説明

光パケット信号伝送装置およびWDM光通信ネットワーク

【課題】WDM光パケット信号の回線専有時間を短縮し、該WDM光パケット信号の効率的なバースト伝送を実現する。
【解決手段】クライアント信号を分解して得た複数のデータ信号を、波長の異なる発光器に与えて光パケット信号に変換し、該各波長の光パケット信号を波長多重してネットワーク側に送信する送信ユニットについて、各発光器に与えられるデータ信号を個別に遅延させる複数のデータ遅延回路を設けておき、運用開始前に、テスト信号を各データ遅延回路に順番に与え、該データ遅延回路の遅延量を段階的に変化させながら対応する発光器から出力される光パケット信号の一部をモニタ光として取り出し、該モニタ光と参照光パルスの位相比較を行って、光位相差が上限値より小さくなる遅延量を当該データ遅延回路に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)方式により光パケット信号を送信することが可能な光パケット信号伝送装置、および、それを用いて構築されるWDM光通信ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のWDM光通信システムの構成例を示す図である。この従来のWDM光通信ネットワークは、一対のWDM伝送路4A,4Bにより相互に接続された2つの光ノード1,1’を備え、波長の異なる複数の光信号を合波したWDM光が各光ノード1,1’の間で双方向に伝送される。
【0003】
光ノード1は、例えば、互いに異なる波長λ1〜λnに対応した複数のトランスポンダ1−1,1−2,…1−nと、各トランスポンダ1−1〜1−nから送信される光信号を合波してWDM伝送路4Aに出力する波長多重装置2Aと、WDM伝送路4Bを伝搬したWDM光を各波長λ1〜λnの光信号に分波し、該各光信号を波長の対応するトランスポンダ1−1〜1−nに与える波長分離装置3Bと、を有する。また、光ノード1’は、各波長λ1〜λnに対応した複数のトランスポンダ1−1’,1−2’,…1−n’と、各トランスポンダ1−1’〜1−n’から送信される光信号を合波してWDM伝送路4Bに出力する波長多重装置2Bと、WDM伝送路4Aを伝搬したWDM光を各波長λ1〜λnの光信号に分波し、該各光信号を波長の対応するトランスポンダ1−1’〜1−n’に与える波長分離装置3Aと、を有する。
【0004】
光ノード1では、クライアント側から送られてくる光パケット信号SCLが各トランスポンダ1−1〜1−nに与えられる。各トランスポンダ1−1〜1−nでは、クライアント側からの光パケット信号SCLが受光器(O/E)11で電気信号に変換され後、該電気信号がフレーマ12によりOTN(Optical Transport Network)等のフレーム構造に対応させてマッピング処理される。フレーマ12で処理された電気信号は、発光器(E/O)13で狭帯域波長の光信号に変換された後、該光信号が波長多重装置2Aに送られる。波長多重装置2Aでは、各トランスポンダ1−1〜1−nの発光器13から出力される各波長λ1〜λnの光信号が合波されてWDM光sNEが生成され、該WDM光sNEがネットワーク側のWDM伝送路4Aを通って光ノード1’に送信される。
【0005】
光ノード1’では、WDM伝送路4Aを伝送されたWDM光sNEが波長分離装置3Aで各波長λ1〜λnの光信号に分離され、該各光信号が波長の対応するトランスポンダ1−1’〜1−n’にそれぞれ与えられる。各トランスポンダ1−1’〜1−n’では、波長分離装置3Aからの光信号が受光器(O/E)14で電気信号に変換され、該電気信号がフレーマ12によりデマッピング処理される。フレーマ12でデマッピングされた電気信号は、発光器(E/O)15で所要波長の光パケット信号SCLに変換されてクライアント側に送信される。なお、2つの光ノード1,1’の間では、上記のようなWDM伝送路4Aを介した光ノード1から光ノード1’へのWDM光の伝送と同様にして、光ノード1’から光ノード1への逆方向のWDM光の伝送がWDM伝送路4Bを介して行われる。
【0006】
上記図1に例示したような従来のWDM光通信システムでは、クライアント側からの光パケット信号SCLの有無に関わらず、各トランスポンダに割り当てられた波長がネットワーク側のWDM回線のチャネルを常時専有することになる。すなわち、クライアント側から送られてくる個々の光パケット信号SCLに対応させて、ネットワーク側を伝送されるWDM光の波長チャネルが固定的に設定されているため、各トランスポンダに対してクライアント側からの光パケット信号SCLがバースト的に送られてくるような場合、各トランスポンダは、クライアント側からの光パケットを受けている期間に所定波長の光信号をネットワーク側に送信し、クライアント側からの光パケットを受けていない期間にはネットワーク側への光信号の送信動作を停止している。このようなネットワーク側でのWDM光の伝送においては回線効率の低下が問題になる。
【0007】
上記の問題に対処可能な従来技術としては、例えば図2に示すように、光パケットスイッチ(Optical Packet Switch:OPS)を利用してWDM光パケット信号のバースト伝送を行うネットワーク構成がある(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【0008】
具体的に、図2のネットワーク構成では、クライアント側からトランスポンダ5に与えられた光パケット信号SCLが、受光器(O/E)51で電気信号に変換された後、パケット分解回路52で複数のデータ信号に分解される。パケット分解回路52で分解された各データ信号は、互いに異なる出力波長λm〜λm+nを有する発光器(E/O)53により光に変換されて光パケット多重装置54に与えられる。光パケット多重装置54には、パケット分解回路52から出力される、宛先情報やノード切替情報を示すラベル信号を発光器53で光に変換した波長λkの光ラベルも与えられており、波長λm〜λm+nの光パケット信号および波長λkの光ラベルを波長多重したWDM光パケット信号SNEが光パケット多重装置54から出力される。該WDM光パケット信号SNEは、時分割多重装置6Aにより図示を省略した他のトランスポンダからのWDM光パケット信号と時分割多重されて、ネットワーク側のWDM伝送路7Aに送信される。
【0009】
図3は、クライアント側からの光パケット信号SCLと、各波長λm〜λm+nの光パケット信号および波長λkの光ラベルとの対応関係の一例を示した図である。この例では、クライアント側からの光パケット信号SCLの連続データ1−1〜1−10および1−11〜1−Xが、8つの光波長λm〜λm+7に対応させて分解(パラレル化)されている。なお、図3中の符号Lはラベル情報が格納される領域を表し、符号Eは空のデータ領域を表している。
【0010】
WDM伝送路7Aを伝送されたWDM光パケット信号SNEは、WDM伝送路7A上に配置された光ノード切替制御器8Aに与えられる。光ノード切替制御器8Aでは、光分岐器81によりWDM光パケット信号SNEの一部が分岐されてラベル制御回路82に与えられる。ラベル制御回路82では、光分岐器81からの分岐光より波長λkの光ラベルが抽出され、該光ラベルを光電変換して再生したラベル信号に含まれるノード切替情報を基に、光分岐器81の後段に接続された光パケットスイッチ(OPS)83の動作を制御する信号COPSが生成される(図3の最下段に示した信号波形を参照)。光パケットスイッチ83では、ラベル制御回路82からの制御信号COPSに従って、光分岐器81を通過したWDM光パケット信号SNEをトランスポンダ5’側に出力するか、下流のWDM伝送路7A側に出力するかの切り替えが行われる。
【0011】
トランスポンダ5’では、光ノード切替制御器8Aから出力されるWDM光パケット信号SNEが光パケット分離装置55により各波長λm〜λm+nの光パケット信号および波長λkの光ラベルに分離された後、各波長λm〜λm+n,λkにそれぞれ対応した受光器(O/E)56で電気信号に変換される。各波長λm〜λm+nに対応した受光器56からそれぞれ出力されるデータ信号、および、波長λkに対応した受光器56から出力されるラベル信号は、パケット組立回路57によりシリアル化された後に発光器(E/O)58で光に変換されて、当該光パケット信号SCLがクライアント側に送出される。
【0012】
なお、2つのトランスポンダ5,5’の間では、上記のようなWDM伝送路7Aおよび光ノード切替制御器8Aを介したトランスポンダ5からトランスポンダ5’への光パケット信号の伝送と同様にして、トランスポンダ5’からトランスポンダ5への逆方向の光パケット信号の伝送がWDM伝送路7Bおよび光ノード切替制御器8Bを介して行われる。
【0013】
上記のように1つのクライアント信号を複数に分解して異なる波長に割り当てることで光パケット信号を生成し、当該光パケット信号に対して光ラベルを付与したWDM光パケット信号を生成してネットワーク側に送信すると共に、上記光ラベルに従ってWDMネットワーク上の光パケットスイッチを制御してノードの切り替えを行うことで、WDM光パケット信号を効率的にバースト伝送することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−261691号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】古川英昭、外2名,「10ギガビットイーサネット/80ギガビット光パケット変換器を用いたIP over光パケットスイッチネットワーク」,信学技報,電子情報通信学会,2007年8月,vol.107,no.188,PN2007−13,p.21−26(論文名の「イーサネット」は登録商標)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記のようなWDM光パケット信号をバースト伝送する従来技術については、トランスポンダ5,5’の送信側において、クライアント信号を分解して得た各データ信号を各波長λm〜λm+nの光バースト信号に変換する際に、波長間で変換時間にバラツキが発生する可能性がある。この変換時間のバラツキが増大すると、WDM伝送路7A,7Bを伝送されるWDM光パケット信号が回線を専有する時間が長くなるため、パケット密度が高い状態では回線効率の改善効果が十分に得られないという課題がある。
【0017】
具体的には、例えば図4に示すように、クライアント側からの光パケット信号SCLの連続データ1−1〜1−10をパケット分解回路52で8つに分解し、該分解された各データを各発光器53で光に変換して各波長λm〜λm+7の光パケット信号を生成する場合を考えると、各波長λm〜λm+7の発光器53における変換時間のバラツキに起因して、各波長λm〜λm+7の光パケット信号の相対的な位置(遅延時間)に差異が生じる。図4の例では、各波長λm〜λm+7の光パケット信号のうちで、波長λm+4の光パケット信号が最小遅延、波長λm+1の光パケット信号が最大遅延になっており、波長λm+4の光パケット信号の伝送開始から波長λm+1の光パケット信号の伝送終了までの時間について、当該WDM光パケット信号が回線を専有してしまう。つまり、各波長間の最小遅延と最大遅延の差が大きくなる程、WDM光パケット信号が回線を専有する時間が長くなって回線効率が低下することになる。
【0018】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、回線専有時間の短縮を図ることでWDM光パケット信号を効率的にバースト伝送できる光パケット信号伝送装置およびWDM光通信ネットワークを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため本発明は、クライアント側から受けた光パケット信号に含まれる連続データを分解して得た複数のデータ信号を、互いに異なる波長を有する複数の発光器にそれぞれ与えて光パケット信号に変換し、該変換された各波長の光パケット信号を波長多重して生成したWDM光パケット信号をネットワーク側に送信する送信ユニットを備えた光パケット信号伝送装置を提供する。この光パケット信号伝送装置の一態様は、前記送信ユニットが、(A)可変の遅延量をそれぞれ有し、前記各発光器に与えられる前記各データ信号を個別に遅延させる複数のデータ遅延回路と、(B)前記各発光器から出力される各波長の光パケット信号の一部をモニタ光として分岐する複数の光分岐器と、(C)前記各光分岐器で分岐される各波長のモニタ光のうちのいずれか1つを選択する光スイッチと、(D)前記各データ遅延回路における遅延量の調整に使用するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と、(E)前記テスト信号生成回路で生成されるテスト信号を基に参照光パルスを生成する参照光パルス生成回路と、(F)前記光スイッチで選択されるモニタ光、および、前記参照光パルス生成回路で生成される参照光パルスが入力され、該各入力光の位相を比較して相対的な光位相差を検出する光位相比較器と、(G)前記光パケット信号伝送装置の運用開始前に、前記各データ信号に代えて前記テスト信号生成回路で生成されるテスト信号を前記各データ遅延回路に順番に与え、かつ、該テスト信号が与えられる調整対象のデータ遅延回路に対応させて前記光スイッチで選択されるモニタ光を切り替え、前記調整対象のデータ遅延回路における遅延量を段階的に変化させながら、前記光位相比較器により、前記光スイッチで選択されるモニタ光および前記参照光パルスの相対的な光位相差の検出を行い、該検出結果を基に前記光位相差が予め定めた上限値よりも小さくなる遅延量を判定し、該判定結果に従って、前記調整対象のデータ遅延回路における運用開始後の遅延量を設定する制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
上記のような光パケット信号伝送装置によれば、WDM光パケット信号の回線専有時間を短縮することができ、該WDM光パケット信号を効率的にバースト伝送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のWDM光通信システムの構成例を示す図である。
【図2】WDM光パケット信号のバースト伝送を行う従来のネットワーク構成の一例を示す図である。
【図3】図2のネットワーク構成におけるクライアント側からの光パケット信号と、各波長の光パケット信号および光ラベルとの対応関係の一例を示す図である。
【図4】図2のネットワーク構成における波長間の遅延バラツキを説明する図である。
【図5】本発明による光パケット信号伝送装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図6】図5の光パケット信号伝送装置を用いて構築したWDM光通信ネットワークの主要な部分の構成例を示すブロック図である。
【図7】上記実施形態の送信ユニットにおける遅延量の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】上記実施形態の位相判定回路における遅延量の判定処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図5は、光パケット信号伝送装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。また、図6は、図5の光パケット信号伝送装置を用いて構築したWDM光通信ネットワークの主要な部分の構成例を示すブロック図である。
【0023】
図5において、光パケット信号伝送装置100は、クライアント側から受けた光パケット信号SCLを、ネットワーク側に送信するWDM光パケット信号SNEに変換する送信ユニット100Tと、ネットワーク側から受信したWDM光パケット信号SNEを、クライアント側に送る光パケット信号SCLに変換する受信ユニット100Rとを備える。
【0024】
この光パケット信号伝送装置100は、上述の図2に示した従来のネットワーク構成におけるトランスポンダ5,5’に相当するものであり、図3に示すように、複数の光パケット信号伝送装置100,100’の間を、従来と同様な時分割多重装置6A,6B、WDM伝送路7A,7Bおよび光ノード切替制御器8A,8Bを用いて互いに接続することによって、WDM光パケット信号をバースト伝送可能なWDM光通信ネットワークが構築される。
【0025】
具体的に、上記光パケット信号伝送装置100の送信ユニット100T(図5)は、クライアント側から送られてくる光パケット信号SCLを受光器(O/E)110で受ける。該受光器110は、クライアント側からの光パケット信号SCLを電気信号に変換し、該電気信号(以下、「クライアント信号」と呼ぶ場合がある)をパケット分解回路120に出力する。
【0026】
パケット分解回路120は、受光器110から出力されるクライアント信号に含まれる連続データを、複数の波長λ1〜λ8に対応させて分解(パラレル化)する。このパケット分解回路120で分解された各データ信号は、各波長λ1〜λ8に対応したデータ遅延回路210−1〜210−8にそれぞれ送られる。また、パケット分解回路120は、上記各データ信号に関する宛先情報およびノード切替情報を示すラベル信号を生成し、該ラベル信号を後述する波長λ9の発光器(E/O)130−9に出力する。
【0027】
各データ遅延回路210−1〜210−8は、それぞれ、第1セレクタ(SEL)211、複数の遅延バッファ212A〜212Dおよび第2セレクタ(SEL)213を有する。なお、図5にはデータ遅延回路210−1についてのみ詳細な構成が示してあるが、他のデータ遅延回路210−2〜210−8の構成もデータ遅延回路210−1と同様である。
【0028】
第1セレクタ211は、2つの入力端子および1つの出力端子を有し、一方の入力端子に対してパケット分解回路120から出力されるデータ信号が与えられ、他方の入力端子に対して後述するテスト信号生成回路240から出力されるテスト信号が与えられる。この第1セレクタ211は、後述する調整制御回路320からの出力信号に従って、各入力端子に与えられるデータ信号およびテスト信号のいずれかを選択し、該選択された信号を出力端子から各遅延バッファ212A〜212Dおよび第2セレクタ213にそれぞれ出力する。
【0029】
各遅延バッファ212A〜212Dは、互いに異なる遅延量を有し、第1セレクタ211からの出力信号を各々の遅延量に応じて遅延させて第2セレクタ213に出力する。なお、第1,2セレクタ211,213の間には、並列配置された遅延バッファ212A〜212Dをそれぞれ含む4本の経路の他に、遅延バッファの無い経路も設けてある。
【0030】
第2セレクタ213は、第1セレクタ211からの出力信号(遅延バッファ無し)および各遅延バッファ212A〜212Dからの出力信号がそれぞれ入力され、後述する遅延量選択回路320から出力される信号に従って、上記複数の入力信号のうちのいずれか1つを選択して出力する。各データ遅延回路210−1〜210−8の第2セレクタ213から出力される信号は、各データ遅延回路210−1〜210−8の出力端に接続された各発光器(E/O)130−1〜130−8にそれぞれ与えられる。
【0031】
各発光器130−1〜130−8は、互いに異なる狭帯域波長λ1〜λ8を有し、各データ遅延回路210−1〜210−8からの出力信号を光パケット信号に変換する。各発光器130−1〜130−9で変換された各波長λ1〜λ8の光パケット信号は、各々の波長に対応した光分岐器220−1〜220−8を介して、光パケット多重装置140に与えられる。なお、前述したパケット分解回路120からのラベル信号が与えられる発光器130−9は、上記各波長λ1〜λ8とは異なる狭帯域波長λ9を有し、ラベル信号を波長λ9の光ラベルに変換して、該光ラベルを光パケット多重装置140に出力する。
【0032】
光パケット多重装置140は、各波長λ1〜λ8の光パケット信号および波長λ9の光ラベルを波長多重することにより、光ラベルを含んだWDM光パケット信号SNEを生成し、該WDM光パケット信号SNEを時分割多重装置6A(図6)に送る。
【0033】
各光分岐器220−1〜220−8は、各発光器130−1〜130−8から光パケット多重装置140に送られる光パケット信号の一部をモニタ光SMONとしてそれぞれ分岐し、該各モニタ光SMONを光スイッチ230に与える。
【0034】
光スイッチ230は、調整制御回路310から出力される制御信号に従って、各光分岐器220−1〜220−8で分岐されたモニタ光SMONのうちのいずれか1つを選択し、該選択したモニタ光SMONを光位相比較器260に出力する。光位相比較器260には、光スイッチ230で選択されたモニタ光SMONの他に、テスト信号生成回路240から出力されるテスト信号を用いて参照光パルス生成回路250で生成される参照光パルスSREFが与えられる。
【0035】
テスト信号生成回路240は、調整制御回路310からの出力信号に従って起動し、各波長λ1〜λ8に対応した遅延量の調整に使用するテスト信号を生成する。このテスト信号は、パケット分解回路120で分解された各データ信号と同等のビットレートを有し、予め定めたテストパターンに従ってビット値が変化する電気信号である。テスト信号生成回路240で生成されたテスト信号は、各データ遅延回路210−1〜210−8内の第1セレクタ211と、参照光パルス生成回路250とにそれぞれ出力される。
【0036】
参照光パルス生成回路250は、テスト信号生成回路240から出力されるテスト信号を、送信ユニット100T内の回路構成を考慮して事前に設定した想定遅延量だけ遅延させ、該遅延後のテスト信号を光に変換することで参照光パルスSREFを生成し、該参照光パルスSREFを光位相比較器260に与える。
【0037】
光位相比較器260は、光スイッチ230で選択されたモニタ光SMONと、参照光パルス生成回路250で生成された参照光パルスSREFとが入力され、該各入力光の位相を比較して相対的な光位相差を検出し、該光位相差に応じてレベルが変化する光を出力する。この光位相比較器260は、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO:LN)等の電気光学効果を有する基板を用いた光変調器を利用して実現することができる。ただし、光位相比較器260の実現手段が上記に限定されることを意味するものではなく、光位相を比較可能な公知の光デバイスを適用することが可能である。
【0038】
光検出器(PD)270は、光位相比較器260から出力される光のパワーを検出し、該光パワーに応じて電流若しくは電圧レベルが変化する電気信号を出力する。この光検出器270の出力にはメモリ280が接続されており、該メモリ280には、光検出器270から出力される電気信号のレベル変化が、その時の遅延量の設定に関する情報と伴に逐次記録される。
【0039】
位相判定回路290は、メモリ280に記録された情報を基に、モニタ光SMONと参照光パルスSREFの光位相差が予め定めた上限値よりも小さくなる遅延量を判定し、該判定結果を示す信号を調整制御回路310に出力する。
【0040】
調整制御回路310は、後で詳しく説明する遅延量の制御シーケンスに従って、光スイッチ230、テスト信号生成回路240、各データ遅延回路210−1〜210−8内の第1セレクタ211および遅延量選択回路320の動作をそれぞれ制御する。
【0041】
遅延量選択回路320は、調整制御回路310により指示される遅延量に応じて、各データ遅延回路210−1〜210−8内の第2セレクタ213で選択する経路の切り替えを行う。この遅延量選択回路320により選択される遅延量に関する情報はメモリ280に伝えられ、光検出器270の検出結果をメモリ280に記録する際に参照される。
【0042】
図5の下側に示した受信ユニット100Rは、ネットワーク側のWDM伝送路7A,7B上に配置された光ノード切替制御器8A,8B(図6)から送られてくるWDM光パケット信号SNEを受信し、該WDM光パケット信号SNEを光パケット分離装置150に与える。光パケット分離装置150は、受信したWDM光パケット信号SNEを、各波長λ1〜λ8の光パケット信号および波長λ9の光ラベルに分離して、各々に対応する受光器(O/E)160−1〜160−9にそれぞれ出力する。
【0043】
各受光器160−1〜160−8は、光パケット分離装置150で分離された各波長λ1〜λ8の光パケット信号を電気のデータ信号にそれぞれ変換して、該データ信号をパケット組立回路170に出力する。また、受光器160−9は、光パケット分離装置150で分離された波長λ9の光ラベルを電気のラベル信号に変換して、該ラベル信号をパケット組立回路170に出力する。
【0044】
パケット組立回路170は、各受光器160−1〜160−8から出力されるデータ信号および受光器160−9から出力されるラベル信号をシリアル化することでクライアント信号を再生し、該クライアント信号を発光器(E/O)180に出力する。発光器180は、パケット組立回路170から出力されるクライアント信号を光に変換することで、クライアント側に送る光パケット信号SCLを生成する。
【0045】
次に、上記のような光パケット信号伝送装置100の動作について、送信ユニット100Tでの各波長に対応した遅延量の制御動作を中心に詳しく説明する。
送信ユニット100Tでは、ネットワーク側に送信するWDM光パケット信号SNEの各波長λ1〜λ8間における遅延バラツキを抑えるため、運用の開始前に、テスト信号を用いた遅延量の制御が各波長λ1〜λ8について順次行われる。
【0046】
図7は、上記遅延量の制御手順の一例を示すフローチャートである。
まず、図7のステップ110(図中S110で示し、以下同様とする)において、調整制御回路310が、波長λ1〜λ8のうちのいずれか1つの波長を遅延量の調整対象として設定する。ここでは、遅延量の調整対象に設定される波長をλi(ただし、i=1〜8)として説明を行う。
【0047】
ステップ120では、設定された波長λiに従って、調整制御回路310が光スイッチ230を制御し、波長λiに対応したモニタ光SMONが光スイッチ230から出力されるようにする。また、ステップ130では、調整制御回路310が波長λiに対応するデータ遅延回路210−i内の第1セレクタ211を制御し、該第1セレクタ211においてテスト信号が選択出力されるようにする。
【0048】
続いて、ステップ140では、データ遅延回路210−iにおける遅延量を指示する信号が、調整制御回路310から遅延量選択回路320に与えられる。この遅延量の指示に従って、遅延量選択回路320は、データ遅延回路210−i内の第2セレクタ213を制御し、指示された遅延量に対応する経路が選択されるようにする。データ遅延回路210−iでの遅延量は、第2セレクタ213により選択される経路上に遅延バッファ212A〜212Dのうちのどれがあるかによって異なる。ここでは例えば、調整の最初は遅延バッファ無し(遅延量=0)の経路を選択し、その後、各遅延バッファ212A〜212Dが配置された経路を順次選択するようにする。
【0049】
データ遅延回路210−i内の第2セレクタ213の設定が終わると、ステップ150において、テスト信号生成回路240を起動させる信号が調整制御回路310からテスト信号生成回路240に出力される。これにより、テスト信号生成回路240で生成されたテスト信号が、各データ遅延回路210−1〜210−8および参照光パルス生成回路250にそれぞれ与えられる。
【0050】
データ遅延回路210−iに与えられたテスト信号は、第1セレクタ211を通過した後に、遅延バッファ無しの経路および各遅延バッファ212A〜212Dが配置された経路をそれぞれ通って第2セレクタ213に与えられ、該各経路を通過したテスト信号のうちのいずれか1つが選択されて、第2セレクタ213から発光器130−iに送られる。そして、発光器130−iでは、データ遅延回路210−iからのテスト信号が光に変換されることで波長λiの光パケット信号が生成される。該波長λiの光パケット信号は、その一部がモニタ光SMONとして光分岐器220−iで分岐され、該モニタ光SMONが光スイッチ230を介して光位相比較器260に与えられる。また、参照光パルス生成回路250に与えられたテスト信号は、想定遅延量だけ遅延された後に光に変換されることにより参照光パルスSREFとされて光位相比較器260に与えられる。
【0051】
続いて、ステップ160では、光位相比較器260において、モニタ光SMONと参照光パルスSREFの位相比較が行われ、当該光位相差に応じてレベルが変化する光が光位相比較器260から光検出器270に出力される。そして、ステップ170では、光検出器270において、光位相比較器260からの出力光のパワーが検出され、該検出結果がその時の遅延量の設定と伴にメモリ280に記録される。
【0052】
光検出器270の検出結果のメモリ280への記録が完了すると、ステップ180において、データ遅延回路210−iに設定可能な全ての遅延量について光位相の比較が行われたか否かが判定される。光位相の比較が行われていない遅延量が残っている場合、ステップ140に戻って、他の遅延量が選択されるようにデータ遅延回路210−i内の第2セレクタ213の切替が行われ、前述したステップ150〜ステップ180の処理が繰り返される。
【0053】
データ遅延回路210−iに設定可能な全ての遅延量についての光位相比較が完了すると、ステップ190に進み、位相判定回路290において、メモリ280の記録情報に基づき、モニタ光SMONと参照光パルスSREFの光位相差が予め定めた上限値よりも小さくなる遅延量の判定が行われる。
【0054】
ここで、上記位相判定回路290における遅延量の判定処理について、図8に示す具体例を参照しながら詳しく説明する。
図8の(A)は、テスト信号生成回路240から出力されるテスト信号のビットパターンおよび信号波形の一例を示している。また、図8の(B)は、上記のようなテスト信号を用いて参照光パルス生成回路250で生成される参照光パルスSREFのビットパターンおよび光波形を示している。参照光パルスSREFの光位相は、テスト信号の位相に対して想定遅延量だけ遅れている様子が分かる。
【0055】
データ遅延回路210−iで遅延バッファ無しの経路が選択されている場合に、該データ遅延回路210−iから出力されるテスト信号を発光器130−iで光に変換して、その一部を光分岐器220−iで取り出したモニタ光SMONは、図8の(C)に示すようなビットパターンおよび光波形になる。テスト信号の位相に対してモニタ光SMONの光位相が遅延しているのは、発光器130−iでの電気/光変換に要する時間や、光分岐器220−iおよび光スイッチ230を含むフィードバック経路での遅延が要因である。
【0056】
図8の(B)に示した参照光パルスSREFの光位相と、図8の(C)に示したモニタ光SMONの光位相とを光位相比較器260で比較し、該光位相比較器260の出力光のパワーを光検出器270で検出することにより、該光検出器270からは、図8の(D)のようなレベル変化を示す電気信号が出力される。ただし、ここでは光位相比較器260の特性として、参照光パルスSREFが「0」レベルでモニタ光SMONが「0」レベルの場合に、光位相比較器260の出力光パワーが「中間レベル」となり、参照光パルスSREFが「1」レベルでモニタ光SMONが「0」レベルの場合に、光位相比較器260の出力光パワーが「低レベル」となり、参照光パルスSREFが「0」レベルでモニタ光SMONが「1」レベルの場合に、光位相比較器260の出力光パワーが「高レベル」となり、参照光パルスSREFが「1」レベルでモニタ光SMONが「1」レベルの場合に、光位相比較器260の出力光パワーが「低レベル」となるものを想定している。なお、光位相比較器260の特性は、上記の一例に限定されるものではなく、適用される光位相比較器の種類に応じた特性に従うものとする。
【0057】
続いて、データ遅延回路210−iの第2セレクタ213が切り替えられ、遅延バッファ212Aを含む経路が選択された場合のモニタ光SMONは、図8の(E)に示すようなビットパターンおよび光波形になる。このモニタ光SMONの光位相と、図8の(B)に示した参照光パルスSREFの光位相とを光位相比較器260で比較したときに得られる光検出器270の出力信号は、図8の(F)のようなレベル変化を示すようになる。この光検出器270の出力信号は、前述した遅延バッファ無しの場合と同様に、低レベル、中間レベルおよび高レベルの間で変化している。
【0058】
さらに、データ遅延回路210−iの第2セレクタ213が切り替えられ、遅延バッファ212Aよりも遅延量の多い遅延バッファ212Bを含む経路が選択された場合のモニタ光SMONは、図8の(G)に示すようなビットパターンおよび光波形になる。このモニタ光SMONの光位相は、図8の(B)に示した参照光パルスSREFの光位相と揃っており、これらを光位相比較器260で比較したときに得られる光検出器270の出力信号は、図8の(H)のようなレベル変化を示すようになる。この光検出器270の出力信号は、前述した遅延バッファ212Aの場合とは異なり、低レベルおよび中間レベルの間で変化し、高レベルにはなっていない。つまり、参照光パルスSREFの光位相に対して、モニタ光SMONの光位相が揃うような遅延量が選択された場合に、光検出器270の出力レベルが最も低くなる。
【0059】
なお、図8には示していないが、遅延バッファ212Bよりも遅延量の多い他の遅延バッファ212C,212Dを含む各経路が選択された場合には、モニタ光SMONの光位相が参照光パルスSREFの光位相より遅れるようになるため、光検出器270の出力信号は、低レベル、中間レベルおよび高レベルの間で変化することになる。
【0060】
したがって、前述したステップ190において、位相判定回路290がメモリ280の記録情報を参照し、光検出器270の出力信号が高レベルにならないデータが存在していれば、その時の遅延量を選択することで最適な位相状態が得られると判定する。また、高レベルにならないデータが存在しない場合には、光検出器270の出力信号が高レベルになる時間が最も短いデータを特定し、その時の遅延量を最適と判定すればよい。つまり、遅延バラツキの許容範囲が予め決まっている場合には、その許容範囲に応じて光検出器270の出力信号が高レベルになる時間の閾値を定めておき、メモリ280の記録情報の中で、光検出器270の出力信号が高レベルになる時間が閾値より短くなるデータを抽出することにより、遅延バラツキの許容範囲に抑えることが可能な遅延量を選択できるようになる。このとき、複数のデータが抽出されたならば、高レベルの時間が最短になるデータに対応した遅延量を選択するのが望ましい。
【0061】
上記のようにして位相判定回路290での遅延量の判定処理が完了すると、図7のステップ200において、位相判定回路290の判定結果が調整制御回路310に伝えられ、調整制御回路310が遅延量選択回路320に対して判定された遅延量の指示を行う。これにより、データ遅延回路210−i内の第2セレクタ213で選択する経路(遅延バッファ)が固定される。
【0062】
続いて、ステップ210では、調整制御回路310がデータ遅延回路210−i内の第1セレクタ211を制御し、パケット分解回路120から出力されるデータ信号が第1セレクタ211で選択されるようにして、波長λiについての遅延量の調整を終了する。
【0063】
そして、ステップ220において、全ての波長λ1〜λ8について遅延量の調整が行われたか否かの判定が行われ、遅延量の調整が行われていない波長が残っている場合には、ステップ110に戻って上述した一連の処理が繰り返し実行される。これにより、各波長λ1〜λ8に対応したデータ遅延回路210−1〜210−8における遅延量が、参照光パルスSREFを基準にして最適化されるようになる。
【0064】
上記のような送信ユニット100Tでの各波長λ1〜λ8に対応した遅延量の制御が運用開始前に実施されることにより、各波長λ1〜λ8の発光器130−1〜130−8における電気/光変換に要する時間にバラツキが生じていても、そのバラツキが各データ遅延回路210−1〜210−8に個別設定された遅延量により低減されるようになる。これにより、光パケット多重装置140で各波長λ1〜λ8の光パケット信号を波長多重して生成されるWDM光パケット信号SNEがネットワーク側の回線を専有する時間を短縮することが可能になる。
【0065】
次に、運用の開始後における光パケット信号伝送装置100の動作を説明する。ここでは、図6に示したネットワーク構成において、左側の光パケット信号伝送装置100の送信ユニット100TからWDM光パケット信号SNEを送信し、時分割多重装置6A、WDM伝送路7Aおよび光ノード切替制御器8Aを順に経由して、右側の光パケット信号伝送装置100’の受信ユニット100RでWDM光パケット信号SNEを受信する場合の動作を考える。
【0066】
光パケット信号伝送装置100の運用が開始され、クライアント側からの光パケット信号SCLが送信ユニット100T(図5)に与えられると、該光パケット信号SCLが受光器110で電気信号に変換された後、パケット分解回路120で各波長λ1〜λ8に対応する8つのデータ信号に分解される。パケット分解回路120で分解された各データ信号は、運用開始前に遅延量が最適化された各データ遅延回路210−1〜210−8にそれぞれ与えられて個別に遅延される。各データ遅延回路210−1〜210−8を通過したデータ信号は、各波長λ1〜λ8の発光器130−1〜130−8により光に変換され、各波長λ1〜λ8の光パケット信号が光パケット多重装置140に与えられる。
【0067】
この光パケット多重装置140には、パケット分解回路120から出力されるラベル信号を発光器130−9で光に変換した波長λ9の光ラベルも与えられており、波長λ1〜λ8の光パケット信号と、波長λ9の光ラベルとが波長多重されることで、光ラベルを含むWDM光パケット信号SNEが生成される。このWDM光パケット信号SNEは、送信ユニット100Tのネットワーク側に接続された時分割多重装置6A(図6)に与えられ、他の光パケット信号伝送装置の送信ユニットから出力されるWDM光パケット信号と時分割多重されて、ネットワーク側のWDM伝送路7Aに送信される。
【0068】
WDM伝送路7Aを伝送されたWDM光パケット信号SNEは、WDM伝送路7A上に配置された光ノード切替制御器8A(図6)に与えられ、光分岐器81により分岐されたWDM光パケット信号SNEの一部がラベル制御回路82に与えられる。ラベル制御回路82では、光分岐器81からの分岐光より波長λ9の光ラベルが抽出され、該光ラベルを光/電気変換して再生したラベル信号に含まれるノード切替情報を基に、光分岐器81の後段に接続された光パケットスイッチ(OPS)83の動作を制御する信号COPSが生成される。光パケットスイッチ83では、ラベル制御回路82からの制御信号COPSに従って、光分岐器81を通過したWDM光パケット信号SNEを、光パケット信号伝送装置100’の受信ユニット100Rに出力するか、下流のWDM伝送路7A側に出力するかの切り替えが行われる。
【0069】
光パケット信号伝送装置100’の受信ユニット100Rでは、光ノード切替制御器8Aから出力されるWDM光パケット信号SNEが光パケット分離装置150により各波長λ1〜λ8の光パケット信号および波長λ9の光ラベルに分離された後、各波長λ1〜λ9にそれぞれ対応した受光器160−1〜160−9で電気信号に変換される。各波長λ1〜λ8に対応した受光器160−1〜160−8からそれぞれ出力されるデータ信号、および、波長λ9に対応した受光器160−9から出力されるラベル信号は、パケット組立回路170によりシリアル化された後に発光器180で光に変換されて、当該光パケット信号SCLがクライアント側に送出される。
【0070】
上記のように本実施形態の光パケット信号伝送装置100,100’によれば、従来と比べて、回線専有時間の短縮されたWDM光パケット信号SNEをネットワーク側に送信することができるため、伝送光のパケット密度が高い状態であっても回線効率の低下を抑えることができ、WDM光パケット信号SNEを効率的にバースト伝送することが可能である。
【0071】
なお、上述した実施形態では、クライアント側からの光パケット信号の連続データをパケット分解回路120により波長λ1〜λ8に対応させて8つに分解(パラレル化)する一例を示したが、パケット分解回路120で分解されるデータ信号の数、言い換えると、ネットワーク側に送信するWDM光パケット信号に含まれるデータに対応した光波長の数は、上記の例に限定されるものではなく、任意に設定することが可能である。
【0072】
また、各データ遅延回路210−1〜210−8について、遅延バッファ無し、および、各遅延バッファ212A〜212Dの5通りの遅延量を設定可能な構成例を説明したが、データ遅延回路210−1〜210−8に設定可能な遅延量の種類は、遅延バラツキの程度や許容精度に応じて適宜に決めることが可能である。つまり、遅延量の異なる多数の遅延バッファを並列配置することで、広範囲の遅延バラツキに対応できる、若しくは、より高い精度で遅延バラツキを抑えることができるようになる。
【0073】
以上の実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
【0074】
(付記1) クライアント側から受けた光パケット信号に含まれる連続データを分解して得た複数のデータ信号を、互いに異なる波長を有する複数の発光器にそれぞれ与えて光パケット信号に変換し、該変換された各波長の光パケット信号を波長多重して生成したWDM光パケット信号をネットワーク側に送信する送信ユニットを備えた光パケット信号伝送装置であって、
前記送信ユニットは、
可変の遅延量をそれぞれ有し、前記各発光器に与えられる前記各データ信号を個別に遅延させる複数のデータ遅延回路と、
前記各発光器から出力される各波長の光パケット信号の一部をモニタ光として分岐する複数の光分岐器と、
前記各光分岐器で分岐される各波長のモニタ光のうちのいずれか1つを選択する光スイッチと、
前記各データ遅延回路における遅延量の調整に使用するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と、
前記テスト信号生成回路で生成されるテスト信号を基に参照光パルスを生成する参照光パルス生成回路と、
前記光スイッチで選択されるモニタ光、および、前記参照光パルス生成回路で生成される参照光パルスが入力され、該各入力光の位相を比較して相対的な光位相差を検出する光位相比較器と、
前記光パケット信号伝送装置の運用開始前に、前記各データ信号に代えて前記テスト信号生成回路で生成されるテスト信号を前記各データ遅延回路に順番に与え、かつ、該テスト信号が与えられる調整対象のデータ遅延回路に対応させて前記光スイッチで選択されるモニタ光を切り替え、前記調整対象のデータ遅延回路における遅延量を段階的に変化させながら、前記光位相比較器により、前記光スイッチで選択されるモニタ光および前記参照光パルスの相対的な光位相差の検出を行い、該検出結果を基に前記光位相差が予め定めた上限値よりも小さくなる遅延量を判定し、該判定結果に従って、前記調整対象のデータ遅延回路における運用開始後の遅延量を設定する制御回路と、
を備えたことを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【0075】
(付記2) 付記1に記載の光パケット信号伝送装置であって、
前記各データ遅延回路は、
前記データ信号および前記テスト信号が入力され、該各入力信号のうちのいずれか1つを選択して出力する第1セレクタと、
互いに異なる遅延量を有し、前記第1セレクタから出力される信号を各々の遅延量に応じて遅延させる複数の遅延バッファと、
前記第1セレクタから出力される信号および前記各遅延バッファを通過した信号が入力され、該各入力信号のうちのいずれか1つを選択して出力する第2セレクタと、を含み、
前記制御回路は、前記光パケット信号伝送装置の運用開始前に、前記各データ遅延回路の前記第1セレクタにおいて前記テスト信号が選択されるようにすると共に、前記第2セレクタで選択される信号を順に切り替えることで当該データ遅延回路における遅延量を段階的に変化させることを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【0076】
(付記3) 付記1または2に記載の光パケット信号伝送装置であって、
前記送信ユニットは、
クライアント側から受けた光パケット信号を電気信号に変換する受光器と、
前記受光器から出力される電気信号に含まれる連続データを分解して生成した複数のデータ信号を前記各データ遅延回路に出力すると共に、前記複数のデータ信号に関する宛先情報およびノード切替情報を示すラベル信号を生成するパケット分解回路と、
前記各発光器の波長とは異なる波長を有し、前記パケット分解回路で生成されるラベル信号を光に変換することで光ラベルを生成する光ラベル用発光器と、
前記各発光器から出力される各波長の光パケット信号および前記光ラベル用発光器から出力される光ラベルを波長多重することで、光ラベルを含んだWDM光パケット信号を生成する光パケット多重装置と、を備えたことを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【0077】
(付記4) 付記1〜3のいずれか1つに記載の光パケット信号伝送装置であって、
前記制御回路は、前記光位相比較器で検出される光位相差が最小になる遅延量を判定し、該判定結果に従って、前記調整対象のデータ遅延回路における運用開始後の遅延量を設定することを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【0078】
(付記5) 付記1〜4のいずれか1つに記載の光パケット信号伝送装置であって、
ネットワーク側から受信したWDM光パケット信号を、クライアント側へ送る光パケット信号に変換する受信ユニットを備えたことを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【0079】
(付記6) 付記5に記載の光パケット信号伝送装置であって、
前記受信ユニットは、
受信したWDM光パケット信号を波長に応じて分離する光パケット分離装置と、
前記光パケット分離装置で分離された各波長の光パケット信号を電気のデータ信号にそれぞれ変換する複数の受光器と、
前記各受光器から出力されるデータ信号をシリアル化してクライアント信号を生成するパケット組立回路と、
前記パケット組立回路から出力されるクライアント信号を光に変換して光パケット信号を生成し、該光パケット信号をクライアント側に送る発光器と、
を備えたことを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【0080】
(付記7) 付記1〜6のいずれか1つに記載の光パケット信号伝送装置を複数備えて構成されたことを特徴とするWDM光通信ネットワーク。
【符号の説明】
【0081】
100,100’…光パケット信号伝送装置
100T…送信ユニット
100R…受信ユニット
110,160−1〜160−9…受光器(O/E)
120…パケット分解回路
130−1〜130−9,180…発光器(E/O)
140…光パケット多重装置
150…光パケット分離装置
170…パケット組立回路
210−1〜210−8…データ遅延回路
220−1〜220−8…光分岐器
230…光スイッチ
240…テスト信号生成回路
250…参照光パルス生成回路
260…光位相比較器
270…光検出器(PD)
280…メモリ
290…位相判定回路
310…調整制御回路
320…遅延選択回路
6A,6B…時分割多重装置
7A,7B…WDM伝送路
8A,8B…光ノード切替制御器
81…光分岐器
82…ラベル制御回路
83…光パケットスイッチ(OPS)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント側から受けた光パケット信号に含まれる連続データを分解して得た複数のデータ信号を、互いに異なる波長を有する複数の発光器にそれぞれ与えて光パケット信号に変換し、該変換された各波長の光パケット信号を波長多重して生成したWDM光パケット信号をネットワーク側に送信する送信ユニットを備えた光パケット信号伝送装置であって、
前記送信ユニットは、
可変の遅延量をそれぞれ有し、前記各発光器に与えられる前記各データ信号を個別に遅延させる複数のデータ遅延回路と、
前記各発光器から出力される各波長の光パケット信号の一部をモニタ光として分岐する複数の光分岐器と、
前記各光分岐器で分岐される各波長のモニタ光のうちのいずれか1つを選択する光スイッチと、
前記各データ遅延回路における遅延量の調整に使用するテスト信号を生成するテスト信号生成回路と、
前記テスト信号生成回路で生成されるテスト信号を基に参照光パルスを生成する参照光パルス生成回路と、
前記光スイッチで選択されるモニタ光、および、前記参照光パルス生成回路で生成される参照光パルスが入力され、該各入力光の位相を比較して相対的な光位相差を検出する光位相比較器と、
前記光パケット信号伝送装置の運用開始前に、前記各データ信号に代えて前記テスト信号生成回路で生成されるテスト信号を前記各データ遅延回路に順番に与え、かつ、該テスト信号が与えられる調整対象のデータ遅延回路に対応させて前記光スイッチで選択されるモニタ光を切り替え、前記調整対象のデータ遅延回路における遅延量を段階的に変化させながら、前記光位相比較器により、前記光スイッチで選択されるモニタ光および前記参照光パルスの相対的な光位相差の検出を行い、該検出結果を基に前記光位相差が予め定めた上限値よりも小さくなる遅延量を判定し、該判定結果に従って、前記調整対象のデータ遅延回路における運用開始後の遅延量を設定する制御回路と、
を備えたことを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光パケット信号伝送装置であって、
前記各データ遅延回路は、
前記データ信号および前記テスト信号が入力され、該各入力信号のうちのいずれか1つを選択して出力する第1セレクタと、
互いに異なる遅延量を有し、前記第1セレクタから出力される信号を各々の遅延量に応じて遅延させる複数の遅延バッファと、
前記第1セレクタから出力される信号および前記各遅延バッファを通過した信号が入力され、該各入力信号のうちのいずれか1つを選択して出力する第2セレクタと、を含み、
前記制御回路は、前記光パケット信号伝送装置の運用開始前に、前記各データ遅延回路の前記第1セレクタにおいて前記テスト信号が選択されるようにすると共に、前記第2セレクタで選択される信号を順に切り替えることで当該データ遅延回路における遅延量を段階的に変化させることを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光パケット信号伝送装置であって、
前記送信ユニットは、
クライアント側から受けた光パケット信号を電気信号に変換する受光器と、
前記受光器から出力される電気信号に含まれる連続データを分解して生成した複数のデータ信号を前記各データ遅延回路に出力すると共に、前記複数のデータ信号に関する宛先情報およびノード切替情報を示すラベル信号を生成するパケット分解回路と、
前記各発光器の波長とは異なる波長を有し、前記パケット分解回路で生成されるラベル信号を光に変換することで光ラベルを生成する光ラベル用発光器と、
前記各発光器から出力される各波長の光パケット信号および前記光ラベル用発光器から出力される光ラベルを波長多重することで、光ラベルを含んだWDM光パケット信号を生成する光パケット多重装置と、を備えたことを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の光パケット信号伝送装置であって、
前記制御回路は、前記光位相比較器で検出される光位相差が最小になる遅延量を判定し、該判定結果に従って、前記調整対象のデータ遅延回路における運用開始後の遅延量を設定することを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の光パケット信号伝送装置であって、
ネットワーク側から受信したWDM光パケット信号を、クライアント側へ送る光パケット信号に変換する受信ユニットを備えたことを特徴とする光パケット信号伝送装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の光パケット信号伝送装置を複数備えて構成されたことを特徴とするWDM光通信ネットワーク。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−244376(P2012−244376A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112054(P2011−112054)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】