説明

光ピックアップ及び光ピックアップの調整方法

【課題】受光素子と前記受光素子に入射するレーザ光がずれている光ピックアップにおいて、安定して情報の再生を行うことができるように調整する。
【解決手段】受光素子PDで検出される信号の性能が最良となるようにデフォーカス調整を行った後、戻りレーザ光RLの受光素子PDに対するずれ量を検出し、ずれ量をもとに、デフォーカス補正値を算出し、前記デフォーカス補正値をもとにフォーカス駆動手段15を制御して、光ディスクの距離を補正するデフォーカス補正を行う制御手段10を備えている光ピックアップA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップの調整方法に関するものであり、さらに詳しくは、光ディスクで反射された戻りレーザ光と前記戻りレーザ光を受光する受光素子とのずれを補正する光ピックアップの調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップには、レーザ光を出射する光源と、前記レーザ光を集光し光ディスクの記録層に照射する対物レンズと、前記記録層で反射された戻りレーザ光を受光し電気信号に変換する受光素子とを備えており、前記光ディスクで反射されたレーザ光を受光し情報の再生を行っている。
【0003】
このような光ピックアップでは、前記対物レンズで集光されたレーザ光が、光ディスクに形成されているトラックに正確に照射されるように、前記対物レンズを前記光ディスクに接近離間させてフォーカス制御を行う。また、前記対物レンズを前記光ディスクの径方向(ラジアル方向)に移動させ、前記集光されたレーザ光を前記トラックに正確に照射させるトラッキング制御を行っている。前記光ピックアップでは、前記受光素子で受光したレーザ光をもとに出力されたフォーカスエラー信号をもとにフォーカス制御が行われている。また、トラッキング制御も同様に前記受光素子から出力されるトラッキングエラー信号をもとに行われる。
【0004】
従来の光ピックアップでは起動時に前記受光素子から出力される信号が最良となるように最適化調整が行われる。この起動時の調整について図面を参照して説明する。図6は従来の光ピックアップの調整を示すフローチャートである。
【0005】
まず、フォーカスエラー信号の検出方法について説明する。受光素子PDには、光ディスクで反射されたレーザ光が入射する。受光素子PDは、4分割された受光領域を有しており、この受光領域で受光された戻りレーザ光の光量を電気信号として出力する。各受光領域における出力をA、B、C、Dとすると、フォーカスエラー信号は対角線上に配置された受光領域aとc、bとdからの出力を加算し、加算した信号の差で得られる。すなわち、フォーカスエラー信号は(A+C)−(B+D)である。
【0006】
図6に示すように、光ピックアップはレーザ光を照射する対象である光ディスクの種類を判別する(ステップS201)。なお、この判別動作については従来良く知られた方法を用いるものであり、詳細は省略する。そして、光ピックアップから光ディスクにレーザ光を照射する(ステップS202)。次に、光ピックアップのフォーカスサーボを実行し、対物レンズを光ディスクに接近させる。フォーカスエラー信号は対物レンズと光ディスクとの距離の変化に応じてS字状に変化する。このS字状のカーブが基準電圧とクロスした後、電圧0となる点を合焦位置(フォーカスオン)とする(ステップS203)。
【0007】
一方で、光ピックアップでは受光素子から出力される信号のジッター値を検出しつつ、フォーカスサーボを行い、ジッター値が最小となるように、デフォーカス調整が行われる(ステップS204)。
【0008】
光ピックアップでは、戻りレーザ光の光軸が受光領域の境界線の交差する点と重なっている状態が好ましい。しかしながら、光学素子の精度、配置状態等によって、戻りレーザ光の光軸が受光領域のラジアル方向にずれてしまうことがある。このような、戻りレーザ光の受光領域に対するずれを修正するために、対物レンズをラジアル方向に移動させる、レンズシフト(ステップS205)が行われている。この状態で、光ディスクの再生をおこなう(ステップS206)。
【0009】
図7は戻りレーザ光が受光領域に対してずれている光ピックアップでジッター信号及びRF信号を検出したときのグラフである。図7に示しているように、光ピックアップでは対物レンズがマイナス方向(光ディスクの中心に接近する方向)にシフトしたとき、ジッターの値が大きくなっている。一方でプラス方向(光ディスクの中心から遠ざかる方向)にシフトしたときは、ジッター値が安定している。そこで、この光ピックアップでは、対物レンズを光ディスクの中心か遠ざかる方向にシフトさせている。
【0010】
このようにレンズシフトさせることで、対物レンズの可動域でのジッター値を低く抑えることができ、受光素子から安定して良好な信号を得ることが可能である。光ピックアップでは、受光素子で戻りレーザ光のずれを検出し(例えば、(A+B)−(C+D)の信号値をもとに)そのずれをもとに対物レンズのラジアル方向のシフト量を算出し、対物レンズのシフトを行う(特開2008−257765号公報、特開平8―194955号公報、特開2003−132558号公報等参照)。なお、対物レンズのシフトは対物レンズのトラッキング制御を行うトラッキングサーボにて行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−257765号公報
【特許文献2】特開平8―194955号公報
【特許文献3】特開2003−132558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記光ピックアップでは、光ディスクの偏芯やターンテーブルの組み付け誤差のため、光ディスクに照射されるレーザ光のスポットは前記トラックに対してラジアル方向にぶれる。このぶれを補正するトラッキング制御では、対物レンズをラジアル方向に移動させて、前記スポットが前記トラックを追従するように移動させている。しかしながら、前記光ピックアップでは、前記受光領域と前記戻りレーザ光とのずれを補正するためにレンズをシフトさせており、さらにトラッキング制御を行うため対物レンズの移動範囲を確保しなくてはならない。また、対物レンズをシフトさせるので、レーザ光が通過する領域が広くしなくてはならず、前記対物レンズの有効径を大きくする必要がある。
【0013】
以上のことより、前記戻りレーザ光と前記受光領域とのずれを、前記対物レンズのシフトで補正する光ピックアップでは、光学素子及び構成部品が大きくなり、それだけ、重量増につながり、動作の遅延や消費電力の増加につながる。また、光学素子、構成部品が大きくなることで、コストアップの要因にもなっている。
【0014】
そこで本発明は、受光素子と前記受光素子に入射するレーザ光がずれている光ピックアップにおいて、安定して情報の再生を行うことができるように調整する光ピックアップ及び光ピックアップの調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、光源から出射されたレーザ光を集光する対物レンズと、前記アクチュエータに前記対物レンズが光ディスクに接触するように駆動するフォーカス駆動手段と、前記光ディスクで反射された戻りレーザ光を受光し信号を生成する受光素子と、前記受光素子で生成された信号をもとにフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー検出手段と、を備えた光ピックアップであって、前記受光素子で検出される信号の性能が最良となるように前記フォーカス駆動手段でデフォーカス調整を行った後、前記戻りレーザ光の前記受光素子に対するずれ量を検出し、そのずれ量をもとに、前記対物レンズと前記光ディスクとの距離を補正するデフォーカス補正値を算出し、前記デフォーカス補正値をもとに前記フォーカス駆動手段を制御して、前記光ディスクの距離を補正するデフォーカス補正を行う制御手段を備えている。
【0016】
この構成によると、前記戻りレーザ光の前記受光素子に対するずれの補正を、デフォーカス補正で行うので、従来のレンズシフトで補正するものに対し、対物レンズのレンズシフト性能が低下するのを抑制することが可能である。これにより、光ディスクが偏心していたり、ターンテーブルのセンターがずれていたりして、光ディスクのトラックがラジアル方向に揺れても、レーザ光を前記トラックに正確に追従させることが可能である。
【0017】
上記構成において、前記制御手段は、前記デフォーカス調整終了時の前記フォーカスエラー信号に対して、前記デフォーカス補正値で補正し、補正されたフォーカスエラー信号が前記フォーカスエラー検出手段で検出できるように、前記フォーカス駆動手段を駆動するようにしてもよい。
【0018】
上記構成において、前記制御手段は、前記デフォーカス補正値を、前記ずれ量に前記制御手段に備えられた補正係数を乗ずることで算出してもよい。
【0019】
上記構成において、前記制御手段は、前記デフォーカス調整後、前記戻りレーザ光の前記受光素子に対してずれているかどうか検出し、ずれが無い場合は処理を終了し、ずれがある場合はずれ量を検出するようにしてもよい。
【0020】
上記構成において、前記制御手段は、前記デフォーカス調整を行うとき、前記受光素子で検出した信号のジッター値が最小となるように前期フォーカス制御手段を駆動するようにしてもよい。
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、光ディスクで反射された戻りレーザ光を受光し、変換された信号の性能が最良となるように対物レンズと前記光ディスクとの距離を調整するデフォーカス調整工程と、前記戻りレーザ光と前記戻りレーザ光を受光する受光素子に対するずれ量を検出するずれ量検出工程と、前記ずれ量をもとに前記対物レンズと前記光ディスクとの距離を補正するデフォーカス補正値を算出するデフォーカス補正値算出工程と、前記デフォーカス補正値をもとに前記光ディスクと前記対物レンズとの距離を補正するデフォーカス補正工程を備えている。
【0022】
上記構成において、前記デフォーカス補正工程は、前記デフォーカス調整工程終了後に検出されたフォーカスエラー信号を前記デフォーカス補正値で補正し、補正されたデフォーカスエラー信号が出力されるように前記対物レンズと前記光ディスクとの距離を補正するようにしてもよい。
【0023】
上記構成において、前記デフォーカス補正値算出工程は、前記ずれ量に予め与えられている補正係数を乗ずることで算出してもよい。
【0024】
上記構成において、前記デフォーカス調整工程と前記ずれ量検出工程との間に、前記戻りレーザ光が前記受光素子に対してずれているか否か検出するずれ検出工程をさらに備えており、前記ずれ検出工程でずれが検出されたときは、前記ずれ量検出工程に入り、ずれが検出されなかったときは処理を終了する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、受光素子と前記受光素子に入射するレーザ光がずれている光ピックアップにおいて、安定して情報の再生を行うことができるように調整する光ピックアップ及び光ピックアップの調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】光ピックアップに備えられる光学素子の配置を示す図である。
【図2】受光素子の概略図である。
【図3】戻りレーザ光のスポットが受光素子の中心からずれているときの受光素子の図である。
【図4】本発明にかかる光ピックアップの調整方法を示すフローチャートである。
【図5】戻りレーザ光のスポットと受光素子とがずれている光ピックアップで本発明の調整を行ったときのジッター値とRF信号値のグラフである。
【図6】従来の光ピックアップの調整を示すフローチャートである。
【図7】戻りレーザ光が受光領域に対してずれている光ピックアップでジッター信号及びRF信号を検出したときのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は光ピックアップに備えられる光学素子の配置を示す図である。以下の説明において、光ディスクに接近する方向をディスク方向とする。また、光ディスクの周方向をタンジェンシャル方向(tan方向)、径方向をラジアル方向(rad方向)と記す。
【0028】
光ピックアップAは、BDの記録層にレーザ光を照射し、情報の再生又は記録を行う光ピックアップである。図1に示すように、光ピックアップAは、光源1、1/2波長板2、偏光ビームスプリッタ3、1/4波長板4、コリメータレンズ5、立上げミラー6、対物レンズ7、回折格子8、センサレンズ9、受光素子PD、アクチュエータAC、制御部10、LDドライバ回路11、トラッキングエラー検出回路12、フォーカスエラー検出回路13、フォーカスドライブ回路14及びトラッキングドライブ回路15を備えている。なお、図1では、紙面手前側の光ディスクにレーザ光を照射する構成である。
【0029】
光源1はBDの記録/再生用の青色レーザ光(波長約405nm)を出射するレーザダイオードである。光源1から出射されたレーザ光は1/2波長板2に入射する。1/2波長板2は光源1から出射されたレーザ光の偏光方向を変更する光学素子であり、光ディスクで反射された光を遮断し、光源1に照射されるのを抑制する役割を果たしている。
【0030】
1/2波長板2を通過したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ3に入射する。偏光ビームスプリッタ3は光源1から出射されたレーザ光、すなわち、青色レーザ光に対応した光学素子であり、レーザ光が入射すると、その入射光の偏光方向によって、反射又は通過する光学素子である。なお、偏光ビームスプリッタ3は、P偏光を反射しS偏光を通過する光学素子として説明する。1/2波長板2を通過したレーザ光はP偏光のレーザ光であり、偏光ビームスプリッタ3の反射面で反射される。レーザ光が偏光ビームスプリッタ3で反射されることで、レーザ光の進行方向がラジアル方向からタンジェンシャル方向に曲げられる。なお、以下の説明において、光ディスクで反射されたレーザ光を戻りレーザ光という場合がある。
【0031】
偏光ビームスプリッタ3から出射したレーザ光は1/4波長板4に入射する。1/4波長板4は入射した光の位相を1/4波長ずらす光学素子である。すなわち、1/4波長板4は通過した光が直線偏光の場合円偏光に、円偏光の場合直線偏光に変換する光学素子である。偏光ビームスプリッタ3を出射したレーザ光はP偏光の光であり、1/4波長板4を通過することで円偏光に変換される。
【0032】
1/4波長板4を通過したレーザ光はコリメータレンズ5に入射する。コリメータレンズ5は発散光の収差を補正して平行光を得るためのレンズである。なお、レーザ光の径を調整することができるように、コリメータレンズ5は光軸方向に移動可能となっている。コリメータレンズ5が1/4波長板4の近くにある場合、レーザ光の径は小さく、逆に遠くにある場合、レーザ光の径は大きくなる。
【0033】
コリメータレンズ5を通過したレーザ光は、立上げミラー6に入射する。この立上げミラー6はレーザ光を光ディスク(BD)方向に反射するものであり、立上げミラー6で反射されたレーザ光は対物レンズ7に入射する。対物レンズ7は、レーザ光を集光し光ディスクの記録層にレーザスポットとして照射する集光レンズである。なお、対物レンズ7として、開口数がおよそ0.85のレンズが用いられている。対物レンズ7はアクチュエータACによって、光ディスクのラジアル方向(トラッキング制御)又は光軸に沿って光ディスクに接近離間する方向(フォーカス方向)に移動可能となっている。アクチュエータACは電磁石と永久磁石との間の磁力によって対物レンズ7を移動させるものである。アクチュエータは従来良く知られたものが用いられており、詳細は省略する。
【0034】
光ディスクの記録層で反射されたレーザ光(戻りレーザ光)は、対物レンズ7を通過することで、もとの平行光に戻り、立上げミラー6で反射される。立上げミラー6で反射されたレーザ光は、往路と同じ(略同じ)光路を通ってコリメータレンズ5に入射する。コリメータレンズ5に入射したレーザ光は平行光から収束光に変換され、1/4波長板4に入射する。
【0035】
1/4波長板4に入射したレーザ光は、円偏光であり1/4波長板4を通過するとき、直線偏光に変換される。なお、この直線偏光は、光源1を出射し、1/2波長板2を通過したレーザ光(P偏光)と直交する偏光方向のS偏光の光となっている。1/4波長板4を通過したレーザ光は偏光ビームスプリッタ3に入射する。偏光ビームスプリッタ3において、P偏光は反射し、S偏光は通過する。1/4波長板4を通過したレーザ光はS偏光であるので、1/4波長板4を通過したレーザ光は偏光ビームスプリッタ3を通過する。なお、偏光ビームスプリッタ3でレーザ光の一部が反射され光源1に向かう場合があるが、この場合も、P偏光を出射する1/2波長板2で遮られ、光源1には到達しない。
【0036】
偏光ビームスプリッタ3を通過したレーザ光は、回折格子8に入射する。回折格子8は微少な溝が等間隔に並んで形成されており、戻りレーザ光を3つのビームに分光する光学素子である。レーザ光は回折格子8で3つのビームに分光されて、センサレンズ9に入射する。センサレンズ9はフォーカスエラー信号を生成するために配置される光学素子であり、例えば、一方向にレーザ光を集光するシリンドリカルレンズを含んでいる。センサレンズ9を通過したレーザ光は、受光素子PDに照射される。受光素子PDは照射されたレーザ光の光量を電気信号に変換する素子であり、回折格子8で分光された3つのレーザ光を電気信号に変換する。受光素子PDで変換された電気信号はトラッキングエラー検出回路12及びフォーカスエラー検出回路13に送られる。
【0037】
制御部10は、マイコンやCPU等の処理装置を備えており、トラッキングエラー検出回路12、フォーカスエラー検出回路13からの信号をもとに、LDドライブ回路11、フォーカスドライブ回路14及びトラッキングドライブ回路15に駆動信号(フォーカス制御信号、トラッキング制御信号)を送り、各回路を駆動させるコントローラである。
【0038】
LDドライバ回路11は、光源1に駆動電力を供給するものである。LDドライバ回路11は制御部10からの指示をもとに、光源1に供給する駆動電力量を決定し、その駆動電力を光源1に供給する回路である。なお、LDドライバ回路11はパッケージ化されたICであってもよく、基板上の配線に電子部品を配置することで形成されるものであってもよい。
【0039】
トラッキングエラー検出回路12は、受光素子PDから出力された電気信号をもとにトラッキングエラー信号を検出する回路である。トラッキングエラー信号は従来良く知られた方法で検出されるものであり、詳細については省略する。
【0040】
フォーカスエラー検出回路13は受光素子PDから出力された電気信号をもとにフォーカスエラー信号を生成する回路である。フォーカスエラー検出回路13で生成された信号は、制御部10に送られる。
【0041】
フォーカスドライブ回路14は制御部10からのフォーカス制御信号をもとに、光ディスクと対物レンズ7との距離を調整するフォーカス制御を行う回路である。フォーカスドライブ回路14は制御部10からのフォーカス制御信号をもとに、アクチュエータACに供給する電力を制御し、アクチュエータACの移動量を制御している。フォーカスドライブ回路14によってフォーカス制御がなされていることで、光ディスクの記録面に照射されるレーザ光(レーザスポット)の径(スポット径)が一定となる。
【0042】
トラッキングドライブ回路15は制御部10からのトラッキング制御信号をもとに、対物レンズ7を光ディスクの記録面に沿ってラジアル方向に移動させるトラッキング制御を行う回路である。トラッキングドライブ回路15は制御部10からのトラッキング制御信号をもとに、アクチュエータACに供給する電力を制御し、アクチュエータACの移動量を制御している。トラッキングドライブ回路15によってトラッキング制御がなされることで、光ディスクのトラックにレーザスポットを精度良く照射することができる。
【0043】
フォーカスエラー信号について図面を参照してさらに詳しく説明する。図2は受光素子の概略図である。なお、図2に示す受光素子では、回折格子で分光されたレーザ光のうち中央の回折していないレーザ光(0次回折光)を受光する受光部のみを示している。図2に示すように、受光素子PDは、矩形状(ここでは正方形)の受光部を備えており、受光部は各角部を含むように第1受光領域P1、第2受光領域P2、第3受光領域P3及び第4受光領域P4に分割されている。戻りレーザ光RLが受光素子PDに照射されると、第1、第2、第3、第4の受光領域は、受光した光を電気信号A、B、C、Dに変換し出力する。なお、電気信号A、B、C、Dは電圧である。
【0044】
光ピックアップAでは、受光素子PDに照射される戻りレーザ光RLにセンサレンズ9で非点収差を付与している。受光素子PDに照射される戻りレーザ光RLはセンサレンズ9による非点収差の影響で、対物レンズ7と光ディスクとの距離によって、対角線上に沿って伸びた楕円形状のスポットとなったり、真円となったり、反対側の対角線上に沿って伸びた楕円形状の象となったりする(図2参照)。
【0045】
フォーカスエラー検出回路13では、受光素子PDから受信した信号A、B、C、Dに演算を施し、フォーカスエラー信号を検出する。フォーカスエラー信号は、受光素子PDの対角線上に配置された受光領域より出力された信号を加算し、さらにそれらの差を取ることで検出される。すなわち、第1受光領域P1と第3受光領域P3より出力される信号の和(A+C)と第2受光領域P2と第4受光領域P4より出力される信号の和(B+D)の差で検出される。
(式1)
FOE=(A+C)−(B+D)
【0046】
フォーカスエラー信号は対物レンズ7と光ディスクとの距離の変化に応じて、S字状に変化し、このS字状のカーブが基準電圧と交差した後、最初に電圧0となった位置が合焦点である。なお、光ピックアップAでは、光ディスクを交換したとき、起動時等、光ディスクと対物レンズ7との距離の調整が必要なとき、合焦点を探すフォーカスオン動作が行われる。
【0047】
光ピックアップAでは、受信した信号の性能を最良のものとするため、ジッターを測定し、そのジッター値をもとに、デフォーカス調整がおこなわれる。光ピックアップAでは、ジッター値が最小のとき、光ディスクからの再生情報に含まれるエラー量(エラーレート)が最小となる。そこで、デフォーカス調整では対物レンズ7をジッター値が最小となるようにフォーカス方向に微調整する。
【0048】
光ピックアップAにおいて、戻りレーザ光RLの受光素子PDでのスポットは、その中心が受光部の中心であることが好ましい。しかしながら、光ピックアップAに備えられている光学素子(特に受光素子PD)の取り付け誤差によって、戻りレーザ光RLのスポットと受光素子PDの受光部の中心とがずれる場合がある。
【0049】
戻りレーザ光RLのスポットが受光素子PDの受光部からずれているときについて図面を参照して説明する。図3は戻りレーザ光のスポットが受光素子の中心からずれているときの受光素子の図である。図3において、実線で示す戻りレーザ光RLは受光部に対してラジアル方向(図3において左方向)にずれて受光部に照射されている。このとき、第1受光領域P1と第4受光領域P4に形成される戻りレーザ光RLのスポットの面積が同じになっている。このことから、信号Aと信号Dとは同じ出力である。また、第2受光領域P2及び第3受光領域P3に形成される戻りレーザ光RLのスポットの面積が同じである。このことから、信号Bと信号Cは同じ出力である。フォーカスエラー信号が式1で検出されるので、戻りレーザ光RLの受光部上でのスポットがずれているにもかかわらず、フォーカスオン動作は正常に完了される。
【0050】
一方で、戻りレーザ光RLのスポットは対物レンズ7のトラッキング動作によっても左右方向に移動(以下、レンズシフトという)する。光ディスク装置では、光ディスクの面ぶれや、ターンテーブルの回転中心のずれ等によって、トラックがラジアル方向に移動する場合がある。この場合、光ピックアップAでは、トラッキング制御を行い、対物レンズ7をラジアル方向に移動させて、レーザ光をトラックに追従させている。
【0051】
光ピックアップAにおいて、戻りレーザ光RLのスポットは対物レンズ7が光ディスクのラジアル方向外側に移動したとき右(プラス)、内側に移動したとき左(マイナス)に移動する構成とする。なお、この戻りレーザ光RLのスポットの移動方向は、光ピックアップAを構成する光学素子の種類、配置によって変わる。
【0052】
図3に示している受光状態の光ピックアップにおいて、トラッキング制御で対物レンズがプラス方向に移動したとき、戻りレーザ光RLのスポットは右方向(点線)、すなわち、受光素子PDの受光部の中央に向けて移動するので、ジッター値が悪化しにくい。一方で、対物レンズがマイナス方向に移動したとき、戻りレーザ光RLのスポットは左方向(点線)、すなわち、受光素子PDの受光部からのずれが大きくなり、ジッター値が悪化する。
【0053】
本発明の光ピックアップAでは、図3に示すような、戻りレーザ光RLのスポットと受光素子PDの受光部とのずれがある場合において、対物レンズ7をディスク方向に移動させ受光素子PDの受光部に照射される戻りレーザ光RLの像を斜めに扁平させる(一点鎖線)デフォーカス補正を行っている。このようにデフォーカス補正を行うことで、図3に示しているように、マイナス方向へのレンズシフトが発生しても戻りレーザ光RLの像は受光部の領域P1〜P4のそれぞれに形成されるので、ジッターの悪化を抑制している。
【0054】
次に、本発明にかかる光ピックアップにおいてジッター補正を行う手順について図面を参照して説明する。図4は本発明にかかる光ピックアップの調整方法を示すフローチャートである。図4に示す調整方法において、制御部10は、まず、光ピックアップAで情報の再生を行う光ディスクの種類の判別を行う(ステップS101)。なお、図1に示す光ピックアップAにおいて、光ディスクの種類とは、再生専用、記録可能、多層ディスク等である。しかしながら、これに限定されるものではなく、構成によっては、波長の異なるレーザ光を照射するCD、DVDを1つの光ピックアップで情報の再生が可能であり、その場合、CD、DVD等の種類も判別する。このディスクの種類の判別方法は従来、広く知られているので詳細は省略する。
【0055】
ステップS101で光ディスクの種類を判別した後、制御部10はLDドライブ回路11にディスク種類に応じたレーザ光を照射するように駆動信号を出力し、光源1の電源をONにし、光源1からレーザ光を出射させる(ステップS102)。光源1からレーザ光が出射されると、光ディスクにレーザ光が照射され、反射された戻りレーザ光RLが受光素子PDで受光される。受光素子PDは受光したレーザ光に応じて信号をフォーカスエラー検出回路12及びトラッキングエラー検出回路13に出力する。フォーカスエラー検出回路12及びトラッキングエラー検出回路13は、受信した信号をもとに、それぞれフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を検出し、制御部10に送る。
【0056】
制御部10は、受信したフォーカスエラー信号をもとに、フォーカスドライブ回路15にフォーカス制御信号を送る。フォーカス制御信号を受信したフォーカスドライブ回路15は、アクチュエータACに駆動電力(電流)を印加し、対物レンズ7と光ディスクとの距離を調整する。制御部10は、フォーカス制御信号をフォーカスドライブ回路15に送り、レーザ光を光ディスクにフォーカスオンにする(ステップS103)。なお、トラッキング制御については、ここでは、省略する。
【0057】
光ディスクに対してフォーカスオンになった状態(S103の状態)で、制御部10は、受光素子PDより受信した信号をもとにジッター値を測定し、ジッター値が最小となるように、デフォーカス制御信号をフォーカスドライブ回路15に送る。なお、デフォーカス制御信号を受信したフォーカスドライブ回路15は、フォーカス制御のときと比べ、アクチュエータACに対物レンズ7の移動量が微少となるように駆動電力を供給する。このようにして、ジッター値が最小となるように対物レンズ7と光ディスクの距離の微調整(デフォーカス調整)される(ステップS104)。
【0058】
ステップS104でデフォーカス調整を行った後、制御部10は、戻りレーザ光RLのスポットが受光素子PDの受光部に対してずれているかどうかチェックする(ステップS105)。このずれのチェックの方法としては、例えば、第1受光領域P1からの信号Aと第2受光領域P2からの信号Dの和信号(A+D)と第2受光領域P2からの信号Bと第3受光領域P3からの信号Cとの和信号(B+C)の差(B+C)−(A+D)を検出し、その差が0であれば、戻りレーザ光RLのスポットは受光部の中央に形成されており、0以外の場合は図3のプラス方向又はマイナス方向のいずれかにずれていると検出する方法がある。
【0059】
制御部10は、戻りレーザ光RLのスポットと受光素子PDの受光部のずれが無いと判断した(ステップS105でNoの)とき、光ディスクの再生(ステップS109)を行う。一方で、戻りレーザ光RLのスポットと受光素子PDの受光部とがずれていると判断した(ステップS105でYesの)とき、制御部10は、上述した式より、戻りレーザ光RLのスポットの受光部に対するずれ量(PDB_X)を検出する(ステップS106)。このずれ量は、戻りレーザ光RLのスポットの中心が、受光素子PDの受光部に対するずれ量の割合(%)で表示される。
【0060】
制御部10は、ステップS106で検出したずれ量をもとに、デフォーカス補正値(ΔDef(%))を算出する(ステップS107)。デフォーカス補正ΔDefは、制御部10の内部に含まれる記憶部に記憶されているデータベースより引用された補正係数aをずれ量PDB_Xに乗ずることで求められる。なお、補正係数aは光ディスクの種類、戻りレーザ光RLのスポットの大きさ、強度等によって決められる値である。このデフォーカス補正値ΔDefはデフォーカス調整時のフォーカスエラー信号の振幅に対する割合である。
【0061】
制御部10は、ステップS107で算出されたデフォーカス補正値ΔDefで補正したフォーカスエラー信号が出力されるように、デフォーカス補正信号をフォーカスドライブ回路15に送信する。フォーカスドライブ回路15はデフォーカス補正信号をもとに、アクチュエータACに駆動電力を供給し、デフォーカス補正を行う(ステップS108)。ステップS108でデフォーカス補正を行った後、制御部10は、光ディスクの再生を行う(ステップS109)。
【0062】
次に、以上の手順でデフォーカス補正を行ったときの光ピックアップの精度について説明する。図5は戻りレーザ光のスポットと受光素子とがずれている光ピックアップでデフォーカス補正を行ったときのジッター値とRF信号値のグラフである。図5は図1に示す光ピックアップであって、対物レンズをプラス方向及びマイナス方向に300μmずつシフトできる(すなわち、限界シフト量300μmの)対物レンズ及びアクチュエータを備えた光ピックアップである。この光ピックアップでは、デフォーカス調整でデフォーカスベスト(ジッター最小)となる位置から、フォーカスエラー信号の振幅がマイナス10%となるようにデフォーカス補正を行っている。
【0063】
また、比較のために、フォーカスエラー信号の振幅がプラス10%となるように補正したものも図示している。なお、図5のグラフにおいて、中実がジッター値、中空がRF信号を示しており、それぞれ、四角がデフォーカスベスト、円はデフォーカスベストからマイナス10%に補正、三角はデフォーカスベストからプラス10%に補正したときの値である。さらに、図5中には、レンズの限界シフト量である±300μmの部分に線を記載している。
【0064】
図5に示すグラフでは、横軸にレンズシフト量、左側の縦軸にジッター(%)、右側の縦軸にRF信号(mV)である。まず、デフォーカスベストのときについて説明する。レンズシフトがマイナスになったときジッターが大きくなり、RF信号が低下する。このことは、対物レンズがマイナス方向に移動したとき、戻りレーザ光RLのスポットは受光素子PDの受光部から離れる方向に移動することが分かる。デフォーカスベストのとき、対物レンズを−300μmシフトさせると、ジッター値が大きくなるとともに、RF信号が弱くなり、信号の性能が低下することが分かる。さらに、デフォーカスベストの場合、レンズシフトのマイナス側最大の手前(約−200μmあたり)から急激にジッター値が悪化している。このことから、デフォーカスベストで調整された光ピックアップでは、レンズシフトがマイナス側の最大に到達する前に、ジッターが増大し、信号の性能が低下する。
【0065】
この光ピックアップにおいて、デフォーカス補正値として、マイナス10%を用いて、デフォーカス補正を行った場合、レンズシフトがマイナス側最大のとき、ジッター値が下がり、RF信号の低下が抑制される。また、レンズシフトがプラス側最大のとき、ジッター値が大きくなり、RF信号が弱くなっている。しかしながら、デフォーカスベストのときのマイナス側の時の信号の低下度に比べて小さい。このとから、レンズシフトの範囲内では、デフォーカスベストで調整した場合に比べて、マイナス10%で補正した場合の方が、信号性能が高くなっていることが分かる。
【0066】
なお、デフォーカス補正値として、プラス10%とした比較例も示しているが、プラス10%に補正すると、ジッター値、RF信号ともに悪化することが分かる。このことから、デフォーカス補正値を適切に補正することで、レンズシフトの範囲内での信号の性能を高めることが可能である。また、従来の光ピックアップのように、対物レンズをジッター値が高い部分となるようにレンズシフトをしていないので、対物レンズのレンズシフト量を大きくすることなく、レーザ光を光ディスクのトラックに正確に追従させることが可能である。このことから、アクチュエータ、対物レンズ等の大きさを大きくする必要がなく、光ピックアップの大きさを小さくすることが可能である。
【0067】
なお、上述の各実施形態において、光ピックアップAはBDの記録層にレーザ光を照射して情報の再生又は記録を行う光ピックアップであったが、これに限定されるものではなく、CD、DVD等の光ディスクの記録層にレーザ光を照射し情報の記録を行うものであってもよい。また、BD、DVD、CDのうち、少なくとも2種類の光ディスクに対して情報の再生又は記録を行う光ピックアップであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、光ディスク装置に備えられた光ピックアップに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 第1光源
100 ヒートシンク
2 1/2波長板
3 偏光ビームスプリッタ
4 1/4波長板
5 コリメータレンズ
6 立上げミラー
7 対物レンズ
8 回折格子
9 センサレンズ
PD 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射されたレーザ光を集光する対物レンズと、
前記アクチュエータに前記対物レンズが光ディスクに接触するように駆動するフォーカス駆動手段と、
前記光ディスクで反射された戻りレーザ光を受光し信号を生成する受光素子と、
前記受光素子で生成された信号をもとにフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー検出手段と、を備えた光ピックアップであって、
前記受光素子で検出される信号の性能が最良となるように前記フォーカス駆動手段でデフォーカス調整を行った後、前記戻りレーザ光の前記受光素子に対するずれ量を検出し、そのずれ量をもとに、前記対物レンズと前記光ディスクとの距離を補正するデフォーカス補正値を算出し、前記デフォーカス補正値をもとに前記フォーカス駆動手段を制御して、前記光ディスクの距離を補正するデフォーカス補正を行う制御手段を備えていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記デフォーカス調整終了時の前記フォーカスエラー信号に対して、前記デフォーカス補正値で補正し、補正されたフォーカスエラー信号が前記フォーカスエラー検出手段で検出できるように、前記フォーカス駆動手段を駆動する請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記デフォーカス補正値を、前記ずれ量に前記制御手段に備えられた補正係数を乗ずることで算出する請求項1又は請求項2に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記デフォーカス調整後、前記戻りレーザ光の前記受光素子に対してずれているかどうか検出し、ずれが無い場合は処理を終了し、ずれがある場合はずれ量を検出する請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記制御手段は、前記デフォーカス調整を行うとき、前記受光素子で検出した信号のジッター値が最小となるように前期フォーカス制御手段を駆動する請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ピックアップ。
【請求項6】
光ディスクで反射された戻りレーザ光を受光し、変換された信号の性能が最良となるように対物レンズと前記光ディスクとの距離を調整するデフォーカス調整工程と、
前記戻りレーザ光と前記戻りレーザ光を受光する受光素子に対するずれ量を検出するずれ量検出工程と、
前記ずれ量をもとに前記対物レンズと前記光ディスクとの距離を補正するデフォーカス補正値を算出するデフォーカス補正値算出工程と、
前記デフォーカス補正値をもとに前記光ディスクと前記対物レンズとの距離を補正するデフォーカス補正工程を備えていることを特徴とする光ピックアップの調整方法。
【請求項7】
前記デフォーカス補正工程は、前記デフォーカス調整工程終了後に検出されたフォーカスエラー信号を前記デフォーカス補正値で補正し、補正されたデフォーカスエラー信号が出力されるように前記対物レンズと前記光ディスクとの距離を補正する請求項6に記載の光ピックアップの調整方法。
【請求項8】
前記デフォーカス補正値算出工程は、前記ずれ量に予め与えられている補正係数を乗ずることで算出する請求項6又は請求項7に記載の光ピックアップの調整方法。
【請求項9】
前記デフォーカス調整工程と前記ずれ量検出工程との間に、前記戻りレーザ光が前記受光素子に対してずれているか否か検出するずれ検出工程をさらに備えており、
前記ずれ検出工程でずれが検出されたときは、前記ずれ量検出工程に入り、ずれが検出されなかったときは処理を終了する請求項6から請求項8のいずれかに記載の光ピックアップの調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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