説明

光ピックアップの光検出器取付部構造

【課題】光ピックアップの光検出器取付部構造において、光学ベースの光検出器取付部分をリワークする際に、光学ベースの損傷や破損を起こりにくくする。光学ベースと光検出器とを接合固定している接着剤層の形状の安定化を図る。
【解決手段】板片31を有する光検出器30と、フレキシブル配線基板50と、光学ベース10と、光学ベース10の側面12に具備された接合面16とを有する。4箇所の接合面16で取り囲まれたスペースSに板片31が配備され、その板片31の隅部の傾斜端面32が接合面16に接着剤層80により接合固定されている。板片31の両側に板片状の壁部17が突設されている。接合面16が壁部17に形成されている。接合面16が、凹入状の溝壁面によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップの光検出器取付部構造、特に、樹脂成形体でなる光学ベースに光検出器が接着剤で接合固定されている光ピックアップにおいて、光検出器のリワーク時の光学ベースの破損や損傷を回避するための対策や、接着剤の塗布形状を安定させやすくするための対策などが講じられた光ピックアップの光検出器取付部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は光ピックアップPの基本的光学系を説明的に示した光路図である。光ピックアップPは、光学ベース10に、レーザダイオードでなる発光素子20や光検出器30のほか、回折格子(グレーチング)41、ハーフミラー42、コリメータレンズ43、対物レンズ44などの必要な光学部品を装備している。この光ピックアップPでは、発光素子20からの投射光が回折格子41、ハーフミラー42、コリメータレンズ43及び対物レンズ44を経てディスクDの記録面に照射され、その反射光が、対物レンズ44、コリメータレンズ43及びハーフミラー42を経て光検出器30に導かれる。したがって、このような光学系を有する光ピックアップPによるディスクDに対する光学的処理性能、言い換えると記録再生性能の良否は、上記した光学部品によって形成される光路が適正に形成されているか否かによって影響を受けるほか、光学ベース10に対する光検出器30の取付精度の良否によっても影響を受ける。
【0003】
図6は従来例としての光検出器取付部構造に採用されている光学ベース10などを概略で示した分解斜視図、図7は同光検出器取付部構造を説明的に示した概略正面図である。
【0004】
図6に示した光学ベース10は樹脂の一体成形体でなる。この光学ベース10には、図8を参照して説明したところと同様に、発光素子20や光検出器30などの必要とされる光学部品が装備される。また、光検出器30は、略矩形の板片31に光検出素子(図に現れていない)が装備されていて、その光検出素子に電気的に接続されている帯状のフレキシブル配線基板50が上記板片31から引き出されていると共に、そのフレキシブル配線基板50の端部が制御基板60に電気的に接続されている。
【0005】
図6のように、上記光学ベース10は、平坦な上面11と、その上面11に直交する側面12と、その側面12で開口する光通過孔13とを有している。そして、光通過孔13の周囲に位置する上記側面12の4箇所に各別にボス14…が突設されている。これらのボス14…の突設位置は、光通過孔13を取り囲むように上記側面12上に想定された矩形輪郭線の4つのコーナに定められている。また、それぞれのボス14には、光通過孔13の中心線に対面する状態の傾斜面が備わっていて、その傾斜面が、後述する接着剤層80に対する接合面15として形成されている。
【0006】
図6又は図7のように、光検出器30の略矩形の板片31の4つの隅部には、面取り状に形成された傾斜端面32…が備わっている。図7のように、この板片31は、上記した各ボス14の接合面15で取り囲まれた略矩形のスペースSに配備されていて、板片31の4箇所の隅部が、上記した4箇所の接合面15…に各別に対峙されている。そして、相対峙している接合面15と傾斜端面32とが、両者の相互間空間に充填(又は塗布)された接着剤層80により接合固定されている。接着剤層80には紫外線硬化型の接着剤が採用されている。
【0007】
また、図6に示した制御基板60は、光学ベース10の上面11にビス止めなどの適宜手段で装備される。したがって、板片31から引き出されて制御基板60に接続されているフレキシブル配線基板50が、その長手方向の中間部で略直角に折り曲げられて光学ベース10の上面11側へ引き出されることになる。
【0008】
この構成を備えた光検出器取付部構造において、光学ベース10側の接合面15と上記スペースSに配備された板片31の傾斜端面32との相互間空間は、紫外線硬化型の接着剤を充填する前、又は、充填後の紫外線硬化型の接着剤の硬化前に、板片31を変位させてその取付位置を調整する際の板片31の動かし代として役立つ。
【0009】
図7に示した構成で光検出器30が光学ベース10に取り付けられていると、板片31の周囲4箇所の接着剤層80が仮に収縮又は膨張したとしても、その収縮又は膨張によって生じる力が、図8に示した光ピックアップPの光学系の光軸に直交する方向を向く。そのため、接着剤層80の収縮又は膨張の影響によって、図8に示したフォーカス方向Fに光検出器30ひいてはその光検出素子が位置ずれするという事態や、光検出素子の向きが光軸に対して傾斜したりするという事態が抑制されるという利点を有する。また、光検出器30や光学ベース10に余分に部品を追加することなく、光検出器30を光学ベース10に取り付けることができるという利点もある。
【0010】
先行例としては、図6や図7を参照して説明した従来例と同様の構成を備えた光ピックアップが知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、他の先行例として、光ピックアップ装置の受光素子を支持する受光素子取付板と光学基台とを隙間を隔てて対面させ、両者の対向空間に接着剤を充填することによって両者を接合固定することが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0011】
さらに他の先行例には、光検出器の装着板に切込みを形成しておき、その切込みに溜めた接着剤によって上記装着板を光学ハウジングに接合固定することが示されている(たとえば、特許文献3参照)。
【0012】
その一方で、光学ベースにレーザ光源ホルダを接着剤を用いて固定することが知られている(たとえば、特許文献4参照)。また、光ピックアップに関し、発光素子としてのレーザダイオードを接着剤を用いて金属製の取付けホルダーに接合すること、取付けホルダーの外面に形成された凹部を接着剤の塗布箇所とすること、などが提案されている(たとえば、特許文献5参照)。また、光ピックアップに関し、受光素子が固着されているプリント基板をハウジングの凹部に嵌め込み、そのプリント基板の両側面部と凹部の壁面とを接着剤を用いて接合することも提案されている(たとえば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−293546号公報
【特許文献2】特開2009−146523号公報
【特許文献3】特開2005−71458号公報
【特許文献4】特開2009−176368号公報
【特許文献5】特開2008−310854号公報
【特許文献6】特開2002−368234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図6又は図7を参照して説明した従来例には次に説明する問題があった。
【0015】
すなわち、従来例では、光学ベース10側の接合面15が、光学ベース10の側面の4箇所に突設されたボス14に形成されていて、その接合面15に光検出器30の板片31の傾斜端面32が接着剤層80によって接合固定されている。また、ボス14が、光学ベース10と一体に合成樹脂で成形されている。これらの理由により、従来例では、ボス14が破損又は折損することがあり、特に、光検出器30を光学ベース10に接着剤層80を介して接合固定した後に、接着剤層80を破断したり剥がし取ったりして光検出器30を取り外すといったリワークを行う必要に迫られた場合には、リワーク作業中にボス14に無理な力が不慮に加えられてボス14が容易に破損してしまうおそれがあった。
【0016】
また、従来例では、接着剤層80の形状の安定化を図りにくいということが知見された。そこで、本願発明者はそのことについて鋭意調査したところ、相対峙しているボス14の接合面15と板片31の傾斜端面32とが平行又は略平行な平坦面になっているために、それらの相互間空間に紫外線硬化型の接着剤を充填した後、紫外線を照射して硬化させるまでの間は、平坦な接合面15や傾斜端面32が接着剤の流動を抑制する作用をそれほど発揮せず、その結果として、流動性を持つ未硬化の接着剤が上記相互間空間の内側から外側に向けて流動してその外側へはみ出すという事態が比較的起こりやすいからであろうと考えた。図7には、隙間の外側へはみ出たまま硬化した接着剤層80のはみ出し部分を符号81で示してある。そして、同図のように4箇所の上記相互間空間に充填された接着剤層80の一部又は全部に上記したようなはみ出し部分81が発生していると、それらのはみ出し部分81については光学ベース10側にその形状を規制する部位が存在していないために接着剤層80の全体形状にばらつきが生じるようになる。そして、そのような形状のばらつきが接着剤の硬化時の収縮量のばらつきをもたらして板片31が位置ずれしたりするので、光検出器30の光検出素子の位置精度が低下して光ピックアップPの光学的処理性能が損なわれるという懸念が生じる。
【0017】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、図6又は図7に示した従来例に備わっている利点、すなわち、フォーカス方向での光検出素子の位置ずれや光検出素子の向きの傾斜が起こりにくいという利点や、余分に部品を追加することなく光検出器を光学ベースに取り付けることができるという利点を損なうことなく、リワーク時の光学ベースの損傷や破損を起こりにくくすることのできる光ピックアップの光検出器取付部構造を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明は、従来例による上記利点を損なうことなく、接着剤層の形状がばらつくことを抑えてその形状の安定化を容易に図ることのできる光ピックアップの光検出器取付部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る光ピックアップの光検出器取付部構造は、略矩形の板片に光検出素子が装備されてなる光検出器と、上記板片から引き出されて上記光検出素子を制御基板に電気的に接続している帯状のフレキシブル配線基板と、上記制御基板が装着される上面とその上面に直交する側面とこの側面で開口する光通過孔とを有する樹脂成形体でなる光学ベースと、上記光通過孔の周囲に位置する上記側面の4箇所に各別に具備された接合面と、を有している。また、4箇所の上記接合面で取り囲まれた略矩形のスペースに配備された上記板片の4箇所の隅部のそれぞれが4箇所の上記接合面に各別に対峙し、相対峙している上記接合面と上記隅部とが、それらの相互間空間に充填された接着剤層により接合固定されている。
【0020】
そして、上記空間に配備された上記板片を挟む両側に、上記光学ベースと一体に成形されてその光学ベースの上記側面から突設された板片状の壁部が具備され、4箇所の上記接合面のうちの2箇所の接合面が一方側の上記壁部に形成され、残りの2箇所の接合面が他方側の上記壁部に形成されている。
【0021】
この構成において、一方側及び他方側の各壁部は、板片の4箇所の隅部のうちの2箇所の隅部が各別に対峙する接合面を2箇所に有していることにより、壁部の幅の長さ(壁幅)が、2箇所の隅部を含む板片の1辺の長さと同程度の幅を必然的に有していることになる。そのため、一方側及び他方側の各壁部の強度は、従来例を参照して説明したボス24(図6又は図7参照)の強度を上回ることになる。その結果、光検出器の板片を接合面に接着剤層を介して接合固定した後に、接着剤層を破断したり剥がし取ったりして光検出器を取り外すといったリワークを行う必要に迫られたときでも、リワーク作業中に壁部が破損するという事態が抑制されるようになる。
【0022】
本発明では、上記板片の隅部に面取り形状に形成された傾斜端面が具備されていて、上記接合面が、上記スペースに配備された上記板片の傾斜端面に対峙する状態で上記壁部に形成されてなる凹入状の溝壁面によって形成され、上記傾斜端面と上記接合面とによる囲繞空間としての上記相互間空間に、紫外線硬化型の接着剤を充填することによって上記接着剤層が形成されている、という構成を採用することが可能である。
【0023】
この構成を採用すると、壁部に形成された凹入状の溝壁面でなる接合面とそれに対峙している板片側の傾斜端面とにより形成される囲繞空間としての上記相互間空間に充填された未硬化の接着剤が溜まり、当該相互間空間に溜まった未硬化の接着剤の流動が、接合面としての凹入状の溝壁面によって抑制されるようになる。そのため、上記相互間空間に充填された未硬化の接着剤が、当該相互間空間を内側から外側に向けて流動するという事態が抑制され、4箇所の接着剤層の全体形状にばらつきが生じにくくなる。そのため、接着剤の硬化時の収縮量のばらつきが生じにくくなって、光検出器の光検出素子の位置精度の低下による光ピックアップの光学的処理性能の低下が抑制されることになる。
【0024】
本発明では、板片に具備されている上記傾斜端面に、上記溝壁面の溝幅方向に位置している2箇所の開口縁が対峙していることが望ましい。この構成であると、囲繞空間としての上記相互間空間に充填された未硬化の接着剤が当該相互間空間の外側へはみ出しにくくなって、上記したような4箇所の接着剤層の全体形状のばらつきがいっそう生じにくくなってその形状の安定化がより確実に行われる。
【0025】
本発明では、板片を挟む両側に具備されている2つの上記壁部の対向空間が、上記光学ベースの上面に装着された制御基板に上記光検出素子を電気的に接続している上記フレキシブル配線基板の引廻しスペースとして利用されている、という構成を採用することが可能である。この構成であれば、光学ベースの上面に装着された制御基板と光検出器の光検出素子との相互間に亘るフレキシブル配線基板を無理なく引き廻すことができるようになる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る光ピックアップの光検出器取付部構造によると、従来例に備わっている利点をそのまま引き継ぎ、しかも、リワーク時の光学ベースの損傷や破損を防止することができるという効果が奏される。また、従来例による上記利点をそのまま引き継いだ上で、接着剤層の形状がばらつくことを抑えてその形状の安定化を容易に図ることのできるようになる。そのため、この光検出器取付部構造を採用した光ピックアップにあっては、光検出器の光検出素子の位置精度の低下による光ピックアップの光学的処理性能の低下が防止されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る光検出器取付部構造に採用されている光学ベースなどを概略で示した分解斜視図である。
【図2】同光検出器取付部構造を説明的に示した概略正面図である。
【図3】図2の要部の拡大図である。
【図4】光検出器を説明的に示した概略側面図である。
【図5】他の種類の光検出器30を説明的に示した概略側面図である。
【図6】従来例としての光検出器取付部構造に採用されている光学ベースなどを概略で示した分解斜視図である。
【図7】同光検出器取付部構造を説明的に示した概略正面図である。
【図8】光ピックアップの基本的光学系を説明的に示した光路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は本発明の実施形態に係る光検出器取付部構造に採用されている光学ベース10などを概略で示した分解斜視図、図2は同光検出器取付部構造を説明的に示した概略正面図である。また、図3は図2の要部の拡大図、図4及び図5は異なる種類の光検出器30を説明的に示した概略側面図である。
【0029】
図1に示した光学ベース10は樹脂の一体成形体でなる。この光学ベース10には、図8を参照して説明したところと同様に、発光素子20や光検出器30などの必要とされる光学部品が装備される。
【0030】
図4及び図5に異なる種類の光検出器30が例示されている。図4の光検出器30は、光検出素子31を搭載したフレキシブル配線基板50の一端部を略矩形に形成された金属製の板片31の片面に重ね合わせて固定した構造を有している。また、図5の光検出器30は、片面に光検出素子31を搭載した略矩形の配線基板によって板片31を形成し、その板片31としての配線基板の他面にフレキシブル配線基板50の一端部を電気的に接続してある。したがって、図4又は図5のいずれの構造の光検出器30においても、略矩形の板片31に光検出素子33が装備されていて、板片31から引き出された帯状のフレシキブル配線基板50によって、図1のように光検出素子33(図4又は図5参照)が制御基板60に電気的に接続されている。
【0031】
図1のように、光学ベース10は、平坦な上面11と、その上面11に直交する側面12と、その側面12で開口する光通過孔13とを有している。また、光通過孔13の周囲に位置する上記側面12の4箇所に、接合面16…が各別に備わっている。これらの接合面16…は、光通過孔13を取り囲むように上記側面12上に想定された矩形輪郭線の4つのコーナに位置している。
【0032】
図1又は図2のように、この実施形態において、4箇所の接合面16…は、光通過孔13の横方向片側(左側)に位置する一方側の2つの接合面16,16と、光通過孔13の横方向他側(右側)に位置する他方側の2つの接合面16,16とに分かれている。そして、一方側の2つの接合面16,16が、光通過孔13の横方向片側(左側)で光学ベース10の側面12から突設された比較的肉厚の一方側の壁部17の縦方向(壁幅方向)の上下の端部にそれぞれ形成されているのに対し、他方側の2つの接合面16,16が、光通過孔13の横方向他側(右側)で光学ベース10の側面12から突設された比較的肉厚の他方側の壁部17の縦方向(壁幅方向)の上下の端部にそれぞれ形成されている。また、それぞれの接合面16,16は、光通過孔13(図1参照)に向いて開口する溝形凹入状の溝壁面によって形成されている。
【0033】
この実施形態において、光検出器30の板片31は、図2のように4箇所の上記接合面16…で取り囲まれた略矩形のスペースSに配備される。図1又は図2のように、板片31は略矩形に形成されていて、その4箇所の隅部34には、面取り状に形成された傾斜端面32…が備わっている。そして、上記スペースSに配備された板片31の4箇所の傾斜端面32…と一方側及び他方側の各壁部17,17に形成された4箇所の凹入状の溝壁面でなる接合面16…とが対峙している。また、図3に拡大して示したように、上記スペースS(図1又は図2参照)に配備された板片31の傾斜端面32に、それに対峙している凹入状の溝壁面でなる接合面16の溝幅方向に位置している2箇所の開口縁18,18が狭小な隙間S1を隔てて対峙している。そして、図2のように、相対峙している接合面16と傾斜端面32とによる囲繞空間としての相互間空間に紫外線硬化型の接着剤を充填することによって接着剤層80が形成され、その接着剤層80によって板片31の傾斜端面32が壁部17の接合面16に接合固定されている。
【0034】
以上のように構成された実施形態によると、一方側及び他方側の各壁部17,17は、それらが比較的肉厚に形成されている。しかも、各壁部17,17は、板片31の2箇所の隅部34,34が各別に対峙している接合面16,16を2箇所に有しているので、壁部17の幅の長さ(壁幅)が、2箇所の隅部34,34を含む板片31の1辺の長さと同程度の幅に必然的に定まっている。そのため、一方側及び他方側の各壁部17,17の強度は、図6又は図7に示した従来例のボス24の強度を上回っている。したがって、光検出器30の板片31を接合面16に接着剤層80を介して接合固定した後に、接着剤層80を破断したり剥がし取ったりして光検出器30を取り外すといったリワークを行う必要に迫られたときでも、リワーク作業中に壁部17が破損するという事態が抑制される。
【0035】
特に、この実施形態では、図2又は図3のように、壁部17の縦方向(壁幅方向)の両端部に、光学ベース10の側面12から突設されて壁部17から内向きに延び出たリブ部19を一体に連設し、そのリブ部19と壁部17とによって形成される入隅箇所に凹入状の溝壁面でなる接合面16を形成しているので、リブ部19によって壁部17が補強されている。そのため、上記したようなリワーク作業中の壁部17の破損を防止する作用の信頼性が向上している。
【0036】
また、壁部17側の接合面16とそれに対峙している板片31側の傾斜端面32とにより形成される囲繞空間としての相互間空間に接着剤を充填するときには、図2に仮想線で示したように接着剤注入用のニードルNを上記相互間空間に臨ませて行う。そのようにすると、当該相互間空間に充填される接着剤の注入位置が安定し、そのことが接着剤層80の形状の安定化に役立つという利点が生じる。
【0037】
さらに、一定量の接着剤を充填することにより上記相互間空間に未硬化の接着剤が溜まって、凹入状の溝壁面でなる接合面16がその接着剤の流動を抑制するので、未硬化の接着剤が狭小な隙間S1を経て上記相互間空間の外側に流出しにくくなる。そのため、4箇所の接着剤層80の全体形状にばらつきが生じにくくなる。したがって、この実施形態によると、接着剤の硬化時の収縮量のばらつきが生じにくくなって4箇所の接着剤層80の形状が安定する。その結果、光検出器30の光検出素子33の位置精度の低下による光ピックアップの光学的処理性能の低下が抑制される。
【0038】
次に、図1に示した制御基板60は、光学ベース10の上面11にビス止めなどの適宜手段で装備される。したがって、板片31から引き出されて制御基板60に接続されているフレキシブル配線基板60が、その長手方向の中間部で略直角に折り曲げられて光学ベース10の上面11側へ引き出されることになる。この実施形態では、板片31を挟む両側に具備されている2つの壁部17,17の対向空間aが、フレキシブル配線基板50を挿通させるための引廻しスペースとして利用している。この構成を採用すると、光学ベース10の上面11に装着された制御基板60と光検出器30の光検出素子33との相互間に亘るフレキシブル配線基板50を無理なく引き廻すことができる。
【0039】
この実施形態において、空間Sに配備された板片31の隅部34と光学ベース10側の接合面16との間に形成されている隙間S1は、その隙間に紫外線硬化型の接着剤を充填する前、又は、充填後の紫外線硬化型の接着剤の硬化前に、板片31を変位させてその取付位置を調整する際の板片31の動かし代として役立つ。
【0040】
また、上記構成で光検出器30が光学ベース10に取り付けられていると、板片31の周囲4箇所の接着剤層80が仮に収縮又は膨張したとしても、その収縮又は膨張によって生じる力が、図8に示した光ピックアップPの光学系の光軸に直交する方向を向く。そのため、接着剤層80の収縮又は膨張の影響によって、図8に示したフォーカス方向Fに光検出器30ひいてはその光検出素子が位置ずれするという事態や、光検出素子の向きが光軸に対して傾斜したりするという事態が起こにくくなる。また、光検出器30や光学ベース10に余分に部品を追加することなく、光検出器30を光学ベース10に取り付けることができるという利点もある。
【0041】
以上説明した実施形態では、板片31の隅部34に面取り形状の傾斜端面32が形成されているけれども、この点は、板片31の隅部34を直角の出隅形状に形成しておいてもよい。また、壁部17に形成されている凹入状の接合面16が、図例では断面円弧状に形成されているけれども、この点は、凹入状の接合面を角溝形に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 光学ベース
11 光学ベースの上面
12 光学ベースの側面
13 光通過孔
16 接合面
17 壁部
18 溝壁面の開口縁
30 光検出器
31 板片
32 板片の傾斜端面
33 光検出素子
34 板片の隅部
50 フレキシブル配線基板
60 制御基板
80 接着剤層
a 2つの壁部の対向空間
P 光ピックアップ
S 4箇所の接合面で取り囲まれたスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形の板片に光検出素子が装備されてなる光検出器と、上記板片から引き出されて上記光検出素子を制御基板に電気的に接続している帯状のフレキシブル配線基板と、上記制御基板が装着される上面とその上面に直交する側面とこの側面で開口する光通過孔とを有する樹脂成形体でなる光学ベースと、上記光通過孔の周囲に位置する上記側面の4箇所に各別に具備された接合面と、を有し、
4箇所の上記接合面で取り囲まれた略矩形のスペースに配備された上記板片の4箇所の隅部のそれぞれが4箇所の上記接合面に各別に対峙し、相対峙している上記接合面と上記隅部とが、それらの相互間空間に充填された接着剤層により接合固定されている光ピックアップにおいて、
上記空間に配備された上記板片を挟む両側に、上記光学ベースと一体に成形されてその光学ベースの上記側面から突設された板片状の壁部が具備され、4箇所の上記接合面のうちの2箇所の接合面が一方側の上記壁部に形成され、残りの2箇所の接合面が他方側の上記壁部に形成されていることを特徴とする光ピックアップの光検出器取付部構造。
【請求項2】
上記板片の隅部に面取り形状に形成された傾斜端面が具備されていて、上記接合面が、上記スペースに配備された上記板片の傾斜端面に対峙する状態で上記壁部に形成されてなる凹入状の溝壁面によって形成され、上記傾斜端面と上記接合面とによる囲繞空間としての上記相互間空間に、紫外線硬化型の接着剤を充填することによって上記接着剤層が形成されている請求項1に記載した光ピックアップの光検出器取付部構造。
【請求項3】
板片に具備されている上記傾斜端面に、上記溝壁面の溝幅方向に位置している2箇所の開口縁が対峙している請求項2に記載した光ピックアップの光検出器取付部構造。
【請求項4】
板片を挟む両側に具備されている2つの上記壁部の対向空間が、上記光学ベースの上面に装着された制御基板に上記光検出素子を電気的に接続している上記フレキシブル配線基板の引廻しスペースとして利用されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載した光ピックアップの光検出器取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−105503(P2013−105503A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246167(P2011−246167)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】