説明

光モジュールの過挿入防止構造

【課題】光モジュールを強い力で押し込んだ場合であっても、光モジュールの過挿入を防止でき、基板に実装された電子部品の破壊を防止することが可能な光モジュールの過挿入防止構造を提供する。
【解決手段】ケージ3を、光モジュール4を挿入する挿入口6と対向する後面が開放された筒状に形成し、ケージ3の両側に沿って配置されると共に、その一端部が前面パネル8に固定される2つの横枠5aと、ケージ3の後方にて2つの横枠5aの他端部同士を接続する後枠5bとを有する過挿入防止部材5を設け、後枠5bに、ケージ3の開放された後面からケージ3内に突出すると共に、光モジュール4をケージ3内に収容した収容位置にて光モジュール4の先端4dに当接し、光モジュール4の挿入を収容位置で停止させる当接部5eを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器の基板上に固定されたケージに光モジュールを挿入して、光モジュールをケージ内に収容する際に、光モジュールの過挿入を防止するための光モジュールの過挿入防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、光トランシーバなどの光モジュール41は、通信機器の基板42上に固定されたケージ43に光モジュール41を挿入し、光モジュール41をケージ43内に収容することで、通信機器に実装される(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0003】
光モジュール41は、図示していないが、その挿入側の先端部に開口を有しており、この開口から回路基板が露出されるようになっている。開口から露出された回路基板の端部には、接続端子が整列して形成され、カードエッジコネクタが形成されている。
【0004】
光モジュール41をケージ43に挿入すると、光モジュール41のカードエッジコネクタが基板42に実装されたレセプタクル44に挿入され、光モジュール41の回路基板と通信機器の基板42とが電気的に接続される。
【0005】
ケージ43は、薄い金属板を折り曲げ加工することにより形成される。図4の例では、ケージ43は、基板42に固定される下側ケージ43aと、下側ケージ43aの上部を覆う上側ケージ43bの2分割構成となっており、下側ケージ43aと上側ケージ43bとを一体とすると、1面が開放された箱状の形状となるようになっている。この開口部が、光モジュール41を挿入する挿入口45となる。下側ケージ43aには、下側ケージ43aの下方に延びる複数の脚部46が形成されており、この脚部46を基板42に形成された孔47に挿入しはんだ付けすることで、下側ケージ43aが基板42に固定される。
【0006】
光モジュール41をケージ43内に収容した収容位置では、光モジュール41の先端とケージ43の後面(挿入口45と対向する面)43cとの間に隙間が形成されるようになっており、この隙間には、板バネなどの弾性部材が設けられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−57128号公報
【特許文献2】特開2004−356025号公報
【特許文献3】特開2004−140810号公報
【特許文献4】特開2005−317540号公報
【特許文献5】特開2008−77923号公報
【特許文献6】特開2007−242653号公報
【特許文献7】特開2006−113455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような構造では、光モジュール41をケージ43に挿入する際に、強い力で光モジュール41を押し込むと、基板42に実装されたレセプタクル44が破壊され、さらには、ケージ43の後面43cが押し倒され、ケージ43の後方に実装された電子部品も破壊されてしまうおそれがある。ケージ43は、薄い金属板を折り曲げ加工して形成されるため、光モジュール41を強い力で押し込むと、容易に破壊されてしまう。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光モジュールを強い力で押し込んだ場合であっても、光モジュールの過挿入を防止でき、レセプタクルなどの基板に実装された電子部品の破壊を防止することが可能な光モジュールの過挿入防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、通信機器の基板上に固定されたケージに光モジュールを挿入して、前記光モジュールを前記ケージ内に収容する際に、前記光モジュールの過挿入を防止するための光モジュールの過挿入防止構造であって、前記ケージは、前記光モジュールを挿入する挿入口と対向する後面が開放され筒状に形成されると共に、前記挿入口を前記通信機器の前面パネルに形成された貫通孔に位置させて配置され、前記ケージの両側に沿って配置されると共に、その一端部が前記前面パネルに固定される2つの横枠と、前記ケージの後方にて前記2つの横枠の他端部同士を接続する後枠とを有する過挿入防止部材を設け、前記過挿入防止部材の前記後枠に、前記ケージの開放された後面から前記ケージ内に突出するように形成され、前記光モジュールを前記ケージ内に収容した収容位置にて前記光モジュールの先端に当接し、前記光モジュールの挿入を前記収容位置で停止させる当接部を形成した光モジュールの過挿入防止構造である。
【0011】
前記過挿入防止部材は、金属板を折り曲げ加工することにより形成されてもよい。
【0012】
前記過挿入防止部材の前記横枠の一端部にフランジ部を形成し、該フランジ部を前記前面パネルの裏面にネジ止めすることにより、前記横枠の一端部を前記前面パネルに固定するようにしてもよい。
【0013】
前記ケージは、前記光モジュールを挿入する前記挿入口を複数有し、複数の前記光モジュールを収容するように形成され、前記過挿入防止部材の前記後枠には、複数の前記光モジュールに対応した複数の前記当接部が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光モジュールを強い力で押し込んだ場合であっても、光モジュールの過挿入を防止でき、基板に実装された電子部品の破壊を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光モジュールの過挿入防止構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)はその1B−1B線断面図、(c)は光モジュールを収容したときの1C−1C線断面図である。
【図2】図1の光モジュールの過挿入防止構造に用いる過挿入防止部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は正面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る光モジュールの過挿入防止構造の平面図である。
【図4】従来の光モジュールをケージに収容する構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る光モジュールの過挿入防止構造を示す図であり、(a)は平面図、(b)はその1B−1B線断面図、(c)は光モジュールを収容したときの1C−1C線断面図である。
【0018】
図1(a)〜(c)に示すように、光モジュールの過挿入防止構造1は、通信機器の基板2上に固定されたケージ3の周囲に、光モジュール4の過挿入を防止するための過挿入防止部材5を設けてなる。
【0019】
ケージ3は、光モジュール4を挿入する挿入口6と対向する後面が開放され、断面矩形状の筒状に形成される。つまり、ケージ3は、図4で示した従来用いられているケージ43の後面43cを除去したものである。以下、後面を開放した開口部を後方開口部7と呼称する。
【0020】
ケージ3には、ケージ3の下方に延びる複数の脚部(図示せず)が形成されており、この脚部を基板2に形成された孔(図示せず)に挿入しはんだ付けすることで、ケージ3が基板2に固定される。ケージ3としては、上下で2分割構成となっているものを用いてもよいし、一体構成のものを用いてもよい。ケージ3は、ステンレスなどからなる薄い金属板を折り曲げ加工することにより形成される。
【0021】
ケージ3は、挿入口6を通信機器の前面パネル8に形成された貫通孔9に位置させて配置される。本実施の形態では、ケージ3の先端部(図示左側の部分)を貫通孔9に挿入し、前面パネル8の表面からケージ3の先端部が突出するようにした。なお、前面パネル8は、通信機器の筐体(シャーシ)の一部を構成するものである。ケージ3の高さ(図1(b)の上下方向の長さ)は、例えば10mm程度であり、ケージ3の幅(図1(a)の上下方向の長さ)は、例えば14mm程度であり、ケージ3の長さ(図1(a)の左右方向の長さ)は、例えば50mm程度である。また、前面パネル8の裏面からケージ3の後端(図1(a)の右端)までの長さは、例えば39mm程度である。
【0022】
光モジュール4は、その挿入側(図1(c)では右側)の先端部に開口4aを有しており、この開口4aから回路基板4bが露出されるようになっている。開口4aから露出された回路基板4bの端部には、図示しない接続端子が整列して形成され、カードエッジコネクタ4cが形成されている。
【0023】
基板2には、光モジュール4のカードエッジコネクタ4cが挿入されるレセプタクル10が実装されている。レセプタクル10は、ケージ3内に実装される。光モジュール4をケージ3に挿入すると、光モジュール4のカードエッジコネクタ4cがレセプタクル10に挿入され、光モジュール4の回路基板4bと通信機器の基板2とが電気的に接続される。光モジュール4をケージ3内に収容した収容位置では、光モジュール4の先端4dは、レセプタクル10よりも後方(図1(c)では右側)に突出するようになっている。
【0024】
図1(a)〜(c)および図2(a)〜(d)に示すように、過挿入防止部材5は、ケージ3の両側に沿って配置されると共に、その一端部が前面パネル8に固定される2つの横枠5aと、ケージ3の後方にて2つの横枠5aの他端部同士を接続する後枠5bと、を有している。横枠5aと後枠5bとは一体に形成される。
【0025】
横枠5aは、ケージ3の側面に沿う直線状に形成され、その一端部には、横枠5aの一端部からケージ3と反対側に延びる(ケージ3から離れる方向に延びる)フランジ部5cが一体に形成される。フランジ部5cには、ネジ穴5dが形成されており、このネジ穴5dにネジ11を通してフランジ部5cを前面パネル8の裏面にネジ止めすることにより、横枠5aが前面パネル8に固定される。
【0026】
過挿入防止部材5の後枠5bには、後方開口部7からケージ3内に突出するように形成され、光モジュール4をケージ3内に収容した収容位置にて光モジュール4の先端4dに当接し、光モジュール4の挿入を収容位置で停止させる当接部5eが形成される。本実施の形態では、過挿入防止部材5を平面視で略M字状に形成し、M字状の中央の突出部に相当する当接部5eを、後方開口部7からケージ3内に突出するように配置した。当接部5eは、横枠5aに対して垂直な面を有しており、光モジュール4の先端4dを面で受けるようになっている。
【0027】
過挿入防止部材5は、ステンレスなどからなる金属板を折り曲げ加工することにより形成される。過挿入防止部材5に用いる金属板の厚さとしては、光モジュール4を強い力で押し込んだときに過挿入防止部材5が変形してしまわない程度の厚さとすればよく、金属板の材質等を考慮して適宜決定すればよい。本実施の形態では、厚さ1mm、幅5mmのステンレスからなる金属板を折り曲げ加工することにより、過挿入防止部材5を形成した。
【0028】
横枠5aの長さ(図2(b)における左右方向の長さ)は、ケージ3の長さ(前面パネル8の裏面からの長さ)よりも若干大きくされ、例えば40mm程度とされる。また、2つの横枠5aの間隔(図2(c)における上下方向の間隔)は、ケージ3の幅よりも若干大きくされ、例えば16mm程度とされる。フランジ部5cの長さは、例えば7mm程度である。
【0029】
本実施の形態の作用を説明する。
【0030】
本実施の形態に係る光モジュールの過挿入防止構造1では、ケージ3の後面を開放すると共に、ケージ3の周囲に、2つの横枠5aと後枠5bとを有する過挿入防止部材5を設け、横枠5aの一端部を前面パネル8に固定して過挿入防止部材5を前面パネル8に固定すると共に、後枠5bに、後方開口部7からケージ3内に突出し、光モジュール4をケージ3内に収容した収容位置にて光モジュール4の先端4dに当接する当接部5eを形成し、この当接部5eにて、光モジュール4の挿入を収容位置で停止させるようにしている。
【0031】
過挿入防止部材5を設けることにより、光モジュール4が収容位置まで挿入された時点で光モジュール4の先端4dが当接部5eにより規制され、光モジュール4の挿入を収容位置で停止させることが可能になる。過挿入防止部材5は、前面パネル8に固定されているため、光モジュール4を強い力で押し込んだ場合であっても、光モジュール4が収容位置よりも奥に押し込まれてしまうことを防止できる。つまり、本発明によれば、光モジュール4を強い力で押し込んだ場合であっても、光モジュール4の過挿入を防止でき、基板2に実装されたレセプタクル10などの電子部品の破壊を防止することが可能となる。
【0032】
また、本発明の光モジュールの過挿入防止構造1では、従来用いられているケージの後面を除去し、過挿入防止部材5を設けるという簡単な構成で光モジュール4の過挿入を防止でき、非常に低コストである。つまり、本発明によれば、最低限のコストで、光モジュール4の過挿入を防止でき、通信機器の信頼性を格段に向上させることが可能となる。
【0033】
また、本発明の光モジュールの過挿入防止構造1では、過挿入防止部材5を金属板を折り曲げ加工することにより形成しているため、過挿入防止部材5を容易かつ低コストに製造することが可能である。
【0034】
さらに、本発明の光モジュールの過挿入防止構造1では、過挿入防止部材5の横枠5aの一端部にフランジ部5cを形成し、フランジ部5cを前面パネル8の裏面にネジ止めすることにより、横枠5aの一端部を前面パネル8に固定するようにしているので、過挿入防止部材5を強固に前面パネル8に固定でき、信頼性を向上できる。
【0035】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0036】
図3に示す光モジュールの過挿入防止構造31は、基本的に図1の光モジュールの過挿入防止構造1と同じ構成であり、光モジュール4を挿入する挿入口6を複数有し、複数の光モジュール4を収容するケージ32を用い、複数の光モジュール4に対応した複数の当接部5eを後枠5bに形成した過挿入防止部材33を用いた点が異なる。
【0037】
ケージ32には、複数の光モジュール4に対応した複数の収容室34が形成されており、各収容室34に光モジュール4が収容されるようになっている。各収容室34内には、光モジュール4のカードエッジコネクタ4cが挿入されるレセプタクル10がそれぞれ実装されている。
【0038】
過挿入防止部材33の後枠5bに形成された複数の当接部5eは、後方開口部7からケージ32の各収容室34内に突出するように配置され、光モジュール4を挿入した際に、収容位置にて光モジュール4の先端4bを規制し、光モジュール4の過挿入を防止するようになっている。
【0039】
このように、複数の光モジュール4を収容するケージ32を用いる場合は、後枠5bに複数の当接部5eを形成した共通の過挿入防止部材33を用いることで、各光モジュール4の過挿入を防止することが可能である。
【0040】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0041】
例えば、上記実施の形態では、光モジュール4として、光モジュール4をケージ3内に収容した収容位置において、光モジュール4の先端4dがレセプタクル10よりも後方に突出するものを用いる場合を説明したが、光モジュールとして、収容位置において、光モジュールの先端がレセプタクル10よりも後方に突出しないものを用いる場合は、当接部5eをレセプタクル10の上方に位置させるか、あるいは、当接部5eにレセプタクル10を避けるための切欠きを形成し、収容位置にて光モジュールの先端に当接するように、当接部5eを配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 光モジュールの過挿入防止構造
2 基板
3 ケージ
4 光モジュール
5 過挿入防止部材
5a 横枠
5b 後枠
5c フランジ部
5d ネジ穴
5e 当接部
6 挿入口
7 後方開口部
8 前面パネル
9 貫通孔
10 レセプタクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機器の基板上に固定されたケージに光モジュールを挿入して、前記光モジュールを前記ケージ内に収容する際に、前記光モジュールの過挿入を防止するための光モジュールの過挿入防止構造であって、
前記ケージは、前記光モジュールを挿入する挿入口と対向する後面が開放され筒状に形成されると共に、前記挿入口を前記通信機器の前面パネルに形成された貫通孔に位置させて配置され、
前記ケージの両側に沿って配置されると共に、その一端部が前記前面パネルに固定される2つの横枠と、前記ケージの後方にて前記2つの横枠の他端部同士を接続する後枠とを有する過挿入防止部材を設け、
前記過挿入防止部材の前記後枠に、前記ケージの開放された後面から前記ケージ内に突出するように形成され、前記光モジュールを前記ケージ内に収容した収容位置にて前記光モジュールの先端に当接し、前記光モジュールの挿入を前記収容位置で停止させる当接部を形成した
ことを特徴とする光モジュールの過挿入防止構造。
【請求項2】
前記過挿入防止部材は、金属板を折り曲げ加工することにより形成される請求項1記載の光モジュールの過挿入防止構造。
【請求項3】
前記過挿入防止部材の前記横枠の一端部にフランジ部を形成し、該フランジ部を前記前面パネルの裏面にネジ止めすることにより、前記横枠の一端部を前記前面パネルに固定するようにした請求項1または2記載の光モジュールの過挿入防止構造。
【請求項4】
前記ケージは、前記光モジュールを挿入する前記挿入口を複数有し、複数の前記光モジュールを収容するように形成され、
前記過挿入防止部材の前記後枠には、複数の前記光モジュールに対応した複数の前記当接部が形成される請求項1〜3いずれかに記載の光モジュールの過挿入防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−18858(P2012−18858A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156377(P2010−156377)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】