説明

光ファイバ増幅器

【課題】光ファイバ増幅器において入力信号を損失させることなく、入力信号断を検出し、かつ、その結果を用いて励起光源の駆動電流を制御する手段を備えたような光ファイバ増幅器を提供する。
【解決手段】光増幅ファイバに励起光および信号光を合波してなる光ファイバ増幅器において、該光増幅ファイバの前段および後段のうち少なくとも片方おいて、信号光波長帯域を除く自然放出光(ASE光)を抽出する手段を有する光分岐器を具備したことを特徴とする光ファイバ増幅器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ増幅器に使用される入力信号パワーの検出手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ増幅器の出力や利得出力を制御するためには、入力パワーおよび出力パワーを検出するとともに、励起光源の電流を制御する必要がある。公知手段としては、出力パワーと入力パワーの比が一定になるように励起光源の駆動電流を制御する利得一定制御回路を使用するものがある(例えば特許文献1)。また、光ファイバ増幅器からの出力パワーが一定になるように励起光源の駆動電流を制御する出力一定回路を使用するものがある(例えば特許文献2)。出力一定制御回路を使用する場合、光ファイバ増幅器への入力信号光が断となった場合、出力パワーが減少するため、制御回路は励起光源の駆動電流を増大させる。不必要な駆動電流の増大は、励起光源の寿命を短くするとともに、復帰時にはQスイッチに類似した効果によって光部品の損傷を招く可能性がある。このため、出力パワーの制御を行う際には、無信号入力状態の検出を行い、励起光源の駆動電流を低下させる必要がある。無信号状態の検出手段としては、図4のように入力信号の一部を直接分岐させてフォトダイオード(PD)で検出し、信号の有無を判断する方法が知られている(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特許第2687861号公報
【特許文献2】特許第2605969号公報
【特許文献3】特許第3050237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の図4のような構成の場合、入力信号の一部を分岐して入力側PD8で受光しているため、入力信号にロスが生じ、その結果、光ファイバ増幅器の雑音指数を劣化させる。さらに、励起された増幅用ファイバ4からは、双方向に自然放出光(ASE光)が放出されているため、入力側の光検出器であるPD8および出力側の光検出器であるPD11へ混入する。特に、入力側PD8では、混入した自然放出光(ASE光)が入力信号パワーよりも大きい場合には、入力信号モニタが不可能となる。従って、増幅ファイバ前段で小信号入力を検出するためには、増幅用ファイバ4から入力側PD8のアイソレーションを十分にとる必要があり、構成が複雑になる。複雑な構成は、高価であるとともに損失の増加を伴うため、光ファイバ増幅器の雑音指数を劣化させてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、光増幅ファイバに励起光および信号光を合波してなる光ファイバ増幅器において、該光増幅ファイバの前段および後段のうち少なくとも片方おいて、信号光波長帯域を除く自然放出光(ASE光)を抽出する手段を有する光分岐器を具備したことを特徴とする光ファイバ増幅器である。
【0005】
また、上記光分岐器により抽出された信号波長帯域を除く自然放出光(ASE光)を光検出器によって検出し、該光検出器の出力によって信号光の入力断を検出することを特徴とする上記の光ファイバ増幅器である。
【0006】
また、上記光検出器の出力が所定の値に達した場合には、該光増幅ファイバへの励起光の供給を抑制または停止する制御機能を具備したことを特徴とする上記の光ファイバ増幅器である。
【0007】
また、該光分岐器において、信号光波長帯域を除く自然放出光を抽出する手段が、誘電体多層膜からなるところの帯域透過フィルタ、帯域反射フィルタ、短波長透過フィルタ、長波長透過フィルタのうちいずれか、または、複数のフィルタで構成されていることを特徴とする上記の光ファイバ増幅器である。
【0008】
また、該光分岐器を構成する誘電体多層膜フィルタが、光アイソレータと集積されてなることを特徴とする上記の光ファイバ増幅器である。
【0009】
また、該光分岐器を構成する誘電体多層膜フィルタが、信号光と励起光を合波または分波するための合分波器と集積されてなることを特徴とする上記の光ファイバ増幅器である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、光ファイバ増幅器において入力信号を損失させることなく、入力信号断を検出し、かつ、増幅用ファイバと第1の光検出装置との間のアイソレーションが不要となる入力光検出手段をもつような光ファイバ増幅器を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図2に、一般的なC−band増幅用ファイバの前段で得られた入力信号なし、ありの状態における出射スペクトルを示す。入力信号がある場合には、誘導放出によって信号光が増幅されるため、ASE光のレベルが低下する。一方、入力信号が無い場合には、供給された励起エネルギーが信号増幅に使われないため、大きなASE光が放出される。このように、入力信号の有無でASE光のパワーが異なるため、入力信号状態の判定を行うことができる。
【0012】
本発明では、入力信号を直接モニタせずに、信号波長以外のASE光を検出する手段を有し、その実施形態の1つを図1に示す。図1は励起光源19、増幅用ファイバ17、入力側タップフィルタ(光分岐器)15、出力側ビームスプリッタ22、入力側の光検出器であるPD18、出力側の光検出器であるPD23、制御回路20で構成される。ここで、入力側タップフィルタ15は、光分岐器の役割をする帯域透過フィルタ(BPF)であり、増幅用ファイバで発生した信号波長以外のASE光を入力側PD18へ出力する。ここで、入力側タップフィルタ15は、信号波長帯は損失なく透過させる特性を備えているため、光ファイバ増幅器の雑音特性を劣化させない。入力側PD18、出力側PD23は受光した光を電気に変換し、制御回路20へ出力する。制御回路は、利得一定制御または出力一定制御などの形式をとりうる。前記制御において、光ファイバ増幅器は出力を一定に保つために、出力側PD23による検出値が一定になるように、励起光源19の駆動電流を制御する。
【0013】
従来の構成(図4)では、入力信号の一部を入力側の光検出器であるPD8に直接取り込むため、信号光が損失し、その結果、光ファイバ増幅器の雑音特性を劣化させる。さらに、増幅用ファイバ4で発生したASEが入力側PD8へ混入するため、同ASE光よりも小さな信号光は検出不可となる。そのため、制御回路10は信号断を検出できず、励起光源9の駆動電流を増大させる。そのため、過剰に励起された増幅ファイバ4から、さらに大きなASE光が出力されるため、信号断が検出できないとともに、励起LD9の寿命を短くする。
【0014】
一方、本発明の実施例(図1)では、入力側PD18は増幅用ファイバ17の前段側に発生した信号波長帯域以外のASE光のみを検知する。入力側PD18の受光レベルがある閾値を超えると、制御回路20は入力信号断を検知して、励起光源の駆動電流を低下させる。この手段によって、信号と逆向きに発生したASEが存在する場合においても、入力信号断を検出することができる。
【0015】
本発明では、増幅用ファイバの前段における信号の損失が無いため、光ファイバ増幅器の雑音特性を改善できる。
【実施例1】
【0016】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。
図1において、励起光源9をポンプレーザ(波長:976nm、出力240mW)、増幅用ファイバ17をEr添加ファイバ(Er:6000ppm、コア径4μm、NA=0.20、ファイバ長5m)、光分岐器15を帯域透過フィルタBPF(入力信号波長(1528-1562nm)透過、その他の波長は反射)とする。光分岐器15は信号と逆向きに進行する光を入力側PD18へ導くように配置した。図3に、波長1550nm、パワー0dBmの信号光が増幅用ファイバに入力されたとき、および入力が無いときのPD18に入射する自然放出光(ASE光)パワーと励起電流の関係を示す。図3では、励起電流が50〜350mAにおいて、PD18に入射する自然放出光(ASE光)パワーは、入力信号無しの場合には-14.5dBm以上、入力信号ありの場合には-14.5dBm未満であった。すなわち、-14.5dBmをしきい値とすることで、入力信号のON/OFFを判定することができる。もしくは、図3に示す自然放出光(ASE光)パワーと励起電流の関係を制御回路20に記憶し、励起電流に応じて入力信号ON/OFFを判断するしきい値を可変させることも可能である。分波装置22をビームスプリッタ(1%反射)とし、信号波長帯の出力光の一部を出力側PD23へ導くように配置した。制御回路20は出力一定制御とし、入力PD18、出力PD23より得られた電流値を元に、励起光源19の駆動電流を制御するように設計した。制御回路20は、入力PD18で受けた光パワーが、先に最適化されたしきい値(-14.5dBm)より大きい場合、励起光源の駆動電流を減少もしくはOFFさせるように設計した。
【0017】
上記光ファイバ増幅器において、入力信号(0dBm)が光ファイバ増幅器に断続的に入射された場合を考える。励起光源の駆動電流250mAにおいて、入力側PDに入射する信号波長帯以外のASEパワーは-16.0dBmであった。入力信号断となったとき、出力側PDで検知した出射光パワーは15.3dBmから9.9dBmに減少した。ここで、制御回路20は光ファイバ増幅器の出力を一定に保つように、励起光源20の駆動電流を増加させ、その結果、信号と逆向きに発生するASE光が増大した。帯域反射フィルタ15によって分離された入力信号波長以外のASE光は入力PD18でモニタされているため、その検出値が定められたしきい値(-14.5dBm)より大きくなると、制御回路20が入力信号断を検出し、励起電流が減少した。
【0018】
このとき、本発明では、光分岐器15において信号光の損失が無いため、ビームスプリッタ(信号波長帯、5%分岐)を用いる従来の方法に比べて、雑音指数が約0.2dB改善された。
【0019】
本発明により、入力信号断によるASE光の大小をモニタすることにより、入力信号断を検出することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、光通信分野における通信システムはもちろん、評価・測定など光伝送の応用分野にも利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による入力信号モニタ方法の実施例の1つを示す図である。
【図2】入力信号あり、なしの状態において、増幅ファイバから信号の進行方向と逆向きに発生したASEスペクトルを示す図である。
【図3】本発明におけるPD18に入射する自然放出光(ASE光)パワーと励起電流の関係を示す図である。
【図4】従来の技術による入力信号モニタ方法を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1,7 光分波装置
2,6 アイソレータ
3,5 光合分波装置
4 増幅用ファイバ
8,11 光検出器(PD)
9, 励起光源
12 信号入力ポート
13 信号出力ポート
14 励起光除去ポート
15 光分岐器(帯域透過フィルタ)
16,21 WDMカプラ
17 増幅用ファイバ
18,23 光検出器(PD)
19 励起光源
20 制御回路
22 光分波装置
24,26 アイソレータ
25 信号入力ポート
27 信号出力ポート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増幅ファイバに励起光および信号光を合波してなる光ファイバ増幅器において、該光増幅ファイバの前段および後段のうち少なくとも片方において、信号光波長帯域を除く自然放出光(ASE光)を抽出する手段を有する光分岐器を具備したことを特徴とする光ファイバ増幅器。
【請求項2】
該光分岐器により抽出された信号波長帯域を除く自然放出光(ASE光)を光検出器によって検出し、該光検出器の出力によって信号光の入力断を検出することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ増幅器。
【請求項3】
該光検出器の出力が所定の値に達した場合には、該光増幅ファイバへの励起光の供給を抑制または停止する制御機能を具備したことを特徴とする請求項1及び2記載の光ファイバ増幅器。
【請求項4】
該光分岐器において、信号光波長帯域を除く自然放出光を抽出する手段が、誘電体多層膜からなるところの帯域透過フィルタ、帯域反射フィルタ、短波長透過フィルタ、長波長透過フィルタのうちいずれか、または、複数のフィルタで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3記載の光ファイバ増幅器。
【請求項5】
該光分岐器を構成する誘電体多層膜フィルタが、光アイソレータと集積されてなることを特徴とする請求項1乃至4記載の光ファイバ増幅器。
【請求項6】
該光分岐器を構成する誘電体多層膜フィルタが、信号光と励起光を合波または分波するための合分波器と集積されてなることを特徴とする請求項1乃至5記載の光ファイバ増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−269855(P2006−269855A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87593(P2005−87593)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】