説明

光ファイバ分岐モジュール

【課題】柔軟に曲げることができるので、光ファイバケーブルを薄型でコンパクトに収納できる光ファイバ分岐モジュールを提供する。
【解決手段】光ファイバ分岐モジュール1は、多心光ファイバテープ心線20を保持する可撓性を有する基板10と、基板10とこの基板10に保持された多心光ファイバテープ心線20を被覆して保護するための保護チューブ11と、を備える。これにより、光ファイバ分岐モジュール1の基板10は柔軟に曲げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ分岐モジュールに関し、特に光伝送装置間を高密度で配線するために多心光ファイバテープ心線を単心光ファイバ心線に分岐する光ファイバ分岐モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバテープ心線を用いた光ファイバケーブルは、例えば光伝送装置間を高密度で配線するために、光伝送装置の送受信機の手前で多心光ファイバテープ心線を分岐して、各分岐された単心光ファイバ心線を送受信機に接続する必要がある。
【0003】
このような光ファイバ分岐モジュールは、多心光ファイバテープ心線の複数の単心光ファイバ心線を分岐する分岐部と、光ファイバテープ心線を被覆する被覆接合体と、分岐部を被覆する保護被覆体を有しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、この種の光ファイバ分岐モジュールとしては、高密度実装するために分岐部を硬い固定板に固定しているものもある。
【特許文献1】特開2006−267310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載されている光ファイバ分岐モジュールを用いた場合には、多心光ファイバテープ心線を用いた光ファイバケーブルは、例えば光伝送装置間を高密度で配線するために自由に曲げようとしても難しい。このため、光ファイバ分岐モジュールを固定するためには広いスペースが必要であり、敷設時には光ファイバケーブルをコンパクトに丸めて収納することができない。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、柔軟に曲げることができるので、光ファイバケーブルを薄型でコンパクトに収納できる光ファイバ分岐モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解消するために、本発明の光ファイバ分岐モジュールは、多心光ファイバテープ心線を単心光ファイバ心線に分岐する光ファイバ分岐モジュールであって、
前記多心光ファイバテープ心線を保持する可撓性を有する基板と、
前記基板と前記基板に保持された前記多心光ファイバテープ心線を被覆して保護するための保護チューブと、
を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の光ファイバ分岐モジュールでは、好ましくは各前記単心光ファイバ心線を通すことで前記単心光ファイバ心線を保護するための保護パイプを有し、前記保護パイプは前記基板に対して固定されていることを特徴とする。
本発明の光ファイバ分岐モジュールでは、好ましくは各前記単心光ファイバ心線は、前記保護パイプを平行に配列することで前記保護パイプの配列ピッチ毎に平行に分岐されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の光ファイバ分岐モジュールでは、好ましくは前記保護チューブは、熱収縮性チューブであり、前記保護チューブの第1端部は、前記多心光ファイバテープ心線の外周囲と前記基板の第1端部付近を封止し、前記保護チューブの第2端部は、前記各保護パイプの外周囲と前記基板の第2端部付近を封止していることを特徴とする。
【0008】
本発明の光ファイバ分岐モジュールでは、好ましくは前記多心光ファイバテープ心線は、前記保護チューブ内において、前記基板の搭載面に対して接着剤により固定されていることを特徴とする。
本発明の光ファイバ分岐モジュールでは、好ましくは各前記保護パイプは、前記保護チューブ内において、前記基板の搭載面に対して接着剤により固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟に曲げることができるので、光ファイバケーブルを薄型でコンパクトに収納できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の光ファイバ分岐モジュールの好ましい実施形態を示す平面図であり、図2は、図1に示す光ファイバ分岐モジュールを示す側面図である。
図1と図2に示す光ファイバ分岐モジュール1は、例えば光伝送装置間を高密度で配線するために、光伝送装置の送受信機の手前で多心光ファイバテープ心線を分岐して、各分岐された単心光ファイバ心線を送受信機に接続するのに用いられる。
【0011】
図1と図2に示す光ファイバ分岐モジュール1は、基板10と、熱収縮性を有する保護チューブ11と、複数本の保護パイプ12を有している。
【0012】
図1と図2に示すように、基板10は、一例として長方形形状を有する薄い板厚を有する基板であり、この基板10は可撓性を有し湾曲しやすい材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のようなプラスチックで形成されている。図2に示すこの基板10の厚みTは、0.05〜0.3mmの範囲であることが好ましい。特に好ましい厚みTとしては、0.1mmである。
【0013】
厚みTが0.05mmよりも薄いと、曲げた際に中央で折れ曲げが発生し易くなり、光ファイバの歪みが大きくなるので好ましくない。薄い板厚を用いる場合には、折れに強いしなる材質の選定が必要になる。
【0014】
また、厚みTが0.3mmよりも厚い場合には、剛性が強くなってしまうので、曲げた際に基板根元で光ファイバが屈曲してしまうので、使用する用途に合わせた剛性を選択する必要がある。
【0015】
図1と図2に示すように、基板10は、上面である搭載面13と、反対側の裏面14を有している。多心光ファイバテープ心線20の端部21が、搭載面13の基板10の第1端部10B側において接着剤15を用いてL方向に沿って固定されている。これに対して、複数の保護パイプ12の端部12Bが、搭載面13の基板10の第2端部10C側においてL方向に沿って平行になるように接着剤16により固定されている。
【0016】
多心光ファイバテープ心線20は、図示例では9本の単心光ファイバ心線30を被覆材31により被覆されることで平行に保持している。保護パイプ12は、円筒形のパイプであり、保護パイプ12の材質は特に限定されないが、例えばポリエチレン等のプラスチックパイプを採用できる。
【0017】
接着剤15はすぐに硬化することで、多心光ファイバテープ心線20の端部21を基板10の搭載面13に対して覆うようにして固定でき、固定作業性と引っ張り強度を向上している。接着剤15としては、例えばシリコーン接着剤を用いることができ、基板10の搭載面13に対して薄く塗ることもできる。
【0018】
接着剤16は、複数の保護パイプ12の端部12Bを基板10の搭載面13に対して仮固定するのに用いられる。テープ20側も同様に固定するのに用いられる。接着剤16は、例えば両面粘着テープを用いることができ、この接着剤16の厚みは例えば0.1mmである。接着剤19は、複数の保護パイプ12の端部12Bを覆うようにして固定する。この際、固定の作業性向上と引っ張り強度の向上が図れる。
【0019】
図1と図2に示すように、熱収縮性を有する保護チューブ11は、第1端部51と第2端部52を有している。保護チューブ11は、基板10の全体と、接着剤15,19と、多心光ファイバテープ心線20の端部21と、複数の保護パイプ12の端部12Bを完全に覆うことで保護している。
【0020】
そして、保護チューブ11の第1端部51は、多心光ファイバテープ心線20の外周囲と基板10の第1端部10B付近を絞るようにして封止し、保護チューブ11の第2端部10Cは、各保護パイプ12の外周囲と基板10の第2端部10C付近を絞るようにして封止している。
【0021】
これにより、基板10の全体と、接着剤15,19と、多心光ファイバテープ心線20の端部21と、複数の保護パイプ12の端部12Bは、外部から遮断でき、保護チューブ11は外部からの埃等の異物が侵入するのを確実に防止できる。しかも、基板10と保護チューブ11がL方向(長手方向又は光ファイバ固定方向)に沿って相対的に移動するのを確実に防止することができる。
図1に示すように、各単心光ファイバ心線30は、保護パイプ12を配列することで、ほぼ保護パイプ12の直径に対応する配列ピッチで相互に分岐されている。
【0022】
次に、上述した構造を有する光ファイバ分岐モジュール1の製造方法の例を説明する。
図1と図2に示す基板10を用意するとともに、多心光ファイバテープ心線20から被覆材31を除去することで、9本の単心光ファイバ心線30を露出させる。
【0023】
各単心光ファイバ心線30は、それぞれ保護パイプ12の端部12Bから挿入され、ほぼ保護パイプ12の配列ピッチごとに平行に分岐して配列される。
【0024】
多心光ファイバテープ心線20の端部21が、搭載面13の基板10の第1端部10B側において接着剤15を用いて固定される。9本の保護パイプ12の端部12Bが、搭載面13の基板10の第2端部10C側においてL方向に沿って平行になるように接着剤16と接着剤19は、複数の保護パイプ12の端部12Bを固定する。
【0025】
熱収縮性を有する保護チューブ11は、例えば予め多心光ファイバテープ心線20に通すことで準備されており、この保護チューブ11を基板10側に移動して基板10に対応する位置に位置決めする。この保護チューブ11のL方向の長さは、基板10の長さに比べて大きく設定されている。
【0026】
この保護チューブ11に熱を与えて収縮させることにより、保護チューブ11の第1端部51は、多心光ファイバテープ心線20の外周囲と基板10の第1端部10B付近を絞るようにして封止し、保護チューブ11の第2端部10Cは、各保護パイプ12の外周囲と基板10の第2端部10C付近を絞るようにして封止する。
【0027】
これにより、基板10の全体と、接着剤15,16と、多心光ファイバテープ心線20の端部21と、露出された単心光ファイバ心線30と、複数の保護パイプ12の端部12Bは、保護チューブ11により保護され、そして外部からの埃等の異物が侵入するのを確実に防止できる。しかも、保護チューブ11は、基板10と保護チューブ11が、L方向に沿って相対的に移動するのを確実に防止する。
【0028】
次に、図3〜図5を参照して、本発明の光ファイバ分岐モジュール1を横に立てて光ファイバケーブルの敷設例を説明する。
【0029】
図3に示す光ファイバケーブルの敷設例では、2つの光ファイバ分岐モジュール1が用いられていることで直径Rが60cmの円形状にコンパクトに収納することができる。各光ファイバ分岐モジュール1は、光伝送装置の送受信機70の手前で多心光ファイバテープ心線を分岐して、各分岐された単心光ファイバ心線と送受信機70と接続している。
【0030】
図4に示す光ファイバケーブルの敷設例では、図3に示す敷設例に対して、さらに円形状態を保持するガイド部材101が配置されている。
【0031】
図5に示す光ファイバケーブルの敷設例では、図4に示す敷設例に対して、さらに隣接する光ファイバ分岐モジュール1と別の光ファイバモジュール101を保持する分岐保持アダプタ103が配置されている。
【0032】
比較例として、図6は、従来の光ファイバケーブルの敷設例を示しおり、従来の光ファイバ分岐モジュール200は、曲げることができない構造であるので、幅Sが大きくなってしまい敷設スペースが大きくなってしまう。
【0033】
本発明の実施形態の光ファイバ分岐モジュール1の基板10は、可撓性を有し湾曲しやすい薄い基板であるので、図3ないし図5に示すように敷設時にコンパクトに収納することができ、高密度実装することができる。
【0034】
光ファイバ分岐モジュール1は、多心光ファイバテープ心線を保持する可撓性を有する基板と、基板と基板に保持された多心光ファイバテープ心線を被覆して保護するための保護チューブと、を備える。これにより、光ファイバ分岐モジュールの基板は柔軟に曲げることができるので、光ファイバケーブルを薄型でコンパクトに収納できる。
【0035】
本発明の光ファイバ分岐モジュールの実施形態では、各単心光ファイバ心線を通すことで単心光ファイバ心線を保護するための保護パイプを有し、保護パイプは基板に対して固定されている。これにより、光ファイバ分岐モジュールの基板は柔軟に曲げることができるので、光ファイバケーブルを薄型でコンパクトに収納できる。
【0036】
各単心光ファイバ心線は、保護パイプを平行に配列することで保護パイプの配列ピッチ毎に平行に分岐されている。これにより、各単心光ファイバ心線は、保護パイプに通すだけで一定の配列ピッチで、容易に分岐することができる。
【0037】
保護チューブは、熱収縮性チューブであり、保護チューブの第1端部は、多心光ファイバテープ心線の外周囲と基板の第1端部付近を封止し、保護チューブの第2端部は、各保護パイプの外周囲と基板の第2端部付近を封止している。これにより、保護チューブは、基板に搭載されている要素を確実に保護でき、基板と保護チューブとの相対的な位置ズレを防止できる。
【0038】
多心光ファイバテープ心線は、保護チューブ内において、基板の搭載面に対して接着剤により固定されている。これにより、多心光ファイバテープ心線は、保護チューブ内において、接着剤を用いるだけで簡単に固定できる。
【0039】
各保護パイプは、保護チューブ内において、基板の搭載面に対して接着剤により固定されている。これにより、各保護パイプは、保護チューブ内において、接着剤を用いるだけで簡単に固定できる。
なお、複数本の保護パイプあるいは多心光ファイバテープ心線は、敷設した場合に固定部分に対して、例えばプラスチック製の固定部材を用いて固定することができる。
【0040】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、基板の形状は、長方形形状に限らず、他の形状を採用することもできる。。
多心光ファイバテープ心線20が保持する単心光ファイバ心線30の本数は、9本に限らず2ないし8本、あるいは10本以上であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の光ファイバ分岐モジュールの好ましい実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示す光ファイバ分岐モジュールを示す側面図である。
【図3】光ファイバ分岐モジュールを適用した光ファイバケーブルの敷設例を示す図である。
【図4】光ファイバ分岐モジュール1を適用した光ファイバケーブルの敷設例を示す図である。
【図5】光ファイバ分岐モジュール1を適用した光ファイバケーブルの敷設例を示す図である。
【図6】比較例として従来の光ファイバケーブルの敷設例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 光ファイバ分岐モジュール
10 基板
10B 基板の第1端部
10C 基板の第2端部
11 熱収縮性を有する保護チューブ
12 保護パイプ
12B 保護パイプの端部
13 基板の搭載面
14 基板の裏面
15 接着剤
16 接着剤
19 接着剤
20 多心光ファイバテープ心線
21 多心光ファイバテープ心線の端部
30 単心光ファイバ心線
51 保護チューブの第1端部
52 保護チューブの第2端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多心光ファイバテープ心線を単心光ファイバ心線に分岐する光ファイバ分岐モジュールであって、
前記多心光ファイバテープ心線を保持する可撓性を有する基板と、
前記基板と前記基板に保持された前記多心光ファイバテープ心線を被覆して保護するための保護チューブと、
を備えることを特徴とする光ファイバ分岐モジュール。
【請求項2】
各前記単心光ファイバ心線を通すことで前記単心光ファイバ心線を保護するための保護パイプを有し、前記保護パイプは前記基板に対して固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ分岐モジュール。
【請求項3】
各前記単心光ファイバ心線は、前記保護パイプを平行に配列することで前記保護パイプの配列ピッチ毎に平行に分岐されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバ分岐モジュール。
【請求項4】
前記保護チューブは、熱収縮性チューブであり、前記保護チューブの第1端部は、前記多心光ファイバテープ心線の外周囲と前記基板の第1端部付近を封止し、前記保護チューブの第2端部は、前記各保護パイプの外周囲と前記基板の第2端部付近を封止していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の光ファイバ分岐モジュール。
【請求項5】
前記多心光ファイバテープ心線は、前記保護チューブ内において、前記基板の搭載面に対して接着剤により固定されていることを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ分岐モジュール。
【請求項6】
各前記保護パイプは、前記保護チューブ内において、前記基板の搭載面に対して接着剤により固定されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光ファイバ分岐モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate