説明

光ピックアップ装置

【課題】多層光ディスクに対しても、S/Nが良く、安定した信号を低コストで得ることができる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光ディスクを再生する第1信号面で反射し、回折型光学素子で回折した1次回折光は、光検出器9の受光セル9A〜9Dにスポット21a〜21dとして集光するが、第1信号面で反射して1次以外の次数で回折した回折光及び第2信号面で反射した回折光はクロストーク光となる。そこで、第1信号面からの−1次回折光24a〜24d、第2信号面からの1次回折光によるスポット25a〜25dが受光セル9A〜9D上に照射されないようにする。また、第2信号面からの0次回折光によるスポット23は、すべての受光セル上に照射させるまたはすべての受光セル上に照射させないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズと光検出器の間に複数の分割領域を有する回折型光学素子を備え、単層に信号面を有する光ディスクだけでなく複数層に信号面を有する光ディスクに対しても良好な記録または再生を行うことができる光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円盤状の光記録媒体である光ディスクには、透明基板上に螺旋状または同心円状のトラックが形成されている。そして、このトラックに対して映像情報、音声情報、コンピュータデータなどの情報を高密度に記録でき、且つ記録済みのトラックを再生する際に所望のトラックを高速にアクセスできることから、光ディスクは一般的な記録媒体として多用されている。
【0003】
この種の光ディスクとしてCD(Compact Disc)やDVD(Digital versatile Disc)などは既に市販され、最近では、より一層高密度化を図って大容量化した2種類の高密度光記録媒体が流通している。すなわち、BD(Blu-ray Disc)及びHD−DVD(High Definition DVD)である。
【0004】
また、各光ディスクを大容量化するため、複数層に信号面を有する多層光ディスク(以下、単に多層光ディスクという)の開発と規格化が進展している。DVD−ROM、DVD−Rの片面2層に信号面を有する光ディスク(以下、片面2層光ディスクという)は既に市販され、DVD−RW、BD、HD−DVDも片面2層光ディスクの規格化が進んでいる。更に、最近の学会では、BDの4層光ディスク、8層光ディスクの開発についての発表がなされた。
【0005】
ところで、前記したDVDの片面2層光ディスクを再生する光ピックアップ装置では、1ビームによるDPD(DifferentialPhaseDetection)法(位相差トラッキング法)を用いて、DPD信号と呼ばれるトラッキングエラー信号の検出を行っている。DPD法とは、光ディスクの信号面から反射して戻る光(以下、反射光という)を受光して得られる光強度変調信号の位相差に基づいて、DPD信号を得る方法である。しかし、DVD−R、DVD−RWといった記録型光ディスクに対しては、信号記録後においてはDPD信号の検出ができるものの、信号記録前においてはDPD信号の検出ができない。そこで、DVDの記録型光ディスクに対しては、3ビームによるDPP(DifferentialPush Pull)法(差動プッシュプル法)を用いて、DPP信号と呼ばれるトラッキングエラー信号の検出を行っている。DPP法とは、メインビームのプッシュプル信号と前後サブビームのプッシュプル信号との差動をとることで、オフセットの無いトラッキングエラー信号を得る方法である。
【0006】
波長405nm程度の青色レーザ光源を用いて記録または再生するHD−DVDでは、再生型、記録型光ディスクに対して、それぞれ前記したDVDと同様のトラッキングエラー信号の検出方法を用いている。一方、波長405nm程度の青色レーザ光源を用いて記録または再生する別規格のBDでは、BD−ROMにおいてはDPD信号を検出できるものの、記録型光ディスクにおいては信号記録後の状態でDPD信号の検出が規格として保証されていない。そのため、記録型でも再生型でもDPP信号を検出するのが一般的である。
【0007】
ここで、片面2層光ディスクにおいてDPP法を用いた場合は、以下のような問題がある。記録または再生していない他の層、すなわちデフォーカスしている層(以下、他層という)の信号面からの反射光が、不要なクロストーク光として光検出器に入射し、記録または再生している層(以下、記録再生層という)の信号面からの反射光と重なることで干渉性のノイズが発生する。この干渉性のノイズによる振る舞いは、干渉する2つの光の間の光路差、すなわち、光ディスクの層間距離による光路差で決まる。更に、このノイズによる振る舞いは、光ディスクのトラック位置による層間距離の変動、光ディスクのチルトの状態、再生している記録用のトラック(グルーブ)の影響も受ける。
【0008】
また、DPP信号を用いた場合は、記録時のサブビームによる誤記録を防ぐため、及び光の効率的な利用のため、サブビームの光量はメインビームよりも小さく設定されている。このため、サブビームは、クロストーク光の影響をメイン光よりも大きく受けるために、前記の問題が顕著に生じる。
【0009】
このクロストーク光の影響は、DVDの片面2層光ディスクの場合も生じていた。しかし、DVDと比較して、BDではより安定な記録、再生ができないと報告されている(例えば、非特許文献1参照)。その理由は、次の通りである。第1に、層間距離がDVDよりも狭くなって光路差が小さくなり、またDVDより対物レンズの開口数(NA)が上がっているため、クロストーク光のスポットサイズが大きくなったことである。第2に、波長405nmの青色レーザ光源では、レーザの干渉性が上がっていることである。
【0010】
そこで、これらの問題を解決する方法として、1ビーム方式によるAPP(Advanced Push Pull)法(アドバンスドプッシュプル法)を用いるトラッキングエラー信号の検出方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0011】
図18は非特許文献2記載の従来の光ピックアップ装置の検出系の一例の構成図、図19は非特許文献2記載の従来の光ピックアップ装置の検出系に用いるHOEパターン(ファーフィールドパターン)の一例を示した図、図20は非特許文献2記載の従来の光ピックアップ装置のクロストーク光の広がりの一例を示した図である。
【0012】
図18、図19、図20を用いて、光ディスクからの反射光をPD(光検出器)で受光するまでの従来の光ピックアップ装置の動作を簡単に説明する。図18において、フォーカスエラー信号は次のようにして検出される。光ディスクの信号面からの反射光が、ホログラム光学素子(以下、HOEという)101によって回折作用を受けずに透過し、レンズ102を通って収束光となり、シリンドリカルレンズ103を通って非点収差が与えられ、フォーカス用PD104上で受光されて検出される。
【0013】
一方、トラッキングエラー信号は次のようにして検出される。光ディスクの信号面からの反射光は、HOE101によって回折され、レンズ102を通って収束光となり、シリンドリカルレンズ103でHOE101によって生じる非点収差がキャンセルされ、トラッキング用PD105(105A〜105D)で受光されて検出される。
【0014】
図19はHOE101のパターンを示しており、HOE101は5つの領域101A〜101Eに分割されている。図20はフォーカシング用PD104、トラッキング用PD105における信号検出光のスポット及びクロストーク光のスポットの状態を示している。記録再生層の信号面からの反射光で且つHOE101において回折作用を受けない光は、受光部104でスポット106を形成し、フォーカスエラー信号を検出するための信号検出光となる。
【0015】
記録再生層の信号面からの反射光で且つ領域101Aにおいて回折した光はPD105A上でスポット107Aを形成し、領域101Bにおいて回折した光はPD105B上でスポット107Bを形成し、領域101Cにおいて回折した光はPD105C上でスポット107Cを形成し、領域101Dにおいて回折した光はPD105D上でスポット107Dを形成し、それぞれトラッキング信号を検出するための信号検出光となる。また、記録再生層の信号面からの反射光で且つ領域101Eにおいて回折した光はスポット107Eを形成し、フォーカシング用PD104及びトラッキング用PD105上には照射されない。
【0016】
次に、他層の信号面からのクロストーク光について説明する。他層の信号面からの反射光で且つHOE101において回折作用を受けないクロストーク光によるスポット108は、フォーカシング用PD104上に照射されるものの、トラッキング用PD105上には照射されない。他層の信号面からの反射光で且つ領域101Aにおいて回折したクロストーク光はスポット109Aを、領域101Bにおいて回折したクロストーク光はスポット109Bを、領域101Cにおいて回折したクロストーク光はスポット109Cを、領域101Dにおいて回折したクロストーク光はスポット107Dをそれぞれ形成し、トラッキング用PD105の周辺に位置するため、トラッキング用PD105上には照射されない。
【0017】
また、領域101Eにおいて回折したクロストーク光はスポット109Eを形成して、フォーカシング用PD104の左右に位置し、トラッキング用PD105上には照射されない。そして、トラッキングエラー信号TAPPは、PD105Aで得られる電気信号をTA、PD105Bで得られる電気信号をTB、PD105Cで得られる電気信号をTC、PD105Dで得られる電気信号をTDとするとき、APP法を用いて以下の(3)式により算出される。
TAPP=TC−TD−Tk・(TA−TB) …(3)
ここで、Tkは定数である。
【0018】
また、クロストーク光の問題を解決する他の方法として、非特許文献2と同様に1ビーム方式によるPP法を用いるトラッキングエラー信号の検出方法が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。図21は非特許文献3記載の従来の光ピックアップ装置の検出系に用いる液晶素子の一例の構造図、図22は非特許文献3記載の従来の光ピックアップ装置の受光セル上にビームがスポットを形成する状態を示した図である。
【0019】
図21及び図22を用いて、非特許文献3記載の従来の光ピックアップ装置における光ディスクの信号面からの反射光を検出するまでの動作を簡単に説明する。図21(a)に示すように、液晶素子110は3層からなり、光ディスク(不図示)側から非偏光HOE111、液晶アクティブローテータ112、偏光HOE113の順に形成される。
【0020】
図21(b)に示すように、非偏光HOE111はフォーカスエラー信号を検出するために、レンズ効果を有する回折素子であり、±1次回折光を発生させるものである。液晶アクティブローテータ112は電圧のオン(ON)、オフ(OFF)で偏光方向を変えるものである。偏光HOE113は、図21(c)に示す記録型用パターン113Aと、図21(d)に示す再生型用パターン113Bの積層によって構成されている。
【0021】
記録型のトラッキングエラー信号を検出する場合には、液晶アクティブローテータ112で電圧をオフにして、入射偏光方向と垂直な方向に射出偏光方向を変える。そして、図22(a)に示すように、偏光HOE113のうち記録型用パターン113Aを作用させ、PD114上で0次、1次、−1次回折光が受光され、非特許文献2と同様のAPP法を用いてトラッキングエラー信号が検出される。その際、記録型用パターン113Aの中央の領域113Eはトラッキングエラー信号の演算から除かれ、クロストーク光の影響を減らしている。
【0022】
一方、再生型のトラッキングエラー信号を検出する場合には、液晶アクティブローテータ112で電圧をオンにして、入射偏光方向と射出偏光方向を同じにする。そして、図22(b)に示すように、偏光HOE113のうち再生型用パターン113Bを作用させ、PD114上で0次、1次、−1次回折光が受光され、DPD法を用いてトラッキングエラー信号が検出される。
【0023】
【非特許文献1】Alexander van der Lee,et.al.,"Drive consideration for multilayer discs",ISOM06 Technical Digest P.30 Mo-C-5
【非特許文献2】Kousei SANO,et.al.,"Novel One-Beam Tracking Detection Method for Dual-Layer Blu-ray Discs",Japanese Journal of Applied Physics Vol.45,No.2B,2006,pp.1174-1177(第4図、第6図、第7図)
【非特許文献3】Noriaki Nishi et.al.,"Novel One-Beam Detection Method with Changeable Multi Division Patterns",Proc. of SPIEVol.6282,62821H-1(第4図、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
図18〜図20を用いて説明した非特許文献2記載の従来の光ピックアップ装置では、トラッキング用PD105にクロストーク光の影響が生じないようにしてトラッキングエラー信号を安定にしている。しかし、フォーカス用PD104とトラッキング用PD105と検出ビームを2つに分け、フォーカス用PD104から得られる信号はメイン信号の検出には用いることができないので、信号出力が低下し、信号検出のS/Nが低下する。特に、高速な再生を行う場合には顕著に問題となる。
【0025】
また、図21及び図22を用いて説明した非特許文献3記載の従来の光ピックアップ装置では、クロストーク光の影響を少なくして、記録型、再生型のトラッキングエラー信号検出を行うことができるものの、液晶アクティブローテータ112や2パターンの偏光HOE113A、113B等の高価な部品が多い構成であるため、装置全体が高価となる問題がある。
【0026】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、多層光ディスクに対して情報を記録し、または多層光ディスクから情報を再生する場合に、S/Nが良く、安定した信号を低コストで得ることができる光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、前述した従来の技術の課題を解決するため、次の構成を有する光ピックアップ装置を提供するものである。
レーザ光を射出するレーザ光源(2)と、レーザ光源(2)から射出された光(LS)を略平行光に変換するコリメータレンズ(4)と、略平行光を集光して、少なくとも第1の信号面(10B1)と第2の信号面(10B2)を有する光ディスク(10)に対して、第1(10B1)または第2の信号面(10B2)にスポットを形成する対物レンズ(7)と、第1(10B1)または第2の信号面(10B2)からの反射光(LT)の略光束中心を通るように少なくとも2つの分割線が配置された複数の分割線(8i,8j)と、複数の分割線(8i,8j)により分割されて、反射光(LT)をそれぞれ所定方向に回折させる各領域(8A〜8D)とを有する回折型光学素子(8)と、回折型光学素子(8)によって所定方向に回折され、非点収差を付与された信号検出光(21a〜21d)を個別に受光し、信号検出光(21a〜21d)が非点収差により生じる2つの焦線のほぼ中間で最小錯乱円となる位置に配置された複数の受光セル(9A〜9D)とを有する光検出器(9)とを備え、光ディスクの光入射面(10A)から第1の信号面(10B1)までの厚さをt1、第2の信号面(10B2)までの厚さをt2、光検出器の受光面上の光軸中心(9P)から各受光セル(9A〜9D)までの距離の最長距離をd1、最短距離をd2、光ディスク(10)の基板屈折率をn、対物レンズ(7)の開口数をNAo、対物レンズ(7)の焦点距離をfo、コリメータレンズ(4)の焦点距離をfcとするとき、以下の(1)式、(2)式のいずれかを満たす光ピックアップ装置(1)である。
【数5】

【数6】

【0028】
また、レーザ光を射出するレーザ光源(2)と、レーザ光源(2)から射出された光(LS)を略平行光に変換するコリメータレンズ(4)と、略平行光を集光して、少なくとも第1の信号面(10B1)と第2の信号面(10B2)を有する光ディスク(10)に対して、第1(10B1)または第2の信号面(10B2)にスポットを形成する対物レンズ(7)と、光ディスク(10)のトラックを投影したとき、第1の分割線(50i)は前記トラックの方向と垂直な方向に配置され、第2の分割線(50j)は第1の分割線と40°以上50°以下の角度方向で配置され、第3の分割線(50k)は第1の分割線と角度−50°以上−40°以下の角度方向で配置され、第1、第2、第3の分割線(50i,50j,50k)は第1(10B1)または第2の信号面(10B2)からの反射光(LT)の略光束中心を通るように配置された3つの分割線(50i,50j,50k)と、3つの分割線(50i,50j,50k)により分割されて、反射光(LT)をそれぞれ所定方向に回折させる6つの領域(50A〜50F)とを有する回折型光学素子(50)と、回折型光学素子(50)によって所定方向に回折され、非点収差を付与された信号検出光(61a〜61f)を個別に受光し、信号検出光が非点収差により生じる2つの焦線のほぼ中間で最小錯乱円となる位置に配置された複数の受光セル(51A〜51F)とを有する光検出器(51)とを備え、光ディスクの光入射面(10A)から第1の信号面(10B1)までの厚さをt1、第2の信号面(10B2)までの厚さをt2、光検出器の受光面上の光軸中心(51P)から各受光セル(51A〜51F)までの距離の最長距離をd1、最短距離をd2、光ディスク(10)の基板屈折率をn、対物レンズ(7)の開口数をNAo、対物レンズ(7)の焦点距離をfo、コリメータレンズ(4)の焦点距離をfcとするとき、以下の(1)式、(2)式のいずれかを満たす光ピックアップ装置(1)である。
【数7】

【数8】

【0029】
更に、記録または再生している層の信号面(10B1)からの反射光(LT)で、且つ回折型光学素子の任意の領域(8A〜8D,50A〜50F)で回折された次数ma(maは0以外の整数)以外の回折光によるクロストーク光(22,24a〜24d,62,64a〜64f)と、記録または再生していない層の信号面(10B2)からの反射光で、且つ回折型光学素子の任意の領域(8A〜8D,50A〜50F)で回折された次数mb(mbは0以外の整数)の回折光によるクロストーク光(25a〜25d,65a〜65f)が、任意の各受光セル(9A〜9D,51A〜51F)に照射しないように各受光セル(9A〜9D,51A〜51F)すべてが配置されている光ピックアップ装置(1)である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光ピックアップ装置によれば、記録再生層の信号面からの1ビームの反射光を回折型光学素子に入射して、回折型光学素子の各分割領域で所定方向に回折させ、更に非点収差を付与させた信号検出光を光検出器の各受光セルでそれぞれ受光させる構成としている。そのため、従来の非点収差法によるフロンエンドプロセッサ(FEP)に容易に対応でき、S/Nの良いフォーカスエラー信号を得ることができる。
【0031】
また、他層の信号面からの反射光を回折型光学素子に入射して、回折作用を受けずに透過した0次回折光をすべての受光セル上に照射させる構成としている。そのため、各電気信号を演算することにより、S/Nが良く安定したフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を得ることができる。
【0032】
また、他層の信号面からの反射光を回折型光学素子に入射して、回折作用を受けずに透過した0次回折光をすべての受光セル上に照射させない構成としている。そのため、各電気信号を演算することなく、より一層S/Nが良く安定したフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を得ることができる。
【0033】
また、記録再生層の信号面からの反射光を回折型光学素子に入射して、信号検出光以外の任意の次数で回折されたクロストーク光と、他層の信号面からの反射光を回折型光学素子に入射して、0次以外の任意の次数で回折されたクロストーク光が、すべての受光セル上に照射しない構成としている。そのため、より一層S/Nが良く安定したフォーカスエラー信号、及びトラッキングエラー信号を得ることができる。
【0034】
また、液晶素子等の高価な部品を使うことなく1枚の回折型光学素子のみで、クロストーク光が受光セル上に照射しない構成としているので、低コストである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。図1は、本発明の光ピックアップ装置1の全体構成を示した図である。光ピックアップ装置1は、レーザ光源2から射出する波長λ=405nmのレーザ光LSを用いて、Blu−ray規格の片面2層の信号面10Bを有する光ディスク(BD)10に対して記録し、または光ディスク10から情報を再生する装置である。光ディスク10は、光入射面10Aから第1の信号面までの厚さt1=0.075mm、第2の信号面までの厚さt2=0.1mmを有する。
【0036】
対物レンズ7は第1、第2の信号面の中間の厚さ0.0875mmのとき、最適にレーザ光を集光する設計とされている。第1の信号面10B1に対する記録または再生を行う場合は、コリメータレンズ4を光路方向に移動して、コリメータレンズ4から発せられる光を僅かに収束光とすることにより、良好に記録または再生ができる。また、第2の信号面10B2に対する記録または再生を行う場合は、コリメータレンズ4を光路方向に移動して、コリメータレンズ4から発せられる光を僅かに発散光とすることにより、良好に記録または再生ができる。以下、第1の信号面10B1を記録再生層の信号面、第2の信号面10B2を他層の信号面として説明する。
【0037】
レーザ光源2の発光点2Pより射出されたレーザ光LSはp偏光の直線偏光であり、光路分離素子3を透過する。光路分離素子3は偏光ビームスプリッタやハーフミラー等、レーザ光源2から光ディスク10へ向かう光と、光ディスク10からの反射光が光検出器9へ向かう光とを分離する機能を有するものであれば良い。また、素子形状は角形でも平板状でも良い。ここでは、光路分離素子3を偏光ビームスプリッタとして説明する。
【0038】
偏光ビームスプリッタ3に入射した光は、p偏光を透過させ、s偏光を反射させる偏光選択性誘電体多層膜3Aを透過した後、コリメータレンズ4により僅かに収束光とされ、平板ミラー5の反射膜5Aにより90°の角度で偏向されて、1/4波長板6によりλ/4の位相差が与えられ、円偏光となり対物レンズ7に入射する。対物レンズ7で絞って得られたビームは、光ディスク10の光入射面10Aから入射して、記録再生層の信号面10B1上で収差が良好な状態で集光して、記録または再生が行われる。
【0039】
そして、記録再生層の信号面10B1からの反射光LTは、対物レンズ7に再入射し、この対物レンズ7により僅かに発散光となり、1/4波長板6に入射してλ/4の位相差が与えられ、s偏光の直線偏光となる。その後、平板ミラー5の反射膜5Aにより90°の角度で偏向され、コリメータレンズ4により収束光となり、偏光ビームスプリッタ3に入射する。
【0040】
図2は光ピックアップ装置1の検出系を詳細に示した図である。図2に示すように、偏光ビームスプリッタ3に入射したs偏光の反射光LTは、偏光選択性誘電体多層膜3Aで反射され、回折型光学素子8に入射してHOE面8Zの各分割領域で所定の方向に回折され、3次非点収差(以下、単に非点収差という)が付与される。非点収差を付与する手段は、HOE8Zの各分割領域を用いても、シリンドリカルレンズ等を用いても良いが、本実施の形態ではHOE8Zの各分割領域で非点収差が付与されるものとする。非点収差が付与された回折光は、光検出器9の受光面上の受光セルで信号検出光のスポットとして受光される。その後、光電変換され、各電気信号に対してそれぞれ後述する所定の演算式に従って、トラッキングエラー信号,フォーカスエラー信号,メインデータ信号が算出される。
【0041】
次に、本発明の要部である光ピックアップ装置1の検出系について、図3〜図5を用いて説明する。ここで、図3はHOE面8Zの分割領域8A〜8Dを示した図、図4は光検出器9の受光セル9A〜9Dの配置を示した図、図5は図1中の射出側の実効距離N1と検出側の実効距離N2を示した図である。
【0042】
図3において、偏光ビームスプリッタ3で反射され、回折型光学素子8に入射した反射光LTは、回折型光学素子8のHOE面8Z上の4つの分割領域8A〜8Dでそれぞれ次数maの回折光によって所定方向に回折される。なお、分割領域8A〜8Dで信号検出光として回折させる次数maは、0以外の任意の整数を用いることができるが、本実施形態ではma=1として説明する。
【0043】
図3に示すように、4つの分割領域8A〜8Dは光軸中心8Pを通る2本の分割線8i,8jによって分けられる。2本の分割線8i,8jは、HOE面8Z上に光ディスク10のトラックを投影した時のそのトラックの方向と垂直な方向(以下、ラジアル方向という)に対し、±45°の角度方向に配置される。そして、分割領域8A〜8Dはそれぞれ異なる回折構造をもつホログラムパターンとなっており、且つma=1の1次回折光に対し非点収差を付与する構成となっている。よって、4つの分割領域8A〜8Dにそれぞれ対応して非点収差が付与された4つの1次回折光が生じる。なお、対物レンズ7でのレンズシフトやレンズチルトがない状態では、記録再生層の信号面10B1からの反射光の光束中心がほぼHOE面8Zの光軸中心8Pを通る。また、分割領域8A〜8Dを合わせたものは円形となっているが、楕円形、角形等でも良い。
【0044】
その後、4つの1次回折光は、図4に示す光検出器9の受光面に配置された受光セル9A〜9D上で信号検出光のスポットを形成して受光される。受光セル9A〜9DはHOE面8Zの分割領域8A〜8Dの各回折方向に応じて配置されており、分割領域8Aで回折された1次回折光は受光セル9A(9A1と9A2にまたがる)上で信号検出光のスポットを形成して受光される。同様に、分割領域8Bで回折された1次回折光は受光セル9B(9B1と9B2にまたがる)上で、分割領域8Cで回折された1次回折光は受光セル9C上で、分割領域8Dで回折された1次回折光は受光セル9D上で、それぞれ信号検出光のスポットを形成して受光される。
【0045】
HOE面8Zの光軸中心8Pと光検出器9の受光面上の受光面中心9Pは、光軸方向でほぼ一致している。受光面中心9Pは、分割領域8A〜8Dで回折せずに透過した0次回折光がほぼ集光する位置である。また、受光セル9A,9Bの中点9Rから受光面中心9Pまでの距離と、受光セル9C,9Dの中点9Sから受光面中心9Pまでの距離はほぼ等しいのが望ましい。その理由は、それぞれの距離が大きく異なると、分割領域8A〜8Dのホログラムパターンの回折ピッチが変わり、各受光セル9A〜9Dでの各光量が異なるからである。
【0046】
また、光ディスク10のトラックを光検出器9の受光面に投影した時、受光セル9Aはラジアル方向で受光セル9A1と9A2に2分割される。同様に、受光セル9Bはラジアル方向で受光セル9B1と9B2に2分割される。後述する非点収差法を用いてフォーカスエラー信号を算出するには、受光セル9A,9Bはそれぞれ2分割されている必要がある。また、非点収差は一般的に45°方向に与えられるものであり、分割領域8A,8Bで45°方向に非点収差を与えられると、最小錯乱円の位置にあるスポットは90°回転する。そのため、受光セル9A,9Bはラジアル方向で分割されるのが望ましい。
【0047】
各受光セル9A〜9D上での各信号検出光のスポットは、後述するように分割領域8A〜8Dに応じた扇形状となるが、分割領域がなく円形状のホログラムパターンで最小錯乱円となる円形状スポットと考えた場合に適切な非点収差を有し、他の収差は発生しないものである。そして、非点収差により生じる2つの焦線のほぼ中間でスポットが最小錯乱円となるので、この中間位置に受光セル9A〜9Dが配置される。また、分割領域8A〜8Dで与えられる非点収差は、少なくとも8A及び8Bでは同方向で且つ45°方向が良い。ただし、フォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号等のサーボ信号による光ピックアップ装置1の調整を考慮すれば、すべての分割領域8A〜8Dで与えられる非点収差は、同方向で且つ45°方向であることが望ましい。なお、ホログラムパターンとは別にシリンドリカルレンズを入れて非点収差を与えても良い。
【0048】
図5において、実効距離N1はレーザ光源2の発光点2Pから偏光ビームスプリッタ3の入射面までの実効距離、実効距離N2は偏光ビームスプリッタ3の射出面から受光面中心9Pまでの実効距離N2を示している。実効距離N1,N2とは硝材の屈折率で決まる空気換算距離を意味している。実効距離N1とN2が等しいとき、記録再生層の信号面10B1からの反射光で、且つHOE面8Z上の各分割領域8A〜8Dで何ら回折作用を受けずに透過した0次回折光は、受光面中心9Pで集光する。即ち、レーザ光源2の発光点2Pと光検出器9の受光面中心9Pは共役配置の関係になる。
【0049】
また、図4に示した中点9Rから受光面中心9Pまでの距離と、中点9Sから受光面中心9Pまでの距離はほぼ等しい。しかし、各分割領域8A〜8Dから、それぞれ対応した受光セル9A〜9Dまでの各距離はそれぞれ若干異なる。そのため、各分割領域8A〜8Dで回折された各1次回折光を同一平面上で、且つ同じスポット半径で受光するには、各分割領域8A〜8Dでそれぞれ異なるパワー成分が必要となる。パワー成分とはレンズ作用に相当するものであり、回折面パワーのことを意味している。1次回折光は0次回折光に最も近接する回折光であるため、最低限の微小なパワーとすることができる。HOE面8Zの位置ずれ時の公差は、パワー成分が少ないほど広く取ることができるので、次数ma=1の回折光が最も望ましい。
【0050】
分割領域8A〜8Dで回折させる1次回折光は70%以上が望ましいが、その場合でも次数ma=1以外の回折光が僅かな回折効率で発生する。任意の次数maの回折光は、maの値が大きくなればなるほど受光セル9A〜9Dから離れる位置でスポットを形成する。そのため、次数maの回折光の中でも受光セル9A〜9Dに照射される可能性が高い0次回折光に留意する必要がある。
【0051】
図6は他層の信号面10B2からの反射光で、且つHOE面8Zの各分割領域8A〜8Dで何ら回折作用を受けずに透過した0次回折光によるスポット23がすべての受光セル9A〜9D上に対して照射される限界を示した図である。このスポット23は、倍率に合わせて広がり局所的な光量は少ない。そして、このスポット23が一部の受光セル9A〜9D上に対して照射される場合、後述するフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号はオフセット成分が残るため、S/Nの悪い不安定な信号となる。一方、このスポット23がすべての受光セル9A〜9D上に対して照射される場合、減算による信号演算によって、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号は、オフセット成分が取り除かれる。そのため、S/Nが良く安定した信号が得られる。なお、スポット21a〜21dは記録再生層の信号面10B1からの反射光で、且つHOE面8Zの各分割領域8A〜8Dで回折された1次回折光によるスポット、すなわち信号検出光である。スポット22は記録再生層の信号面10B1からの反射光で、且つHOE面8Zの各分割領域8A〜8Dで何ら回折作用を受けずに透過した0次回折光によるスポットを示している。
【0052】
そこで、このスポット23がすべての受光セル9A〜9Dに対して照射される条件を考える。受光面中心9Pから各受光セル9A〜9Dまでの最長距離が、スポット23のスポット半径rPD以下であることを必要とする。図6中で、最長距離とは受光面中心9Pから受光セル9A1または9A2までの最も遠い距離d1をいう。
【0053】
ここで、光検出器9の受光面上で、スポット23の半径rPDについて説明する。各分割領域8A〜8Dで何ら回折作用を受けないスポット23の半径は、回折型光学素子8と同じ光学厚さの平板を透過した場合の半径に等しい。よって、スポット半径rPDは回折型光学素子8の位置には依存しない。また、前述の通り、発光点2Pと受光面中心9Pは共役配置であるから、コリメータレンズ4と受光面中心9Pの実効距離はコリメータレンズ4の焦点距離fcに等しい。従って、スポット23の半径rPDは、コリメータレンズ4での光束半径rcとの幾何学的な比例関係より、以下の(4)式で表される。
【数9】

ここで、zcはコリメータレンズ4の物体距離である。物体距離とは、物体側の原点((4)式中ではコリメータレンズ4の主点位置)を基準に光学系の光軸に沿って測った物点までの距離をいう。
【0054】
(4)式と同様に、対物レンズ7での入射瞳半径roとの幾何学的な比例関係より、コリメータレンズの半径rcは、以下の(5)式で表される。
【数10】

ここで、docはコリメータレンズ4と対物レンズ7の実効距離、zoは対物レンズ7の物体距離である。
【0055】
また、ガウスの結像公式により、物体距離zo、zcは以下の(6)式,(7)式で表される。
【数11】

【数12】

ここで、nは光ディスク10の基板屈折率、t1は光入射面10Aから第1の信号面10B1までの厚さ、t2は光入射面10Aから第2の信号面10B2までの厚さ、foは対物レンズ7の焦点距離である。そして、(7)式の(t2−t1)/nは記録再生層の信号面10B1から他層の信号面10B2までの距離(デフォーカス量)に相当する。
【0056】
(4)〜(7)式を用いると、スポット23の半径rPDは以下の(8)式で表される。
【数13】

ここで、NAoは対物レンズ7の開口数であり、すなわちroをfoで除した値である。
【0057】
最長距離d1は(8)式で表したrPD以下、すなわち以下の(9)式を満たせば良い。
【数14】

【0058】
(9)式より、最長距離d1は対物レンズ7やコリメータレンズ4の位置には依存しない。よって、デフォーカス量が最も大きいときのスポット23の半径rPDを予め求めておくことにより、このスポット23がすべての受光セル9A〜9Dに対して照射されることを可能にするものである。そして、(9)式を満たすことで、受光セル9A〜9Dの配置を近づけて、光検出器9の小型化を可能にする。例えばBDの場合、NAoは0.85、屈折率nは1.62、光入射面から第1の信号面までの厚さt1は0.075mm、光入射面から第2の信号面までの厚さt2は0.1mmであり、焦点距離fcを20mm、foを2mmとすると、d1≦0.258mmとなる。
【0059】
図6に示した方法よりもさらに望ましくは、スポット23がすべての受光セル9A〜9Dに対して照射されないようにすることである。その理由は、信号演算をするまでもなく、後述するフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号において、オフセット成分が発生しないからである。また、スポット23と信号検出光21a〜21dとの重なりによる干渉性ノイズも生じない。そのため、より一層S/Nが良く安定した信号が得られる。
【0060】
図7はスポット23がすべての受光セル9A〜9Dに対して照射されない限界を示した図である。スポット23がすべての受光セル9A〜9Dに対して照射されない条件を考えると、受光面中心9Pから各受光セル9A〜9Dまでの最短距離が、スポット23の半径rPD以上であることが必要である。図7中で、最短距離とは受光面中心9Pから受光セル9Dまでの最も近い距離d2をいう。
【0061】
そして、図6に示した前述の方法と同様の条件を求めると、最短距離d2は(8)式で示したスポット23の半径rPD以上であれば良く、以下の(10)式を満たせばよい。
【数15】

【0062】
図8はフォーカスエラー信号を得るためのSカーブとスポット形状を示した図である。図8(a)は、光ディスク10が対物レンズ7に近く、Sカーブが最大となるときの受光セル9A,9B上でのスポット形状である。このとき、受光セル9A1,9B2に対して信号検出光の大半のスポット21a,21bが照射され、受光セル9A2、9B1に対しては僅かなスポット21a,21bが照射されるのみである。図8(b)は光ディスク10が対物レンズ7から遠く、Sカーブが最小となるときの受光セル9A、9B上でのスポット形状である。このとき、受光セル9A2,9B1に対して大半のスポット21a,21bが照射され、受光セル9A1、9B2に対しては僅かなスポット21a,21bが照射されるのみである。そして、フォーカスを変化させてフォーカスエラー信号FEを算出することにより、図8(c)に示すように良好なSカーブ特性が得られる。図8(c)の横軸はデフォーカス量(1目盛り4μm)、縦軸はフォーカスエラー信号FE1のレベルを示す。図8(c)のフォーカスエラー信号FE1の最大レベルが図8(a)のとき、最小レベルが図8(b)のときである。なお、デフォーカスが全く無いときは、図6及び図7に示した均等な扇形状スポット21a,21bが形成される。
【0063】
図9は光検出器9の内部にある演算回路の回路系統図を示している。本回路は、フォーカスエラー信号FE1、トラッキングエラー信号PP1,APP1及びメイン信号RF1を算出する。まず、同図において、フォーカスエラー信号FE1を計算する方法について説明する。受光セル9A1から得られる電気信号A11、受光セル9A2から得られる電気信号A12、受光セル9B1から得られる電気信号B11,受光セル9B2から得られる電気信号B12、加算器31、32及び減算器37を用いて、以下の(11)式により算出される。
FE1=(A11+B12)−(A12+B11) …(11)
(11)式に示すように、フォーカスエラー検出として一般的な非点収差法が使えるので、光ピックアップ装置1は従来のFEPに対して容易に対応できる。
【0064】
図10は、HOE面8Z上において、記録再生層の信号面10B1から反射して形成されるスポット45,46を示した図である。なお、図10(a)はBlu−ray規格の光ディスク(BD)に対する記録または再生を行う場合、図10(b)はHD−DVD規格の光ディスク(HD−DVD)に対する記録または再生を行う場合である。記録再生層の信号面10B1からの反射光のスポット45,46には、トラックやピット(以下、トラックと記す)によって回折した1次光と回折しない0次光との重なり部分45a,46aが生じる。この重なり部分45a,46aが干渉して左右の光強度の違いが生じることによって、いわゆるプッシュプル信号成分が得られる。
【0065】
重なり部分45a,46aの大きさは光ディスクの規格で決まり、BDとHD−DVDではこの重なり部分45a,46aの割合が異なる。対物レンズ7の開口数、レーザ光LSの波長及び記録再生層の信号面10B1上のトラックピッチにより、0次光と1次光の重なる割合が一義的に定まる。
【0066】
図3の分割線8iと8j(それぞれの分割線のなす角度がラジアル方向に対して±45°)でHOE面8Zを分割すると、BDの場合の分割線8i,8jはスポット45の半径に対し約7%の余裕、HD−DVDの場合の分割線8i,8jはスポット46の半径に対し約14%の余裕をもつのみである。ここで、BDの場合、波長を405nm、トラックピッチを0.32μm、開口数を0.85、HD−DVDの場合、波長を405nm、トラックピッチを0.4μm、開口数を0.65としている。
【0067】
図3の分割線8iと8jによれば、重なり部分45a,46aがフォーカスエラー信号FEの計算で用いる分割領域8A,8B上に照射されることがない。よって、トラックを横断する際の光量変化が生じにくいため、トラック横断によるフォーカスエラー信号FEの変動が生じない。逆に重なり部分45a,46aが必要以上に含まれないため、トラックピッチの2倍の周期による回折光の影響をもフォーカスエラー信号FEから排除できる。BDの場合、分割線8iとラジアル方向とがなす角度が41.8°以下になると、重なり部分45a,46aと分割線8iが交わる。同様に、分割線8jとラジアル方向とがなす角度が−41.8°以上になると、重なり部分45a,46aと分割線8jが交わる。
【0068】
HD−DVDの場合、分割線8iとラジアル方向とがなす角度が39.7°以下になると、重なり部分45a,46aと分割線8iが交わる。同様に、分割線8jとラジアル方向とがなす角度が−39.7°以上になると、重なり部分45a,46aと分割線8jが交わる。分割線8i,8jが分割領域8A,8Bに少し交わることは影響が少なく、また0次光と1次光が重ならない部分が必要以上に多く含まれるのは好ましくない。以上の条件を考慮すると、分割線8iとラジアル方向とがなす角度は40°以上50°以下、分割線8jとラジアル方向とがなす角度は−50°以上−40°以下とするのが好ましい。そして、図3に示したように、分割線8iとラジアル方向とがなす角度は45°、分割線8jとラジアル方向とがなす角度は−45°とするのが最も望ましい。
【0069】
次に、トラッキングエラー信号を計算する方法について説明する。受光セル9Cで電気信号C1,受光セル9Dで電気信号D1が得られる。この電気信号C1,D1にはプッシュプル信号成分が含まれる。よって、通常のPP(Push Pull)法(プッシュプル法)によるトラッキングエラー信号PP1は、電気信号C1,D1及び減算器36を用いて、以下の(12)式により算出される。
PP1=C1−D1 …(12)
【0070】
ところで、通常のPP法あるいはDPP法によるトラッキングエラー信号は、レンズシフトやラジアル方向の光ディスクのチルト時にオフセットが発生する信号として知られている。このオフセットを低減したトラッキングエラー検出方法として、前述のAPP法が知られている。APP法によるトラッキングエラー信号APP1は、電気信号A11〜D1、加算器33,34、減算器36,39,42及び乗算器40を用いて、以下の(13)式により算出される。
APP1=(C1−D1)−k1・[(A11+B11)−(A12+B12)] …(13)
ここで、k1は乗算器40の乗算係数である。
【0071】
このトラッキングエラー信号APP1は、前記したレンズシフト等のオフセットのみならず、記録マークの境界で生じるオフセットも低減することが可能である。すなわち、信号A11と信号B11の和から信号A12と信号B12の差をとったDC成分で補正することにより、記録マークの境界で生じるオフセットが低減できる。なお、乗算係数k1は、レンズシフトと記録境界でのオフセットを補正し、また外乱などがあってもオフセットの発生が小さくなるように最適化したものである。以上により、トラッキングエラー信号PP1,APP1は3ビーム方式を用いることなく、1ビーム方式で得ることができる。
【0072】
また、メイン信号RFは、電気信号A11〜D1、加算器31、32、33、38及び41を用いて、以下の(14)式により算出される。
RF1=A11+A12+B11+B12+C1+D1 …(14)
【0073】
図11は、光検出器9の受光セル上でのクロストーク光の状態を示した図である。クロストーク光には、記録再生層の信号面10B1からの反射光で且つHOE面8Zにより信号検出光の次数ma以外で回折したクロストーク光と、他層の信号面10B2からの反射光で且つHOE面8Zにより次数mbで回折したクロストーク光とがある。
【0074】
第1に、記録再生層の信号面10B1から生じるクロストーク光を考える。図11中で、記録再生層の信号面10B1から生じるスポット21a〜21d、及び22は、図6,7で説明した通りである。記録再生層の信号面10B1からの反射光で、且つHOE面8Zの分割領域8A〜8Dで回折した次数ma=−1の回折光によるスポット24a〜24dは、受光面中心9Pからみてスポット21a〜21dと対称な位置に生じる。よって、図11に示す通り、スポット24a〜24dが各受光セル9A〜9D上に照射されないようにすることができる。そのため、より一層S/Nが良く安定した信号が得られる。なお、高次回折光によるスポットは受光セル9A〜9Dより離れる方向に生じるので、回折光としては次数ma=0,−1のみを考えればよい。
【0075】
第2に、他層の信号面10B2から生じるクロストーク光を考える。図11中で、他層の信号面10B2から生じるスポット23は、前述した(9),(10)式の条件を満たすことにより、各信号への影響を少なくするまたは影響を与えないようにできる。他層の信号面10B2からの反射光で、且つHOE面8Zの分割領域8A〜8Dで回折した次数mb=1の回折光によるスポット25a〜25dは、スポット21a〜21dから90°回った方向で扇形状に広がる。よって、図11に示す通り、スポット25a〜25dは各受光セル9A〜9D上にほとんど照射されないようにすることができる。そのため、より一層S/Nが良く安定した信号が得られる。
【0076】
以上説明してきたように、図3、図4に示すように、1枚の回折型光学素子と少ない受光セルで構成しているので、低コストでクロストーク光が受光セル上に照射しないようにできる。また、1ビーム方式であるので、グレーティングが不要となり、BDとHD−DVDのようにトラックピッチが異なる複数種の光ディスクに対応ができる利点がある。
【0077】
また、図6に示したように、他層の信号面からの反射光で且つHOE面で回折した0次回折光によるスポットが、すべての受光セル上に照射されないようにすることで、すべての電気信号に均等なオフセットを与えてS/Nが良く安定した信号を得ることができる。また、図7に示したように、他層の信号面からの反射光で且つHOE面で回折した0次回折光によるスポットが、すべての受光セル上に照射されないようにして、すべての電気信号にオフセットを生じさせずに、より一層S/Nが良く安定した信号を得ることができる。
【0078】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図12〜図17を参照し、第1の実施形態とは異なる点を中心として詳細に説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態の回折型光学素子8に代わって回折型光学素子50、光検出器9に代わって光検出器51を用いたものである(図1,図2参照)。それ以外の構成部品については図1、図2と同じであり、光学部品の配置も同じである。
【0079】
図12は、回折型光学素子50の6分割パターンを示した図、図13は光検出器51の受光セル51A〜51Fの配置を示した図である。HOE面50Zの6つの分割領域50A〜50Fは光軸中心50Pを通る3本の分割線50i,50j,50kによって分けられる。分割線50iはラジアル方向と同方向であり、分割線50j,50kは、分割線50iに対して±45°方向に配置される。そして、分割領域50A〜50Fはそれぞれ異なる回折構造をもつホログラムパターンとなっており、且つ次数ma=1の回折光に対し非点収差を付与する構成となっている。よって、6つの分割領域50A〜50Fにそれぞれ対応して非点収差が付与された6つの1次回折光が生じる。第1の実施形態と同様に、対物レンズ7でのレンズシフトやレンズチルトがない状態では、光ディスク10からの反射光の光束中心はほぼ光軸中心50Pを通る。
【0080】
その後、6つの1次回折光は光検出器51の受光面上に配置された受光セル51A〜51Fに信号検出光のスポットとして集光する。受光セル51A〜51FはHOE面50Zの分割領域50A〜50Fの各回折方向に応じて配置されており、分割領域50Aで回折された1次回折光は受光セル51A(51A1と51A2にまたがる)で受光される。同様に分割領域50Bで回折された1次回折光は受光セル51B(51B1と51B2にまたがる)で、分割領域50Cで回折された1次回折光は受光セル51Cで、分割領域50Dで回折された1次回折光は受光セル51Dで、分割領域50Eで回折された1次回折光は受光セル51Eで、分割領域50Fで回折された1次回折光は受光セル51Fで、信号検出光のスポットを形成してそれぞれ受光される。
【0081】
HOE面50Zの光軸中心50Pと光検出器51の受光面中心51Pは、光軸方向にほぼ一致している。さらに、受光セル51A〜51Fと受光面中心51Pとは同一平面上にある。受光面中心51Pは分割領域51A〜51Fで回折せずに透過した0次回折光がほぼ集光する位置である。また、第1の実施形態と同様の理由により、受光セル51A,51Bの中点51Qから受光面中心51Pまでの距離、51C,51Eの中点51Rから受光面中心51Pまでの距離、受光セル51D,51Fの中点51Sから受光面中心51Pまでの距離は、ほぼ等しいのが望ましい。
【0082】
また、光ディスク10のトラックを光検出器51の受光面上に投影した時、受光セル51Aはラジアル方向で受光セル51A1と51A2に、受光セル51Bはラジアル方向で受光セル51B1と51B2にそれぞれ2分割される。また、非点収差の方向についても第1の実施形態と同様である。
【0083】
各受光セル51A〜51F上での各信号検出光のスポットは、分割領域50A〜50Fに応じた扇形状となるが、分割領域がなく円形状のホログラムパターンで最小錯乱円となる円形状スポットと考えた場合に適切な非点収差を有し、他の収差が発生しないものである。そして、非点収差により生じる2つの焦線のほぼ中間でスポットが最小錯乱円となるので、この位置に受光セル51A〜51Fが配置される。第1の実施形態と同様に、レーザ光源2の発光点2Pと光検出器51の受光面中心51Pは共役配置の関係になる。
【0084】
図14は他層の信号面10B2からの反射光で、且つHOE面50Zの各分割領域50A〜50Fで何ら回折作用を受けずに透過した0次回折光によるスポット63がすべての受光セル51A〜51F上に照射される限界を示した図である。第1の実施形態と同様に、このスポット63がすべての受光セル51A〜51F上に照射される場合、減算による信号演算によって、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号は、オフセット成分が取り除かれる。そのため、S/Nが良く安定した信号が得られる。なお、スポット61a〜61fは記録再生層の信号面10B1からの反射光で、且つHOE面50Zの各分割領域50A〜50Fで回折された1次回折光によるスポット、すなわち信号検出光である。スポット62は記録再生層の信号面10B1からの反射光で、且つHOE面50Zの各分割領域50A〜50Fで何ら回折作用を受けずに透過した0次回折光によるスポットを示している。
【0085】
第1の実施形態と同様に、受光面中心51Pから受光セル51A〜51Fまでの最長距離d1を考えると、最長距離d1はスポット63の半径rPD以下、すなわち前述した(9)式を満たせばよい。
【0086】
図14に示した方法よりさらに望ましくは、スポット63がすべての受光セル51A〜51F上に照射されないようにすることである。その理由は、信号演算をするまでもなく、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号において、オフセット成分が発生しないからである。また、スポット63と信号検出光61a〜61fとが重なって干渉性ノイズも生じない。そのため、より一層S/Nが良く安定した信号が得られる。
【0087】
図15はスポット63がすべての受光セル51A〜51Fに照射されない限界を示した図である。第1の実施形態と同様に、スポット63がすべての受光セル51A〜51Fに照射されない条件を考えると、最短距離d2はスポット63の半径rPD以上、すなわち前述した(10)式を満たせばよい。
【0088】
図16は光検出器9の内部にある演算回路の回路系統図を示している。本回路は、フォーカスエラー信号FE1、トラッキングエラー信号PP1,APP1及びメイン信号RF1を算出する。まず、同図において、フォーカスエラー信号FE2を計算する方法について説明する。HOE面50Zの2つの分割領域50A〜50Bで回折された1次回折光は、各受光セル51A1〜51B2で信号検出光のスポット61a,61bを形成して受光される。そして、受光セル51A1〜51B2より、それぞれに対応した電気信号A21〜B22が得られる。この電気信号A21〜B22、加算器71、72及び減算器77を用いて、以下の(15)式より算出される。
FE2=(A21+A22)−(A22+B21) …(15)
(15)式に示すように、フォーカスエラー検出として一般的な非点収差法が使えるので、光ピックアップ装置1は従来のFEPに対して容易に対応できる。
【0089】
第1の実施形態の図10と同様に、HOE面50Z上において、記録再生層の信号面10B1から反射して形成されるスポットは、トラックによって回折した1次光と回折しない0次光との重なり部分が生じるので、プッシュプル信号成分が得られる。よって、分割線50iと分割線50jとがなす角度は40°以上50°以下とするのが好ましい。同様に、分割線50iと分割線50kとがなす角度は−50°以上−40°以下とするのが好ましい。そして、分割線50iと50jとがなすそれぞれの角度は45°、分割線50iと50kとがなすそれぞれの角度は−45°とするのが最も望ましい。
【0090】
HOE面50Zの4つの分割領域50C〜50Fで回折された1次回折光は、各受光セル51C〜51Fで信号検出光のスポット61c〜61fを形成して受光される。そして、各受光セル51C〜51Fより、それぞれに対応した電気信号C2〜F2が得られる。この電気信号C2〜F2はプッシュプル信号成分を含んでいる。よって、通常のプッシュプル法によるトラッキングエラー信号PP2は、電気信号C2〜F2、加算器75,76及び減算器80を用いて、以下の(16)式により算出される。
PP2=(C2+D2)−(E2+F2) …(16)
【0091】
また、トラッキングエラー信号APP2は、電気信号A21〜F2、加算器73,74,75,76、減算器79,80,83及び乗算器81を用いて、以下の(17)式により算出される。
APP2=(C2+D2)−(E2+F2)
−k2{(A21+B21)−(A22+B22)} …(17)
【0092】
さらに、メイン信号RFは、電気信号A21〜F2、加算器71,72,75,76,78,81及び83を用いて、以下の(18)式により算出される。
RF2=A21+A22+B21+B22+C2+D2+E2+F2 …(18)
【0093】
第2の実施形態の場合は、BD−ROMなどの再生型光ディスクに対応したDPD法によるトラッキングエラー信号を検出することが可能である。DPD信号は、電気信号C2と電気信号E2の和(C2+E2)と電気信号D2と電気信号F2の和(D2+F2)を比較演算することで得られる。よって、第2の実施形態はAPP法とDPD法が両立できる構成であり、第1の実施形態より多様な媒体に対応可能である。
【0094】
図17は、光検出器51の受光セル上でのクロストーク光の状態を示した図である。クロストーク光には、記録再生層の信号面10B1からの反射光で且つHOE面50Zにより信号検出光の次数ma以外で回折したクロストーク光と、他層の信号面10B2からの反射光で且つHOE面50Zにより次数mbで回折したクロストーク光とがある。
【0095】
第1に、記録再生層の信号面10B1から生じるクロストーク光を考える。図17中で、記録再生層の信号面10B1から生じるスポット61a〜61f、及び62は、図14,15で説明した通りである。記録再生層の信号面10B1からの反射光で、且つHOE面50Zの分割領域50A〜50Fで回折した次数ma=−1の回折光によるスポット64a〜64fは、受光面中心9Pからみてスポット61a〜61fと対称な位置に生じる。よって、図17に示す通り、スポット64a〜64fは各受光セル51A〜51F上に照射されないようにすることができる。なお、高次回折光によるスポットは受光セル51A〜51Fより離れる方向に生じるので、回折光としては次数ma=0,−1のみを考えればよい。
【0096】
第2に、他層の信号面10B2から生じるクロストーク光を考える。図17中で、他層の信号面10B2から生じるスポット63は、前述した(17),(18)式の条件を満たすことにより、各信号への影響を少なくするまたは影響を与えないようにできる。そして、前述した条件の通り、影響を少なくするまたは与えないことが可能である。他層の信号面10B2からの反射光で、且つHOE面50Zの分割領域50A〜50Fで回折した次数mb=1の回折光によるスポット65a〜65fは、スポット61a〜61fから90°回った方向で扇形状に広がる。よって、図17に示す通り、スポット65a〜65fは各受光セル51A〜51F上に対してほとんど照射されないようにすることができる。
【0097】
以上説明してきたように、図12、図13に示すように、1枚の回折型光学素子と少ない受光セルで構成しているので、低コストでクロストーク光が受光セル上に照射しないようにできる。また、1ビーム方式であるので、グレーティングが不要となり、BDとHD−DVDのようにトラックピッチが異なる複数種の光ディスクに対応ができる利点がある。また、第2の実施形態では、通常1つのシステムでは得ることが難しいDPD信号とAPP信号の2種類のトラッキングエラー信号を得ることができる。
【0098】
また、図14に示したように、他層の信号面からの反射光で且つHOE面で回折した0次回折光によるスポットが、すべての受光セル上に照射されないようにすることで、すべての電気信号に均等なオフセットを与えて、S/Nが良く安定した信号を得ることができる。また、図15に示したように、他層の信号面からの反射光で且つHOE面で回折した0次回折光によるスポットが、すべての受光セル上に照射されないようにして、すべての電気信号にオフセットを生じさせずに、より一層S/Nが良く安定した信号を得ることができる。
【0099】
なお、第1,第2実施形態では波長405nmの青色レーザ光源を1つ用いて、片面2層のBDに対応する光ピックアップ装置の構成を示したが、本発明はこの第1,第2実施形態に限定されるものではない。例えば、同じ青色レーザ光源を用いてBD,HD−DVDの双方に対応する光ピックアップ装置、DVDやCDにも対応する光ピックアップ装置、3層以上の光ディスクに対応する光ピックアップ装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の光ピックアップ装置の全体構成図である。
【図2】本発明の光ピックアップ装置の検出系を示した図である。
【図3】図1中のHOE面の4分割パターンを示した図である。
【図4】図1中の4分割パターンに対応した受光セルのパターンを示した図である。
【図5】図1中の射出側と検出側の実効距離を示した図である。
【図6】図4中の受光セルと他層からの反射光で且つ0次回折光のクロストーク光との位置関係を示した図である。
【図7】図4中の受光セルと他層からの反射光で且つ0次回折光のクロストーク光との別の位置関係を示した図である。
【図8】本発明装置におけるフォーカスエラー信号の例とそのときの受光セル上でのスポット形状を示した図である。
【図9】本発明装置における電気信号の演算回路のブロック図である。
【図10】図1中のHOE面上におけるトラックで回折した0次光と1次光の重なり部分を含むスポット形状を示した図である。
【図11】図4中の受光セル上でのクロストーク光の広がりを示した図である。
【図12】図1中のHOE面の6分割パターンを示した図である。
【図13】図1中の6分割パターンに対応した受光セルのパターンを示した図である。
【図14】図13中の受光セルと他層からの反射光で且つ0次回折光のクロストーク光との位置関係を示した図である。
【図15】図13中の受光セルと他層からの反射光で且つ0次回折光のクロストーク光との別の位置関係を示した図である。
【図16】本発明装置における信号出力の演算回路のブロック図である。
【図17】図13中の受光セル上でのクロストーク光の広がりを示した図である。
【図18】従来の光ピックアップ装置の検出系を示した図である。
【図19】従来の光ピックアップ装置の検出系に用いるHOEパターン(ファーフィールドパターン)を示した図である。
【図20】従来の光ピックアップ装置の信号検出光とクロストーク光のスポットの状態を示した図である。
【図21】従来の光ピックアップ装置の検出系に用いる液晶素子の構造を示した図である。
【図22】従来の光ピックアップ装置のビームが受光セルへ集光する状態を示した図である。
【符号の説明】
【0101】
1 光ピックアップ装置
2 レーザ光源
4 コリメータレンズ
7 対物レンズ
8,50 回折型光学素子
8Z,50Z HOE面
8A〜8D,50A〜50F 分割領域
8i,8j,50i,50j,50k 分割線
8P,50P 光軸中心
9,51 光検出器
9A〜9D,51A〜51F 受光セル
9P,51P 受光面中心
10 光ディスク
10A 光入射面
10B 信号面
10B1 第1の信号面(記録再生層の信号面)
10B2 第2の信号面(他層の信号面)
21a〜21d,61a〜61f 信号検出光によるスポット
22,23,24a〜24d,25a〜25d,62,63,64a〜64d ,65a〜65d クロストーク光によるスポット
LS 射出光
LT 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を射出するレーザ光源と、
前記レーザ光源から射出された光を略平行光に変換するコリメータレンズと、
前記略平行光を集光して、少なくとも第1の信号面と第2の信号面を有する光ディスクに対して、前記第1または第2の信号面にスポットを形成する対物レンズと、
前記第1または第2の信号面からの反射光の略光束中心を通るように少なくとも2つの分割線が配置された複数の分割線と、前記複数の分割線により分割されて、前記反射光をそれぞれ所定方向に回折させる各領域とを有する回折型光学素子と、
前記回折型光学素子によって所定方向に回折され、非点収差を付与された信号検出光を個別に受光し、前記信号検出光が前記非点収差により生じる2つの焦線のほぼ中間で最小錯乱円となる位置に配置された複数の受光セルを有する光検出器とを備え、
前記光ディスクの光入射面から第1の信号面までの厚さをt1、第2の信号面までの厚さをt2、前記光検出器の受光面上の光軸中心から前記各受光セルまでの距離の最長距離をd1、最短距離をd2、前記光ディスクの基板屈折率をn、前記対物レンズの開口数をNAo、前記対物レンズの焦点距離をfo、前記コリメータレンズの焦点距離をfcとするとき、以下の(1)式、(2)式のいずれかを満たすことを特徴とする光ピックアップ装置。
【数1】

【数2】

【請求項2】
レーザ光を射出するレーザ光源と、
前記レーザ光源から射出された光を略平行光に変換するコリメータレンズと、
前記略平行光を集光して、少なくとも第1の信号面と第2の信号面を有する光ディスクに対して、前記第1または第2の信号面にスポットを形成する対物レンズと、
前記光ディスクのトラックを投影したとき、第1の分割線は前記トラックの方向と垂直な方向に配置され、第2の分割線は前記第1の分割線と40°以上50°以下の角度方向で配置され、第3の分割線は前記第1の分割線と角度−50°以上−40°以下の角度方向で配置され、前記第1、第2、第3の分割線は前記第1または第2の信号面からの反射光の略光束中心を通るように配置された3つの分割線と、前記3つの分割線により分割されて、前記反射光をそれぞれ所定方向に回折させる6つの領域とを有する回折型光学素子と、
前記回折型光学素子によって所定方向に回折され、非点収差を付与された信号検出光を個別に受光し、前記信号検出光が前記非点収差により生じる2つの焦線のほぼ中間で最小錯乱円となる位置に配置された複数の受光セルを有する光検出器とを備え、
前記光ディスクの光入射面から第1の信号面までの厚さをt1、第2の信号面までの厚さをt2、前記光検出器の受光面上の光軸中心から前記各受光セルまでの距離の最長距離をd1、最短距離をd2、前記光ディスクの基板屈折率をn、前記対物レンズの開口数をNAo、前記対物レンズの焦点距離をfo、前記コリメータレンズの焦点距離をfcとするとき、以下の(1)式、(2)式のいずれかを満たすことを特徴とする光ピックアップ装置。
【数3】

【数4】

【請求項3】
記録または再生している層の信号面からの反射光で、且つ前記回折型光学素子の任意の前記領域で回折された次数ma(maは0以外の整数)以外の回折光によるクロストーク光と、
記録または再生していない層の信号面からの反射光で、且つ前記回折型光学素子の任意の前記領域で回折された次数mb(mbは0以外の整数)の回折光によるクロストーク光が、任意の前記各受光セルに照射しないように前記各受光セルすべてが配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−3986(P2009−3986A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161316(P2007−161316)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】