説明

光ファイバケーブルの製造方法及びその装置

【課題】光ファイバの撚りピッチを均一化した光ファイバケーブルを製造する。
【解決手段】送出されるコア材3の周りに複数の光ファイバ5を撚り合わせるべく撚り線機7にて複数の光ファイバ5をコア材3の周りに回転せしめ、撚り線機7から送出された光ファイバ5とコア材3をニップル35に導入する際に、ニップル35の中心部に回転自在に設けたニップル回転部39の回転中心にコア材3を挿通し、かつ複数の光ファイバ5をコア材3の外側の直近の通過位置に拘束してニップル回転部39に挿通し、ニップル回転部39を撚り線機7と同方向に同期して回転せしめることにより、コア材3の周りに複数の光ファイバ5を拘束した位置で撚り合わせ、ニップル35の先端より送出された複数の光ファイバ5を撚り合わせたコア材3の外周にシース樹脂9を押出成形により一体化被覆して光ファイバケーブル15を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に光ファイバ心線をセンサとして用いる構造の水圧検出用の光ファイバケーブルを製造する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ心線をセンサとして用いる構造の光ファイバケーブル(センサケーブル)を製造する際には、光ファイバ心線の撚りピッチを均一化してケーブル化することが必要となる。
【0003】
図5を参照するに、従来の光ファイバケーブルの製造方法及び製造装置101としては、例えば、撚り線機103は、送出されるコア材105の周りに光ファイバ107を撚り合わせるべく前記光ファイバ107を前記コア材105の周りに回転して送出する。なお、図5では、光ファイバ107がコア材105の周囲の全てを覆うほどではなく、コア材105の周囲の一部のみを覆う程度の本数(図5では2本)で撚る場合について示している。
【0004】
上記の撚り線機103から送出された光ファイバ107は、図6も併せて参照するに、集線ダイス109の集合点GPに集線されることにより、前記集線ダイス109を通過するコア材105の周りに撚り合わされる。光ファイバ107が撚り合わされたコア材105は押出ヘッド111のニップル113に導入され、ニップル113に設けたコア材挿通孔115を通過し、ニップル113の先端から前方へ送出される。押出ヘッド111に設けたニップル113とダイス117で形成された樹脂流路119からシース樹脂123が押し出される。このとき、図6に示されているように、シース樹脂123はダイス117の先端からコーン状に押し出されながら、図7に示されているようにコア材105及び光ファイバ107の周りにポリエチレン等のシース樹脂123が樹脂被覆ポイントCPで被覆され、光ファイバケーブル125が形成される。その後、図5に示されているように冷却水槽127にて冷却され、引取装置129で引き取られてから巻取装置131の巻取ドラム133に巻き取られる。
【0005】
また、特許文献1では、ニップルをモータ駆動により回転させ、複数の光ファイバ心線の間に隙間を空けた状態で前記各光ファイバ心線を中心線の周りに回転させながらシース樹脂を充実押出すことにより、前記隙間からシース樹脂が流れ込み、水密性に優れた光ファイバユニットの製造方法が記載されている。すなわち、複数の光ファイバ心線の中にシース樹脂を効率よく充填して光ファイバユニットを製造する方法である。なお、ニップルには中心線と撚り線材間の通る孔がそれぞれ独立して設けられている。
【0006】
また、特許文献2では、複数本の光ファイバ素線の撚り線をコーティングニップルの入口近傍で撚り合わせる。一方、溶融樹脂はコーティングニップル近傍のニップルホルダ前面の傾斜面に向けて吐出させる。この吐出された溶融樹脂は前記傾斜面からコーティングニップルの表面の上部を経て、さらにその表面を伝わって表面下部のコーティングニップルの入口に流動するようにして、この溶融樹脂が前記撚り線に塗布するように構成している。すなわち、撚り合わせた複数本の光ファイバ素線に空気等を巻き込むことなく、シース樹脂をコーティングする製造方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭59−68708号公報
【特許文献2】特開2003−13109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、層型の光ファイバケーブルでは、多心数の光ファイバ心線(光ファイバ)をコア材の周りに撚り合わせるので各心線間に隙間が無く、各構成材料の偏平等があっても撚り崩れせずにケーブル化できる。しかし、センサケーブルとして使用される光ファイバケーブル125は、図5及び図7に示されているように、その使用目的から少心数の光ファイバ107が隙間を空けてコア材105の周りに撚り合わされる必要があるが、従来の光ファイバケーブルの製造方法及びその製造装置101においては、コア材105が偏平している等の影響により、光ファイバ107の撚りピッチの乱れが発生し易いものであった。光ファイバ107の撚りピッチの乱れがあるままケーブル化すると、センサとしての正確な検知ができなくなるという問題点があった。
【0008】
より詳しく説明すると、
(1)コア材105が多少偏平していたり、外径、張力、表面性の異なる撚り線材(光ファイバ107)を撚り合わせたりする場合、集線ダイス109の集合点GPで一旦コア材105と光ファイバ107が集合されるものの、図6に示されているように集合点GPから樹脂被覆ポイントCPまでの間で、図8に示されているように光ファイバ107がコア材105の上の目的の位置からずれたり、撚り合わせた光ファイバ107が樹脂被覆時の樹脂圧力によりコア材105の上の所定の位置からずれることがあり、撚りピッチが安定しない場合がある。
【0009】
これにより、センサケーブルとしての初期歪のバラツキが発生したり、光ファイバケーブル125の長さ方向における感度が不安定になるという問題点があった。
【0010】
(2)前記集合点GPを限りなく樹脂被覆ポイントCPに近づけることで、上記の(1)の問題は改善する方向に働くが、ニップル113の存在や、パイプ押出しによるコーンの存在等により、前記集合点GPの撚り拘束ポイントTPを前記樹脂被覆ポイントCPと一致させることは困難である。
【0011】
(3)従来のこの種の装置は、集合点GPで集合された複数の光ファイバ107がニップル113の中を通り、シース樹脂123がパイプ押出し被覆されるが、パイプ押出しが行われると、図9に示されているようにコア材105の上に配置した光ファイバ107とコア材105の間にシース樹脂123がまわらず隙間135が発生し、水圧印加時に光ファイバ107が前記隙間135に逃げる(移動する)ことで、圧縮歪が解放されるために正確な測定ができなくなってしまうという問題点があった。
【0012】
(4)また、隙間135に故意にシース樹脂123を回りこませるためにニップル113をダイス117内で後方側に引いて、つまりニップル113の先端をダイス117のダイス面より後方に位置させて充実押出し被覆とした場合は、樹脂被覆ポイントCPで樹脂圧がかかるために撚った光ファイバ107が拘束される。その結果、「撚り」が「撚り拘束ポイントTP」側に逃げる(移動する)ために、撚りが入らなく、あるいは入りにくくなるという問題点があった。
【0013】
また、特許文献1においては、ニップルの回転機構があり、ニップルには中心線と光ファイバ心線(撚り線材)が通る孔が設けられており、光ファイバ心線(撚り線材)が拘束されているが、中心線と光ファイバ心線(撚り線材)の通る孔が独立しているので、各光ファイバ心線が孔から出て中心線に引き落とされている間に樹脂圧により各光ファイバ心線は逃げる(移動する)ことになる。その結果、センサケーブルとしての初期歪のバラツキが発生したり、光ファイバケーブルの長さ方向における感度が不安定になるという問題点があった。撚り拘束ポイントと樹脂被覆ポイントの位置が一致していない(引き落としている間に樹脂を回りこませている)。
【0014】
また、特許文献2においては、ニップル回転機構がなく、各光ファイバ心線(撚り線材)の拘束が無いために、樹脂圧力で撚りピッチが変化する可能性がある。その結果、センサケーブルとしての初期歪のバラツキが発生したり、光ファイバケーブルの長さ方向における感度が不安定になるという問題点があった。
【0015】
この発明は、光ファイバの撚りピッチを均一化してケーブル化することにより、例えばセンサケーブルとしての正確な検知を行うことができる光ファイバケーブルを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、この発明の光ファイバケーブルの製造方法は、送出されるコア材の周りに複数の光ファイバを撚り合わせるべく撚り線機にて前記複数の光ファイバをコア材の周りに回転せしめ、前記撚り線機から送出された光ファイバと前記コア材をニップルに導入する際に、前記ニップルの中心部に回転自在に設けたニップル回転部の回転中心に前記コア材を挿通し、かつ前記複数の光ファイバを前記コア材の外側の直近の通過位置に拘束して前記ニップル回転部に挿通し、前記ニップル回転部を前記撚り線機と同方向に同期して回転せしめることにより、前記コア材の周りに前記複数の光ファイバを拘束した位置で撚り合わせ、前記ニップルの先端より送出された前記複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の外周にシース樹脂を押出成形により一体化被覆して光ファイバケーブルを製造することを特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の光ファイバケーブルの製造方法は、前記光ファイバケーブルの製造方法において、前記ニップル回転部の先端より送出された直後の前記複数の光ファイバの撚り拘束ポイントと、前記複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の外周にシース樹脂を被覆する開始点である樹脂被覆ポイントの位置をほぼ一致させることが好ましい。
【0018】
また、この発明の光ファイバケーブルの製造方法は、前記光ファイバケーブルの製造方法において、前記複数の光ファイバの撚り方向を一方向又はSZ方向とすることが好ましい。
【0019】
この発明の光ファイバケーブルの製造装置は、送出されるコア材の周りに複数の光ファイバを撚り合わせるべく前記複数の光ファイバを前記コア材の周りに回転する撚り線機と、この撚り線機から送出された複数の光ファイバと前記コア材を導入するニップルと、このニップルの先端から送出される複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の周囲に被覆するシース樹脂を押出成形するダイスと、を備えている光ファイバケーブルの製造装置において、
前記ニップルの中心部に、前記撚り線機と同方向に同期して回転するニップル回転部を設け、このニップル回転部に、その回転中心に前記コア材を挿通せしめるコア材挿通孔と、前記複数の光ファイバを前記コア材の外側の直近の通過位置に拘束して挿通せしめるように前記コア材挿通孔の外側に連通した撚り線材挿通孔を設けていることを特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の光ファイバケーブルの製造装置は、前記光ファイバケーブルの製造装置において、前記ニップル回転部の先端より送出された直後で前記複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の周囲にシース樹脂を被覆すべく前記ニップルの先端を前記ダイスのダイス面位置より後方側に位置させた構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバケーブルの製造方法及びその装置によれば、ニップルの中心部にニップル回転部の回転機構を設け、ニップル回転部のコア材挿通孔と撚り線材挿通孔が連通した一体型であるために、複数の光ファイバがニップル回転部の内部でコア材の周りに拘束された位置に撚り合わされる。このようにニップルに複数の光ファイバの拘束効果をもたらすことで、各光ファイバの移動を防止し、正確なピッチで撚りを形成することができる。
【0022】
さらに、ニップルの中心部にニップル回転部の回転機構を設けることで、ニップルの先端が撚り拘束ポイントとなり、この撚り拘束ポイントと樹脂被覆ポイントがほぼ一致するので、光ファイバがコア材の上で所定の位置からずれる余地が無くなる。
【0023】
また、充実押出しさせることで、コア材と光ファイバの間にシース樹脂を十分に充填することが可能となる。すなわち、上述したように拘束された位置に撚りが形成された光ファイバは、充実押出し時の樹脂圧による撚りの逃げ場がなくなるので、目的の撚りピッチを保ったまま充実被覆によりコア材と複数の光ファイバの間へシース樹脂を充填することができる。製造された光ファイバケーブルは、複数の光ファイバの撚りピッチが変化せず、安定した撚りピッチを得ることができるので、例えば水圧検出用の光ファイバセンサケーブルとして正確な検知を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1を参照するに、この実施の形態に係る光ファイバケーブルの製造装置1は、送出されるコア材3の周りに複数の光ファイバ5(撚り線材)を撚り合わせるための撚り線機7と、この撚り線機7から送出されて前記複数の光ファイバ5が撚り合わされたコア材3の周囲にシース樹脂9を被覆して押出成形する押出ヘッド11を備えた押出成形装置13と、この押出成形装置13で押出成形された光ファイバケーブル15を冷却する冷却水槽17と、前記光ファイバケーブル15を引き取るための引取キャタピラ19を備えた引取装置21と、前記光ファイバケーブル15を巻取ドラム23に巻き取るための巻取装置25が備えられている。
【0026】
なお、上記の光ファイバ5としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線、あるいは光ファイバコードなどの他の形態の光ファイバが用いられる。
【0027】
より詳しく説明すると、上記の撚り線機7は、例えば回転軸27を備えた回転体29が前記回転軸27を中心に回転可能に設けられており、図示しない駆動モータにより回転速度が制御されて回転駆動される構成である。さらに、前記回転軸27には送出されるコア材3を通過させるコア材通過孔31が設けられている。また、光ファイバ5をロール状に卷回した複数個のロール状光ファイバ33が前記回転体29に配置されている。なお、この実施の形態では2個のロール状光ファイバ33が前記回転体29に配置されている。
【0028】
したがって、前記回転体29が回転すると、複数個のロール状光ファイバ33から引き出された複数の光ファイバ5が前記コア材3の周りに回転することで、送出されるコア材3の周りに複数の光ファイバ5が撚り合わされることになる。
【0029】
図2及び図3を併せて参照するに、上記の押出ヘッド11には、前記撚り線機7から送出された複数の光ファイバ5と前記コア材3を導入するニップル35と、このニップル35の先端から送出された複数の光ファイバ5を撚り合わせたコア材3の周囲にシース樹脂9を被覆して押出成形するダイス37と、を備えている。
【0030】
また、上記のニップル35は、その中心部にニップル回転部39が軸受39Aを介して回転可能に設けられており、前記ニップル回転部39は図示しない駆動モータにより回転速度が前記撚り線機7と同方向に同期して回転制御される構成である。さらに、図3に示されているように、前記ニップル回転部39は、その回転中心に前記コア材3を挿通せしめるコア材挿通孔41と、前記複数の光ファイバ5を前記コア材3の外側の直近の通過位置に拘束して挿通せしめるように前記コア材挿通孔41の外側に連通した複数の撚り線材挿通孔43が設けられている。なお、コア材挿通孔41は、コア材3がコア材挿通孔41を通過する際に、ニップル回転部39が回転してもその回転力でコア材3が捻られないようにコア材3に対して僅かなクリアランスを設けている。したがって、複数の光ファイバ5はニップル回転部39の内部でコア材3の外側に僅かな隙間を空けて回転しながらコア材3の周りに撚り合わされることになる。
【0031】
また、前記ニップル回転部39の先端は、ニップル35の先端面とほぼ同じ又は近傍に位置しており、ニップル35の先端面はダイス37のダイス孔45のダイス面位置DSより後方側に位置している。なお、ニップル35の先端部にはニップル孔47を備えた蓋部49がねじ止め式で取り付けられており、前記蓋部49は光ファイバケーブル15のサイズに合わせて取替えが可能である。
【0032】
次に、前述した光ファイバケーブルの製造装置1を用いて、この実施の形態の光ファイバケーブルの製造方法について説明する。
【0033】
図示しないコア材ロールから送出されるコア材3は、撚り線機7の回転軸27のコア材通過孔31を通過して前方(図1において右方)へ送り出され、ニップル35のニップル回転部39のコア材挿通孔41を通過してからダイス37のダイス孔45を経て前方(図1において右方)へ送出される。
【0034】
一方、撚り線機7の回転体29は図示しない駆動モータにより回転速度が制御されて回転駆動されるので、前記回転体29に配置した複数個のロール状光ファイバ33から引き出された複数の光ファイバ5は、前記コア材3の周りに回転しながらニップル35のニップル回転部39の複数の撚り線材挿通孔43を挿通される。なお、この実施の形態では2個のロール状光ファイバ33が前記回転体29に配置されている。つまり、光ファイバ5がコア材3の周囲の全てを覆うほどではなく、コア材3の周囲の一部のみを覆う程度の本数(図1では2本)で撚り合わせる。
【0035】
ニップル回転部39は図示しない駆動モータにより回転速度が前記撚り線機7と同方向に同期して回転制御される。これにより、複数の光ファイバ5はニップル回転部39の内部でコア材3の外側に僅かな隙間を空けて回転しながらコア材3の周りに撚り合わされることになる。
【0036】
光ファイバ5が撚り合わされたコア材3はニップル35の先端から前方へ送出される。そして、押出ヘッド11に設けたニップル35とダイス37で形成された樹脂流路51からポリエチレン等のシース樹脂9が押し出される。このとき、ニップル35の先端面はダイス37のダイス孔45のダイス面位置DSより後方側に位置しているので、図2に示されているように、ニップル35の先端から送出された直後でコア材3及び光ファイバ5の周りにシース樹脂9が充実押出しで被覆される。
【0037】
このとき、前記ニップル回転部39の先端、つまりニップル35の先端位置より送出された直後の前記複数の光ファイバ5の撚り拘束ポイントTPと、前記複数の光ファイバ5を撚り合わせたコア材3の外周にシース樹脂9を被覆する開始点である樹脂被覆ポイントCPがほぼ一致することになるので、目的の撚りピッチを保ったまま充実被覆によりコア材3と光ファイバ5(撚り線材)の間へシース樹脂9を充填することができる。
【0038】
その後、シース樹脂9が押出ヘッド11のダイス37のダイス孔45から所望の直径に押出成形された光ファイバケーブル15は、図4に示されているように、冷却水槽17にて冷却された後に、引取装置21の引取キャタピラ19で引き取られてから巻取装置25の巻取ドラム23に巻き取られる。
【0039】
以上のことから、ニップル35の中心部にニップル回転部39の回転機構を設け、ニップル回転部39のコア材挿通孔41と撚り線材挿通孔43が連通した一体型となっているために、複数の光ファイバ5がニップル回転部39の内部でコア材3の周りに拘束された位置に撚り合わされることになる。このようにニップル35に光ファイバ5(撚り線材)の拘束効果をもたらすことで、光ファイバ5(撚り線材)の移動を防止し、正確なピッチで撚りを形成することが可能となる。
【0040】
さらに、ニップル35の中心部にニップル回転部39の回転機構を設けることで、ニップル35の先端が撚り拘束ポイントTPとなり、この撚り拘束ポイントTPが樹脂被覆ポイントCPとほぼ一致、つまり殆ど同じ又は近くなるので、光ファイバ5(撚り線材)がコア材3の上で所定の位置からずれる余地が無くなる。
【0041】
また、充実押出しさせることで、コア材3と光ファイバ5の間にシース樹脂9を十分に充填することが可能となる。すなわち、上述したように拘束され位置に撚りが形成された光ファイバ5は、充実押出し時の樹脂圧による撚りの逃げ場がなくなる(移動しない)ので、目的の撚りピッチを保ったまま充実被覆によりコア材3と光ファイバ5の間へシース樹脂9を充填することができる。
【0042】
換言すれば、偏平したコア材3や、外径、張力、表面性の異なる光ファイバ5であっても、複数の光ファイバ5を安定した撚りピッチでコア材3に撚り合わせながらシース樹脂9を充実被覆した光ファイバケーブル15を製造することができる。その結果として、製造された光ファイバケーブル15は、複数の光ファイバ5の撚りピッチが変化せず、安定した撚りピッチを得ることができるので、例えば水圧検出用のセンサケーブルとしての正確な検知を行うことができる。
【0043】
なお、前述した実施の形態では、光ファイバ5(撚り線材)の撚り方向が一方向の場合について説明したが、SZ方向のSZ撚りの場合にも適用できる。すなわち、特にSZ撚りの場合、撚った後にシースまでの間に撚りが解放しないように拘束する必嬰があるが、この発明ではニップル回転部39が撚り線機7と同方向に同期して回転するのでSZ撚りが可能であり、かつ、複数の光ファイバ5が撚り線材挿通孔43で拘束されてコア材3の周りに正確にSZ撚りされ、ニップル回転部39の先端、つまりニップル35の先端から送出された直後にシース樹脂9で被覆される。したがって、従来のようにSZ撚りからシース樹脂9の被覆までの間でSZ撚りが例えば粗巻きなどの他の手段で拘束する必要がなく、SZ撚りを容易に行うことが可能となる。
【0044】
例えば図4に示したような光ファイバケーブル15を製造する場合、例えば直径1.5のコア材3の周囲に直径250μmの光ファイバ5を2本ピッチ50mmでコア材3の対角に撚り、最外層にシース樹脂9としてのポリエステルエラストマーを被覆した光ファイバセンサケーブルを製造した。なお、コア形状、並びにシース色は異なるが、比較としてパイプ押出し、並びに充実押出しによる製造ケーブルを製造した。
【0045】
パイプ押出しであると、コアの対角に配置する予定であった光ファイバが拘束点までの間にコアの形状、外力等により予定の位置にとどまらず、また、光ファイバ周囲へ樹脂が回りこまず空隙が生じる現象が確認された。これに対し本件の方法では製造を実施した場合、コア上の光ファイバは設計位置へとどまり、また、光ファイバに「逃げ」が発生するような空隙は生じなかった。
【0046】
さらに、特許文献1の方法であると、程度は良いもののやはりパイプ押出し方法での実施状態のように光りファイバが設計位置(コアの対角位置)へとどまらす、設計位置から約30°程度動いてしまうことか確認された(ただし、コアと光ファイバの間の空隙の発生は見られなかった)。
【0047】
さらに、ポリエステルエラストマーの流動性による影響についても考慮し、MFRが0.05、0.10、2.00、4.00、4.5g/10minのポリエステルエラストマーを使用し、製造を実施した。その結果、MFRが0.10g/10min未満であると光ファイバ周囲に隙間が生じてしまい光ファイバが動き水圧印加時に歪みが緩和される現象が生じてしまった。また、MFRが5.0g/10minを越えると、樹脂の流動性が高すぎ、ケーブルが楕円形状となってしまった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態の光ファイバケーブルの製造装置を示す概略的な説明図である。
【図2】図1の撚り合わせと押出成形の拡大断面図である。
【図3】図2の矢視III−III線の断面図である。
【図4】図1の光ファイバケーブルの製造装置で製造される光ファイバケーブルの断面図である。
【図5】従来の光ファイバケーブルの製造装置を示す概略的な説明図である。
【図6】図5の撚り合わせと押出成形の拡大断面図である。
【図7】図5の光ファイバケーブルの製造装置で製造される光ファイバケーブルの断面図である。
【図8】光ファイバが所望の位置からずれた状態を示す光ファイバケーブルの断面図である。
【図9】光ファイバの近くに空隙がおきた状態を示す光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 光ファイバケーブルの製造装置
3 コア材
5 光ファイバ
7 撚り線機
9 シース樹脂
11 押出ヘッド
13 押出成形装置
15 光ファイバケーブル
17 冷却水槽
21 引取装置
25 巻取装置
27 回転軸
29 回転体
31 コア材通過孔
33 ロール状光ファイバ
35 ニップル
37 ダイス
39 ニップル回転部
41 コア材挿通孔
43 撚り線材挿通孔
45 ダイス孔
47 ニップル孔
DS ダイス面位置
TP 撚り拘束ポイント
CP 樹脂被覆ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送出されるコア材の周りに複数の光ファイバを撚り合わせるべく撚り線機にて前記複数の光ファイバをコア材の周りに回転せしめ、前記撚り線機から送出された光ファイバと前記コア材をニップルに導入する際に、前記ニップルの中心部に回転自在に設けたニップル回転部の回転中心に前記コア材を挿通し、かつ前記複数の光ファイバを前記コア材の外側の直近の通過位置に拘束して前記ニップル回転部に挿通し、前記ニップル回転部を前記撚り線機と同方向に同期して回転せしめることにより、前記コア材の周りに前記複数の光ファイバを拘束した位置で撚り合わせ、前記ニップルの先端より送出された前記複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の外周にシース樹脂を押出成形により一体化被覆して光ファイバケーブルを製造することを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記ニップル回転部の先端より送出された直後の前記複数の光ファイバの撚り拘束ポイントと、前記複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の外周にシース樹脂を被覆する開始点である樹脂被覆ポイントの位置をほぼ一致させることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記複数の光ファイバの撚り方向を一方向又はSZ方向とすることを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項4】
送出されるコア材の周りに複数の光ファイバを撚り合わせるべく前記複数の光ファイバを前記コア材の周りに回転する撚り線機と、この撚り線機から送出された複数の光ファイバと前記コア材を導入するニップルと、このニップルの先端から送出される複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の周囲に被覆するシース樹脂を押出成形するダイスと、を備えている光ファイバケーブルの製造装置において、
前記ニップルの中心部に、前記撚り線機と同方向に同期して回転するニップル回転部を設け、このニップル回転部に、その回転中心に前記コア材を挿通せしめるコア材挿通孔と、前記複数の光ファイバを前記コア材の外側の直近の通過位置に拘束して挿通せしめるように前記コア材挿通孔の外側に連通した撚り線材挿通孔を設けていることを特徴とする光ファイバケーブルの製造装置。
【請求項5】
前記ニップル回転部の先端より送出された直後で前記複数の光ファイバを撚り合わせたコア材の周囲にシース樹脂を被覆すべく前記ニップルの先端を前記ダイスのダイス面位置より後方側に位置させた構成であることを特徴とする請求項4記載の光ファイバケーブルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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