説明

光ピックアップ

【課題】光ピックアップにおいて、バネ部材の数を増やすことなく液晶素子の波面位相の調整精度を高める。
【解決手段】光ピックアップは、光ビームを出射するレーザ光出射装置を含む固定部24と、光記録媒体に光ビームを集光させる対物レンズ14と、レーザ光出射装置と対物レンズ14の間に位置し、光ビームの波面位相を調整する液晶素子11と、液晶素子11への印加電圧または印加電流を制御する液晶制御素子26と、を含む可動部25と、を有している。可動部25は、固定部24に対して、光ビームの対物レンズ14を通る光軸Cと実質的に直交する方向に移動可能である。液晶制御素子26は入力ライン34によって固定部25に電気接続され、出力ライン35によって液晶素子11に電気接続されており、入力ライン34の本数は出力ライン35の本数よりも少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップに関し、特に光ビームの波面位相調整用の液晶素子を制御する液晶制御素子の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップは、光記録媒体の所定の位置に精度よくレーザ光を照射することが要求される。レーザ光の照射精度を高めるためには、光記録媒体に最も近接した位置に設けられた対物レンズの位置を高精度で制御することが必要である。対物レンズの位置は複数のサーボ機構によって常時補正される。トラッキングサーボは対物レンズの横方向(光軸直交方向)位置を制御し、チルトサーボは対物レンズの光記録媒体に対する傾きを制御する。さらに、対物レンズの光軸方向位置はフォーカスサーボによって制御される。このため、対物レンズは可動ハウジングの中に収容され、バネ部材によって、光ピックアップの固定部に対して弾性的に支持される。
【0003】
近年の光ピックアップは、DVD(Digital Versatile Disc)−ROM、CD(Compact Disc)等の仕様の異なる多くの光記録媒体に対応することが求められている。しかし、光記録媒体の信号記録面の記録媒体表面からの深さ位置が光記録媒体によって異なるため、球面収差や波面収差が光記録媒体の種類によって異なるという問題がある。そこで、光記録媒体の種類ごとに、対物レンズに入射する光ビームの波面位相を液晶素子によって最適化し、球面収差や波面収差が最小化されている。液晶素子には制御電圧または制御電流を供給する必要があるため、液晶素子に制御電圧または制御電流を供給する液晶制御素子を固定部に設け、液晶素子と液晶制御素子とが上述のバネ部材で接続されている。
【0004】
液晶素子における球面収差補正用パターンは一般に同心円状の複数のセグメントに分割され、光ビームの波面位相はセグメント毎に個別に調整される。従って、液晶素子の波面位相の調整精度はセグメント数が多いほど高くなる。しかし、各セグメントには液晶制御素子から個別に制御電圧または制御電流が供給されるため、調整精度を高めようとすると、制御電圧または制御電流の供給手段の数をセグメント数に応じて増やす必要がある。フレキシブル配線基板(以下、FPCという。)を用いればこの課題は比較的容易に対処可能であるが、FPCの反力がトラッキングサーボ及びチルトサーボの応答特性に悪影響を与える可能性が高い。そこで、特許文献1には、バネ部材の数を増やし、液晶素子の波面位相の調整精度を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−4826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バネ部材は可動部そのものではないが、可動部とともに運動する。このため、バネ部材の数が多くなると、(1)バネ部材の重量が相対的に増加し、可動部の動作感度が低下する、(2)可動部の動きの左右対称性や可動部全体の振動特性の制御が困難になる、(3)振動の自由度が増えるため不要な共振が発生する、(4)トラッキングサーボ及びチルトサーボの伝達特性(高周波特性)が悪化する、(5)バネ部材を配置する場所の確保が困難になり、可動部の小型化・軽量化の障害となる、等の課題が生じる。
【0007】
そこで本願発明は、バネ部材の数を増やすことなく液晶素子の波面位相の調整精度を高めることが可能な光ピックアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様によれば、光ピックアップは、光ビームを出射するレーザ光出射装置を含む固定部と、光記録媒体に光ビームを集光させる対物レンズと、レーザ光出射装置と対物レンズの間に位置し、光ビームの波面位相を調整する液晶素子と、液晶素子への印加電圧または印加電流を制御する液晶制御素子と、を含む可動部と、を有している。可動部は、固定部に対して、光ビームの対物レンズを通る光軸と実質的に直交する方向に移動可能である。液晶制御素子は入力ラインによって固定部に電気接続され、出力ラインによって液晶素子に電気接続されており、入力ラインの本数は出力ラインの本数よりも少ない。
【0009】
液晶制御素子は従来固定部に設けられていたため、液晶制御素子の出力ラインと液晶素子がバネ部材を介して接続されていた。しかし、液晶制御素子の出力ラインは液晶素子の各セグメントに1対1に対応しているため、セグメント数が増えれば出力ラインの本数も増える。これに対して、液晶制御素子の入力ラインの本数はセグメント数と1対1に対応していない。本実施態様では、液晶制御素子を可動部に収容し、かつ液晶制御素子の入力ラインの本数が出力ラインの本数よりも少ないため、従来と比べて固定部と可動部をつなぐラインの総本数を減らすことができる。換言すれば、固定部と可動部をつなぐラインの総本数が同じであれば、バネ部材を増やすことなく、液晶制御素子の出力ラインの数を増やすことが可能となる。なお、一般に、デジタル情報をICに送る液晶駆動方式であれば、液晶素子用ドライバICの入力ラインの本数は5本である場合が多く、液晶素子のセグメントが多くなるほど出力ラインを増やす必要がある。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本願発明によれば、バネ部材の数を増やすことなく液晶素子の波面位相の調整精度を高めることが可能な光ピックアップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】光ピックアップの光学系の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す光ピックアップの模式的斜視図である。
【図3A】FPCの全体形状を示す模式図である。
【図3B】FPCの一部が折り曲げられた状態を示す模式図である。
【図3C】FPCの全部が折り曲げられた状態を示す模式図である。
【図3D】FPCがハウジングに挿入された状態を示す模式図である。
【図3E】可動部の組立てが終了した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の光ピックアップの実施形態について説明する。図1は、光ピックアップの光学系の構成を示す概略図である。光ピックアップ1は、物理的トラックピッチが異なる3種類の光記録媒体2(2a〜2c)のそれぞれにデジタル情報の記録または再生を行うことができるように構成されている。
【0013】
第1の光記録媒体2aは、現行のDVD−ROM、DVD±R/RW及びこれらと同等の構造及び記憶容量を備えた光記録媒体である。第2の光記録媒体2bは、CD−ROM、CD−R/RW及びこれらと同等の構造及び記憶容量を備えた光記録媒体である。第3の光記録媒体2cは波長405nm付近の青色レーザ光を用いて高記録密度の記録再生を行うBD(ブルーレイディスク(登録商標))あるいはCB−HD(中国高密度光記録媒体規格)などの再生専用または記録・再生兼用の光記録媒体である。
【0014】
光ピックアップ1は、所定波長の光ビームを出射する光源(レーザ光出射装置)である半導体レーザ3,4を有している。半導体レーザ3は、現行のDVDを記録再生するための波長650nmの光ビーム(第1の光ビーム)を発光する第1の発光領域と、CDを記録再生するための波長780nmの光ビーム(第2の光ビーム)を発光する第2の発光領域と、を有している。これらの発光領域は所定距離を隔てて形成され、1つのパッケージに収容されている。一方、半導体レーザ4は、BDまたはCB−HDなどの高密度光記録媒体を記録再生するための波長405nmの光ビーム(第3の光ビーム)を発光する。
【0015】
半導体レーザ3,4は、半導体レーザ3から出射された第1または第2の光ビームの光軸と、半導体レーザ4から出射された第3の光ビームの光軸とが互いに直交するように設けられている。
【0016】
半導体レーザ3の光出射側の所定位置には、回折格子5が配置されている。回折格子5の片面には、半導体レーザ3から出射された第1及び第2の光ビームをそれぞれ3本の光ビーム(0次の主ビームと±1次の副ビーム;図示せず)に分割するように最適化された回折格子パターンが形成されている。回折格子5は、光記録媒体2の信号記録面において、主ビームの集光位置を中心にトラック線方向に所定距離隔てた対称位置に±1次の副ビームが集光されるように、半導体レーザ3から出射された第1及び第2の光ビームをそれぞれ分割する。
【0017】
半導体レーザ4の光出射側の所定位置にも、回折格子6が配置されている。回折格子6の片面には、半導体レーザ4から出射された第3の光ビームを3本の光ビーム(0次の主ビームと±1次の副ビーム;図示せず)に分割するように最適化された回折格子パターンが形成されている。回折格子6は、光記録媒体2の信号記録面において、主ビームの集光位置を中心にトラック線方向に所定距離隔てた対称位置に±1次の副ビームが集光されるように、半導体レーザ4から出射された第3の光ビームを分割する。
【0018】
半導体レーザ3からの光ビームと半導体レーザ4からの光ビームとが交差する位置には、ほぼ立方体形状のダイクロイックプリズム7が設けられている。ダイクロイックプリズム7は、第1及び第2の光ビームをほぼ全通過させ、第3の光ビームをほぼ全反射させる。
【0019】
ダイクロイックプリズム7を通過または反射した光ビームは偏光ビームスプリッタ8に入射する。偏光ビームスプリッタ8に入射した光ビームの90%程度は偏光ビームスプリッタ8で反射し、立ち上げミラー9に入射する。偏光ビームスプリッタ8に入射した光ビームの残りの10%程度は通過して、フロントモニタ用光検出器15に入射する。フロントモニタ用光検出器15は、半導体レーザ3,4から出射された第1〜第3の光ビームの光強度を計測する。半導体レーザ3,4の出力は、フロントモニタ用光検出器15の出力に基づいて調整される。
【0020】
立ち上げミラー9に入射した光ビームは、立ち上げミラー9で反射し、コリメートレンズ10に入射する。光ビームは、半導体レーザ3,4を出射した後コリメートレンズ10に入射するまでは発散ビームであるが、コリメートレンズ10によって、概ね平行ビーム光に変換させられる。すなわち、コリメートレンズ10は半導体レーザ3,4と対物レンズ14との間の光路上に配置され、光ビームの平行度を変換する平行度変換レンズである。
【0021】
コリメートレンズ10を通過した光ビームは、液晶素子11に入射する。液晶素子11は半導体レーザ3,4と対物レンズ14との間に位置し、光ビームの波面位相を調整する。液晶素子11は、所定の形状に分割された透明電極(図示せず)を備え、分割されたセグメントごとに、液晶制御素子26から制御電圧または制御電流が印加される。液晶素子11の各セグメントに電圧または電流が印加されると、当該セグメントの屈折率が変化し、通過する光ビームに適切な位相差が与えられ、光路上に生じる各種の波面収差を補正および最適化することができる。透明電極は、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)や酸化錫等からなっている。
【0022】
液晶素子11は好ましくは、光軸Cに対して若干傾いて配置されている。液晶素子11の素子表面を光軸Cに対して完全に直交する向きに配置すると、素子表面からの反射光の一部が迷光となって、受光素子17に入射し、ノイズや、出力電気信号のオフセットの原因となる。この現象を防止するため、液晶素子11を光軸Cに対して若干傾けて配置し、迷光が受光素子17に入射しないようにすることが望ましい。
【0023】
液晶素子11を通過した光ビームは4分の1波長板12に入射し、光ビームの主ビーム及び±1次の副ビーム(以下、「往路光ビーム」という。)が直線偏光から円偏光に変換させられる。本例における4分の1波長板12は液晶素子11と一体化された複合素子で、印加電圧の制御により3種の波長に対応させて位相差を制御できる能動型の素子であるが、4分の1波長板12を3波長共用の受動型として、液晶素子11から分離して設けられてもよい。
【0024】
4分の1波長板12に隣接して、波長互換素子13が設けられている。波長互換素子13は、使用する光源の波長に応じた特定のレンズパワーを有し、対物レンズ14への入射光の波面(角度)を変化させ、対物レンズ14の倍率を変換する。
【0025】
波長互換素子13を通過した光ビームは対物レンズ14に入射し、光記録媒体2の信号記録面に集光される。記録時には、集光された光ビームが信号記録面の所定のビットに記録を書き込み、記録動作が終了する。
【0026】
再生時には、光記録媒体2に集光された光ビームは信号記録面で反射し、逆方向にさらに進行する。まず、光記録媒体2で反射した光ビームは、対物レンズ14で略平行ビームに変換させられる。光ビームは引き続き波長互換素子13を通って4分の1波長板12に入射し、円偏光から往路光ビームの偏光方位と直交する方向の直線偏光に変換させられる。4分の1波長板12を通過した光ビームは液晶素子11を通ってコリメートレンズ10に入射し、収束ビームに変換させられる。コリメートレンズ10を通過した光ビームは立ち上げミラー9で反射し、偏光ビームスプリッタ8に入射する。偏光ビームスプリッタ8は、コリメートレンズ10からの戻り光を内部の接合面で通過させて、アナモフィックレンズ16に入射させる。アナモフィックレンズ16は、偏光ビームスプリッタ8から入射した光ビームに焦点ずれ誤差検出のための非点収差を与え、受光素子17上に結像させる。受光素子17は、受光した光ビームを分割された受光領域(図示せず)毎に独立に光電変換して、電気信号を出力する。
【0027】
図2は、光ピックアップの概念的な斜視図である。ハウジング21は、液晶素子11、4分の1波長板12、波長互換素子13、対物レンズ14、及び液晶制御素子26を収容し、これらの収容物とともに可動部25を構成している。同図では、液晶素子11、4分の1波長板12、波長互換素子13及び液晶制御素子26をハウジング21から取り出した状態で示している。半導体レーザ3,4を含む光ピックアップのその他の要素は固定部24を構成している。
【0028】
可動部25は、弾性ワイヤ31によって固定部24に対して支持されている。弾性ワイヤ31はハウジング21の互いに対向する第1の面32及び第2の面33の各外面側に5本ずつ設けられている。各面32,33に設けられた5本の弾性ワイヤ31のうち、2本は相対的に太径で剛性が高い主弾性ワイヤ31aであり、可動部25は主に主弾性ワイヤ31aによって支持されている。
【0029】
図1を参照すると、対物レンズ14の周囲には、トラッキングサーボのためのトラッキングコイル23と、チルトサーボのためのチルトコイル22が設けられている。各コイル22,23と対向した位置にはマグネット(図示せず)が設けられている。コイル22,23に通電することによって、マグネットとコイル22,23を流れる電流との間に磁気的作用(ローレンツ力)が生じ、この力によって可動部25は所望の方向に移動することができる。この結果、図2に示すように、可動部25は、トラッキングサーボによって、固定部24に対し、対物レンズを通る光軸Cと実質的に直交する方向に移動可能であり(矢印A)、チルトサーボによって、記録媒体2の法線方向に対してチルト可能である(矢印B)。主弾性ワイヤ31aは、チルトコイル22及びトラッキングコイル23に給電する導体の機能を兼ねている。
【0030】
各面32,33に設けられた5本の弾性ワイヤ31のうち、残りの3本は相対的に細径で剛性の小さいワイヤであり、液晶制御素子26への入力ライン34を兼ねている(以下、入力ライン兼用ワイヤ31bという。)。本実施形態では入力ラインは計5本であるため、入力ライン兼用ワイヤ31bの1本は予備である。しかし、各面32,33に入力ライン兼用ワイヤ31bを3本ずつ設けることによって、可動部25の動きの左右対称性が容易に確保できる。同様の目的から、各面32,33には、5本の弾性ワイヤ31が対称の位置に設けられていることが望ましい。
【0031】
入力ライン兼用ワイヤ31bは後述するように、FPC36に設けられたタブ38a,38bを介して、可動部25に取り付けられている。タブ38a,38bは主弾性ワイヤ31aの取り付けや作動に干渉しない位置に設けられている。
【0032】
弾性ワイヤ31の本数や剛性は本実施形態に限定されず、入力ラインの本数、所望のサーボ特性などを勘案し、適宜定めることができる。
【0033】
液晶制御素子26は、入力ライン34及び入力ライン兼用ワイヤ31bを介して固定部24に電気接続され、出力ライン35を介して液晶素子11に電気接続されている。入力ライン34の本数は出力ライン35の本数よりも少なく、本実施形態では入力ライン34が5本であるのに対し、出力ライン35は14本である。一般に液晶制御素子は、入力ラインを介して外部から受け取る入力信号を基に、液晶素子の各セグメントに対する制御電圧あるいは制御電流を個別に生成する機能を有しており、セグメント数が増えても入力ラインの本数がそれに応じて増えることはない。このため、液晶制御素子26を可動部25に設置することによって、液晶制御素子26を固定部24に設置する場合と比べて、可動部25と固定部24を結ぶラインの本数を削減することができる。
【0034】
例えば、本実施形態の場合、液晶素子11の制御用のラインは、可動部25と固定部24の間には5本あればよいが、液晶制御素子26を固定部24に設置する場合、可動部25と固定部24の間には14本のラインが必要となる。これは、入力ライン兼用ワイヤ31bが最低14本必要であることを意味し、可動部25の動作特性等に与える影響は無視できない。これに対して、本実施形態では、入力ライン兼用ワイヤ31bが最低5本(実際には6本)で済むため、可動部25の動作特性等に与える影響は限定的である。
【0035】
液晶制御素子26はハウジング21の内壁の近傍に位置し(実際にはハウジング21の内壁に沿って延びるFPC36上に固定されている。)、液晶素子11の重心は可動部25の図心に関して液晶制御素子26とは反対側に位置している。それによって、可動部25の移動方向を含む面内において、可動部25の重心と図心とを一致させることが可能となり、可動部25に望ましくない動き(例えば、トラッキングサーボ作動時にチルト成分を有する動きが発生するなど。)が発生することを防止できる。
【0036】
図3A〜3Eは入力ライン及び出力ラインの具体的構成を示す模式図である。入力ライン34及び出力ライン35としては、FPCなどの可撓性のある公知の配線手段を用いることができる。
【0037】
図3Aは、FPC36を広げたときの外形図であり、図中に示す矢印Yは、矢印の向きに従って山折りされることを、矢印Tは谷折りされることを示している。液晶制御素子26がFPC36の一端側に固定されており、そこから帯状部37が左に延びている。帯状部37の途中には第1のタブ38aが設けられ、帯状部37の終端には第2のタブ38bが設けられている。第1及び第2のタブ38a,38bには、入力ライン兼用ワイヤ31bと接続されるパッド39が各々3箇所形成されている(6つのパッド39のうち1つは予備パッド。)。図示は省略するが、FPC36の内部には、液晶制御素子26の設けられている付近から第1のタブ38aに向かって3本、及び第2のタブ38bに向かって2本、合計5本の入力ライン34が埋め込まれている。従って、液晶制御素子26はこれらのタブ38a,38bを介して、固定部24に設けられた電源部(図示せず)から入力電圧または入力電流の供給を受けることができる。
【0038】
図3Bは、液晶制御素子26の設けられている方のFPC36の端部を図3Aに示す矢印の向きに従って折り、液晶素子11を挟持した状態を示している。図示の都合上、図中A部付近で帯状部37が90度手前側に捩られていることに留意されたい。FPC36の右側の端部には第3のタブ38cと第4のタブ38dが設けられており(図3Aも参照。)、これらが液晶素子11を両側から挟持している。図示は省略するが、FPC36の内部には、液晶制御素子26の設けられている付近から第3のタブ38c及び/または第4のタブ38dに向かって計14本の出力ライン35が埋め込まれている。従って、液晶素子11はこれらのタブ38c、38dを介して、液晶制御素子26から印加電圧または印加電流の供給を受けることができる。
【0039】
図3Cは、帯状部37を四角形に折りたたんだ状況を示している。図3Dは折りたたんだFPC36をハウジング21の中に挿入した状態を示している。FPC36はハウジング21の内壁に接着剤などの適宜の方法で固着されている。図3Dではハウジング21は単純な箱形状に模式化して示しており、実際の形状とは異なることに留意されたい。
【0040】
図3A〜3Dから明らかなように、FPC36に埋め込まれた入力ライン34は液晶制御素子26からハウジング21の内壁に沿って延び、ハウジング21の第1の面32で一部が分岐しハウジング21の外面側に出て、入力ライン兼用ワイヤ31aに接続され、残りの入力ライン34はハウジング21の内壁に沿ってさらに延び、ハウジング21の第2の面33でハウジング21の外面側に出て、残りの入力ライン兼用ワイヤ31bに接続される。なお、図3Dからわかるように、液晶素子11はハウジング21の互いに対向する長辺の間に橋渡しするように設けられているため、構造的に弱いハウジング21の長辺部を補強し、ハウジング21の部分的な共振を抑制することができる。
【0041】
図3Eは、可動部25が組み立てられたときの状況を示している。弾性ワイヤ31は第1の面32に設けられた弾性ワイヤのみを図示している。第1及び第2のタブ38a,38bは、図3Dに示すハウジング21の外側に折り曲げられ状態から、さらに90度同じ方向に折り曲げられて、ハウジング21の外面に固定されている(第2のタブ38bの図示は省略。)。これによって、第1及び第2のタブ38a,38bに設けられているパッド39がハウジング21の外面に沿って位置し、入力ライン兼用ワイヤ31bが接続可能となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、液晶制御素子26を可動部25に設置したため、可動部25と固定部24を接続するラインの本数が液晶制御素子26の入力ラインの本数に依存して決まる。一般に液晶制御素子の入力ラインは出力ラインよりも本数が少ないため、その分、弾性ワイヤの本数も少なくて済む。このため、弾性ワイヤの拘束による可動部の動作特性の悪化を防止し、小型・軽量化に対する障害も除去することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 光ピックアップ
2 光記録媒体
3,4 半導体レーザ
11 液晶素子
12 4分の1波長板
13 波長互換素子
14 対物レンズ
21 ハウジング
22 チルトコイル
23 トラッキングコイル
24 固定部
25 可動部
26 液晶制御素子
31 弾性ワイヤ
31a 主弾性ワイヤ
31b 入力ライン兼用ワイヤ
32 第1の面
33 第2の面
34 入力ライン
35 出力ライン
36 FPC
37 帯状部
38a〜38d 第1〜第4のタブ
39 パッド
C レーザ光の光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射するレーザ光出射装置を含む固定部と、
光記録媒体に前記光ビームを集光させる対物レンズと、前記レーザ光出射装置と前記対物レンズの間に位置し、前記光ビームの波面位相を調整する液晶素子と、前記液晶素子への印加電圧または印加電流を制御する液晶制御素子と、を含む可動部と、
を有し、
前記可動部は、前記固定部に対して、前記光ビームの前記対物レンズを通る光軸と実質的に直交する方向に移動可能であり、
前記液晶制御素子は入力ラインによって前記固定部に電気接続され、出力ラインによって前記液晶素子に電気接続されており、前記入力ラインの本数は前記出力ラインの本数よりも少ない、光ピックアップ。
【請求項2】
前記可動部は、弾性ワイヤによって前記固定部に対して支持されており、前記弾性ワイヤの一部は前記入力ラインを兼ねる入力ライン兼用ワイヤであり、
前記可動部は、前記対物レンズと、前記液晶素子と、前記液晶制御素子とを収容するハウジングを有し、
前記入力ライン兼用ワイヤは、前記ハウジングの互いに対向する第1及び第2の面の各外面側に少なくとも1本ずつ位置しており、
前記入力ラインは前記液晶制御素子から前記ハウジングの内壁に沿って延び、前記ハウジングの前記第1の面で一部が分岐し該ハウジングの外面側に出て、一部の前記入力ライン兼用ワイヤに接続され、残りの前記入力ラインは前記ハウジングの内壁に沿ってさらに延び、前記ハウジングの前記第2の面で該ハウジングの外面側に出て、残りの前記入力ライン兼用ワイヤに接続されている、請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記液晶制御素子は前記ハウジングの前記内壁の近傍に位置し、前記液晶素子の重心は前記可動部の図心に関して前記液晶制御素子の重心とは反対側に位置しており、それによって、前記可動部の移動方向を含む面内において、前記可動部の重心と図心とが一致している、請求項2に記載の光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【公開番号】特開2011−113632(P2011−113632A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272010(P2009−272010)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】