説明

光ファイバテープ心線の評価方法、及びスロット型光ケーブルの製造方法

【課題】スロット型光ケーブルを製造することを必要とせずに、テープ心線の耐ブロッキング性を適切に評価することを可能にする。
【解決手段】スロット型光ケーブルに用いられるテープ心線について耐ブロッキング性の評価を行う光ファイバテープ心線の評価方法であって、複数枚の短尺のテープ心線2を、積層しかつ上から所定の荷重を加えた状態で温度及び又は湿度を管理した環境下でエージングした後、その積層状態のテープ心線2の長手方向の端部を固定した状態で、テープ心線を1枚ずつ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が、設定した基準ピール力以下の時に耐ブロッキング性があると評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スロット型光ケーブルに用いられる光ファイバテープ心線について耐ブロッキング性の評価を行う光ファイバテープ心線の評価方法、及び、スロット型ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スペーサの外周に形成された螺旋状の溝(スロット)に光ファイバテープ心線を積層して収容したスロット型光ケーブルは、その外径を極力小さくしようとする細径化が進んでおり、このスロット型光ケーブルの細径化に伴い、スペーサの溝内でテープ心線(光ファイバテープ心線)がより高密度に積層された状態になりつつある。
スロット型光ケーブルにおけるテープ心線の表面性状が適切でない場合、スペーサの溝内でテープ心線同士が密着して、光ファイバの伝送ロス増を引き起こすことがある。
表面性の悪いテープ心線を用いケーブルを作製すると、ケーブル作製後にまたは温度特性試験・長期信頼性試験を行った際に、伝送ロス増が発見される。
ロス増の原因として、
(a)テープ心線の被覆の摩擦係数が高く、スペーサの溝内で長手方向の移動を拘束されるため。
(b)スペーサの溝内で高密度に積層された複数枚のテープ心線がその積層状態のままブロッキング(テープ心線同士が密着して、複数枚のテープ心線が一体化すること)するため。
などが挙げられる。
上記原因のうち、テープ心線の摩擦係数については、紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)の硬化条件を変えることで最適化することができ、伝送ロス増を防止できる。
ブロッキングの起こる原因として、テープ心線の摩擦係数に加え、未硬化成分のブリードアウト(樹脂の硬化しなかった成分が経時的に樹脂表面に滲みでること)などで、表面性状が変化することなどが挙げられる。
【0003】
テープ心線表面の摩擦係数を測定することについては、種々の方法が多く報告されているが、テープ心線の耐ブロッキング性、すなわちテープ心線のブロッキングの起こりにくさに関連しては、あまり報告されていない。
【0004】
テープ心線の耐ブロッキング性に関連しては、特許文献1(特開2001−322838:テープ状光ファイバ心線の製造方法)に若干の記載がある。
特許文献1は、被覆表面の粘着性に基づくタック現象(ブロッキング現象に相当)の発生を抑制できるテープ心線を製造する方法であるが、得られたテープ心線の表面のタック性を判定するために、作製したテープ心線をリールに巻き取り、テープ心線がリールからスムーズに繰出せるか否かで判定する方法が記載されている。
スムーズに繰出せる場合を「タック性無し」、しゃくり等の現象が発生してスムーズの繰出せない場合は「タック性有り」としている(特許文献1の段落番号[0031])。
【0005】
また、特許文献2(特開2001−311860:テープスロット型ケーブル)は、テープ心線にタルクを塗布することで、スロット型光ケーブルのスペーサ溝内のテープ心線に長手方向の移動に対する適度の拘束力を与え、これにより光クロージャ内での伝送損失増加等の問題が発生するのを防止するというものであるが、作製したスロット型光ケーブルからスペーサ溝内のテープ心線を引き抜く際の引き抜き力を測定することで、テープ心線の移動に対する拘束力を測定している(特許文献2の段落番号[0013])。このテープ心線の移動に対する拘束力は、耐ブロッキング性と密接に関係する。
【0006】
また、特許文献3(特開平06−201957:テープ型光ファイバ心線)は、被覆材料の紫外線硬化樹脂を反応性シリコン樹脂で改質して、非ブリード性及び耐ブロッキング性に優れたテープ心線を得るというものであるが、製造したテープ心線を一定の張力でプラスチック製のボビンに巻取り長期間保管した後に、ボビン巻きしたテープ心線のくっつき具合を見ることで、耐ブロッキング性を判定している(段落番号[0013]など)。
【特許文献1】特開2001-322838 テープ状光ファイバ心線の製造方法
【特許文献2】特開2001-311860 テープスロット型ケーブル
【特許文献3】特開平06-201957 テープ型光ファイバ心線
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
テープ心線の耐ブロッキング性を判定する上記従来の方法のうち、特許文献1の方法はテープ心線がリールからスムーズに繰出せるか否かを目で見て判定するものであり、また特許文献3の方法はボビン巻きしたテープ心線のくっつき具合を目で見て判定するものであり、いずれも試験者の感覚的な判断によるものであるから、明確な判定結果を得ることはできない。
また、特許文献1の方法はテープ心線がリールからスムーズに繰出せるか否かであるから、テープ心線の摩擦係数しか評価できない。
また、特許文献2の方法は、作製したスロット型光ケーブルからテープ心線を引き抜く際の引き抜き力を測定することで判定するものであり、数値的に明確な判定結果が得られるが、実際にスロット型光ケーブルを作製した後でなければ、判定できないという欠点がある。また、引き抜き力は耐ブロッキング性に密接に関係しているが、必ずしも同一とは言えない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてされたもので、スロット型光ケーブルにおけるテープ心線の耐ブロッキング性を、スロット型光ケーブルを作製することを必要とせずに、かつ、人の感覚的な判断によらず明確に判定することが可能な光ファイバテープ心線の評価方法を提供することを目的とし、また、敷設後に光ファイバテープ心線がブロッキングして伝送ロスが発生する恐れの少ないスロット型光ケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する請求項1の発明は、スロット型光ケーブルに用いられる光ファイバテープ心線について耐ブロッキング性の評価を行う光ファイバテープ心線の評価方法であって、
複数枚の短尺の光ファイバテープ心線を、積層しかつ上から所定の荷重を加えた状態で
温度及び又は湿度を管理した環境下でエージングした後、その積層状態の光ファイバテープ心線の長手方向の端部を固定した状態で、光ファイバテープ心線を1枚ずつ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が、設定した基準ピール力以下の時に耐ブロッキング性があると評価することを特徴とする。
【0010】
請求項2は、請求項1の光ファイバテープ心線の評価方法において、試料の光ファイバテープ心線の重量を前記基準ピール力とすることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、スロット型光ケーブルのスペーサ溝に積層して収容された光ファイバテープ心線について、ブロッキングが起きていたか否かを判定する光ファイバテープ心線の評価方法であって、
スロット型光ケーブルのスペーサ溝から光ファイバテープ心線を積層状態を崩すことなく取り出しかつ短尺の所定長さに切断し、その切断した積層状態の光ファイバテープ心線の長手方向の端部を固定した状態で、光ファイバテープ心線を1枚ずつ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が設定した基準ピール力以下の時に、そのスロット型光ケーブルの光ファイバテープ心線は耐ブロッキング性があったと評価することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明のスロット型光ケーブルの製造方法は、スペーサの外周に形成された螺旋状の溝に複数枚の光ファイバテープ心線を積層してなるスロット型光ケーブルを製造するに際して、
スペーサ溝に収容すべき光ファイバテープ心線を、スペーサ溝に収容する前に、請求項1〜2のいずれかの光ファイバテープ心線の評価方法により耐ブロッキング性を判定し、耐ブロッキング性有りと判定された光ファイバテープ心線をスペーサ溝に収容してスロット型光ケーブルを製造することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、SZ型のスロット型光ケーブルのスペーサ溝に積層して収容された光ファイバテープ心線について、ブロッキングが起きていたか否かを判定する光ファイバテープ心線の評価方法であって、
スロット型光ケーブルのスペーサ溝から光ファイバテープ心線を積層状態を崩すことなく所定長さ分を取り出し概ね水平に置き、その積層状態の光ファイバテープ心線のうちの最上部の光ファイバテープ心線の長手方向の1箇所を持ち上げ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が設定した基準ピール力以下の時に、そのスロット型光ケーブルの光ファイバテープ心線は耐ブロッキング性があったと評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、複数枚の短尺のテープ心線を積層しかつ荷重を加えて、スペーサ溝内の光ファイバテープ心線の積層状態を模擬した状態を作り、次いでエージングした後、ピール試験をして、耐ブロッキング性を判定するものであるから、光ファイバテープ心線の耐ブロッキング性を、スロット型光ケーブルを作製することを必要とせずに、かつ、人の感覚的な判断によらず明確に判定することができる。
また、スロット型光ケーブルにおけるスペーサ溝内の積層テープ心線の状態を再現して耐ブロッキング性を評価するものであるあから、適切な評価を行うことが可能である。
【0015】
請求項2のように、試料の光ファイバテープ心線の重量を、基準ピール力とすることは、耐ブロッキング性の評価を適切に行うために有効であり、適切であり、明確である。また、光ファイバテープ心線の種類によらない一般性がある。
【0016】
本発明の光ファイバテープ心線の評価方法は、請求項3のように、既設のスロット型光ケーブルを対象とすることも可能である。
【0017】
請求項4のスロット型光ケーブルの製造方法によれば、スロット型光ケーブルを敷設した後に、積層したテープ心線のブロッキングが生じて伝送ロス増が発生するという事態を、極力回避できる。
【0018】
請求項5の光ファイバテープ心線の評価方法によれば、既設のSZ型スロット型光ケーブルについて、光ファイバテープ心線を切断せずにその評価を行うことができる。したがって、既設のSZ型スロット型光ケーブルについて、光ファイバテープ心線の状態を容易に点検することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施した光ファイバテープ心線の評価方法、及びスロット型光ケーブルの製造方法について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
実施例の光ファイバテープ心線の評価方法は、例えば図2に示すようなスロット型光ケーブル1に用いられる光ファイバテープ心線(テープ心線)2を対象としている。
同図において、3はテンションメンバー、4はスペーサ、5はスペーサ4の外周に形成された螺旋状の溝(スロット)、6は押さえ巻きテープ、7はシースである。テープ心線2はスペーサ4の溝5に積層して収容される。
スペーサ4の溝5に積層して収容されたテープ心線2の表面性が適切でない場合、テープ心線同士が密着して、その積層状態のままブロッキング(テープ心線同士が密着して、複数枚のテープ心線が一体化すること)することがある。
本発明の光ファイバテープ心線の評価方法は、このようなスロット型光ケーブル1に用いるテープ心線2の耐ブロッキング性(すなわち、ブロッキングの起こりにくさ)を調べるものである。
【0021】
請求項1の発明は、スロット型光ケーブルを作製することなく、テープ心線の耐ブロッキング性の評価を行う方法である。
作製した長いテープ心線を切断して、適宜の短い長さのテープ心線を複数枚、試料として用意する。
その複数枚の短尺のテープ心線を積層しかつ上から所定の荷重を加える。加える荷重は、最上層のテープ心線の表面全体に均等な分布荷重が作用するようする。
積層し荷重を加えた状態のテープ心線を、温度及び又は湿度を管理した環境下でエージング、例えば、温度特性試験や湿熱試験や高温試験等の環境下でエージングした後、その積層状態のテープ心線の長手方向の端部を固定した状態で、テープ心線を1枚ずつ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が設定した基準ピール力以下の時に耐ブロッキング性があると評価する。
【0022】
具体的な実施例の評価方法について説明する。
評価対象のテープ心線は8心のテープ心線である。
実施例ではテープ心線の製造ロットの異なる3本の長いテープ心線(テープ化材A、B、Cと呼ぶ)を用いた。各テープ化材A、B、Cはそれぞれ、作製直後のテープ心線表面の摩擦係数が同程度となるように、テープ心線作製時の条件を調節した。
そして、異なるテープ化材A、B、Cの3本の長いテープ心線をそれぞれ切断して、20cmの長さのテープ心線を多数作製し、それらを試料とした。
長さ20cm・8心の10枚のテープ心線を積層し、その上に250gfの錘を載せて、スペーサ溝内のテープ心線の積層状態を模擬した状態を作った。
その積層したテープ心線を温度特性試験又は高温試験又は湿熱試験に投入してエージングした。
積層テープ心線のエージングは、後述の表1に示すように、テープ化材A、B、Cの各グループについてそれぞれ、温度特性試験グループと高温試験グループと湿熱試験グループとに分けて、それぞれエージングした。
エージング試験は次の通りである。
・温度特性試験(−30°C〜70°C 各12時間ホールド 2サイクル)
・高温試験(85°C 2日間)
・湿熱試験(60°C 95%RH 2日間)
【0023】
エージングの後、各積層テープ心線について、テープ心線同士が密着してブロッキングしたか否かを、ピール試験により、すなわち、テープ心線同土を引き剥がす(ピールする)時のピール力(引き剥がし力)を測定することで判定した。
【0024】
図1にピール試験の状況を示す。
図示のように、平坦なベース板11上に積層した10枚のテープ心線2の一端を固定部材12で固定し、上層のテープ心線から順に、その自由端側(図1で右端側)を1枚ずつ持ち上げて引き剥がし、その引き剥がしの際のピール力を測定した。
テープ心線を持ち上げる具体的方法としては、小型の引張試験機の上下動する引張部に、積層したテープ心線のうちの一番上にあるテープ心線の自由端側を接着し、引張部を上昇させて接着点を上方向に、実施例では5cm以上持ち上げた。
【0025】
テープ心線が耐ブロッキング性を有するか否かの判定基準となる基準ピール力として、試料である20cmの長さのテープ心線の重量を採用した。すなわち、ピール力が試験に用いた長さ20cmのテープ心線を5cm以上持ち上げるのに必要な力以下であれば、ブロッキングしていないと判断する。この基準ピール力は、積層したテープ心線を水平に持った際、自重でテープ同士が離れる程度の密着力、ということができる。
なお、テープ心線の持ち上げ距離は、必ずしも5cm以上に限らず、適宜適切な距離を設定するとよい。
実施例の場合、試料としたテープ心線の重量が0.15gf/20cmであったので、耐ブロッキング性の有無を判定する基準ピール力を0.15gfに設定した。
さらに、試料を採取したテープ化材と同じテープ化材A、B、Cのテープ心線を用いてスロット型光ケーブルを作製し、そのスロット型光ケーブルについて温度特性試験を行い、伝送ロス増の有無を調査した。
それらの結果を表1に示す。表1はテープ心線ピール力とケーブル化後の温度特性試験結果を示したものである。
【表1】

【0026】
テープ化材Aから作製した試料テープ心線では、温度特性試験グループ、高温試験グループ及び湿熱試験グループのいずれのエージングをしたものも、ピール力が0.15gf以下であり、ブロッキングが起きていないと判定した。そして、テープ化材Aのテープ心線を用いて作製したスロット型光ケーブルの温度特性試験をした後に、伝送ロスを測定したところ、伝送ロス増は特に無かった。
テープ化材Bから作製した試料テープ心線では、温度特性試験グループ及び高温試験グループではピール力が0.15gf以下であったが、湿熱試験グループではピール力が0.15gf以上であり、3種のエージングに対してすべて合格ではなかったので、耐ブロッキング性はないと判定した。そして、テープ化材Bのテープ心線を用いて作製したスロット型光ケーブルの温度特性試験をした後に伝送ロスを測定したところ、やはり伝送ロス増が生じていた。
テープ化材Cから作製した試料テープ心線では、高温試験グループではピール力が0.15gf以下であったが、温度特性試験グループ及び湿熱試験グループではピール力が0.15gf以上であり、3種のエージングに対してすべて合格ではなかったので、耐ブロッキング性はないと判定した。そして、テープ化材Cのテープ心線を用いて作製したスロット型光ケーブルの温度特性試験をした後に伝送ロスを測定したところ、やはり伝送ロス増が生じていた。
【0027】
上記の試験結果では、温度特性試験、高温試験及び湿熱試験の各エージングをしたものすべてがピール試験に合格しなければ、耐ブロッキング性がないと判定されたが、ピール試験結果の合否と伝送ロス増との対応関係は、基準ピール力をどのような数値に設定するかによって、異なってくる。また、具体的エージングの内容(温度、湿度、時間その他)によって異なってくる。
したがって、基準ピール力の設定値によっては、例えば2種のエージングしたものがピール試験に合格すれば、耐ブロッキング性有りと判定することも考えられる。
基準ピール力の値は必ずしも厳格に決定できるものではないので、具体的なテープ心線に対して、伝送ロス試験の結果も踏まえた上で、適切な値に設定するとよい。しかし、この実施例のように、試料テープ心線の重量を基準ピール力とすることは、耐ブロッキング性の評価を適切に行うために有効であり、適切であり、明確である。また、光ファイバテープ心線の種類によらない一般性がある。
【0028】
上記実施例で採用した試料テープ心線の長さ20cmは、耐ブロッキング性を判定するピール力測定用の試料として、適切な長さであり有効であるが、試料長さは、例えば10〜30cmの範囲で適宜選択するなど、必ずしも限定されない。
【実施例2】
【0029】
上述の光ファイバテープ心線の評価方法は、スロット型光ケーブルを作製することなく耐ブロッキング性を評価するものであるが、既に作製したスロット型光ケーブルのテープ心線について、ブロッキングが起きていたか否かを判定することもできる。
この場合、スロット型光ケーブルのスペーサ溝からテープ心線を積層状態を崩すことなく取り出し、かつ、積層状態を崩すことなく例えば前述と同様に20cmの長さに切断する。
その積層状態のテープ心線に対して、前述の実施例と同様にして、ピール試験をする。
ピール試験の要領、及び、ピール試験結果の判定要領は、前述と基本的に同じであり、再度の説明は省略する。
既設のスロット型光ケーブルについ、このように耐ブロッキング性を適切に評価できれば、光通信線路の保守に有益である。
【実施例3】
【0030】
図2のようなスロット型光ケーブル1を製造する際に、事前に光ファイバテープ心線(テープ心線)の耐ブロッキング性を判定するために、上述の光ファイバテープ心線の評価方法を採用することができる。
すなわち、スペーサ4の溝5に収容すべきテープ心線2を、スペーサ4の溝5に収容する前に、上述した光ファイバテープ心線の評価方法により耐ブロッキング性を判定する。そして、耐ブロッキング性有りと判定されたテープ心線をスペーサ4の溝5に収容し、押さえ巻きテープ6及びシース7を施して、スロット型光ケーブルを製造する。
これにより、スロット型光ケーブルを敷設した後に、積層したテープ心線のブロッキングが生じて伝送ロス増が発生するという事態を、極力回避できる。
【実施例4】
【0031】
上述の実施例は、作製した長いテープ心線を切断して適宜の短い長さとしたテープ心線について評価をするものであり、スロット型光ケーブルを作製することなく評価するものであるが、対象のスロット型光ケーブルがSZ型のスロット型光ケーブルである場合には、その作製したSZ型スロット型光ケーブルのテープ心線について、テープ心線を切断することなく評価することも考えられる。
すなわち、まず、SZ型スロット型光ケーブルのスペーサ溝から光ファイバテープ心線を積層状態を崩すことなく所定長さ分を取り出す。この場合、SZ型のスロット型光ケーブルであるから、適宜の長さの積層状態の光ファイバテープ心線を弛ませた状態で取り出すことができる。
弛ませた積層状態の光ファイバテープ心線の一部分をベース板の上に水平に置き、その最上部の光ファイバテープ心線の長手方向の1箇所を持ち上げ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定する。
そして、そのピール力が設定した基準ピール力以下の時に、そのスロット型光ケーブルの光ファイバテープ心線は耐ブロッキング性があったと評価する。
【0032】
この場合、対象が既設のSZ型スロット型光ケーブルであれば、その既設のSZ型スロット型光ケーブルの光ファイバテープ心線の状態を容易に点検することができる。
なお、既にエージングがされているから、当然、改めてエージングする工程は不要である。
対象が作製したばかりのSZ型スロット型光ケーブルの場合は、短く切断した光ファイバテープ心線の場合と異なり、エージングを施す処理が簡単ではないが、工夫をしてエージングを施すことは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例の光ファイバテープ心線の評価方法において行うピール試験(引き剥がし試験)の要領を説明する図である。
【図2】本発明の光ファイバテープ心線の評価方法で対象とするスロット型光ケーブルの一例を示すもので、スロット型光ケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 スロット型光ケーブル
2 テープ心線(光ファイバテープ心線)
4 スペーサ
5 スペーサの溝
11 ベース板
12 固定部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロット型光ケーブルに用いられる光ファイバテープ心線について耐ブロッキング性の評価を行う光ファイバテープ心線の評価方法であって、
複数枚の短尺の光ファイバテープ心線を、積層しかつ上から所定の荷重を加えた状態で温度及び又は湿度を管理した環境下でエージングした後、その積層状態の光ファイバテープ心線の長手方向の端部を固定した状態で、光ファイバテープ心線を1枚ずつ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が、設定した基準ピール力以下の時に耐ブロッキング性があると評価することを特徴とする光ファイバテープ心線の評価方法。
【請求項2】
試料の光ファイバテープ心線の重量を前記基準ピール力とすることを特徴とする請求項1記載の光ファイバテープ心線の評価方法。
【請求項3】
スロット型光ケーブルのスペーサ溝に積層して収容された光ファイバテープ心線について、ブロッキングが起きていたか否かを判定する光ファイバテープ心線の評価方法であって、
スロット型光ケーブルのスペーサ溝から光ファイバテープ心線を積層状態を崩すことなく取り出しかつ短尺の所定長さに切断し、その切断した積層状態の光ファイバテープ心線の長手方向の端部を固定した状態で、光ファイバテープ心線を1枚ずつ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が、設定した基準ピール力以下の時に、そのスロット型光ケーブルの光ファイバテープ心線は耐ブロッキング性があったと評価することを特徴とする光ファイバテープ心線の評価方法。
【請求項4】
スペーサの外周に形成された螺旋状の溝に複数枚の光ファイバテープ心線を積層してなるスロット型光ケーブルを製造するに際して、
スペーサ溝に収容すべき光ファイバテープ心線を、スペーサ溝に収容する前に、請求項1〜2のいずれかの光ファイバテープ心線の評価方法により耐ブロッキング性を判定し、耐ブロッキング性有りと判定された光ファイバテープ心線をスペーサ溝に収容してスロット型光ケーブルを製造することを特徴とするスロット型光ケーブルの製造方法。
【請求項5】
SZ型のスロット型光ケーブルのスペーサ溝に積層して収容された光ファイバテープ心線について、ブロッキングが起きていたか否かを判定する光ファイバテープ心線の評価方法であって、
スロット型光ケーブルのスペーサ溝から光ファイバテープ心線を積層状態を崩すことなく所定長さ分を取り出し概ね水平に置き、その積層状態の光ファイバテープ心線のうちの最上部の光ファイバテープ心線の長手方向の1箇所を持ち上げ引き剥がして、その引き剥がしの際のピール力(引き剥がし力)を測定し、そのピール力が設定した基準ピール力以下の時に、そのスロット型光ケーブルの光ファイバテープ心線は耐ブロッキング性があったと評価することを特徴とする光ファイバテープ心線の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−101958(P2010−101958A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270976(P2008−270976)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】