説明

光パルス殺菌装置

【課題】ワークとなるカードを途中で詰まりを生ずることなく光パルス照射域に円滑に搬送することができ、万一ワークの詰まりが生じても、ワークとなるカードに光パルスが過剰に照射されてそのカードが劣化したり焼損することを確実に防止することができる光パルス殺菌装置を提供する。
【解決手段】照射器が設置された光パルス照射域の入口側と出口側に夫々ワークの進入と退出を検知するセンサ39、40が設置され、入口側センサ39でワークの進入が検知されてから一定時間経過後に光パルスを照射させると共に、それから更に一定時間経過しても出口側センサ40でワークの退出が検知されなかったときは光パルスの照射とワークの搬送を停止させて警報装置42を作動させるコントローラ41が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を充填した複数本の容器が横方向に並ぶように光透過性のプラスチックで一体成形されたカードを搬送しながら該カードに光パルスを照射して各容器の内面と内容液を殺菌処理する光パルス殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱殺菌に適さない医薬品、食品、飲料等やその容器、包装資材等の殺菌処理は、薬液を用いて行なうのが一般的であるが、薬液を使用すると、殺菌処理した被処理物の表面に付着残存する薬液を洗浄除去しなければならないので、被処理物を無菌水で洗浄する洗浄設備や、その無菌水を作って供給する給水設備、使用済みの薬液が含まれた排水を無害化する排水処理設備等が必要となり、それらの設備費やランニングコストが嵩むと同時に、設備の設置スペースも著しく大きくなるという問題があった。
【0003】
また、薬液を使用しない紫外線殺菌は、殺菌に有効とされる波長254nmの紫外線を効率良く放射し、ランプ寿命も長い低圧水銀ランプを用いるのが一般的であるが、該ランプは、紫外線出力が低いために短時間で大量の被処理物を殺菌処理することができず、また、高出力を得ようとすればランプの使用本数を多くしなければならないので、その設置スペースが大きくなり、更に、被処理物の光透過率が低い場合や、菌が高濃度で存在して被処理物の表面等に重なり合って付着している場合、あるいは厚い皮膜で覆われた芽胞菌等のように紫外線の被照射耐性が高い菌の場合には、滅菌レベル(99.9999%以上の殺菌)の殺菌効果を得ることができないという問題があった。
【0004】
このような問題に鑑みて、近時は、低圧水銀ランプよりも高出力、高照度の紫外線を閃光的に放射するフラッシュランプを用いた光パルス殺菌装置による殺菌処理が徐々に普及しつつあり、例えば、光透過性を有するプラスチックのブロー成形によって医薬となる内容液を充填した複数本のバイアルビンあるいはアンプル等の容器が横方向に並ぶように一体成形されたカードを搬送しながらこれに光パルスを照射して各容器の内面と内溶液を殺菌処理する光パルス殺菌装置も提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この特許文献1には、カードを垂直に立てて搬送しながらその搬送路を挟んで左右両側に設置された一対の照射器によってカードに光パルスを照射する構成が図示されているが、カードを垂直状態に保持してどのように搬送するのかその具体的な構成については開示されていない。
【0006】
この種のカードは、例えば本願に添付した図面の図1に示すカード1の如く、医薬となる内容液を充填して封止されたバイアルビン2を5本単位で形成したものが4ユニット連なるようにポリエチレン等の光透過性プラスチックで一体成形され、そのカード1の下端には各ユニットごとに二股状に開脚した成形バリ3が形成された形状となっているので、これを垂直に立ててコンベアで搬送することは非常に難しい。
【0007】
そこで、本発明者らは、カード1の下端に形成された成形バリ3の二股部分をゴム製の丸ベルトに載せてその丸ベルトの上にカード1を立てると共に、丸ベルトの上に載せたカード1が倒れ落ちないように該カード1の上縁部4を左右一対のガイドレールで支えながら丸ベルトを走行させて、カード1を光パルスの照射域に搬送するワーク搬送機構を開発したが、丸ベルトに載せて搬送されるカード1は、その上縁部4がガイドレールと接触したときに生ずる摩擦抵抗などによって丸ベルトの上でスリップし、円滑に搬送することができなくなるという問題が発生した。特に、カード1の成形バリ3は丸ベルトの表面に密着し難い歪な形状になっているので、丸ベルトの粘着力のみでスリップを防止することはできず、また、紫外線による経時劣化で丸ベルトの粘着力が低下すると、スリップを生じやすくなるため、成形の際に形状異常を生じたカード1がガイドレールに引っ掛かって途中で詰まりを生じたり、光パルス照射域で停止したカード1が光パルスを過剰に浴びて劣化したり焼損するおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1に開示された光パルス殺菌装置は、カードに光パルスを照射する照射器が、光源となるフラッシュランプのランプ軸をカードの搬送方向と直交する鉛直方向に配するように設置されているので、カードに対して殺菌処理に有効な強度の光パルスを照射することができる範囲が非常に狭く、例えば上記の如くバイアルビン2が1ユニット5本ずつ4ユニット形成されたカード1にあっては、殺菌処理に有効な強度の光パルスを照射できる範囲がバイアルビン2の3〜4本分に相当する幅しかないため、4ユニット計20本のバイアルビン2を殺菌処理しようとすれば、フラッシュランプの発光回数が著しく多くなってその分だけランプ寿命も短くなるという問題がある。
【0009】
更に、バイアルビン2は、その容器の形状や肉厚が上下にわたって全体的に均一ではなく、特に上部(頸部)と下部(底部)の形状が複雑で他の部位より肉厚も大きいため、それらの部位については他の部位よりも紫外線照度を強くする必要があるが、バイアルビン2を必要最小限の照度で殺菌処理しようとした場合に、その上部と下部で殺菌処理に有効な照度が得られるようにフラッシュランプの発光エネルギーを設定する必要があるので、他の部位にとっては必要以上のエネルギーを以ってフラッシュランプを発光させなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2000−511497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、内容液を充填した複数本の容器が横方向に並ぶように光透過性のプラスチックで一体成形されたカードを簡便な構成のワーク搬送機構によって光パルス照射域に確実且つ円滑に搬送することができ、また、万一ワークの詰まりが生じても、ワークとなるカードに光パルスが過剰に照射されてそのカードが劣化したり焼損することを確実に防止することができるようにすることを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、内容液を充填した複数本の容器が横方向に並ぶように光透過性のプラスチックで一体成形されたカードを搬送しながら該カードに光パルスを照射して各容器の内面と内容液を殺菌処理する光パルス殺菌装置において、前記カードを光パルス照射域に搬送するワーク搬送機構が、ワークとなるカードを立てた状態で載せて搬送する主ベルトと、該主ベルトに載せられたカードの上縁部をその左右両面側から挟持して主ベルトと同一方向に等速で走行する一対の補助ベルトとを備え、光パルス照射域の入口側と出口側に夫々ワークの進入と退出を検知するセンサが設置され、その入口側センサでワークの進入が検知されてから一定時間経過後に光パルスを照射させると共に、それから更に一定時間経過しても出口側センサでワークの退出が検知されなかったときは光パルスの照射とワークの搬送を停止させて警報装置を作動させるコントローラが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主ベルトに立てた状態で載せて光パルス照射域に搬送するカードが、主ベルトと同一方向に等速で走行する一対の補助ベルトで上縁部を挟持されて直立状態に保持されると共に、主ベルトと一対の補助ベルトによって途中で詰まりを生ずることなく確実且つ円滑に搬送されるので、そのカードに対して適正なタイミングで光パルスを照射することができると同時に、ワークとなるカードが途中で停止して過剰な光パルスを浴びるおそれを解消することができ、また、万一ワークの詰まりが生じても、ワークとなるカードに光パルスが過剰に照射されてそのカードが劣化したり焼損することを確実に防止することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光パルス殺菌装置で殺菌処理するカードの一例を示す斜視図
【図2】本発明に係る光パルス殺菌装置の一例を概略的に示す断面図
【図3】本発明に係る光パルス殺菌装置のワーク搬送機構を成す主ベルトの構成例を示す斜視図
【図4】本発明に係る光パルス殺菌装置のワーク搬送機構を成す補助ベルトの構成例を示す斜視図
【図5】本発明に係る光パルス殺菌装置のワーク搬送機構を成す補助ベルトのベルト押えと、ワークの搬送や光パルスの照射を制御するコントローラを示す図
【図6】図5に示すコントローラの動作を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る光パルス殺菌装置の実施形態は、内容液を充填した複数本の容器が横方向に並ぶように光透過性のプラスチックで一体成形されたカードを光パルス照射域に搬送するワーク搬送機構が、ワークとなるカードを立てた状態で載せて搬送する主ベルトと、該主ベルトに載せられたカードの上縁部をその左右両面側から挟持して主ベルトと同一方向に等速で走行する一対の補助ベルトとを備え、それら主ベルトと各補助ベルトが、夫々ワーク搬送路の前後に設置された原動車と従動車との間に平行掛けされる無端状の丸ベルトで成り、各補助ベルトが平行掛けされる原動車と従動車との間に、各補助ベルトの張り側をカードの上縁部が挟持できる位置まで互いに接近させる前後一対の張り車が夫々設置されると共に、各補助ベルトの張り側に摺接してその張り側を互いに接近させる方向に付勢する左右一対のベルト押えが設置され、また、光パルス照射域の入口側と出口側に夫々ワークの進入と退出を検知するセンサが設置され、その入口側センサでワークの進入が検知されてから一定時間経過後に光パルスを照射させると共に、それから更に一定時間経過しても出口側センサでワークの退出が検知されなかったときは光パルスの照射とワークの搬送を停止させて警報装置を作動させるコントローラが設けられ、更に、カードに光パルスを照射する照射器が、光源となるフラッシュランプのランプ軸をカードの容器が並ぶ方向に沿って平行に配するように設置され、また、その照射器がカードの搬送路を挟んでその左右両側に設置され、該照射器から主ベルトや補助ベルトへ照射される光を遮ると共にその光の一部を主ベルトに載せて搬送されるカードの容器に向かって反射させる反射板兼用遮光板が設置された構成となっている。
【実施例】
【0016】
図2は図1のカード1に光パルスを照射してそのカード1に形成されたバイアルビン2の内面と内容液を殺菌処理する光パルス殺菌装置の一例を概略的に示す断面図、図3と図4は夫々ワーク搬送機構を構成する主ベルトと補助ベルトの構成例を示す斜視図、図5はワークとなるカードの上縁部を一対の補助ベルトで確実に挟持するためのベルト押えと、カードの搬送速度に応じた所定のタイミングで光パルスを照射させると共にワークの詰まりを検知してワークの搬送と光パルスの照射を停止させ且つ警報装置を作動させるコントローラを示す図、図6はコントローラの動作を説明するためのフローチャートである。
【0017】
図2に示す本発明の光パルス殺菌装置は、図1に示すカード1を左右一対の照射器5R、5Lが設置された光パルス照射域に搬送するワーク搬送機構が、カード1を立てた状態で載せて搬送する主ベルト6と、該主ベルト6に載せられたカード1の上縁部4をその左右両面側から挟持して主ベルト6と同一方向に等速で走行する一対の補助ベルト7R、7Lとを備えている。
【0018】
主ベルト6は、図3に示すごとく、ワーク搬送路の前後に設置された原動車8と従動車9との間に平行掛けされた無端状のゴム製丸ベルトで形成されている。なお、図中10は原動車8と従動車9を設置するブラケット、11は原動車8の駆動軸に駆動源となるモータの動力を伝達するタイミングベルトである。
【0019】
また、補助ベルト7R及び7Lも、図4に示す如く、夫々ワーク搬送路の前後に設置された原動車12Rと従動車13Rとの間及び原動車12Lと従動車13Lとの間に平行掛けされた無端状のゴム製丸ベルトで形成されると共に、その原動車12Rと従動車13Rとの間及び原動車12Lと従動車13Lとの間に、各補助ベルト7R、7Lの張り側をカード1の上縁部4が挟持できる位置まで互いに接近させる前後一対の張り車14R、15R及び14L、15Lが夫々設置されている。
【0020】
なお、各補助ベルト7R、7Lの原動車12R、12Lは、同軸の水平軸16に取り付けられて該水平軸16にカップリング17を介して接続したモータ18で同期的に回転駆動され、従動車13R、13Lは、原動車12R、12Lの水平軸16と平行に配した水平軸19に取り付けられている。また、各張り車14R、14L、15R、15Lは、夫々垂直軸20、21、22、23に取り付けられると共に、それら垂直軸には、各補助ベルト7R、7Lの緩み側を掛ける張り車24R、24L、25R、25Lが取り付けられている。そして、水平軸16、19に取り付けられた原動車12R、12L及び従動車13R、13Lと、垂直軸に取り付けられた張り車14R、14L、15R、15L及び24R、24L、25R、25Lとの間には、補助ベルト7R、7Lを原動車12R、12L及び従動車13R、13Lから外れないように案内支持する案内車26、27、28、29、30、31、32、33が設置されている。
【0021】
また、張り車14R、15R間と、張り車14L、15L間には、夫々補助ベルト7R、7Lの張り側に摺接してその張り側を互いに接近させる方向に付勢する左右一対のベルト押え34R、34Lが設置されている。これらベルト押え34R、34Lは、補助ベルト7R、7Lの張り側と平行に配されてその外方から互いに対峙するように設置された左右一対の水平フレーム35R、35Lに沿って、バネ36により各補助ベルト7R、7Lの張り側を押圧する方向に付勢された摺接子37が図5の如く一定のピッチで設けられている。各摺接子37は、紫外線劣化が少なくて摩擦抵抗も小さいフッ素樹脂等で形成され、補助ベルト7R、7Lを成す丸ベルトに摺接させる先端面にその丸ベルトの半周部を滑動可能に保持する断面半円弧状の案内溝38が形成されている。なお、摺動子は、丸ベルトの表面に摺接してその丸ベルトの走行に伴なって転動するローラであってもよい。
【0022】
また、光パルス照射域の入口側及び出口側となるベルト押え34R、34Lの前後には、図5の如くワークの進入を検知する入口側センサ39とワークの退出を検知する出口側センサ40が設置されている。なお、入口側センサ39と出口側センサ40には、光電管センサ等が用いられている。そして、入口側センサ39でワークの進入が検知されてから一定時間経過してそのワークとなるカード1が光パルス照射域に到来したときに照射器5R、5Lを作動させて該カード1に光パルスを必要回数照射させると共に、それから更に一定時間経過しても出口側センサ40でワークの退出が検知されなかったときにワークの搬送と照射器5R、5Lによる光パルスの照射を停止させて警報装置42を作動させるコントローラ41が設けられている。
【0023】
このコントローラ41の動作を図6により説明すると、まず、ワークとなるカード1の生産タクトに応じてワークの搬送速度が予め設定される(ステップ1)。つまり、ブロー成形機によるカード1の生産タクトに応じてそのカード1を光パルス照射域に搬送する主ベルト6及び補助ベルト7R、7Lの走行速度が設定される。そして、その設定されたワークの搬送速度に基づいて、ワークが入口側センサ39と出口側センサ40とで検出されるべき時間差と、各センサ39、40によるワークの検出が終了すべきタイムアウト時間(ワークが各センサの検出域を通過するまでの所要時間)を算出して(ステップ2)、それらの時間をメモリーに記憶させると共に、ワークが入口側センサ39で検出されてから照射器5R、5Lを作動させるまでの時間とその作動間隔及び作動回数も予めメモリーに記憶させておく(ステップ3)。
【0024】
そして、主ベルト6及び補助ベルト7R、7Lによるワークの搬送が開始されて(ステップ4)、そのワークが入口側センサ39で検出されると、該センサ39による連続検出時間(ワークがセンサ39の検出域を通過するまでの時間)を計時し(ステップ5)、その計時した時間とメモリーに記憶されているタイムアウト時間とを比較して計時した時間がタイムアウト時間を超過しているか否かを判断し(ステップ6)、超過しているときは、ワークの詰まりが発生していると判定して、主ベルト6及び補助ベルト7R、7Lによるワークの搬送と照射器5R、5Lによる光パルスの照射を停止させると共に、警報装置42を作動させる(ステップ10)。
【0025】
一方、入口側センサ39によるワークの連続検出時間がタイムアウト時間を超過しないときは、入口側センサ39で検出したワークが出口側センサ40で検出されるべき時間が経過したか否かを判断し(ステップ7)、その時間が経過したときはワークの詰まりが発生していると判定して、上記と同じくワークの搬送と光パルスの照射を停止すると共に、警報装置42を作動させる(ステップ10)。また、その時間が超過する前に出口側センサ40でワークが検出されると、該センサ40による連続検出時間(ワークがセンサ40の検出域を通過するまでの時間)を計時し(ステップ8)、その計時した時間とメモリーに記憶されたタイムアウト時間とを比較して、計時した時間がタイムアウト時間を超過しているか否かを判断し(ステップ9)、超過しているときは、ワークの詰まりが発生していると判定して、光パルスの照射とワークの搬送を停止すると共に、警報装置42を作動させる(ステップ10)。
【0026】
なお、ワークの詰まりが発生しないときは、コントローラ41は、入口側センサ39でワークを検出してから一定時間経過後に照射器5R、5Lを作動させて、そのワークに光パルスを所定の時間的間隔で必要回数照射する。これにより、ワークとなるカード1は、光パルスの過剰な照射によって劣化や焼損を生ずることなく、安全且つ確実に殺菌処理されることとなる。
【0027】
また、カード1に光パルスを照射する照射器5R、5Lは、カード1の搬送路を挟んでその左右両側から対向するように設置されると共に、光源となるフラッシュランプ43のランプ軸をカード1の各バイアルビン2が並ぶ方向に沿って平行に配するように設置され、フラッシュランプ43の反射板44もランプ軸と平行に設置されている。これにより、カード1に形成されたバイアルビン2の全てを殺菌処理するために必要な光パルスの照射回数を低減してフラッシュランプ43の寿命を延ばすことができる。
【0028】
また、図2の如く、カード1の搬送路を挟んでその左右両側に設置された照射器5R、5Lから主ベルト6に照射される光を遮ると共にその光の一部を主ベルト6に載せて搬送されるカード1に形成された各バイアルビン2の底部に向かって反射させるアルミ板等で成る反射板兼用遮光板45が設置されていれば、主ベルト6の紫外線劣化を防止することができると同時に、フラッシュランプ43による光パルスの照度分布が最も低い部位となるバイアルビン2の下部に反射光を照射してその部位の殺菌効果を高めることができる。
【0029】
なお、ベルト押え34R、34Lの摺接子37に形成された案内溝38を通る補助ベルト7R、7Lは、主ベルト6よりも照射器5R、5Lから照射される光が当たり難いが、これら補助ベルト7R、7Lに照射される光を遮ると共にその光の一部をバイアルビン2の上部に向かって反射させる反射板兼用遮光板(図示せず)を設置すれば、肉厚で殺菌処理しにくいバイアルビン2の頸部も効果的に殺菌することができる。
【0030】
以上のとおり、本実施例によれば、医薬となる内容液を充填した複数本のバイアルビン2が横方向に並ぶようにポリエチレン等の光透過性プラスチックで一体成形されたカード1を簡便なワーク搬送機構によって照射器5R、5Lが設置された光パルス照射域に詰まりを生ずることなく確実且つ円滑に搬送することができるという優れた効果がある。また、万一ワークの詰まりが生じても、ワークとなるカード1に光パルスが過剰に照射されてそのカード1が劣化したり焼損することを防止することができ、更に、カード1に形成された各バイアルビン2の殺菌処理に必要な光パルスの照射回数を低減して光源となるフラッシュランプ43の寿命を延ばすことができると同時に、そのフラッシュランプ43の発光エネルギーを必要最小限に低減してカード1に形成された各バイアルビン2の上部や下部を効果的に殺菌処理することができるという種々の優れた効果がある。
【0031】
更に、ワークとなるカード1を搬送する主ベルト6と補助ベルト7R、7Lは、丸ベルトで成り、しかも伸縮性を有するゴム製のものであるから、原動車12R、12Lと従動車13R、13Lに対する掛け外しが非常に容易であり、主ベルト6は、これをタイミングベルト11が設けられた側とは反対側から簡単に脱着することができ、補助ベルト7Lは、その原動車12Lの駆動軸に接続されたカップリング17を外すだけで脱着することができ、また、補助ベルト7Rは、カップリング17を外すことなくそのまま脱着することができるので、それらベルトの交換作業が著しく容易であるという効果もある。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、カードの容器に充填された内容液を殺菌処理する光パルス殺菌装置の性能と信頼性の向上に資するものである。
【符号の説明】
【0033】
1 カード
2 バイアルビン(容器)
3 カードの成形バリ
4 カードの上縁部
5R 照射器
5L 照射器
6 主ベルト
7R 補助ベルト
7L 補助ベルト
8 主ベルトの原動車
9 主ベルトの従動車
12R 補助ベルトの原動車
12L 補助ベルトの原動車
13R 補助ベルトの従動車
13L 補助ベルトの従動車
14R 張り車
14L 張り車
15R 張り車
15L 張り車
34R ベルト押え
34L ベルト押え
39 入口側センサ
40 出口側センサ
41 コントローラ
42 警報装置
43 フラッシュランプ
45 反射板兼遮光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を充填した複数本の容器が横方向に並ぶように光透過性のプラスチックで一体成形されたカードを搬送しながら該カードに光パルスを照射して各容器の内面と内容液を殺菌処理する光パルス殺菌装置において、前記カードを光パルス照射域に搬送するワーク搬送機構が、ワークとなるカードを立てた状態で載せて搬送する主ベルトと、該主ベルトに載せられたカードの上縁部をその左右両面側から挟持して主ベルトと同一方向に等速で走行する一対の補助ベルトとを備え、光パルス照射域の入口側と出口側に夫々ワークの進入と退出を検知するセンサが設置され、その入口側センサでワークの進入が検知されてから一定時間経過後に光パルスを照射させると共に、それから更に一定時間経過しても出口側センサでワークの退出が検知されなかったときは光パルスの照射とワークの搬送を停止させて警報装置を作動させるコントローラが設けられていることを特徴とする光パルス殺菌装置。
【請求項2】
前記主ベルトと各補助ベルトが、夫々ワーク搬送路の前後に設置された原動車と従動車との間に平行掛けされる無端状の丸ベルトで成る請求項1記載の光パルス殺菌装置。
【請求項3】
前記各補助ベルトが平行掛けされる前記原動車と従動車との間に、各補助ベルトの張り側を前記カードの上縁部が挟持できる位置まで互いに接近させる前後一対の張り車が夫々設置されると共に、各補助ベルトの張り側に摺接してその張り側を互いに接近させる方向に付勢する左右一対のベルト押えが設置されている請求項2記載の光パルス殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−196720(P2009−196720A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128756(P2009−128756)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【分割の表示】特願2003−284878(P2003−284878)の分割
【原出願日】平成15年8月1日(2003.8.1)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】