説明

光ピックアップレンズ

【課題】光ピックアップに対する光ピックアップレンズのチルト状態を正確に検出することが可能な光ピックアップレンズを提供すること。
【解決手段】本発明にかかる光ピックアップレンズ1は、光ディスクに対して記録・再生用のレーザ光を集光させる。この光ピックアップレンズ1は、記録・再生用のレーザ光を通過させる反射防止膜14を、レンズ有効径の領域のみならず、その外側のコバ面12aに対しても連続的に形成している。そして、このコバ面12a上の反射防止膜14に、レンズチルト検出用のレーザ光16を照射することによって、レンズチルト状態を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに対する記録または再生を行う光学系において用いられる光ピックアップレンズに関し、特に光ピックアップレンズのチルト状態の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクドライブに使用される媒体として、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-Disc)ディスク等の様々な光ディスクが開発され、製造されている。これらの光ディスクに対する記録または再生を行う光ディスクドライブの光学系には、光ピックアップレンズが設けられている。かかる光ピックアップレンズは、光ディスクを記録または再生を行うにあたり、光ディスク上にレーザ光を集光する上で重要な役割を持つ。
【0003】
ここで、光ディスクは、それぞれの規格に沿って最適なジッター値を示すように製品化されている。しかしながら、光ピックアップレンズがレーザ光を正確に光ディスク上に集光させて所望の光スポットを形成しなければ、光ディスクは性能を十分に発揮することはできない。このとき、光ピックアップレンズは、形状、屈折率、収差などの特性を満たすことにより、所望の光スポットを形成することが可能になるが、これらの特性を満足するように光ピックアップレンズを製造できたとしても、光ピックアップレンズを光ディスクドライブ内の光ピックアップに精度良く取り付けなければ、所望の光スポットは形成することはできない。
【0004】
一般に、レーザから出射されるレーザ光と光ピックアップレンズは、それぞれの光軸方向を一致させる必要があり、さらに、光ピックアップのレンズホルダにおける開口中心と、光ピックアップレンズのレンズ中心を一致させる必要がある。ここで、光ピックアップのレンズホルダの開口部は、レーザ光の光軸と垂直な関係にある。そして、レンズホルダの開口面は、光ピックアップレンズの取り付け面と平行である。
【0005】
レンズホルダの開口中心と光ピックアップレンズのレンズ中心を一致させる方法としては、レンズ取り付け面に光ピックアップレンズの外径を落とし入れるような外枠をつくり、この外枠とピックアップレンズの寸法差、つまり、「遊び」をどのくらいにするかによって決めることができる。従って、一旦、外枠を決めてしまえば、光ピックアップレンズをピックアップに取り付ける際に問題を起こすことはない。当然ではあるが、レンズ取り付け面に光ピックアップレンズの外径が落とし入れるような外枠をつくるため、光ピックアップレンズの外径中心と光ピックアップレンズの有効径中心が一致してなくてはいけない。これは、光ピックアップレンズを製造するときに満たさなければならない条件である。
【0006】
レーザ光と光ピックアップレンズの光軸方向を一致させる方法としては、光ピックアップレンズのレンズ取り付け作業において、レンズチルト調整用のレーザ光を光ピックアップレンズのディスク側有効径外のコバ面に照射し、このレンズチルト調整用レーザ光の反射光の角度を測定して、光ピックアップレンズの傾きを調整して、光ピックアップレンズを接着剤などで固定する方法が一般的である。このとき、製造上の観点やピックアップの性能の調整の観点から、光ピックアップレンズの光軸方向とレーザ光の光軸方向を一致させるのではなく、特定の角度に固定しなくてはいない場合もあるが、この場合でも、上述のレンズチルト調整用レーザ光を用いる方法を適用することが一般的である。
【0007】
光ピックアップレンズのチルト調整に関して作業の効率性を高めるために必要な条件は、光ピックアップレンズのコバ面で反射したレンズチルト調整用レーザ光、即ち反射光の光量が大きいこと、当該反射光が鮮明であること、さらに、コバ面で集光したレンズチルト調整用レーザ光の光スポットが所望の形状(例えば、歪みのない正円)を有することである。これらの条件を実現するための方法としては、例えば、光ピックアップレンズの有効径の外側に鏡面を設け、この鏡面でレンズチルト調整用レーザ光を反射させる方法がある。かかる方法によれば、レンズチルト調整用レーザ光の反射光の光量を大きくすることができ、さらに鏡面におけるレーザ光の光スポットの形状を所望の形状にすることができる。
【0008】
また、レンズチルト調整以外の作業でも、光ピックアップレンズの有効径の外側からレンズ外径までの領域に対してレーザ光を照射し、レンズチルトの状態をモニタする作業がある。例えば、光ピックアップレンズが固定された光ピックアップの動作方向を調整する作業である。このような作業においても、レンズチルトを調整する場合と同様に、レーザ光の反射光の光量を大きくしたり、レーザ光の照射位置における光スポットの形状が歪みのない円になるようにする必要がある。
【0009】
DVDディスクやCDディスクの記録又は再生用の光ピックアップレンズは、通常、プラスチック材料が用いられている。プラスチック材料は成型を行う上で自由に形状を作製できるため、光ピックアップレンズのレンズ有効径外からレンズ外径までの領域の形状を自由に作製することが可能である。そのことを利用し、光ピックアップレンズのレーザ光側と、ディスク側のそれぞれにおけるレンズ有効径外からレンズ外径までの領域の形状を、互いに異なるように作製することができる。また、光ピックアップレンズのレンズ有効径部分と、その外側とは別の型によって形成される場合が多い。従って、当該レンズ有効径部分の型と、光ピックアップに対して固定される当該外側の型との、光軸方向の相対的な位置関係を調整することによって、光ピックアップのレーザと、光ピックアップレンズの間の距離をある程度調整することができる。また、ディスク面側に余計な構造を設けないようにすることも可能である。
【0010】
プラスチックを材料とし、成型によって形成される光ピックアップレンズにおいては、鏡面を光ピックアップレンズのディスク面側のレンズ有効径からレンズ外径までの領域中の任意の場所に設けることが一般的である。
【0011】
他方、BDディスクやHD DVDディスクの記録又は再生用の光ピックアップレンズは、硝子材料が用いられることが多い。硝子を用いる場合は、レンズ有効径からレンズ外径までの領域における形状に自由度はあまりない。硝子の場合には、複雑な形状とすると、プレス成型の後から常温に冷却するまでに発生する熱収縮によって、形状内に差ができてしまい割れやすいためである。従って、硝子材料を用いる場合には、レンズ有効径からレンズ外径までの領域を平坦な構造にすることが一般的である。また、レンズ有効径の外側端部と、かかる平坦領域が直接、連結する構造としたときにレンズ有効径の領域の形状を精度良く形成できない不具合の発生を考慮して、レンズ有効径の外側端部と、かかる平坦領域の間を断面視で曲線で連結する構造とする場合もある。
【0012】
このように硝子材料を用いて形成された光ピックアップレンズにおいて、レーザ光源側とディスク側のレンズ有効径からレンズ外径までの領域に形成された平坦部は、レーザ光源側とディスク側のそれぞれにおいてレンズの光軸に対して垂直であることが要求されることから、互いに平行とする場合が多い。
【0013】
光ピックアップレンズには、光の利用効率を向上させるために、表面に反射防止膜が設けられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1においては、チルド調整等のためにレーザ光を照射する技術については開示されていない。
【特許文献1】特開2003−222707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
光ピックアップに対して光ピックアップレンズを精度良く取り付け、かつ、その取り付け状態を正確に検出するために、通常、ディスク側から同じ側のコバ面にレーザ光を照射するが、その面において反射されずに、反対側の面(すなわち、記録や再生用のレーザ側の面)において反射される場合がある。このように、反対側の面で反射された光は、迷光として正常な光に基づく検出を妨害することになる。
【0015】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、光ピックアップに対する光ピックアップレンズのチルト状態を正確に検出することが可能な光ピックアップレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかる光ピックアップレンズは、光ディスクに対して記録・再生用のレーザ光を集光させる第1の面を有する光ピックアップレンズであって、前記記録・再生用のレーザ光を通過させる反射防止膜を、前記第1の面と、当該第1の面の外側に設けられ、レンズチルト検出用のレーザ光が照射される第2の面に連続的に形成したものである。
【0017】
ここで、好適な実施の形態における第2の面は、当該光ピックアップレンズのレンズ軸に対してほぼ垂直なコバ面である。
好ましくは、第2の面は、レンズチルト検出用のレーザ光を出射するレーザ光源装置側の面である。
【0018】
また、レンズチルト検出用のレーザ光の波長λ2は、前記記録・再生用のレーザ光の波長λ1と異なることが望ましい。
特に、前記波長λ1(nm)と前記波長λ2(nm)は、λ2−λ1≧20nmを満たすことが望ましい。
【0019】
さらに、前記第2の面は鏡面加工されていることが望ましい。
また、前記反射防止膜は、前記コバ面の70%以上の領域を覆うことが望ましい。
また、前記レンズチルト検出用のレーザ光を均一に反射させる面の半径をR、反射防止膜の最外周の半径R+R1としたとき、次式を満足することが望ましい。
R/(R+R1)×100<98
【0020】
さらに、前記記録・再生用のレーザ光を出射するレーザ光源装置側のレンズ面及びその外側の面に、反射防止膜が設けられていることが好ましい。
【0021】
ここで、前記記録・再生用のレーザ光を出射するレーザ光源装置側のレンズ面及びその外側の面に設けられた反射防止膜は、前記ディスク側のレンズ面及びその外側の面に設けられた反射防止膜よりも、レンズチルト検出用のレーザ光の透過率が高いことが望ましい。
【0022】
本発明にかかる光ピックアップ装置は、上述の光ピックアップレンズと、前記レンズチルト検出用のレーザ光を出射するレーザ光源装置と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光が前記光ピックアップレンズの一部に照射され反射した反射光を検出し、レンズチルト量を検出する手段とを備えている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光ピックアップに対する光ピックアップレンズのチルト状態を正確に検出することが可能な光ピックアップレンズを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態にかかる光ピックアップレンズについて、図1に示す説明図を用いて説明する。本例にかかる光ピックアップレンズ1は、BDディスクの情報記録面に対して400nm〜412nmの波長のレーザ光を集光させる光学素子である。
【0025】
光ピックアップレンズ1において、記録または再生用のレーザ光が入射される入射面をレーザ面1aとし、当該レーザ光が出射する出射面をディスク面1bとする。光ピックアップレンズ1の集光や発散に寄与する面より外側から外周にかけて円環状の構造体をコバといい、一般的にこの部分でレンズのホルダ等への取り付けが行われる。の図1において、当該レーザ面1aにおける、レンズ有効径の外側からレンズ外径までの形状11のうち、レンズの光軸とほぼ垂直な面をレーザ側コバ面11aとする。同様に、当該ディスク面1bにおける、レンズ有効径の外側からレンズ外径までの形状12のうち、レンズの光軸とほぼ垂直な面をディスク側コバ面12aとする。そして、本明細書では、「コバ面」を、レーザ側コバ面11aとディスク側コバ面12aの両方を含む総称として用いる。
【0026】
光ピックアップレンズ1の硝材としては、オレフィン系樹脂やアクリル系樹脂などのプラスチック、熱硬化性シリコーン樹脂や光学硝子を用いることができる。プラスチックには、酸化防止剤やヒンダードアミン系光安定剤や温度特性を改善するための無機物質を分散させてもよい。ただし、光ピックアップレンズ1の硝材としては、記録や再生に使用されるレーザ光の波長の400nm〜412nmを通過させる材料であることが必要である。
【0027】
光ピックアップレンズ1は、その硝材としてプラスチックを用いた場合には、一般的に射出成形によって形成される。また、熱硬化性シリコーン樹脂を硝材として用いた場合には、型に樹脂を流し込んだ後に、硬化させることによって形成される。さらに、光学硝子を硝材として用いた場合には、光学硝子をプレスすることによって形成され、これに加えてレンズ面の研磨工程を有する場合もある。
【0028】
光ピックアップレンズ1において、レーザ側コバ面11aとディスク側コバ面12aは、それぞれ平面部を有しているが、好適な実施の形態において、両者の平面部のなす角度は、0.03度以下である。光ピックアップレンズ1のレーザ側とディスク側のそれぞれの面が一体形成される場合には、これら平面部はレンズ面の角度を示すことになり、それらのなす角度を小さくすることにより、レンズの収差特性を向上させることができる。レーザ側コバ面11aは、ホルダへの取り付け面となる場合もある。
【0029】
本実施の形態では、レーザ面1aに反射防止膜13が形成されている。この反射防止膜13は、記録または再生用のレーザ光の波長を含む所定波長の光を通過させるその一方で、当該所定波長以外の光の通過を防止し、反射させる。ここで、反射防止膜13は、レーザ面1aのレンズ有効径領域を覆うように設けられており、レーザ側コバ面11aを覆うようには形成されていないが、さらに、レーザ側コバ面11aの一部または全部を覆うように形成するようにしてもよい。この場合、反射防止膜13は、光ピックアップレンズ1の非球面部よりも外側のレンズ取り付け面まで連続的に成膜されている。
【0030】
ディスク面1bにも反射防止膜14が形成されているが、この反射防止膜14は、ディスク面1bのレンズ有効径領域と連続的にディスク側コバ面12aを覆うように形成されている。図に示す例における反射防止膜14は、ディスク側コバ面12aのほとんど全てを覆うように形成されているが、少なくとも70%以上の領域を覆うようにすればよい。すなわち、反射防止膜14は、レンズ中心を中心とした円形状であることが好ましいが、これに限定されない。
【0031】
また、ディスク側コバ面12aのうち、レンズチルト検出用レーザ光16を均一に反射させる面を少なくとも反射防止膜14が覆えばよいが、さらに、この面を超えて反射防止膜14が成膜されていることが好ましい。これは、反射防止膜14の成膜範囲の外周近傍は、中央付近と膜厚分布や粒径において相違し、これに伴って反射性能が異なる場合が多い。そこで、反射防止膜14を、反射面を超えて設けることによって、その反射性能が中央付近と異なる領域にレンズチルト検出用レーザ光16が照射しないようにすることができるため、反射光の均一性を高めることが可能となる。具体的には、レンズチルト検出用レーザ光16を均一に反射させる面の半径(レンズ中心からの半径)をR、反射防止膜の最外周の半径R+R1としたとき、次の式を充足するようにすることによって製造しやすくなる。
【0032】
R/(R+R1)×100<98
ここで、レンズチルト検出用のレーザ光を均一に反射させる面であるかどうか、反射率を測定することでわかる。例えば、反射防止膜14を成膜しない状態において、反射率が5%以上変化している境界の内側の領域(この場合、外側よりも内側の領域が反射率において5%以上向上している)をレンズチルト検出用のレーザ光を均一に反射させる面であると判断することが可能である。
【0033】
また、ディスク側コバ面12aは、鏡面加工により形成された鏡面であることが好ましい。これにより、反射防止膜14が覆う面の平滑性を高めることができ、正確にレンズチルト量を検出することができる。
【0034】
反射防止膜13、14は、BDディスクの記録または再生用のレーザ光の波長である400nm〜412nmで透過率の最適化が行えるような膜であり、また、この波長とは異なるレンズチルト調整用のレーザーを反射する性質を有するものである。したがって、反射防止膜13、14は、具体的には、400nm〜412nmの波長を透過し、その波長と異なる波長(例えば、680nmの波長)に対しては反射する。反射防止膜13、14の材料としては、酸化セリウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化クロム、フッ化マグネシウム等を用いることができる。反射防止膜13、14は、スパッタ法や、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の方法によって成膜される。
【0035】
レーザ光源装置15は、レンズチルト調整のみならず、アクチュエータを含むピックアップの動作確認等の際にレンズチルト量をモニタするために用いられるレンズチルト検出用レーザ光16を出射する装置である。ここで、レンズチルト検出用レーザ光16は、BDディスクの記録または再生用に用いられる400nm〜412nmの波長を有するレーザ光とは異なる波長であればよい。好ましくは、記録または再生用のレーザ光の波長λ1、レンズチルト検出用レンズ光16の波長λ2としたとき、次の式を満たすようにするとλ2において適切な反射光りを得られる。
【0036】
λ2−λ1≧20nm
【0037】
すなわち、記録または再生用のレーザ光の波長とレンズチルト検出用レンズ光16の波長は離れている方が、効率がよい。例えば、レンズチルト検出用レンズ光16の波長は、680nmである。
【0038】
なお、レーザ光源装置15としては、オートコリメータを利用することができるが、その他の形態のレーザ光源を用いるようにしてもよい。
【0039】
光ピックアップレンズ1を含む光ピックアップには、その他に、レンズチルト調整機構、BDディスクの記録または再生用のレーザ光を出射させるレーザ光源装置、コリメータレンズ、偏光ビームスプリッタ、光検出器等を備えている。
【0040】
次に、光ピックアップレンズ1のチルト調整方法について説明する。まず、光ピックアップレンズ1を所定のホルダに対して仮取付を行う。次に、レーザ光光源装置15からレンズチルト調整用のレーザ光16(例えば、波長680nmのレーザ光)を、光ピックアップレンズ1のディスク側コバ面12aに対して照射する。
【0041】
光ピックアップレンズ1のディスク側コバ面12aには、上述のように、レンズチルト調整用のレーザ光を反射する反射防止膜14が形成されているので、レンズチルト調整用のレーザ光16は、当該ディスク側コバ面12aにおいて反射され、反射光として出射する。この反射光の角度を図示しない検出機構によって検出することにより、チルド調整を行うことができる。具体的には、反射光の角度が所定の角度範囲に含まれるように、光ピックアップレンズ1のチルド角の調整を行い、当該反射光の角度が所定の角度範囲に含まれた状態で、当該光ピックアップレンズ1を固定する。
【0042】
また、レンズチルトのモニタする場合は、レンズチルトモニタレーザとしてレーザ光を光ピックアップレンズ1のディスク側コバ面12aに照射し、その反射光を検出することによって、レンズチルトの変化量に応じたモニタ信号を得ることができる。
【0043】
このように、本実施の形態にかかる光ピックアップレンズ1では、そのディスク側コバ面12aに反射防止膜14を設けているので、レンズチルトの調整やレンズチルトの変化量をモニタするために照射されたレーザ光を、確実にディスク側コバ面12aにおいて反射させることができ、しかもその反射光の強度を高め、かつ鮮明であり、さらに照射位置において歪みのない円形状とすることができるため、より正確にレンズチルト量を検出することが可能となる。特に、反射防止膜14をそのままディスク側コバ面12aに延在させて形成しているため、反射防止膜14とは別の反射構造を形成する場合に比べて、製造が容易となる。
【0044】
なお、レーザ側コバ面11aと、ディスク側コバ面12aの双方に反射防止膜13、14がそれぞれ形成されている場合には、レーザ側コバ面11aに設けられた反射防止膜13の方がディスク側コバ面12aに設けられた反射防止膜14よりも、レンズチルト検出用レーザ光16に対する透過率が高いことが好ましい。本来、レンズチルト検出用レーザ光16は、ディスク側コバ面12aに形成された反射防止膜14において反射されるが、この反射防止膜14があまりにも薄く形成されている場合には、透過してしまう場合もある。その場合には、光ピックアップレンズ1のレーザ側コバ面11aに形成された反射防止膜13で反射する可能性がある。そうすると、レーザ側コバ面11aの反射光がレンズチルトを検出する上で妨害となり、レンズチルト量の誤検出をもたらす場合がある。この点を考慮して、ディスク側コバ面12aに形成された反射防止膜14を透過したレーザ光が、レーザ側コバ面11aに形成された反射防止膜13において反射することを防止するために、上述のように、レーザ側コバ面11aに設けられた反射防止膜13の方がディスク側コバ面12aに設けられた反射防止膜14よりも、レンズチルト検出用レーザ光16に対する透過率が高くなるようにした。
【0045】
ディスク側コバ面12aに反射防止膜14を設けることなく、レーザ側コバ面11aのみに反射防止膜13を設けるようにしてもよい。このような構成によれば、レーザ側コバ面11aをレンズ取り付け面として利用する場合に、そのレンズ取り付け面のチルト量を正確に検出することができるという効果を奏する。
【0046】
上述の例では、レンズ面、即ちレンズ有効径領域を覆う反射防止膜と、その外側のコバ面を覆う反射防止膜は、同じ膜が連続的に形成されているが、これに限らず、レンズ面を覆う反射防止膜とコバ面を覆う反射防止膜の少なくとも一部が一致するものであればよい。例えば、レンズ面を覆う反射防止膜が屈折率がレンズ面側から小、大、小の3層構成である場合に、コバ面を覆う反射防止膜をその3層のうちのレンズ面側の1層を除く、2層のみとするようにしてもよい。上述の例では、記録・再生用のレーザ光の波長と、レンズチルト検出用レーザ光16の波長を異ならせる必要があったが、このように、層構成を変えることによって、同じ波長であっても、コバ面でレンズチルト検出用レーザ光16を反射させることができる。このとき、反射防止膜の構成は、奇数の層である必要はなく、レンズの屈折率との関係によっては偶数で構成することも可能である。
【0047】
続いて、本発明の光ピックアップレンズの実施例を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
実施例1.
光ピックアップレンズ1の材料としてポリオレフィン系樹脂を用いて図1に示される構造を有するレンズを作製した。レンズ外径はφ4.5mmである。この光ピックアップレンズ1は、レンズの有効径外側からレンズ外径にかけての形状がレーザ面側11とディスク面側12とでは異なっている。ディスク面部12のディスク側コバ面12aの最内周の位置はφ3.5mmであり、最外周の位置はφ4.3mmである。このディスク側コバ面12aは、鏡面加工され、波長405nmで最も透過率が高くなる反射防止膜14で全て覆われている。反射防止膜14によって覆われている領域の外径はφ4.4mmである。また、光ピックアップのレーザ面側はφ3.5mmまで、波長405nmで最も透過率が高くなる反射防止膜13で覆われている。光ピックアップレンズ1のディスク側コバ面12aに対して、オートコリメータ15によって、波長680nmのレーザ光16を照射し集光させた。
【0049】
実施例2.
光ピックアップレンズ2の材料としてポリオレフィン系樹脂を用いて図2に示される構造を有するレンズを作製した。レンズ外径はφ4.5mmである。この光ピックアップレンズ2は、レンズの有効径外側からレンズ外径にかけての形状がレーザ面側21とディスク面側22とでは異なっている。ディスク面にディスク側コバ面22aが設けられており、鏡面の最内周の位置はφ3.5mmであり、最外周の位置はφ4.3mmである。このディスク側コバ面22aは、鏡面加工され、波長405nmで最も透過率が高くなる反射防止膜24で全て覆われている。反射防止膜24によって覆われている領域の外径はφ4.4mmである。また、光ピックアップのレーザ面側はφ4.4mmまで、波長405nmで最も透過率が高くなる反射防止膜23で覆われている。光ピックアップレンズ2のディスク側コバ面22aに対して、オートコリメータ25によって、波長680nmのレーザ光26を照射し、集光させた。
【0050】
実施例3.
光ピックアップレンズ3の材料として光学硝子を用いて図3に示される構造を有するレンズを作製した。レンズ外径はφ4.5mmである。この光ピックアップレンズ3は、レンズの有効径外側のφ3.3mmからレンズ外径にかけての形状がレーザ面側31とディスク面側32ともに平坦な構造となっている。この両面の傾き37は0.03度である。ディスク面側部31にディスク側コバ面32aが設けられており、ディスク側コバ面32aの最内周の位置はφ3.5mmであり、最外周の位置はφ4.3mmである。このディスク側コバ面32aは、鏡面加工され、波長405nmで最も透過率が高くなる反射防止膜34で全て覆われている。反射防止膜34によって覆われている領域の外径はφ4.4mmである。また、光ピックアップのレーザ面側はφ3.5mmまで、波長405nmで最も透過率が高くなる反射膜33で覆われている。ピックアップレンズのディスク側コバ面32aに対して、オートコリメータ35をもって、波長680nmのレーザ光36を照射し、集光させた。
【0051】
実施例4.
光ピックアップレンズ4の材料として光学硝子を用いて図4に示される構造を有するレンズを作製した。レンズ外径はφ4.5mmである。この光ピックアップレンズ4は、レンズの有効径外側のφ3.3mmからレンズ外径にかけての形状がレーザ面側41とディスク面側42ともに平坦な構造となっている。この両面の傾き47は0.02度である。ディスク面にディスク側コバ面42aが設けられており、ディスク側コバ面42aの最内周の位置はφ3.5mmであり、最外周の位置はφ4.3mmである。このディスク側コバ面42aは、鏡面加工され、波長405nmで最も透過率が高くなる反射膜44で全て覆われている。反射防止膜44によって覆われている領域の外径はφ4.4mmである。また、光ピックアップのレーザ面側はφ4.4mmまで、波長405nmで最も透過率が高くなる反射防止膜43で覆われている。ピックアップレンズのディスク側コバ面42aに対して、オートコリメータ45をもって、波長680nmのレーザ光46を照射し、集光させた。
【0052】
実施例5.
実施例4とほぼ同一の構成を有し、光ピックアップレンズのレーザ面側の反射防止膜43がφ4.3mmまで覆われている点で異なる。
【0053】
実施例6.
光ピックアップレンズ5の材料として光学硝子を用いて図5に示される構造を有するレンズを作製した。レンズ外径はφ4.5mmである。この光ピックアップレンズ5は、レンズの有効径外側のφ3.3mmからレンズ外径にかけての形状がレーザ面側51とディスク面側52ともに平坦な構造となっている。この両面の傾き57は0.02度である。ディスク側コバ面42aは鏡面加工されていないが、鏡面といかないまでも平滑性が保たれた面がφ4.2mmまで形成され、この面はφ4.3mmまで反射防止膜54によって覆われている。
また、光ピックアップのレーザ面側はφ4.4mmまで、波長405nmで最も透過率が高くなる反射防止膜54で覆われている。光ピックアップレンズ5の有効径外から外径部の反射防止膜54が覆われている箇所のうち、φ4.2mmの箇所に対して、オートコリメータ56をもって、波長680nmのレーザ光56を照射し、集光させた。
【0054】
比較例1.
実施例1と同様に作製した光ピックアップレンズに対して、波長445nmのレンズチルト検出用レーザ光を照射した。
【0055】
比較例2.
実施例3と同様に作製した光ピックアップレンズに対して、波長445nmのレンズチルト検出用レーザ光を照射した。
【0056】
比較例3.
実施例6と同様に作製した光ピックアップレンズに対して、波長445nmのレンズチルト検出用レーザ光を照射した。
【0057】
比較例4.
実施例1と同様に作製したが、反射防止膜が有効径外側には成膜されておらず、この反射防止膜のない鏡面に対して、波長680nmのレンズチルト検出用レーザ光を照射した。
【0058】
比較例5.
実施例3と同様に作製したが、反射防止膜が有効径外側には成膜されておらず、この反射防止膜のない鏡面に対して、波長680nmのレンズチルト検出用レーザ光を照射した。
【0059】
これら実施例1〜6、比較例1〜5の結果を図6の表に示す。ここで、検討した項目は、オートコリメータのレーザスポット径輪郭の形状及びオートコリメータのレーザ明るさである。オートコリメータのレーザスポット径輪郭の形状に関しては、オートコリメータのレーザスポット径の中心の最も明るい部分にどれだけ多く光が集まっているかを観測し、その明るい部分の周りに、光が拡散している割合で、拡散が少ない順で◎、○、△、×で評価をした。オートコリメータのレーザの明るさは、チルト調整用レーザスポット径輪郭の形状が最も良好となる時の明るさを持って評価し、明るい順に◎、○、△、×で評価をした。図6の表に示されるように、実施例1〜6では、レーザスポット径輪郭の形状及びレーザ明るさともに良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明にかかる光ピックアップレンズのレンズチルト検出を示す説明図である。
【図2】本発明にかかる光ピックアップレンズのレンズチルト検出を示す説明図である。
【図3】本発明にかかる光ピックアップレンズのレンズチルト検出を示す説明図である。
【図4】本発明にかかる光ピックアップレンズのレンズチルト検出を示す説明図である。
【図5】本発明にかかる光ピックアップレンズのレンズチルト検出を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例及び比較例の結果を示す表である。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3、4、5 光ピックアップレンズ
11、21、31、41、51 レーザ側の有効径外からレンズ外径までの形状
11a、21a、31a、41a、51a レーザ側コバ面
12、22、32、42、52 ディスク側の有効径外からレンズ外径までの形状
12a、22a、32a、42a、52a ディスク側コバ面
13、23、33、43、53 反射防止膜
14、24、34、44、54 反射防止膜
15、25、35、45、55 レーザ光源装置
16、26、36、46、56 レーザ光
37、47、57 レーザ側コバ面とディスク側コバ面のなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対して記録・再生用のレーザ光を集光させる第1の面を有する光ピックアップレンズであって、
前記記録・再生用のレーザ光を通過させる反射防止膜を、前記第1の面と、当該第1の面の外側に設けられ、レンズチルト検出用のレーザ光が照射される第2の面に連続的に形成した光ピックアップレンズ。
【請求項2】
前記第2の面は、当該光ピックアップレンズのレンズ軸に対してほぼ垂直なコバ面であることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップレンズ。
【請求項3】
前記第2の面は、レンズチルト検出用のレーザ光を出射するレーザ光源装置側の面であることを特徴する請求項1又は2記載の光ピックアップレンズ。
【請求項4】
前記レンズチルト検出用のレーザ光の波長λ2は、前記記録・再生用のレーザ光の波長λ1と異なることを特徴とする請求項1〜3いずれに記載の光ピックアップレンズ。
【請求項5】
前記波長λ1(nm)と前記波長λ2(nm)は次式を満たすことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の光ピックアップレンズ。
λ2−λ1≧20nm
【請求項6】
前記第2の面は鏡面加工されていることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の光ピックアップレンズ。
【請求項7】
前記反射防止膜は、前記コバ面の70%以上の領域を覆うことを特徴とする請求項2記載の光ピックアップレンズ。
【請求項8】
前記レンズチルト検出用のレーザ光を均一に反射させる面の半径をR、反射防止膜の最外周の半径R+R1としたとき、次式を満足することを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の光ピックアップレンズ。
R/(R+R1)×100<98
【請求項9】
前記記録・再生用のレーザ光を出射するレーザ光源装置側のレンズ面及びその外側の面に、反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の光ピックアップレンズ。
【請求項10】
前記記録・再生用のレーザ光を出射するレーザ光源装置側のレンズ面及びその外側の面に設けられた反射防止膜は、前記ディスク側のレンズ面及びその外側の面に設けられた反射防止膜よりも、レンズチルト検出用のレーザ光の透過率が高いことを特徴とする請求項9記載の光ピックアップレンズ。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載の光ピックアップレンズと、前記レンズチルト検出用のレーザ光を出射するレーザ光源装置と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光が前記光ピックアップレンズの一部に照射され反射した反射光を検出し、レンズチルト量を検出する手段とを備えた光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−104732(P2009−104732A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277105(P2007−277105)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】