説明

光ファイバケーブル及び光ファイバケーブルの引裂き方法

【課題】外被であるシースを一層に形成して、引裂紐を引裂き易い配置構成にして、引裂作業性のよい光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】一層のシースの内部に、光ファイバケーブルの中心に対して対向位置に配置された、長手方向に抗張力部材である一対のテンションメンバが埋め込まれて、該一対のテンションメンバ配置の両側が上側シース部及び下側シース部として形成され、上側シース部及び下側シース部のいずれかのシース部に、所定の間隔を置いて、かつそれぞれテンションメンバに近接して配置された、内方内側の一部が長手方向に前記ケーブルコア領域に接するようにされた一組の引裂紐が埋め込まれることで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル及び光ファイバケーブルの引裂き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、従来複数本の光ファイバ心線と引裂紐をポリアミド樹脂の一次被覆層にて被覆し、更にその上から発泡ポリエチレンの二次被覆層にて被覆した光ファイバケーブル、あるいは更にその上に高密度ポリエチレンあるいは高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを混合したものを最外被層とした光ファイバケーブルが知られている。
【0003】
特許文献2には、複数の光ファイバ心線をユニット材で一括被覆してなる光ファイバユニットの周上に、抗張力繊維からなる抗張力層を有し、この抗張力層の周上にシースを設けることが記載されている。このような構成の光ファイバケーブルによれば、光ファイバケーブルを構成する光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバテープ心線を樹脂で一括被覆した光ファイバユニットの形態となっているので、光ファイバテープ心線の形態のときよりも剛性が大きくなるという特徴が得られる。
【0004】
特許文献3には、複数の光ファイバ心線が収納された筒体の外側にシースを設け、このシース内にリップコードとテンションメンバを埋め込む構造が記載され、シースは内部シースと外部シースとから構成され、リップコードとテンションメンバがこの外部シースに埋め込まれることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−215946号公報
【特許文献2】特開平11−311730号公報
【特許文献3】特開2000−241681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来から光ファイバ心線に大きな圧縮力が作用して光ファイバケーブルの伝送損失が増加しないようにケーブルコアの周囲に高密度ポリエチレン内層被覆を形成し、その外側に低密度ポリエチレン外層被覆を形成して、柔軟性を保持することが行われて来た。そして、ケーブルコアの周囲のシースに引裂用のリップコード及び抗張力を付与するテンションメンバを埋設することが行われて来た。
【0007】
ケーブルコアの周囲に高密度ポリエチレン内層被覆を形成し、その外側に低密度ポリエチレン外層被覆を形成する構造を採用しようとしたときに、低密度ポリエチレン外層被覆は引裂易いが、高密度ポリエチレン内層被覆は引き裂きづらく、光ファイバ心線の引き出し作業がしづらいものとなる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑み外被であるシースを一層に形成して、引裂紐を引裂き易い配置構成にして、引裂作業性のよい光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の光ファイバ心線が束ねられて形成された光ファイバ多心ユニットを充填剤で固着してケーブルコアを形成し、形成されたケーブルコアを収納するケーブルコア領域の外側にシースを備えた光ファイバケーブルにおいて、
前記シースが前記ケーブルコアの周囲に設けられた、ポリエチレン材で形成された一層のシースとして形成され、
該一層のシースの内部に、光ファイバケーブルの中心に対して対向位置に配置された、長手方向に抗張力部材である一対のテンションメンバが埋め込まれて、該一対のテンションメンバ配置の両側が上側シース部及び下側シース部として形成され、
該上側シース部及び下側シース部のいずれかのシース部に、所定の間隔を置いて、かつそれぞれテンションメンバに近接して配置された、内方内側の一部が長手方向に前記ケーブルコア領域に接するようにされた一組の引裂紐が埋め込まれることで構成され、
前記一組の引裂紐によって一層のシースの、該一組の引裂紐間が切り裂かれると、切り裂かれたいずれかのシース部に光ファイバ心線取り出しのための空間部を形成し得るようにしたこと
を特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0010】
本発明は、また、上述した前記引裂紐は、光ファイバケーブルの中心に対して対向位置に配置された一対の引裂紐を形成することを特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0011】
本発明は、また、上述した、前記引裂紐はそれぞれテンションメンバに接触して配置されることを特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0012】
本発明は、また、上述した前記引裂紐の引裂側の角度は90°以上とされることを特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0013】
本発明は、また、上述した前記一組の引裂紐が埋め込まれたいずれかのシース部は、その外表面に一組の引裂紐が埋め込まれたことを示す突起又は窪みが形成されることを特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0014】
本発明は、また、上述した前記突起又は窪みが、光ファイバケーブルの中心からテンションメンバに向けての延長線上シース部の外表面に形成されることを特徴とする光ファイバケーブルを提供する。
【0015】
本発明は、また、上述した光ファイバケーブルに埋め込んだ引裂紐によっていずれかのシース部を引裂く方法において、
該引裂紐を露出させるためにシース部の一部を切り取るカッターが用いられ、
該カッターの刃が前記テンションメンバの外方外面を案内面となし、かつ前記引裂紐に近接するようにされて、前記シース部の一部を切り取り、前記引裂紐を露出させ、
該露出された引裂紐を用いて、いずれかのシース部の、一組の引裂紐間の部分を切り裂き、光ファイバ心線取り出しのための空間部を形成すること
を特徴とする光ファイバケーブルの引裂き方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上述したようにシースを一層のシースとして形成し、一組の引裂紐によって一層のシースの、一組の引裂紐間が切り裂かれると、切り裂かれたいずれかのシース部に光ファイバ心線取り出しのための空間部を形成することができ、直ちに次の光ファイバ心線取り出し作業を行うことができる。
【0017】
この光ファイバケーブルの引裂きに当って、カッターの刃がテンションメンバの外方外面を案内面となし、かつ引裂紐に近接されるようにされて、シース部の一部を切り取るようにしているので、引裂紐を確実に簡単に露出させることができ、次の光ファイバ心線取り出しまでの作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例の構成形態を示す図。
【図2】20心ユニットの光ファイバ多心ユニットの構成を示す図。
【図3】本発明の実施例のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の実施例である光ファイバの構成を示す。
【0021】
図1において、実施例である光ファイバ1は、光ファイバ心線の集合体である。ケーブルコア2、ケーブルコア2外方の円筒状の外皮であるシース(ケーブルシース)3、シース3内に埋め込まれた抗張力部材であるテンションメンバ(TM)4、引裂紐5及びシース3内部配置でケーブル2の外面を包囲するフォームテープ6から形成される。図1では判り易くするためにケーブルコア2が実際よりいく分小さく図示してある。
【0022】
図2は、外面に筒体被覆が形成された光ファイバ心線10で構成された多心ユニット11、本例の場合20心ユニットを示す。この構成は公知である。
【0023】
このように、本実施例の光ファイバケーブル100は、複数の光ファイバ心線が束ねられて形成された光ファイバ多心ユニット11を充填剤で固着してケーブルコア2を形成し、形成されたケーブルコア2を収納するケーブルコア収納領域9の外側にシース3を設けて構成される。
【0024】
本実施例のシース3は、円筒状のケーブルコア収納領域の周囲に設けられ、ポリエチレン材で一層に形成される。本例では、高密度ポリエチレン材が使用されている。ここで一層とは、一層のみということであるが、図に示すようにフォームテープ6等と組み合わせて使用することは構わない。
【0025】
この一層のシース3の内部に、一対のテンションメンバ4が埋め込まれる。一対のテンションメンバ4は、光ファイバケーブル100の中心に対して対向位置に配置される。本例にあっては、図において、水平方向中央部に配置され、この一対のテンションメンバ4の配置によってシース3は、テンションメンバ4を境にして両側が上側シース部3Aと下側シース部3Bとして形成されることになる。
【0026】
上側シース部3A及び下側シース部3Bのいずれかのシース部に、所定の間隔を置いて、かつそれぞれテンションメンバ4に近接した状態で、一組の引裂紐5が埋め込まれる。すなわち、2つの引裂紐5は光ファイバケーブル100の中心に対して所定の間隔を置いて埋め込まれる。
【0027】
一組の引裂紐5は、光ファイバケーブル1の長手方向に配置され、円方内側の一部がケーブルコア領域9に、すなわちフォームテープ6に接するようにして埋め込まれる。
【0028】
本例の場合、引裂紐5は、光ファイバケーブル1の中心に対して対向位置に配置された一対の引裂紐として形成されている。そして、引裂紐5は、テンションメンバ4に対して小さな間隔Tを置いて配置されている。引裂紐5は、テンションメンバ4に対して接触してもよい。従って本発明において近接配置とは、引裂紐5がテンションメンバ4に接触するT=Oの場合を含む概念である。本例では、引裂紐5は上部シース部3Aに設けてある。
【0029】
引裂紐5の引裂側の角度は90°以上とすれば、後述する光ファイバ心線の引き出しを行うことができる。本例の場合、125°としている。125°以上の角度とすることが望ましい。
【0030】
一組の引裂紐5が埋め込まれたいずれかのシース部3A、3Bは、その外表面に一組の引裂紐5が埋め込まれたことを示す突起又は窪みが形成される。本例の場合、光ファイバケーブル1の中心からテンションメンバに向けての延長線上のシース部の外表面に突起8が形成してある。この地点に突起8を設けることによって、上部シース部3Aと下部シース部3Bとの境界を見分けることができ、後述する切り出し作業の目安印とすることができる。
【0031】
図3は、以上のように構成された光ファイバケーブル1の引裂き方法を示す。
【0032】
図3(a)は、以上のように構成された光ファイバケーブル1の構成を示す。
【0033】
本例にあっては、シース部の一部を切り取って引裂紐5を露出する作業のためにカッター(図示せず)が用いられる。
【0034】
図3(b)において、カッターの刃がテンションメンバ4の外方外面を案内面として、かつ引裂紐5に近接するようにして配置した状態を点線で示している。このようにカッターの刃を案内、配置してシース3の一部を切り取り、除去する。ここでは、近接とは接触した状態を含む概念で使用する。接触させた時に、引裂紐5を傷つけないようにする。
【0035】
図3(c)は、シース3の一部を上述のようにして切り取った状態を示す。この状態では、引裂紐5は、外部に露出するか、ほぼ露出した状態を呈する。ほぼ露出した状態とは、光ファイバ光線を容易に引き出すことができる程に薄い部分が残ったということである。
【0036】
図3(d)は、図3(c)の状態から引裂紐5を外方に取り出すことを示す。この引裂紐5の外方への取り出しに伴って、一組の引裂紐間のシース部分20は、シース3から切り離される。この状態では、フォームテープ6の該当部分も容易に切り裂き、取り除くことができ、図3(d)に示す形状を構成することができる。
【0037】
露出した引裂紐5を用いて、いずれかのシース部の、一組の引裂紐間の部分を切り裂き、光ファイバ心線取り出しのための空間部21を形成する。以上のようにして、光ファイバケーブル100の引裂き作業がなされる。
【0038】
以上のように、本実施例は、シース3に1対のテンションメンバ4を配置したスロットレスケーブルにおいて、2本の引裂紐5を一対のテンションメンバ4の上方又は下方に適用な角度を有するようにして、シースと光ファイバコアである光ファイバ集合体との境界に配置することで構成される。
【0039】
中間後の光ファイバ心線の取り出しに際し、シース3にテンションメンバ4を温存したままシース3の一部を引裂紐5にて除去することができるので、取り出し作業のためにシース3を他の固定手段を設けて固定するようなわずらわしいことをしなくて済むメリットがある。
【0040】
シース3の一部を、上述したように最適な角度で除去するようにしたので、あたかもC型ケーブルと同等の特徴を得ることができる。
【0041】
また、クロジャ内にてシースの2箇所を直接把持できるため、テンションメンバ4を把持するための機構・作業を省略できる。
【符号の説明】
【0042】
1…光ファイバケーブル、2…ケーブルコア、3…シース(外被)、4…テンションメンバ(TM)、5…引裂紐、6…フォームテープ、8…突起、9…ケーブルコア収納領域、20…切り取り部分、21…空間部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線が束ねられて形成された光ファイバ多心ユニットを充填剤で固着してケーブルコアを形成し、形成されたケーブルコアを収納するケーブルコア領域の外側にシースを備えた光ファイバケーブルにおいて、
前記シースが前記ケーブルコアの周囲に設けられた、ポリエチレン材で形成された一層のシースとして形成され、
該一層のシースの内部に、光ファイバケーブルの中心に対して対向位置に配置された、長手方向に抗張力部材である一対のテンションメンバが埋め込まれて、該一対のテンションメンバ配置の両側が上側シース部及び下側シース部として形成され、
該上側シース部及び下側シース部のいずれかのシース部に、所定の間隔を置いて、かつそれぞれテンションメンバに近接して配置された、内方内側の一部が長手方向に前記ケーブルコア領域に接するようにされた一組の引裂紐が埋め込まれることで構成され、
前記一組の引裂紐によって一層のシースの、該一組の引裂紐間が切り裂かれると、切り裂かれたいずれかのシース部に光ファイバ心線取り出しのための空間部を形成し得るようにしたこと
を特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
請求項1において、前記引裂紐は、光ファイバケーブルの中心に対して対向位置に配置された一対の引裂紐を形成することを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
請求項1において、前記引裂紐はそれぞれテンションメンバに接触して配置されることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】
請求項1において、前記引裂紐の引裂側の角度は90°以上とされることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項5】
請求項1において、前記一組の引裂紐が埋め込まれたいずれかのシース部は、その外表面に一組の引裂紐が埋め込まれたことを示す突起又は窪みが形成されることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項6】
請求項5において、前記突起又は窪みが、光ファイバケーブルの中心からテンションメンバに向けての延長線上シース部の外表面に形成されることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した光ファイバケーブルに埋め込んだ引裂紐によっていずれかのシース部を引裂く方法において、
該引裂紐を露出させるためにシース部の一部を切り取るカッターが用いられ、
該カッターの刃が前記テンションメンバの外方外面を案内面となし、かつ前記引裂紐に近接するようにされて、前記シース部の一部を切り取り、前記引裂紐を露出させ、
該露出された引裂紐を用いて、いずれかのシース部の、一組の引裂紐間の部分を切り裂き、光ファイバ心線取り出しのための空間部を形成すること
を特徴とする光ファイバケーブルの引裂き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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