説明

光ファイバ・ジャイロスコープにおける振動及び放射線不感性のためのディジタル強度抑制

【課題】センサの帯域幅を狭めることなく、振動及び放射線効果に対する感度を低下させる。
【解決手段】干渉光ファイバ・ジャイロスコープ200は、光信号102を供給する光学部と、光信号を光検出器出力信号217に変換する光検出器206と、光検出器出力信号に基づいてジャイロ出力260を供給する電子回路部207とを含む。電子回路部は、光検出器出力信号を量子化し光信号のディジタル化表現を形成し、光信号のディジタル表現に基づいて、強度調整値245を決定し、その値に基づいて光検出器出力信号を調節して、調整済み光検出器出力信号を形成する。そして、光信号のディジタル表現を、調整済み光検出器出力信号及び強度調整値の関数としてディジタル的に再現し、再現した信号から、復調技法を適用して、回転速度に対する感度を保存しつつ、強度−感度を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、光ファイバ・ジャイロスコープに関し、更に特定すれば、光ファイバ・ジャイロスコープにおいて振動及び/又は放射線の悪影響を低減するための技法及び構造に関する。
なお、本発明は、政府の支援によって行われた。政府は、本発明においてある種の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
長年にわって、光ファイバ・ジャイロスコープは、航空機、衛星、ミサイル、船舶及びその他の移動体のための案内及び誘導システムに用いられている。光ファイバ・ジャイロスコープは、通常、光ファイバのコイルの周囲を逆方向に回転する2本のレーザ光ビームを発生する。コイルが回転すると、ファイバ内部における光ビームの伝搬が、周知のサニャック効果(Sagnac Effect)にしたがって変化する。コイル内部における2本の逆回転光ビームの相対的な変化を検知することにより、コイル自体の回転を、非常に高いレベルの精度で検出することができる。このコイルの回転は車両、ミサイル又はその他の物体と容易に相関付けることができる。
【0003】
典型的な干渉光ファイバ・ジャイロスコープ(IFOG)では、ファイバ光源(FLS)が放出する光は、比較的帯域幅が広く、波長が安定している。次いで、この光は集積光チップ(IOC)に入り、2つの逆方向に伝搬する光波に分割される。コイルを通過した後、逆伝搬光波はIOCのY字状分岐点において干渉する。次いで、このコイルから出射される干渉光をフォトダイオード又はその他の適した光検出器上で検出する。検出した光は、2つの光波間における干渉を示すので、2本のビームの相対位相を判定し、センサの回転と相関付けることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、光ファイバ・センサの精度及び/又は性能を低下させる種々の影響が知られている。例えば、ジャイロ内における機械的振動は、回転として発生するセンサ出力に影響を及ぼすことによって、ジャイロの精度を低下させる可能性がある。例えば、同期強度及び位相発振は、平均値が0でないと、整流誤差を生ずる可能性があり、これは定常状態の回転率の偽指示として現れる。このような振動は、ファイバにおける微小屈曲、光を望ましくない偏光状態に変換するファイバ応力点等が原因で生ずる可能性がある。
【0005】
したがって、性能を向上させた光ファイバ・ジャイロスコープ及び随伴する動作方法を提供することが望まれている。即ち、センサの帯域幅を狭めることなく、振動及び放射線効果に対する感度を低下させることが望ましい。その他の望ましい特徴及び特性は、以下の本発明の説明及び添付した特許請求の範囲を、添付図面及びこの発明の背景と共に検討することによって明白となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ジャイロの性能を向上させるために、干渉光ファイバ・ジャイロスコープ(IFOG)において振動及び/又は放射線の悪影響を低減する方法及び装置を提供する。種々の実施形態によれば、IFOGは、光信号を供給するように構成された光学部と、光信号を光検出器出力信号に変換するように構成された光検出器と、光検出器出力信号に基づいてジャイロ出力を供給するように構成された電子回路部とを含む。光検出器出力信号を増幅し量子化して光信号のディジタル化表現を形成する。2つのバイアス変調帰還の間における光検出器の強度の差(a−b)及び和(a+b)双方を測定する。測定した差信号を和信号で除算することにより、回転速度に対する感度を低下させることなく、強度感度を抑制する。こうして、閉ループIFOGにおけるジャイロ出力又はフィードバックは、光信号の復調強度抑制ディジタル表現に基づいて発生する。
その他の実施形態は、ここに記載する種々の概念を組み込んだその他のシステム、デバイス、及び技法を含む。様々な実施形態例に関する更なる詳細を以下に明記する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、添付図面と関連付けながら本発明について説明する。図面では、同様の参照番号は同様の要素を示すものとする。
以下の発明の詳細な説明は、その性格上単なる一例に過ぎず、本発明や、発明の用途及び使用を限定することは意図していない。更に、前述の発明の背景や以下の発明の詳細な説明において呈示するいずれの理論にも拘束される意図もない。
【0008】
先に端的に説明したように、干渉光ファイバ・ジャイロスコープ(IFOG)の性能は、機械的振動、放射線効果等に応答して著しく変化する可能性があり、光検出器に入射する光の未変調強度に影響を及ぼす可能性がある。このような悪疫用を低減するために、ジャイロ光検出器の出力の強度に対する感度を、ディジタル・ロジックを用いて抑制し、強度に比例する直交復調によって、復調した光検出器信号を分割する。
【0009】
先に説明したように、振動誤差は、IFOGにおける種々の発生源から出現する可能性がある。典型的なIFOG動作の間、逆伝搬光ビームは、バイアス変調φによって変調される。バイアス変調φは、多くの場合、方形波であり、その半周期が光のコイルτの通過時間(transit time)にほぼ等しく、誘導位相振幅が±β/2であり、βは変調深さである。図1A及び図1Bは、フォトダイオードの強度例を示し、バイアス変調の関数として表されている。図において見られるように、回転速度が0又はその近傍にあるとき、a及びbにおける光検出器の強度間における差は0である。光検出器出力Vpdは、従来、位相ずれ逆伝搬波の干渉によって与えられる。

pd=GI(1+cos(Δφ+Δφ))/2 (1)

ここで、Iは、干渉が発生しない場合の基本光強度であり、Gはプリアンプの利得であり、Δ記号は、時点tにおける位相ずれとt−τだけ先立つ直前のループでの通過時点における位相ずれとの間の位相差を示す。
【0010】
速度に比例する測定値を得るためには、光検出器信号を2τ期間にわたって復調するのが一般的であり、τは、I/Oに適用するバイアス変調φに同期したループ通過時間に等しい。復調の際、a及びbで示す、2つの変調半周期間の光検出器強度の差を取る。時点a及びbにおける光検出器強度の差は、位相ずれ逆伝搬波の干渉によって与えられる。

a−b=GIsin(β)sin(Δφ) (2)

ここで、時点a及び時点bにおけるにおけるバイアス変調Δφの差がβである。
【0011】
しかしながら、前述のように、ジャイロの精度及び性能を低下させる種々の効果が知られている。例えば、強度の変動が同期的に誘発され、振動によって誘発される位相差がこれに加わると、振動に誤差が生ずる可能性がある。同期強度及び位相発振は、平均値が0でないと、整流誤差を生ずる恐れがあり、定常状態の回転速度の偽指示となって現れる。通常、振幅Δφの振動周波数fにおける振動誘発時間可変位相差のずれΦは、次のように表すことができる。

Φ=Δφcos(ωt+ε) (3)

ここで、ω=2πfであり、εは任意の位相である。この場合、回転速度が低ければ、ジャイロの出力は、その出力をωにおいて相応に変化させることにより、実際の回転速度環境を正確に示す。
【0012】
振動誘発強度変動は、光源の入力側及び出力側双方におけるファイバの微小屈曲損失の変調によって生ずる可能性がある。振動誘発強度変調は、光源にける偏光の変調、IOCチップへのファイバ・ピッグテール(fiber pigtail)及び/又はコイルにおける光源ピッグテールによって生ずる可能性がある。その効果は、IOC、又はカプラ、又は光源構成要素の内側において応力を変調することによっても生ずる場合がある。これらの場合のいずれにおいても、光強度変調は次のように表すことができる。

=I(1+αcos(ωt) (4)

ここで、Iは、バイアス変調のない振動の間にフォトダイオードに入射する平均強度であり、αは強度変動の振幅を示す。
同時及び同期振動誘発位相及び強度変調がある場合、式(3)及び式(4)を式(2)と組み合わせて、以下の復調光検出器信号a−bを発生する。

a−b
=GI(1+αcos(ωt))sin(β)
×sin(Δφ+Δφcos(ωt+ε)+ΔφFB) (5)
【0013】
開ループIFOG(ΔφFB=0)、及びΔφ及びΔφが小さい場合には、式5を次のように展開することができる。

a−b
=GIsin(β)[Δφ+αΔφcos(ωt)
−αΔφsin(ε)cos(ωt)sin(ωt)
+αΔφcos(ε)・cos(ωt)] (6)

ここで、第1項は、所望のサニャック位相に比例し、第2及び第3項は平均すると0となる正弦項であり、第4項は振動周波数の二乗余弦を含み、平均すると0にならない整流項であり、回転速度の偽測定値を与える。整流誤差は、振幅αの強度変調と振幅Δφの位相差変調との積に比例する。整流誤差は、強度変調及び位相変調が90゜位相ずれとなるときに消失し、これらが同相(ε=0゜)のときにその最大値となる。
【0014】
Δφ及びΔφが小さいという仮定を行わないと、式(5)は、ヤコビ−アンガー単位元(Jacob-Anger identities)によって、ベッセル関数の和に展開することができる。

a−b
=GIsin(β)(1+αcos(ωt))
×[sin(Δφ){J(Δφ
+2Σi(Δφ)cos(n(ωt+ε))}
+2cos(Δφ)Σin−1(Δφ)cos(n(ωt+ε))]
(7)

ただし、1番目のΣは、nが偶数で、n=2,4,・・・∞の場合の加算を表し、2番目のΣは,nが奇数で、n=1,3,・・・∞の場合の加算を表す。
ここで、整流し偽回転測定値を与える誤差項は、以下の式で与えられる。

2αGIsin(β)cos(Δφ)cos(ε)cos(ωt)
×Σin−1(Δφ)cos(n(ωt))
(8)

ただし、Σは、nが奇数で、n=1,3,・・・∞の場合の加算を表す。
この誤差項は、強度変調α又は位相変調Δφのいずれかが0になると、同様に0になる。
【0015】
簡略化のために、ここにおける論述では、正弦波状振動入力に注目する。実際には、実在の振動環境は個々の用途に特定のスペクトルを含む正弦波振動入力の重畳を含有する。この場合、蓄積整流誤差は、種々の周波数における振動から発生する誤差の寄与の合計となる。各誤差の寄与は、したがって、スペクトルにおいて指定した周波数における強度変調及びゼロでない正味の光位相ずれの結果となる。
【0016】
時点a及びbにおける光検出器の強度差に対する感度を高めるために、フロント・エンド回路を用いて、光検出器信号の低周波成分を減算即ち濾波することが多い。これによって、電子回路の飽和を生ずることなく、高周波差信号の振幅が可能となる。この技法を実施するには、フロント・エンド回路が低周波成分を除去しないか、あるいは米国特許第5,812,263号に記載されているフロント・エンドのような、ディジタル制御減算回路を用いて、光検出器信号から低周波成分を除去する。後者の場合、光検出器における信号は、A/D変換器における測定信号を、ディジタル・フロント・エンド・サーボによって減算した信号とを組み合わせることによって再現することができる。復調周波数未満の周波数成分を除去又は抑制しない光検出黄信号のディジタル表現も、用いることができる。
【0017】
要約的に上述したように、従来の干渉光ファイバ・ジャイロスコープ(IFOG)は、通常、2つの逆伝搬光ビームを光ファイバのコイルに印加して、その結果、ジャイロの回転を示す、ビーム間の位相差が生ずる。ここで図1Aを参照すると、干渉光ファイバ・ジャイロスコープ(IFOG)又はサニャック効果に基づく同様のセンサについての従来の干渉図120が、バイアス変調信号の一例104及び光検出器の出力の2つのグラフと共に示されている。
【0018】
干渉図102は、FOG型センサの典型的な応答を示しており、横軸は2つの逆伝搬光ビーム間の位相差を表し、縦軸はジャイロ光学部品からの光信号出力の強度を表す。干渉図102から、光検出器の出力強度が最大となるのは2つのビームが加算的に干渉するとき、即ち、2つのビームが互いに同相となるとき、又はビーム同士が互いに2πラジアンの整数倍だけ位相ずれとなるときであることが容易に判断できる。逆に、出力強度が最低となるのは、2つのビームが互いにπラジアンだけ位相外れとなるときのように、2つのビームが減算的に干渉するときである。±π/2ラジアンで動作するようにジャイロ・センサをバイアスすることがよくある。何故なら、これらの動作点は干渉図102の最大傾斜を表すからである(即ち、これらの点では、位相差の小さな変化が出力信号強度に比較的大きな変化を生じさせる)。位相バイアス変調信号の一例を図1Aにおいて信号104によって示す。信号104は図1Aでは方形波として示されているが、閉ループ・システムのような代替実施形態では、適宜、傾斜、鋸歯、又はその他のバイアス波形を用いてもよい。
【0019】
グラフ106及び108は、それぞれ、非回転及び回転ジャイロの出力プロットの例を示す。グラフ106に示すように、非回転ジャイロスコープは、光検出器の出力が干渉図102の点a及びbの間で、変調信号104が加えるバイアスに対応して交流となるので、比較的一定の光検出器出力信号112を生成する。点a及びb間の遷移の間、いわゆる「グリッチ」110が出力106に現れる。これらのグリッチ110は、短いが、信号106の処理に関して問題を生ずる可能性がある。これについては以下で更に詳しく説明する。
【0020】
グラフ108は、ジャイロの検知コイルが回転を生じているときの光検出器出力信号の一例を示す。コイルの回転が、更なる位相ずれを、バイアス信号104によって生ずる位相ずれに誘発するので、出力108は干渉図102上の点a’及び点b’間において交番し、2つの明らかに異なるレベル114及び116をそれぞれ有する信号を生成する。点a’及びb’間の遷移によって生ずるグリッチ110は、信号108においても現れたままである。
図1Bは、干渉図の高さで例示するように、強度を低下させたことを除いて、図1Aと同様である。この場面では、同じ量の回転速度に対して、レベル114’及び116’における差が、強度が大きい場合よりも小さくなっている。
【0021】
出力信号108におけるレベル114及び16を監視することによって、逆回転ビーム同士の間の位相ずれ量を推論することができる。一方、この位相ずれを回転の速度と相関付けることができる。典型的な閉ループIFOGは、変調信号を変化させることによって、式2.6で記述される、このレベル差を0にする。このような実施態様は、強度変動に対する残留感度(residual sensitivity)を有する可能性がある。特に、これらの強度変動が閉ループ・サーボの帯域幅よりも上の周波数で生ずる場合に言える。加えて、このような実施態様の閉ループ・サーボ帯域幅は、更に、光検出器信号の未変調強度に比例する。
強度に対する感度を大きく抑制するためには、式5に示すように光検出器信号をa−bとして復調せずに、代わりに、レベル114及び116間の差のこれら2つのレベルの和に対する比率として復調する。代数的に述べると、この比率は以下の式で与えられる。

(a−b)/(a+b)
={sin(β)sin(Δφ+Δφcos(ωt+ε)+ΔφFB)}
/{1+cos(β)cos(Δφ+Δφcos(ωt+ε)+ΔφFB)}
(9)

ここで、a及びbは、それぞれ、光検出器出力信号におけるレベル114及び116を表す。このような復調技法は強度に対する感度を抑制する。別の言葉で言えば、項I(1+αcos(ωt)は式5から消去されている。その結果、式6及び式8で記述される、振動又は放射線によって誘発される強度整流誤差が抑制される。加えて、復調信号の大きさは、制御した変調深さβ及び真の回転速度のみに比例する。結果的に、復調信号を0にサーボすることによってフィードバックを発生する閉ループIFOGは、もはや、強度に依存するサーボ帯域幅を有していない。
【0022】
開ループ及び閉ループIFOGの振動誘発強度感度を抑制するために種々の技法が試されており、その成功の度合いは様々である。ある種の振動誤差、及びこのような誤差を抑制するための技法の1つに関する詳細な説明が、Sanders et al.に付与された米国特許出願第5,923,424号においてなされている。その他にも、FOG信号の強度感度を抑制する技法の例が、例えば、米国特許第5,812,263号及び第5,923,323号に紹介されている。
【0023】
ディジタル強度抑制は、先行技術の欠点の多くを回避する。先行技術では、強度によって復調差信号を除算する概念は同じであるが、強度の判定が異なる。先行技術では、強度測定は通常帯域幅で制限される。強度が帯域幅で制限される場合、先行技術の技法はそれでも、例えば、極端な機械的衝撃又は強い突発的なx線バーストの間に発生する可能性がある突然の強度変化には感応する。また、このような技法は、予め、強度変動が本質的に正弦波状であり、平均強度Iが一定であることを想定しており、宇宙レベルの放射線や経年変化による損失のような、長期にわたる強度変動の相関を無視している。ディジタル強度抑制では、DCからバイアス変調周波数の半分までの全ての周波数に対して強度を除去し、強度変動の本質について何の想定もしていない。
【0024】
また、米国特許第5,812,263号に記載されているディジタル減算フロント・エンドを用いたディジタル強度抑制の実施態様には、多くの利点がある。第1に、干渉図上において位相を変化させることによる、前述のバイアス変調グリッチは、フロント・エンド・アナログ・フィルタ処理によって、時間的に広がらない。通常、従前のフロント・エンド回路では、ジャイロの偏倚に至るグリッチ汚染(glitch contamination)と、ターン・オン時間との間でトレードオフを行う。例えば、AC結合フロント・エンド回路では、変調グリッチによるジャイロ・バイアス誤差を防止するためにハイ・パス・フィルタの周波数を0.1Hzに設定すると、起動時間は10秒に制限される。ディジタル強度抑制及びディジタル減算フロント・エンド又はDC−結合フロント・エンドを用いると、グリッチによるバイアス誤差は最小に抑えられ、起動時間は回転速度フィードバック・サーボの帯域幅と同様の速さとなる(通常、数キロヘルツ程度)。また、ディジタル減算フロント・エンド回路のサーボ帯域幅は数キロ経ると程度とすることができるので、強度変動の間にフロント・エンド回路が飽和する可能性は著しく低下する。
【0025】
これより図2に移ると、光ファイバ・ジャイロスコープ200の一例は、光検出器出力の低周波成分を適当に維持しつつ光検出器の強度を抑制することができ、センサ光源202を含む。センサ光源202は、波長が安定した広帯域光を光学アセンブリに供給する。光学アセンブリは、適宜、集積光学部品チップ(IOC)224及び/又は光ファイバ検知リング232を含む。種々の実施形態では、光源202を光カプラ222(例えば、従来の2×2光カプラ)を通じて光学アセンブリ204に接続する。光カプラ222は、光学アセンブリからの出力光を光検出器206及び/又はサニャック・リング232内を伝搬する光を検出可能なその他のしかるべきセンサ回路にも供給する。検知した信号は、次に、電子回路207によって処理され、センサ出力信号260を発生し、更にジャイロ動作の間に用いられるあらゆるループ閉鎖信号及びその他の変調信号を発生する。従来の干渉FOGの動作及び構成要素については、米国特許第5,999,304号を含む種々の参考文献に記載されているが、ここに記載する特異な構造及び技法からも多くの変形を作成することができる。
【0026】
センサ光源202は、光を光学部品224及び232に供給できるのであれば、いずれのデバイス又はシステムでもよい。種々の実施形態では、センサ光源202は、光ファイバ、ガラス基板、あるいはしかるべき波長の光を発生するためにエルビウム又はその他の材料をドープしたその他の材料を含む。あるいは、光源202は、1つ以上の発光ダイオード又は超発光ダイオード、あるいはその他のいずれの光源を用いてもよい。
センサ200は、サニャック効果等に応じて2つの逆回転ビームに位相ずれを生じさせることができるのであれば、いずれの光学システム又は方式でも含むことができる。種々の実施形態例では、センサ200は、光コイル232に結合した集積光学部品チップ(IOC)224を含むことが適している。あるいは、IOC224を、スプリッタ、カプラ、偏光板、除偏板(depolarizer)等のような、1つ以上の単体構成部品で置き換えてもよい。
【0027】
IOC224は、通常、Y字状分岐点又はその他のスプリッタ225を含み、光源を2つの別個のビームに分割し、次いでコイル232から出射したビームを再結合することができる。また、IOC224は、1つ以上の位相変調器226も含む。位相変調器226は、電子回路207が発生する変調信号262に応答して、及び/又は適宜その他の要因に応答して、逆開演ビーム間に位相変化を誘発することができる。多くの実施形態では、変調器226は、スプリッタ225からコイル232に向かって延出する光経路の各脚部に設けられており、コイル232に入るとき及び出るときの双方で光を変調することができるようになっている。また、IOC224は、いずれの数の偏光板、除偏板、格子、フィルタ、及び/又はその他の機構でも含むこともできる。
【0028】
光コイル232は、通常、約500メートル以上の長さの光ファイバを巻回して、都合の良い直径のコイルにしたもので、直径は約5〜10cm程度のものが多い。上述したように、光源202からの光はコイル232内で逆伝搬して、センサ100の回転を示す位相変化を生ずる。実施形態の中には、除偏板228及び230によって、コイル232に入る光及び出る光を、適宜除偏する場合もあるが、異なるパラメータで動作する別のセンサ100はこのような機構を必要としなくてもよく、又は含まなくてもよい。
【0029】
動作において、次に、センサ光源202からの光を光学チップ224に供給する。光学チップ224は、この光を適当に2つの逆回転ビームに分割し、双方のビームを光コイル232の対向端に供給し、適宜入来光及び出立光を変調し、2つのビームを再度組み合わせて、今後の処理のための共通信号とする。光学チップ224から出力される光は、1つ以上の光検出器206に供給することができる(例えば、図示のように、カプラ222を通じて)。光検出器206は、光を検知し、それに応答してディジタル又はアナログ電気出力信号を生成することができる。種々の実施形態では、1つ以上のフォトダイオード204を用いて、光検出器206を実施している。
【0030】
ジャイロ・アセンブリの端部において生成した強度信号102は、いずれかのしかるべき流儀で、検知され電子回路207に供給される。図2に示す実施形態例では、光信号102は光検出器206によってしかるべく検知され、得られた光検出器信号217は、信号102の強度を電気的に示す。光検出器の出力信号217は通常従来のアナログ電気信号(例えば、信号102の強度に対応する電圧を有する)であるので、他のあらゆるアナログ信号のように増幅する(例えば、増幅器208及び/又は210によって)こと又はそれ以外の処理を行うことができる。従来の実施形態では、増幅した光信号出力をアナログ/ディジタル変換器(ADC)214によってサンプリングするか、又はいずれかのしかるべき流儀で量子化する。こうして得られたディジタル・ビットは、電子回路207が処理することができるディジタル形態で、光検出器の出力217を表し、したがって光出力102を表す。
【0031】
電子回路207は、ここに記載するようなデータを処理することができるあらゆる数の構成要素、ロジック、及び/又はシステムを代表する。種々の実施形態では、電子回路207は、あらゆる種類のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ、プログラマブル集積回路、プログラマブル・ゲート・アレイ等を含む。したがって、ここに記載する特定的なロジック及びその他の機構は、いずれの形式のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はその他のロジックでも実施することができる。例えば、種々の実施形態はディジタル処理回路を含み、それに付随するメモリがデータやここに記載するタスクを実行する命令を格納することができる。その他の実施形態では、種々の機能をハードウェア又はその他のプログラムしたロジック、あるいは適宜ハードウェア、ソフトウェア又はファームウェア・ロジックのあらゆる組み合わせでも実施する。
【0032】
電子回路207は、ここに記載する種々のディジタル信号処理タスクを実行するロジック・モジュールを任意数含む。これらのモジュールは、ここでは説明を容易にするために分解し別個に識別するが、実際には、ここに記載する種々のモジュールの機構及び機能は、任意の手法で組み合わせること、増補すること、省略すること、及び/又は別々に編成することも可能である。図2に示す実施形態例では、電子回路207は、グリッチ除去240、強度復調242、強度サーボ244、ディジタル信号再現248、速度復調250、強度抑制、及び/又は出力発生254、及び/又は適宜その他の機構を実行するためのハードウェア及び/又はソフトウェア・モジュールを含む。
【0033】
光出力102の量子化(ディジタル)表現は、電子回路106のポート、ピン、バッファ、又はその他の入力領域において、ADC214から相応に受信する。代替実施形態では、電子回路106には、ADC214の機能性を内蔵したマイクロコントローラ等を実装することにより、外部ADC214の必要性を低減する。通常、出力強度102をしかるべきレートでサンプリングし(通常、数キロヘルツ程度であるが、他の実施形態では、メガヘルツ以上のレートでサンプリングする場合もある)、更に処理するためにディジタル・サンプルをディジタル・バッファ又はメモリに格納する。一般に、「グリッチ」110(図1)に対応するサンプルは、単に、バイアス変調遷移後に発生する短期間サンプルを識別することによって、破棄することができる(モジュール240)。この単純なディジタル・グリッチ除去方法は、ディジタル・ロジックで実施することが比較的簡単であり、光検出器206及びADC214の間に設けるサンプル/ホールド回路よりも遥かに有効である。
【0034】
多くの実施形態では、受信したディジタル・サンプルを経時的に識別し、平均を取り、その他の操作を行って、図1におけるレベルa114及びレベルb116に対応する2つ以上の離散出力レベルを特定することができる。更に、これら処理したa及びb値の「和」及び「差」を更に用いて、データ及び/又はジャイロ出力値を適宜サーボすることもできる。図2の実施形態では、強度復調モジュール242は、蓄積又はその他の計算を行って、a及びb値の和に基づいて、平均又はその他の量243を決定することが好適である。一方、この蓄積値243は、サーボ・ロジック244に供給され、サーボ・ロジック244は制御245を生成し、これを用いてADC214上で光検出器の出力217を中心に合わせる。即ち、a及びb値の和を計算することによって、平均値を決定することができ、この平均値を用いて、光検出器出力217を適宜調節することができる。通常、光分解能を高め、フロント・エンド回路の飽和を招く可能性がある、式(2)における低周波成分を除去するために、検出器の出力217をADC214の最も敏感なところでサーボ制御する。図2に示すように、サーボ制御245をディジタル/アナログ変換器216に供給してアナログ信号を生成し、光増幅器212も共に用いて、光検出器出力217から適宜減算する。
【0035】
また、強度サーボ値245(及び/又はサーボ制御値245を決定するために用いられる蓄積量243)も用いて、モジュール248内において元の光検出器信号102をディジタル的に再現することもできる。種々の実施形態では、値245を乗算するか又はそれ以外の調節を行って、増幅器212及び210に設定するために(account for)利得係数246を適用するか、又はディジタル信号を伝えて、適宜、元の光信号102の表現を高精度で呈示する。モジュール248は、したがって、ADC214から受け取ったディジタル値241を、強度減算サーボ245が入力するディジタル・オフセット値245と加算するか又はそれ以外で組み合わせることにより、ディジタル出力102の元の値を再現する。その結果、復調モジュール250が処理するサンプルは、センサ200の光学構成要素からの実際の光出力102を相応に表すのであって、単に光検出器出力を調整した近似を表すのではない。速度復調器250は実際の強度値を処理するので、和の値252及び差の値251(それぞれ)を、図1において先に説明したレベル114及び116に関して決定することができる。
【0036】
次に、センサ200の出力信号260を発生するために、強度抑制モジュール254は単に差の値251を和の値252で除算するだけでよい。調整のために追加の計算、他の形式のノイズ除去等を行う場合もあるが、基本的な出力値は、先に呈示した式(1)に基づくことができ、これによって機械的振動の効果を抑制しつつジャイロ・センサ200の最大ダイナミック・レンジを復元することができる。更に、サーボ・モジュール244は、放射線に対して耐久性を改善したディジタル・ロジック等に実施することができるので、ジャイロ200の放射線事象に対する応答性は、先行技術のそれよりも向上している。
【0037】
以上の発明の詳細な説明では、少なくとも1つの実施形態例を呈示したが、多数の変形が存在することは認められよう。また、1つ以上の実施形態例は単なる例に過ぎず、本発明の範囲、適用可能性、あるいは構成を限定することは全く意図していないことも認められよう。逆に、前述の詳細な説明は、当業者に、発明の実施形態例を実施するために便利なロード・マップを提供する。したがって、添付した特許請求の範囲に明記した発明の範囲及びその合法的な均等物から逸脱することなく、実施形態例に記載した要素の機能及び構成には種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1A】電圧誘発位相ずれと光検出器の強度との間の関係を示す干渉図のグラフである。
【図1B】強度に損失がある状況における、電圧誘発位相ずれと光検出器の強度との間の関係を示す干渉図のグラフである。
【図2】ディジタル強度抑制の一形態を含む光ファイバ回転センサの一例のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ・ジャイロスコープ(200)であって、
光信号(102)を供給するように構成された光学部と、
前記光信号を光検出器出力信号(217)に変換するように構成された光検出器(206)と、
前記光検出器出力信号に基づいて、ジャイロ出力(260)を供給するように構成された電子回路部(207)であって、
前記光検出器出力信号を量子化して、前記光信号のディジタル表現を形成するように構成されたアナログ/ディジタル変換器(214)と、
前記光信号のディジタル表現(241)に基づいて強度調整値(245)を決定し、該強度調整値に基づいて前記光検出器出力信号の強度を調節し、調整済み光検出器出力信号(241)を形成する強度サーボ・ロジック(244)と、
前記光信号のディジタル表現を、前記調整済みの光検出器出力信号(241)及び強度調整値(245)の関数としてディジタル的に再現するように構成された信号再現ロジック(248)と、
前記光信号の再現されたディジタル表現に基づいて、前記ジャイロ出力を供給するように構成された出力ロジック(250、261)と、
からなる電子回路部(207)と
を備えていることを特徴とする光ファイバ・ジャイロスコープ。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ・ジャイロスコープにおいて、前記電子回路部は更に、前記ディジタル表現の少なくとも2つに基づいて、和(252)及び差(251)を計算するように構成されており、前記強度調整値は、前記少なくとも2つのディジタル表現の和に基づき、前記ジャイロ出力は、少なくとも部分的に、前記差の値の前記少なくとも2つのディジタル表現の和に対する比率に基づいて決定されることを特徴とする光ファイバ・ジャイロスコープ。
【請求項3】
光信号(102)を供給するように構成された光学部と、前記光信号を光検出器出力信号(217)に変換するように構成された光検出器(206)と、前記光検出器出力信号に基づいて、ジャイロ出力(260)を供給するように構成された電子回路部(207)とを有する光ファイバ・ジャイロスコープ(200)の動作方法であって、
前記光検出器出力信号を量子化して、前記光信号のディジタル化表現を形成するステップ(214)と、
前記光信号のディジタル表現(241)に基づいて強度調整値(245)を決定するステップと、
前記強度調整値に基づいて前記光検出器出力信号の強度を調節し、調整済み光検出器出力信号(241)を形成するステップ(244)と、
前記光信号のディジタル表現を、前記調整済みの光検出器出力信号(241)及び強度調整値(245)の関数としてディジタル的に再現するステップ(248)と、
前記光信号の再現したディジタル表現に基づいて、前記ジャイロ出力を供給するステップ(250)と、
からなることを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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