説明

光ファイバテープ心線、光ファイバケーブル及び配線形態

【課題】複数本の光ファイバ素線を並列に連結した光ファイバテープ心線において、多数の光ファイバテープ心線を良好に識別することができ、また、経年劣化による識別性の低下がなく、さらに、テープ化材を剥がして光ファイバ素線を単体で使用する際にも、光ファイバ素線を識別することができるようにする。
【解決手段】複数本の光ファイバ素線1が並列されてテープ化された光ファイバテープ心線において、複数本の光ファイバ素線1は、各光ファイバ素線1ごとに異なる色の半透明の着色層5で被覆されており、少なくとも2本以上に同一のマーキング4が施され、このマーキング4は光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングであり、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバ素線を並列に連結した光ファイバテープ心線、この光ファイバテープ心線を用いて構成される光ファイバケーブル及び配線形態に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、複数本の光ファイバ素線を並列に連結した光ファイバテープ心線が提案されている。このような光ファイバテープ心線は、並列された複数本の光ファイバ素線をテープ化材(被覆材)により被覆して構成されている。
【0003】
このような光ファイバテープ心線において、この光ファイバテープ心線を構成する各光ファイバ素線を識別するには、光ファイバ素線毎に異なる色に表面を着色することが行われている。また、各光ファイバ素線に異なるマーキングを施すことによっても、光ファイバテープ心線を構成する各光ファイバ素線を識別することができる。
【0004】
あるいは、各光ファイバ素線を被覆する被覆材の表面に着色、または、マーキングを施すことによっても、各光ファイバ素線を識別することができる。
【0005】
なお、特許文献2には、光ファイバ素線の表面を透明着色層によって被覆することにより、光ファイバ素線の表面を着色する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−178883号公報
【特許文献2】特開2004−012680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した従来の光ファイバテープ心線において、光ファイバ素線の表面を着色する場合には、使用できる色の数は限られるため、識別できる光ファイバ素線の本数には限界がある。中間色を用いたとしても、その判別は容易ではなく、識別が困難となってしまう。また、色の組合せにより識別するようにしても、識別は困難である。また、光ファイバ素線の色は、テープ化材を透して識別することになるため、良好な識別性が得られない。
【0008】
また、光ファイバ素線にマーキングを施す場合には、光ファイバ素線の色がマーキングに遮られることにより、光ファイバ素線の色による識別性が低下してしまう。
【0009】
そして、テープ化材の表面にマーキングを施す場合には、温度、湿度等の影響でマーキングが経年劣化し、識別性が低下してしまう。また、この場合には、テープ化材を剥がし、光ファイバ素線を単体で使用する際には、テープ化材と共にマーキングが無くなってしまう。
【0010】
さらに、光ファイバテープ心線において、マーキングの位置が長手方向に分散していると、マーキングの組合せを識別することが困難となり、識別性が低下してしまう。
【0011】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであって、複数本の光ファイバ素線を並列に連結した光ファイバテープ心線において、多数の種別の光ファイバテープ心線を良好に識別することができ、また、経年劣化による識別性の低下がなく、さらに、テープ化材を剥がして光ファイバ素線を単体で使用する際にも、光ファイバ素線を識別することができるようになされた光ファイバテープ心線、この光ファイバテープ心線を用いて構成される光ファイバケーブル及び配線形態を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る光ファイバテープ心線は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0013】
〔構成1〕
複数本の光ファイバ素線が並列され、テープ化材によって被覆されてテープ化された光ファイバテープ心線において、複数本の光ファイバ素線は、各光ファイバ素線ごとに異なる色の半透明の着色層で被覆されており、テープ化材は、無色透明な材料により形成されており、各光ファイバ素線のうち少なくとも2本以上に同一のマーキングが施され、このマーキングは光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングであり、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバケーブルは、以下の構成を有するものである。
【0015】
〔構成2〕
構成1を有する光ファイバテープ心線を複数枚使用して構成され、複数枚の光ファイバテープ心線のそれぞれにおいて、光ファイバテープ心線をなす各光ファイバ素線のうちの少なくとも2本以上には、同一のマーキングがこの光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されており、異なる光ファイバテープ心線においてはマーキングが異なり、このマーキングにより、光ファイバテープ心線間の識別が可能となっていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係る配線形態は、以下の構成を有するものである。
【0017】
〔構成3〕
構成1を有する光ファイバテープ心線を複数枚使用して構成され、複数枚の光ファイバテープ心線のそれぞれにおいて、光ファイバテープ心線をなす各光ファイバ素線のうちの少なくとも2本以上には、同一のマーキングが、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されており、異なる光ファイバテープ心線においてはマーキングが異なり、このマーキングにより、光ファイバテープ心線間の識別が可能となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光ファイバテープ心線においては、構成1を有することにより、複数本の光ファイバ素線は、各光ファイバ素線ごとに異なる色の半透明の着色層で被覆されており、テープ化材は、無色透明な材料により形成されており、各光ファイバ素線のうち少なくとも2本以上に同一のマーキングが施され、このマーキングは光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングであり、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されているので、光ファイバテープ心線間の識別が容易であり、また、光ファイバ素線に施した着色(着色層)とマーキング種類との組合せにより、識別される光ファイバ素線の種別(本数)を増やすことが可能であり、また、マーキングの視認性、判別性が良好であり、光ファイバ素線の着色(着色層)の識別が容易である。さらに、テープ化材を剥がしても、マーキング及び着色(着色層)が残るため、識別が可能である。
【0019】
また、本発明に係る光ファイバケーブル及び配線形態は、構成1を有する光ファイバテープ心線を複数枚使用して構成され、複数枚の光ファイバテープ心線のそれぞれにおいて、光ファイバテープ心線をなす各光ファイバ素線のうちの少なくとも2本以上には、同一のマーキングがこの光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されており、異なる光ファイバテープ心線においてはマーキングが異なり、このマーキングにより、光ファイバテープ心線間の識別が可能となっているので、光ファイバテープ心線間の識別が容易であり、また、光ファイバ素線に施した着色(着色層)とマーキング種類との組合せにより、識別される光ファイバ素線の種別(本数)を増やすことが可能であり、また、マーキングの視認性、判別性が良好であり、光ファイバ素線の着色(着色層)の識別が容易である。
【0020】
すなわち、本発明は、複数本の光ファイバ素線を並列に連結した光ファイバテープ心線において、多数の種別の光ファイバテープ心線を良好に識別することができ、また、経年劣化による識別性の低下がなく、さらに、テープ化材を剥がして光ファイバ素線を単体で使用する際にも、光ファイバ素線を識別することができるようになされた光ファイバテープ心線、この光ファイバテープ心線を用いて構成される光ファイバケーブル及び配線形態を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1及び第2の実施形態に係る光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1及び第2の実施形態に係る光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線の構成を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープ心線の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の第1及び第2の実施形態に係る光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線の構成の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【図6】本発明に係る光ファイバテープ心線の実施例の構成を示す平面図である。
【図7】光ファイバテープ心線の比較例の構成を示す平面図である。
【図8】実施例及び比較例におけるマーキングの種類を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
〔光ファイバテープ心線の第1の実施形態〕
本発明に係る光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ素線が並列され、これら光ファイバ素線が連結されてテープ化された光ファイバテープ心線である。
【0024】
図1は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線の構成を示す断面図である。
【0025】
本発明に係る光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線1は、図1に示すように、ガラス、または、石英からなる光ファイバ2がファイバ被覆3によって被覆されて構成されている。そして、ファイバ被覆3の外周面には、所定のマーキング4が施され、さらに、半透明の着色層5によって被覆されている。
【0026】
図2は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線の構成を示す平面図である。
【0027】
マーキング4は、図2に示すように、光ファイバ素線の長手方向の所定の距離ごとに施されており、着色層5を透して、外部から視認可能となっている。着色層5は、後述する光ファイバテープ心線を構成する各光ファイバ素線1ごとに異なる色に着色されている。
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバテープ心線の構成を示す平面図である。
【0029】
そして、この実施の形態に係る光ファイバテープ心線は、図3に示すように、複数本の光ファイバ素線1が並列され、テープ化材6によって被覆されてテープ化されている。テープ化材6は、無色透明な材料により形成されている。
【0030】
この光ファイバテープ心線において、各光ファイバ素線1のうち少なくとも2本以上には、同一のマーキング4が施されている。このマーキング4は、光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングであり、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されている。すなわち、各光ファイバ素線1のマーキング4は、光ファイバテープ心線の幅方向に直線上に並んでいる。
【0031】
この光ファイバテープ心線においては、マーキング4の種類により、光ファイバテープ心線の識別を行うことができる。また、着色層5の色により、光ファイバテープ心線を構成する各光ファイバ素線1の識別を行うことができる。
【0032】
図4は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る光ファイバテープ心線を構成する光ファイバ素線の構成の他の例を示す断面図である。
【0033】
なお、マーキング4は、光ファイバ素線1の外周面の全周に亘って施す必要はなく、図4に示すように、光ファイバ素線1の外周面の一部のみに施してもよい。
【0034】
〔光ファイバケーブルの実施形態〕
本発明に係る光ファイバケーブルは、本発明に係る光ファイバテープ心線を複数枚用いて、この光ファイバテープ心線を、合成樹脂材料からなる外被によって被覆することによって構成される。
【0035】
図5は、本発明に係る光ファイバケーブルの構成を示す断面図である。
【0036】
本発明に係る光ファイバケーブル10は、図5に示すように、例えば、センタチューブ型の光ファイバケーブルであって、複数枚の光ファイバテープ心線11は、バンドル状態に集合され、ケーブルコアを形成している。この光ファイバケーブルは、バンドル状態に集合した複数枚の光ファイバテープ心線11の外周に熱可塑性樹脂8をチューブ状に押出成形し、このチューブの外周をポリエチレンなどの外被9でシースして構成されている。
【0037】
この光ファイバケーブル10においては、複数枚の光ファイバテープ心線11のそれぞれにおいて、光ファイバテープ心線11をなす各光ファイバ素線1のうちの少なくとも2本以上には、同一のマーキング4がこの光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されている。異なる光ファイバテープ心線においてはマーキングが異なり、このマーキングにより、光ファイバテープ心線間の識別が可能となっている。
【実施例】
【0038】
〔光ファイバテープ心線の実施例〕
図6は、本発明に係る光ファイバテープ心線の実施例の構成を示す平面図である。
【0039】
本発明に係る光ファイバテープ心線の実施例として、ファイバ被覆3の外径が250ミクロンである光ファイバ素線1を用いて、光ファイバテープ心線を構成した。マーキング4は、マーキング長2mm、マーキングピッチ50mmとして、長手方向に間欠的に施した。マーキング4上には、着色層5を被覆した。この光ファイバ素線1を4本並ベて、同一のマーキング4が施された長手方向の位置を、全ての光ファイバ素線1について一致させた。
【0040】
そして、テープ化材6として紫外線硬化型樹脂を用いて、このテープ化材6により各光ファイバ素線1を被覆し、テープ化した。
【0041】
図7は、光ファイバテープ心線の比較例の構成を示す平面図である。
【0042】
比較例として、実施例と同様の光ファイバ素線を用いて、図7に示すように、マーキング4が施された長手方向の位置を、各光ファイバ素線1について一致させない光ファイバテープ心線を作成した。
【0043】
図8は、実施例及び比較例におけるマーキングの種類を示す平面図である。
【0044】
なお、これら実施例及び比較例において、マーキング4は、図8中の(a)乃至(d)に示すように、4種類のものとした。すなわち、2mmのマーキングが1つのもの(a)、2mmのマーキングが2つ連続したもの(b)、2mmのマーキングが3つ連続したのもの(c)及び2mmのマーキングが4つ連続したのもの(d)の4種類である。
【0045】
これら実施例及び比較例の光ファイバテープ心線について、各光ファイバ素線の識別性を比較すると、マーキング4が施された長手方向の位置が全ての光ファイバ素線1について一致している実施例の光ファイバテープ心線において、比較例の光ファイバテープ心線に比較して、マーキング4の識別性が極めて向上していることが確認された。
【0046】
また、各光ファイバ素線1を単心に分離しても、各光ファイバ素線1に施したマーキング4は、良好に視認できることを確認した。単心に分けられた光ファイバ素線1は、マーキング4と着色層5の色との組合せにより、容易に識別が可能であった。
【0047】
マーキングについては、前述の図4に示すように、光ファイバ素線1の外周面の一部のみに施した場合にも、比較例の光ファイバテープ心線に比較して、マーキング4の識別性が極めて向上していることが確認された。
【0048】
なお、着色層5の色とマーキング4との組合せには種々のものが考えられ、特に限定されるものではない。例えば、着色層5の色が青色、黄色の光ファイバ素線にマーキング4を施し、着色層5の色が緑色、赤色の光ファイバ素線にはにマーキング4を施さないようにしてもよい。また、着色層5の色が青色、緑色の光ファイバ素線にマーキング4を施し、着色層5の色が黄色、赤色の光ファイバ素線にはにマーキング4を施さないようにしてもよい。さらに、着色層5の色が青色、赤色の光ファイバ素線にマーキング4を施し、着色層5の色が黄色、緑色の光ファイバ素線にはにマーキング4を施さないようにしてもよい。このように、種々の組合せが考えられる。
【0049】
また、光ファイバ素線の本数は、実施例に示したような4本に限定されるものではなく、どのような本数であってもよい。
【0050】
〔光ファイバケーブルの実施例〕
(1)SZ型光ファイバケーブル
この実施例では、100心のSZ型光ファイバケーブルを作成した。SZ型光ファイバケーブルは、外周面に左右に反転を繰り返し形成されたスロット溝が形成されたコアと、このコアのスロット溝内に収納された光ファイバテープ心線と、コア及び光ファイバテープ心線を被覆するシースから構成される。この実施例では、5本のスロット溝が形成されたコアを用いて、各スロット溝に4心テープ心線を5枚収納して構成した。光ファイバテープ心線は、図6及び図7に示した4心の光ファイバテープ心線を用いた。
【0051】
各光ファイバテープ心線において、施されたマーキングは、各光ファイバテープ心線の番号に応じて、1〜5本のマーキングを繰り返し施したものである。
【0052】
これらの光ファイバケーブルを用いて、識別性の比較を行った。スロット溝から取り出した5枚の光ファイバテープ心線について、各番号に対応した識別性を確認した。識別性の比較に際しては、実施例の光ファイバケーブルと併せて、比較のために、従来から使用されている光ファイバテープ心線の識別方式であるトレーサー方式による光ファイバテープ心線を用いて光ファイバケーブルについても確認した。
【0053】
なお、トレーサー方式は、トレーサーとして用いる光ファイバ素線の色を他の光ファイバテープ心線と異ならせることによる識別方法で、光ファイバテープ心線の識別に一般的に使用されている。例えば、トレーサーとして用いる光ファイバ素線と、白、茶、灰の光ファイバ素線とを並べた4心の光ファイバテープ心線とするのが典型的なもので、トレーサー色を、1番〜5番の光ファイバテープ心線で、青、黄、緑、赤、紫と異ならせて識別する。白、茶、灰は、全ての光ファイバテープ心線で同一であり、トレーサー色のみで各光ファイバテープ心線の識別を行うため、光ファイバテープ心線全体ではなく、トレーサーの色を確認する必要がある。すなわち、4本並んでいる細い光ファイバ素線のうちのトレーサーである1本の色を識別する必要がある。
【0054】
図6に示した光ファイバテープ心線を用いた光ファイバケーブルと、図7に示した光ファイバテープ心線を用いた光ファイバケーブルとの比較においては、図6に示す本発明に係る光ファイバテープ心線を用いた場合が、図7に示すマーキングの位置が不揃いな光ファイバテープ心線を用いた場合に対して、圧倒的に視認性が良好であった。図7に示す光ファイバテープ心線を用いた場合には、似通ったマーキング、例えば、本数の近い3と4や、4と5等は、識別する際にマーキングが施されている光ファイバ素線の1本、1本を注意して識別する必要があるのに対して、図6に示す光ファイバテープ心線を用いた場合には、マーキングの位置が揃っているため、光ファイバ素線の1本、1本を注視しなくとも、その集合体である光ファイバテープ心線をすぐに判別することが可能であり、良好な識別性を有することが確認された。
【0055】
従来のトレーサー型との比較においても、図6に示す光ファイバテープ心線を用いた場合のほうが、良好な識別性を有することが確認された。トレーサー型の光ファイバテープ心線では、トレーサーとなる光ファイバ素線の色を特定する必要があるため、1本の光ファイバ素線の色を注視して確認する必要があるが、図6に示す光ファイバテープ心線を用いた場合では、前述したように、光ファイバテープ心線線単位での識別が可能であり、トレーサー型に比較して識別が容易であった。
【0056】
(2)センターチューブ型光ファイバケーブル
この実施例では、センターチューブ型光ファイバケーブルを作成した。
【0057】
センターチューブ型光ファイバケーブルは、ケーブルの中央軸上に光ファイバテープ心線や介在等を収納する空間が形成され、周囲をシースにより被覆したケーブルである。このようなケーブルでは、収納空間に数本乃至十数本、あるいは、20本を超える光ファイバ素線や光ファイバテープ心線が収納される。本発明は、このようなケーブル構造において、多数の光ファイバテープ心線から任意の光ファイバテープ心線を識別するのに有効である。
【0058】
作成したセンターチューブ型光ファイバケーブルは、中央軸上の収納空間内に4心の光ファイバテープ心線を12枚収納した48心の光ファイバケーブルである。光ファイバテープ心線として、図6に示した光ファイバテープ心線を用いて、1本乃至12本のマーキングを施し、これを幅方向に揃えたものを用いた。比較のために、トレーサー方式で作成した光ファイバテープ心線を用いた光ファイバケーブルを作成し、光ファイバテープ心線の識別性を比較した。トレーサー方式では、SZ型光ファイバケーブルの実施例と同様に、トレーサー色を各々判別しなければならないことに加え、12色のトレーサー色を使用しなければならず、多数の色を使用するために、例えば、同系色である赤と桃色や、赤と橙などの識別が難しく、この実施例においても、本発明に係る光ファイバテープ心線を使用したほうが、光ファイバテープ心線の識別性が良好であった。
【0059】
(3)光ファイバカプラへの適用
本発明に係る光ファイバテープ心線は、光ファイバケーブル以外にも、各種配線など、複数の光ファイバテープ心線を容易に判別したい場合に有効である。
【0060】
実施例として、複数の光ファイバテープ心線を同時に接続させる光ファイバカプラを、図6に示した光ファイバテープ心線を用いて作成した。この場合にも、光ファイバケーブルに用いた場合と同様に、光ファイバテープ心線の識別性が良好であり、作業性の向上が認められた。このような光ファイバカプラは、クロージャや光成端箱、成端架等において複数個使用される。この光ファイバカプラを、成端箱やスプリッタユニットを用いてクロージャに収納した場合にも、光ファイバテープ心線の識別性が良好であり、作業性の向上が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、複数本の光ファイバ素線を並列に連結した光ファイバテープ心線及びこの光ファイバテープ心線を用いて構成される光ファイバケーブルに適用される。
【符号の説明】
【0062】
1 光ファイバ素線
2 光ファイバ
3 ファイバ被覆
4 マーキング
5 着色層
6 テープ化材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ素線が並列され、テープ化材によって被覆されてテープ化された光ファイバテープ心線において、
前記複数本の光ファイバ素線は、各光ファイバ素線ごとに異なる色の半透明の着色層で被覆されており、
前記テープ化材は、無色透明な材料により形成されており、
前記各光ファイバ素線のうち、少なくとも2本以上に同一のマーキングが施され、このマーキングは光ファイバテープ心線を識別するためのマーキングであり、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されている
ことを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバテープ心線を複数枚使用して構成され、
前記複数枚の光ファイバテープ心線のそれぞれにおいて、光ファイバテープ心線をなす各光ファイバ素線のうちの少なくとも2本以上には、同一のマーキングが、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されており、
異なる光ファイバテープ心線においては前記マーキングが異なり、このマーキングにより、光ファイバテープ心線間の識別が可能となっている
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
請求項1記載の光ファイバテープ心線を複数枚使用した配線形態であって、
前記複数枚の光ファイバテープ心線のそれぞれにおいて、光ファイバテープ心線をなす各光ファイバ素線のうちの少なくとも2本以上には、同一のマーキングが、この光ファイバテープ心線の長手方向について同一位置に施されており、
異なる光ファイバテープ心線においては前記マーキングが異なり、このマーキングにより、光ファイバテープ心線間の識別が可能となっている
ことを特徴とする配線形態。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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