので、光ピックアップ101ごとに異なる最適値を所定値としてもよい。ステップ805ではデフォーカス量が終了値D3よりも大きいか否かを判定する。デフォーカス量がD3よりも大きい場合はステップ806に移行し、D3よりも小さい場合はステップ803に移行する。すなわち、デフォーカス量がD3よりも大きい値になるまで、ステップ803とステップ804が繰り返され、ある固定の球面収差補正量におけるデフォーカス量に対するTE信号振幅の特性が測定される。ここで、ステップ801からステップ805において、固定した球面収差補正量におけるデフォーカス量に対するTE信号振幅の値は、例えば図10の黒点の分布のようにデフォーカス量に対して略二次的な特性が得られる。そこで、この測定結果に対して最小二乗法により二次近似曲線1000が得られる。この近似曲線1000の頂点におけるデフォーカス量D1は、固定した球面収差補正量におけるTE信号振幅が最大になるデフォーカス量を表す。測定点に対する近似曲線の計算および頂点におけるデフォーカス量D1の計算は、例えばシステム制御回路129によって実行される。また、計算時の球面収差補正量の値およびD1の値はメモリに記憶される。メモリは例えば、システム制御回路129に内蔵されている。次に、ステップ806では球面収差補正量の値を現在値から球面収差補正量に対する測定時のステップ量Swだけ変化させた値(現在値がS2であった場合はS2’)に変更する。ここで、ステップ量Swは後述する図5の一次近似の正確な実施に最適な所定値である。また、Swは光ピックアップ101固有の値であるので、光ピックアップ101ごとに異なる最適値を所定値としてもよい。ステップ807では球面収差補正量が終了値S3よりも大きいか否かを判定する。球面収差補正量がS3よりも大きい場合はステップ808に移行し、S3よりも小さい場合はステップ802に移行する。すなわち、球面収差補正量がS3よりも大きい値になるまで、ステップ802から806が繰り返され、各球面収差補正量におけるデフォーカス量に対するTE信号振幅特性が測定される。ステップ808ではステップ807までの測定結果からTE信号振幅の稜線500が導出される。各球面収差補正量におけるデフォーカス量に対するTE信号振幅の二次近似曲線の頂点は、例えば図5の白点の分布のようにデフォーカス量に対して略線形的な特性が得られる。そこで、この測定結果に対して最小二乗法により線形近似直線が得られる。本発明では、この近似直線をTE信号振幅の稜線500とする。上記のように、このTE信号振幅の稜線のデフォーカス量の変化量に対する球面収差補正量の変化量がTE信号振幅の稜線の傾きG1となる。なお、上記には各球面収差補正量において、デフォーカス量に対してTE信号振幅を二次近似した後に、二次近似曲線の頂点を線形近似してTE信号振幅の稜線を求める方法を挙げたが、各デフォーカス量において、球面収差補正量に対してTE信号振幅を二次近似した後に、二次近似曲線の頂点を線形近似してTE信号振幅の稜線を求めてもよい。
【0031】
TE信号振幅が最大となるデフォーカス量および球面収差補正量の組み合わせの探索について、図5と図11を用いて説明する。図11は図5において白点で示した、各球面収差補正量における、TE信号振幅の稜線に平行なA方向に対するTE信号振幅の二次近似曲線の頂点をデフォーカス量に対してプロットしたものである。曲線1100は各点を最小二乗法により二次近似した曲線である。この近似曲線の頂点におけるデフォーカス量D4は、TE信号振幅が最大となるデフォーカス量を意味する。このD4を基に、TE信号振幅の稜線上のデフォーカス量D4に対する点P2における球面収差補正量S4を導出する。D4およびS4の値はメモリに記憶される。メモリは例えば、システム制御回路129に内蔵されている。近似曲線1100の計算およびD4およびS4の導出は、例えばシステム制御回路129によって実行される。
【0032】
次に、1枚の光ディスク100の記録層のうち3層分のTE信号振幅の稜線の傾きの実測値から、実測を行わない光ディスク100の他の記録層および、1層も実測を行わない光ディスク100のTE信号振幅の稜線の傾きを導出する方法について説明する。
【0033】
図13および図14を用いて、光ディスク100の例として、全3層の記録層をもつ光ディスクについて、レーザ照射面を表面とした場合、最も表面に近い記録層であるL0、L0の次に表面に近い記録層であるL1、L1の次に表面に近い記録層であるL2の3層分のTE信号振幅の稜線の傾きの実測値から、光ディスク100の例として、記録層間隔が3層ディスクと全層において異なる4層ディスクの全4層分のTE信号振幅の稜線の傾きを導出する方法を示す。
【0034】
まず、3層ディスクのL0,L1,L2の各記録層において、上記手順によりTE信号振幅の稜線の傾きGTL0、GTL1、GTL2を導出する。これら各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きを、規格で定められた3層ディスクの表面から各記録層までの距離に、表面から光学基準点までの距離をオフセットさせた値であるdTL0、dTL1、dTL2に対してプロットすると、図13の黒点のように、略二次的に変化する特性が得られる。そこで、この測定結果に対して最小二乗法を用いることによって二次近似曲線1300が得られる。ここで、上記光学基準点とは、例えば、球面収差補正素子106による球面収差の付加がない状態、すなわち対物レンズ108に対して平行光が入射する状態における光束のデフォーカス量とする。また、光学基準点は光ピックアップ101固有の値であるので、光ピックアップ101ごとに異なる最適値を所定値としてもよい。最小二乗法による二次近似曲線の計算は、例えばシステム制御回路129によって実行される。また、導出された二次近似曲線の式はメモリに記憶される。メモリは例えば、システム制御回路129に内蔵されている。二次近似曲線1300は上記のように、光ピックアップ固有であり、測定した光ディスク100の種類に依らず、光学基準点から各記録層までの距離に対して一意に求まる。したがって、図14に示すように、TE信号振幅の稜線の傾きが光学基準点から各記録層までの距離に対して近似曲線1300を用いて一意に求まる特性を利用して、先に3層ディスクの実測で求めた近似曲線1300から4層ディスクのTE信号振幅の稜線の傾きを導出することができる。すなわち、近似曲線1300に対して、規格で定められた4層ディスクの表面から各記録層までの距離に、表面から光学基準点までの距離をオフセットさせた値であるdQL0、dQL1,dQL2,dQL3に対する近似曲線1300上のTE信号振幅の稜線の傾きGQL0,GQL1,GQL2,GQL3が4層ディスクの各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きとして導出できる。ここで、近似曲線1300を利用して導出した各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きはメモリに記憶される。メモリは例えば、システム制御回路129に内蔵されている。
【0035】
図15はn層の記録層をもつ光ディスク100の各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾き導出を実行する手順を示す。この方法は、例えばシステム制御回路129によって実行される。以降、実行手順を説明するに当たり、x軸とy軸の2軸で考える場合、x軸を光学基準点から各記録層までの距離とし、y軸をTE信号振幅の稜線の傾きとする。ステップ1501では光ディスク100の例として3層ディスクの各記録層におけるTE信号振幅の稜線が測定される。ここで、n層ディスクのTE信号振幅の稜線の傾き導出のために実際に測定する光ディスク100は必ずしも3層ディスクに限定されない。3層以上の記録層数をもつ光ディスクを用いてもよい。また、TE信号振幅の稜線の傾きを導出する記録層数は必ずしも3層に限定されない。3層以上の記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きを導出してもよい。これにより、後述する二次近似曲線1300の近似精度の向上を望むことができる。ステップ1501の測定は図8に示した手順に基づいて実行される。ステップ1502では3層分のTE信号振幅稜線の測定が終了したか否かが判断される。3層分のTE信号振幅の稜線の測定が終了したと判断された場合はステップ1503に移行し、3層分のTE信号振幅の稜線の測定が未終了と判断された場合は、ステップ1501に移行し、3層分のTE信号振幅の稜線の測定が終了するまで、各記録層での実測が実行される。ステップ1503ではステップ1502までに導出した、L0,L1,L2におけるTE信号振幅の稜線の傾きGTL0,GTL1,GTL2を記憶する。TE信号振幅の稜線の傾きは各記録層の光学基準点から各記録層までの距離に対応して(dTL0,GTL0),(dTL1,GTL1),(dTL2,GTL2)の二次元座標として記憶される。メモリは例えば、システム制御回路129に内蔵されている。次に、ステップ1504では、記憶した各記録層における二次元座標を基に二次近似曲線1300を表す二次関数y=ax+bx+cの係数a,b,cを方程式から算出する。方程式の計算は、例えばシステム制御回路129により実行される。ステップ1505ではステップ1504で算出された係数a,b,cをメモリに記憶する。メモリは例えば、システム制御回路129に内蔵されている。また、導出する近似式は必ずしも二次近似には限定されない。例えば、光ピックアップ101によって、光学基準点から各記録層までの距離に対して、TE信号振幅の稜線の傾きが略一次であると見なせる場合は、上記ステップ1501からステップ1503のTE信号振幅の稜線の傾きの測定を2層のみで実施し、線形の近似式を用いて、以下の導出を実施してもよい。次に、ステップ1506では導出した二次近似曲線1300を表す二次関数y=ax+bx+cに対して、規格で定められたn層ディスクの表面から各記録層までの距離に、表面から光学基準点までの距離をオフセットさせた値を代入し、n層ディスクの各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きB0,B1,B2,...Bn−1,Bnが算出される。算出によるTE信号振幅の稜線の傾きは、例えばシステム制御回路129により実行される。ステップ1507ではステップ1506で算出された、n層ディスクの各記録層におけるTE信号振幅の稜線の傾きの値がメモリに記憶される。メモリは例えば、システム制御回路129に内蔵されている。
【0036】
以下、図7のステップ707の第2の探索の実行について説明する。第2の探索が実行される前に、トラッキング制御の状態が、トラッキング制御がオフの状態からトラッキング制御がオンの状態に切り替えられる(図7のステップ705)。次に、光ディスク100が未記録の場合、光スポットのデフォーカス量を所定値D4に固定し、かつ球面収差補正量を所定値S4に固定した状態で、光ディスク100の所定の連続した複数のトラックに情報の記録が行われる。なお、記録時の球面収差補正量の固定値はS4に限らず、再度デフォーカス量D4に固定した状態で、球面収差補正量のみを変化させることで、TE信号振幅が最大となる点を探索した結果を用いてもよい。第2の探索はトラッキング制御が動作している状態において情報が記録されたトラックを用いて実施される。第2の探索はTE信号振幅が最大となるデフォーカス量D4および球面収差補正量S4から始める。探索は図6に示したA方向のように、TE信号振幅の稜線に平行に実施される。図12は図6に示したA方向に沿って実施する探索が実行中である場合における再生信号振幅の変化を示す。再生信号振幅が最大となるA方向に平行な探索をすることは、例えば図12に示すように、複数の測定点から再生信号振幅とA方向に対する二次近似曲線1200を作成し、二次近似曲線1200に基づいて再生信号振幅が最大となる頂点におけるデフォーカス量D5を求め、D5を基に、TE信号振幅の稜線上のデフォーカス量D5に対する点P3における球面収差補正量S5を導出することにより達成される。次に、再生信号振幅が最大となる点P1の導出を実施する。点P1の導出は点P3から始め、点P3を通り、かつTE信号振幅の稜線に対して垂直な直線600に沿って実施される。そのため、直線600の傾きG2はTE信号振幅の傾きG1を用いて、
(式3) G2=−1/G1
で表される。探索は図6に示したB方向に沿って実施され、図12と同様に、複数の測定点から再生信号振幅とB方向に対する二次近似曲線を作成し、当該二次近似曲線に基づいて再生信号振幅が最大となる頂点におけるデフォーカス量および球面収差補正量をそれぞれ、D1およびS1として導出することにより達成される。
【0037】
図9は第2の探索(図7のステップ707)を実行する方法の手順を示す。この方法は、例えばシステム制御回路129によって実行される。ステップ901では第2の探索を開始時のデフォーカス量および球面収差補正量(図6におけるD4およびS4)における再生信号振幅を測定する。測定された再生信号振幅RF1はメモリに記憶される。メモリは例えばシステム制御回路129に内蔵される。次にステップ902ではA方向の正方向と平行に所定のデフォーカス量および球面収差補正量がオフセットされる。その後、再生信号振幅RF2が測定される。測定された再生信号振幅RF2はメモリに記憶される。メモリは例えばシステム制御回路129に内蔵される。ステップ903ではRF1とRF2の値が比較される。RF1がRF2以下の場合は、ステップ904に移行し、RF1がRF2よりも大きい場合はステップ905に移行する。ステップ904では今後、A方向に移動する際に正方向に移動するよう、所定のデフォーカス量および球面収差補正量がオフセットされる。一方、ステップ905では今後、A方向に移動する際に負方向に移動するよう、所定のデフォーカス量および球面収差補正量がオフセットされる。ステップ906ではA方向に移動するよう、所定のデフォーカス量および球面収差補正量がオフセットされる。その後、再生信号振幅RFnewが測定される。ステップ907ではRFnew測定前の再生信号振幅を再生信号振幅現在値としてRFnewと比較される。再生信号振幅現在値がRFnewと比較して小さい場合はステップ908へ移行し、再生信号振幅現在地がRFnewと比較して大きい場合は、ステップ908へ移行する。ステップ908ではRFnewを再生信号振幅現在値に設定した後、ステップ906に移行する。ステップ909ではA方向に移動するよう、所定のデフォーカス量および球面収差補正量がオフセットされる。ここで、ステップ909はステップ910で作成する二次近似曲線を十分精度よく導出するために、再生信号振幅の極性変化後の測定をする必要があるために設けている。したがって、二次近似曲線の精度を上げるために、測定点がさらに必要な場合はステップ909に相当するシーケンスを複数回設けるものとする。次に、ステップ910では方向Aに対する再生信号振幅について最小二乗法による二次近似曲線(図12における曲線1200)を作成し、さらに近似曲線の頂点におけるデフォーカス量および球面収差補正量を導出する。ステップ911ではステップ910で導出したデフォーカス量および球面収差補正量をメモリに記憶する。メモリは例えばシステム制御回路129に内蔵される。
【0038】
図6における点P3におけるデフォーカス量D5および球面収差補正量S5が導出された後は、さらに、点P3を通り、かつ直線500に垂直な直線600のB方向について同様に図9に示した手順を実行し、再生信号振幅が最大となる点P1におけるデフォーカス量D1および球面収差補正量S1を導出する。
【0039】
なお、本実施例として、光スポットのデフォーカス量および球面収差補正量の探索において、信号品質指標として再生信号振幅を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されない。信号品質指標として、i−MLSE、MLSE、エラーレート、ジッタを用いてもよい。i−MLSE、MLSE、ジッタおよびエラーレートはアドレスおよびデータが記録されているトラックを光ピックアップによって再生することにより得られる。ここで、ジッタとは再生信号における時間的なずれやゆらぎを表す物理量である。ジッタは、光ディスクから情報を読み取る際の誤りが生じる確率であるエラーレートと密接な関係にある。
【符号の説明】
【0040】
100 光ディスク
101 光ピックアップ
102 レーザ光源
103 コリメートレンズ
104 偏光ビームスプリッタ
105 1/4波長板
106 球面収差補正素子
107 全反射ミラー
108 対物レンズ
109 アクチュエータ
110 シリンドリカルレンズ
111 集光レンズ
112 光検出器
113 スピンドルモータ
121 スピンドルモータ駆動回路
122 アクチュエータ駆動回路
123 球面収差補正素子駆動回路
124 信号品質評価回路
125 再生信号生成回路
126 Wobble信号生成回路
127 サーボ信号生成回路
128 レーザ駆動回路
129 システム制御回路
500 TE信号振幅の稜線
600 TE信号振幅の稜線上で最もTE信号振幅が大きい点を通りかつTE
信号振幅の稜線に垂直な直線
1000 デフォーカス量に対するTE信号振幅の二次近似曲線
1100 A方向に対するTE信号振幅の二次近似曲線
1200 A方向に対する再生信号振幅の二次近似曲線
1300 光学基準点から記録層までの距離に対するTE信号振幅の稜線の傾き
の二次近似曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つ以上の記録層を有する多層光ディスク上に光束を集光し、光スポットのデフォーカス量を変更するように動作可能な収束位置変更(デフォーカス量変更)手段と、前記光ディスク上の光スポットにおいて発生する球面収差補正量を変更するように動作可能な球面収差補正量変更手段と、前記光ディスクの反射光から記録層のトラックとのトラッキングエラー信号と記録層の再生信号を生成する手段と、前記トラッキングエラー信号に応じてトラッキング制御を実行するトラッキング制御手段と、前記光ディスクの記録層の再生信号の品質を示す再生信号品質指標を生成する再生信号品質指標生成手段と、前記デフォーカス量変更手段と前記球面収差補正量変更手段と前記トラッキング制御手段を備え、前記制御手段は前記トラッキング制御のオン/オフ状態を切り替えるように動作可能であり、
前記制御手段は前記トラッキング制御がオフ状態にある場合に、前記トラッキングエラー信号の振幅がより大きくなる複数の組のデフォーカス量および球面収差補正量を探索する第1の探索と、
前記トラッキング制御がオン状態にある場合に、前記デフォーカス量変更手段と前記球面収差補正量変更手段の少なくとも一方を制御して前記第1の探索により得られた複数の組を基に、所定の関係式に基づいて導出したデフォーカス量および球面収差補正量の中から前記再生信号品質指標が実質的に最良となる1組のデフォーカス量および球面収差補正量を選択する第2の探索とを実施する光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記制御手段は、前記第1の探索において、前記トラッキングエラー信号の振幅特性の稜線およびその傾きを探索する光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記所定の関係式は、前記球面収差補正量がゼロの際の前記デフォーカス量から前記光ディスクの各記録層までの距離の二次関数であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記所定の関係式は、ある前記多層光ディスクAの特定の記録層における第1の探索から決定した後に、前記多層光ディスクAとは記録層の数や記録層間隔の異なる前記多層光ディスクBの第2の探索における前記デフォーカス量および球面収差補正量の組を関係式から導出することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記制御手段は、前記光スポットの球面収差補正量をS1に固定した状態で前記光スポットのデフォーカス量を変更するように前記デフォーカス量変更手段を制御することにより、前記トラッキングエラー信号の振幅が最大になるようにデフォーカス量Dp1を決定し、次に球面収差補正量をS1に所定の刻み量を足したS1+Swに固定した状態で前記デフォーカス量を変更するように前記デフォーカス量変更手段を制御することにより、前記トラッキングエラー信号の振幅が最大になるようにデフォーカス量Dp2を決定し、球面収差補正量が終了値S3になるまで同様に前記デフォーカス量変更手段を制御することで各球面収差補正量におけるトラッキングエラー最大のデフォーカス量を決定し、各デフォーカス量の線形近似直線を前記稜線として決定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記制御手段は、前記光スポットのデフォーカス量をD1に固定した状態で前記光スポットの球面収差補正量を変更するように前記補正量変更手段を制御することにより、前記トラッキングエラー信号の振幅が最大になるように球面収差補正量Sp1を決定し、次にデフォーカス量D1に所定の刻み量を足したD1+Dwに固定した状態で前記球面収差補正量を変更するように前記球面収差補正量制御手段を制御することにより、前記トラッキングエラー信号の振幅が最大になるように球面収差補正量Sp2を決定し、デフォーカス量が終了値D3になるまで同様に前記デフォーカス量変更手段を制御することで各デフォーカス量におけるトラッキングエラー最大の球面収差補正量を決定し、各球面収差補正量の線形近似直線を前記稜線として決定することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項5に記載の光ディスク装置であって、
前記稜線が当該装置の記憶領域に予め記憶されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項6に記載の光ディスク装置であって、
前記稜線を当該装置の記憶領域に予め記憶されていることを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−94225(P2012−94225A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242961(P2010−242961)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】