説明

光ファイバ巻取装置及び光ファイバ巻取方法

【課題】簡単な構成で光ファイバの巻取張力を追従性良く高精度に制御する光ファイバ巻取装置及び巻取方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ巻取装置1は、光ファイバ母材を線引した光ファイバfを固定ローラ12及び可動ローラ13によって巻取張力を制御してボビン16に巻取る。この光ファイバ巻取装置1は、可動ローラ13を移動可能に支持するボールねじ2と、該ボールねじ2を回動させるサーボモータ3と、を備えている。そして、サーボモータ3によって固定ローラ12に対する可動ローラ13の相対位置を制御して光ファイバfの巻取張力を張力測定部4で測定して、その測定結果に応じて張力制御部5により巻取張力を、巻取初期に大きく、その後漸減するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの巻取り張力を制御する光ファイバ巻取装置及び巻取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバ巻取装置としては、図4に示した光ファイバ巻取装置50が知られている。この光ファイバ巻取装置50は、光ファイバ母材を線引して光ファイバfを製造した後、巻き替える際の巻替装置などに設けられている。光ファイバfは、ガイドプーリ11、固定ローラ12、可動ローラ13、ローラ14および巻取ガイドプーリ15を順に経て、ボビン16の外周に巻き取られる(特許文献1参照)。
【0003】
ダンサーロールの可動ローラ13は、これに載せるウェイト(荷重F)の調整が可能である。これにより、光ファイバfに付与される張力が調整され、ボビン16の胴の外周に光ファイバfを巻くときの巻き張力が調整される。
巻取ガイドプーリ15は、トラバース固定部17に対して往復トラバース可能なトラバース可動部18により支持されており、この往復トラバースにより、ボビン16の胴の長手方向全長に亘って光ファイバfを巻き取らせる。
【0004】
第1センサ21は、往復トラバースの際に巻取ガイドプーリ15が一端側に達したことを検出し、第2センサ22は、往復トラバースの際に巻取ガイドプーリ15が他端側に達したことを検出する。
制御部23は、第1センサ21および第2センサ22の検出結果に基づいて、ボビン16に光ファイバfの何層目が巻き取られているかを認識して、可動ローラ13に付与する荷重Fを制御する。これにより、ボビン16に光ファイバfを巻くときの巻き張力が調整される。
【0005】
すなわち、ボビン16の外周に光ファイバfの第1層を巻くときの巻き張力が、第2層を巻くときの巻き張力より大きくなるように、第1層および第2層を巻くときの荷重Fが制御される。これにより、光ファイバfの第1層の緩みの発生が抑制され、曲げによる損失増加が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−54982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の光ファイバの巻取方法では、ダンサーロールの可動ローラ13に付与するウェイトを制御する構成であったため、応答性が十分ではなく、また巻取り張力を稼働中に変化させるなどの細かな制御を行うことが難しかった。
アクチュエータ等による荷重負荷手段を用いて、荷重を変動させることにより張力を制御するとしても、これらの手段では、ガイドローラを備えた張力測定装置により光ファイバに掛かる張力を測定することを必要としており、巻取り時の張力変動を大きくしてしまうことになる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な構成で光ファイバの巻取張力を追従性良く高精度に制御することができる光ファイバ巻取装置及び巻取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することができる本発明に係る光ファイバ巻取装置は、光ファイバ母材を線引した光ファイバをダンサーローラによって巻取り張力を制御してボビンに巻取る光ファイバ巻取装置であって、
前記ダンサーローラ構成する可動ローラを移動可能に支持するボールネジと、前記ボールネジを回動させるサーボモータと、前記サーボモータによって前記ダンサーロールを構成する固定ロールに対する前記可動ロールの相対位置を制御して光ファイバの巻取張力を制御する張力制御部とを備え、
前記張力制御部は、巻取張力を測定する張力測定手段を備え、測定される巻取張力を、巻取初期に大きく、その後漸減するように制御することを特徴としている。
【0010】
また、前記ダンサーローラの固定ローラと可動ローラとは水平方向に配置され、前記ボールねじによって、前記可動ローラが前記固定ローラに対して水平方向に相対的に移動することが望ましい。
また、前記張力制御部は、前記ボビンに巻取られる光ファイバが何層目であるかを検出する検出手段を備えていることが望ましい。
【0011】
また、上記課題を解決することができる本発明に係る光ファイバ巻取方法は、光ファイバ母材を線引した光ファイバを、固定ローラと可動ローラとが水平方向に配置されることで構成されるダンサーローラを用いてボビンに巻取る光ファイバ巻取方法であって、
前記ボビンに巻取られる光ファイバが何層目であるかを検出し、前記光ファイバの巻取張力の測定結果に応じて、サーボモータによって前記可動ローラを前記固定ローラに対して水平方向に相対的に移動することで、該光ファイバの巻取張力を巻取初期に大きく、その後漸減するように制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光ファイバの巻取装置及び光ファイバの巻取方法によれば、可動ローラを移動可能に支持するボールネジをサーボモータによって制御することで、固定ロールに対する可動ロールの相対位置を細かく制御できる。これにより、光ファイバの巻取張力を追従性良く制御できるので、高精度な制御を行うことができる。
更に、ダンサーローラ系の固定ローラと可動ローラとを水平方向に配置して、ボールねじによって可動ローラを固定ローラに対して水平方向に相対的に移動させる。これにより、ボールねじ及びサーボモータの重量が可動ローラに加わらないようにすることができ、より高精度な制御を行うことができる。
また、巻取張力を測定する張力測定手段をサーボモータと一体的に形成することによって、光ファイバ巻取装置をより簡単な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の光ファイバ巻取装置の第1の実施形態の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の光ファイバ巻取装置の第2の実施形態の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の光ファイバ巻取装置の第3の実施形態の構成を示す概略図である。
【図4】従来の光ファイバ巻取装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1〜3を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0015】
本発明の光ファイバ巻取装置の第1の実施形態を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、光ファイバ巻取装置1は、光ファイバ母材を線引して光ファイバfを製造した後、巻き替える際の巻替装置などに設けられるもので、ガイドプーリ11、ダンサーロールの固定ローラ12、可動ローラ13、ローラ14、巻取ガイドプーリ15、ボビン16、トラバース固定部17、トラバース可動部18、第1センサ21、第2センサ22および制御部23とを備えている。
【0016】
本発明の光ファイバ巻取装置1は、従来の光ファイバ巻取装置と比較して、可動ローラの可動方法が相違している。
すなわち、可動ローラ13は、固定ローラ12との距離を制御可能なように、ボールねじ2を介してサーボモータ3に接続されている。また、サーボモータ3は、光ファイバfの巻取張力を測定する張力測定手段である張力測定部4の測定結果に応じて、張力制御部5によって一定若しくは可変の張力として高精度に制御される。張力制御部5は、キャプスタン19で検知された巻量に応じてサーボモータ3を制御することで、巻取張力を調整している。
【0017】
光ファイバfの巻取張力を測定する張力測定部4は、可動ローラ13に設けられている。
なお、張力測定手段は、必ずしも可動ローラ13に設ける必要はなく、巻取張力は光ファイバfに一様に加わっているので、どの部分で測定しても良い。また、張力測定手段をサーボモータ3と別に設けるのではなく、サーボモータ3と一体に形成して、トルクを測定することで張力測定を行うようにしても良い。
【0018】
光ファイバfは、ガイドプーリ11、固定ローラ12、可動ローラ13、ローラ14および巻取ガイドプーリ15を順に経て、ボビン16の胴の外周に巻き取られる。
固定ローラ12と可動ローラ13の距離は、可動ローラに接続されたボールねじ2をサーボモータ3を駆動させることによって制御される。これにより、張力測定部4の測定結果に応じて張力制御部5によってサーボモータ3を制御して、ボビン16に光ファイバfを巻くときの巻取張力が調整される。なお、ボビン16の外周に側圧緩衝部材が設けられ、この側圧緩衝部材の周囲に光ファイバfが巻かれるようにしても良い。
【0019】
巻取ガイドプーリ15は、トラバース固定部17に対して往復トラバース可能なトラバース可動部18により支持されており、この往復トラバースによって光ファイバfは、ボビン16の胴の長手方向全長に亘って巻き取られる。
一方の検出手段である第1センサ21は、往復トラバースの際に巻取ガイドプーリ15が一端側に達したことを検出し、他方の検出手段である第2センサ22は、往復トラバースの際に巻取ガイドプーリ15が他端側に達したことを検出する。
【0020】
本実施形態の光ファイバ巻取装置1では、サーボモータ3は、光ファイバの巻取り張力を測定する張力測定部4の測定結果に応じて、張力制御部5によって巻取張力を巻取初期に大きく、その後漸減するように、予め設定されたプログラムによって制御される。
【0021】
次に、本発明の光ファイバ巻取装置の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。なお、上記実施形態1と同じ構成には、同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、光ファイバ巻取装置10は、上記第1の実施形態の光ファイバ巻取装置1と比較して、可動ローラ13の制御方法が相違している。
すなわち、制御部23による第1センサ21および第2センサ22による検出結果に基づいて、ボビン16に光ファイバfの何層目が巻き取られているかを認識する。そして、その認識結果に基づいて、制御部23内の張力制御部5によって巻取張力を巻取初期に大きく、その後漸減するようにサーボモータ3を細かく制御している。
【0023】
次に、本発明の光ファイバ巻取装置の第3の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、上記実施形態1と同じ構成には、同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0024】
図3に示すように、光ファイバ巻取装置20は、固定ローラ12と可動ローラ13とを水平方向に配置し、ボールねじ2を介してサーボモータ3も水平方向に配置している。
このような構成にすることで、ボールねじ2及びサーボモータ3の重量が可動ローラ13に加わらないので、固定ローラ12に対する可動ローラ13の相対位置を細かく制御でき、光ファイバfの巻取張力を追従性良く制御できるので、高精度な制御を行うことができる。
【0025】
本実施形態におけるサーボモータ3の制御は、上記第2の実施形態と同様に、制御部23による第1センサ21および第2センサ22の検出結果に基づいて、ボビン16に光ファイバfの何層目が巻き取られているのかを認識して、制御部23内の張力制御部5によって巻取張力を巻取初期に大きく、その後漸減するようサーボモータ3を細かく制御している。
なお、上記第1の実施形態のように、光ファイバfの巻取張力を測定する張力測定部4を可動ローラ13に設け、張力測定部4の測定結果に応じてサーボモータ3を制御して、ボビン16に光ファイバfを巻くときの巻取張力を制御するようにしても良い。
【0026】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0027】
1、10、20 光ファイバ巻取装置
2 ボールねじ
3 サーボモータ
4 張力測定部(張力測定手段)
5 張力制御部
11 ガイドプーリ
12 ダンサーローラ(固定ローラ)
13 ダンサーローラ(可動ローラ)
14 ローラ
15 巻取ガイドプーリ
16 ボビン
17 トラバース固定部
18 トラバース可動部
21 第1センサ(検出手段)
22 第2センサ(検出手段)
23 制御部(張力制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ母材を線引した光ファイバをダンサーローラによって巻取り張力を制御してボビンに巻取る光ファイバ巻取装置であって、
前記ダンサーローラを構成する可動ローラを移動可能に支持するボールネジと、
前記ボールネジを回動させるサーボモータと、
前記サーボモータによって前記ダンサーロールを構成する固定ロールに対する前記可動ロールの相対位置を制御して光ファイバの巻取張力を制御する張力制御部とを備え、
前記張力制御部は、巻取張力を測定する張力測定手段を備え、測定される巻取張力を、巻取初期に大きく、その後漸減するように制御することを特徴とする光ファイバ巻取装置。
【請求項2】
前記ダンサーローラの固定ローラと可動ローラとは水平方向に配置され、前記ボールねじによって、前記可動ローラが前記固定ローラに対して水平方向に相対的に移動することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ巻取装置。
【請求項3】
前記張力制御部は、前記ボビンに巻取られる光ファイバが何層目であるかを検出する検出手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ巻取装置。
【請求項4】
光ファイバ母材を線引した光ファイバを、固定ローラと可動ローラとが水平方向に配置されることで構成されるダンサーローラを用いてボビンに巻取る光ファイバ巻取方法であって、
前記ボビンに巻取られる光ファイバが何層目であるかを検出し、前記光ファイバの巻取張力の測定結果に応じて、サーボモータによって前記可動ローラを前記固定ローラに対して水平方向に相対的に移動することで、該光ファイバの巻取張力を巻取初期に大きく、その後漸減するように制御することを特徴とする光ファイバ巻取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−235332(P2010−235332A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82390(P2009−82390)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】