説明

光ファイバケーブル解体方法及び光ファイバケーブル

【課題】 作業現場で刃物等を用いることなく、上巻きテープ切断のための切裂き始端となる切れ目が得られるようにし、安全、簡単かつ容易に上巻テープが除去できるようにする。
【解決手段】 複数本の光ファイバ心線23を上巻きテープ27で覆い、この上巻きテープ27の外側にシース29を被覆した光ファイバケーブル11の上巻きテープ27を除去する光ファイバケーブル解体方法であって、上巻きテープ27をヤスリ31で擦ることによって切れ目を作り、その切れ目33を摘まんで引き裂くことにより上巻きテープ27を除去する。特に、光ファイバ心線23を収容するスロット溝17を備えたスロット型光ファイバケーブル11では、スロット溝17を形成するリブ19に接する部分の上巻きテープ27を擦ることで切れ目33を作ることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバ心線を上巻テープで覆い、その外側を外被(シース)で被覆した光ファイバケーブルの上巻きテープを除去する光ファイバケーブル解体方法及び光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
通信用光ファイバケーブルとして、光ファイバ心線或いは光ファイバテープ心線を複数本、スペーサの外周に形成してある複数のスロット溝の中にそれぞれ収納し、その外周に上巻きテープを巻き付けた上で、さらにシースで覆った構造のスロット型光ファイバケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は従来のスロット型光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。図において、1はスペーサ、2はその断面中心に配された抗張力体、3はスペーサ1の外周に周方向間隔的に形成されたスロット溝、4は各スロット溝3の中に収容された光ファイバテープ心線、5はスペーサ1の外周に巻回された上巻きテープ、6は上巻きテープ5の外側に被覆された全周一定厚のシースである。
【0004】
上記構成の光ファイバケーブル7を布設した中間部において、光情報配信契約等の加入者が発生した場合、光ファイバケーブル7を解体して接続を行う。すなわち、光ファイバケーブル7の中間部でシース6を除去した後、上巻きテープ5を除去し、光ファイバテープ心線4を取り出して、ドロップケーブルにより引き落とされる。この際、上巻きテープ5はスロット溝3の直上に巻かれており、除去する際には、図6に示すように、きっかけを作るため、ニッパ8や刃物等を、上巻きテープ5同士の重なり部9における上層の上巻きテープ5aの下へ滑り込ませて切断を行っていた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−311860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバケーブル7のスロット溝3に収容されている光ファイバテープ心線4を取り出すには、上記のように、上巻きテープ5の除去が必要となる。このとき、上巻きテープ5は手指により摘むことができないだけでなく、上巻きテープ5の基材として用いられている不織布等は摘むのみでは引き裂くのが困難なため、一般にニッパ8等を滑り込ませて切断を行い、除去のきっかけを作る。ところが、光ファイバテープ心線4と上巻きテープ5の間には、防護するものはないため、図7に示すように、滑り込ませたニッパ8等によって誤って光ファイバテープ心線4を傷つける虞があった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、作業現場で刃物等を用いることなく、上巻きテープ切断のための切裂き始端となる切れ目を得ることができる光ファイバケーブル解体方法及び光ファイバケーブルを提供し、もって、安全、簡単かつ容易な上巻テープの除去を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 複数本の光ファイバ心線を上巻きテープで覆い、該上巻きテープの外側にシースを被覆した光ファイバケーブルの前記上巻きテープを除去する光ファイバケーブル解体方法であって、
前記上巻きテープをヤスリで擦ることによって切れ目を作り、該切れ目を摘まんで引き裂くことにより前記上巻きテープを除去することを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【0008】
この光ファイバケーブル解体方法によれば、上巻きテープをヤスリで擦ることによって切れ目が作られ、この切れ目が摘まれ引き裂かれることにより上巻きテープの除去が可能となる。切れ目は、上巻きテープに、手指での引き裂きが容易な脆弱部を形成するものでも良く、また、上巻きテープを分断するものであっても良い。上巻きテープの裏側に直接刃物等を差し入れるのではなく、表面から厚み方向に上巻きテープが徐々に除去されて行く。これにより、作業現場で刃物等を用いることなく、上巻テープ切断のための切裂き始端となる切れ目が安全且つ容易に得られる。
【0009】
(2) (1)に記載の光ファイバケーブル解体方法であって、
前記光ファイバ心線を収容するスロット溝を備えたスペーサの前記スロット溝を形成するリブに接する部分の前記上巻きテープを擦ることで前記切れ目を作ることを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【0010】
この光ファイバケーブル解体方法によれば、ヤスリを押し付けることによる反力がリブから上巻きテープに作用し、ヤスリを押し付ける力が大きくなり、上巻きテープの摩耗が早く進む。
【0011】
(3) (2)に記載の光ファイバケーブル解体方法であって、
前記リブの肩部又は前記リブの先端面に形成した突部の何れかに接している部分の前記上巻きテープを擦ることで前記切れ目を作ることを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【0012】
この光ファイバケーブル解体方法によれば、リブの肩部や突部を目印にヤスリかけが行え、作業が容易となるとともに、平坦な箇所よりも単位面積あたりの押し付け力を大きくでき、上巻きテープの摩耗を早めて、上巻きテープが破れ易くなる。また、切れ目が線状となり、切断位置の高精度な位置決めが可能となる。
【0013】
(4) (1)〜(3)の何れか1項に記載の光ファイバケーブル解体方法であって、
前記上巻きテープの材質が不織布であることを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【0014】
この光ファイバケーブル解体方法によれば、光ファイバ心線の保護強度を確保しつつ、ヤスリで擦ることによる容易な切裂きが可能となる。
【0015】
(5) 光ファイバ心線を収容するスロット溝を備えたスペーサの外周面に上巻きテープを巻き、該上巻きテープの外側にシースを被覆する光ファイバケーブルであって、
前記スロット溝を形成するリブの先端面に突部が形成されたことを特徴とする光ファイバケーブル。
【0016】
この光ファイバケーブルによれば、突部を覆う上巻きテープの部分がヤスリにて擦られることで、ヤスリを押し付ける単位面積あたりの力が大きくなり、上巻きテープの摩耗を早めて、平坦箇所よりも容易な切裂きが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光ファイバケーブル解体方法によれば、上巻きテープをヤスリで擦ることによって切れ目を作り、この切れ目を摘んで引き裂くことにより上巻きテープを除去するので、作業現場で刃物等を用いることなく、上巻テープ切断のための切裂き始端となる切れ目を得ることができ、光ファイバ心線を傷つけずに、安全、簡単かつ容易に除去することができる。
【0018】
本発明に係る光ファイバケーブルによれば、スロット溝を形成するリブの先端面に突部を形成したので、突部を覆う上巻きテープの部分をヤスリで擦ることにより、ヤスリを押し付ける単位面積あたりの力を大きくでき、上巻きテープの摩耗を早めて、平坦箇所よりも容易に切れ目を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ファイバケーブル解体方法及び光ファイバケーブルの好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る解体方法の状況を表す光ファイバケーブルの断面図、図2は本発明に係る解体方法の状況を表す光ファイバケーブルの側面図、図3はヤスリの擦り方向を表す平面図である。
本発明に係る解体方法の説明に先立ち、解体対象となる光ファイバケーブルの構成について説明する。光ファイバケーブル11は、中心に抗張力体(テンションメンバ)13を有し、このテンションメンバ13の周囲に樹脂製のスペーサ15が一体的に設けられている。スペーサ15の外周面には、複数本のスロット溝17が一方向(所謂S状、Z状)に或いは反転して平行(所謂SZ状)に撚られて設けられている。
【0020】
換言すれば、スロット溝17は、スロット溝17,17同士間を仕切るリブ19によって画成さている。リブ19は、スペーサ15の外周円を等間隔に分断した円弧状の先端面19aを有する。本実施の形態ではSZ状のスロット溝17(図2参照)を例示する。スロット溝17には光ファイバ21をテープ状に被覆したテープ心線23を積層して積層体25を形成し、この積層体25を収容している。
【0021】
スペーサ15の外周面には上巻きテープ27が巻回されている。上巻きテープ27の外側にはさらにシース29(図2参照)が設けられて光ファイバケーブル11を構成している。上巻きテープ27の巻き方向は、縦添えでも横巻きでも良いが、本発明を特長付けるために、本実施の形態では横巻きとしている。上巻きテープ27は全面にわたって巻かれており、織布または不織布を基材としてその内側面にはスロット溝17に浸入した水の進行を防止する吸水層が設けられている。なお、不織布は吸水性のものには限定されない。また、上巻きテープ27の材質に不織布を使用することで、テープ心線23の保護強度を確保しつつ、後述のヤスリ31で擦ることによる容易な切裂きが可能となっている。
【0022】
次に、本発明に係る光ファイバケーブル解体方法について説明する。
上記構成の光ファイバケーブル11を、本実施の形態による解体方法にて解体するには、先ず、シース29を除去した部分の上巻きテープ27をヤスリ31で擦り、上巻きテープ27の除去のきっかけとなる切れ目33を入れる。ヤスリ31を擦る方向aとしては、図3に示すように、上巻きテープ27の長手方向(巻回方向)と垂直方向が切裂きに効果的で望ましい。切れ目33は、少なくとも上巻きテープ27の幅寸法w以上の長さであることが好ましい。
【0023】
具体的にはシース29の除去された光ファイバケーブル11においてスペーサ15のリブ19直上にある上巻きテープ27を数cmの範囲に渡りヤスリ31にて擦ることにより、上巻きテープ27の一部を摩耗により破く。ヤスリ31としては、サンドペーパーの他、金属製、ガラス製またはセラミック製の爪ヤスリ等も好適となる。次いで、ヤスリ31により摩耗した切れ目33の部分を起点とし、手で摘まんで上巻きテープ27を引っ張ることにより、切れ目33で分断した上巻きテープ27を除去する(図2参照)。
【0024】
上巻きテープ27の除去は、一箇所の切れ目33を形成し、この切れ目33の近傍を摘んで分断した上巻きテープ27の両端部を分離して除去しても良く、或いは所望間隔で二箇所の切れ目33,33を形成し、これら切れ目33,33を両端部とする中間部所望長の短尺上巻きテープ27を一度に除去するものであっても良い。
【0025】
この解体方法では、上巻きテープ27をヤスリ31で擦ることによって切れ目33が作られ、この切れ目33が摘まれ引き裂かれることにより上巻きテープ27の除去が可能となる。切れ目33は、上巻きテープ27に、手指での引き裂きが容易な脆弱部を形成するものでも良く、また、上巻きテープ27を分断するものであっても良い。上巻きテープ27の裏側に直接刃物等を差し入れるのではなく、表面から厚み方向に上巻きテープ27が徐々に除去されて行く。これにより、作業現場で刃物等を用いることなく、上巻きテープ27切断のための切裂き始端となる切れ目33が安全且つ容易に得られることとなる。
【0026】
ヤスリ31で擦り、切れ目33を作る際には、スロット溝17を形成するリブ19に接する部分(すなわち、リブ先端面19aに接する部分)の上巻きテープ27を擦ることで切れ目33を作ることができる。ヤスリ31を押し付けることによる反力が先端面19aから上巻きテープ27に作用し、ヤスリ31を押し付ける力が大きくなり、上巻きテープ27の摩耗が早く進む。
【0027】
また、図1に示すように、リブ19の肩部19bを擦ることによりさらに容易に切れ目33を作ることができる。この場合、肩部19bのエッジ部分が、手で触れた際に分かる程度の大きさの鋭角に形成されていることがより好ましい。リブ19の肩部19bを目印にヤスリかけが行え、作業が容易となるとともに、平坦な箇所よりも単位面積あたりの押し付け力を大きくでき、上巻きテープ27の摩耗を早めて、上巻きテープ27が破れ易くなる。また、切れ目33が線状となり、切断位置の高精度な位置決めが可能となる。
【0028】
さらに、本実施の形態による解体方法に適用される光ファイバケーブル11は、スロット溝17を形成するリブ19の先端面19aに、図4に示す突部35を形成してもよい。突部35は、図4(a)に示すように、リブ19の先端面19aに、リブ19の延在方向に沿って設けた突条35Aとすることができる。また、突部35は、図4(b)に示すように、リブ19の先端面19aに形成した稜線部35Bとしてもよい。
【0029】
このような突部35を覆う上巻きテープ27の部分がヤスリ31にて擦られることで、ヤスリ31を押し付ける単位面積あたりの力が大きくなり、上巻きテープ27の摩耗を早めて、平坦箇所よりも容易な切裂きが可能となる。また、突部35を目印にヤスリがけが行え、作業が容易となる。さらに、切れ目が線状となり、切断位置の高精度な位置決めが可能となる。
【0030】
このように、上記の光ファイバケーブル解体方法によれば、上巻きテープ27をヤスリ31で擦ることによって切れ目33を作り、この切れ目33を摘まんで引き裂くことにより上巻きテープ27を除去するので、作業現場で刃物等を用いることなく、上巻きテープ27切断のための切裂き始端となる切れ目33を得ることができ、テープ心線23を傷つけずに、安全、簡単かつ容易に除去することができる。
【0031】
また、突部35を設けた光ファイバケーブル11によれば、突部35を覆う上巻きテープ27の部分をヤスリ31で擦ることにより、ヤスリ31を押し付ける単位面積あたりの力を大きくでき、上巻きテープ27の摩耗を早めて、平坦箇所よりも容易に切れ目33を得ることができる。
【0032】
なお、上記した実施の形態では、光ファイバ21がテープ心線23となり、積層体25となってスペーサ15のスロット溝17に収容されるスペーサ型光ファイバケーブルを例に説明したが、本発明に係る光ファイバケーブル解体方法は、スペーサ15を使用せず、複数本の束ねられた光ファイバ21が上巻きテープ27によって巻回される光ファイバケーブルにも適用可能であり、上記と同様の効果を奏するものである。
【実施例】
【0033】
次に、上記構成と同等の光ファイバケーブルを対象に、発明に係る解体方法を実施した結果を説明する。
15mm幅の上巻きテープ(不織布)を用い、ヤスリについては#800のサンドペーパーを用いた。
シースを500mm除去し、スペーサのリブ直上で上巻きテープが重なる部分において、上巻きテープ長手方向と垂直方向にサンドペーパーで約30往復擦った。
その結果、摩耗により20mm程の切れ目が発生。その切れ目部を指で摘まみ上巻きテープを引っ張り、ニッパにより上巻きテープを幅方向に切断した。
容易に上巻きテープを除去することができた。その後、開口間の上巻きテープを除去したが、テープ心線の外傷は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る解体方法の状況を表す光ファイバケーブルの断面図である。
【図2】本発明に係る解体方法の状況を表す光ファイバケーブルの側面図である。
【図3】ヤスリの擦り方向を表す平面図である。
【図4】光ファイバケーブルに設けられる突部の例を(a)(b)で表す断面図である。
【図5】従来の光ファイバケーブルの断面図である。
【図6】従来の解体状況を表す光ファイバケーブルの側面図である。
【図7】従来の解体状況を表す光ファイバケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0035】
11 光ファイバケーブル
15 スペーサ
17 スロット溝
19 リブ
19a リブの先端面
19b リブの肩部
27 上巻きテープ
29 シース
31 ヤスリ
32 テープ心線(光ファイバ心線)
33 切れ目
35 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ心線を上巻きテープで覆い、該上巻きテープの外側にシースを被覆した光ファイバケーブルの前記上巻きテープを除去する光ファイバケーブル解体方法であって、
前記上巻きテープをヤスリで擦ることによって切れ目を作り、該切れ目を摘まんで引き裂くことにより前記上巻きテープを除去することを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバケーブル解体方法であって、
前記光ファイバ心線を収容するスロット溝を備えたスペーサの前記スロット溝を形成するリブに接する部分の前記上巻きテープを擦ることで前記切れ目を作ることを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光ファイバケーブル解体方法であって、
前記リブの肩部又は前記リブの先端面に形成した突部の何れかに接している部分の前記上巻きテープを擦ることで前記切れ目を作ることを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の光ファイバケーブル解体方法であって、
前記上巻きテープの材質が不織布であることを特徴とする光ファイバケーブル解体方法。
【請求項5】
光ファイバ心線を収容するスロット溝を備えたスペーサの外周面に上巻きテープを巻き、該上巻きテープの外側にシースを被覆する光ファイバケーブルであって、
前記スロット溝を形成するリブの先端面に突部が形成されたことを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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