説明

光ネットワーク終端装置および光加入者線終端装置

【課題】未使用の通信速度に関係する機能を休止させて消費電力を削減することができる光ネットワーク終端装置および光加入者線終端装置を提供する。
【解決手段】速度変更手段18は、キュー長および/またはキューに流入するデータの流入速度および/またはキューに流入するデータの流入加速度を推定し、キュー長が閾値1以上および/または流入速度が閾値3以上および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値5以上になった場合、通信速度を速度1から速度2(速度1<速度2)に切り替え、キュー長が閾値2以下および/または流入速度が閾値4以下および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値6以下になった場合、通信速度を速度2から速度1に切り替える。機能休止手段19は、接続されている全てのONUが使用していない通信速度の信号処理手段を休止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アクセスネットワークに適用する光ネットワーク終端装置(ONU)および光加入者線終端装置(OLT)に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、光ネットワークは、1つの光加入者線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が1つの光ネットワーク終端装置(ONU:Optical Network Unit)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントの通信を行うネットワークである。
【0003】
また、図2に示すように、受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)は、1つの光加入者線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)が複数の光ネットワーク終端装置(ONU:Optical Network Unit)と光ファイバ伝送路および1対nの光スプリッタ(nは自然数)を介してポイントツーマルチポイントの通信を行うネットワークである。ギガビットクラスのPONの代表的な規格として、IEEE802.3にて標準化されたEPON(Ethernet(登録商標)PON)がある。また、IEEE802.3av検討グループでは、10ギガビットクラスのPONとして10G−EPONの検討がなされている。EPONの下り信号(OLTからONUへ流れる信号)と10G−EPONの下り信号は、波長分割多重(WDM)によって多重され、EPONの上り信号(ONUからOLTへ流れる信号)と10G−EPONの上り信号は、時分割多重アクセス(TDMA)によって多重される予定である。
【0004】
図3にEPONにおける従来のONUの機能ブロック図を示す。上り主信号は、UNI(User Network Interface)ポート201、キュー管理手段202、PON信号処理手段203を介してPON−IF(PON Interface)ポート204へと流れる。一方、下り主信号は、PON−IFポート204、PON信号処理手段203、キュー管理手段202を介してUNIポート201へと流れる。ONU200は、上り方向に対して複数のキューを備え、キュー監視手段として各キュー内のデータ量を監視する手段を有している。また、ONU200は、PON信号処理手段203に、OLTに対してキュー内のデータ量を報告するMPCP(Multi-Point Control Protocol)部と、OLTと保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM(Operations, Administration and Maintenance)部を有している。
【0005】
図4にEPONにおける従来のOLTの機能ブロック図を示す。下り主信号は、SNI(Service Node Interface)ポート104、キュー管理手段103、PON信号処理手段102を介してPON−IFポート101へと流れる。一方、上り主信号は、PON−IFポート101、PON信号処理手段102、キュー管理手段103を介してSNIポート104へと流れる。OLT100は、PON信号処理手段102に、ONUに対してONUに備えられたキュー内のデータ量を報告させるMPCP部と、ONUから受信した報告メッセージをもとにONU内のキューのデータ量を監視し、各ONUへ使用帯域を割り当てる帯域割当部と、ONUと保守監視用の制御フレームをやり取りするOAM部を有している。
【非特許文献1】技術基礎講座「GE−PON技術 第4回 GE−PONのシステム化機能」,NTT技術ジャーナル,2005年11月,pp.59−61
【非特許文献2】Tsutomu Tatsuta, Noriyuki Oota, Noriki Miki,and Kiyomi Kumozaki, “Design Philosophy and performance of a GE-PON system for mass deployment, ”Journal of Optical Netwoking,vol.6, no.6, June 2007.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、OLTとONUとの間の通信速度が固定値であるため、使用帯域が少ない時間帯であっても最大使用帯域に合わせて通信速度を設定しなければならず、消費電力が大きいという課題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、未使用の通信速度に関係する機能を休止させて消費電力を削減することができる光ネットワーク終端装置および光加入者線終端装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントまたはポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光ネットワーク終端装置(ONU)であって、前記OLTに送信するデータを一時的に格納するキューのキュー長および/または該キューに流入するデータの流入速度および/または該キューに流入するデータの流入加速度を推定し、通信速度が第1の速度の状態において、前記キュー長が第1の閾値以上および/または前記流入速度が第2の閾値以上および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値以上になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度よりも速い第2の速度に切り替え、通信速度が第2の速度の状態において、前記キュー長が第1の閾値よりも小さい第4の閾値以下および/または前記流入速度が第2の閾値よりも小さい第5の閾値以下および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値よりも小さい第6の閾値以下になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度に切り替える速度変更手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントまたはポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光ネットワーク終端装置(ONU)であって、前記OLTに送信するデータを一時的に格納するキューのキュー長および/または該キューに流入するデータの流入速度および/または該キューに流入するデータの流入加速度を推定し、通信速度が第1の速度の状態において、前記キュー長が第7の閾値以上および/または前記流入速度が第8の閾値以上および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第9の閾値以上になった場合には、速度変更待機メッセージをOLTへ送信し、OLTからの準備完了応答を受信した後に、前記キュー長が第1の閾値以上および/または前記流入速度が第2の閾値以上および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値以上になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度よりも速い第2の速度に切り替え、通信速度が第2の速度の状態において、前記キュー長が第7の閾値よりも小さい第10の閾値以下および/または前記流入速度が第8の閾値よりも小さい第11の閾値以下および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第9の閾値よりも小さい第12の閾値以下になった場合には、速度変更待機メッセージをOLTへ送信し、OLTからの準備完了応答を受信した後に、前記キュー長が第1の閾値よりも小さい第4の閾値以下および/または前記流入速度が第2の閾値よりも小さい第5の閾値以下および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値よりも小さい第6の閾値以下になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度に切り替える速度変更手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の光ネットワーク終端装置(ONU)は、前記変更確認応答の受信後、未使用の速度の信号処理手段を休止させる機能休止手段を有することが好ましい。また、前記速度変更メッセージを送信してから前記変更確認応答を受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、前記変更確認応答の受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開することが好ましい。また、本発明の光ネットワーク終端装置(ONU)は、前記変更確認応答の受信を契機としてONUに蓄積したデータ量をOLTへ報告メッセージによって報告することが好ましく、前記速度変更メッセージを送信してから、ONUの割当帯域を通知する帯域割当メッセージを受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、前記帯域割当メッセージの受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開することが好ましい。
【0011】
また、本発明は、1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、該ONUとの通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段と、ONUがONUのキューに蓄積されたデータ量をOLTに報告するための帯域をONUに割り当て、前記変更確認応答に割当帯域を含める帯域割当手段とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、前記ONUから速度変更待機メッセージを受信した場合には、指定された速度の信号処理手段を起動し、起動が完了した後に準備完了応答をONUへ送信し、準備完了応答を送信した後に前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、前記ONUから速度変更待機メッセージを受信した場合には、指定された速度の信号処理手段を起動し、起動が完了し後に準備完了応答をONUへ送信し、準備完了応答を送信した後に前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、該ONUとの通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段と、ONUがONUのキューに蓄積されたデータ量をOLTに報告するための帯域をONUに割り当て、前記変更確認応答に割当帯域を含める帯域割当手段とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の光加入者線終端装置(OLT)は、接続されているすべてのONUが使用していない通信速度の信号処理手段を休止させる機能休止手段を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ONUからOLTへの上り通信速度を複数用意し、ONUの上りキューのキュー長および/またはキューへのデータの流入速度および/またはキューへのデータの流入加速度を監視して通信速度を切り替え、ONUおよびOLTの未使用の通信速度に関係する機能を休止させることができるので、消費電力を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、本発明による光ネットワーク終端装置(ONU)および光加入者線終端装置(OLT)の機能について説明する。
図5に本発明のONUの機能ブロック図を示す。図5に示すONU2は、UNI(User Network Interface)ポート13と、キュー管理手段14と、PON信号処理手段15と、PON−IF(PON Interface)ポート16と、速度変更手段18と、機能休止手段19を備え、PON信号処理手段15には、速度1の送信用PON信号処理手段20と、速度2の送信用PON信号処理手段21と、受信用PON信号処理手段22を備える。
【0018】
ONU2は、図3に示した従来のONUの機能ブロック図に、さらに速度変更手段および機能休止手段を実装し、複数の異なる送信速度の送信用PON信号処理手段を用意した構成である。図5に示すように、ONU2は、例えば、速度1および速度2の2種類の送信速度を用意し、速度変更手段(推定手段)18によって上りキューのキュー長および/または上りキューへのデータの流入速度および/または上りキューへのデータの流入加速度を推定する。そして、速度変更手段18は、キュー長および/または流入速度および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量に基づいて送信速度を決定し、選択信号をPON信号処理手段15に入力する。キュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量としては、例えば(式1)で表される物理量xを用いる。
x=Gq+G(B−B)+GA ・・・(式1)
ただし、G、G、Gは任意の利得であり、q、B、B、Aはそれぞれキュー長、流入速度、速度1、流入加速度である。
また、速度変更手段18は、OLTに速度変更を要求する速度変更メッセージまたはOLTのPON信号処理手段を起動させる速度変更待機メッセージを、ONUのPON信号処理手段15を介して制御信号としてOLTへ送信する。機能休止手段19は、選択されていない速度の送信用PON信号処理手段を休止できる。速度1の速度で受信している場合には速度2の速度のPON信号処理手段を休止させることで、ONUの消費電力を削減できる。なお、速度2の速度で受信している場合にも速度1の速度のPON信号処理手段を休止させることで、さらにONUの消費電力を削減できる。
【0019】
図6にONUのPON信号処理手段の構成例1を示す。図6は、下り速度が10Gbps、上り速度が1Gbps(速度1)および10Gbps(速度2)の場合の構成例である。PON信号処理手段15は、MPCP(Multi-Point Control Protocol)処理を行うMPCP部51と、下り10Gbps/上り10Gbpsに対応するメディアアクセス制御部(10G/10G MAC部)52と、速度選択部53と、10Gbpsの信号を1Gbpsの信号に変換する10G−1G変換部56と、1Gbpsに対応する物理層部(1G PHY部)57と、10Gbpsに対応する物理層部(10G PHY部)58,59と、1Gbpsの電気信号を光信号に変換する1G送信部60と、10Gbpsの電気信号を光信号に変換する10G送信部61と、10Gbpsの光信号を電気信号に変換する10G受信部62と、波長多重分離部(WDM)64および時分割多重分離部(TDM)65を有する多重分離部63を備える。
【0020】
10Gbpsの下り信号は、波長多重分離部(WDM)64によって分雛され、10G受信部62により10Gbpsの速度で受信されて電気信号に変換される。その後、10G PHY部59、10G/10G MAC部52、MPCP部51を通してキュー管理手段14へと転送される。10Gbpsの上り信号は、MPCP部51、10G/10G MAC部52、速度選択部53、10G PHY部58を通して10G送信部61により光信号に変換されて10Gbpsで送信され、時分割多重分離部(TDM)65によって1Gbpsの送信信号と多重される。また、波長多重分離部(WDM)64によって上り・下り信号が多重される。1Gbpsの上り信号は、MPCP部51、10G/10G MAC部52、速度選択部53、10G−1G変換部56、1G PHY部57を通して1G送信部60により光信号に変換されて1Gbpsで送信され、時分割多重分離部(TDM)65によって10Gbpsの送信信号と多重される。また、波長多重分離部(WDM)64によって上り・下り信号が多重される。なお、速度選択部53は、速度変更手段18からの選択信号によって動作する。図6の構成では、ONUが上り1Gbps(速度1)で通信を行っている場合、機能休止手段19は、10G PHY部58および10G送信部61(図5のPON信号処理手段21に相当)を休止させることができる。また、ONUが上り10Gbps(速度2)で通信を行っている場合、機能休止手段19は、1G PHY部57および1G送信部60(図5のPON信号処理手段20に相当)を休止させることができる。
【0021】
図7にONUのPON信号処理手段の構成例2を示す。図7は、下り速度が10Gbps、上り速度が1Gbps(速度1)および10Gbps(速度2)の場合の構成例である。PON信号処理手段15は、MPCP(Multi-Point Control Protocol)処理を行うMPCP部51と、速度選択部53と、下り10Gbps/上り1Gbpsに対応するメディアアクセス制御部(10G/1G MAC部)54と、下り10Gbps/上り10Gbpsに対応するメディアアクセス制御部(10G/10G MAC部)55と、1Gbpsに対応する物理層部(1G PHY部)57と、10Gbpsに対応する物理層部(10G PHY部)58,59と、1Gbpsの電気信号を光信号に変換する1G送信部60と、10Gbpsの電気信号を光信号に変換する10G送信部61と、1Gbpsの光信号を電気信号に変換する10G受信部62と、波長多重分離部(WDM)64および時分割多重分離部(TDM)65を有する多重分離部63を備える。
【0022】
10Gbpsの下り信号は、波長多重分離部(WDM)64によって分離され、10G受信部62により10Gbpsの速度で受信されて電気信号に変換される。その後、10G PHY部59、10G/1G MAC部54または10G/10G MAC部55、速度選択部53、MPCP部51を通してキュー管理手段14へと転送される。10Gbpsの上り信号は、MPCP部51、速度選択部53、10G/10G MAC部55、10G PHY部58を通して10G送信部61により光信号に変換されて10Gbpsで送信され、時分割多重分離部(TDM)65によって1Gbpsの送信信号と多重される。また、波長多重分離部(WDM)64によって上り・下り信号が多重される。1Gbpsの上り信号は、MPCP部51、速度選択部53、10G/1G MAC部54、1G PHY部57を通して1G送信部60により光信号に変換されて1Gbpsで送信され、時分割多重分離(TDM)65によって10Gbpsの送信信号と多重される。また、波長多重分離部(WDM)64によって上り・下り信号が多重される。なお、速度選択部53は、速度変更手段18からの選択信号によって動作する。図7の構成では、ONUが上り1Gbps(速度1)で通信を行っている場合、機能休止手段19は、10G PHY部58および10G/10G MAC部55および10G送信部61(図5のPON信号処理手段21に相当)を休止させることができる。また、ONUが上り10Gbps(速度2)で通信を行っている場合、機能休止手段19は、1G PHY部57および10G/1G MAC部54および1G送信部60(図5のPON信号処理手段20に相当)を休止させることができる。
【0023】
図8に本発明のOLTの機能ブロック図を示す。図8に示すOLT1は、PON−IF(PON Interface)ポート3と、PON信号処理手段4と、キュー管理手段5と、SNI(Service Node Interface)ポート6と、速度変更手段8と、機能休止手段9を備え、PON信号処理手段4には、速度1の受信用PON信号処理手段10と、速度2の受信用PON信号処理手段11と、送信用PON信号処理手段12を備える。
【0024】
OLT1は、図4に示した従来のOLTの機能ブロック図に、さらに速度変更手段および機能休止手段を実装し、複数の異なる受信速度の受信用PON信号処理手段を用意した構成である。図8に示すように、OLT1は、例えば、速度1および速度2の2種類の受信速度を用意し、速度変更手段8によって、ONUからの制御信号(OLTに速度変更を要求する速度変更メッセージまたはOLTのPON信号処理手段4を起動させる速度変更待機メッセージ)を監視する。そして、速度変更手段8は、ONUからの制御信号に基づいて受信速度を決定し、選択信号をPON信号処理手段4に入力する。また、速度変更手段8は、ONUに対して速度変更の完了を通知する変更確認応答またはONUに対してPON信号処理手段の起動完了を通知する準備完了応答を送信できる。さらに、機能休止手段9は、いずれのONUにも選択されていない速度の送信用PON信号処理手段を休止できることが望ましい。
【0025】
図9にOLTのPON信号処理手段の構成例1を示す。図9は、下り速度が10Gbps、上り速度が1Gbps(速度1)および10Gbps(速度2)の場合の構成例である。PON信号処理手段4は、波長多重分離部(WDM)45および時分割多重分離部(TDM)46を有する多重分離部31と、1Gbpsの光信号を電気信号に変換する1G受信部32と、10Gbpsの光信号を電気信号に変換する10G受信部33と、10Gbpsの電気信号を光信号に変換する10G送信部34と、1Gbpsに対応する物理層部(1G PHY部)35と、10Gbpsに対応する物理層部(10G PHY部)36,37と、1Gbpsの信号を10Gbpsの信号に変換する1G−10G変換部40と、速度選択部41と、下り10Gbps/上り10Gbpsに対応するメディアアクセス制御部(10G/10G MAC部)42と、MPCP(Multi-Point Control Protocol)処理を行うMPCP部43と、1Gbpsないし10Gbpsの上り信号に帯域を割り当てる帯域割当部44を備える。
【0026】
1Gbpsの上り信号は、波長多重分離部(WDM)45によって上り・下り信号が分離され、時分割多重分離部(TDM)46によって10Gbpsの受信信号と分離され、1G受信部32により1Gbpsの速度で受信されて電気信号に変換される。その後、1G PHY部35、1G−10G変換部40、速度選択部41、10G/10G MAC部42、MPCP部43を通してキュー管理手段5へと転送される。10Gbpsの上り信号は、波長多重分離部(WDM)45によって上り・下り信号が分離され、時分割多重分離部(TDM)46によって1Gbpsの受信信号と分離され、10G受信部33により10Gbpsの速度で受信されて電気信号に変換される。その後、10G PHY部36、速度選択部41、10G/10G MAC部42、MPCP部43を通してキュー管理手段5へと転送される。10Gbpsの下り信号は、MPCP部43、10G/10G MAC部42、10G PHY部37を通して10G送信部34により光信号に変換されて10Gbpsで送信され、波長多重分離部(WDM)45によって多重される。なお、速度選択部41は、速度変更手段8からの選択信号によって動作する。図9の構成では、上り1Gbps(速度1)で通信を行っている場合、機能休止手段9は、10G PHY部36および10G受信部33(図8のPON信号処理手段11に相当)を休止させることができる。また、上り10Gbps(速度2)で通信を行っている場合、機能休止手段9は、1G PHY部35および1G受信部32(図8のPON信号処理手段10に相当)を休止させることができる。
【0027】
図10にOLTのPON信号処理手段の構成例2を示す。図10は、下り速度が10Gbps、上り速度が1Gbps(速度1)および10Gbps(速度2)の場合の構成例である。PON信号処理手段4は、波長多重分離部(WDM)45および時分割多重分離部(TDM)46を有する多重分離部31と、1Gbpsの光信号を電気信号に変換する1G受信部32と、10Gbpsの光信号を電気信号に変換する10G受信部33と、10Gbpsの電気信号を光信号に変換する10G送信部34と、1Gbpsに対応する物理層部(1G PHY部)35と、10Gbpsに対応する物理層部(10G PHY部)36,37と、下り10Gbps/上り1Gbpsに対応するメディアアクセス制御部(10G/1G MAC部)38と、下り10Gbps/上り10Gbpsに対応するメディアアクセス制御部(10G/10G MAC部)39と、速度選択部41と、MPCP(Multi-Point Control Protocol)処理を行うMPCP部43と、1Gbpsないし10Gbpsの上り信号に帯域を割り当てる帯域割当部44を備える。
【0028】
1Gbpsの上り信号は、波長多重分離部(WDM)45によって上り・下り信号が分離され、時分割多重分離(TDM)46によって10Gbpsの受信信号と分離され、1G受信部32により1Gbpsの速度で受信されて電気信号に変換される。その後、1G PHY部35、10G/1G MAC部38、速度選択部41、MPCP部43を通してキュー管理手段5へと転送される。10Gbpsの上り信号は、波長多重分離部(WDM)45によって上り・下り信号が分離され、時分割多重分離部(TDM)46によって1Gbpsの受信信号と分離され、10G受信部33により10Gbpsの速度で受信されて電気信号に変換される。その後、10G PHY部36、10G/10G MAC部39、速度選択部41、MPCP部43を通してキュー管理手段5へと転送される。10Gbpsの下り信号は、MPCP部43、速度選択部41、10G/1G MAC部38または10G/10G MAC部39、10G PHY部37を通して10G送信部34により光信号に変換されて10Gbpsで送信され、波長多重分離部(WDM)45によって多重される。なお、速度選択部41は、速度変更手段8からの選択信号によって動作する。図10の構成では、上り1Gbps(速度1)で通信を行っている場合、機能休止手段9は、10G PHY部36および10G/10G MAC部39および10G受信部33(図8のPON信号処理手段11に相当)を休止させることができる。また、上り10Gbps(速度2)で通信を行っている場合、機能休止手段9は、1G PHY部35および10G/1G MAC部38および1G受信部32(図8のPON信号処理手段10に相当)を休止させることができる。
【0029】
以下、本発明による光ネットワーク終端装置(ONU)および光加入者線終端装置(OLT)を用いた通信速度変更の実施例1について図面を参照して説明する。
(実施例1)
図11および図12に本発明による通信速度変更の実施例1のシーケンスを示す。
図11は、速度1から速度2への通信速度変更のシーケンス図である。例えば、OLT1に対して複数のONUが接続されていて、ONU2の通信速度を変更する場合を考える。まず、OLT1とONU2は、速度1で上りデータを送受信している。ONU2のキュー管理手段14において、OLT1へ送信するデータを格納するキューのキュー長が閾値1(第1の閾値)以上および/またはキューへのデータの流入速度が閾値3(第2の閾値)以上および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値5(第3の閾値)以上になった場合、ONU2は、速度変更メッセージをOLT1へ送信する。このとき、ONU2において速度2の送信用PON信号処理手段21を起動する。速度変更メッセージを受信したOLT1は、速度2の受信用PON信号処理手段11が起動していない場合には、起動し、速度2への通信速度変更が完了したら変更確認応答をONU2へ送信する。変更確認応答には、ONU2に対して、ONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告させる報告メッセージを送信するための帯域割当情報を含めることが望ましい。ONU2が変更確認応答を受信すると、報告メッセージを用いてONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告する。OLT1は、OLT1に接続されているすべてのONUからの報告メッセージをもとに各ONUの割当帯域を帯域割当部44により決定し、帯域割当メッセージを用いてONU2へ割当帯域を通知する。その後、ONU2は、速度2で上りデータ送信を開始する。このとき、ONU2において速度1の送信用PON信号処理手段20を休止させて、ONU2の消費電力を削減してもよい。また、OLT1において、速度1の受信用PON信号処理手段10が、OLT1に接続されているすべてのONUに対して使用されていない場合、速度1の受信用PON信号処理手段10を休止させて、OLT1の消費電力を削減してもよい。
【0030】
図12は、速度2から速度1への通信速度変更のシーケンス図である。例えば、OLT1に対して複数のONUが接続されていて、ONU2の通信速度を変更する場合を考える。まず、OLT1とONU2は、速度2で上りデータを送受信している。ONU2のキュー管理手段14において、OLT1へ送信するデータを格納するキューのキュー長が閾値2(第4の閾値)以下および/またはキューへのデータの流入速度が閾値4(第5の閾値)以下および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値6(第6の閾値)以下になった場合、ONU2は、速度変更メッセージをOLT1へ送信する。このとき、ONU2において速度1の送信用PON信号処理手段20を起動する。速度変更メッセージを受信したOLT1は、速度1の受信用PON信号処理手段10が起動していない場合には、起動し、速度1への通信速度変更が完了したら変更確認応答をONU2へ送信する。変更確認応答には、ONU2に対して、ONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告させる報告メッセージを送信するための帯域割当情報を含めることが望ましい。ONU2は、変更確認応答を受信すると、報告メッセージを用いてONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告する。OLT1は、OLT1に接続されているすべてのONUからの報告メッセージをもとに各ONUの割当帯域を帯域割当部44により決定し、帯域割当メッセージを用いてONU2へ割当帯域を通知する。その後、ONU2は、速度1で上りデータ送信を開始する。このとき、ONU2において速度2の送信用PON信号処理手段21を休止させ、ONU2の消費電力を削減する。また、OLT1において、速度2の受信用PON信号処理手段11が、OLT1に接続されているすべてのONUに対して使用されていない場合、速度2の受信用PON信号処理手段11を休止させて、OLT1の消費電力を削減してもよい。
【0031】
ONUは、速度変更メッセージを送信してから、ONUの割当帯域を通知する帯域割当メッセージを受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、帯域割当メッセージの受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開する機能を具備してもよい。ポイントツーポイントの通信を行う光ネットワークのONUにおいては、速度変更メッセージを送信してから変更確認応答を受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、変更確認応答の受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開する機能を具備してもよい。この場合、速度切り替え時のパケットロスを防ぐことができる。
【0032】
速度1および速度2としては、例えば1Gbpsおよび10Gbpsを用いる。つまり、上り信号としてEPONと10G−EPONで規定される光信号を用いる。制御信号としては、例えばMPCP部あるいはOAM部で用いられるメッセージを利用できる。
速度1および速度2の切り替え条件としてはチャタリング(頻繁な速度の変更)を防ぐため、図13に示すようなヒステリシス条件を用いることが望ましい。つまり、閾値1と閾値2には異なる値を用いることが望ましい。また、閾値3と閾値4あるいは閾値5と閾値6にも異なる値を用いることが望ましい。キュー長を切り替え条件として用いる場合、例えば、閾値1としてはバッファ容量(最大キュー長)を、閾値2としてはゼロを用いる。これは、キュー長がバッファ容量を超えるとバッファあふれを起こすためである。なお、閾値2としてバッファ容量よりも小さい値を用いることで、一時的なキュー長の減少による切り替えの頻発を防ぐことができる。また、流入速度を切り替え条件として用いる場合、例えば、閾値3としてしては1Gbpsを、閾値4としては500Mbpsを用いる。これは、流入速度が1Gbpsを超えるとキュー長が成長してバッファあふれを起こす可能性があるためである。なお、閾値4として1Gbpsより小さい値を用いることで、一時的な流入速度の低下による切り替えの頻発を防ぐことができる。キュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量を切り替え条件として用いる場合、例えば、(式1)で表される物理量を定義し、G、G、GにはG+G+G=1となる任意の利得を、Bには1Gbpsを代入する。
【0033】
ONUが優先度毎に複数のキューを有している場合には、OLTへ送信するデータを格納する各優先度のキューのキュー長および/またはキューへのデータの流入速度および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量の合計を切り替え条件として使用してもよいし、特定の優先度のキューのキュー長および/またはキューへのデータの流入速度および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量のみを切り替え条件として使用してもよい。
【0034】
フレームカウンタによってフレーム数を観測し、単位時間あたりの通過フレーム数(フレーム/秒)を流入速度として用いてもよいし、各フレームのデータ長を観測して、単位時間あたりの通過ビット数(bps)を流入速度として用いてもよい。ただし、イーサネット(登録商標)フレームなどの可変長フレームの場合には、単位時間あたりの通過ビット数(bps)を流入速度として用いることが望ましい。流入加速度は、流入速度を時間微分することで求められる。
【0035】
キュー長だけではなく、流入速度や流入加速度を切り替え条件に加えることで、速度1と速度2の間の通信速度で安定しているフローに対して頻繁な速度切り替えを防ぐことが可能となる。流入速度や流入加速度を推定する代わりに、速度変更後に速度変更を行わない時間帯を設けることでチャタリングを防いでもよい。なお、切り替え条件としては、キュー長の条件のみを用いてもよいし、流入速度の条件のみを用いてもよいし、キュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量の条件のみを用いてもよいし、あるいはキュー長と流入速度、キュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量の条件を任意に組み合わせて用いてもよい。例えば、速度1から速度2への変更時にはキュー長の条件(キュー長≧閾値1)を用い、速度2から速度1の変更時には流入速度の条件(流入速度≦閾値4)を用いることができる。また、速度1から速度2への変更時にはキュー長の条件(キュー長≧閾値1)を用い、速度2から速度1の変更時にはキュー長と流入速度の条件(キュー長≦閾値2かつ流入速度≦閾値4)を合わせて用いることもできる。
【0036】
以下、本発明による光加入者線終端装置(OLT)および光ネットワーク終端装置(ONU)を用いた通信速度変更の実施例2について図面を参照して説明する。
(実施例2)
図14および図15に本発明による通信速度変更の実施例2のシーケンスを示す。
図14は、速度1から速度2への通信速度変更のシーケンス図である。例えば、OLT1に対して複数のONUが接続されていて、ONU2の通信速度を変更する場合を考える。まず、OLT1とONU2は、速度1で上りデータを送受信している。ONU2のキュー管理手段14において、OLT1へ送信するデータを格納するキューのキュー長が閾値A(第7の閾値)以上および/またはキューへのデータの流入速度が閾値C(第8の閾値)以上および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値E(第9の閾値)以上になった場合、ONU2は、速度変更待機メッセージをOLT1へ送信する。このとき、ONU2において速度2の送信用PON信号処理手段21を起動する。速度変更待機メッセージを受信したOLT1は、速度2の受信用PON信号処理手段11が起動していない場合には、起動し、起動が完了したら準備完了応答をONU2へ送信する。ONU2が準備完了応答を受信し、かつONU2のキュー管理手段14において、OLT1へ送信するデータを格納するキューのキュー長が閾値1以上および/またはキューへのデータの流入速度が閾値3以上および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値5以上になった場合、ONU2は、速度変更メッセージをOLT1へ送信する。速度変更メッセージを受信したOLT1は、ONU2との通信速度を速度2へ変更し、変更確認応答をONU2へ送信する。変更確認応答には、ONU2に対して、ONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告させる報告メッセージを送信するための帯域割当情報を含めることが望ましい。ONU2が変更確認応答を受信すると、報告メッセージを用いてONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告する。OLT1は、OLT1に接続されているすべてのONUからの報告メッセージをもとに各ONUの割当帯域を帯域割当部44により決定し、帯域割当メッセージを用いてONU2へ割当帯域を通知する。その後、ONU2は、速度2で上りデータ送信を開始する。このとき、ONU2において速度1の送信用PON信号処理手段20を休止させて、ONU2の消費電力を削減してもよい。また、OLT1において、速度1の受信用PON信号処理手段10が、OLT1に接続されているすべてのONUに対して使用され
ていない場合、速度1の受信用PON信号処理手段10を休止させて、OLT1の消費電力を削減してもよい。
【0037】
図15は、速度2から速度1への通信速度変更のシーケンス図である。例えば、OLT1に対して複数のONUが接続されていて、ONU2の通信速度を変更する場合を考える。まず、OLT1とONU2は、速度2で上りデータを送受信している。ONU2のキュー管理手段14において、OLT1へ送信するデータを格納するキューのキュー長が閾値B(第10の閾値)以下および/またはキューへのデータの流入速度が閾値D(第11の閾値)以下および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値F(第12の閾値)以下になった場合、ONU2は、速度変更待機メッセージをOLT1へ送信する。このとき、ONU2において速度1の送信用PON信号処理手段20を起動する。速度変更待機メッセージを受信したOLT1は、速度1の受信用PON信号処理手段10が起動していない場合には、起動し、起動が完了したら準備完了応答をONU2へ送信する。ONU2が準備完了応答を受信し、かつONU2のキュー管理手段14において、OLT1へ送信するデータを格納するキューのキュー長が閾値2以下および/またはキューへのデータの流入速度が閾値4以下および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量が閾値6以下になった場合、ONU2は、速度変更メッセージをOLT1へ送信する。速度変更メッセージを受信したOLT1は、ONU2との通信速度を速度1へ変更し、変更確認応答をONU2へ送信する。変更確認応答には、ONU2に対して、ONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告させる報告メッセージを送信するための帯域割当情報を含めることが望ましい。ONU2が変更確認応答を受信すると、報告メッセージを用いてONU2のキューに蓄積されているデータ量をOLT1へ報告する。OLT1は、OLT1に接続されているすべてのONUからの報告メッセージをもとに各ONUの割当帯域を帯域割当部44により決定し、帯域割当メッセージを用いてONU2へ割当帯域を通知する。その後、ONU2は、速度1で上りデータ送信を開始する。このとき、ONU2において速度2の送信用PON信号処理手段21を休止させて、ONU2の消費電力を削減する。また、OLT1において、速度2の受信用PON信号処理手段11が、OLT1に接続されているすべてのONUに対して使用され
ていない場合、速度2の受信用PON信号処理手段11を休止させて、OLT1の消費電力を削減してもよい。
【0038】
ONUは、速度変更メッセージを送信してから、ONUの割当帯域を通知する帯域割当メッセージを受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、帯域割当メッセージの受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開する機能を具備してもよい。ポイントツーポイントの通信を行う光ネットワークのONUにおいては、速度変更メッセージを送信してから変更確認応答を受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、変更確認応答の受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開する機能を具備してもよい。この場合、速度切り替え時のパケットロスを防ぐことができる。
【0039】
速度1および速度2としては、例えば1Gbpsおよび10Gbpsを用いる。つまり、上り信号としてEPONと10G−EPONで規定される光信号を用いる。制御信号としては、例えばMPCP部あるいはOAM部で用いられるメッセージを利用できる。
【0040】
速度1および速度2の切り替え条件としてはチャタリング(頻繁な速度の変更)を防ぐため、図16に示すようなヒステリシス条件を用いることが望ましい。つまり、閾値1、閾値2、閾値Aおよび閾値Bには異なる値を用い、閾値Aよりも閾値1が大きな値、閾値Bよりも閾値2が小さな値に設定されることが望ましい。また、閾値3、閾値4、閾値Cおよび閾値Dにも異なる値を用い、閾値Cよりも閾値3が大きな値、閾値Dよりも閾値4が小さな値に設定されることが望ましい。
また、閾値5、閾値6、閾値Eおよび閾値Fにも異なる値を用い、閾値Eよりも閾値5が大きな値、閾値Fよりも閾値6が小さな値に設定されることが望ましい。キュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量を切り替え条件として用いる場合、例えば、(式1)で表される物理量を定義し、G、G、GにはG+G+G=1となる任意の利得を、Bには1Gbpsを代入する。
【0041】
キュー長を切り替え条件として用いる場合、例えば、閾値1としてはバッファ容量(最大キュー長)を、閾値2としてはゼロを用いる。これは、キュー長がバッファ容量を超えるとバッファあふれを起こすためである。なお、閾値2としてバッファ容量よりも小さい値を用いることで、一時的なキュー長の減少による切り替えの頻発を防ぐことができる。また、流入速度を切り替え条件として用いる場合、例えば、閾値3としては1Gbpsを、閾値4としては500Mbpsを用いる。これは、流入速度が1Gbpsを超えるとキュー長が成長してバッファあふれを起こす可能性があるためである。なお、閾値4として1Gbpsよりも小さい値を用いることで、一時的な流入速度の低下による切り替えの頻発を防ぐことができる。
【0042】
キュー長を切り替え条件として用いる場合、例えば、閾値Aとしてはバッファ容量(最大キュー長)の80%を、閾値Bとしてはバッファ容量(最大キュー長)の20%を用いる。ある程度キュー長が増加あるいは減少した段階で速度切り替えが行える状態にしておくことで、切り替え時間を短縮することができる。また、流入速度を切り替え条件として用いる場合、例えば、閾値Cとしては900Mbpsを、閾値Dとしては600Mbpsを用いる。ある程度流入速度が増加あるいは減少した段階で速度切り替えが行える状態にしておくことで、切り替え時間を短縮することができる。
【0043】
ONUが優先度毎に複数のキューを有している場合には、OLTへ送信するデータを格納する各優先度のキューのキュー長および/またはキューへのデータの流入速度および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量の合計を切り替え条件として使用してもよいし、特定の優先度のキューのキュー長および/またはキューへのデータの流入速度および/またはキュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量のみを切り替え条件として使用してもよい。
【0044】
フレームカウンタによってフレーム数を観測し、単位時間あたりの通過フレーム数(フレーム/秒)を流入速度として用いてもよいし、各フレームのデータ長を観測して、単位時間あたりの通過ビット数(bps)を流入速度として用いてもよい。ただし、イーサネット(登録商標)フレームなどの可変長フレームの場合には、単位時間あたりの通過ビット数(bps)を流入速度として用いることが望ましい。流入加速度は、流入速度を時間微分することで求められる。
【0045】
キュー長だけではなく、流入速度や流入加速度を切り替え条件に加えることで、速度1と速度2の間の通信速度で安定しているフローに対して頻繁な速度切り替えを防くこことが可能となる。流入速度や流入加速度を推定する代わりに、速度変更後に速度変更を行わない時間帯を設けることでチャタリングを防いでもよい。なお、切り替え条件としては、キュー長の条件のみを用いてもよいし、流入速度の条件のみを用いてもよいし、キュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量の条件のみを用いてもよいし、あるいはキュー長と流入速度、キュー長と流入速度と流入加速度の関数で表される物理量の条件を任意に組み合わせて用いてもよい。例えば、速度1から速度2への変更時にはキュー長の条件(キュー長≧閾値1とキュー長≧閾値A)を用い、速度2から速度1の変更時には流入速度の条件(流入速度≦閾値4と流入速度≦閾値D)を用いることができる。また、速度1から速度2への変更時にはキュー長の条件(キュー長≧閾値1とキュー長≧閾値A)を用い、速度2から速度1の変更時にはキュー長と流入速度の条件(キュー長≦閾値2かつ流入速度≦閾値4とキュー長≦閾値Bかつ流入速度≦閾値D)を合わせて用いることもできる。
【0046】
本実施例ではEPONおよび10G−EPONの場合について記述したが、他のPON、例えばITU−T勧告準拠のB−PONおよびG−PON、さらにはWDM−PONやCDM−PONにおいてあらゆる種類の通信速度の変更を行う際にも本発明を適用できることは明らかである。また、図1で示したポイントツーポイントの通信を行う光ネットワークシステムにも本発明を適用できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】光ネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】PONシステムの構成を示す図である。
【図3】EPONにおける従来のONUの機能ブロック図である。
【図4】EPONにおける従来のOLTの機能ブロック図である。
【図5】本発明のONUの機能ブロック図である。
【図6】ONUのPON信号処理手段の構成例1を示す図である。
【図7】ONUのPON信号処理手段の構成例2を示す図である。
【図8】本発明のOLTの機能ブロック図である。
【図9】OLTのPON信号処理手段の構成例1を示す図である。
【図10】OLTのPON信号処理手段の構成例2を示す図である。
【図11】実施例1における速度1から速度2への通信速度変更のシーケンス図である。
【図12】実施例1における速度2から速度1への通信速度変更のシーケンス図である。
【図13】実施例1における切り替え条件を説明する図である。
【図14】実施例2における速度1から速度2への通信速度変更のシーケンス図である。
【図15】実施例2における速度2から速度1への通信速度変更のシーケンス図である。
【図16】実施例2における切り替え条件を説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
1 OLT
2 ONU
3,16,101,204 PON−IFポート
4,15,102,203 PON信号処理手段
5,14,103,202 キュー管理手段
6,104 SNIポート
8,18 速度変更手段
9,19 機能休止手段
12,20,21 送信用PON信号処理手段
10,11,22 受信用PON信号処理手段
13,201 UNIポート
31,63 多重分離部
32 1G受信部
33,62 10G受信部
34,61 10G送信部
35,57 1G PHY部
36,37,58,59 10G PHY部
38,54 10G/1G MAC部
39,42,52,55 10G/10G MAC部
40 1G−10G変換部
41,53 速度選択部
43,51 MPCP部
45,64 波長多重分離部
46,65 時分割多重分離部
56 10G−1G変換部
60 1G送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントまたはポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光ネットワーク終端装置(ONU)であって、
前記OLTに送信するデータを一時的に格納するキューのキュー長および/または該キューに流入するデータの流入速度および/または該キューに流入するデータの流入加速度を推定し、
通信速度が第1の速度の状態において、前記キュー長が第1の閾値以上および/または前記流入速度が第2の閾値以上および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値以上になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度よりも速い第2の速度に切り替え、
通信速度が第2の速度の状態において、前記キュー長が第1の閾値よりも小さい第4の閾値以下および/または前記流入速度が第2の閾値よりも小さい第5の閾値以下および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値よりも小さい第6の閾値以下になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度に切り替える速度変更手段を有することを特徴とする光ネットワーク終端装置(ONU)。
【請求項2】
1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントまたはポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光ネットワーク終端装置(ONU)であって、
前記OLTに送信するデータを一時的に格納するキューのキュー長および/または該キューに流入するデータの流入速度および/または該キューに流入するデータの流入加速度を推定し、
通信速度が第1の速度の状態において、前記キュー長が第7の閾値以上および/または前記流入速度が第8の閾値以上および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第9の閾値以上になった場合には、速度変更待機メッセージをOLTへ送信し、OLTからの準備完了応答を受信した後に、前記キュー長が第1の閾値以上および/または前記流入速度が第2の閾値以上および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値以上になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度よりも速い第2の速度に切り替え、
通信速度が第2の速度の状態において、前記キュー長が第7の閾値よりも小さい第10の閾値以下および/または前記流入速度が第8の閾値よりも小さい第11の閾値以下および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第9の閾値よりも小さい第12の閾値以下になった場合には、速度変更待機メッセージをOLTへ送信し、OLTからの準備完了応答を受信した後に、前記キュー長が第1の閾値よりも小さい第4の閾値以下および/または前記流入速度が第2の閾値よりも小さい第5の閾値以下および/または前記キュー長と前記流入速度と前記流入加速度の関数で表される物理量が第3の閾値よりも小さい第6の閾値以下になった場合には、速度変更メッセージをOLTへ送信し、OLTからの変更確認応答の受信を契機に通信速度を、第1の速度に切り替える速度変更手段を有することを特徴とする光ネットワーク終端装置(ONU)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ネットワーク終端装置(ONU)において、
前記変更確認応答の受信後、未使用の速度の信号処理手段を休止させる機能休止手段を有することを特徴とする光ネットワーク終端装置(ONU)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ネットワーク終端装置(ONU)において、
前記速度変更メッセージを送信してから前記変更確認応答を受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、
前記変更確認応答の受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開することを特徴とする光ネットワーク終端装置(ONU)。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ネットワーク終端装置(ONU)において、
前記変更確認応答の受信を契機としてONUに蓄積したデータ量をOLTへ報告メッセージによって報告することを特徴とする光ネットワーク終端装置(ONU)。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ネットワーク終端装置(ONU)において、
前記速度変更メッセージを送信してから、ONUの割当帯域を通知する帯域割当メッセージを受信するまでの間、OLTへのデータ送信を一時的に停止して、OLTへ送信するデータを蓄積し、
前記帯域割当メッセージの受信を契機としてOLTへのデータ送信を再開することを特徴とする光ネットワーク終端装置(ONU)。
【請求項7】
1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、
前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段を有することを特徴とする光加入者線終端装置(OLT)。
【請求項8】
1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、
前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、該ONUとの通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段と、
ONUがONUのキューに蓄積されたデータ量をOLTに報告するための帯域をONUに割り当て、前記変更確認応答に割当帯域を含める帯域割当手段と、
を有することを特徴とする光加入者線終端装置(OLT)。
【請求項9】
1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、
前記ONUから速度変更待機メッセージを受信した場合には、指定された速度の信号処理手段を起動し、起動が完了した後に準備完了応答をONUへ送信し、
準備完了応答を送信した後に前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段を有することを特徴とする光加入者線終端装置(OLT)。
【請求項10】
1つの光加入者線終端装置(OLT)が光ネットワーク終端装置(ONU)と光ファイバ伝送路を介してポイントツーマルチポイントの通信を行う光ネットワークにおける光加入者線終端装置(OLT)であって、
前記ONUから速度変更待機メッセージを受信した場合には、指定された速度の信号処理手段を起動し、起動が完了した後に準備完了応答をONUへ送信し、
準備完了応答を送信した後に前記ONUから速度変更メッセージを受信した場合には、該ONUとの通信速度を指定された速度に切り替え、切り替えが完了した後に変更確認応答をONUへ送信する速度変更手段と、
ONUがONUのキューに蓄積されたデータ量をOLTに報告するための帯域をONUに割り当て、前記変更確認応答に割当帯域を含める帯域割当手段と、
を有することを特徴とする光加入者線終端装置(OLT)。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1項に記載の光加入者線終端装置(OLT)において、
接続されているすべてのONUが使用していない通信速度の信号処理手段を休止させる機能休止手段を有することを特徴とする光加入者線終端装置(OLT)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−296234(P2009−296234A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146985(P2008−146985)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】