説明

光ファイバジャイロスコープの角度ランダムウォークをモニタするための方法及び装置

【課題】光ファイバジャイロスコープのARWをモニタする方法及び装置を提供する。
【解決手段】光ファイバジャイロスコープ(FOG)に関連付けられる角度ランダムウォーク(ARW)のレベルを決定するシステムは第1及び第2のフォトダイオード115、135を備える。第1のフォトダイオード115はFOGに関連する光源105から第1の光信号を受信する。第2のフォトダイオード135はFOGに関連する光ファイバコイルから第2の光信号を受信する。第1及び第2のアナログ/デジタルコンバータ(ADC)140は第1及び第2の光信号をそれぞれ対応する第1及び第2のデジタル信号に変換する。デジタル相対強度雑音(RIN)減算素子150は第1及び第2のデジタル信号を受信し、第1及び第2のデジタル信号に基づいて第3の信号を出力する。電子デバイスは第3の信号に関連する第1の雑音レベルを決定して該第1の雑音レベルからARWレベルを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバジャイロスコープの角度ランダムウォークをモニタするための方法及び装置に関する。
[連邦政府によって支援される研究又は開発に関する記載]
本発明は、合衆国海軍によって与えられる補助金交付番号N00030−05−C−0063の下で合衆国政府からの支援によって行なわれた。合衆国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバジャイロスコープ(FOG)は、光の干渉を利用して、角速度を測定する。FOGは、光ファイバの大きなコイルから成る。回転を測定するために、2つの光ビームが、互いに反対の方向からコイルの中に照射される。センサが回転を受けている場合には、回転の方向に進行しているビームは、回転に逆らって進行しているビームよりも、ファイバの他端に達するまでの光路が長くなる。これは、サニャック効果として知られている。ビームがファイバから出るとき、それらのビームは合成され、サニャック効果に起因して導入される位相シフトによって、ビームが干渉し、その結果として、強度が角速度に依存する合成ビームが生成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
角度ランダムウォーク(ARW)は、FOGの重要な性能パラメータのうちの1つである。ARWは、ランダムな測定雑音であり、最終的に、FOGの精度を制限し、航行誤差につながる。ジャイロスコープのARWは、製造業者によって指定することができるが、障害、経年変化又は他の原因に起因して、時間と共に劣化することがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施例では、FOGに関連付けられるARWのレベルを決定するためのシステムは、第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードを備える。第1のフォトダイオードは、FOGに関連付けられる光源から第1の光信号を受信するように構成される。第2のフォトダイオードは、FOGに関連付けられる光ファイバコイルから第2の光信号を受信するように構成される。第1のアナログ/デジタルコンバータ(ADC)及び第2のアナログ/デジタルコンバータ(ADC)はそれぞれ、第1の光信号及び第2の光信号を、それぞれ対応する第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に変換するように動作することができる。デジタル相対強度雑音(RIN)減算素子(subtraction element)が、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号を受信すると共に、当該第1のデジタル信号及び当該第2のデジタル信号に基づいて第3の信号を出力するように構成され、これによって、IFOG出力において雑音を低減するための役割を果たすことができる。電子デバイスが、第3の信号に関連付けられる第1の雑音レベルを決定すると共に、当該第1の雑音レベルからARWレベルを決定するように構成される。
【0005】
本発明の好ましい実施形態及び代替的な実施形態が、以下の図面を参照しながら以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態による原理を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による信号解析のグラフである。
【図3】本発明の代替的な実施形態による原理を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
これ以降にさらに十分に説明されるように、図1を参照すると最もわかりやすく例示されるような一実施形態によるシステム及び方法は、FOGのバイアス変調の1/2の間に収集される高速フォトダイオードデータを用いる。この方法は、たとえば、実効値(RMS)、avg(abs())、又はピーク・ツー・ピークのような雑音推定技法を用いて、データ上の雑音を測定することを含み、そのような雑音をARWの代理指標(proxy)として用いる。雑音が「白色雑音」であると仮定すると、比例関係があり、その関係は雑音モニタ対出力帯域の相対的な帯域幅によって与えられる。
【0008】
図3を参照すると最もわかりやすく例示されるような一実施形態による代替的なシステム及び方法は、復調器の出力において、低速データを用いる。復調された信号は、ローパスフィルタ処理され、FOG出力を生成するためにダウンサンプリングされてもよい。フィルタによって除去されるRMS雑音エネルギーは、ARWの代理指標として処理することができる。雑音が「白色雑音」であると仮定すると、比例関係が計算され、その関係は雑音モニタ対出力帯域の相対的な帯域幅によって与えられる。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態の原理を利用するFOGシステム100を示す。光源105が結合器110に光信号又はビームを与え、結合器110は、ビームの一部を検出器120の相対強度雑音(RIN)フォトダイオード115に向けて誘導し直すための役割を果たすことができる。ビームの残りの部分は、サーキュレータ素子130を介して、センシングループアセンブリ125に供給することができ、サーキュレータ素子130はさらに、検出器120のシステムフォトダイオード135に結合される。
【0010】
検出器120は、RINフォトダイオード115及びシステムフォトダイオード135から光信号を受信するように構成される少なくとも1つのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)140をさらに含む。ADC140の出力は処理デバイスに向けられ、例示される実施形態では、処理デバイスはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)145を含む。一実施形態では、FPGA145は、デジタルRIN減算素子150及びループ閉鎖処理素子155を含む。
【0011】
本発明の一実施形態は、RINフォトダイオード及びシステムフォトダイオードADC140によって生成される高サンプリングレートデータ、及び2つの差から導出されるデジタルRIN減算(DRS)信号を利用する。したがって、図1に示される実施形態では、RIN雑音モニタリング位置160、レート雑音モニタリング位置165、及び/又はDRS雑音モニタリング位置170からデータをサンプリングして、システム100内に存在するARWレベルを決定することができる。そのようにしてレベルを決定することは、システム100の内部又は外部に含まれるプロセッサ(図示せず)によって、又はFPGA145の処理素子(図示せず)によって行なうことができる。DRS雑音モニタリング位置170は、最終的な回転計算に最も近く、それゆえ最良のARW推定値を提供することができるため、選択する上で好都合の位置である。しかしながら、レート雑音モニタリング位置165及びRIN雑音モニタリング位置160も、雑音問題を分離するために選択する上で好都合である。
【0012】
図1に示される高速ARWモニタリング手法は、方形波で変調されたフォトダイオード信号の1/2サイクル内のRMS雑音を測定する。一実施形態では、図2に示されるように、システムフォトダイオード信号内で、フォトダイオード信号は、40メガサンプル/秒(Msps)でデジタル化される。グリッチが終わると、フォトダイオード信号は、確率的雑音を除いて、基本的に平坦である。モニタ(たとえば、レート雑音モニタリング位置165)は、グリッチ後の信号の平坦な部分におけるRMS雑音を測定する。図2は、1本の線に対する直線の当てはめに依存する測定を示す。代替的な手法は、当てはめの代わりに、ハイパスフィルタを利用して、任意のオフセット又は低速傾向から雑音を分離する。
【0013】
図3は、一実施形態によるARW決定のための代替的な手法を示す。ループ閉鎖処理素子155は、レート復調器310及びレート累算器315を含んでもよく、これらはデジタルRIN減算素子150からデジタル信号を受信する。したがって、図3に示される実施形態では、レート復調器310及びレート累算器315の下流にある「Ω残留雑音」モニタリング位置320からのデータをサンプリングして、システム100内に存在するARWレベルを決定することができる。そのようにしてレベルを決定することは、システム100の内部又は外部に含まれるプロセッサ(図示せず)によって、又はFPGA145の処理素子(図示せず)によって行なうことができる。Ω残留雑音モニタリング位置320によってサンプリングされた信号は、ARWの代理指標であり、これは、ジャイロが内部で、たとえばバイアス変調周波数20kspsほどの高い周波数において回転を測定し、その後、その測定値をフィルタリングし、出力サンプリングレート、たとえば、1024spsにダウンサンプリングするという事実に依ることができる。たとえば、ローパスフィルタ325によってフィルタ除去されたエネルギーは、以下の仮定に基づいて、ARWの代理指標としての役割を果たすことができる。
【0014】
・出力周波数と、変調周波数の1/2との間の「中間」帯域内のエネルギーも、ジャイロ出力帯域内の雑音のような或る兆候をもつ。
・ARW、さらに正確に言うと、ARWへの支配的な寄与は、低速モニタがARWの測定値としての役割を果たすことができるようにする「中間」帯域において測定されるエネルギーに比例するものと仮定される。
【0015】
・雑音が白色雑音である場合には、その釣り合いは、ジャイロ出力及び雑音モニタの相対的な帯域幅によって決定される。
・モニタ帯域内に上記の仮定に反する既知の干渉源が存在する場合には、そのような仮定に十分な有効性を与えるために、さらなるフィルタリングが必要とされることがある。
【0016】
一実施形態では、レート雑音モニタリング位置165及びΩ残留雑音モニタリング位置320を用いて、システムフォトダイオード135を介して受信される信号のみを処理し、データをサンプリングすることによって、ARWを決定する。他の実施形態でも、RIN雑音モニタリング位置160及びDRS雑音モニタリング位置170を用いて、RINフォトダイオード115を介して受信される信号を処理し、データをサンプリングすることによってARWを決定する。
【0017】
一実施形態では、ARWに対する影響を必ずしも定量化することなく、本発明における雑音モニタのうちの1つ又は複数を状態インジケータ(健全指標、health indicator)として用いることができる。名目値を超える過度の雑音は、不調の(unhealthy)ジャイロを示す。
【0018】
本明細書において説明される実施形態は、雑音モニタの測定帯域内のいくつかの部分帯域(サブバンド)を測定することによって改良することができる。各部分帯域内の相対的なエネルギーを用いて、正常なFOGの場合に雑音が適切な分布を有することが検証される。たとえば、白色雑音を、正常なFOGのための判定基準として用いることができる。これは、各部分帯域内の雑音エネルギーが部分帯域の幅に概ね比例することを検証することによって確認される。代替的に、異なる部分帯域からARWへの別個の寄与を定義することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態が図示及び説明されてきたが、上述されたように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの変更を加えることができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。代わりに、本発明は全体として、以下の特許請求の範囲を参照することによって確定されるべきである。
【0020】
独占的な所有権又は独占権が請求される本発明の実施形態は、添付の特許請求の範囲によって定められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバジャイロスコープ(FOG)に関連付けられる角度ランダムウォーク(ARW)のレベルを決定するためのシステムであって、
第1のフォトダイオード(115)及び第2のフォトダイオード(135)であって、該第1のフォトダイオード(115)は前記FOGに関連付けられる光源(105)から第1の光信号を受信するように構成され、該第2のフォトダイオード(135)は、前記FOGに関連付けられる光ファイバコイルから第2の光信号を受信するように構成される、第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードと、
前記第1の光信号及び前記第2の光信号を、それぞれ対応する第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に変換するように動作することができる、少なくとも1つのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)(140)と、
前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号を受信すると共に、該第1のデジタル信号及び該第2のデジタル信号に基づいて第3の信号を出力するように構成される、デジタル相対強度雑音(RIN)減算素子(150)と、
前記減算素子に信号伝達可能に接続される電子デバイスであって、前記第3の信号に関連付けられる第1の雑音レベルを決定すると共に、該第1の雑音レベルからARWレベルを決定するように構成される、電子デバイスと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記電子デバイスはさらに、前記少なくとも1つのADC(140)のうちの第1のADCに結合され、前記第1のデジタル信号に関連付けられる第2の雑音レベルを決定すると共に、該第2の雑音レベルから前記ARWレベルを決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
光ファイバジャイロスコープ(FOG)に関連付けられる角度ランダムウォーク(ARW)のレベルを決定するためのシステムであって、
第1のフォトダイオード(115)及び第2のフォトダイオード(135)であって、該第1のフォトダイオード(115)は前記FOGに関連付けられる光源(105)から第1の光信号を受信するように構成され、該第2のフォトダイオード(135)は、前記FOGに関連付けられる光ファイバコイルから第2の光信号を受信するように構成される、第1のフォトダイオード及び第2のフォトダイオードと、
前記第1の光信号及び前記第2の光信号を、それぞれ対応する第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号に変換するように動作することができる、少なくとも1つのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)(140)と、
前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号を受信すると共に、該第1のデジタル信号及び該第2のデジタル信号に基づいて第3の信号を出力するように構成される、デジタル相対強度雑音(RIN)減算素子(150)と、
前記第3の信号を受信すると共に、該第3の信号に基づいて第4の信号を出力するように構成される、レート復調器素子(310)と、
前記第4の信号を受信すると共に、該第4の信号に基づいて第5の信号を出力するように構成される、レート累算器素子(315)と、
前記レート累算器素子に信号伝達可能に接続される電子デバイスであって、前記第5の信号に関連付けられる第1の雑音レベルを決定すると共に、該第1の雑音レベルからARWレベルを決定するように構成される、電子デバイスと、
を備える、光ファイバジャイロスコープに関連付けられる角度ランダムウォークのレベルを決定するためのシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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