説明

光ピックアップ

【課題】本発明は、フレキシブル基板に実装された半導体集積装置に発生する熱を効率よく放熱することができると共にスペースをとることがなく小型化にも資する光ピックアップを提供することを目的とする。
【解決手段】光ピックアップの筐体の一部である前方側面部23にフレキシブル基板の前方側面取付部61を接着層10を介して接合する。前方側面取付部61に表面実装された半導体集積装置7の底面には放熱メタル74が露出しており、放熱メタル74に対応するフレキシブル基板の位置には貫通孔63が形成されている。そして、放熱メタル74と前方側面部23との間には、シリコングリス71が充填されて熱的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクへの情報の記録又は光ディスクの情報の読取を行う光ピックアップに関し、より詳しくは、半導体集積装置より発生した熱を放出するための構造を有する光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ピックアップの発光部の発熱対策として種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、レーザダイオードや受光素子などから構成される集積光学素子を実装したフレキシブル基板を、光ピックアップを収納する熱伝導性を有する材料により形成されたケーシングのカバー及びスライドベースに接するよう配設して放熱を行う構成が記載されている。また、特許文献2には、レーザダイオードで発生した熱が放熱板から筐体に伝達されるようにして筐体からその熱を放出(放熱)させるとともに、サイドプレートからフレキシブル基板の導電層に伝達されるようにして導電層からその熱を放出(放熱)させる構成が記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、レーザダイオードを駆動するための半導体集積装置(レーザ駆動IC)の発熱対策が提案されている。すなわち、熱伝導性を有する弾性樹脂材料をレーザ駆動ICとシールドケースの間に挟着し、レーザ駆動ICより発生した熱を弾性樹脂材料からシールドケースに伝搬させて空気中へ放出(放熱)させる構成が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−22555号公報
【特許文献2】特開2004−39120号公報
【特許文献3】特開2001−307372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現在、光ディスク装置の小型化及び軽量化の要求から、光ピックアップの小型化及び軽量化が進められている。このため、光ピックアップの多くは、軽量で熱伝導性を有するアルミニュウム合金の筐体や、半導体集積装置を実装して筐体の周囲に配設される軽量のフレキシブル基板を用いて構成されている。同様に、半導体集積装置も高集積化と小型化が進み、消費電力が大きいレーザダイオードを駆動するものなどにあっては、半導体集積装置に発生する熱を効率よくスペースをとることなく放出させることが益々重要になってきている。
【0006】
本発明は、以上の事由に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、フレキシブル基板に実装された半導体集積装置に発生する熱を効率よく放出(放熱)することができると共にスペースをとらずに小型化にも資する光ピックアップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る光ピックアップは、レーザダイオードのような光学素子を収容した熱伝導性を有する筐体と、半導体集積装置を実装して筐体の周囲に配設されたフレキシブル基板と、を備えた光ピックアップにおいて、前記フレキシブル基板の前記半導体集積装置の底面に対応する位置に貫通孔が設けられており、前記貫通孔を通して前記半導体集積装置の底面に露出した放熱メタルと前記筐体とが熱伝導部材により熱的に接続されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る光ピックアップは、請求項1に記載の光ピックアップにおいて、前記筐体に密着して取り付けられた金属板材製の放熱板を更に備え、前記半導体集積装置と前記筐体とが放熱板を介して熱的に接続されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る光ピックアップは、請求項1又は2に記載の光ピックアップにおいて、前記放熱メタルは、前記半導体集積装置の半導体チップを搭載するリードフレームのアイランドの裏面であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る光ピックアップは、請求項1又は2に記載の光ピックアップにおいて、前記熱伝導部材は、シリコングリスからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る光ピックアップは、フレキシブル基板の半導体集積装置の底面に対応する位置に貫通孔が設けられ、貫通孔を通して半導体集積装置の底面に露出した放熱メタルと筐体とを熱伝導部材により熱的に接続するようにしているので、貫通孔を通して半導体集積装置で発生した熱が効率よく放熱されるようになる。また、放熱のための構成を別途追加する必要がないから、光ピックアップを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本発明の実施形態に係る光ピックアップの外観斜視図である。この光ピックアップ1は、レーザダイオード8のような光学素子(図2参照)を収容した熱伝導性を有する筐体2と、レーザダイオード8を駆動するための半導体集積装置7を実装して筐体2の周囲に配設されたフレキシブル基板6と、を主要構成部材としている。筐体2は、平行に延びる一対の案内軸3(一点鎖線で表示)にガイドされてスライド可能となるよう両側部に嵌合部を有する。具体的には、一方の側部の嵌合部は一対の突起部に形成された嵌合孔21、21、他方の側部の嵌合部はコ字状部に形成された嵌合凹所22としている。また、筐体2は、その主部を構成する基部24の上部のほぼ中央部に対物レンズ41を有する上部ユニット4を載設している。更に、基部24の上部には、図示しないフラットケーブルの端子がさし込まれるケーブル接続部5を併設している。また、基部24の前方側面(図1の右方)には平板状の前方側面部23をネジ25、25により螺着している。
【0013】
フレキシブル基板6は、所要の導電層が形成されており、その一端部がケーブル接続部5の下部に電気的及び機械的に接続固定され、図1の太線で示すように、筐体2の表面を這うように巻き付けられており、前方側面部23を含む筐体2の上下、側面の主として平坦な外表面の複数箇所に接着剤又はハンダ等により接合されている。このフレキシブル基板6には、レーザダイオード8を駆動するための半導体集積装置7などの複数の電子部品が実装される。半導体集積装置7は、本実施形態においては、筐体2の前方側面(図1、図2の右方)の外表面を形成する前方側面部23に接合される前方側面取付部61に実装している。
【0014】
図2は、筐体2の内部を模式的に示した断面図である。筐体2の主部を構成する基部24の底部には、対物レンズ41から垂下した位置に、レーザ光を反射するためのミラー9が配設されている。そして、ミラー9に向かってレーザ光が出力されるよう基部24の内部の一方側にレーザダイオード8が配置されている。従って、レーザダイオード8から発射されたレーザ光は、ミラー9で反射されて対物レンズ41から外部に出力され、図示しない光ディスクへの情報の記録又は光ディスクの情報の読取を行う。光ディスクに記録された情報を読み取る場合には、光ディスクから反射された光を対物レンズ41を通して図示せぬプリズムで受光素子に入射するように光学系を設けておけばよい。以上のような光ディスクの記録又は読取機構は公知のものであるので、詳細な説明は省略する。
【0015】
ここで、レーザダイオード8で発生した熱は、基部24、更には筐体2全体に伝わっていき、それらから放出(放熱)されるようになっている。従って、基部24及びそれを含む筐体2は、光ピックアップ1の放熱部材として機能している。なお、本実施形態においては筐体2を軽量で熱伝導性がよいアルミニュウム合金で構成しているが、これに限定されるものではなく、熱伝導性のよい材料であれば使用することができる。
【0016】
図3は、フレキシブル基板6の前方側面取付部61を筐体2の前方側面部23に接合、すなわち、密着して固定する前の斜視図である。前方側面取付部61には前方側面部23を螺着するネジ25、25の頭部に対応して開口部62、62が形成されており、前方側面取付部61はその裏面に接着剤を塗布して前方側面部23に接合される。前方側面取付部61の下部には、図3に示すような細長い接続部64が外方に向かって形成されており、図2に示すようにレーザダイオード8と電気的に接続されている。
【0017】
ここで重要なことは、前方側面取付部61は、半導体集積装置7を実装したときにその底面に対応する位置に、半導体集積装置7の底面が露出するように矩形状の貫通孔63が設けられていることである。その大きさは、後述する半導体集積装置7の放熱メタル74が露出するように、放熱メタル74とほぼ同じかそれよりもやや小さくする。そして、前方側面取付部61の半導体集積装置7が位置する側の貫通孔63の周囲には、複数の電極が形成されている。
【0018】
図4は、半導体集積装置7の底面図である。図4においてハッチングで示されている部分は絶縁性の樹脂である封止材72であり、周縁部には複数のリード73、中央部分には矩形状の放熱メタル74が露出している。複数のリード73及び放熱メタル74の底面は封止材72の底面とほぼ同一面となっている。すなわち、この半導体集積装置7の外形は、いわゆるQFN(Quad Flat Non-leaded Package)の底面中央部分に矩形状の放熱メタル74を露出させたものである。リード73は、底面部分においてフレキシブル基板上に形成された電極とハンダ等により表面実装される。また、放熱メタル74は、半導体チップを搭載するリードフレームのアイランドの裏面部分であり、半導体チップで発生した熱は放熱メタル74から効率よく放出(放熱)されるようになっている。
【0019】
ここで、半導体集積装置7の外形は、底面に放熱メタル74が露出していれば、封止材72の側面から突出して底面に向かって折り曲げられた、いわゆるQFP(Quad Flat Package)などであってもよい。また、封止材72はセラミック等であってもよい。また、放熱メタル74は、アイランドの裏面部分に接着された別の金属板であってもよい。
【0020】
図5は、筐体2の前方側面部23にフレキシブル基板6の前方側面取付部61を接着剤により接合した状態を示す概略断面図である。すなわち、前方側面部23と前方側面取付部61は接着層10により接合されている。そして、前方側面取付部61に形成された貫通孔63には、熱伝導部材としてシリコングリス71が充填され、これにより筐体2の前方側面部23と半導体集積装置7の底面に露出した放熱メタル74とが熱的に接続されている。従って、シリコングリス71が介在する放熱メタル74から前方側面部23までの距離は、フレキシブル基板6の厚さで決まる短いものであるため熱抵抗が小さい。また、貫通孔63の周囲に形成された複数の電極に、半導体集積装置7のリード73が電気的に接合されることとなる。シリコングリス71は、図3に示す状態、すなわち、前方側面取付部61を前方側面部23に接合する前の状態において、予め放熱メタル74に塗布しておくとよい。塗布する際には、フレキシブル基板6の厚みよりも厚くシリコングリス71を塗布しておけば、接合した場合に前方側面部23との密着度がよくなり、放熱効果が高まるようになる。なお、熱伝導部材としては、シリコングリス以外に、放熱ゴム等を用いることができる。
【0021】
かかる光ピックアップは、半導体集積装置7に駆動信号が入力されると、半導体集積装置7からフレキシブル基板6に形成された導電層を通ってレーザダイオード8に駆動電流が出力される。これにより、レーザダイオード8がレーザ光を出力して徐々に発熱するようになり、同様に半導体集積装置7も発熱する。半導体集積装置7で生じた熱は、放熱メタル74からシリコングリス71を介して前方側面部23、更には筐体2全体に伝わってそれらから放出(放熱)される。この場合、フレキシブル基板6は前方側面部23に従来のものと同様に密着した状態であり、放熱のための特別なスペースはほとんど必要とせず、光ピックアップ1の小型化に資することができる。しかも、半導体集積装置7の底面から放熱するようにしているので、半導体集積装置7の上面に近接して他の部材が配置されても放熱効果に影響を及ぼすことがほとんどなく、光ピックアップの周辺の省スペース化を図ることもできる。
【0022】
図6は、本発明の別の実施形態に係る光ピックアップの斜視図である。図1に示す光ピックアップ1においては、筐体2の前方側面部23に前方側面取付部61を直接接合するようにしていたが、本実施形態の光ピックアップ1’においては、金属板材製の放熱板65を前方側面取付部61の裏面に固定し、放熱板65をネジ26により筐体2の前方側面部23に固定するようにしている。このように前方側面取付部61を放熱板65を介して前方側面部23に取り付けることで、前方側面部23の形状が前方側面取付部61の形状と一致しない場合でも前方側面部23に取り付けることができ、また、放熱板65が補強部材となって前方側面取付部61の強度を高めることも可能となる。ここで、放熱板65としては、筐体2と同様に軽量化が図れるアルミニュウム合金を用いるのが好ましいが、これ以外にも、熱伝導性に優れた材料であって所要の強度を有するものであれば用いることができ、特に限定されない。
【0023】
図7は、放熱板65を前方側面部23に固定する前の斜視図であり、図8は、固定した状態での概略断面図である。前方側面取付部61には上述した実施形態と同様に貫通孔63が形成されており、半導体集積装置7の放熱メタル74が貫通孔63から露出するように半導体集積装置7が実装されている。そして、前方側面取付部61と放熱板65とは接着層10により密着した状態で接合されており、貫通孔63では放熱メタル74と放熱板65との間にシリコングリス71が充填されて熱的な接続関係が確保されている。
【0024】
このように、予め前方側面取付部61の裏面に放熱板65を接合した後、前方側面部23に放熱板65を密着させた状態で取付孔66にネジ26を挿入して放熱板65を前方側面部23に固定する。
【0025】
従って、図8に示すように、前方側面部23の形状が放熱板65と一致しておらず、半導体集積装置7に対応する部分が切欠いた形状であっても、半導体集積装置7で生じた熱は放熱板65から前方側面部23に効率よく伝わって放出(放熱)されるようになる。これにより、光ピックアップ1’の筐体2の形状がさまざまに異なっていても、放熱板65を密着して取り付けることで半導体集積装置7に生じた熱を効率よく放出(放熱)することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態である光ピックアップについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、半導体集積装置7の実装は、フレキシブル基板6の前方側面取付部61に限られず、右又は左側面取付部等にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る光ピックアップの斜視図である。
【図2】同上の筐体内部を模式的に示した断面図である。
【図3】同上のフレキシブル基板を接合する前の斜視図である。
【図4】同上の半導体集積装置の底面図である。
【図5】同上の概略断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係る光ピックアップの斜視図である。
【図7】同上の放熱板を固定する前の斜視図である。
【図8】同上の概略断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1、1’ 光ピックアップ
2 筐体
23 筐体の前方側面部
3 案内軸
4 上部ユニット
5 ケーブル接続部
6 フレキシブル基板
61 フレキシブル基板の前方側面取付部
63 フレキシブル基板の貫通孔
7 半導体集積装置
8 レーザダイオード
9 ミラー
10 接着層
65 放熱板
71 シリコングリス(熱伝導部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードのような光学素子を収容した熱伝導性を有する筐体と、半導体集積装置を実装して筐体の周囲に配設されたフレキシブル基板と、を備えた光ピックアップにおいて、
前記フレキシブル基板の前記半導体集積装置の底面に対応する位置に貫通孔が設けられており、前記貫通孔を通して前記半導体集積装置の底面に露出した放熱メタルと前記筐体とが熱伝導部材により熱的に接続されていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップにおいて、
前記筐体に密着して取り付けられた金属板材製の放熱板を更に備え、
前記半導体集積装置と前記筐体とが放熱板を介して熱的に接続されていることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ピックアップにおいて、
前記放熱メタルは、前記半導体集積装置の半導体チップを搭載するリードフレームのアイランドの裏面であることを特徴とする光ピックアップ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光ピックアップにおいて、
前記熱伝導部材は、シリコングリスからなることを特徴とする光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−4529(P2006−4529A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180557(P2004−180557)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】