説明

光フィルタの製造方法

【課題】 発生するリップルの位置を制御することが可能な光フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 光ファイバグレーティング素子1A,1Bの製造工程それぞれは、位相マスク30の格子面が光ファイバ7に対向するように位相マスク30を光ファイバ7の側方に配置させる位相マスク配置工程と、光ファイバ7の長手方向に張力Tを印加する張力印加工程と、光源10から出射された出射光Sを位相マスク30に照射し、照射された出射光Sを位相マスク30により回折させ、回折された出射光Sの干渉による干渉縞を光ファイバ7上に形成する干渉縞形成工程と、干渉縞形成工程後に、張力印加工程において光ファイバ7に印加された張力を解放する張力解放工程と、を含み、光ファイバグレーティング素子1A,1Bそれぞれには、張力印加工程において、互いに異なる張力が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムは、信号光を光ファイバ伝送路に伝搬させることで、大容量の情報を高速に送受信する。海底ケーブル等に使用されるこの光伝送システムでは低コスト化の要求により、通信帯域の広帯域化、ひいては伝送容量の拡大につながる利得等化器等の光フィルタにおける利得が平坦な波長帯域の幅を広げる技術及び中継器間隔の延長化の技術の開発が進められている。中継器間隔を広げるには、光フィルタを構成する光ファイバレグーティング素子が滑らかな透過波形スペクトルを有することが求められる。しかし、光ファイバグレーティング素子における透過波形スペクトルには、従来から、リップルが発生しており、このリップルを抑制するために様々な方法が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、光感受性物質のゲルマニウムが添加されたコア及びクラッドに位相格子等を介してエキシマレーザからの紫外線を照射し、光ファイバの長手方向に沿って紫外光が照射されたコア及びクラッドの部分の屈折率を上昇させ、複数の高屈折率部が周期的に配列されたグレーティング部を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−202434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光ファイバグレーティングの製造方法では、製造されたグレーティング部においてリップルが再現性よく現れる。それは、位相格子、光ファイバ、レーザコンディション等により発生するリップルは、同一条件であれば同じ位置に発生することに基づくものである。そのため、製造されたグレーティング部を多連結した光フィルタにおいても、同じ波長で再現性のあるリップルが累積されて隣接波長間で損失差が大きくなり、利得等化が困難になる。また、これを用いた光伝送システムにおいても、多波長信号光の伝送品質が悪化してしまう。ここで、このリップルとは、透過スペクトルの移動平均を透過スペクトルから差し引いたものをいう。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、透過損失波形のリップルを低減することができる光フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明に係る光フィルタの製造方法は、光導波路上に第1光ファイバグレーティング素子及び第2光ファイバグレーティング素子を含む光フィルタの製造方法であって、第1光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、第2光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、第1光ファイバグレーティング素子と第2光ファイバグレーティング素子とを縦続接続して光フィルタを製造する工程と、を備え、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子の製造工程それぞれは、位相マスクの格子面が光ファイバに対向するように位相マスクを光ファイバの側方に配置させる位相マスク配置工程と、光ファイバの長手方向に張力を印加する張力印加工程と、光源から出射された出射光を位相マスクに照射し、照射された出射光を位相マスクにより回折させ、回折された出射光の干渉による干渉縞を光ファイバ上に形成する干渉縞形成工程と、干渉縞形成工程後に、張力印加工程において光ファイバに印加された張力を解放する張力解放工程と、を含み、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子それぞれには、張力印加工程において、互いに異なる張力が印加されることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る光フィルタの製造方法では、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子の製造工程それぞれが、位相マスクの格子面が光ファイバに対向するように位相マスクを光ファイバの側方に配置させる位相マスク配置工程と、光ファイバの長手方向に張力を印加する張力印加工程と、光源から出射された出射光を位相マスクに照射し、照射された出射光を位相マスクにより回折させ、回折された出射光の干渉による干渉縞を光ファイバ上に形成する干渉縞形成工程と、干渉縞形成工程後に、張力印加工程において光ファイバに印加された張力を解放する張力解放工程と、を含み、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子それぞれには、張力印加工程において、互いに異なる張力が印加される。
【0009】
そのため、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子において、印加される張力の大きさに依存するリップルの発生波長位置を互いに異なるようにすることができる。また、本発明に係る光フィルタの製造方法は、リップルの発生波長位置が互いに異なる第1光ファイバグレーティング素子と第2光ファイバグレーティング素子とを縦続接続する工程を備える。従って、本発明に係る光フィルタの製造方法によれば、それを構成する光ファイバグレーティング素子のリップルが累積されることを抑制し、これに伴い、光フィルタ全体の透過損失波形のリップルを低減することができる。
【0010】
また、位相マスクがチャープマスクであり、干渉縞形成工程において、光ファイバグレーティング素子の透過損失波形が目標波形になるように印加される張力の大きさに応じて、チャープマスク中の出射光が照射される部分を変更することが好適である。これにより、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子において、リップルの発生波長位置を変更しつつ、張力の印加により透過損失波形が波長シフトされることが回避できる。
【0011】
また、本発明に係る光フィルタの製造方法は、光導波路上に第1光ファイバグレーティング素子及び第2光ファイバグレーティング素子を含む光フィルタの製造方法であって、第1光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、第2光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、第1光ファイバグレーティング素子と第2光ファイバグレーティング素子とを縦続接続して光フィルタを製造する工程と、を備え、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子の製造工程それぞれは、位相マスクの格子面が光ファイバに対向するように位相マスクを光ファイバの側方に配置させる位相マスク配置工程と、 光源から出射された出射光を位相マスクに照射し、照射された出射光を位相マスクにより回折させ、回折された出射光の干渉による干渉縞を光ファイバ上に形成する干渉縞形成工程と、を備え、干渉縞形成工程において、位相マスク又は光ファイバを光ファイバの長手方向と直交する方向に揺動させることを特徴とする。
【0012】
リップルを発生させる原因の一つとして、位相マスクの欠陥や異物の付着が考えられる。これは、同じ位相マスクを用いて光ファイバグレーティング素子を製造すると、リップルは同一の波長において発生することに基づく。これらの本発明に係る光フィルタ製造方法では、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子の製造工程における干渉縞形成工程において、位相マスク又は光ファイバを、光ファイバの長手方向に垂直な方向に揺動させる。これにより、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子の製造において、光ファイバのコア部やクラッド部上に形成される干渉縞の強度パターンを変更させることができ、特定の波長にリップルを発生させる位相マスク上の欠陥部分がグレーティング形成に与える影響を低減させることができる。そのため、第1及び第2の光ファイバグレーティング素子におけるリップルを減少させることができる。また、本発明に係る光フィルタの製造方法は、リップルが減少された第1光ファイバグレーティング素子と第2光ファイバグレーティング素子とを縦続接続する工程を備える。従って、本発明に係る光フィルタの製造方法によれば、光フィルタ全体の透過損失波形のリップルを低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光フィルタの製造方法によれば、光フィルタ全体の透過損失波形のリップルを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る光フィルタの説明図である
【図2】第1実施形態の光フィルタの製造工程を説明するための模式図である。
【図3】図2において点線で囲まれている部分Aを詳しく表す図である。
【図4】第1実施形態の光フィルタの製造工程を説明するための模式図である。
【図5】第1実施形態の光フィルタの製造方法の効果を説明するための図である。
【図6】第1実施形態の光フィルタの製造方法の効果を説明するための図である。
【図7】第1実施形態の光フィルタの製造方法の効果を説明するための図である。
【図8】第1実施形態の光フィルタの製造方法の効果を説明するための図である。
【図9】第2実施形態の光フィルタの製造工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光フィルタの製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る光フィルタ1の説明図である。図1に示されているように、光フィルタ1は、信号光路(光導波路)上に縦続接続された光ファイバグレーティング素子(第1光ファイバグレーティング素子)1Aと光ファイバグレーティング素子(第2光ファイバグレーティング素子)1Bを含む。光ファイバグレーティング素子1A,1Bは、光ファイバ7を用いて製造されたものである。光ファイバ7は、長手方向に沿って延びるコア部3と、コア部3内に光を閉じ込めて伝播させるためにコア部3の周囲に長手方向に延びるクラッド部5とを有する。光ファイバ7は、石英ガラスを主成分とするものであって、コア部3にGeOが添加されたものである。GeOが添加された石英ガラスからなるコア部3は、紫外線に対して感光性を有しており、紫外光の照射により屈折率が上昇する。また、それぞれのコア部3には、長手方向に沿って格子間隔(周期)Λが徐々に拡大されているチャープグレーティング、すなわち屈折率変調部9が形成されている。
【0017】
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態に係る光フィルタ1の製造方法について説明する。図2は光フィルタ1の製造工程を説明するための模式図であり、図3は、図2において点線で囲まれている部分Aを詳しく表す図である。光フィルタ1は、以下の工程を経て製造される。
【0018】
(第1光ファイバグレーティング素子の製造工程)
この工程では、光ファイバグレーティング素子1Aを製造する。まず、光ファイバ7を用意する。次に、位相マスク30の格子面(位相格子が形成されている面)が光ファイバ7に対向するように位相マスク30を光ファイバ7の側方に配置する(位相マスク配置工程)。本実施形態の位相マスク30は、石英ガラス平板の一方に溝状凹凸からなる位相格子がその間隔が位置によって異なるように形成された格子面を有するチャープマスクである。
【0019】
次に、コア部3に対して、光ファイバ7の長手方向に50gの張力Tを印加する(張力印加工程)。この干渉縞形成工程においては、光ファイバグレーティング素子1Aの透過損失波形が目標波形になるように印加される張力Tの大きさに応じて位相マスク30への出射光Sの照射位置が変更される(図4を参照)。
【0020】
次に、光源10から出力された出射光Sを、ミラー20を介して位相マスク30に照射し、位相マスク30の格子面により照射された出射光Sを+1次回折光Sλ+及び−1次回折光Sλ−に回折させ(図3を参照)、これら+1次回折光Sλ+及び−1次回折光Sλ−の干渉による干渉縞を光ファイバ7のコア部3上に形成する(干渉縞形成工程)。これにより、光ファイバ7では、この干渉縞の空間的な強度分布に応じてコア部3に屈折率変調(グレーティング)9が生じる。なお、ミラー20が光ファイバ7の長手方向に沿って移動することによって、一定範囲に亘って屈折率変調が形成される。
【0021】
その後、張力印加工程においてコア部3に印加された張力Tを解放する(張力解放工程)。このような工程を経て、光ファイバグレーティング素子1Aが完成される。
【0022】
(第2光ファイバグレーティング素子の製造工程)
この工程では、光ファイバグレーティング素子1Bを製造する。光ファイバグレーティング素子1Bの製造には、上記の光ファイバグレーティング素子1Aの製造方法と同様の工程を経て製造される。但し、張力印加工程において、光ファイバグレーティング素子1Aの製造において印加された張力Tと異なる90gの張力Tが印加され、これに伴い、干渉縞形成工程においては90gの張力Tに応じる位相マスク30の部分に出射光Sが照射される。
【0023】
(縦続接続する工程)
この工程においては、光ファイバグレーティング素子1Aと光ファイバグレーティング素子1Bとを縦続接続する。これにより、図1に示されている光フィルタ1が完成される。
【0024】
図5〜図8を用いて、本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法の効果についてより詳細に説明する。図5は、張力印加工程においてコア部3に50g及び90gの張力Tがそれぞれ印加された光ファイバグレーティング素子1A,1Bにおける、印加張力の解放前の各透過損失波形TL(B)T=50g及びTL(B)T=90gを示す図である。図5に示すように、張力解放前においては、リップルの発生波長位置は約1555nmであり、印加された張力Tの大きさに関係なく同一であることが分かる。
【0025】
図6は、図5の光ファイバグレーティング素子1A,1Bそれぞれにおいて、印加した張力Tを解放した後の透過損失波形TL(A)T=50g及びTL(A)T=90gを示す図である。図6に示すように、光ファイバグレーティング素子1A,1Bに印加された張力Tを解放すると、それぞれの透過損失波形TL(A)T=50g及びTL(A)T=90gは予め決定された目標波形となり一致することになるが、リップルの発生波長位置が印加された張力Tの大きさに応じて短波長側にシフトすることが分かる。具体的に説明すると、90gの張力Tを印加した光ファイバグレーティング素子1Bに発生するリップルの発生波長位置が、50gの張力Tを印加した光ファイバグレーティング素子1Aと対比して、短波長側へのシフトが顕著となっている。なお、印加された張力Tの大きさ(T)と張力解放後の波長シフトΔλとは、具体的には以下(式1)の関係にある。
Δλ=0.014×T ・・・(1)
【0026】
図7は、本実施形態に係る光ファイバグレーティング素子1A,1Bの製造方法と同様の方法を用い、張力印加工程において、50g、70g、80g及び90gの張力Tを印加して製造した光ファイバグレーティング素子の張力解放後におけるリップルの発生波長位置とリップルの大きさ[dBp−p]との関係を示す図であり、各光ファイバグレーティング素子それぞれにおける3本の平均値を示している。図中においてTLT=50g,TLT=70g,TLT=80g及びTLT=90gはそれぞれ50g、70g、80g及び90gの張力T製造した光ファイバグレーティング素子の透過損失波形である。図7に示すように、印加される張力Tの大きさが大きくなるにつれ、張力Tの解放後におけるリップルの発生波長位置が短波長側にシフトしている傾向にあることが分かる。
【0027】
また、図8は、本実施形態の製造方法を用いて製造された光フィルタ1と、本実施形態の製造方法ではなく一般的な方法で製造された光フィルタ50とそれぞれにおける連結数と最大累積リップルの大きさ[dB]との関係を示す図である。図8に示すように、張力Tの印加有無に関係なく、程度の差はあるものの連結される光フィルタ1,50それぞれ中の縦続接続される光ファイバグレーティング素子の数が増加すると両者共にリップルが減衰することが分かる。また、光フィルタ1が、光フィルタ50と比較して、減衰の程度が大きくなっていることが分かる。従って、本実施形態の製造方法で製造された光フィルタ1を光伝送システムに用いると、光フィルタ1全体の透過損失波形のリップルを低減することができる。また、これに伴い、利得が平坦な波長帯域の幅を広げることができ、光伝送帯域の広帯域化及び伝送容量の拡大を実現することができる。
【0028】
本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法では、光ファイバグレーティング素子1A,1Bの製造工程それぞれが、位相マスク30の格子面が光ファイバ7に対向するように位相マスク30を光ファイバ7の側方に配置させる位相マスク配置工程と、コア部3に対して光ファイバ7の長手方向に張力Tを印加する張力印加工程と、光源10から出射された出射光Sを位相マスク30に照射し、照射された出射光Sを位相マスク30より回折させ、回折された出射光Sの干渉による干渉縞をコア部3上に形成する干渉縞形成工程と、干渉縞形成工程後に、張力印加工程においてコア部3に印加された張力Tを解放する張力解放工程と、を含み、光ファイバグレーティング素子1A,1Bそれぞれには、張力印加工程において、互いに異なる張力T(50g及び90g)が印加される。
【0029】
そのため、光ファイバグレーティング素子1A,1Bにおいて、印加される張力Tの大きさに依存するリップルの発生波長位置を互いに異なるものとすることができる。すなわち、本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法によれば、印加される張力Tにより、光ファイバグレーティング素子1A,1Bにおいて生じるリップルの発生波長位置を制御することができる。具体的に説明すると、張力Tを印加しない場合における透過損失波形と比べて、印加した張力Tに対して、張力Tに0.014を乗じて得られた分だけ、リップルの発生波長位置を短波長側にシフトさせることができる。
【0030】
また、光ファイバグレーティング素子1A,1Bの製造工程における干渉縞形成工程においては、光ファイバグレーティング素子1A,1Bの透過損失波形が目標波形になるように印加される張力Tの大きさに応じて位相マスク30の中、出射光が照射される部分を変更する。これにより、光ファイバグレーティング素子1A,1Bにおいて、リップルの発生波長位置を変更しつつ、張力Tの印加により透過損失波形が波長シフトされることが回避できる。
【0031】
また、本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法は、リップルの発生波長位置が互いに異なる光ファイバグレーティング素子1A及び光ファイバグレーティング素子1Bを縦続接続する工程を備える。従って、本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法によれば、それを構成する光ファイバグレーティング素子1A,1Bの透過損失波形が波長シフトされることを回避しつつ光ファイバグレーティング素子1A,1B間のリップルの累積を抑制し、これに伴い、光フィルタ1全体の透過損失波形のリップルを低減することができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る光フィルタ1の製造方法について説明する。図9は、第2実施形態に係る光フィルタ1の製造方法を説明するための説明図である。
【0033】
第2実施形態に係る光フィルタ1の製造方法は、光フィルタ1を構成する光ファイバグレーティング素子1A,1Bの製造工程において、張力印加工程を備えていない点、これに伴い位相マスク30の出射光Sの照射位置は変更されない点、干渉縞形成工程において光ファイバ7を光ファイバ7の長手方向と直交する方向に揺動させる点において、第1実施形態の光フィルタ1の製造方法と相違する。その他の工程については第1実施形態の方法と同様であるので、説明を省略する。
【0034】
リップルを発生させる原因の一つとして、位相マスク30の欠陥P(図9参照)が考えられる。これは、同じ位相マスクを用いて光ファイバグレーティング素子を製造すると、リップルは同一の波長において発生することに基づく。本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法では、光ファイバグレーティング素子1A,1Bの製造工程における干渉縞形成工程において、位相マスク30又は光ファイバ7を光ファイバ7の長手方向と直交する方向に揺動させる。
【0035】
これにより、光ファイバグレーティング素子1A,1Bの製造において、コア部3上に形成される干渉縞を揺動させることができ、リップルを発生させる位相マスク30上の欠陥部分Pのグレーティング形成への影響を低減させ、リップルを減少させることができる。また、本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法は、リップルが減少された光ファイバグレーティング素子1Aと光ファイバグレーティング素子1Bとを縦続接続する工程を備える。従って、本実施形態に係る光フィルタ1の製造方法によれば、光フィルタ1全体の透過損失波形のリップルを低減することができる。
【0036】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、上記実施形態は本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、第2の実施形態の製造方法においては光ファイバ7が揺動されているが、位相マスク30を揺動させてもよく、或は光ファイバ7及び位相マスク30を共に揺動させてもよい。また、本実施形態に係る光フィルタ1は、2つの光ファイバグレーティング素子1A,1Bからなるが、3つ以上の光ファイバグレーティング素子からなるものであってもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、GeOが添加されている部分がコア部3であり、故にグレーティング9がコア部3に形成される。しかし、GeOが添加されている部分がクラッド部5であって、グレーティング9がクラッド部5に形成されても良い。また、コア部3及びクラッド部5の何れにもGeOが添加され、コア部3及びクラッド部5それぞれにグレーティング9が形成されても良い。
【符号の説明】
【0038】
1…光フィルタ、1A,1B…光ファイバグレーティング素子、3…コア部、5…クラッド部、7…光ファイバ、9…屈折率変調部、30…位相マスク、T…張力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路上に第1光ファイバグレーティング素子及び第2光ファイバグレーティング素子を含む光フィルタの製造方法であって、
前記第1光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、
前記第2光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、
前記第1光ファイバグレーティング素子と前記第2光ファイバグレーティング素子とを縦続接続して前記光フィルタを製造する工程と、
を備え、
前記第1及び第2の光ファイバグレーティング素子の製造工程それぞれは、
位相マスクの格子面が光ファイバに対向するように前記位相マスクを前記光ファイバの側方に配置させる位相マスク配置工程と、
前記光ファイバの長手方向に張力を印加する張力印加工程と、
光源から出射された出射光を前記位相マスクに照射し、前記照射された前記出射光を前記位相マスクにより回折させ、回折された前記出射光の干渉による干渉縞を前記光ファイバ上に形成する干渉縞形成工程と、
干渉縞形成工程後に、前記張力印加工程において前記光ファイバに印加された張力を解放する張力解放工程と、
を含み、
前記第1及び第2の光ファイバグレーティング素子それぞれには、前記張力印加工程において、互いに異なる張力が印加されることを特徴とする光フィルタの製造方法。
【請求項2】
前記位相マスクがチャープマスクであり、
前記干渉縞形成工程において、前記光ファイバグレーティング素子の透過損失波形が目標波形になるように印加される前記張力の大きさに応じて、前記チャープマスク中の前記出射光が照射される部分を変更することを特徴とする請求項1に記載の光フィルタの製造方法。
【請求項3】
光導波路上に第1光ファイバグレーティング素子及び第2光ファイバグレーティング素子を含む光フィルタの製造方法であって、
前記第1光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、
前記第2光ファイバグレーティング素子を製造する工程と、
前記第1光ファイバグレーティング素子と前記第2光ファイバグレーティング素子とを縦続接続して前記光フィルタを製造する工程と、
を備え、
前記第1及び第2の光ファイバグレーティング素子の製造工程それぞれは、
位相マスクの格子面が光ファイバに対向するように前記位相マスクを前記光ファイバの側方に配置させる位相マスク配置工程と、
光源から出射された出射光を前記位相マスクに照射し、前記照射された前記出射光を前記位相マスクにより回折させ、前記回折された前記出射光の干渉による干渉縞を前記光ファイバ上に形成する干渉縞形成工程と、
を備え、
前記干渉縞形成工程において、前記位相マスク又は前記光ファイバを前記光ファイバの長手方向と直交する方向に揺動させることを特徴とする光フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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