説明

光モジュールのロック機構

【課題】 誤接触が起きてもロック解除され難く、かつ、簡単な操作で光モジュールの挿脱が行えるようにする。
【解決手段】 前方向端部に、通信装置に形成されたロック溝と係合するロック爪16cが設けられると共に、後方向端部に、案内部16dが設けられ、かつ、案内部16dとロック爪16cとの間の位置に揺動ピン22が装着されたロック部材16と、前方向端部に、案内部16dと係合するロック解除爪14bが設けられると共に、後方向端部に、リング状の指係止部14cが設けられて、バネ20により前方方向に付勢されたロックレバー14と、光モジュール2の本体をなすベース体10に固定されると共に、リング状の取手部12cが設けられたハンドル12と、を備え、取手部12cは、指係止部14cより適宜大きいリング寸法に形成されて、当該指係止部14cを保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールのロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信装置においては、小型化及び高密度化の要求されている。光通信装置には、発光素子や受光素子を含む光トランシーバからなる光モジュールが、脱着可能に設けられている場合がある。従って、脱着機構を含めた光モジュールを小型化することが、通信装置に対する小型化及び高密度化の要求を実現する1つの方法である。
【0003】
このとき、通信中に光モジュールが外れたりすると、通信が途絶え、また装置の故障原因となる。そこで、誤接触等により光モジュールが不用意に外れたりするのを防止するロック機構が提案されている。
【0004】
例えば、特開2004−170594号公報には、光モジュールが挿入される通信装置側の挿着口に係止孔を設け、また光モジュールにロック部材を設けると共に、係止孔に係止しているロック部を係止孔から外すようにロック部材を動かすレバーを設けた光モジュールのロック機構が開示されている。そして、レバーを引くと、ロック部が揺動して係止孔から外れることによりロックが解除される。また、ロックが解除された状態から更にレバーを引くと、光モジュールが取外される。従って、レバーを引く動作を行わなければロック状態が解除されないので、不用意に光モジュールが外れる事態が抑制できる。
【0005】
また、特開2008−225134号公報には、光トランシーバの挿脱方向にスライド
するレセプタクルに取付けられたグリップと、光トランシーバがレールに挿入されたときにレールに形成された係合孔に端部が係合するラッチ部材と、端部が係合孔と係合する方向にラッチ部材を付勢する弾性体と、グリップのスライド操作と連動してシーソ運動し、ラッチ部材を弾性体からの付勢力に抗して回動させて上記係合を解除するレバーとを備えた光トランシーバが開示されている。従って、グリップを操作する動作を行わなければロック状態が解除されないので、不用意に光モジュールが外れる事態が抑制できる。
【0006】
さらに、特開2010−101944号公報には、ケースを収容するケージの係止孔に係止可能な係止突起を持つ揺動可能なロック部材と、ケースの抜き取り方向と平行にスライドするレバーと、レバーを所定の位置に付勢する付勢部材とを備えた光モジュールのロック機構が開示されている。
【0007】
これにより、レバーを引くことによりロックが解除され、その状態で更にレバーを引くと光モジュールを引き抜くことができ、不用意に光モジュールが外れる事態が抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−170594号公報
【特許文献2】特開2008−225134号公報
【特許文献3】特開2010−101944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特開2004−170594号公報及び特開2010−101944号公報にかかる構成では、ロック解除手段が剥きだし状態であるため、誤接触等によりレバーを引っかけて、引いてしまう場合があった。
【0010】
この点、特開2008−225134号公報にかかる構成では、誤接触等によりレバーを引っかけるといった不都合はおき難い反面、グリップは長尺体の光モジュールにおいて横方向に突設されているので、グリップ操作と引き抜き操作とは別々な操作となり、光モジュールの取り外し操作が面倒になる問題があった。特に、高密度に光モジュール等が搭載される場合には、グリップ操作に必要な空間を確保することが困難である。
【0011】
そこで、本発明の主目的は、誤接触が起きてもロック解除され難く、かつ、簡単な操作で光モジュールの挿脱が行える光モジュールのロック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、光モジュールのロック機構は、前方向端部に、通信装置に形成されたロック溝と係合するロック爪が設けられると共に、後方向端部に、案内部が設けられ、かつ、案内部とロック爪との間の位置に揺動ピンが装着されたロック部材と、前方向端部に、案内部と係合するロック解除爪が設けられると共に、後方向端部に、リング状の指係止部が設けられて、バネにより前方方向に付勢されたロックレバーと、光モジュールの本体をなすベース体に固定されると共に、リング状の取手部が設けられたハンドルと、を備え、取手部は、指係止部より適宜大きいリング寸法に形成されて、当該指係止部を保護することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に依れば、取手部を指係止部より適宜大きい寸法に形成して、当該指係止部を保護するので、誤接触が起きてもロック解除され難く、かつ、簡単な操作で光モジュールの挿脱が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる光モジュールの上面斜視図である。
【図2】光モジュールの上面斜視図である。
【図3】光モジュールの組み立て手順を示す分解斜視図である。
【図4】光モジュールの組み立て手順を示す図で、ベース体のバネ収納部にバネを挿入した図である。
【図5】光モジュールの組み立て手順を示す図で、ベース体にハンドル及びロックレバーを取り付けた図である。
【図6】光モジュールの組み立て手順を示す図で、ベース体にロック部材を取り付けた図である。
【図7】光モジュールの組み立て手順を示す図で、ベース体にカバーを取り付けた図である。
【図8】光モジュールのロック及びロック解除を説明する側面図で、(a)は光モジュールを挿入する際の状態を示す図、(b)は通信装置にロックされた状態を示す図、(c)は光モジュールを通信装置から引き抜く際の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を説明する。図1は、光モジュール2の上面斜視図であり、図2はその下面斜視図である。光モジュール2は、光トランシーバが内蔵されたベース体10を備え、このベース体10にハンドル12、ロックレバー14、ロック部材16、カバー18等が装着されている。なお、図1及び図2においては、光ファイバー等のケーブルコネクタ21が装着されている。
【0016】
図3は、このような光モジュール2の組み立て手順を示す分解斜視図である。以下の説明において、前方向、後方向、上下方向、左右方向の用語を用いる。これらの用語は、図1〜図3により定義される。なお、前方向は、挿入方向又は先端方向と記載する場合があり、後方向は引抜方向と記載する場合がある。図1〜図3においては、光モジュールが挿抜される通信装置を図示していないが、この通信装置は光モジュールの前方向(挿入方向)に位置する。
【0017】
ベース体10は、概略直方体の外観を持ち、その前方向の端部には通信装置と光モジュールとの電気的接続を行うための端子板10aが設けられ(図1参照)、後方向の端部にはケーブルコネクタ21が装着されるコネクタ10bが設けられている(図3参照)。
【0018】
また、ベース体10の上方向の面には、バネ20を収納するバネ収納部10cが形成され、左右方向からベース体10を貫通するベース体側のピン穴10dが形成されている。このピン穴10dには揺動ピン22が挿入される。
【0019】
ハンドル12は、通信装置に対して光モジュール2を挿脱する際に摘まれるレバーであり、リング状の取手部12a、スライド部12b、抜止部12c、キー12dを備えている。なお、本明細書において、リング状と記載する場合には、例えば、C字形状のように一部が欠けた形状が含まれる。取手部12aの後方向の端縁領域には抜止部12cが形成され、前方向の端部領域にはスライド部12bが形成されている。取手部12aがリング状に形成されているのは、後述するようにユーザが指をリングの内側に挿入することにより、光モジュールのロック解除及び引抜きが行えるようにするためである。スライド部12bは、凹溝に形成されて、ロックレバー14が前後運動する際のガイド溝として機能する。また、スライド部12bの前方向には、概略直方体のキー12dが左右方向に突設されている。
【0020】
ロックレバー14は、本体部14a、本体部14aの前方向端部に設けられた案内部14b、後方向に設けられた指係止部14c、バネ止部14dを備える。また、本体部14aは、スライダー14e、ロック保持部14gを含んでいる。
【0021】
案内部14bは、本体部14aから左右方向に突設された概略三角柱体である。そして、鋭角をなす案内部14bの一方の面が本体部14aの面(ロックレバー14の移動面)に平行で、他方の面が下方に傾斜している。この傾斜した面を案内面14fと記載する。バネ止部14dは、本体部14aの下面に形成され、かつ、本体部14aの面と略直交している。
【0022】
ロック保持部14gは案内部14bより所定量後方位置に形成されたテーパ面である。
【0023】
ロック部材16は、本体部16a、側板16b、ロック爪16c、ロック解除爪16d、案内当接部16e、揺動ピン穴16fを備える。
【0024】
ロック部材16の本体部16aの左右の側縁に側板16bが設けられている。揺動ピン穴16fは、ロック爪16cとロック解除爪16dとの中間位置の側板16bを貫通することにより形成されている。
【0025】
ロック爪16cは、側板16bの前方向の端部領域に形成されて、迎面16g及びロック面16hを備える。迎面16gは下方向に向かって後方向側に傾斜した面である。一方、ロック面16hは本体部16aの面と略直交する面である。
【0026】
ロック解除爪16dは、側板16bの後方向の端部領域に形成されて、本体部16aの面と鋭角をなすスライド面16jを持つ。即ち、スライド面16jは、ロックレバー14の案内面14fと対面する面である。
【0027】
カバー18は、本体部18a、側板18b、ベース体10にカバー18を固定するためのビス板18c、キー嵌合穴18dを備えて、ビス23によりベース体10に固定する。
【0028】
なお、上述したロックレバー14、ロック部材16等の各部材は樹脂成形又は板金により形成することが可能である。しかし、ロック部材16におけるロック爪16cに対して摩耗や損傷が危惧される場合には、板金により形成することが好ましい。板金は、各部材の小型化に適し、かつ、小型化等した際に発生する強度不足の抑制が行える観点から好ましい。
【0029】
次に、上述した光モジュール2の組み立て手順を説明する。図4〜図7は、この組み立て手順を示す図である。
【0030】
先ず、ベース体10のバネ収納部10cにバネ20を挿入する(図4参照)。その後、ハンドル12のスライド部12bにロックレバー14のスライダー14eを挿入しながら、これらをベース体10に取り付ける(図5参照)。このとき、ロックレバー14のバネ止部14dでバネ20を後方向に圧縮しながら取り付ける。
【0031】
ハンドル12とロックレバー14とを取り付けると、ロックレバー14の外側にハンドル12が存在するようになる。そして、ロック解除を行う際にロックレバー14が移動する方向には、抜止部12cが位置する。従って、ユーザが不用意にロックレバー14に接触しようとしてもロックレバー14はハンドル12により保護されるので、不用意に光モジュール2が取り外される事態が防止できる。
【0032】
次に、ロック部材16を取り付ける(図6参照)。ロック部材16を取り付ける際には、ロック解除爪16dがロックレバー14の案内部14bを包み込むように差し込む。このとき、バネ20の一端がロックレバー14のバネ止部14dに当接して、ロックレバー14を前方向に付勢しているので、ロックレバー14はバネ収納部10cから前方向に飛び出すようになる。そこで、組み立て時には、ロックレバー14を押さえながら、ロック部材16を組み込む。ロック部材16を組み込んだ後、揺動ピン22を挿入して、ロック部材16をベース体10に揺動自在に支持する。
【0033】
ロック部材16を組み立てた後、カバー18でロックレバー14を抑えながらベース体10にビス23により固定する(図7参照)。なお、カバー18を取り付ける際には、キー嵌合穴18dにキー23を挿入する。これにより、ハンドル12はカバー18を介してベース体10に固定される。
【0034】
このようにして組み立てられた光モジュール2を通信装置に装着し、また通信装置から引き抜く際の動作を説明する。図8(a)は光モジュールを挿入する際の光モジュール2の側面図、図8(b)は通信装置にロックされた光モジュール2の側面図、図8(c)は光モジュール2を通信装置から引き抜く際の側面図である。なお、図8(a)〜図8(c)においては、動作が容易に解るように、ベース体10等は適宜省略している。
【0035】
光モジュール2を通信装置に装着する場合には、ユーザは光モジュール2を通信装置に設けられているスロットに差し込む。このとき、人差し指をリング状の指係止部14cに挿入して、人差し指と親指とでハンドル12の抜止部12cとロックレバー14の指係止部14cとを摘む。ハンドル12とロックレバー14とを挟むことにより、ロックレバー14はバネ20の力に抗して後方向に移動する。そして、抜止部12cに指係止部14cが当接して、移動が停止する。
【0036】
ロックレバー14の後方向に移動すると、ロックレバー14の案内部14bがロック部材16のロック解除爪16dに当接する。そして、更にロックレバー14を後方移動させると、案内部14bはロック解除爪16dのスライド面16jに沿って案内される。スライド面16jは後退するロックレバー14の案内面14fに対してテーパをなすので、ロック部材16は揺動ピン22を揺動軸として、図8(a)において反時計回りの方向に傾く。従って、前方向に設けられているロック爪16cは上方向に移動して、ロックされる通信装置のロック溝24から離れる(図8(a)参照)。
【0037】
この状態で、ユーザが指を離すと、バネ20の復元力でロックレバー14が前方向に移動し、ロック爪16cがロック溝24に係合して光モジュール2はロックされる(図8(b)参照)。
【0038】
また、バネ20によりロックレバー14が前方方向に移動すると、ロック保持部14gがロック部材16の本体部16aに当接する。図8(b)の拡大図において点線Kは、本体部16aの下面を示し、この下面の端縁にロック保持部14gが当接している。従って、ロック部材16は揺動することができなくなり、ロック状態が維持される。また、ロック保持部14gはテーパ面をなすので、ロック保持部14gは滑らか、かつ、確実に本体部16aの下面端縁に当接するようになり、ロック状態の保持に対する信頼性が向上する。
【0039】
このロック状態を解除して光モジュール2を引き抜くときは、光モジュール2を装着するときと同様に、人差し指と親指とで、抜止部12cと指係止部14cとを摘んで、ロック爪16cを上方向に移動させる(図8(c)参照)。
【0040】
以上説明したように、ロックレバー14はハンドル12により保護されるので、不用意に光モジュール2が取り外される事態が防止できき、かつ、ロックレバー14を後方に移動させるだけでロック解除ができるので、光モジュールの挿脱が容易に行えるようになる。
【符号の説明】
【0041】
2 光モジュール
10 ベース体
10a 端子板
10b コネクタ
10c バネ収納部
10d ピン穴
12 ハンドル
12a 取手部
12b スライド部
12c 抜止部
12d キー
14 ロックレバー
14a 本体部
14b 案内部
14c 指係止部
14d バネ止部
14e スライダー
14f 案内面
14g ロック保持部
16 ロック部材
16a 本体部
16b 側板
16c ロック爪
16d ロック解除爪
16e 案内当接部
16f 揺動ピン穴
16g 迎面
16h ロック面
16j スライド面
18 カバー
18a 本体部
18b 側板
18c ビス板
18d キー嵌合穴
20 バネ
22 揺動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置に装着される光モジュールを係止するための光モジュールのロック機構であって、
前方向端部に、前記通信装置に形成されたロック溝と係合するロック爪が設けられると共に、後方向端部に、案内部が設けられ、かつ、前記案内部と前記ロック爪との間の位置に揺動ピンが装着されたロック部材と、
前方向端部に、前記案内部と係合するロック解除爪が設けられると共に、後方向端部に、リング状の指係止部が設けられて、バネにより前方方向に付勢されたロックレバーと、
前記光モジュールの本体をなすベース体に固定されると共に、リング状の取手部が設けられたハンドルと、を備え、
前記取手部は、前記指係止部より適宜大きいリング寸法に形成されて、当該指係止部を保護することを特徴とする光モジュールのロック機構。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールのロック機構であって、
前記案内部が、前記ロックレバーの先端領域から左右方向に突設する概略三角柱体であり、かつ、鋭角をなす前記柱体の一方の面が前記ロックレバーの移動面に平行で、他方の面が下方に傾斜した案内面を備え、
前記ロック解除爪が、前記案内面と対面するとスライド面を備えて、
前記ロックレバーの後方向の移動に伴い、前記スライド面が前記案内面に案内されて、前記ロック部材が前記揺動ピンを揺動軸として揺動して、前記ロック爪を前記ロック溝から待避させることを特徴とする光モジュールのロック機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光モジュールのロック機構であって、
前記ロックレバーが、前記案内部より所定量後方位置にロック保持部を備えて、前記ロックレバーが前記バネの力により前方向に移動した際に、前記ロック保持部が前記ロック部材の後端縁に当接して、当該ロック部材の揺動を規制することを特徴とする光モジュールのロック機構。
【請求項4】
請求項3に記載の光モジュールのロック機構であって、
前記ロック保持部が、テーパ面であることを特徴とする光モジュールのロック機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光モジュールのロック機構であって、
前記ロック部材は、板金加工により形成されていることを特徴とする光モジュールのロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−194451(P2012−194451A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59499(P2011−59499)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】