説明

光ピックアップ装置

【課題】 光ピックアップ装置に組み込まれるレンズホルダーの支持ワイヤーを正確に固定することが出来る装置を提供する。
【解決手段】 サポート部材9に設けられている印刷配線基板用固定部に固定されている印刷配線基板8と、対物レンズが搭載されているとともに一端が前記印刷配線基板用固定部に形成されている連通孔を通して前記印刷配線基板8に設けられているパターンに半田にて固定されている少なくとも4本の支持ワイヤー11、12、13、14によって対物レンズの光軸方向及び光軸方向に直交する方向である光ディスクの径方向への変位を可能に支持されたレンズホルダー2を備え、前記支持ワイヤー11、12、13、14の印刷配線基板8への半田付けをリフロー半田にて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に関し、特に対物レンズが搭載されているレンズホルダーの支持装置を容易に組み立てることが出来る機構に係る。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CD規格やDVD規格と呼ばれる光ディスクを使用するものが一般的であるが、最近ではBlu−ray規格と呼ばれる光ディスクを使用するものが普及している。斯かるブルーレイ規格の光ディスクは、CD規格やDVD規格の光ディスクと比較して信号の記録密度が高いので、光ピックアップ装置としての読み取り特性等の向上が要求されている。
【0004】
光ピックアップ装置では、周知のようにレーザーダイオード等から放射されるレーザー光を光ディスクに設けられている信号記録層に集光させる対物レンズを備えており、斯かる対物レンズは光ディスクの信号面に対して直角方向、即ち対物レンズの光軸方向及び光ディスクの径方向、即ち光軸方向に直交する方向への変位を行うことが出来るように構成されている。
【0005】
前述した対物レンズの光軸方向、一般的にはフォーカス方向と呼ばれる方向への変位動作は、フォーカシング制御動作と呼ばれる駆動制御動作によって行われ、光軸方向に直交する方向、一般的にはトラッキング方向と呼ばれる方向への変位動作は、トラッキング制御動作と呼ばれる駆動制御動作によって行われる。
【0006】
前述した対物レンズのフォーカス方向及びトラッキング方向への変位動作を行うために複数、一般的には4本の支持ワイヤーによって支持されたレンズホルダーと呼ばれる部材に対物レンズは搭載されている(特許文献1参照。)。
【0007】
斯かるレンズホルダー支持装置の一般的な構成について、図3に示す一部断面平面図及び図4に示す側面図を参照にして説明する。図において、1は対物レンズであり、レンズホルダー2の上面中央部に固定搭載されている。前記レンズホルダー2に搭載されている対物レンズ1の下方(図4において)には光ピックアップ装置を構成する固定基板に組み込まれているレーザーダイオードから放射されるレーザー光を該対物レンズ1に導く光学部品が周知のように配置されている。
【0008】
また、前記レンズホルダー2の側面等には、該レンズホルダー2をフォーカス方向へ変位させる駆動力を生成するフォーカシングコイル(図示せず)及び該レンズホルダー2をトラッキング方向へ変位させる駆動力を生成するトラッキングコイル(図示せず)が周知のように固装されている。
【0009】
3は金属製のフレームであり、前記レンズホルダー2を挟んで配置される一対のマグネット4、5が固着されるヨーク3a、3b及び一対のマグネット6、7が固着されるヨーク3c、3dが一体的に形成されている。斯かるマグネット4、5、6、7から生成される磁束と前記レンズホルダー2に固装されているフォーカシングコイル及びトラッキングコイルへ駆動制御電流が供給されることによって発生する磁束との協働により生成される変位力によってレンズホルダー2はフォーカシング方向及びトラッキング方向に変位せしめられるように構成されている。
【0010】
8は前記レンズホルダー2に固装されているフォーカシングコイル及びトラッキングコイルへ駆動信号を供給するパターンが形成されている印刷配線基板、9は合成樹脂にて成型されているサポート部材であり、前記印刷配線基板8と共に螺子10によって前記フレーム3に固定されている。
【0011】
11、12、13及び14は図3及び図4に示すように前記レンズホルダー2をフォーカス方向への変位動作及びトラッキング方向への変位動作を可能に支持するべく設けられているとともに前記フォーカシングコイル及びトラッキングコイルへ駆動制御信号を供給するべく設けられている金属製の第1、第2、第3及び第4支持ワイヤーであり、各々の一端11a、12a、13a及び14aは前記レンズホルダー2に設けられている固定用突起2a、2b、2c及び2dにて前記フォーカシングコイル及びトラッキングコイルと半田付けにて電気的に接続されるとともに該レンズホルダー2を支持するべく固定されている。
【0012】
15及び16は前記サポート部材9に形成されているとともに前記第1支持ワイヤー11及び第3支持ワイヤー13の一端が挿通される装填部であり、各々制振動作を行うダンプ材Dが装填されている。第1支持ワイヤー11及び第3支持ワイヤー13が挿通される装填部15及び16について説明したが、第2支持ワイヤー12及び第4支持ワイヤー14が挿通される装填部も同様に前記サポート部材9に形成されているとともにダンプ材Dも同様に装填されている。
【0013】
前記第1支持ワイヤー11の固定端11bは、前記サポート部材9に形成されている装填部15を挿通した状態にて前記印刷配線基板8に設けられているパターンに半田Sにて固定されている。同様に第3支持ワイヤー13の固定端13bは、前記サポート部材9に形成されている装填部16を挿通した状態にて前記印刷配線基板8に設けられているパターンに半田Sにて固定されている。また、図4に示すように第4支持ワイヤー14の固定端14bも前記印刷配線基板8に設けられているパターンに半田Sにて固定されている。そして、斯かる印刷配線基板8への第2支持ワイヤー12の固定端12bの固定動作も同様に行われている。
【0014】
前述した構成によれば、レンズホルダー2は印刷配線基板8に形成されているパターンに固定端が半田付けされている4本の支持ワイヤー11、12、13及び14によってフォーカス方向及びトラッキング方向への変位動作を可能に支持され、前記支持ワイヤー11、12、13及び14を介してフォーカシングコイル及びトラッキングコイルへ供給される駆動制御電流による変位動作によってフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作が行われることになる。
【0015】
そして、前述した制御動作が行われるとき、周知のようにサポート部材9に形成されている装填部に装填されているダンプ材Dによって不要な振動を抑える動作が行われることになる。
【0016】
斯かる構成のレンズホルダー支持装置が組み込まれた光ピックアップ装置によって光ディスクに記録されている信号の再生動作等を行う場合には、前述したフォーカス制御動作及びトラッキング制御動作を行うためにレンズホルダー2の変位動作が行われることになる。フォーカス制御動作によってレンズホルダー2のフォーカス方向への変位動作は行われるが、レンズホルダーの変位動作はディスク面が正しい位置、即ち光軸がディスク面に対して垂直な関係にあることを想定して行われるので、光ディスクの面が反っている場合には対物レンズ1の光軸がずれることになる。
【0017】
斯かる光軸のずれを補正する方法としてチルト調整動作を行うためのチルトコイルをレンズホルダーに設け、該チルトコイルに駆動信号を供給することによって傾きの補正動作を行うように構成された光ピックアップ装置が開発されている。斯かるチルトコイルが設けられている光ピックアップ装置では、チルトコイルに駆動信号を供給するワイヤーが2本追加されることになり、前記印刷配線基板8等への半田付け作業が増加することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2010−113781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述した構成の光ピックアップ装置において、支持ワイヤーの固定基板への固定作業及びフォーカシングコイルやトラッキングコイルとの接続は半田付けにて行われるが、斯かる半田付け作業は手作業にて行われている。斯かる半田付け作業を手作業にて行う場合、半田ごての先端が支持ワイヤーに接触してワイヤーを変形させてしまったり、半田ごての温度変化によって半田むらが生じたりするため支持ワイヤーの有効長にばらつきが生じるという問題がある。
【0020】
また、半田ごてのこて先が支持ワイヤーの表面に近づいた場合には、その部分が他の部分よりも高温になるため該支持ワイヤーの径方向の断面内において膨張または収縮の度合いに差が生じることになる。その結果、支持ワイヤーが径方向に変形し、溶融した半田が冷却して硬化する間に変形がそのまま残ってしまうという問題がある。
【0021】
更に、半田付け時の加熱の影響によって支持ワイヤーの長さ方向に膨張及び収縮が起こり、半田が冷却した後に支持ワイヤーに引っ張り又は圧縮応力が残るという問題がある。そして、光ピックアップ装置では、レンズホルダーを支持する支持ワイヤーは、複数設けられているので、前述した膨張、収縮及び変形等の現象が各支持ワイヤーに対して生じることになり、その結果レンズホルダーの支持動作を正確に行うことが出来ないという問題がある。
【0022】
本発明は、前述した問題を解決することが出来る光ピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、サポート部材に設けられている印刷配線基板用固定部に固定されている印刷配線基板と、対物レンズが搭載されているとともに一端が前記印刷配線基板用固定部に形成されている連通孔を通して前記印刷配線基板に設けられているパターンに半田にて固定されている少なくとも4本の支持ワイヤーによって対物レンズの光軸方向及び光軸方向に直交する方向である光ディスクの径方向への変位を可能に支持されたレンズホルダーを備え、前記支持ワイヤーの印刷配線基板への半田付けをリフロー半田にて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明は、前記レンズホルダーに固装されているコイルと支持ワイヤーとの半田付けをリフロー半田にて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0025】
そして、本発明は、サポート部材及びレンズホルダーをリフロー半田時の温度に耐える耐熱材料にて製造するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、レンズホルダーを支持する支持ワイヤーの印刷配線基板への半田固定をリフロー半田にて行うようにしたので、半田付けによる固定動作を同時に行うことが出来る。即ち、半田付け作業を同一の条件にて行うことが出来るので、複数の支持ワイヤーの印刷配線基板への固定作業をストレスを与えることなく均一に行うことが出来る。従って、本発明によれば支持ワイヤーによるレンズホルダーの支持動作を正確に行うことが出来るので、組立後に行われる検査作業を省略することが出来る。
【0027】
また、本発明は、リフロー半田にてレンズホルダーを支持する支持ワイヤーの印刷配線基板への固定動作を行うようにしたので、手作業にて半田付けを行う場合と比較して作業工数を大幅に減らすことが出来るという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の光ピックアップ装置を示す一部断面平面図である。
【図2】本発明の光ピックアップ装置を示す側面図である。
【図3】従来の光ピックアップ装置を示す一部断面平面図である。
【図4】従来の光ピックアップ装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
対物レンズが搭載されるレンズホルダーを支持する支持ワイヤーの印刷配線基板への固定動作を容易に且つ正確に行うことが出来る装置を提供する。
【実施例1】
【0030】
図1に示す一部断面平面図及び図2に示す側面図を参照して本発明に係る光ピックアップ装置について説明する。尚、図3及び図4に示す従来例と同一の部材には同一の符号を付している。
【0031】
本発明の光ピックアップ装置は、支持ワイヤー11、12、13及び14の印刷配線基板8への半田付け及びフォーカシングコイルやトラッキングコイルとの半田付けをリフロー半田にて行うようにしたことを特徴とするものである。
【0032】
斯かるリフロー半田は、印刷配線基板8上の半田付けを行うパターンにクリーム半田のような適当な粘度を有する半田付け材料を塗布した状態でリフロー炉内にて加熱し、クリーム半田を溶解させた後に冷却することによって半田付けを行うものである。
【0033】
図1に示す状態は、リフロー半田を行う状態を示すものであり、1Aは対物レンズが固定される対物レンズ固定孔である。即ち、リフロー半田を行う場合には、対物レンズは固定されていない。
【0034】
また、同図において、支持ワイヤー11、12、13及び14のフォーカシングコイル及びトラッキングコイルと半田付けされる一端11a、12a、13a及び14aはレンズホルダー2に設けられている固定用突起2a、2b、2c及び2dにて各コイルの接続端子とともにクリーム半田CS1が塗布された状態にある。
【0035】
そして、一端11a、12a、13a及び14a印刷配線基板8上のパターンと半田付けされる固定端11b、12b、13b及び14bはクリーム半田CS2が塗布された状態にある。
【0036】
斯かる状態において、リフロー半田付けが行われるが、レンズホルダー2は治具によって図1及び図2に示す固定位置に保持された状態にて行われる。また、リフロー炉による加熱温度は220度から260度にて行われるので、レンズホルダー2及びサポート部材は、前述した温度に耐えることが出来る耐熱材料、例えば液晶ポリマーにて製造される。また、レンズホルダー2に固装されているフォーカシングコイル及びトラッキングコイルは、絶縁皮膜が施されたコイル、例えばエナメル線が使用されるが、斯かる絶縁皮膜も前述したリフロー炉の温度に耐える高耐熱のコイルが使用されることになる。
【0037】
前述した材料にて構成された図1に示す光ピックアップ装置のアクチュエータ部をリフロー炉の内部を通過させると、所定の高温度の状態にせしめられた後に急速に冷却する動作が行われる。斯かる動作が行われると、クリーム半田CS1及びCS2が溶解された後に硬化されることになる。その結果、支持ワイヤー11、12、13及び14の一端11a、12a、13a及び14aがフォーカシングコイル及びトラッキングコイルとクリーム半田CS1によって電気的に接続されることになる。
【0038】
また、前述したリフロー半田が行われると、支持ワイヤー11、12、13及び14の固定端11b、12b、13b及び14bがクリーム半田CS2によって印刷配線基板8上のパターンと半田付けされることになる。即ち、支持ワイヤー11、12、13及び14の固定端11b、12b、13b及び14bがクリーム半田CS2によって印刷配線基板8に固定されるので、レンズホルダー2は該支持ワイヤー11、12、13及び14によってフォーカス方向への変位動作及びトラッキング方向への変位動作を行うことが出来るように支持されることになる。
【0039】
前述した作業によって図1及び図2に示すアクチュエータ部は組み立てられるが、このように組み立てられたアクチュエータ部に対して、レンズホルダー2に設けられている対物レンズ固定孔1Aに対物レンズを接着固定するとともにサポート部材9に形成されている装填部15及び16にダンプ材を装填することによって図3及び図4に示す光ピックアップ装置を組み立てることが出来る。
【0040】
以上に説明したように本発明は、光ピックアップ装置を構成するレンズホルダー2を支持する支持アーム11、12、13及び14の固定動作をリフロー半田にて行うようにしたので、即ち半田付け動作を全ての支持ワイヤーにて同時に行うようにしたので、全ての支持ワイヤーの半田付け条件を同一にすることが出来る。従って、本発明は、支持ワイヤーの手作業による半田付けのような加熱の影響によって各支持ワイヤーの長さ方向に膨張や収縮が不均衡に起こることはなく、レンズホルダーの支持動作を正確に行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0041】
リフロー半田を行う場合のクリーム半田の塗布作業は、印刷配線基板に支持ワイヤーを挿通させた状態にて行ったり、印刷配線基板にクリーム半田を塗布した状態にて支持ワイヤーを挿通させたりすることによって行うことが出来る。
【符号の説明】
【0042】
2 レンズホルダー
8 固定基板
9 サポート部材
11、12、13、14 支持ワイヤー
CS1、CS2 クリーム半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サポート部材に設けられている印刷配線基板用固定部に固定されている印刷配線基板と、対物レンズが搭載されているとともに一端が前記印刷配線基板用固定部に形成されている連通孔を通して前記印刷配線基板に設けられているパターンに半田にて固定されている少なくとも4本の支持ワイヤーによって対物レンズの光軸方向及び光軸方向に直交する方向である光ディスクの径方向への変位を可能に支持されたレンズホルダーを備えた光ピックアップ装置であり、前記支持ワイヤーの印刷配線基板への半田付けをリフロー半田にて行うようにしたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記レンズホルダーに固装されているコイルと支持ワイヤーとの半田付けをリフロー半田にて行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
サポート部材及びレンズホルダーをリフロー半田時の温度に耐える耐熱材料にて製造するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−168994(P2012−168994A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26640(P2011−26640)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】