説明

光ピックアップユニット

【課題】モータの制御不能状態が起きても、ナット部が送りネジの端部で噛み込むことを防止し、しかもナット部の再起動をも可能にした光ピックアップユニットを提供する。
【解決手段】送りネジ3cの前後端には、ネジ山の無いナット空転部31,32が設けられているので、モータ3の動作中に制御ソフトが誤作動を起こしても、送りネジ3cのナット空転部31,32でナット部14が空転し続けるので、送りネジ3cとナット部14との噛み込みを適切に防止することができる。さらに、第1のナット空転部31に待機するナット部14は、ナット戻しバネ33により送りネジ3cの後端側に向けて付勢されている。これによって、制御ソフトが正常動作に戻ったときに、送りネジ3cが逆転を開始すると同時にナット部14を送りネジ3cに素早く螺合させることができ、ナット部14を正常な動作に素早く復帰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光磁気ディスクなどのディスク状記録媒体の光による記録・再生に利用される光ピックアップユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開平5−81681号公報がある。この公報に記載された光ピックアップ装置において、送りネジの両端には径の小さなネジ部が形成されている。さらに、送りネジに送りナットが螺合し、送りナットの進退に追従して、光ピックアップレンズも進退する。さらに、非演奏時や輸送時に発生した衝撃や振動などにより、送りネジの溝から送りナットが飛び出すことが無いように、送りナットにはストッパが固定されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−81681号公報
【特許文献2】特開平10−3687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の光ピックアップ装置には、送りネジの両端部に小径のネジ部が設けられ、さらには、送りナットの浮きを防止するためのストッパが設けられているので、演奏時や輸送時における振動や衝撃などにより、送りナットの端部に送りネジが達しても、送りナットの噛み込むことを防止することができる。しかしながら、前述した従来技術は、演奏時や輸送時における衝撃や振動などを考慮した発明であり、モータ動作中に制御ソフトが暴走してモータの駆動が停止しない場合に、送りナットと送りネジとの噛み込み防止を配慮した発明ではなく、送りナットと送りネジとの噛み込みは発生する。
【0005】
本発明は、特に、モータの制御不能状態が起きても、ナット部が送りネジの端部で噛み込むことを防止し、しかもナット部の再起動をも可能にした光ピックアップユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光ピックアップユニットは、送りネジが設けられたモータと、送りネジと送りネジに螺合するナット部との協働によって直線的に移動するピックアップレンズとを有する光ピックアップユニットにおいて、送りネジの前端と後端に設けられたネジ山の無い第1及び第2のナット空転部と、送りネジの前端側に配置されると共に、第1のナット空転部に待機するナット部を送りネジの後端側に向けて付勢するナット戻しバネとを備えたことを特徴とする。
【0007】
この光ピックアップユニットに設けられた送りネジの前後端には、ネジ山の無いナット空転部が設けられているので、モータ動作中に制御ソフトが誤作動を起こして、ナット部が送りネジの端部まで送られてしまった場合でも、送りネジのナット空転部でナット部が空転し続けるので、送りネジとナット部との噛み込みを適切に防止することができる。これによって、送りネジ及びナット部のネジ山を潰すことが防止される。さらに、第1のナット空転部に待機するナット部は、ナット戻しバネにより送りネジの後端側に向けて付勢されている。これによって、制御ソフトが正常動作に戻ったときに、送りネジが逆転を開始すると同時にナット部を送りネジに素早く螺合させることができ、ナット部を正常な動作に素早く復帰させることができる。
【0008】
また、モータに設けられると共に、送りネジを前端側に向けて付勢する第1の予圧バネと、ナット部とピックアップレンズとを連結する直動部を第1の予圧バネと同方向に付勢する第2の予圧バネとを更に備えると好適である。
【0009】
この場合、モータ側の第1の予圧バネと直動部側の第2の予圧バネとが同じ方向に付勢力を有しているので、直動部を付勢する第2の予圧バネの付勢力を弱めることができ、これによって、直動部に無理な負荷が加わり難くなるので、直動部の変形が防止され、それに伴って、レンズの歪みやナット部の変形を適切に防止することができる。
【0010】
また、直動部に設けられて、ナット部の後端面に当接するナット支持部と、ナット部に設けられて、送りネジの回転軸線に対して直交する方向に突出する摺動部と、摺動部が挿入されると共に、直動部において送りネジの回転軸線方向に延在し、ナット部を第1のナット空転部まで案内するガイド溝とを備えると好適である。
【0011】
モータの誤作動中に、直動部を送りネジの前端側で強制的に停止させると、ナット部に設けられた摺動部と直動部に設けられたガイド溝との協働によって、ナット部のみを送りネジの前端側の第1のナット空転部までスムーズに移送することができる。従って、第1のナット空転部にはナット部のみが待機することになるので、ナット部のみを押し出す付勢力のみを考慮すれば良く、ナット戻しバネのバネ力を必要以上に強くする必要がなくなる。なお、ナット部と直動部とが一体になっていると、ナット戻しバネのバネ力を強くする必要がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モータの制御不能状態が起きても、ナット部が送りネジの端部で噛み込むことを防止し、しかもナット部の再起動をも可能にしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る光ピックアップユニットの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1〜図3に示すように、光ピックアップユニット1は、光ピックアップ装置の内部で光磁気ディスクなどのディスク状記録媒体の光による記録・再生に利用され、ネジ止めによって光ピックアップ装置への組み付けを容易にしたタイプのレンズ駆動のユニットである。この光ピックアップユニット1は、ネジ止め用の止め穴2aが設けられた金属製のベース2を有し、このベース2上には、小型のステッピングモータ3が固定されている。このステッピングモータ3は、6mm程度の直径を有するモータ本体3aと、モータ本体3aから突出する出力軸3bと、出力軸3bに固定された送りネジ3cとからなる。
【0015】
モータ本体3aには、筒状の金属ケース4が設けられ、金属ケース4内は、N極及びS極が交互に着磁されてなるロータが設けられている。ロータの前後には、ロータに回転力を付与する磁気回路としての一対のステータが配置され、ステータには、磁界を発生させるコイルが収容されたヨークが形成されている。ヨークは、外側ヨークと内側ヨークとを有する。
【0016】
外側ヨーク及び内側ヨークのそれぞれには、ロータの外周面に対向するように配列された環状の磁極歯が設けられており、各磁極歯は櫛状であり、同一円周上で所定のピッチをもって配置されている。ヨーク内に収容されたコイルは、ステータの端子部に電気的に接続されており、コイルには、端子部を介して外部電源から電流が供給される。そして、コイルに流れる電流の向きを順次切り替えることで、ロータがステップ状に回転し、それにともなって出力軸3b及び送りネジ3cがステップ回転する。
【0017】
また、半球状に形成された出力軸3bの先端部は、ピボット軸受8の凹部8a内に装填され、このピボット軸受8は、出力軸3bの全長に渡って延在するコ字状のシャフト保持金具7に固定されている。そして、このシャフト保持金具7の底部は、枠体6とベース2との間に配置されると共に、枠体6に螺着された止めネジ9によってベース2の上面に固定されている。
【0018】
さらに、モータ本体3a内の後端には第1の予圧手段10が設けられ、この第1の予圧手段10は、出力軸3bの後端に当接するボール部11と、このボール部11を保持する樹脂製のピボット軸受12と、樹脂製のピボット軸受12を出力軸3bの先端に向けて付勢する螺旋バネ(第1の予圧バネ)13とからなる。この螺旋バネ13は、モータ本体3aの後端部とピボット軸受12との間に配置され、螺旋バネ(第1の予圧バネ)13によって、送りネジ3cは前端側に向けて付勢されている。この第1の予圧手段10により、送りネジ3cにスラスト方向の予圧を発生させ続けることができる。
【0019】
この第1の予圧手段10によって付勢された送りネジ3cには、円板状のナット部14が螺合され、ナット部14は、送りネジ3cの回転によって直線的に移動する。さらに、ナット部14には、送りネジ3cの回転軸線Lに対して直交する方向(すなわちナット部14の径方向)に突出する摺動部14aが設けられ、この摺動部14aは、回転軸線Lに対して直交して延在する可動アーム(直動部)16に形成されたガイド溝16a内に挿入されている。
【0020】
このガイド溝16aは、回転軸線Lの方向に一致して延在すると共に、ナット部14の回り止めを可能にしている。また、可動アーム16には、ナット部14の後端面14bに当接するナット支持部16bが設けられている。その結果、ナット部14の摺動部14aが、ガイド溝16aの前端部16cとナット支持部16bとの間に配置されることになり、ナット部14を、ガイド溝16aの端部16cとナット支持部16bとの間で進退させることができる。
【0021】
さらに、このような可動アーム16の端部には、ピックアップレンズ17及びガイド爪18が設けられている。このガイド爪18は、枠体6に固定され且つ回転軸線L方向に延在するガイド軸19を挟み込んでいる。従って、ガイド爪18がガイド軸19に沿って摺動することにより、可動アーム16を、回転軸線L方向に確実に案内することができる。これによって、ピックアップレンズ17を直線的且つ確実に移動させることができる。
【0022】
さらに、可動アーム16は、螺旋圧縮バネ(第2の予圧バネ)20によって、第1の予圧バネ13と同一の方向に付勢されている。螺旋圧縮バネ20の前端は、可動アーム16から垂下したバネ受け片16dにより支持され、螺旋圧縮バネ20の後端は、枠体6に設けられたバネ受け部21によって支持されている。この場合、ステッピングモータ3側の第1の予圧バネ13と可動アーム16側の第2の予圧バネ20とが同じ方向に付勢力を有しているので、可動アーム16を付勢する第2の予圧バネ20の付勢力を弱めることができる。これによって、可動アーム16に無理な負荷が加わり難くなるので、可動アーム16の変形が防止され、それに伴って、ピックアップレンズ17の歪みやナット部14の変形を適切に防止することができる。さらに、バネ受け片16dを貫通するように、ガイド軸22が回転軸線L方向に延在している。
【0023】
このような構成の光ピックアップユニット1の可動アーム16は、送りネジ3cの回転力と螺旋圧縮バネ20の付勢力によって、直線的に進退するが、ステッピングモータ3の動作中に制御ソフトが何らかの事情により誤作動を起こし、送りネジ3cが回転し続けると、送りネジ3cの端部までナット部14が送られて、送りネジ3cとナット部14との噛み込みを起こし、ナット部14の再起動を不能にする虞がある。
【0024】
そこで、送りネジ3cの前端及び後端には、ネジ山の無い第1及び第2のナット空転部31,32が設けられている。さらに、ピボット軸受8を包囲するように、送りネジ3cの前端側にはナット戻しバネ33が配置されている。このナット戻しバネ33の一端はピボット軸受8に固定され、ナット戻しバネ33の他端は遊端になっている。そして、ナット戻しバネ33は、第1のナット空転部31の途中まで延在している。従って、前側の第1のナット空転部31にナット部14が待機すると、ナット部14は、ナット戻しバネ33の遊端によって送りネジ3cの後端側に向けて付勢され続ける。
【0025】
このように、送りネジ3cの前後端には、ネジ山の無いナット空転部31,32が設けられているので、モータ動作中に制御ソフトが誤作動を起こすことによって、送りネジ3cの端部までナット部14が送られてしまった場合でも、ナット空転部31,32によって、送りネジ3cとナット部14との噛み込みを適切に防止することができる。これによって、送りネジ3c及びナット部14のネジ山が潰されてしまうことが防止される。
【0026】
さらに、第1のナット空転部31に待機するナット部14は、送りネジ3cの後端側に向けてナット戻しバネ33により付勢されている。これによって、制御ソフトが正常動作に戻って、送りネジ3cが逆転を開始すると、ナット戻しバネ33の付勢力によりナット部14を送りネジ3cに素早く螺合させることができ、ナット部14を正常な動作に素早く復帰させることができる。この場合、ナット空転部31,32の直径を、送りネジ3cの谷径より僅かに小さくすることで、送りネジ3cが逆転すると同時にナット部14を送りネジ3cに確実に螺合させることができる。
【0027】
なお、枠体6には、前後一対のフォトセンサ41,42が固定され、可動アーム16に設けられた遮光板43が各フォトセンサ41,42の検知光を遮断することによって、ピックアップレンズ17の初期位置やピックアップレンズ17の前後のエンドの検出が可能になる。
【0028】
前述した構成の光ピックアップユニット1の動作について簡単に説明する。
【0029】
図1〜図3に示すように、通常の使用状態において、先ず、ステッピングモータ3の送りネジ3cが正回転すると、これに伴ってナット部14が前進する。このとき、螺旋圧縮バネ(第2の予圧バネ)20によって可動アーム16は付勢されているので、可動アーム16と一体化したナット支持部16bがナット部14の後端面に当接し続ける。この当接力によって、ナット部14の前進に追従して可動アーム16及びピックアップレンズ17が前進する。また、送りネジ3cが逆回転すると、これに伴ってナット部14が後退する。このとき、ナット部14がナット支持部16bを押し続けるので、ナット部14の後退に追従して可動アーム16及びピックアップレンズ17が後退する。
【0030】
また、ステッピングモータ3の動作中に制御ソフトが誤作動を起こして、送りネジ3cの正回転が止まらなくなると、ナット部14も前進し続けることになる。そして、図4及び図5に示すように、ナット部14が送りネジ3cの前端すなわち第1のナット空転部31に達し、ナット部14が空転し続けるので、送りネジ3cとナット部14との噛み込みが適切に防止され、送りネジ3c及びナット部14のネジ山の潰れが防止される。
【0031】
また、ナット部14の前進中において、可動アーム16はエンドストッパなどの機械的ストッパにより所定位置で強制的に停止させられるが、可動アーム(直動部)16には、回転軸線L方向に延在してナット部14を第1のナット空転部31まで案内するガイド溝16aが設けられている。従って、モータ3の誤作動中に、可動アーム(直動部)16を送りネジ3cの前端側でエンドストッパなどにより強制的に停止させた場合、ナット部14に設けられた摺動部14aと可動アーム16に設けられたガイド溝16aとの協働によって、ナット部14のみが、送りネジ3cの前端側の第1のナット空転部31までスムーズに送られる。従って、第1のナット空転部31にはナット部14のみが待機することになるので、ナット戻しバネ33のバネ力は、ナット部14のみを押し出す付勢力のみを考慮すれば良く、必要以上に強くする必要がなくなる。
【0032】
また、制御ソフトの動作が正常に戻って、送りネジ3cが逆転を開始すると、ナット戻しバネ33の付勢力によりナット部14を送りネジ3cに素早く螺合し、ナット部14を正常な動作範囲に素早く復帰させることができる。
【0033】
また、ステッピングモータ3の動作中に制御ソフトが誤作動を起こして、送りネジ3cの逆回転が止まらなくなると、ナット部14も後退し続けることになる。そして、図6及び図7に示すように、ナット部14が送りネジ3cの後端すなわち第2のナット空転部32に達し、ナット部14が空転し続けるので、送りネジ3cとナット部14との噛み込みが適切に防止され、送りネジ3c及びナット部14のネジ山の潰れが防止される。
【0034】
また、制御ソフトの動作が正常に戻って、送りネジ3cが正回転を開始すると、螺旋圧縮バネ(第2の予圧バネ)20の付勢力によりナット部14を送りネジ3cに素早く螺合し、ナット部14を正常な動作範囲に素早く復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る光ピックアップユニットの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップユニットの断面図である。
【図3】本発明に係る光ピックアップユニットの平面図である。
【図4】送りネジの前端の第1のナット空転部にナット部が待機している状態を示す平面である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図である。
【図6】送りネジの後端の第2のナット空転部にナット部が待機している状態を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1…光ピックアップユニット、3…ステッピングモータ、3c…送りネジ、13…第1の予圧バネ、14…ナット部、14a…摺動部、14b…ナット部の後端面、16…可動アーム(直動部)、16a…ガイド溝、16b…ナット支持部、17…ピックアップレンズ、20…第2の予圧バネ、31…第1のナット空転部、32…第2のナット空転部、33…ナット戻しバネ、L…回転軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送りネジが設けられたモータと、前記送りネジと前記送りネジに螺合するナット部との協働によって直線的に移動するピックアップレンズとを有する光ピックアップユニットにおいて、
前記送りネジの前端と後端に設けられたネジ山の無い第1及び第2のナット空転部と、
前記送りネジの前端側に配置されると共に、前記第1のナット空転部に待機する前記ナット部を前記送りネジの後端側に向けて付勢するナット戻しバネとを備えたことを特徴とする光ピックアップユニット。
【請求項2】
前記モータに設けられると共に、前記送りネジを前端側に向けて付勢する第1の予圧バネと、
前記ナット部と前記ピックアップレンズとを連結する直動部を前記第1の予圧バネと同方向に付勢する第2の予圧バネとを更に備えたことを特徴とする請求項1記載の光ピックアップユニット。
【請求項3】
前記直動部に設けられて、前記ナット部の後端面に当接するナット支持部と、
前記ナット部に設けられて、前記送りネジの回転軸線に対して直交する方向に突出する摺動部と、
前記摺動部が挿入されると共に、前記直動部において前記送りネジの前記回転軸線方向に延在し、前記ナット部を前記第1のナット空転部まで案内するガイド溝とを備えたことを特徴とする請求項2記載の光ピックアップユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−287281(P2007−287281A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−115754(P2006−115754)
【出願日】平成18年4月19日(2006.4.19)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】