説明

光ファイバケーブル

【課題】 応力が加わっても光ファイバケーブル内の光ファイバに光損失増加が生じにくい光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 第1の抗張力体33に第1のシース11sを施した支持線部19と、テープ型光ファイバ心線12をほぼ中央に収容し外周に第2のシース11cを施すと共に第2のシース11c内に1本または2本の第2の抗張力体14を縦添えして収容した断面ほぼ矩形状のケーブル部10と、支持線部19とケーブル部10との短辺側側面とを連結する首部20とを有し、かつケーブル部10の長辺側の両側面にそれぞれ一箇所以上の対向する溝部15を形成すると共に、溝部15を収容したテープ型光ファイバ心線12よりも幅広に形成し、更に対向する溝部15の底辺の両角にノッチ16a〜16dをそれぞれ形成した光ファイバケーブル1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱間に架設し、また電柱からビルやマンションなどに引き込む配線用の光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)すなわち超高速、大容量の通信ができる光ファイバケーブルが各家庭やオフィスなどに導入されている。
【0003】
この種の光ファイバケーブルとして特許文献1において、図9に示す構造の光ファイバケーブル61が提案されている。この光ファイバケーブル61は、複数の光ファイバケーブル心線を並列に配置し一括被覆したテープ型光ファイバ心線12を複数枚集合させ、その集合体をプラスチックテープ17で包み、そのプラスチックテープ17の上に更にケーブル部シース71cを施してケーブル部30を構成している。なお、ケーブル部シース71c内には上下両側に鋼線からなる2本の抗張力体14がケーブル長手方向に縦添えされている。
【0004】
他方、支持線部19は1本の鋼線33cの回りに6本の鋼線33dを撚り合わせて形成された抗張力体の外周に支持線部シース71sを施したものである。支持線部19に対するケーブル部30の弛み率が0.2%以上になるように、ケーブル部シース71cと支持線部シース71sとの間に幅の狭い首部20を形成している。通常は、ケーブル部シース71c及び支持線部シース71s並びに首部20は一括して例えば熱可塑性樹脂である低密度ポリエチレンシースを押し出し被覆することにより同時に形成している。更に、首部20には長手方向に一定間隔でスリットが形成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−343571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような光ファイバケーブル61においては、ケーブル部シース71c内にテープ型光ファイバ心線12の集合体が緩く収容されたチューブ構造であるため、例えば人が誤って踏みつけた時など光ファイバケーブル61に局部的な応力が加わり、ケーブル部シース71cが大きく変形して潰れ、テープ型光ファイバ心線12に応力が加わるため光ファイバに光損失増加が生じることがあるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、中間後分岐特性を損なうことなく、応力が加わっても光ファイバケーブル内の光ファイバに光損失増加が生じにくい光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、第1の発明は、第1の抗張力体の外周に第1のシースを施した支持線部と、テープ型光ファイバ心線1枚以上をほぼ中央に収容し該テープ型光ファイバ心線の外周に第2のシースを施すと共に該第2のシース内に1本または2本の第2の抗張力体を縦添えして収容した断面ほぼ矩形状のケーブル部と、上記支持線部と上記ケーブル部とが長手方向に互いに平行して設けられかつ長手方向に上記支持線部と上記ケーブル部の短辺側側面とを連続的または間欠的に連結する首部とを有した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブル部の長辺側の両側面にそれぞれ一箇所以上の対向する溝部を形成すると共に、上記溝部を、収容した上記テープ型光ファイバ心線よりも幅広に形成し、更に対向する上記溝部の底辺の両角にノッチをそれぞれ形成した光ファイバケーブルである。
【0009】
第2の発明は、上記ケーブル部に形成された上記溝部の形状は上記ケーブル部中心に向かって溝幅が狭くなるほぼ逆台形であり、上記溝部の深さが0.5mm以上であるものである。
【0010】
第3の発明は、上記ノッチの間にシース引裂き用紐を上記テープ型光ファイバ心線に隣接するように配置し、上記シース引裂き用紐と上記テープ型光ファイバ心線との間の距離が0.5mm以下であるものである。
【0011】
第4の発明は、上記ノッチの頂点を結んだ線上に上記テープ型光ファイバ心線がないものである。
【0012】
第5の発明は、上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面と上記ケーブル部の長辺側側面とが平行になるように収容されているものである。
【0013】
第6の発明は、上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面に垂直な方向に積層された積層体を形成しているものである。
【0014】
第7の発明は、上記積層体が、互いに並列に配置されているものである。
【0015】
第8の発明は、上記テープ型光ファイバ心線が上記シース引裂き用紐の間に挟まれるように配置されるものである。
【0016】
第9の発明は、第1の抗張力体の外周に第1のシースを施した支持線部と、複数のテープ型光ファイバ心線を収容し該テープ型光ファイバ心線の外周に第2のシースを施すと共に該第2のシース内に1本以上の第2の抗張力体を縦添えして収容した断面ほぼ矩形状のケーブル部と、上記支持線部と上記ケーブル部とが長手方向に互いに平行して設けられかつ長手方向に上記支持線部と上記ケーブル部の短辺側側面とを連続的または間欠的に連結する首部とを有した光ファイバケーブルにおいて、複数の上記テープ型光ファイバ心線を上記ケーブル部内の長辺方向に間隔をおいて収容し、上記ケーブル部の長辺側の両側面にそれぞれ対向する溝部を上記テープ型光ファイバ心線を挟んで形成すると共に、上記溝部を、収容した上記テープ型光ファイバ心線よりも幅広に各々形成し、更に上記対向する溝部の底辺の両角にノッチをそれぞれ形成した光ファイバケーブルである。
【0017】
第10の発明は、上記ケーブル部に形成された上記溝部の形状は上記ケーブル部中心に向かって溝幅が狭くなるほぼ逆台形であり、上記溝部の深さが0.5mm以上であるものである。
【0018】
第11の発明は、上記ノッチの間にシース引裂き用紐を上記テープ型光ファイバ心線に隣接するように配置し、上記テープ型光ファイバ心線と上記シース引裂き用紐との間の距離が0.5mm以下であるものである。
【0019】
第12の発明は、上記ノッチの頂点を結んだ線上に上記テープ型光ファイバ心線がないものである。
【0020】
第13の発明は、上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面と上記ケーブル部の長辺側側面とが平行になるように収容されているものである。
【0021】
第14の発明は、上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面に垂直な方向に積層された積層体を形成しているものである。
【0022】
第15の発明は、上記テープ型光ファイバ心線が上記シース引裂き用紐の間に挟まれるように配置されるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、応力が加わっても光ファイバケーブル内の光ファイバに光損失増加が生じにくい光ファイバケーブルを得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態である光ファイバケーブルの概略構成を示すケーブル断面図である。
【0026】
図示したように光ファイバケーブル1は、第1の抗張力体33の外周に第1のシースにより支持線部シース11sが施された支持線部19と、複数本の光ファイバを並列に配置して一括して被覆しテープ状に形成したテープ型光ファイバ心線12を構成しこのテープ型光ファイバ心線12の外周に第2のシースによりケーブル部シース11cを施したケーブル部10と、支持線部19とケーブル部10とを互いに平行に並べて両者間を連結するための首部20とを有し、ケーブル部10は断面をほぼ矩形状(長方形)に形成し、ケーブル部10の両長辺にテープ型光ファイバ心線12よりも幅の広い溝部15をテープ型光ファイバ心線12を挟んで互いに対向させて形成し、更に溝部15の底辺(以下、溝底部と称する)15bの両角にシース引裂き用ノッチ16a〜16dを形成し、両溝部15、15間で対向するシース引裂き用ノッチ16aとシース引裂き用ノッチ16bとの間にシース引裂き用紐13を配置し、両溝部15、15間で対向するシース引裂き用ノッチ16cとシース引裂き用ノッチ16dとの間にシース引裂き用紐13を配置し、ケーブル部シース11c内に1本以上の第2の抗張力体14を収容して形成した配線用のケーブルである。
【0027】
テープ型光ファイバ心線12は、本実施の形態では光ファイバ心線4心を並列に並べ一括被覆して細長いテープ状に形成した光ファイバ心線である。このテープ型光ファイバ心線12を例えば3枚づつ光ファイバの列に垂直な方向に互いに積層させた積層体として形成し、この積層体を2列に並列に並べケーブル部10の中心に配置(配列)する。
【0028】
ケーブル部シース11cは、テープ型光ファイバ心線12の外周を中実に覆い、例えばほぼ長方形を形成している。ケーブル部シース11cの長辺(すなわち、ケーブル部10の長辺)とテープ型光ファイバ心線12の光ファイバの列とは平行になっている。
【0029】
溝部15は、ケーブル部シース11cの両長辺に溝底部15bが各々ケーブル部10の中心に向かうように互いに対向して設けられ、ケーブル部10の中心に向かうに従って溝幅が狭くなった例えば逆台形状の溝となっている。この溝部15の溝幅は、テープ型光ファイバ心線12よりも幅広くなっており、望ましくは最も溝幅の狭い溝底部15bにおいてもテープ型光ファイバ心線12よりも幅広いとよい。
【0030】
図1に示した光ファイバケーブル1のケーブル部10の中心付近の要部拡大図を図2に示す。
【0031】
図示した溝部15の溝の深さBは、例えば0.5mm以上であると望ましい。
【0032】
溝底部15bの両角には、更にシース引裂き用ノッチ16a〜16d(図1参照)のノッチ先端部が互いに対向して設けられている。このため、ケーブル部10を中間後分岐する際にケーブル部シース11cを引き裂き易くなっている。
【0033】
なお、中間後分岐とは、光ファイバケーブルを電柱間に架設し、また電柱からビルやマンションなどに引き込むために、ケーブルの敷設後にケーブルを切断することなくテープ型光ファイバ心線12を所望の位置で分岐することを言い、この中間後分岐はFTTHに使用されるような当該光ファイバケーブル1に必要なものである。
【0034】
図1に示すように、例えば両溝部15、15間で互いに対向するシース引裂き用ノッチ16aとシース引裂き用ノッチ16bとを結んだ線上には、テープ型光ファイバ心線12はない。
【0035】
望ましくは、この線上にケーブル部シース11cを引き裂くためのシース引裂き用紐13があり、かつシース引裂き用紐13とテープ型光ファイバ心線12との間の距離Aが近いとよい。このようなケーブルの断面構造によると、後述するテープ型光ファイバ心線12の取り出し性が向上して中間後分岐が容易にできる。
【0036】
なお、ここで言う距離Aとは、図2に示したようにシース引裂き用紐13とテープ型光ファイバ心線12との最も接近した部分間の距離を示し、例えば本実施の形態では距離Aは0.5mm以下であると望ましい。
【0037】
図1に示すようにシース引裂き用紐13は、ケーブル部シース11c内の中心部に光ファイバケーブル1の長手方向に沿って設けられ、溝底部15bの両角に形成されたシース引裂き用ノッチ16a〜16dからシース長辺に対して垂線を引いた線上の位置にシース引裂き用紐13が配置されている。例えばシース引裂き用紐13として、ポリエステル系繊維の紐などを用いるとよい。
【0038】
支持線部19は、鋼線33aを7本撚り合わせた撚り線による第1の抗張力体33を有し、この第1の抗張力体33は本実施の形態では例えば亜鉛メッキ鋼撚線等を使用する。
【0039】
第1の抗張力体33の外周には、第1の抗張力体33を被覆するように支持線部シース11sを施す。
【0040】
支持線部19とケーブル部10の短辺側の一辺とは、互いに首部(連結部)20で連結されており、望ましくは支持線部シース11sとケーブル部シース11cと首部20を形成する首部シース11jとが同じ材料で一体形成される中実押し出しシース構造であるとよく、例えばシース材料として低密度ポリエチレンを用いる。
【0041】
このような断面構造の光ファイバケーブル1を例えば次に示す寸法で形成する。
【0042】
この光ファイバケーブル1の断面の全体寸法は、支持線部19の端からケーブル部10の端までの全体の長さ(高さ)が15mmであり、支持線部19の第1の抗張力体33を形成する鋼線33aは、直径1.4mmであり、ケーブル部10は長方形の短辺が4.5mmで長辺が7mmであり、第2の抗張力体14は直径0.7mmであり、シース引裂き用紐13は直径1.0mmである。
【0043】
溝部15は、溝底部15bの幅が2.6mmで深さBは1.2mmである。溝底部15bの両角に形成されたシース引裂き用ノッチ16a〜16dの深さは溝底部15bよりも更に0.3mm深く例えばV字形を形成している。
このような断面構造で形成された光ファイバケーブル1の側面を図3、図4に示す。
【0044】
図3は、首部20が支持線部19とケーブル部10との間に連続して形成された一実施例であり、図4は支持線部19とケーブル部10との間が間歇的に連結され首部20に窓明部21が形成されている一実施例である。
【0045】
このように形成された光ファイバケーブル1は、ケーブル部シース11が施されていることでテープ型光ファイバ心線12を保護すると共に、ケーブル部シース11cに幅の広い溝部15が形成されている構造のため、ケーブル部10に外力(特に、後述する側圧荷重)が加えられた場合に、ケーブル部シース11c長辺の溝部15が形成されていない部分でケーブル部シース11cが外力を吸収してテープ型光ファイバ心線12に直接応力が加わらない構造となっている。
【0046】
この光ファイバケーブル1と従来の光ファイバケーブル61とを用いて、側圧荷重試験を実施した。
【0047】
この側圧荷重試験とは、図5に示すように平坦な堅い床101の上に光ファイバケーブルを図1に示した光ファイバケーブルの方向とは90°回転させてケーブル部10側面(長辺)が床101に接するように置き、平板100により矢印方向の側圧荷重を光ファイバケーブルに加えたときの光損失増加量を測定する試験である。図示した側圧荷重試験方法による結果を、図6に示す。
【0048】
図6の横軸は光ファイバケーブルに加える側圧荷重(単位:N/mm)を示し、縦軸は光ファイバケーブルの光損失増加量(単位:dB)を示す。
【0049】
従来タイプの光ファイバケーブル61は、側圧荷重が25N/mm加わった時点で光損失が増加し始めるのに対して、本発明の一実施形態の光ファイバケーブル1では側圧荷重40N/mmまでは光損失の増加がなく、光ファイバケーブル1の側圧荷重特性が従来の光ファイバケーブル61に比べて良好であることが分かる。
【0050】
このように、光ファイバケーブル1は、ケーブル部10に溝部15を設けたことでケーブル部10に外力が加えられた場合でもケーブル部シース11cが外力を吸収して、テープ型光ファイバ心線12内の光ファイバに応力が生じにくく光損失が増加しないという効果が得られる。
【0051】
次に、ケーブル部10からのテープ型光ファイバ心線12の取り出し性についても、試作した光ファイバケーブル1を用い検証を行った。
【0052】
テープ型光ファイバ心線12の取出手順は次の通りである。
【0053】
ケーブル部10の片側のシース引裂き用ノッチ16aからカッターナイフなどを用いて対向するシース引裂き用ノッチ16bの部分までを光ファイバケーブル1の長手方向に50mm程度切り裂く。同じように、他方のシース引裂き用ノッチ16cからシース引裂き用ノッチ16dまでの部分についても同様の手順で切り裂く。
【0054】
シース引裂き用ノッチ16aからシース引裂き用ノッチ16bまでを切り裂いた後、ケーブル部シース11c内に収容されているシース引裂き用紐13をケーブル部シース11cから取り出し、引き裂く方向とは逆方向の部分でシース引裂き用紐13を切断し、引き裂く方のシース引裂き用紐13を引き裂く方向に向かって所望の長さ(例えば、50cm程度)引っ張る。
【0055】
シース引裂き用ノッチ16cからシース引裂き用ノッチ16dまでを切り裂いた後、同様の手順でケーブル部シース11c内に収容されているシース引裂き用紐13をケーブル部シース11cから取り出し、引き裂く方向とは逆方向の部分でシース引裂き用紐13を切断し、引き裂く方のシース引裂き用紐13を引き裂く方向に向かって所望の長さ引っ張る。
【0056】
この引き裂き作業が完了した後、テープ型光ファイバ心線12に張り付いているケーブル部シース11cを剥がし、不要な部分のケーブル部シース11cを切断してテープ型光ファイバ心線12の取出作業は完了する。
【0057】
この一連の光ファイバケーブル1からのテープ型光ファイバ心線12の取り出し作業について、光ファイバケーブル1の光損失をモニタしながら実際に行った。
【0058】
同様の試験を10回行ったがこの結果、光ファイバケーブル1において特に光損失の増加は見られず、良好な伝送特性が得られた。
【0059】
次に、光損失増加が生じ始める側圧荷重と溝部15の深さとの関係を検討するための側圧荷重試験を行った。側圧荷重試験の方法は、図5に示す試験方法と同様とし、溝部15の深さB(図2参照)を変えて試験を行い、この側圧荷重試験の結果を図7に示す。
【0060】
図7の横軸は形成した溝部15の深さ(単位:mm)を示し、縦軸は光損失増加が生じ始める側圧荷重(単位:N/mm)を示す。
【0061】
図から分かる通り、溝部15の深さBがより深く形成される程光ファイバが応力を受けにくくなり、光損失増加が生じ始める側圧荷重が大きくなり良好な特性となる。この側圧荷重試験結果より、溝部15の深さを0.5mm以上にすることで従来タイプの光ファイバケーブル61よりも良好な特性となることが分かった。
【0062】
また、シース引裂き用紐13とテープ型光ファイバ心線12との距離と、テープ型光ファイバ心線12の取り出し性との関係を試験した。この取り出し性試験の結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1の欄は、左からシース引裂き用紐13とテープ型光ファイバ心線12との距離Aを示し、その右の欄はテープ型光ファイバ心線12の取り出し性を示し、右端の欄は取り出し性の評価(○印:良、×印:否)結果を示す。
【0065】
上に示す表1の結果から、シース引裂き用紐13とテープ型光ファイバ心線12との距離Aは、0.5mm以下にすると取り出し性には支障がなく、距離Aを0.5mm以下にする必要があることが分かった。
【0066】
本発明の他の実施の形態を図8に示す。
【0067】
図示した光ファイバケーブル51は、ケーブル部10aが、図1に示すようなケーブル部10のテープ型光ファイバ心線12及び溝部15並びにシース引裂き用紐13などを長辺方向に間隔をおいて各々複数設けて形成されており、図1の光ファイバケーブル1の構造、部材と同じ若しくは類似したもので形成されている。
【0068】
ケーブル部10aがケーブル部10と異なる点はこの他に、テープ型光ファイバ心線12を3枚づつ積層させた積層体12uを1ユニットとし、各溝部15、15の間にこの積層体12uを1ユニットづつ配置した点である。
【0069】
このような断面構造の光ファイバケーブル51を例えば次に示す寸法で形成する。この光ファイバケーブル51の断面の全体寸法は、支持線部19の端からケーブル部10aの端までの全体の長さ(高さ)が18mmで、ケーブル部10aは、短辺4.5mmで長辺が10mmであり、溝部15は溝底部15bの幅が1.5mmで深さは1.2mmであり、各積層体12uのユニット間の距離は1.5mmである。
【0070】
この光ファイバケーブル51は、光ファイバケーブル1と同様の構造をしており、ケーブル部シース11cには溝部15及びシース引裂き用ノッチ16などが設けられており、シース引裂き用紐13がケーブル部シース11c内に配置されているため、光ファイバケーブル1と同様のテープ型光ファイバ心線12の取り出し性を有し、外力による光ファイバの光損失増加を生じにくい効果を有し、中間後分岐特性を損なわないケーブルとなっている。
【0071】
以上要すれば、本発明によれば、中実押し出しシース構造とし、更にケーブル部側面に溝部を設けたため、従来の光ファイバケーブルのチューブ構造の問題点を解消し、応力の加わりにくい光ファイバケーブルを提供できる。
【0072】
また、この光ファイバケーブルは、溝底部の角にシース引裂き用ノッチを設け、シース内に引裂き用紐を収容しているため、光ファイバの取り出し性が容易で中間後分岐特性の良好な光ファイバケーブルとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態である光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】図1の要部拡大を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施例を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施例を示す側面図である。
【図5】光ファイバケーブルに側圧荷重を加える試験を示す試験方法図である。
【図6】側圧荷重と光損失増加との関係を本発明の光ファイバケーブルと従来の光ファイバケーブルとで比較した特性図である。
【図7】溝部の深さと光損失増加が生じ始める側圧荷重との関係を示す特性図である。
【図8】本発明の他の実施の形態である光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図9】従来の光ファイバケーブルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 光ファイバケーブル
10 ケーブル部
10a ケーブル部
11c ケーブル部シース(第2のシース)
11j 首部シース
11s 支持線部シース(第1のシース)
12 テープ型光ファイバ心線
12u 積層体
13 シース引裂き用紐
14 第2の抗張力体
15 溝部
15b 溝底部
16 シース引裂き用ノッチ
16a〜16d シース引裂き用ノッチ
19 支持線部
20 首部(連結部)
21 窓明部
30 ケーブル部
33 第1の抗張力体
33a 鋼線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の抗張力体の外周に第1のシースを施した支持線部と、テープ型光ファイバ心線1枚以上をほぼ中央に収容し該テープ型光ファイバ心線の外周に第2のシースを施すと共に該第2のシース内に1本または2本の第2の抗張力体を縦添えして収容した断面ほぼ矩形状のケーブル部と、上記支持線部と上記ケーブル部とが長手方向に互いに平行して設けられかつ長手方向に上記支持線部と上記ケーブル部の短辺側側面とを連続的または間欠的に連結する首部とを有した光ファイバケーブルにおいて、上記ケーブル部の長辺側の両側面にそれぞれ一箇所以上の対向する溝部を形成すると共に、上記溝部を、収容した上記テープ型光ファイバ心線よりも幅広に形成し、更に対向する上記溝部の底辺の両角にノッチをそれぞれ形成したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
上記ケーブル部に形成された上記溝部の形状は上記ケーブル部中心に向かって溝幅が狭くなるほぼ逆台形であり、上記溝部の深さが0.5mm以上である請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
上記ノッチの間にシース引裂き用紐を上記テープ型光ファイバ心線に隣接するように配置し、上記シース引裂き用紐と上記テープ型光ファイバ心線との間の距離が0.5mm以下である請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
上記ノッチの頂点を結んだ線上に上記テープ型光ファイバ心線がない請求項1または3記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面と上記ケーブル部の長辺側側面とが平行になるように収容されている請求項1または4記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面に垂直な方向に積層された積層体を形成している請求項1または5記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
上記積層体が、互いに並列に配置されている請求項6記載の光ファイバケーブル。
【請求項8】
上記テープ型光ファイバ心線が上記シース引裂き用紐の間に挟まれるように配置される請求項1、5、6、7いずれか記載の光ファイバケーブル。
【請求項9】
第1の抗張力体の外周に第1のシースを施した支持線部と、複数のテープ型光ファイバ心線を収容し該テープ型光ファイバ心線の外周に第2のシースを施すと共に該第2のシース内に1本以上の第2の抗張力体を縦添えして収容した断面ほぼ矩形状のケーブル部と、上記支持線部と上記ケーブル部とが長手方向に互いに平行して設けられかつ長手方向に上記支持線部と上記ケーブル部の短辺側側面とを連続的または間欠的に連結する首部とを有した光ファイバケーブルにおいて、複数の上記テープ型光ファイバ心線を上記ケーブル部内の長辺方向に間隔をおいて収容し、上記ケーブル部の長辺側の両側面にそれぞれ対向する溝部を上記テープ型光ファイバ心線を挟んで形成すると共に、上記溝部を、収容した上記テープ型光ファイバ心線よりも幅広に各々形成し、更に上記対向する溝部の底辺の両角にノッチをそれぞれ形成したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項10】
上記ケーブル部に形成された上記溝部の形状は上記ケーブル部中心に向かって溝幅が狭くなるほぼ逆台形であり、上記溝部の深さが0.5mm以上である請求項9記載の光ファイバケーブル。
【請求項11】
上記ノッチの間にシース引裂き用紐を上記テープ型光ファイバ心線に隣接するように配置し、上記テープ型光ファイバ心線と上記シース引裂き用紐との間の距離が0.5mm以下である請求項9記載の光ファイバケーブル。
【請求項12】
上記ノッチの頂点を結んだ線上に上記テープ型光ファイバ心線がない請求項9または11記載の光ファイバケーブル。
【請求項13】
上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面と上記ケーブル部の長辺側側面とが平行になるように収容されている請求項9または12記載の光ファイバケーブル。
【請求項14】
上記テープ型光ファイバ心線が、その平坦な面に垂直な方向に積層された積層体を形成している請求項9または13記載の光ファイバケーブル。
【請求項15】
上記テープ型光ファイバ心線が上記シース引裂き用紐の間に挟まれるように配置される請求項9、13、14いずれか記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−18107(P2006−18107A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197112(P2004−197112)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】